説明

ベルトスリーブ加硫装置及びベルトスリーブの加硫方法

【課題】簡易な構成によって、ゴムジャケットの予熱を行うことのできるベルトスリーブ加硫装置及びベルトスリーブの加硫方法を提供する。
【解決手段】ベルトスリーブ加硫装置1は、未加硫のベルトスリーブ20が巻き付けられる金型2と、金型2の外側に配置されるゴムジャケット4と、ゴムジャケット4の外側に配置された筒状ケーシング5と、圧力媒体供給部8と、減圧部9とを有する。筒状ケーシング5は、その内周面にゴムジャケット4を加熱するための加熱部7を有する。圧力媒体供給部8は、ゴムジャケット4と筒状ケーシング5との間の空間6に接続されており、この空間6に圧力媒体を導入して、ゴムジャケット4をベルトスリーブ20に押し付けるためのものである。減圧部9は、空間6に接続され、空間6を減圧することによって、ゴムジャケット4を加熱部7に接触させるためのものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型に巻き付けられたベルトスリーブの外周面にゴムジャケットを押し付けてベルトスリーブを加硫する、ベルトスリーブ加硫装置及びベルトスリーブの加硫方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ベルトスリーブ加硫装置として、未加硫のベルトスリーブが巻き付けられる金型と、この金型の外側に配置されるゴムジャケットとを有し、加熱された圧縮空気等の圧力媒体によってゴムジャケットをベルトスリーブに押し付けてベルトスリーブを加熱加圧して加硫するベルトスリーブ加硫装置が知られている。
【0003】
このようなベルトスリーブ加硫装置として、例えば、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1のベルトスリーブ加硫装置は、上述したようなゴムジャケットの外周に、筒状のケーシングが配置された構造を有しており、ゴムジャケットの両端部はこのケーシングに取り付けられ、ゴムジャケットとケーシングとの間に、圧縮空気が封入される圧力媒体空間部が形成されている。さらに、このケーシングは、蒸気やシリコンオイル等の熱媒体が導入される加熱媒体空間部を有しており、加熱媒体空間部内に導入された熱媒体によって、圧力媒体空間部内の圧力媒体を加熱するようになっている。
【0004】
特許文献1のベルトスリーブ加硫装置によりベルトスリーブを加硫する際には、圧力媒体空間部に圧縮空気を導入しつつ、この圧縮空気を加熱媒体空間部内の熱媒体で加熱することで、高温のゴムジャケットを縮径方向に変形させてベルトスリーブに押し付けて加熱加圧する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3875796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したような、ゴムジャケットをベルトスリーブに押し付けてベルトスリーブを加熱加圧するベルトスリーブ加硫装置においては、ゴムジャケットが常温の状態で、上述したような加硫工程を開始している。しかし、この場合、ゴムジャケットがベルトスリーブの加硫温度に達するまでに時間を要するため、工程時間の短縮という観点からは、加硫工程開始前にゴムジャケットを一定温度以上に加熱しておくことが好ましい。
【0007】
ゴムジャケットを予熱するには、例えば、加硫装置から取り外したゴムジャケットをオーブン等の加熱装置で加熱してから加硫装置に搬送して設置する方法や、加硫装置内に加熱装置を配置してゴムジャケットを加熱する方法が考えられる。しかしながら、このようなゴムジャケットの予熱専用の加熱装置を設けることは、装置コスト面で不利である。
【0008】
また、加硫装置から取り外したゴムジャケットをオーブン等の加熱装置で加熱してから加硫装置に設置する場合、ゴムジャケットを加硫装置と加熱装置に脱着するという煩雑な手間が必要となる。さらに、オーブン等の大型の加熱装置は、設置スペースの点から加硫装置のすぐ近傍に設置することは難しく、加硫装置から離れた位置に設置されるため、加熱されたゴムジャケットを加硫装置まで搬送する際に熱的ロスが生じる。
【0009】
そこで、本発明は、特別な構成を付加することなく、簡易にゴムジャケットの予熱を行うことのできるベルトスリーブ加硫装置及びベルトスリーブの加硫方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0010】
第1の発明のベルトスリーブ加硫装置は、未加硫のベルトスリーブが巻き付けられる金型と、前記金型の外側に配置されるゴムジャケットと、前記ゴムジャケットの外側に配置され、その内周面に前記ゴムジャケットを加熱するための加熱部が設けられる筒状ケーシングと、前記ゴムジャケットと前記筒状ケーシングとの間の空間に接続され、前記空間に圧力媒体を導入して、前記ゴムジャケットを前記ベルトスリーブに押し付ける圧力媒体供給部と、前記空間に接続され、前記空間を減圧して、前記ゴムジャケットを前記加熱部に接触させる減圧部とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明のベルトスリーブ加硫装置によって未加硫のベルトスリーブを加硫する際には、まず、減圧部によって、ゴムジャケットと筒状ケーシングとの間の空間を減圧して、ゴムジャケットを筒状ケーシングの加熱部に密着させて、予めゴムジャケットを加熱する。その後、圧力媒体供給部により前記空間に圧力媒体を導入し、同時に、前記空間内の圧力媒体を加熱部によって加熱しつつ、ゴムジャケットをベルトスリーブに押し付けてベルトスリーブを加熱加圧して加硫する。
【0012】
本来ベルトスリーブの加硫時に使用するために設けられている加熱部を用いて、ゴムジャケットを予熱しているため、特別な構成を付加することなくゴムジャケットの予熱を行うことができる。また、筒状ケーシングに設けられた加熱部にゴムジャケットを密着させて予熱を行っているため、予熱のためにゴムジャケットを脱着する必要がなく、簡易に予熱を行うことができる。また、減圧部によりゴムジャケットと筒状ケーシングとの間の空間を減圧するという簡易な方法で、ゴムジャケットを加熱部に密着させることができる。
【0013】
第2の発明のベルトスリーブ加硫装置は、前記第1の発明において、前記金型の外周面に、複数の溝部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によると、予熱されたゴムジャケットをベルトスリーブに押し付けてベルトスリーブを加熱加圧する際、ベルトスリーブを構成するゴムが、熱により流動状となり、金型の溝部内に押し込まれて、ベルトスリーブの内周面に、前記溝部に対応する凸形状が成形される。
【0015】
ゴムジャケットの予熱を行わない場合、ベルトスリーブを構成するゴムの流動化が不十分な状態でゴムが溝部内に押し込まれて、ゴムが溝部内に完全に流れ込まない場合がある。一方、本発明では、予熱されたゴムジャケットをベルトスリーブに押し付けるため、ベルトスリーブを構成するゴムを短時間で流動化させることができる。そのため、確実に成形を行うことができる。
【0016】
第3の発明のベルトスリーブの加硫方法は、未加硫のベルトスリーブが巻き付けられる金型と、前記金型の外側に配置されるゴムジャケットと、前記ゴムジャケットの外側に配置され、内周面に前記ゴムジャケットを加熱するための加熱部が設けられた筒状ケーシングとを有する加硫装置によって、前記ベルトスリーブを加硫する方法であって、前記ゴムジャケットを前記加熱部に接触させて前記ゴムジャケットを加熱するゴムジャケット予熱工程と、前記ゴムジャケット予熱工程の後、前記ゴムジャケットと前記筒状ケーシングとの間の空間に圧力媒体を導入し、前記空間内の圧力媒体を前記加熱部で加熱しつつ、前記圧力媒体によって前記ゴムジャケットを前記ベルトスリーブに押し付けて前記ベルトスリーブを加熱加圧して加硫する加硫工程とを有することを特徴とする。
【0017】
本発明のベルトスリーブの加硫方法によると、まず、ゴムジャケットを筒状ケーシングの加熱部に密着させて、予めゴムジャケットを加熱する。その後、ゴムジャケットと筒状ケーシングとの間の空間に圧力媒体を導入し、同時に、前記空間内の圧力媒体を前記空間内の圧力媒体を加熱部によって加熱しつつ、ゴムジャケットをベルトスリーブに押し付けてベルトスリーブを加熱加圧して加硫する。
【0018】
本来ベルトスリーブの加硫時に使用するために設けられている加熱部を用いて、ゴムジャケットを予熱しているため、特別な構成を付加することなくゴムジャケットの予熱を行うことができる。また、筒状ケーシングに設けられた加熱部にゴムジャケットを密着させて予熱を行っているため、予熱のためにゴムジャケットを脱着する必要がなく、簡易に予熱を行うことができる。
【0019】
第4の発明のベルトスリーブの加硫方法は、前記第3の発明における、前記ゴムジャケット予熱工程において、前記空間を減圧して、前記ゴムジャケットを前記加熱部に接触させることを特徴とする。
【0020】
この構成によると、ゴムジャケットと筒状ケーシングとの間の空間を減圧するという簡易な方法で、ゴムジャケットを加熱部に密着させることができる。
【0021】
第5の発明のベルトスリーブの加硫方法は、前記第3又は第4の発明において、前記金型の外周面に、複数の溝部が形成されており、前記加硫工程において、前記ベルトスリーブの加硫と同時に、前記溝部によって前記ベルトスリーブの内周面を成形することを特徴とする。
【0022】
この構成によると、ゴムジャケットをベルトスリーブに押し付けてベルトスリーブを加熱加圧する際、ベルトスリーブを構成するゴムが、熱により流動状となり、金型の溝部内に押し込まれて、ベルトスリーブの内周面に、前記溝部に対応する凸形状が成形される。
【0023】
ゴムジャケットの予熱を行わない場合、ベルトスリーブを構成するゴムの流動化が不十分な状態でゴムが溝部内に押し込まれて、ゴムが溝部内に完全に流れ込まない場合がある。一方、本発明では、予熱されたゴムジャケットをベルトスリーブに押し付けるため、ベルトスリーブを構成するゴムを短時間で流動化させることができる。そのため、確実に成形を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係るベルトスリーブ加硫装置の縦断面図である。
【図2】金型に未加硫のベルトスリーブが巻き付けられた状態を示す横断面図である。
【図3】ゴムジャケットを加熱部に密着させている状態を示す縦断面図である。
【図4】コグ付Vベルトの部分斜視図である。
【図5】変更形態のベルトスリーブ加硫装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態では、コグ付Vベルトの製造工程において、未加硫のベルトスリーブを加硫する際に本発明を適用した例を挙げて説明する。
【0026】
図1に示すように、本実施形態のベルトスリーブ加硫装置1は、未加硫のベルトスリーブ20が巻き付けられる円筒状の金型2と、金型2を支持する型支持部材3と、金型2の外側に配置されているゴムジャケット4と、ゴムジャケット4の外側に配置されている筒状ケーシング5と、加圧ポンプ(圧力媒体供給部)8と、真空ポンプ(減圧部)9とを有する。以下のベルトスリーブ加硫装置1の説明において、図1中の上下方向を上下方向と定義する。
【0027】
図2に示すように、ベルトスリーブ加硫装置1で加硫される未加硫のベルトスリーブ20は、金型2の外周面に、帆布21と、未加硫のゴムシート22、23と、心線24と、未加硫のゴムシート25と、帆布26とが順に巻き付けられることにより形成されている。また、加硫後のベルトスリーブ20は、所定の幅にV形状に切断されて複数のコグ付Vベルト30に仕上げられる。図4に示すように、コグ付Vベルト30は、帆布21と、圧縮ゴム層31と、心線24がベルト長手方向に沿って埋設された接着ゴム層32と、伸張ゴム層33と、帆布26とが内周側から順に積層された構造を有する。圧縮ゴム層31には、ベルト長手方向に一定の間隔で配置された複数のコグ部31aが形成されている。
【0028】
図2に示すように、金型2の外周面には、それぞれ筒軸方向に延在する複数の溝部2aが、周方向に所定の間隔を空けて形成されている。図1に示すように、金型2は、両端が閉じられた円筒状に形成されており、内部に空間2b(以下、熱媒体収容部2bという)を有している。金型2の上端面には、筒状の導入部2cが突出して形成され、金型2の下端面には、筒状の排出部2dが突出して形成されている。熱媒体収容部2bは、導入部2c及び排出部2dによって外部と連通している。
【0029】
導入部2c及び排出部2dは、図示しない蒸気発生器にそれぞれ接続されている。この蒸気発生器は、導入部2cを介して蒸気を熱媒体収容部2bに送り込むとともに、排出部2dから排出された蒸気を取り込んで循環させるようになっている。
【0030】
型支持部材3は、板状の部材であって、金型2の下面を支持している。型支持部材3の略中央部には、貫通孔3aが形成されており、この貫通孔3aには、金型2の排出孔5bが挿通されている。
【0031】
ゴムジャケット4は、筒状であって、金型2の外周を取り囲むように配置されている。ゴムジャケット4は、ゴムやウレタン等の弾性材料で形成されており、伸縮可能となっている。また、ゴムジャケット4は、外力が作用していない無負荷の状態において、筒軸方向に関する中央部の径が、金型2に巻き付けられたベルトスリーブ20の外周面の径よりも大きく、且つ、後述する筒状ケーシング5の内周面の径よりも小さい。また、ゴムジャケット4の上下両端部の径は、中央部の径と同じであってもよいが、中央部の径よりも大きく、且つ、筒状ケーシング5の内周面の径以下であってもよい。
【0032】
ゴムジャケット4の外周には、筒状ケーシング5が配置されている。ゴムジャケット4と筒状ケーシング5との間の空間6(以下、圧力媒体空間部6という)は、ゴムジャケット4の上下両端部がそれぞれ筒状ケーシング5の内周面に固定されることによって封止されている。
【0033】
また、筒状ケーシング5には、圧力媒体空間部6と外部とを連通する2つの導入孔5a及び2つの排出孔5bが形成されている。2つの導入孔5aは、筒状ケーシング5の下側部分の左右対称な位置に形成されている。2つの排出孔5bは、筒状ケーシング5の、2つの導入孔5aの上側の位置にそれぞれ形成されている。
【0034】
また、筒状ケーシング5は、導入孔5aと排出孔5bとの間の領域に、円筒状の加熱部7を備えている。加熱部7は、後述する加硫工程時に圧力媒体空間部6内の圧縮空気を介してゴムジャケット4を間接的に加熱する加熱手段と、後述するゴムジャケット予熱工程時にゴムジャケット4に接触して加熱する加熱手段を兼ねている。加熱部7は、筒状ケーシング5の内周面の一部を構成している。加熱部7の内部には、蒸気が導入される環状の熱媒体収容部7aが形成されている。熱媒体収容部7aは、図示しない連通孔を介して、図示しない蒸気発生器に接続されている。
【0035】
加圧ポンプ(圧力媒体供給部)8は、出口側(送出側)が2つの導入孔5aに接続されており、2つの導入孔5aを介して圧力媒体空間部6に圧縮空気を導入するようになっている。また、加圧ポンプ8の入口側は、2つの排出孔5bと大気に連通しており、加圧ポンプ8は、排出孔5bから排出される少量の空気を取り込んで循環させるようになっている。
【0036】
真空ポンプ(減圧部)9は、2つの排出孔5bに接続されている。真空ポンプ9は、2つの排出孔5bを介して圧力媒体空間部6内の空気を吸引して、圧力媒体空間部6を減圧するようになっている。
【0037】
次に、ベルトスリーブ加硫装置1を使用して、未加硫のベルトスリーブ20を加硫する方法について説明する。
【0038】
(未加硫ベルトスリーブ巻き付け工程)
金型2の外周面に、未加硫のベルトスリーブ20を巻き付ける。具体的には、図2に示すように、帆布21を金型2の溝部2aに沿うようにピニオンロール等を用いて型付けしつつ、帆布21を金型2に巻き付けてから、その上に未加硫のゴムシート22、23を順に巻き付ける。さらに、その上に心線24を螺旋状に巻き回してから、未加硫のゴムシート25と帆布26とを順に巻き付ける。なお、帆布21は型付けを行わずに金型2に巻き付けてもよい。
【0039】
未加硫のベルトスリーブ20が巻き付けられた金型2を、ゴムジャケット4の内側に挿入し、排出部2dを貫通孔3aに挿入して、金型2を型支持部材3の上に設置する。
【0040】
(ゴムジャケット予熱工程)
図3に示すように、加熱部7の熱媒体収容部7a内に蒸気を導入した状態で、真空ポンプ9により圧力媒体空間部6を減圧して、ゴムジャケット4を拡径方向に変形させて加熱部7に密着させ、ゴムジャケット4を加熱する。ゴムジャケット4の加熱温度は、後述する加硫工程時のゴムジャケット4の温度とほぼ同じ温度(例えば150〜160℃)であってもよく、加硫工程時の温度よりも低い温度であってもよい。また、ベルトスリーブ20の弾性変形のしやすさにもよるが、ゴムジャケット4を加熱部7に密着させた際の圧力媒体空間部6の真空度は、例えば50〜100kPaである。
【0041】
(加硫工程)
次に、金型2の熱媒体収容部2bに蒸気を導入して、金型2を加熱する。これにより、ベルトスリーブ20を内周側から加熱する。このとき、熱媒体収容部2b内の蒸気は排出部2dから排出されて循環しているため、導入部2cから常に蒸気を導入することができ、金型2の温度をほぼ一定に保つことができる。
【0042】
金型2の加熱を始めた後、加圧ポンプ8により、ゴムジャケット4と筒状ケーシング5との間の圧力媒体空間部6に、例えば1〜5MPaの圧縮空気を導入する。同時に、加熱部7により、圧力媒体空間部6内の圧縮空気を加熱する。すると、圧力媒体空間部6内の圧縮空気によって、ゴムジャケット4は縮径方向に変形して、ベルトスリーブ20を押圧するため、ベルトスリーブ20は加熱加圧されて加硫される。加熱加圧時間は、例えば20〜100分とし、ベルトスリーブ20の加熱温度は、ゴム材料の種類にもよるが、例えば150〜160℃とする。
【0043】
このとき、圧力媒体空間部6内の空気は、排出孔5bから少量ずつ排出されているため、導入孔5aから常に圧縮空気を導入することができる。そのため、圧力媒体空間部6内の圧力を均一化できるとともに、圧力をほぼ一定に保つことができる。
【0044】
また、この加熱加圧の際、ゴムシート22を構成するゴムが、熱により流動状となり、金型2の溝部2a内に押し込まれる。これにより、ベルトスリーブ20の内周面に、複数の溝部2aに対応する複数のコグ部31aが成形される。なお、未加硫ベルトスリーブ巻き付け工程において、型付けを行わずに帆布21を金型2に巻き付けた場合には、流動化したゴムは、帆布21を押し広げつつ、金型2の溝部2a内に押し込まれてコグ部31aが成形される。
【0045】
加硫後は、圧力媒体空間部6内の空気を排出孔5bから排出させてから、ベルトスリーブ20が巻き付けられた金型2を取り出す。その後、ベルトスリーブ20を冷却してから金型2からベルトスリーブ20を取り外す。加硫後のベルトスリーブ20は、所定の幅にV形状に切断されて複数のコグ付Vベルト30に仕上げられる。
【0046】
以上説明したように、加硫工程前に、ゴムジャケット4を予熱しているため、加硫工程時に、ベルトスリーブ20の温度を短時間で所望の温度まで上昇させることができ、加硫工程の時間を短縮化できる。また、ゴムジャケット4を加熱部7に直接接触させて予熱を行っているため、予熱工程の時間は短い。
【0047】
また、本来ベルトスリーブ20を加硫する際に使用する加熱部7を用いて、ゴムジャケット4を予熱しているため、特別な構成を付加することなくゴムジャケット4の予熱を行うことができる。
【0048】
また、筒状ケーシング5に設けられた加熱部7にゴムジャケット4を密着させて予熱を行っているため、予熱のためにゴムジャケット4を脱着する必要がなく、簡易に予熱を行うことができる。そのため、予熱工程から加硫工程までの自動化が容易となる。また、予熱の際にゴムジャケット4を移動させる必要がないため、移動に伴う熱的ロスが生じない。
【0049】
また、真空ポンプ9によりゴムジャケット4と筒状ケーシング5との間の圧力媒体空間部6を減圧するという簡易な方法で、ゴムジャケット4を加熱部7に密着させることができる。
【0050】
ゴムジャケット4の予熱を行わない場合、ベルトスリーブ20を構成するゴムの流動化が不十分な状態でゴムが溝部2a内に押し込まれて、ゴムが溝部2a内に完全に流れ込まない場合がある。一方、本実施形態では、予熱されたゴムジャケット4をベルトスリーブ20に押し付けるため、ベルトスリーブ20を構成するゴムを短時間で流動化させることができる。そのため、確実にコグ部31aを成形することができる。
【0051】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の実施形態は以下のように変更して実施することができる。なお、上記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
【0052】
1]上記実施形態では、ベルトスリーブ加硫装置1の使用例として、未加硫のベルトスリーブ20を加硫すると同時に、コグ部31aを成形する場合について説明したが、ベルトスリーブ加硫装置1の使用例は、これに限定されるものではない。例えば、加硫せずにコグ部31aを形成し(この工程を、予備成形工程という)、その後、ベルトスリーブ20を加硫する場合にベルトスリーブ加硫装置1を用いてもよい。
【0053】
具体的には、まず、金型2の外周面に、帆布21と未加硫のゴムシート22とを順に巻き付け、この金型2をゴムジャケット4の内側に挿入する。次に、上記実施形態のゴムジャケット予熱工程と同様の手順で、ゴムジャケット4を予熱する。このときのゴムジャケット4の加熱温度は、後述する予備成形工程時のゴムジャケット4の温度とほぼ同じ温度(例えば100〜150℃)であってもよく、予備成形工程時の温度よりも低い温度であってもよい。
【0054】
その後、上記実施形態の加硫工程と同様の手順で、ゴムシート22を加熱加圧してコグ部31aを成形する(予備成形工程)。これにより、帆布21と、コグ部31aが形成されたゴムシート22とからなる予備成形体が形成される。このときのゴムシート22の加熱温度は、加硫が進まない程度の温度であって、ゴム材料の種類にもよるが、例えば100〜150℃であって、加熱時間は、例えば10〜15分である。
【0055】
次に、圧力媒体空間部6の圧縮空気を排出して、金型2を一旦取り出し、金型2に巻き付けられている予備成形体のゴムシート22の外周面に、未加硫のゴムシート23と、心線24と、未加硫のゴムシート25とを順に巻き付けて、未加硫のベルトスリーブ20を形成する。このベルトスリーブ20が巻き付けられた金型2を、ゴムジャケット4の内側に挿入し、上記実施形態の加硫工程と同様の手順で、ベルトスリーブ20を加熱加圧して加硫する(加硫工程)。このときのベルトスリーブ20の加熱温度は、例えば150〜160℃であって、加熱時間は、例えば20〜30分である。なお、ベルトスリーブ20を加硫する前に、上述したゴムジャケット予熱工程と同様の手順で、ゴムジャケット4を予熱してもよいが、予熱しなくてもよい。
【0056】
この変更形態によると、コグ部31aの予備成形の前に、ゴムジャケット4を予熱するため、予備成形時に短時間でコグ部31aを成形することができる。また、予備成形時には、ゴムシート22を加硫時よりも低い温度で加熱するため、ゴムジャケット4の予熱を行わない場合には、流動化が不十分になりやすく、ゴムが溝部2a内に完全に流れ込まない状態が発生しやすい。一方、本変更形態では、予備成形前に、ゴムジャケット4の予熱を行うため、短時間でゴムを流動化させることができ、確実にコグ部31aを成形することができる。
【0057】
2]上記実施形態では、未加硫のベルトスリーブ20は、未加硫のゴムシート22、23と、心線24と、未加硫のゴムシート25とが積層された構造であるが、ベルトスリーブ加硫装置1の加硫対象となる未加硫のベルトスリーブ20の構成は、これに限定されるものではない。例えば、未加硫のベルトスリーブ20は、金型2の外周面に、心線と、未加硫のゴムシートのみを順に巻き付けることによって形成されたものであってもよい。
【0058】
3]上記実施形態では、ゴムジャケット4は、筒状ケーシング5に直接取り付けられているが、ゴムジャケット4と筒状ケーシング5との間に、圧縮空気を封入できる空間(圧力媒体空間部)を有する構成であれば、必ずしもゴムジャケット4は筒状ケーシング5に直接取り付けられていなくてもよい。例えば、図5に示すように、ゴムジャケット4は、下端が型支持部材3に取り付けられ、上端が筒状ケーシング5の上端に載せられた環状板101に取り付けられていてもよい。
【0059】
4]真空ポンプ9は、導入孔5aに接続されていてもよい。この場合、排出孔5bは、加圧ポンプ8の入口側にのみ接続される。
【0060】
5]上記実施形態では、圧力媒体空間部6を減圧する本発明の減圧部として、真空ポンプ9を用いているが、減圧部はこれに限定されるものではなく、真空ポンプ9以外の減圧手段を用いてもよい。
【0061】
6]上記実施形態では、真空ポンプ9によって、圧力媒体空間部6を減圧することによって、ゴムジャケット4を加熱部7に密着させてゴムジャケット4を加熱しているが、ゴムジャケット4を加熱部7に密着させるための構成は、真空ポンプ(減圧部)9に限定されるものではない。例えば、拡径可能な筒状部材を、ゴムジャケット4の内側に挿入して、拡径することによって、ゴムジャケット4を加熱部7に密着させて加熱してもよい。
【0062】
7]上記実施形態では、圧力媒体空間部6に圧縮空気を導入する本発明の圧力媒体供給部として、加圧ポンプ8を用いているが、圧力媒体供給部はこれに限定されるものではなく、例えば、コンプレッサーを用いてもよい。
【0063】
8]また、圧力媒体空間部6に導入される圧力媒体は、圧縮空気に限定されるものではなく、例えば、シリコンオイル等の液体を用いてもよい。
【0064】
9]加熱部7の熱媒体収容部7a、及び、金型2の熱媒体収容部2bに収容される熱媒体は、蒸気に限定されるものではなく、例えば、シリコンオイルであってもよい。
【0065】
10]上記実施形態では、加熱部7は、内部に熱媒体を収容する熱媒体収容部7aを有する構成であるが、加熱部7の構成はこれに限定されるものではなく、加熱部7は、筒状ケーシング5の内周面の一部を構成する側壁部と、この側壁部を加熱するための熱源とを有するものであれば、熱源の種類は特に限定されない。熱源として例えば電熱線を用いてもよい。
【0066】
以上、本発明の実施形態及び変更形態として、コグ付Vベルトの製造工程において、未加硫のベルトスリーブ20を加硫する際に、本発明を適用した例を挙げて説明したが、本発明の適用対象は、これに限定されるものではなく、平ベルト、Vベルト、歯付ベルト又はVリブドベルト等の製造工程において、未加硫のベルトスリーブを加硫する際にも本発明を適用できる。平ベルトを製造する場合には、金型2としては、外周面が平坦なものを用いる。また、Vベルト又はVリブドベルトを製造する場合には、金型2としては、外周面が平坦なもの、もしくは外周面に周方向に延びる複数の溝が形成されたものを用いる。
【符号の説明】
【0067】
1 ベルトスリーブ加硫装置
2 金型
2a 溝部
4 ゴムジャケット
5 筒状ケーシング
5a 導入孔
5b 排出孔
6 圧力媒体空間部(空間)
7 加熱部
7a 熱媒体収容部
8 加圧ポンプ(圧力媒体供給部)
9 真空ポンプ(減圧部)
20 ベルトスリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加硫のベルトスリーブが巻き付けられる金型と、
前記金型の外側に配置されるゴムジャケットと、
前記ゴムジャケットの外側に配置され、その内周面に前記ゴムジャケットを加熱するための加熱部が設けられる筒状ケーシングと、
前記ゴムジャケットと前記筒状ケーシングとの間の空間に接続され、前記空間に圧力媒体を導入して、前記ゴムジャケットを前記ベルトスリーブに押し付ける圧力媒体供給部と、
前記空間に接続され、前記空間を減圧して、前記ゴムジャケットを前記加熱部に接触させる減圧部と、
を有することを特徴とするベルトスリーブ加硫装置。
【請求項2】
前記金型の外周面に、複数の溝部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のベルトスリーブ加硫装置。
【請求項3】
未加硫のベルトスリーブが巻き付けられる金型と、前記金型の外側に配置されるゴムジャケットと、前記ゴムジャケットの外側に配置され、内周面に前記ゴムジャケットを加熱するための加熱部が設けられた筒状ケーシングとを有する加硫装置によって、前記ベルトスリーブを加硫する方法であって、
前記ゴムジャケットを前記加熱部に接触させて前記ゴムジャケットを加熱するゴムジャケット予熱工程と、
前記ゴムジャケット予熱工程の後、前記ゴムジャケットと前記筒状ケーシングとの間の空間に圧力媒体を導入し、前記空間内の圧力媒体を前記加熱部で加熱しつつ、前記圧力媒体によって前記ゴムジャケットを前記ベルトスリーブに押し付けて前記ベルトスリーブを加熱加圧して加硫する加硫工程とを有することを特徴とするベルトスリーブの加硫方法。
【請求項4】
前記ゴムジャケット予熱工程において、
前記空間を減圧して、前記ゴムジャケットを前記加熱部に接触させることを特徴とする請求項3に記載のベルトスリーブの加硫方法。
【請求項5】
前記金型の外周面に、複数の溝部が形成されており、
前記加硫工程において、前記ベルトスリーブの加硫と同時に、前記溝部によって前記ベルトスリーブの内周面を成形することを特徴とする請求項3又は4に記載のベルトスリーブの加硫方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−274500(P2010−274500A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128512(P2009−128512)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】