ベルト体の走行発熱予測方法および走行抵抗力予測方法並びに回転体の走行発熱予測方法および転動抵抗予測方法
【課題】粘弾性材料を含む回転体やベルト体の発熱エネルギーあるいは走行抵抗力をより正確に予測する上で有利なベルト体の走行発熱予測方法および走行抵抗力予測方法並びに回転体の走行発熱予測方法および転動抵抗予測方法を提供する。
【解決手段】予め粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性および温度特性を示すマスターカーブを作成しておき、特定された単位ベルト体の走行速度に基づいて応力またはひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを、特定された温度に基づいてマスターカーブから求める。
【解決手段】予め粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性および温度特性を示すマスターカーブを作成しておき、特定された単位ベルト体の走行速度に基づいて応力またはひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを、特定された温度に基づいてマスターカーブから求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト体の走行発熱予測方法および走行抵抗力予測方法並びに回転体の走行発熱予測方法および転動抵抗予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車タイヤなどの粘弾性材料を含む回転体の発熱エネルギーを予測し、この発熱エネルギーから回転体の転動抵抗を予測する方法が知られている(日本ゴム協会誌第56巻第543頁〜第551頁、1983年)。
上記方法は、下記(1)式、(2)式で示される関係式に基づいて力学的解析または有限要素法(Finite Element Method)に代表される数値解析によりひずみエネルギーを求め、タイヤ発熱を予測し、これを走行距離で除算することで転動抵抗を予測するものである。
タイヤ発熱=ひずみエネルギー×材料の損失係数……(1)
タイヤ転動抵抗=タイヤ発熱÷走行距離 ……(2)
【0003】
前記従来方法において力学的解析を用いた場合には、タイヤの部位ごとに異なる応力、ひずみ、またはひずみエネルギーの詳細な結果を得ることができない不利がある。
また有限要素法には静解析と動解析があるが、静解析は、解析に要する演算時間が小であるが、材料の粘弾性の効果を考慮することができない不利があり、動解析は、材料の粘弾性を考慮することができるが、解析に要する演算時間が長いため実用性に欠ける不利がある。
また、ゴムなどの粘弾性体に周期的に変化する応力を与えると、発生するひずみとの間に位相差が生じ、応力とのひずみの変化により規定されるヒステリシスループの面積は変形による発熱、すなわち変形により失われる損失エネルギーに相当する。
しかし前記静解析では粘弾性の効果を考慮することができないから、ヒステリシスループの面積から発熱を求めることができないという問題がある。
そこで、前記静解析を用いるにも拘わらず、回転体の発熱エネルギーデータを導出する方法が提案されている(特許文献1参照)。
この方法では、回転体一周分の応力、ひずみの有限次数のフーリエ級数展開の演算を行いフーリエ次数ごとに変化特性の曲線の振幅、位相を演算し、材料の損失係数に応じた位相遅れをひずみ値に与えてのフーリエ次数ごとのヒステリシスループの面積の演算にもとづきフーリエ次数とヒステリシスループ面積の積の総和を導出し、一連の演算過程を応力、ひずみの全成分について反復実行し成分ごとの総和を演算するものである。
【特許文献1】特許第3969821号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、粘弾性材料の損失係数(損失正接tanδ)は、応力およびひずみを表す正弦波形の周波数や粘弾性材料の温度に依存して変化するものであることから、それら周波数や温度を考慮することが正確な予測結果を得る上で重要なものとなる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、粘弾性材料を含む回転体やベルト体の発熱エネルギーあるいは走行抵抗力をより正確に予測する上で有利なベルト体の走行発熱予測方法および走行抵抗力予測方法並びに回転体の走行発熱予測方法および転動抵抗予測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明は、粘弾性材料を含むベルト体が複数の回転ローラー上を走行する際に、前記ベルト体から発生する発熱を、コンピュータを用いて予測するベルト体の走行発熱予測方法であって、前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、前記走行方向において1つの回転ローラーが前記ベルト体に接触する接触位置を中心とし前記1つの回転ローラーの両側に配置された回転ローラーに接触しない範囲でかつ前記走行方向に沿った所定長の範囲に位置する前記ベルト体の部分を単位ベルト体とし、予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性を示す損失正接tanδのマスターカーブを作成しておき、前記処理手段が、前記単位ベルト体が静止した状態で、前記単位ベルト体が前記1つの回転ローラーから受ける応力と、前記応力に応じて前記単位ベルト体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、特定された前記単位ベルト体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記単位ベルト体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記単位ベルト体の全体について反復実行することにより前記単位ベルト体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、前記走行発熱エネルギーを前記出力手段を介して出力する出力ステップとを含むことを特徴とする。
また本発明は、粘弾性材料を含むベルト体が複数の回転ローラー上を走行する際に、前記ベルト体から発生する発熱を、コンピュータを用いて予測するベルト体の走行発熱予測方法であって、前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、前記走行方向において1つの回転ローラーが前記ベルト体に接触する接触位置を中心とし前記1つの回転ローラーの両側に配置された回転ローラーに接触しない範囲でかつ前記走行方向に沿った所定長の範囲に位置する前記ベルト体の部分を単位ベルト体とし、予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性および温度特性を示すマスターカーブを作成しておき、前記処理手段が、前記単位ベルト体が静止した状態で、前記単位ベルト体が前記1つの回転ローラーから受ける応力と、前記応力に応じて前記単位ベルト体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、特定された前記単位ベルト体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを、特定された温度に基づいて前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記単位ベルト体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記単位ベルト体の全体について反復実行することにより前記単位ベルト体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、前記走行発熱エネルギーを前記出力手段を介して出力する出力ステップとを含むことを特徴とする。
また本発明は、粘弾性材料を含むベルト体が複数の回転ローラー上を走行する際に、前記回転ローラーに対して前記ベルト体から前記走行方向と逆向きに作用する力である走行抵抗力を、コンピュータを用いて予測するベルト体の走行抵抗力予測方法であって、前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、前記走行方向において1つの回転ローラーが前記ベルト体に接触する接触位置を中心とし前記1つの回転ローラーの両側に配置された回転ローラーに接触しない範囲でかつ前記走行方向に沿った所定長の範囲に位置する前記ベルト体の部分を単位ベルト体とし、予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性を示す損失正接tanδのマスターカーブを作成しておき、前記処理手段が、前記単位ベルト体が静止した状態で、前記単位ベルト体が前記1つの回転ローラーから受ける応力と、前記応力に応じて前記単位ベルト体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、特定された前記単位ベルト体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記単位ベルト体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記単位ベルト体の全体について反復実行することにより前記単位ベルト体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、前記走行発熱エネルギーと前記所定長との積によって前記走行抵抗力を生成する走行抵抗力生成ステップと、前記走行抵抗力を前記出力手段を介して出力する出力ステップとを含むことを特徴とする。
また本発明は、粘弾性材料を含むベルト体が複数の回転ローラー上を走行する際に、前記回転ローラーに対して前記ベルト体から前記走行方向と逆向きに作用する力である走行抵抗力を、コンピュータを用いて予測するベルト体の走行抵抗力予測方法であって、前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、前記走行方向において1つの回転ローラーが前記ベルト体に接触する接触位置を中心とし前記1つの回転ローラーの両側に配置された回転ローラーに接触しない範囲でかつ前記走行方向に沿った所定長の範囲に位置する前記ベルト体の部分を単位ベルト体とし、予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性および温度特性を示すマスターカーブを作成しておき、前記処理手段が、前記単位ベルト体が静止した状態で、前記単位ベルト体が前記1つの回転ローラーから受ける応力と、前記応力に応じて前記単位ベルト体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、特定された前記単位ベルト体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを、特定された温度に基づいて前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記単位ベルト体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記単位ベルト体の全体について反復実行することにより前記単位ベルト体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、前記走行発熱エネルギーと前記所定長との積によって前記走行抵抗力を生成する走行抵抗力生成ステップと、前記走行抵抗力を前記出力手段を介して出力する出力ステップとを含むことを特徴とする。
また本発明は、粘弾性材料を含む回転体が接地面上を走行する際に、前記回転体から発生する発熱を、コンピュータを用いて予測する回転体の走行発熱予測方法であって、前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性を示す損失正接tanδのマスターカーブを作成しておき、前記処理手段が、前記回転体が静止した状態で、前記回転体が前記接地面から受ける応力と、前記応力に応じて前記回転体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、特定された前記回転体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記回転体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記回転体の全体について反復実行することにより前記回転体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、前記走行発熱エネルギーを前記出力手段を介して出力する出力ステップとを含むことを特徴とする。
また本発明は、粘弾性材料を含む回転体が接地面上を走行する際に、前記回転体から発生する発熱を、コンピュータを用いて予測する回転体の走行発熱予測方法であって、前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性および温度特性を示すマスターカーブを作成しておき、前記処理手段が、前記回転体が静止した状態で、前記回転体が前記接地面から受ける応力と、前記応力に応じて前記回転体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、特定された前記単位ベルト体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを、特定された温度に基づいて前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記回転体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記回転体の全体について反復実行することにより前記回転体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、前記走行発熱エネルギーを前記出力手段を介して出力する出力ステップとを含むことを特徴とする。
また本発明は、粘弾性材料を含む回転体が複数の接地面上を走行する際に、前記回転体に作用する転動抵抗を、コンピュータを用いて予測する回転体の転動抵抗予測方法であって、前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性を示す損失正接tanδのマスターカーブを作成しておき、前記処理手段が、前記回転体が静止した状態で、前記回転体が前記接地面から受ける応力と、前記応力に応じて前記回転体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、特定された前記回転体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記回転体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記回転体の全体について反復実行することにより前記回転体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、荷重を負荷していない前記回転体の外半径、および荷重を負荷したときの負荷半径を、有限要素法により演算しその結果を用いて前記回転体が一回転したときの走行距離を導出し、前記走行発熱エネルギー生成ステップで生成された前記回転体一回転時の前記走行発熱エネルギーと前記回転体が一回転したときの走行距離にもとづき前記回転体の転動抵抗を導出する転動抵抗生成ステップと、前記走行抵抗力を前記出力手段を介して出力する出力ステップと含むことを特徴とする。
また本発明は、粘弾性材料を含む回転体が複数の接地面上を走行する際に、前記回転体に作用する転動抵抗を、コンピュータを用いて予測する回転体の転動抵抗予測方法であって、前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性および温度特性を示すマスターカーブを作成しておき、前記処理手段が、前記回転体が静止した状態で、前記回転体が前記接地面から受ける応力と、前記応力に応じて前記回転体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、特定された前記単位ベルト体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを、特定された温度に基づいて前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記回転体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記回転体の全体について反復実行することにより前記回転体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、荷重を負荷していない前記回転体の外半径、および荷重を負荷したときの負荷半径を、有限要素法により演算しその結果を用いて前記回転体が一回転したときの走行距離を導出し、前記走行発熱エネルギー生成ステップで生成された前記回転体一回転時の前記走行発熱エネルギーと前記回転体が一回転したときの走行距離にもとづき前記回転体の転動抵抗を導出する転動抵抗生成ステップと、前記走行抵抗力を前記出力手段を介して出力する出力ステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、予め粘弾性材料の損失正接tanδのマスターカーブを作成しておき、周波数や温度に基づいてマスターカーブから求めた損失正接tanδを用いてベルト体の発熱エネルギーおよび走行抵抗力あるいは回転体の発熱エネルギーや転動抵抗を求めるようにしたので、周波数や温度の影響を反映させた正確な予測結果を得る上で有利となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明の実施の形態によるベルト体の走行発熱予測方法および走行抵抗力予測方法並びに回転体の走行発熱予測方法および転動抵抗予測方法について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、粘弾性体の発熱エネルギーの導出原理について回転体を例にとって説明したのち、ベルト体の走行発熱予測方法および走行抵抗力予測方法について説明する。
まず、粘弾性体が回転体であり、この回転体が面上を回転することによって変形することによって生じる発熱エネルギーについて説明する。
図1(A)は位置を横軸座標とした粘弾性体の応力とひずみの特性をあらわし、(B)はひずみを横軸座標、応力を縦軸座標として応力とひずみのヒステリシスループ特性をあらわす。
図1(A)に示すように、粘弾性体では、応力σに対しひずみεの位相がδだけ遅れる(0<δ<π/2)。
図1(B)に示すように、粘弾性体のヒステリシスループは楕円となり、楕円の面積Aは1サイクル(波形1周期)の変形に際して損失したエネルギーで、この損失したエネルギーは、
A=π・f・g・sinδ……(3)
(ただし、f:応力σの振幅、g:ひずみεの振幅)
であらわされ、エネルギーAは、粘弾性体で生じる発熱エネルギーに相当する。
このように、応力σの振幅fと、ひずみεの振幅gと、位相差δとがわかれば、発熱エネルギーの計算が可能である。
そこで、応力σ、およびひずみεを静的有限要素法による解析により求めるのである。
なお粘弾性材料を含む回転体の発熱エネルギーの特性に関しては、例えば岩柳茂夫「レオロジー」朝倉書店に記載されている。
したがって、ベルト体についても上述と同様の手法によって発熱エネルギーの計算を行うわけであるが、ベルト体は回転体と異なり、1回転の変形という概念を適用することができない。
そこで、本発明においては、ベルト体がその走行方向に間隔をおいて配置された複数の回転ローラーに接触して走行することに着目し、ベルト体を所定長の範囲に区切った単位ベルト体として扱うことにより回転体と同様の手法を用いて発熱エネルギーの予測を行うようにしたものである。
【0008】
まず、本発明方法の対象となるベルト体について説明する。
図2はベルト体10の説明図である。
本実施の形態において、ベルト体10は、ベルトコンベア装置2で使用されるコンベアベルトである。
ベルトコンベア装置2は、例えば、図示しない駆動ローラーと、従動ローラーと、それらローラーの間に一定の間隔をおいて設けられた複数の回転ローラー4とを備え、ベルト体10はそれら前記駆動ローラーと複数の回転ローラー4と従動ローラーとにわたって掛け回されて設けられている。
そして、前記駆動ローラーがモータなどの駆動源によって回転駆動されることによりベルト体10は複数の回転ローラー4上を走行する。
ベルト体10は、その厚さ方向に粘弾性材料を含む層を1層以上含む複数の層が積層されて構成されている。
具体的に説明すると、ベルト体10は、例えば、布製芯体層と、芯体層の両面に設けられたスチールコード層と、両スチールコード層の外側を覆うカバーゴム層とを含んで構成され、あるいは、クッションゴム層と、クッションゴム層の両面に設けられたスチールコード層と、両スチールコード層の外側を覆うカバーゴム層とを含んで構成されている。無論、ベルト体10の構成はこれらに限定されるものではない。
カバーゴム層およびクッションゴム層は、天然ゴムや合成ゴムなどからなるポリマーと、カーボンブラックやシリカなどからなる充填材などから構成され、したがって、カバーゴム層およびクッションゴム層は粘弾性材料で構成されている。また、カバーゴム層およびクッションゴム層を構成する粘弾性材料をコンパウンドともいう。
【0009】
図3(A)は静止状態にあるベルト体10に加わる応力σの分布を示す説明図、(B)は静止状態にあるベルト体10に生じるひずみεの分布を示す説明図である。
図3(A)、(B)において横軸はベルト体10の長手方向(走行方向)の位置pを示し、P0はベルト体10が1つの回転ローラー4の外周面に接触する位置を示している。
ベルト体10が位置P0で回転ローラー4に接触しているため、図3(A)に示すように、ベルト体10に加わる応力σは、位置P0で最大値となり、位置P0からベルト体10の長手方向に離れるにしたがって次第に減少していき、所定距離以上離れると応力σはほぼゼロとなる。
図3(B)に示すように、ベルト体10に加わるひずみεは、位置P0で最大値となり、位置P0からベルト体10の長手方向に離れるにしたがって次第に減少していき、所定距離以上離れると応力σはほぼゼロとなる。
すなわち、ベルト体10が静止した状態では応力σの位相に対するひずみεの位相は遅れを生じていない。
ここで、ベルト体10が走行すると、前述した回転体の場合と同様に、応力σに対してひずみεの位相が遅延し、したがって、応力σとひずみεのヒステリシスループの面積から発熱エネルギーを計算することができる。
ここで、図2に示すように、走行方向において1つの回転ローラー4がベルト体10に接触する接触位置P0を中心とし1つの回転ローラー4の両側に配置された回転ローラー4′、4″に接触しない範囲でかつ走行方向に沿った所定長Lの範囲に位置するベルト体10の部分を単位ベルト体12として扱うことにする。そして、この単位ベルト体12が所定長L走行することを回転体の1回転(1周期)と同様に考えて発熱エネルギーの予測を行う。
なお、所定長Lは、単位ベルト体12を対象に応力σおよびひずみεを考えた場合に、応力σおよびひずみεの1次成分が示す特徴を十分にあらわすに足る寸法であればよい。
したがって、所定長Lを、回転ローラー間の寸法である1スパン、すなわち、基準位置P0の回転ローラー4と隣接する回転ローラー4′(4″)との距離と同じ寸法としてもよいし、1スパンよりも短い寸法としてもよい。なお、所定長Lを1スパンとすれば、1スパン分の発熱エネルギーを予測することができる。
【0010】
単位ベルト体12の発熱エネルギーを計算するにあたっては、応力およびひずみをフーリエ級数展開する。すなわち、図4に示すように、応力σをフーリエ級数展開することにより、1次成分σ1(1波長のsin波)、2次成分σ2(1/2波長のsin波)、3次成分σ3(1/3波長のsin波)、……の和に分解し、ひずみについても同様に1次成分、2次成分、3次成分、……の和に分解する処理を行う。
そして、次数ごとにヒステリシスループの面積を求め、それらの面積の総和に基づいて発熱エネルギーを求める。
【0011】
次に、単位ベルト体12の発熱エネルギーの予測方法の基本原理について説明する。
図5(A1)、(B1)は演算結果から得られた応力の分布(応力の変化特性の曲線)、および、ひずみの分布(ひずみの変化特性の曲線)の例を示す図である。
図5(A2)、(A3)は、(A1)の応力曲線をフーリエ級数展開して得られる1次、2次、…の成分の波形を示す図であり、2次までを示す。
図5(B2)、(B3)は、(B1)のひずみ曲線をフーリエ級数展開して得られる1次、2次、…の成分の波形を示す図であり、2次までを示す。
図6(A)は1次成分の応力波形、(B)は1次成分のひずみ波形、(C)はそれら1次成分の応力波形およびひずみ波形に基づく1次成分のヒステリシスループを示す図である。
図7(A)は2次成分の応力波形、(B)は2次成分のひずみ波形、(C)はそれら2次成分の応力波形およびひずみ波形に基づく2次成分のヒステリシスループを示す図である。
まず、有限要素法により、単位ベルト体12の応力、ひずみの特性の分析を行い、単位ベルト体12の要素ごとに局所座標を参照した応力およびひずみを求める。
この際、各要素について、単位ベルト体12の長さ方向、前記長さと直交する要素幅の方向、および前記長さ方向および幅方向の双方と直交する要素厚さの方向が考慮される。
次いで、単位ベルト体12断面内の一要素の中心における一成分の応力、ひずみを求め、順次、長さ方向に隣接する諸点の応力、ひずみを求め、単位ベルト体12の応力f(p)、およびひずみg(p)を求める。ただし、pは単位ベルト体12の長さ方向の位置を示す。
なお、前記一成分とは、応力、ひずみの全成分(圧縮引っ張り方向で3成分、せん断方向で3成分の合計6成分)のうちの一つの成分を示す。
そして、図5に示すように、応力f(p)、ひずみg(p)をそれぞれ有限次のフーリエ級数に展開し、次数ごとに振幅An、位相Bnを求める。
この場合、フーリエ級数展開を行う次数は、波形の特徴を失わない程度の高次まで取る必要がある。例えば、モデル長(単位長)Lに対して回転ローラー4の外周の接触部の長さがLrであった場合、この長さLrを10〜100分割しうる程度、すなわち、10L/Lr〜100L/Lrの次数が選ばれる。
すなわち、応力とひずみとをそれぞれN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに応力の変化特性の曲線を表す波形とひずみの変化特性の曲線を表す波形とが求められることになる。
【0012】
ひずみg(p)については、図6、図7に示すように、粘弾性材料の損失係数に応ずる位相遅れδを与えた上で、次数ごとにヒステリシスループの面積Snを計算し、それにもとづき次数nと面積Snの積の総和Scを式(4)、式(5)にしたがって求める。ここで、上記の位相遅れδは、粘弾性材料の損失正接tanδで特定されるδに相当する。
Sn=π・Anf・Ang・sin(Bnf−Bng+δ)……(4)
Sc=Σn・Sn ……(5)
【0013】
応力、ひずみの全成分について以上の過程を反復し、成分ごとの総和Scの総和を求めこれを発熱エネルギー密度とし、当該発熱エネルギー密度を求めた要素全体の体積Vとの積Ediを、
【0014】
【数1】
として求め、このEdiをその位置における発熱エネルギーとする。
次いで、単位ベルト体12全体について以上の過程を反復実行し、単位ベルト体12全体の発熱エネルギーEd、すなわち単位ベルト体12が所定長L走行したときの発熱エネルギーEdを求める。
また、この発熱エネルギーEdから走行抵抗力を算出することができる。走行抵抗力は、ベルト体が複数の回転ローラー4上を走行する際に、回転ローラー4に対してベルト体12から前記走行方向と逆向きに作用する力である。
発熱エネルギーEdは、実際には単位ベルト体12が所定長Lを通過した際に回転ローラー4等によって受ける変形によって起こると考えられ、一方、単位ベルト体12が回転ローラー4上を通過する際に回転ローラー4が受ける走行方向と逆向きの力(反力)が走行抵抗力となる。
この走行抵抗力には、単位ベルト体12と回転ローラー4間の粘着や摩擦、あるいは粘弾性、ローラー上を乗り越える積荷の位置エネルギー変化などの影響が含まれる。
このうち、粘弾性に起因する走行抵抗力をFvとすると、この抵抗力が所定長Lに渡って作用した場合の仕事量は、Fv・Lとなる。
この仕事量は、注目する区間である所定長Lにおいて単位ベルト体12が変形を受けたときの粘弾性によるエネルギー損失(熱として散逸する)と等価と考えられるので、
Fv・L=Ed……(7)
となり、
即ち粘弾性に起因する走行抵抗力Fvは所定長Lにおいて発生する損失エネルギーEd(発熱エネルギー)を所定長Lで割ることにより、
Fv=Ed/L……(8)
として求められる。
なお、実際に回転ローラー4上で検出される抵抗力には、粘弾性以外の要素が考えられるため、上記の式によって求められた走行抵抗力は実際に生じる走行抵抗力よりも低い。
【0015】
ここで損失正接tanδの周波数依存性および温度依存性について説明する。
損失正接tanδは粘弾性体の応力およびひずみの周波数によって変化する周波数依存性を有している。
すなわち、粘弾性体の応力およびひずみを表す曲線が正弦波であったとすると、損失正接tanδは、正弦波の周波数が高くなるほど大きな値となる。
すなわち、フーリエ次数が高次になるほどtanδが高くなり、したがって、ヒステリシスループの面積Snが大きくなり、発熱エネルギーが増大する。
また、損失正接tanδは粘弾性体の温度によって変化する温度依存性を有している。
周波数や温度に応じて変化するtanδの変化度合いは、粘弾性体を構成する材料によって異なるものであり、言い換えると、コンパウンドが異なることでことなり、言い換えると、tanδの周波数特性および温度特性はコンパウンドによって異なる。
【0016】
粘弾性体の損失正接tanδは、例えば、市販されている動的粘弾性物性計測装置を用いて実測することができる。
具体的には、動的粘弾性物性計測装置によって粘弾性体の試験片に定常的に正弦波状の応力とひずみを与えることにより、応力とひずみの位相差δを計測し、この位相差δから損失正接tanδが求められる。
したがって、粘弾性体に与える応力およびひずみの周波数を変えるとともに、粘弾性体の温度を変えて損失正接tanδを求めることにより、tanδの周波数特性および温度特性を示すマスターカーブが得られることになる。
なお、tanδの温度変化に対する変化率が既知あるいは近似式によって得られるならば、特定の温度におけるtanδの周波数特性を測定して1つのマスターカーブを得るとともに、前記1つのマスターカーブを近似式によって表し、該近似式に対して前記温度変化に応じた変化率を用いた演算を行うことにより、温度ごとのマスターカーブを得ることができ、温度ごとにtanδを実測する作業を省くこともできる。
【0017】
図11はベルト体10を構成する弾性材料における損失正接tanδのマスターカーブの一例を示す線図であり、横軸は周波数の対数、縦軸はtanδである。
図11に示すように、温度20度の粘弾性体に対してtanδの周波数特性を実測し、そのデータの座標をプロットし、プロットした座標を結ぶ近似曲線(実線)を表す近似式を従来公知の方法によって求める。
次いで、前記近似式に対して温度変化に応じた変化率を用いた演算を行うことで、例えば、温度0度、10度、15度、25度、30度のそれぞれに対応した近似曲線(近似式)を得ることができ、したがって、温度ごとにtanδのマスターカーブを得ることができる。
この結果、粘弾性体の損失正接tanδの周波数特性および温度特性の双方を示すマスターカーブが得られることになる。
このようなマスターカーブを用いることにより、周波数および温度を特定することでtanδを容易に決定することが可能となる。
【0018】
図8は本発明方法を実行するために使用されるコンピュータ20の構成を示すブロック図である。
コンピュータ20は、CPU22と、不図示のインターフェース回路およびバスラインを介して接続されたROM24、RAM26、ハードディスク装置28、ディスク装置30、キーボード32、マウス34、ディスプレイ36、プリンタ38、入出力インターフェース40などを有している。
ROM24は制御プログラムなどを格納し、RAM26はワーキングエリアを提供するものである。
ハードディスク装置28は本発明方法を実現するためのプログラムを格納している。
ディスク装置30はCDやDVDなどの記録媒体に対してデータの記録および/または再生を行うものである。
キーボード32およびマウス34は、操作者による操作入力を受け付けるものである。
ディスプレイ36はデータを表示出力するものであり、プリンタ38はデータを印刷出力するものであり、ディスプレイ36およびプリンタ38によってデータを出力する。
入出力インターフェース40は、外部機器との間でデータの授受を行うものである。
本実施の形態では、CPU22、キーボード32、マウス34、ディスク装置30、入出力インターフェース34によって入力手段20A(図9)が構成され、CPU22によって処理手段20B(図9)が構成され、CPU22、ディスプレイ36、プリンタ38、ディスク装置30、入出力インターフェース40などによって特許請求の範囲の出力手段20C(図9)が構成されている。
【0019】
図9はコンピュータ20の機能ブロック図である。
図9に示すように、コンピュータ20は、機能的には、入力手段20A、処理手段20B、出力手段20Cを含んで構成されている。
入力手段20Aは、単位ベルト体12の応力、ひずみを有限要素法によって求めるために必要なデータを入力するものであり、それらデータについては後述する。
また、入力手段20Aは、前述したマスターカーブD5も入力する。
処理手段20Bは、入力手段20Aによって入力されたデータに基づいて有限要素法により応力、ひずみを得るとともに、上述した原理に基づいて発熱エネルギーおよび走行抵抗力を算出するものであり、ハードディスク装置28に格納されているプログラムがRAM26にロードされ、CPU22が前記プログラムに基づいて動作することで実現される。
出力手段20Cは、処理手段10Bによる計算結果から構成されるデータを出力するものである。
【0020】
次に、本実施の形態のベルト体の走行発熱予測方法および走行抵抗力予測方法について図10に示すフローチャートを参照して説明する。
まず、単位ベルト体12が静止した状態で、単位ベルト体12が1つの回転ローラー4から受ける応力と、応力に応じて単位ベルト体12に生じるひずみとを、入力手段20Aを介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する(ステップS10)。
具体的には、図9に示すように、前記解析用データとして、単位ベルト体12の形状データD1、材料データD2、境界データD3、および荷重データD4などが入力手段20Aを介して入力され、処理手段20Bは、それら解析用データに基づき、局所座標を参照した応力、ひずみに変換するように演算を行うことにより、単位ベルト体12断面内の一点(前記一要素の中心)における応力、ひずみを求める。
これにより、単位ベルト体12の長手方向に沿って隣接する諸点の応力、ひずみを順次求め、これにより単位長L分の応力、ひずみの変化特性の曲線である応力曲線、ひずみ曲線をそれぞれ求める。
【0021】
次に、応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める(ステップS12:波形生成ステップ)。
【0022】
次に、特定された単位ベルト体12の走行速度に基づいて応力またはひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを入力手段20Aを介して入力されたマスターカーブD5から決定する(ステップS13:損失正接決定ステップ)。
具体的には、単位ベルト体12の走行速度をVとし、1次の応力またはひずみを表す波形の周波数をF1とすると、
F1=V/L ……(9)
以下、N次の応力またはひずみを表す波形の周波数をFNとすると、
FN=(V/L)・N……(10)
として求められる。
なお、本実施の形態では、損失正接tanδの決定は、入力手段20Aを介して入力された温度D6(図9)に対応するマスターカーブD5を特定し、該特定したマスターカーブD5を用いて周波数に対応する損失正接tanδを求めることでなされる。
【0023】
次に、フーリエ次数ごとに応力の波形の位相に対して、ひずみの波形の位相を、ステップS13によって決定された粘弾性材料の損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する(ステップS14:遅延ひずみ波形生成ステップ)。
次に、フーリエ次数ごとに応力の波形と遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積Scを求め、該面積Scとフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより面積Scの総和を求める(ステップS16)。
次に、上述したステップS12、S13、S14、S16を応力、ひずみの全成分について実行したか否かを判定する(ステップS18)。この判定結果が否定ならばステップS12に移行し同様の処理を反復して実行する。
ステップS18の判定結果が肯定ならば、成分ごとの総和Scの総和を前記一点におけるエネルギー密度とし、このエネルギー密度と前記一点を含む領域の体積Vとの積Ediを求め、この積Ediを前記断面内の一点を含む領域における発熱エネルギーとして前記領域ごとに求める(ステップS20)。すなわち、ステップS16、S18、S20が特許請求の範囲の発熱エネルギー生成ステップに相当する。
次に、単位ベルト体12全体について上述したステップS12乃至S20の演算を行ったか否かを判定し(ステップS22)、この判定結果が否定ならばステップS12に移行して上述の処理を反復して実行する。
ステップS22の判定結果が肯定ならば、ステップS20で求められた発熱エネルギーの総和を単位ベルト体12全体の発熱エネルギー、すなわち、単位ベルト体12が単位長L走行したときの発熱エネルギーEdとして演算する(ステップS24)。すなわち、ステップS22、S24が特許請求の範囲の走行発熱エネルギー生成ステップに相当する。
次に、発熱エネルギーEdから単位ベルト体12が走行する際に受ける走行抵抗力Fvを前述した式(8)に基づいて演算する(ステップS26:走行抵抗力生成ステップ)。
そして、発熱エネルギーEdおよび走行抵抗力Fvを出力手段20Cから出力する(ステップS28)。
【0024】
以上説明したように本実施の形態によれば、予め粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性および温度特性を示すマスターカーブを作成しておき、特定された単位ベルト体の走行速度に基づいて応力またはひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを、特定された温度に基づいてマスターカーブから求めるようにしたので、粘弾性材料を含むベルト体の発熱エネルギーおよび走行抵抗力を周波数および温度の影響を反映させて正確に予測することができるので、設計の効率化を図る上で有利となる。
なお、本実施の形態では、マスターカーブとして粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性および温度特性の双方を示すものを用いたが、温度特性について考慮する必要が無ければ、マスターカーブとして粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性のみを示すものを用いるようにしてもよい。
【0025】
次に、マスターカーブおよびマスターカーブを用いて求められた走行抵抗力の具体例について説明する。
図12はベルト体10のカバーゴム層およびクッションゴム層を構成する粘弾性材料を実測することにより得られたマスターカーブの一例を示す図である。
図12に示すように、カバーゴム層として使用される3種類の粘弾性材料(図中カバーA、B、Cとして示す)と、クッションゴム層として使用される1種類の粘弾性材料(図中クッションゴムとして示す)との4種類の粘弾性材料のマスターカーブを求めた。
4種類の材料の全てについて、周波数が高くなるにしたがってtanδが増大する傾向を有していることがわかる。
【0026】
図13は本実施の形態による走行抵抗力予測方法によって求められたベルト体10の走行抵抗力の予測結果を示す図である。
本例では、カバーゴム層を構成する材料として前記カバーAを用いたベルト体、前記カバーBを用いたベルト体、前記カバーCを用いたベルト体の3種類のベルト体について温度を変えて走行抵抗力を予測した。なお、走行速度Vは各ベルト体で同一としている。
図13の結果からわかるように、カバーAは温度に拘わらず走行抵抗力が他のカバーB、Cに比較して大きい。
カバーBは温度に拘わらず走行抵抗力の変化が他のカバーA、Cに比べて少ない。
カバーCは高温時の走行抵抗力が低い傾向にある。
このようにマスターカーブとして周波数特性に加えて温度特性を示すものを用いて走行抵抗力を予測することにより、粘弾性材料の温度特性を反映させてベルト体を評価することができる。
なお、第1の実施の形態では、ベルト体10がベルトコンベア装置10に用いられるものである場合について説明したが、本発明のベルト体の走行発熱予測方法および走行抵抗力予測方法は粘弾性材料を含むベルト体に広く適用可能である。
【0027】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、回転体の走行発熱予測方法および転動抵抗予測方法について説明する。
まず、本発明方法の対象となる回転体について説明する。
図14(A)は粘弾性材料を含む回転体30の断面図、(B)は回転体30を回転軸の方向から見た立面図であり、本実施の形態では、回転体30はタイヤである。
【0028】
図15(A)は静止状態にある回転体30に加わる応力σの分布を示す説明図、(B)は静止状態にある回転体30に生じるひずみεの分布を示す説明図である。
図15(A)、(B)において横軸は回転体30の円周方向の角度である位置θを示し、θ=180度は回転体30が接地面上に接触する位置を示している。
回転体30がθ=180度の位置で接地面に接触しているため、図15(A)に示すように、回転体30に加わる応力σは、θ=180度で最大値となり、θ=180度から回転体30の円周方向に離れるにしたがって次第に減少していき、θ=0度および360度で応力σはほぼゼロとなる。
図15(B)に示すように、回転体30に加わるひずみεは、θ=180度で最大値となり、θ=180度から回転体30の円周方向に離れるにしたがって次第に減少していき、θ=0度および360度でひずみεはほぼゼロとなる。
すなわち、回転体30が静止した状態では応力σの位相に対するひずみεの位相は遅れを生じていない。
ここで、回転体30が走行すると、応力σに対してひずみεの位相が遅延し、したがって、応力σとひずみεのヒステリシスループの面積から発熱エネルギーを計算することができる。
【0029】
回転体30の発熱エネルギーを計算するにあたっては、応力およびひずみをフーリエ級数展開する。すなわち、応力σをフーリエ級数展開することにより、1次成分σ1(1波長のsin波)、2次成分σ2(1/2波長のsin波)、3次成分σ3(1/3波長のsin波)、……の和に分解し、ひずみについても同様に1次成分、2次成分、3次成分、……の和に分解する処理を行う。
そして、次数ごとにヒステリシスループの面積を求め、それらの面積の総和に基づいて発熱エネルギーを求める。
【0030】
次に、回転体30の発熱エネルギーの予測方法の基本原理について説明する。
図16(A1)、(B1)は演算結果から得られた応力の分布(応力の変化特性の曲線)、および、ひずみの分布(ひずみの変化特性の曲線)の例を示す図である。
図16(A2)、(A3)は、(A1)の応力曲線をフーリエ級数展開して得られる1次、2次、…の成分の波形を示す図であり、2次までを示す。
図16(B2)、(B3)は、(B1)のひずみ曲線をフーリエ級数展開して得られる1次、2次、…の成分の波形を示す図であり、2次までを示す。
図17(A)は1次成分の応力波形、(B)は1次成分のひずみ波形、(C)はそれら1次成分の応力波形およびひずみ波形に基づく1次成分のヒステリシスループを示す図である。
図18(A)は2次成分の応力波形、(B)は2次成分のひずみ波形、(C)はそれら2次成分の応力波形およびひずみ波形に基づく2次成分のヒステリシスループを示す図である。
まず、有限要素法により、回転体30の応力、ひずみの特性の分析を行い、回転体30の要素ごとに局所座標を参照した応力およびひずみを求める。
この際、図14(A)に示すように、各要素について、回転体30の各要素32について、回転体周方向r、要素幅の方向s、および要素厚さの方向tの3つが考慮される。
次いで、回転体30断面内の一要素の中心における一成分の応力、ひずみを求め、順次、円周方向に隣接する諸点の応力、ひずみを求め、回転体30の応力f(θ)、およびひずみg(θ)を求める。
そして、図16に示すように、応力f(θ)、ひずみg(θ)をそれぞれ有限次のフーリエ級数に展開し、次数ごとに振幅An、位相Bnを求める。
すなわち、応力とひずみとをそれぞれN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに応力の変化特性の曲線を表す波形とひずみの変化特性の曲線を表す波形とが求められることになる。
【0031】
ひずみg(θ)については、図17、図18に示すように、粘弾性材料の損失係数に応ずる位相遅れδを与えた上で、次数ごとにヒステリシスループの面積Snを計算し、それにもとづき次数nと面積Snの積の総和Scを式(11)、式(12)にしたがって求める。ここで、上記の位相遅れδは、粘弾性材料の損失正接tanδで特定されるδに相当する。
Sn=π・Anf・Ang・sin(Bnf−Bng+δ)……(11)
Sc=Σn・Sn ……(12)
【0032】
応力、ひずみの全成分について以上の過程を反復し、成分ごとの総和Scの総和を求めこれを発熱エネルギー密度とし、当該発熱エネルギー密度を求めた要素全体の体積Vとの積Ediを、
【0033】
【数2】
として求め、このEdiをその位置における発熱エネルギーとする。
次いで、回転体30全体について以上の過程を反復実行し、回転体30全体の発熱エネルギーEd、すなわち回転体30が一回転走行したときの発熱エネルギーEdを求める。
また、この発熱エネルギーEdから転動抵抗を算出することができる。
転動抵抗=タイヤ発熱/走行距離によって求められる。
すなわち、荷重を負荷していない回転体30の外半径、および荷重を負荷したときの負荷半径を、有限要素法により演算しその結果を用いて回転体30が一回転したときの走行距離を導出し、回転体30一回転時の走行発熱エネルギーと回転体30が一回転したときの走行距離にもとづき回転体30の転動抵抗を導出すればよい。
【0034】
なお、第2の実施の形態においても、回転体30に含まれる粘弾性材料の損失正接tanδが粘弾性体の応力およびひずみの周波数によって変化する周波数依存性を有していることは第1の実施の形態と同様であり、第1の実施の形態と同様の手順により粘弾性体の損失正接tanδの周波数特性および温度特性の双方を示すマスターカーブD5(図19)が得られる。
そして、このようなマスターカーブを用いることにより、周波数および温度を特定することでtanδを容易に決定することが可能となる点は第1の実施の形態と同様である。
【0035】
第2の実施の形態において使用するコンピュータ20は第1の実施の形態の場合と同様に構成されている。
図19は第2の実施の形態におけるコンピュータ20の機能ブロック図であり、以下の図面において第1の実施の形態と同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
入力手段20Aは、回転体30の応力、ひずみを有限要素法によって求めるために必要なデータを入力するものであり、それらデータについては後述する。
また、入力手段20Aは、前述したマスターカーブD5も入力する。
処理手段20Bは、入力手段20Aによって入力されたデータに基づいて有限要素法により応力、ひずみを得るとともに、上述した原理に基づいて発熱エネルギーおよび転動抵抗を算出するものであり、ハードディスク装置28に格納されているプログラムがRAM26にロードされ、CPU22が前記プログラムに基づいて動作することで実現される。
出力手段20Cは、処理手段10Bによる計算結果から構成されるデータを出力するものである。
【0036】
次に、本実施の形態の回転体の走行発熱予測方法および転動抵抗予測方法について図20に示すフローチャートを参照して説明する。
まず、回転体30が静止した状態で、回転体30が接地面から受ける応力と、応力に応じて回転体30に生じるひずみとを、入力手段20Aを介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する(ステップS40)。
具体的には、図19に示すように、前記解析用データとして、回転体30の形状データD1、材料データD2、境界データD3、および荷重データD4などが入力手段20Aを介して入力され、処理手段20Bは、それら解析用データに基づき、局所座標を参照した応力、ひずみに変換するように演算を行うことにより、回転体30断面内の一点(前記一要素の中心)における応力、ひずみを求める。
これにより、回転体30の円周方向に沿って隣接する諸点の応力、ひずみを順次求め、これにより回転体30の一周分の応力、ひずみの変化特性の曲線である応力曲線、ひずみ曲線をそれぞれ求める。
【0037】
次に、応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップ(ステップS42:波形生成ステップ)。
【0038】
次に、特定された回転体30の走行速度に基づいて応力またはひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを入力手段20Aを介して入力されたマスターカーブD5から決定する(ステップS44:損失正接決定ステップ)。
具体的には、回転体30の走行速度をVとし、1次の応力またはひずみを表す波形の周波数をF1とすると、
F1=V/L ……(14)
以下、N次の応力またはひずみを表す波形の周波数をFNとすると、
FN=(V/L)・N……(15)
として求められる。
なお、本実施の形態では、損失正接tanδの決定は、入力手段20Aを介して入力された温度D6(図19)に対応するマスターカーブD5を特定し、該特定したマスターカーブD5を用いて周波数に対応する損失正接tanδを求めることでなされる。
【0039】
次に、フーリエ次数ごとに応力の波形の位相に対して、ひずみの波形の位相を、ステップS44によって決定された粘弾性材料の損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する(ステップS46:遅延ひずみ波形生成ステップ)。
次に、フーリエ次数ごとに応力の波形と遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積Scを求め、該面積Scとフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより面積Scの総和を求める(ステップS48)。
次に、上述したステップS42、S44、S46、S48を応力、ひずみの全成分について実行したか否かを判定する(ステップS50)。この判定結果が否定ならばステップS42に移行し同様の処理を反復して実行する。
ステップS50の判定結果が肯定ならば、成分ごとの総和Scの総和を前記一点におけるエネルギー密度とし、このエネルギー密度と前記一点を含む領域の体積Vとの積Ediを求め、この積Ediを前記断面内の一点を含む領域における発熱エネルギーとして前記領域ごとに求める(ステップS52)。すなわち、ステップS48、S50、S52が特許請求の範囲の発熱エネルギー生成ステップに相当する。
次に、回転体30全体について上述したステップS42乃至S52の演算を行ったか否かを判定し(ステップS54)、この判定結果が否定ならばステップS42に移行して上述の処理を反復して実行する。
ステップS54の判定結果が肯定ならば、ステップS52で求められた発熱エネルギーの総和を回転体30全体の発熱エネルギー、すなわち、回転体30が一回転走行したときの発熱エネルギーEdとして演算する(ステップS56)。すなわち、ステップS54、S56が特許請求の範囲の走行発熱エネルギー生成ステップに相当する。
次に、発熱エネルギーEdから回転体30が走行する際に受ける転動抵抗を前述したように、回転体30一回転時の走行発熱エネルギーと回転体30が一回転したときの走行距離にもとづき回転体30の転動抵抗を導出する(ステップS58:転動抵抗生成ステップ)。
そして、発熱エネルギーEdおよび転動抵抗を出力手段20Cから出力する(ステップS60)。
【0040】
以上説明したように第2の実施の形態によれば、予め粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性および温度特性を示すマスターカーブを作成しておき、特定された回転体の走行速度に基づいて応力またはひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを、特定された温度に基づいてマスターカーブから求めるようにしたので、粘弾性材料を含む回転体の発熱エネルギーおよび転動抵抗を周波数および温度の影響を反映させて正確に予測することができるので、設計の効率化を図る上で有利となる。
なお、第2の実施の形態においても、マスターカーブとして粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性および温度特性の双方を示すものを用いたが、温度特性について考慮する必要が無ければ、マスターカーブとして粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性のみを示すものを用いるようにしてもよいことは無論である。
【0041】
なお、本実施の形態では、回転体30がタイヤである場合について説明したが、本発明は粘弾性材料を含む回転体に広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(A)は位置を横軸座標とした粘弾性体の応力とひずみの特性をあらわし、(B)はひずみを横軸座標、応力を縦軸座標として応力とひずみのヒステリシスループ特性をあらわす図である。
【図2】ベルト体10の説明図である。
【図3】(A)は静止状態にあるベルト体10に加わる応力σの分布を示す説明図、(B)は静止状態にあるベルト体10に生じるひずみεの分布を示す説明図である。
【図4】回転体30の応力曲線を1次、2次、3次……の成分に分解することを説明する図である。
【図5】(A1)、(B1)は演算結果から得られた応力の分布(応力の変化特性の曲線)、および、ひずみの分布(ひずみの変化特性の曲線)の例を示す図、(A2)、(A3)は、(A1)の応力曲線をフーリエ級数展開して得られる1次、2次、…の成分の波形を示す図、(B2)、(B3)は、(B1)のひずみ曲線をフーリエ級数展開して得られる1次、2次、…の成分の波形を示す図である。
【図6】(A)は1次成分の応力波形、(B)は1次成分のひずみ波形、(C)はそれら1次成分の応力波形およびひずみ波形に基づく1次成分のヒステリシスループを示す図である。
【図7】(A)は2次成分の応力波形、(B)は2次成分のひずみ波形、(C)はそれら2次成分の応力波形およびひずみ波形に基づく2次成分のヒステリシスループを示す図である。
【図8】第1の実施の形態におけるコンピュータ20の構成を示すブロック図である。
【図9】コンピュータ20の機能ブロック図である。
【図10】第1の実施の形態のベルト体の走行発熱予測方法および走行抵抗力予測方法を示すフローチャートチャートである。
【図11】ベルト体10を構成する弾性材料における損失正接tanδのマスターカーブの一例を示す線図である。
【図12】ベルト体10のカバーゴム層およびクッションゴム層を構成する粘弾性材料を実測することにより得られたマスターカーブの一例を示す図である。
【図13】第1の実施の形態による走行抵抗力予測方法によって求められたベルト体10の走行抵抗力の予測結果を示す図である。
【図14】(A)は粘弾性材料を含む回転体30の断面図、(B)は回転体30を回転軸の方向から見た立面図である。
【図15】(A)は静止状態にある回転体30に加わる応力σの分布を示す説明図、(B)は静止状態にある回転体30に生じるひずみεの分布を示す説明図である。
【図16】(A1)、(B1)は演算結果から得られた応力の分布(応力の変化特性の曲線)、および、ひずみの分布(ひずみの変化特性の曲線)の例を示す図、(A2)、(A3)は、(A1)の応力曲線をフーリエ級数展開して得られる1次、2次、…の成分の波形を示す図、(B2)、(B3)は、(B1)のひずみ曲線をフーリエ級数展開して得られる1次、2次、…の成分の波形を示す図である。
【図17】1次成分の応力波形、(B)は1次成分のひずみ波形、(C)はそれら1次成分の応力波形およびひずみ波形に基づく1次成分のヒステリシスループを示す図である。
【図18】(A)は2次成分の応力波形、(B)は2次成分のひずみ波形、(C)はそれら2次成分の応力波形およびひずみ波形に基づく2次成分のヒステリシスループを示す図である。
【図19】第2の実施の形態におけるコンピュータ20の機能ブロック図である。
【図20】第2の実施の形態の回転体の走行発熱予測方法および転動抵抗予測方法を示すフローチャートチャートである。
【符号の説明】
【0043】
10……ベルト体、12……単位ベルト体、20……コンピュータ、30……回転体。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト体の走行発熱予測方法および走行抵抗力予測方法並びに回転体の走行発熱予測方法および転動抵抗予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車タイヤなどの粘弾性材料を含む回転体の発熱エネルギーを予測し、この発熱エネルギーから回転体の転動抵抗を予測する方法が知られている(日本ゴム協会誌第56巻第543頁〜第551頁、1983年)。
上記方法は、下記(1)式、(2)式で示される関係式に基づいて力学的解析または有限要素法(Finite Element Method)に代表される数値解析によりひずみエネルギーを求め、タイヤ発熱を予測し、これを走行距離で除算することで転動抵抗を予測するものである。
タイヤ発熱=ひずみエネルギー×材料の損失係数……(1)
タイヤ転動抵抗=タイヤ発熱÷走行距離 ……(2)
【0003】
前記従来方法において力学的解析を用いた場合には、タイヤの部位ごとに異なる応力、ひずみ、またはひずみエネルギーの詳細な結果を得ることができない不利がある。
また有限要素法には静解析と動解析があるが、静解析は、解析に要する演算時間が小であるが、材料の粘弾性の効果を考慮することができない不利があり、動解析は、材料の粘弾性を考慮することができるが、解析に要する演算時間が長いため実用性に欠ける不利がある。
また、ゴムなどの粘弾性体に周期的に変化する応力を与えると、発生するひずみとの間に位相差が生じ、応力とのひずみの変化により規定されるヒステリシスループの面積は変形による発熱、すなわち変形により失われる損失エネルギーに相当する。
しかし前記静解析では粘弾性の効果を考慮することができないから、ヒステリシスループの面積から発熱を求めることができないという問題がある。
そこで、前記静解析を用いるにも拘わらず、回転体の発熱エネルギーデータを導出する方法が提案されている(特許文献1参照)。
この方法では、回転体一周分の応力、ひずみの有限次数のフーリエ級数展開の演算を行いフーリエ次数ごとに変化特性の曲線の振幅、位相を演算し、材料の損失係数に応じた位相遅れをひずみ値に与えてのフーリエ次数ごとのヒステリシスループの面積の演算にもとづきフーリエ次数とヒステリシスループ面積の積の総和を導出し、一連の演算過程を応力、ひずみの全成分について反復実行し成分ごとの総和を演算するものである。
【特許文献1】特許第3969821号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、粘弾性材料の損失係数(損失正接tanδ)は、応力およびひずみを表す正弦波形の周波数や粘弾性材料の温度に依存して変化するものであることから、それら周波数や温度を考慮することが正確な予測結果を得る上で重要なものとなる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、粘弾性材料を含む回転体やベルト体の発熱エネルギーあるいは走行抵抗力をより正確に予測する上で有利なベルト体の走行発熱予測方法および走行抵抗力予測方法並びに回転体の走行発熱予測方法および転動抵抗予測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明は、粘弾性材料を含むベルト体が複数の回転ローラー上を走行する際に、前記ベルト体から発生する発熱を、コンピュータを用いて予測するベルト体の走行発熱予測方法であって、前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、前記走行方向において1つの回転ローラーが前記ベルト体に接触する接触位置を中心とし前記1つの回転ローラーの両側に配置された回転ローラーに接触しない範囲でかつ前記走行方向に沿った所定長の範囲に位置する前記ベルト体の部分を単位ベルト体とし、予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性を示す損失正接tanδのマスターカーブを作成しておき、前記処理手段が、前記単位ベルト体が静止した状態で、前記単位ベルト体が前記1つの回転ローラーから受ける応力と、前記応力に応じて前記単位ベルト体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、特定された前記単位ベルト体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記単位ベルト体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記単位ベルト体の全体について反復実行することにより前記単位ベルト体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、前記走行発熱エネルギーを前記出力手段を介して出力する出力ステップとを含むことを特徴とする。
また本発明は、粘弾性材料を含むベルト体が複数の回転ローラー上を走行する際に、前記ベルト体から発生する発熱を、コンピュータを用いて予測するベルト体の走行発熱予測方法であって、前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、前記走行方向において1つの回転ローラーが前記ベルト体に接触する接触位置を中心とし前記1つの回転ローラーの両側に配置された回転ローラーに接触しない範囲でかつ前記走行方向に沿った所定長の範囲に位置する前記ベルト体の部分を単位ベルト体とし、予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性および温度特性を示すマスターカーブを作成しておき、前記処理手段が、前記単位ベルト体が静止した状態で、前記単位ベルト体が前記1つの回転ローラーから受ける応力と、前記応力に応じて前記単位ベルト体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、特定された前記単位ベルト体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを、特定された温度に基づいて前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記単位ベルト体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記単位ベルト体の全体について反復実行することにより前記単位ベルト体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、前記走行発熱エネルギーを前記出力手段を介して出力する出力ステップとを含むことを特徴とする。
また本発明は、粘弾性材料を含むベルト体が複数の回転ローラー上を走行する際に、前記回転ローラーに対して前記ベルト体から前記走行方向と逆向きに作用する力である走行抵抗力を、コンピュータを用いて予測するベルト体の走行抵抗力予測方法であって、前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、前記走行方向において1つの回転ローラーが前記ベルト体に接触する接触位置を中心とし前記1つの回転ローラーの両側に配置された回転ローラーに接触しない範囲でかつ前記走行方向に沿った所定長の範囲に位置する前記ベルト体の部分を単位ベルト体とし、予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性を示す損失正接tanδのマスターカーブを作成しておき、前記処理手段が、前記単位ベルト体が静止した状態で、前記単位ベルト体が前記1つの回転ローラーから受ける応力と、前記応力に応じて前記単位ベルト体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、特定された前記単位ベルト体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記単位ベルト体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記単位ベルト体の全体について反復実行することにより前記単位ベルト体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、前記走行発熱エネルギーと前記所定長との積によって前記走行抵抗力を生成する走行抵抗力生成ステップと、前記走行抵抗力を前記出力手段を介して出力する出力ステップとを含むことを特徴とする。
また本発明は、粘弾性材料を含むベルト体が複数の回転ローラー上を走行する際に、前記回転ローラーに対して前記ベルト体から前記走行方向と逆向きに作用する力である走行抵抗力を、コンピュータを用いて予測するベルト体の走行抵抗力予測方法であって、前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、前記走行方向において1つの回転ローラーが前記ベルト体に接触する接触位置を中心とし前記1つの回転ローラーの両側に配置された回転ローラーに接触しない範囲でかつ前記走行方向に沿った所定長の範囲に位置する前記ベルト体の部分を単位ベルト体とし、予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性および温度特性を示すマスターカーブを作成しておき、前記処理手段が、前記単位ベルト体が静止した状態で、前記単位ベルト体が前記1つの回転ローラーから受ける応力と、前記応力に応じて前記単位ベルト体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、特定された前記単位ベルト体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを、特定された温度に基づいて前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記単位ベルト体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記単位ベルト体の全体について反復実行することにより前記単位ベルト体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、前記走行発熱エネルギーと前記所定長との積によって前記走行抵抗力を生成する走行抵抗力生成ステップと、前記走行抵抗力を前記出力手段を介して出力する出力ステップとを含むことを特徴とする。
また本発明は、粘弾性材料を含む回転体が接地面上を走行する際に、前記回転体から発生する発熱を、コンピュータを用いて予測する回転体の走行発熱予測方法であって、前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性を示す損失正接tanδのマスターカーブを作成しておき、前記処理手段が、前記回転体が静止した状態で、前記回転体が前記接地面から受ける応力と、前記応力に応じて前記回転体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、特定された前記回転体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記回転体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記回転体の全体について反復実行することにより前記回転体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、前記走行発熱エネルギーを前記出力手段を介して出力する出力ステップとを含むことを特徴とする。
また本発明は、粘弾性材料を含む回転体が接地面上を走行する際に、前記回転体から発生する発熱を、コンピュータを用いて予測する回転体の走行発熱予測方法であって、前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性および温度特性を示すマスターカーブを作成しておき、前記処理手段が、前記回転体が静止した状態で、前記回転体が前記接地面から受ける応力と、前記応力に応じて前記回転体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、特定された前記単位ベルト体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを、特定された温度に基づいて前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記回転体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記回転体の全体について反復実行することにより前記回転体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、前記走行発熱エネルギーを前記出力手段を介して出力する出力ステップとを含むことを特徴とする。
また本発明は、粘弾性材料を含む回転体が複数の接地面上を走行する際に、前記回転体に作用する転動抵抗を、コンピュータを用いて予測する回転体の転動抵抗予測方法であって、前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性を示す損失正接tanδのマスターカーブを作成しておき、前記処理手段が、前記回転体が静止した状態で、前記回転体が前記接地面から受ける応力と、前記応力に応じて前記回転体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、特定された前記回転体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記回転体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記回転体の全体について反復実行することにより前記回転体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、荷重を負荷していない前記回転体の外半径、および荷重を負荷したときの負荷半径を、有限要素法により演算しその結果を用いて前記回転体が一回転したときの走行距離を導出し、前記走行発熱エネルギー生成ステップで生成された前記回転体一回転時の前記走行発熱エネルギーと前記回転体が一回転したときの走行距離にもとづき前記回転体の転動抵抗を導出する転動抵抗生成ステップと、前記走行抵抗力を前記出力手段を介して出力する出力ステップと含むことを特徴とする。
また本発明は、粘弾性材料を含む回転体が複数の接地面上を走行する際に、前記回転体に作用する転動抵抗を、コンピュータを用いて予測する回転体の転動抵抗予測方法であって、前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性および温度特性を示すマスターカーブを作成しておき、前記処理手段が、前記回転体が静止した状態で、前記回転体が前記接地面から受ける応力と、前記応力に応じて前記回転体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、特定された前記単位ベルト体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを、特定された温度に基づいて前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記回転体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記回転体の全体について反復実行することにより前記回転体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、荷重を負荷していない前記回転体の外半径、および荷重を負荷したときの負荷半径を、有限要素法により演算しその結果を用いて前記回転体が一回転したときの走行距離を導出し、前記走行発熱エネルギー生成ステップで生成された前記回転体一回転時の前記走行発熱エネルギーと前記回転体が一回転したときの走行距離にもとづき前記回転体の転動抵抗を導出する転動抵抗生成ステップと、前記走行抵抗力を前記出力手段を介して出力する出力ステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、予め粘弾性材料の損失正接tanδのマスターカーブを作成しておき、周波数や温度に基づいてマスターカーブから求めた損失正接tanδを用いてベルト体の発熱エネルギーおよび走行抵抗力あるいは回転体の発熱エネルギーや転動抵抗を求めるようにしたので、周波数や温度の影響を反映させた正確な予測結果を得る上で有利となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明の実施の形態によるベルト体の走行発熱予測方法および走行抵抗力予測方法並びに回転体の走行発熱予測方法および転動抵抗予測方法について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、粘弾性体の発熱エネルギーの導出原理について回転体を例にとって説明したのち、ベルト体の走行発熱予測方法および走行抵抗力予測方法について説明する。
まず、粘弾性体が回転体であり、この回転体が面上を回転することによって変形することによって生じる発熱エネルギーについて説明する。
図1(A)は位置を横軸座標とした粘弾性体の応力とひずみの特性をあらわし、(B)はひずみを横軸座標、応力を縦軸座標として応力とひずみのヒステリシスループ特性をあらわす。
図1(A)に示すように、粘弾性体では、応力σに対しひずみεの位相がδだけ遅れる(0<δ<π/2)。
図1(B)に示すように、粘弾性体のヒステリシスループは楕円となり、楕円の面積Aは1サイクル(波形1周期)の変形に際して損失したエネルギーで、この損失したエネルギーは、
A=π・f・g・sinδ……(3)
(ただし、f:応力σの振幅、g:ひずみεの振幅)
であらわされ、エネルギーAは、粘弾性体で生じる発熱エネルギーに相当する。
このように、応力σの振幅fと、ひずみεの振幅gと、位相差δとがわかれば、発熱エネルギーの計算が可能である。
そこで、応力σ、およびひずみεを静的有限要素法による解析により求めるのである。
なお粘弾性材料を含む回転体の発熱エネルギーの特性に関しては、例えば岩柳茂夫「レオロジー」朝倉書店に記載されている。
したがって、ベルト体についても上述と同様の手法によって発熱エネルギーの計算を行うわけであるが、ベルト体は回転体と異なり、1回転の変形という概念を適用することができない。
そこで、本発明においては、ベルト体がその走行方向に間隔をおいて配置された複数の回転ローラーに接触して走行することに着目し、ベルト体を所定長の範囲に区切った単位ベルト体として扱うことにより回転体と同様の手法を用いて発熱エネルギーの予測を行うようにしたものである。
【0008】
まず、本発明方法の対象となるベルト体について説明する。
図2はベルト体10の説明図である。
本実施の形態において、ベルト体10は、ベルトコンベア装置2で使用されるコンベアベルトである。
ベルトコンベア装置2は、例えば、図示しない駆動ローラーと、従動ローラーと、それらローラーの間に一定の間隔をおいて設けられた複数の回転ローラー4とを備え、ベルト体10はそれら前記駆動ローラーと複数の回転ローラー4と従動ローラーとにわたって掛け回されて設けられている。
そして、前記駆動ローラーがモータなどの駆動源によって回転駆動されることによりベルト体10は複数の回転ローラー4上を走行する。
ベルト体10は、その厚さ方向に粘弾性材料を含む層を1層以上含む複数の層が積層されて構成されている。
具体的に説明すると、ベルト体10は、例えば、布製芯体層と、芯体層の両面に設けられたスチールコード層と、両スチールコード層の外側を覆うカバーゴム層とを含んで構成され、あるいは、クッションゴム層と、クッションゴム層の両面に設けられたスチールコード層と、両スチールコード層の外側を覆うカバーゴム層とを含んで構成されている。無論、ベルト体10の構成はこれらに限定されるものではない。
カバーゴム層およびクッションゴム層は、天然ゴムや合成ゴムなどからなるポリマーと、カーボンブラックやシリカなどからなる充填材などから構成され、したがって、カバーゴム層およびクッションゴム層は粘弾性材料で構成されている。また、カバーゴム層およびクッションゴム層を構成する粘弾性材料をコンパウンドともいう。
【0009】
図3(A)は静止状態にあるベルト体10に加わる応力σの分布を示す説明図、(B)は静止状態にあるベルト体10に生じるひずみεの分布を示す説明図である。
図3(A)、(B)において横軸はベルト体10の長手方向(走行方向)の位置pを示し、P0はベルト体10が1つの回転ローラー4の外周面に接触する位置を示している。
ベルト体10が位置P0で回転ローラー4に接触しているため、図3(A)に示すように、ベルト体10に加わる応力σは、位置P0で最大値となり、位置P0からベルト体10の長手方向に離れるにしたがって次第に減少していき、所定距離以上離れると応力σはほぼゼロとなる。
図3(B)に示すように、ベルト体10に加わるひずみεは、位置P0で最大値となり、位置P0からベルト体10の長手方向に離れるにしたがって次第に減少していき、所定距離以上離れると応力σはほぼゼロとなる。
すなわち、ベルト体10が静止した状態では応力σの位相に対するひずみεの位相は遅れを生じていない。
ここで、ベルト体10が走行すると、前述した回転体の場合と同様に、応力σに対してひずみεの位相が遅延し、したがって、応力σとひずみεのヒステリシスループの面積から発熱エネルギーを計算することができる。
ここで、図2に示すように、走行方向において1つの回転ローラー4がベルト体10に接触する接触位置P0を中心とし1つの回転ローラー4の両側に配置された回転ローラー4′、4″に接触しない範囲でかつ走行方向に沿った所定長Lの範囲に位置するベルト体10の部分を単位ベルト体12として扱うことにする。そして、この単位ベルト体12が所定長L走行することを回転体の1回転(1周期)と同様に考えて発熱エネルギーの予測を行う。
なお、所定長Lは、単位ベルト体12を対象に応力σおよびひずみεを考えた場合に、応力σおよびひずみεの1次成分が示す特徴を十分にあらわすに足る寸法であればよい。
したがって、所定長Lを、回転ローラー間の寸法である1スパン、すなわち、基準位置P0の回転ローラー4と隣接する回転ローラー4′(4″)との距離と同じ寸法としてもよいし、1スパンよりも短い寸法としてもよい。なお、所定長Lを1スパンとすれば、1スパン分の発熱エネルギーを予測することができる。
【0010】
単位ベルト体12の発熱エネルギーを計算するにあたっては、応力およびひずみをフーリエ級数展開する。すなわち、図4に示すように、応力σをフーリエ級数展開することにより、1次成分σ1(1波長のsin波)、2次成分σ2(1/2波長のsin波)、3次成分σ3(1/3波長のsin波)、……の和に分解し、ひずみについても同様に1次成分、2次成分、3次成分、……の和に分解する処理を行う。
そして、次数ごとにヒステリシスループの面積を求め、それらの面積の総和に基づいて発熱エネルギーを求める。
【0011】
次に、単位ベルト体12の発熱エネルギーの予測方法の基本原理について説明する。
図5(A1)、(B1)は演算結果から得られた応力の分布(応力の変化特性の曲線)、および、ひずみの分布(ひずみの変化特性の曲線)の例を示す図である。
図5(A2)、(A3)は、(A1)の応力曲線をフーリエ級数展開して得られる1次、2次、…の成分の波形を示す図であり、2次までを示す。
図5(B2)、(B3)は、(B1)のひずみ曲線をフーリエ級数展開して得られる1次、2次、…の成分の波形を示す図であり、2次までを示す。
図6(A)は1次成分の応力波形、(B)は1次成分のひずみ波形、(C)はそれら1次成分の応力波形およびひずみ波形に基づく1次成分のヒステリシスループを示す図である。
図7(A)は2次成分の応力波形、(B)は2次成分のひずみ波形、(C)はそれら2次成分の応力波形およびひずみ波形に基づく2次成分のヒステリシスループを示す図である。
まず、有限要素法により、単位ベルト体12の応力、ひずみの特性の分析を行い、単位ベルト体12の要素ごとに局所座標を参照した応力およびひずみを求める。
この際、各要素について、単位ベルト体12の長さ方向、前記長さと直交する要素幅の方向、および前記長さ方向および幅方向の双方と直交する要素厚さの方向が考慮される。
次いで、単位ベルト体12断面内の一要素の中心における一成分の応力、ひずみを求め、順次、長さ方向に隣接する諸点の応力、ひずみを求め、単位ベルト体12の応力f(p)、およびひずみg(p)を求める。ただし、pは単位ベルト体12の長さ方向の位置を示す。
なお、前記一成分とは、応力、ひずみの全成分(圧縮引っ張り方向で3成分、せん断方向で3成分の合計6成分)のうちの一つの成分を示す。
そして、図5に示すように、応力f(p)、ひずみg(p)をそれぞれ有限次のフーリエ級数に展開し、次数ごとに振幅An、位相Bnを求める。
この場合、フーリエ級数展開を行う次数は、波形の特徴を失わない程度の高次まで取る必要がある。例えば、モデル長(単位長)Lに対して回転ローラー4の外周の接触部の長さがLrであった場合、この長さLrを10〜100分割しうる程度、すなわち、10L/Lr〜100L/Lrの次数が選ばれる。
すなわち、応力とひずみとをそれぞれN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに応力の変化特性の曲線を表す波形とひずみの変化特性の曲線を表す波形とが求められることになる。
【0012】
ひずみg(p)については、図6、図7に示すように、粘弾性材料の損失係数に応ずる位相遅れδを与えた上で、次数ごとにヒステリシスループの面積Snを計算し、それにもとづき次数nと面積Snの積の総和Scを式(4)、式(5)にしたがって求める。ここで、上記の位相遅れδは、粘弾性材料の損失正接tanδで特定されるδに相当する。
Sn=π・Anf・Ang・sin(Bnf−Bng+δ)……(4)
Sc=Σn・Sn ……(5)
【0013】
応力、ひずみの全成分について以上の過程を反復し、成分ごとの総和Scの総和を求めこれを発熱エネルギー密度とし、当該発熱エネルギー密度を求めた要素全体の体積Vとの積Ediを、
【0014】
【数1】
として求め、このEdiをその位置における発熱エネルギーとする。
次いで、単位ベルト体12全体について以上の過程を反復実行し、単位ベルト体12全体の発熱エネルギーEd、すなわち単位ベルト体12が所定長L走行したときの発熱エネルギーEdを求める。
また、この発熱エネルギーEdから走行抵抗力を算出することができる。走行抵抗力は、ベルト体が複数の回転ローラー4上を走行する際に、回転ローラー4に対してベルト体12から前記走行方向と逆向きに作用する力である。
発熱エネルギーEdは、実際には単位ベルト体12が所定長Lを通過した際に回転ローラー4等によって受ける変形によって起こると考えられ、一方、単位ベルト体12が回転ローラー4上を通過する際に回転ローラー4が受ける走行方向と逆向きの力(反力)が走行抵抗力となる。
この走行抵抗力には、単位ベルト体12と回転ローラー4間の粘着や摩擦、あるいは粘弾性、ローラー上を乗り越える積荷の位置エネルギー変化などの影響が含まれる。
このうち、粘弾性に起因する走行抵抗力をFvとすると、この抵抗力が所定長Lに渡って作用した場合の仕事量は、Fv・Lとなる。
この仕事量は、注目する区間である所定長Lにおいて単位ベルト体12が変形を受けたときの粘弾性によるエネルギー損失(熱として散逸する)と等価と考えられるので、
Fv・L=Ed……(7)
となり、
即ち粘弾性に起因する走行抵抗力Fvは所定長Lにおいて発生する損失エネルギーEd(発熱エネルギー)を所定長Lで割ることにより、
Fv=Ed/L……(8)
として求められる。
なお、実際に回転ローラー4上で検出される抵抗力には、粘弾性以外の要素が考えられるため、上記の式によって求められた走行抵抗力は実際に生じる走行抵抗力よりも低い。
【0015】
ここで損失正接tanδの周波数依存性および温度依存性について説明する。
損失正接tanδは粘弾性体の応力およびひずみの周波数によって変化する周波数依存性を有している。
すなわち、粘弾性体の応力およびひずみを表す曲線が正弦波であったとすると、損失正接tanδは、正弦波の周波数が高くなるほど大きな値となる。
すなわち、フーリエ次数が高次になるほどtanδが高くなり、したがって、ヒステリシスループの面積Snが大きくなり、発熱エネルギーが増大する。
また、損失正接tanδは粘弾性体の温度によって変化する温度依存性を有している。
周波数や温度に応じて変化するtanδの変化度合いは、粘弾性体を構成する材料によって異なるものであり、言い換えると、コンパウンドが異なることでことなり、言い換えると、tanδの周波数特性および温度特性はコンパウンドによって異なる。
【0016】
粘弾性体の損失正接tanδは、例えば、市販されている動的粘弾性物性計測装置を用いて実測することができる。
具体的には、動的粘弾性物性計測装置によって粘弾性体の試験片に定常的に正弦波状の応力とひずみを与えることにより、応力とひずみの位相差δを計測し、この位相差δから損失正接tanδが求められる。
したがって、粘弾性体に与える応力およびひずみの周波数を変えるとともに、粘弾性体の温度を変えて損失正接tanδを求めることにより、tanδの周波数特性および温度特性を示すマスターカーブが得られることになる。
なお、tanδの温度変化に対する変化率が既知あるいは近似式によって得られるならば、特定の温度におけるtanδの周波数特性を測定して1つのマスターカーブを得るとともに、前記1つのマスターカーブを近似式によって表し、該近似式に対して前記温度変化に応じた変化率を用いた演算を行うことにより、温度ごとのマスターカーブを得ることができ、温度ごとにtanδを実測する作業を省くこともできる。
【0017】
図11はベルト体10を構成する弾性材料における損失正接tanδのマスターカーブの一例を示す線図であり、横軸は周波数の対数、縦軸はtanδである。
図11に示すように、温度20度の粘弾性体に対してtanδの周波数特性を実測し、そのデータの座標をプロットし、プロットした座標を結ぶ近似曲線(実線)を表す近似式を従来公知の方法によって求める。
次いで、前記近似式に対して温度変化に応じた変化率を用いた演算を行うことで、例えば、温度0度、10度、15度、25度、30度のそれぞれに対応した近似曲線(近似式)を得ることができ、したがって、温度ごとにtanδのマスターカーブを得ることができる。
この結果、粘弾性体の損失正接tanδの周波数特性および温度特性の双方を示すマスターカーブが得られることになる。
このようなマスターカーブを用いることにより、周波数および温度を特定することでtanδを容易に決定することが可能となる。
【0018】
図8は本発明方法を実行するために使用されるコンピュータ20の構成を示すブロック図である。
コンピュータ20は、CPU22と、不図示のインターフェース回路およびバスラインを介して接続されたROM24、RAM26、ハードディスク装置28、ディスク装置30、キーボード32、マウス34、ディスプレイ36、プリンタ38、入出力インターフェース40などを有している。
ROM24は制御プログラムなどを格納し、RAM26はワーキングエリアを提供するものである。
ハードディスク装置28は本発明方法を実現するためのプログラムを格納している。
ディスク装置30はCDやDVDなどの記録媒体に対してデータの記録および/または再生を行うものである。
キーボード32およびマウス34は、操作者による操作入力を受け付けるものである。
ディスプレイ36はデータを表示出力するものであり、プリンタ38はデータを印刷出力するものであり、ディスプレイ36およびプリンタ38によってデータを出力する。
入出力インターフェース40は、外部機器との間でデータの授受を行うものである。
本実施の形態では、CPU22、キーボード32、マウス34、ディスク装置30、入出力インターフェース34によって入力手段20A(図9)が構成され、CPU22によって処理手段20B(図9)が構成され、CPU22、ディスプレイ36、プリンタ38、ディスク装置30、入出力インターフェース40などによって特許請求の範囲の出力手段20C(図9)が構成されている。
【0019】
図9はコンピュータ20の機能ブロック図である。
図9に示すように、コンピュータ20は、機能的には、入力手段20A、処理手段20B、出力手段20Cを含んで構成されている。
入力手段20Aは、単位ベルト体12の応力、ひずみを有限要素法によって求めるために必要なデータを入力するものであり、それらデータについては後述する。
また、入力手段20Aは、前述したマスターカーブD5も入力する。
処理手段20Bは、入力手段20Aによって入力されたデータに基づいて有限要素法により応力、ひずみを得るとともに、上述した原理に基づいて発熱エネルギーおよび走行抵抗力を算出するものであり、ハードディスク装置28に格納されているプログラムがRAM26にロードされ、CPU22が前記プログラムに基づいて動作することで実現される。
出力手段20Cは、処理手段10Bによる計算結果から構成されるデータを出力するものである。
【0020】
次に、本実施の形態のベルト体の走行発熱予測方法および走行抵抗力予測方法について図10に示すフローチャートを参照して説明する。
まず、単位ベルト体12が静止した状態で、単位ベルト体12が1つの回転ローラー4から受ける応力と、応力に応じて単位ベルト体12に生じるひずみとを、入力手段20Aを介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する(ステップS10)。
具体的には、図9に示すように、前記解析用データとして、単位ベルト体12の形状データD1、材料データD2、境界データD3、および荷重データD4などが入力手段20Aを介して入力され、処理手段20Bは、それら解析用データに基づき、局所座標を参照した応力、ひずみに変換するように演算を行うことにより、単位ベルト体12断面内の一点(前記一要素の中心)における応力、ひずみを求める。
これにより、単位ベルト体12の長手方向に沿って隣接する諸点の応力、ひずみを順次求め、これにより単位長L分の応力、ひずみの変化特性の曲線である応力曲線、ひずみ曲線をそれぞれ求める。
【0021】
次に、応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める(ステップS12:波形生成ステップ)。
【0022】
次に、特定された単位ベルト体12の走行速度に基づいて応力またはひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを入力手段20Aを介して入力されたマスターカーブD5から決定する(ステップS13:損失正接決定ステップ)。
具体的には、単位ベルト体12の走行速度をVとし、1次の応力またはひずみを表す波形の周波数をF1とすると、
F1=V/L ……(9)
以下、N次の応力またはひずみを表す波形の周波数をFNとすると、
FN=(V/L)・N……(10)
として求められる。
なお、本実施の形態では、損失正接tanδの決定は、入力手段20Aを介して入力された温度D6(図9)に対応するマスターカーブD5を特定し、該特定したマスターカーブD5を用いて周波数に対応する損失正接tanδを求めることでなされる。
【0023】
次に、フーリエ次数ごとに応力の波形の位相に対して、ひずみの波形の位相を、ステップS13によって決定された粘弾性材料の損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する(ステップS14:遅延ひずみ波形生成ステップ)。
次に、フーリエ次数ごとに応力の波形と遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積Scを求め、該面積Scとフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより面積Scの総和を求める(ステップS16)。
次に、上述したステップS12、S13、S14、S16を応力、ひずみの全成分について実行したか否かを判定する(ステップS18)。この判定結果が否定ならばステップS12に移行し同様の処理を反復して実行する。
ステップS18の判定結果が肯定ならば、成分ごとの総和Scの総和を前記一点におけるエネルギー密度とし、このエネルギー密度と前記一点を含む領域の体積Vとの積Ediを求め、この積Ediを前記断面内の一点を含む領域における発熱エネルギーとして前記領域ごとに求める(ステップS20)。すなわち、ステップS16、S18、S20が特許請求の範囲の発熱エネルギー生成ステップに相当する。
次に、単位ベルト体12全体について上述したステップS12乃至S20の演算を行ったか否かを判定し(ステップS22)、この判定結果が否定ならばステップS12に移行して上述の処理を反復して実行する。
ステップS22の判定結果が肯定ならば、ステップS20で求められた発熱エネルギーの総和を単位ベルト体12全体の発熱エネルギー、すなわち、単位ベルト体12が単位長L走行したときの発熱エネルギーEdとして演算する(ステップS24)。すなわち、ステップS22、S24が特許請求の範囲の走行発熱エネルギー生成ステップに相当する。
次に、発熱エネルギーEdから単位ベルト体12が走行する際に受ける走行抵抗力Fvを前述した式(8)に基づいて演算する(ステップS26:走行抵抗力生成ステップ)。
そして、発熱エネルギーEdおよび走行抵抗力Fvを出力手段20Cから出力する(ステップS28)。
【0024】
以上説明したように本実施の形態によれば、予め粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性および温度特性を示すマスターカーブを作成しておき、特定された単位ベルト体の走行速度に基づいて応力またはひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを、特定された温度に基づいてマスターカーブから求めるようにしたので、粘弾性材料を含むベルト体の発熱エネルギーおよび走行抵抗力を周波数および温度の影響を反映させて正確に予測することができるので、設計の効率化を図る上で有利となる。
なお、本実施の形態では、マスターカーブとして粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性および温度特性の双方を示すものを用いたが、温度特性について考慮する必要が無ければ、マスターカーブとして粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性のみを示すものを用いるようにしてもよい。
【0025】
次に、マスターカーブおよびマスターカーブを用いて求められた走行抵抗力の具体例について説明する。
図12はベルト体10のカバーゴム層およびクッションゴム層を構成する粘弾性材料を実測することにより得られたマスターカーブの一例を示す図である。
図12に示すように、カバーゴム層として使用される3種類の粘弾性材料(図中カバーA、B、Cとして示す)と、クッションゴム層として使用される1種類の粘弾性材料(図中クッションゴムとして示す)との4種類の粘弾性材料のマスターカーブを求めた。
4種類の材料の全てについて、周波数が高くなるにしたがってtanδが増大する傾向を有していることがわかる。
【0026】
図13は本実施の形態による走行抵抗力予測方法によって求められたベルト体10の走行抵抗力の予測結果を示す図である。
本例では、カバーゴム層を構成する材料として前記カバーAを用いたベルト体、前記カバーBを用いたベルト体、前記カバーCを用いたベルト体の3種類のベルト体について温度を変えて走行抵抗力を予測した。なお、走行速度Vは各ベルト体で同一としている。
図13の結果からわかるように、カバーAは温度に拘わらず走行抵抗力が他のカバーB、Cに比較して大きい。
カバーBは温度に拘わらず走行抵抗力の変化が他のカバーA、Cに比べて少ない。
カバーCは高温時の走行抵抗力が低い傾向にある。
このようにマスターカーブとして周波数特性に加えて温度特性を示すものを用いて走行抵抗力を予測することにより、粘弾性材料の温度特性を反映させてベルト体を評価することができる。
なお、第1の実施の形態では、ベルト体10がベルトコンベア装置10に用いられるものである場合について説明したが、本発明のベルト体の走行発熱予測方法および走行抵抗力予測方法は粘弾性材料を含むベルト体に広く適用可能である。
【0027】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では、回転体の走行発熱予測方法および転動抵抗予測方法について説明する。
まず、本発明方法の対象となる回転体について説明する。
図14(A)は粘弾性材料を含む回転体30の断面図、(B)は回転体30を回転軸の方向から見た立面図であり、本実施の形態では、回転体30はタイヤである。
【0028】
図15(A)は静止状態にある回転体30に加わる応力σの分布を示す説明図、(B)は静止状態にある回転体30に生じるひずみεの分布を示す説明図である。
図15(A)、(B)において横軸は回転体30の円周方向の角度である位置θを示し、θ=180度は回転体30が接地面上に接触する位置を示している。
回転体30がθ=180度の位置で接地面に接触しているため、図15(A)に示すように、回転体30に加わる応力σは、θ=180度で最大値となり、θ=180度から回転体30の円周方向に離れるにしたがって次第に減少していき、θ=0度および360度で応力σはほぼゼロとなる。
図15(B)に示すように、回転体30に加わるひずみεは、θ=180度で最大値となり、θ=180度から回転体30の円周方向に離れるにしたがって次第に減少していき、θ=0度および360度でひずみεはほぼゼロとなる。
すなわち、回転体30が静止した状態では応力σの位相に対するひずみεの位相は遅れを生じていない。
ここで、回転体30が走行すると、応力σに対してひずみεの位相が遅延し、したがって、応力σとひずみεのヒステリシスループの面積から発熱エネルギーを計算することができる。
【0029】
回転体30の発熱エネルギーを計算するにあたっては、応力およびひずみをフーリエ級数展開する。すなわち、応力σをフーリエ級数展開することにより、1次成分σ1(1波長のsin波)、2次成分σ2(1/2波長のsin波)、3次成分σ3(1/3波長のsin波)、……の和に分解し、ひずみについても同様に1次成分、2次成分、3次成分、……の和に分解する処理を行う。
そして、次数ごとにヒステリシスループの面積を求め、それらの面積の総和に基づいて発熱エネルギーを求める。
【0030】
次に、回転体30の発熱エネルギーの予測方法の基本原理について説明する。
図16(A1)、(B1)は演算結果から得られた応力の分布(応力の変化特性の曲線)、および、ひずみの分布(ひずみの変化特性の曲線)の例を示す図である。
図16(A2)、(A3)は、(A1)の応力曲線をフーリエ級数展開して得られる1次、2次、…の成分の波形を示す図であり、2次までを示す。
図16(B2)、(B3)は、(B1)のひずみ曲線をフーリエ級数展開して得られる1次、2次、…の成分の波形を示す図であり、2次までを示す。
図17(A)は1次成分の応力波形、(B)は1次成分のひずみ波形、(C)はそれら1次成分の応力波形およびひずみ波形に基づく1次成分のヒステリシスループを示す図である。
図18(A)は2次成分の応力波形、(B)は2次成分のひずみ波形、(C)はそれら2次成分の応力波形およびひずみ波形に基づく2次成分のヒステリシスループを示す図である。
まず、有限要素法により、回転体30の応力、ひずみの特性の分析を行い、回転体30の要素ごとに局所座標を参照した応力およびひずみを求める。
この際、図14(A)に示すように、各要素について、回転体30の各要素32について、回転体周方向r、要素幅の方向s、および要素厚さの方向tの3つが考慮される。
次いで、回転体30断面内の一要素の中心における一成分の応力、ひずみを求め、順次、円周方向に隣接する諸点の応力、ひずみを求め、回転体30の応力f(θ)、およびひずみg(θ)を求める。
そして、図16に示すように、応力f(θ)、ひずみg(θ)をそれぞれ有限次のフーリエ級数に展開し、次数ごとに振幅An、位相Bnを求める。
すなわち、応力とひずみとをそれぞれN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに応力の変化特性の曲線を表す波形とひずみの変化特性の曲線を表す波形とが求められることになる。
【0031】
ひずみg(θ)については、図17、図18に示すように、粘弾性材料の損失係数に応ずる位相遅れδを与えた上で、次数ごとにヒステリシスループの面積Snを計算し、それにもとづき次数nと面積Snの積の総和Scを式(11)、式(12)にしたがって求める。ここで、上記の位相遅れδは、粘弾性材料の損失正接tanδで特定されるδに相当する。
Sn=π・Anf・Ang・sin(Bnf−Bng+δ)……(11)
Sc=Σn・Sn ……(12)
【0032】
応力、ひずみの全成分について以上の過程を反復し、成分ごとの総和Scの総和を求めこれを発熱エネルギー密度とし、当該発熱エネルギー密度を求めた要素全体の体積Vとの積Ediを、
【0033】
【数2】
として求め、このEdiをその位置における発熱エネルギーとする。
次いで、回転体30全体について以上の過程を反復実行し、回転体30全体の発熱エネルギーEd、すなわち回転体30が一回転走行したときの発熱エネルギーEdを求める。
また、この発熱エネルギーEdから転動抵抗を算出することができる。
転動抵抗=タイヤ発熱/走行距離によって求められる。
すなわち、荷重を負荷していない回転体30の外半径、および荷重を負荷したときの負荷半径を、有限要素法により演算しその結果を用いて回転体30が一回転したときの走行距離を導出し、回転体30一回転時の走行発熱エネルギーと回転体30が一回転したときの走行距離にもとづき回転体30の転動抵抗を導出すればよい。
【0034】
なお、第2の実施の形態においても、回転体30に含まれる粘弾性材料の損失正接tanδが粘弾性体の応力およびひずみの周波数によって変化する周波数依存性を有していることは第1の実施の形態と同様であり、第1の実施の形態と同様の手順により粘弾性体の損失正接tanδの周波数特性および温度特性の双方を示すマスターカーブD5(図19)が得られる。
そして、このようなマスターカーブを用いることにより、周波数および温度を特定することでtanδを容易に決定することが可能となる点は第1の実施の形態と同様である。
【0035】
第2の実施の形態において使用するコンピュータ20は第1の実施の形態の場合と同様に構成されている。
図19は第2の実施の形態におけるコンピュータ20の機能ブロック図であり、以下の図面において第1の実施の形態と同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
入力手段20Aは、回転体30の応力、ひずみを有限要素法によって求めるために必要なデータを入力するものであり、それらデータについては後述する。
また、入力手段20Aは、前述したマスターカーブD5も入力する。
処理手段20Bは、入力手段20Aによって入力されたデータに基づいて有限要素法により応力、ひずみを得るとともに、上述した原理に基づいて発熱エネルギーおよび転動抵抗を算出するものであり、ハードディスク装置28に格納されているプログラムがRAM26にロードされ、CPU22が前記プログラムに基づいて動作することで実現される。
出力手段20Cは、処理手段10Bによる計算結果から構成されるデータを出力するものである。
【0036】
次に、本実施の形態の回転体の走行発熱予測方法および転動抵抗予測方法について図20に示すフローチャートを参照して説明する。
まず、回転体30が静止した状態で、回転体30が接地面から受ける応力と、応力に応じて回転体30に生じるひずみとを、入力手段20Aを介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する(ステップS40)。
具体的には、図19に示すように、前記解析用データとして、回転体30の形状データD1、材料データD2、境界データD3、および荷重データD4などが入力手段20Aを介して入力され、処理手段20Bは、それら解析用データに基づき、局所座標を参照した応力、ひずみに変換するように演算を行うことにより、回転体30断面内の一点(前記一要素の中心)における応力、ひずみを求める。
これにより、回転体30の円周方向に沿って隣接する諸点の応力、ひずみを順次求め、これにより回転体30の一周分の応力、ひずみの変化特性の曲線である応力曲線、ひずみ曲線をそれぞれ求める。
【0037】
次に、応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップ(ステップS42:波形生成ステップ)。
【0038】
次に、特定された回転体30の走行速度に基づいて応力またはひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを入力手段20Aを介して入力されたマスターカーブD5から決定する(ステップS44:損失正接決定ステップ)。
具体的には、回転体30の走行速度をVとし、1次の応力またはひずみを表す波形の周波数をF1とすると、
F1=V/L ……(14)
以下、N次の応力またはひずみを表す波形の周波数をFNとすると、
FN=(V/L)・N……(15)
として求められる。
なお、本実施の形態では、損失正接tanδの決定は、入力手段20Aを介して入力された温度D6(図19)に対応するマスターカーブD5を特定し、該特定したマスターカーブD5を用いて周波数に対応する損失正接tanδを求めることでなされる。
【0039】
次に、フーリエ次数ごとに応力の波形の位相に対して、ひずみの波形の位相を、ステップS44によって決定された粘弾性材料の損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する(ステップS46:遅延ひずみ波形生成ステップ)。
次に、フーリエ次数ごとに応力の波形と遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積Scを求め、該面積Scとフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより面積Scの総和を求める(ステップS48)。
次に、上述したステップS42、S44、S46、S48を応力、ひずみの全成分について実行したか否かを判定する(ステップS50)。この判定結果が否定ならばステップS42に移行し同様の処理を反復して実行する。
ステップS50の判定結果が肯定ならば、成分ごとの総和Scの総和を前記一点におけるエネルギー密度とし、このエネルギー密度と前記一点を含む領域の体積Vとの積Ediを求め、この積Ediを前記断面内の一点を含む領域における発熱エネルギーとして前記領域ごとに求める(ステップS52)。すなわち、ステップS48、S50、S52が特許請求の範囲の発熱エネルギー生成ステップに相当する。
次に、回転体30全体について上述したステップS42乃至S52の演算を行ったか否かを判定し(ステップS54)、この判定結果が否定ならばステップS42に移行して上述の処理を反復して実行する。
ステップS54の判定結果が肯定ならば、ステップS52で求められた発熱エネルギーの総和を回転体30全体の発熱エネルギー、すなわち、回転体30が一回転走行したときの発熱エネルギーEdとして演算する(ステップS56)。すなわち、ステップS54、S56が特許請求の範囲の走行発熱エネルギー生成ステップに相当する。
次に、発熱エネルギーEdから回転体30が走行する際に受ける転動抵抗を前述したように、回転体30一回転時の走行発熱エネルギーと回転体30が一回転したときの走行距離にもとづき回転体30の転動抵抗を導出する(ステップS58:転動抵抗生成ステップ)。
そして、発熱エネルギーEdおよび転動抵抗を出力手段20Cから出力する(ステップS60)。
【0040】
以上説明したように第2の実施の形態によれば、予め粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性および温度特性を示すマスターカーブを作成しておき、特定された回転体の走行速度に基づいて応力またはひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを、特定された温度に基づいてマスターカーブから求めるようにしたので、粘弾性材料を含む回転体の発熱エネルギーおよび転動抵抗を周波数および温度の影響を反映させて正確に予測することができるので、設計の効率化を図る上で有利となる。
なお、第2の実施の形態においても、マスターカーブとして粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性および温度特性の双方を示すものを用いたが、温度特性について考慮する必要が無ければ、マスターカーブとして粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性のみを示すものを用いるようにしてもよいことは無論である。
【0041】
なお、本実施の形態では、回転体30がタイヤである場合について説明したが、本発明は粘弾性材料を含む回転体に広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(A)は位置を横軸座標とした粘弾性体の応力とひずみの特性をあらわし、(B)はひずみを横軸座標、応力を縦軸座標として応力とひずみのヒステリシスループ特性をあらわす図である。
【図2】ベルト体10の説明図である。
【図3】(A)は静止状態にあるベルト体10に加わる応力σの分布を示す説明図、(B)は静止状態にあるベルト体10に生じるひずみεの分布を示す説明図である。
【図4】回転体30の応力曲線を1次、2次、3次……の成分に分解することを説明する図である。
【図5】(A1)、(B1)は演算結果から得られた応力の分布(応力の変化特性の曲線)、および、ひずみの分布(ひずみの変化特性の曲線)の例を示す図、(A2)、(A3)は、(A1)の応力曲線をフーリエ級数展開して得られる1次、2次、…の成分の波形を示す図、(B2)、(B3)は、(B1)のひずみ曲線をフーリエ級数展開して得られる1次、2次、…の成分の波形を示す図である。
【図6】(A)は1次成分の応力波形、(B)は1次成分のひずみ波形、(C)はそれら1次成分の応力波形およびひずみ波形に基づく1次成分のヒステリシスループを示す図である。
【図7】(A)は2次成分の応力波形、(B)は2次成分のひずみ波形、(C)はそれら2次成分の応力波形およびひずみ波形に基づく2次成分のヒステリシスループを示す図である。
【図8】第1の実施の形態におけるコンピュータ20の構成を示すブロック図である。
【図9】コンピュータ20の機能ブロック図である。
【図10】第1の実施の形態のベルト体の走行発熱予測方法および走行抵抗力予測方法を示すフローチャートチャートである。
【図11】ベルト体10を構成する弾性材料における損失正接tanδのマスターカーブの一例を示す線図である。
【図12】ベルト体10のカバーゴム層およびクッションゴム層を構成する粘弾性材料を実測することにより得られたマスターカーブの一例を示す図である。
【図13】第1の実施の形態による走行抵抗力予測方法によって求められたベルト体10の走行抵抗力の予測結果を示す図である。
【図14】(A)は粘弾性材料を含む回転体30の断面図、(B)は回転体30を回転軸の方向から見た立面図である。
【図15】(A)は静止状態にある回転体30に加わる応力σの分布を示す説明図、(B)は静止状態にある回転体30に生じるひずみεの分布を示す説明図である。
【図16】(A1)、(B1)は演算結果から得られた応力の分布(応力の変化特性の曲線)、および、ひずみの分布(ひずみの変化特性の曲線)の例を示す図、(A2)、(A3)は、(A1)の応力曲線をフーリエ級数展開して得られる1次、2次、…の成分の波形を示す図、(B2)、(B3)は、(B1)のひずみ曲線をフーリエ級数展開して得られる1次、2次、…の成分の波形を示す図である。
【図17】1次成分の応力波形、(B)は1次成分のひずみ波形、(C)はそれら1次成分の応力波形およびひずみ波形に基づく1次成分のヒステリシスループを示す図である。
【図18】(A)は2次成分の応力波形、(B)は2次成分のひずみ波形、(C)はそれら2次成分の応力波形およびひずみ波形に基づく2次成分のヒステリシスループを示す図である。
【図19】第2の実施の形態におけるコンピュータ20の機能ブロック図である。
【図20】第2の実施の形態の回転体の走行発熱予測方法および転動抵抗予測方法を示すフローチャートチャートである。
【符号の説明】
【0043】
10……ベルト体、12……単位ベルト体、20……コンピュータ、30……回転体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘弾性材料を含むベルト体が複数の回転ローラー上を走行する際に、前記ベルト体から発生する発熱を、コンピュータを用いて予測するベルト体の走行発熱予測方法であって、
前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、
前記走行方向において1つの回転ローラーが前記ベルト体に接触する接触位置を中心とし前記1つの回転ローラーの両側に配置された回転ローラーに接触しない範囲でかつ前記走行方向に沿った所定長の範囲に位置する前記ベルト体の部分を単位ベルト体とし、
予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性を示す損失正接tanδのマスターカーブを作成しておき、
前記処理手段が、
前記単位ベルト体が静止した状態で、前記単位ベルト体が前記1つの回転ローラーから受ける応力と、前記応力に応じて前記単位ベルト体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、
前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、
特定された前記単位ベルト体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記単位ベルト体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、
前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記単位ベルト体の全体について反復実行することにより前記単位ベルト体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、
前記走行発熱エネルギーを前記出力手段を介して出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とするベルト体の走行発熱予測方法。
【請求項2】
粘弾性材料を含むベルト体が複数の回転ローラー上を走行する際に、前記ベルト体から発生する発熱を、コンピュータを用いて予測するベルト体の走行発熱予測方法であって、
前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、
前記走行方向において1つの回転ローラーが前記ベルト体に接触する接触位置を中心とし前記1つの回転ローラーの両側に配置された回転ローラーに接触しない範囲でかつ前記走行方向に沿った所定長の範囲に位置する前記ベルト体の部分を単位ベルト体とし、
予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性および温度特性を示すマスターカーブを作成しておき、
前記処理手段が、
前記単位ベルト体が静止した状態で、前記単位ベルト体が前記1つの回転ローラーから受ける応力と、前記応力に応じて前記単位ベルト体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、
前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、
特定された前記単位ベルト体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを、特定された温度に基づいて前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記単位ベルト体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、
前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記単位ベルト体の全体について反復実行することにより前記単位ベルト体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、
前記走行発熱エネルギーを前記出力手段を介して出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とするベルト体の走行発熱予測方法。
【請求項3】
前記所定長は、前記単位ベルト体に作用する前記応力およびひずみの1次成分が示す特徴を十分にあらわすに足る寸法である、
ことを特徴とする請求項1または2記載のベルト体の走行発熱予測方法。
【請求項4】
前記応力ひずみ生成ステップによる応力およびひずみの変化特性の曲線の導出は、前記単位ベルトの断面内における一点の応力およびひずみを求め、前記単位ベルト体の走行方向に隣接する諸点の応力およびひずみを順次計算することでなされる、
ことを特徴とする請求項1または2記載のベルト体の走行発熱予測方法。
【請求項5】
粘弾性材料を含むベルト体が複数の回転ローラー上を走行する際に、前記回転ローラーに対して前記ベルト体から前記走行方向と逆向きに作用する力である走行抵抗力を、コンピュータを用いて予測するベルト体の走行抵抗力予測方法であって、
前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、
前記走行方向において1つの回転ローラーが前記ベルト体に接触する接触位置を中心とし前記1つの回転ローラーの両側に配置された回転ローラーに接触しない範囲でかつ前記走行方向に沿った所定長の範囲に位置する前記ベルト体の部分を単位ベルト体とし、
予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性を示す損失正接tanδのマスターカーブを作成しておき、
前記処理手段が、
前記単位ベルト体が静止した状態で、前記単位ベルト体が前記1つの回転ローラーから受ける応力と、前記応力に応じて前記単位ベルト体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、
前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、
特定された前記単位ベルト体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記単位ベルト体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、
前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記単位ベルト体の全体について反復実行することにより前記単位ベルト体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、
前記走行発熱エネルギーと前記所定長との積によって前記走行抵抗力を生成する走行抵抗力生成ステップと、
前記走行抵抗力を前記出力手段を介して出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とするベルト体の走行抵抗力予測方法。
【請求項6】
粘弾性材料を含むベルト体が複数の回転ローラー上を走行する際に、前記回転ローラーに対して前記ベルト体から前記走行方向と逆向きに作用する力である走行抵抗力を、コンピュータを用いて予測するベルト体の走行抵抗力予測方法であって、
前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、
前記走行方向において1つの回転ローラーが前記ベルト体に接触する接触位置を中心とし前記1つの回転ローラーの両側に配置された回転ローラーに接触しない範囲でかつ前記走行方向に沿った所定長の範囲に位置する前記ベルト体の部分を単位ベルト体とし、
予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性および温度特性を示すマスターカーブを作成しておき、
前記処理手段が、
前記単位ベルト体が静止した状態で、前記単位ベルト体が前記1つの回転ローラーから受ける応力と、前記応力に応じて前記単位ベルト体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、
前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、
特定された前記単位ベルト体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを、特定された温度に基づいて前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記単位ベルト体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、
前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記単位ベルト体の全体について反復実行することにより前記単位ベルト体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、
前記走行発熱エネルギーと前記所定長との積によって前記走行抵抗力を生成する走行抵抗力生成ステップと、
前記走行抵抗力を前記出力手段を介して出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とするベルト体の走行抵抗力予測方法。
【請求項7】
前記所定長は、前記単位ベルト体に作用する前記応力およびひずみの1次成分が示す特徴を十分にあらわすに足る寸法である、
ことを特徴とする請求項5または6記載のベルト体の走行抵抗力予測方法。
【請求項8】
前記応力ひずみ生成ステップによる応力およびひずみの変化特性の曲線の導出は、前記単位ベルトの断面内における一点の応力およびひずみを求め、前記単位ベルト体の走行方向に隣接する諸点の応力およびひずみを順次計算することでなされる、
ことを特徴とする請求項5または6記載のベルト体の走行抵抗力予測方法。
【請求項9】
粘弾性材料を含む回転体が接地面上を走行する際に、前記回転体から発生する発熱を、コンピュータを用いて予測する回転体の走行発熱予測方法であって、
前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、
予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性を示す損失正接tanδのマスターカーブを作成しておき、
前記処理手段が、
前記回転体が静止した状態で、前記回転体が前記接地面から受ける応力と、前記応力に応じて前記回転体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、
前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、
特定された前記回転体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記回転体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、
前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記回転体の全体について反復実行することにより前記回転体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、
前記走行発熱エネルギーを前記出力手段を介して出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする回転体の走行発熱予測方法。
【請求項10】
粘弾性材料を含む回転体が接地面上を走行する際に、前記回転体から発生する発熱を、コンピュータを用いて予測する回転体の走行発熱予測方法であって、
前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、
予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性および温度特性を示すマスターカーブを作成しておき、
前記処理手段が、
前記回転体が静止した状態で、前記回転体が前記接地面から受ける応力と、前記応力に応じて前記回転体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、
前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、
特定された前記単位ベルト体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを、特定された温度に基づいて前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記回転体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、
前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記回転体の全体について反復実行することにより前記回転体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、
前記走行発熱エネルギーを前記出力手段を介して出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする回転体の走行発熱予測方法。
【請求項11】
前記応力ひずみ生成ステップによる応力およびひずみの変化特性の曲線の導出は、前記回転体の断面内における一点の応力およびひずみを求め、前記回転体の円周方向に隣接する諸点の応力およびひずみを順次計算することでなされる、
ことを特徴とする請求項9または10記載の回転体の走行発熱予測方法。
【請求項12】
粘弾性材料を含む回転体が複数の接地面上を走行する際に、前記回転体に作用する転動抵抗を、コンピュータを用いて予測する回転体の転動抵抗予測方法であって、
前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、
予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性を示す損失正接tanδのマスターカーブを作成しておき、
前記処理手段が、
前記回転体が静止した状態で、前記回転体が前記接地面から受ける応力と、前記応力に応じて前記回転体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、
前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、
特定された前記回転体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記回転体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、
前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記回転体の全体について反復実行することにより前記回転体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、
荷重を負荷していない前記回転体の外半径、および荷重を負荷したときの負荷半径を、有限要素法により演算しその結果を用いて前記回転体が一回転したときの走行距離を導出し、前記走行発熱エネルギー生成ステップで生成された前記回転体一回転時の前記走行発熱エネルギーと前記回転体が一回転したときの走行距離にもとづき前記回転体の転動抵抗を導出する転動抵抗生成ステップと、
前記走行抵抗力を前記出力手段を介して出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする回転体の転動抵抗予測方法。
【請求項13】
粘弾性材料を含む回転体が複数の接地面上を走行する際に、前記回転体に作用する転動抵抗を、コンピュータを用いて予測する回転体の転動抵抗予測方法であって、
前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、
予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性および温度特性を示すマスターカーブを作成しておき、
前記処理手段が、
前記回転体が静止した状態で、前記回転体が前記接地面から受ける応力と、前記応力に応じて前記回転体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、
前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、
特定された前記単位ベルト体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを、特定された温度に基づいて前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記回転体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、
前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記回転体の全体について反復実行することにより前記回転体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、
荷重を負荷していない前記回転体の外半径、および荷重を負荷したときの負荷半径を、有限要素法により演算しその結果を用いて前記回転体が一回転したときの走行距離を導出し、前記走行発熱エネルギー生成ステップで生成された前記回転体一回転時の前記走行発熱エネルギーと前記回転体が一回転したときの走行距離にもとづき前記回転体の転動抵抗を導出する転動抵抗生成ステップと、
前記走行抵抗力を前記出力手段を介して出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする回転体の転動抵抗予測方法。
【請求項14】
前記応力ひずみ生成ステップによる応力およびひずみの変化特性の曲線の導出は、前記回転体の断面内における一点の応力およびひずみを求め、前記回転体の円周方向に隣接する諸点の応力およびひずみを順次計算することでなされる、
ことを特徴とする請求項12または13記載の回転体の転動抵抗予測方法。
【請求項1】
粘弾性材料を含むベルト体が複数の回転ローラー上を走行する際に、前記ベルト体から発生する発熱を、コンピュータを用いて予測するベルト体の走行発熱予測方法であって、
前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、
前記走行方向において1つの回転ローラーが前記ベルト体に接触する接触位置を中心とし前記1つの回転ローラーの両側に配置された回転ローラーに接触しない範囲でかつ前記走行方向に沿った所定長の範囲に位置する前記ベルト体の部分を単位ベルト体とし、
予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性を示す損失正接tanδのマスターカーブを作成しておき、
前記処理手段が、
前記単位ベルト体が静止した状態で、前記単位ベルト体が前記1つの回転ローラーから受ける応力と、前記応力に応じて前記単位ベルト体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、
前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、
特定された前記単位ベルト体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記単位ベルト体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、
前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記単位ベルト体の全体について反復実行することにより前記単位ベルト体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、
前記走行発熱エネルギーを前記出力手段を介して出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とするベルト体の走行発熱予測方法。
【請求項2】
粘弾性材料を含むベルト体が複数の回転ローラー上を走行する際に、前記ベルト体から発生する発熱を、コンピュータを用いて予測するベルト体の走行発熱予測方法であって、
前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、
前記走行方向において1つの回転ローラーが前記ベルト体に接触する接触位置を中心とし前記1つの回転ローラーの両側に配置された回転ローラーに接触しない範囲でかつ前記走行方向に沿った所定長の範囲に位置する前記ベルト体の部分を単位ベルト体とし、
予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性および温度特性を示すマスターカーブを作成しておき、
前記処理手段が、
前記単位ベルト体が静止した状態で、前記単位ベルト体が前記1つの回転ローラーから受ける応力と、前記応力に応じて前記単位ベルト体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、
前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、
特定された前記単位ベルト体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを、特定された温度に基づいて前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記単位ベルト体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、
前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記単位ベルト体の全体について反復実行することにより前記単位ベルト体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、
前記走行発熱エネルギーを前記出力手段を介して出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とするベルト体の走行発熱予測方法。
【請求項3】
前記所定長は、前記単位ベルト体に作用する前記応力およびひずみの1次成分が示す特徴を十分にあらわすに足る寸法である、
ことを特徴とする請求項1または2記載のベルト体の走行発熱予測方法。
【請求項4】
前記応力ひずみ生成ステップによる応力およびひずみの変化特性の曲線の導出は、前記単位ベルトの断面内における一点の応力およびひずみを求め、前記単位ベルト体の走行方向に隣接する諸点の応力およびひずみを順次計算することでなされる、
ことを特徴とする請求項1または2記載のベルト体の走行発熱予測方法。
【請求項5】
粘弾性材料を含むベルト体が複数の回転ローラー上を走行する際に、前記回転ローラーに対して前記ベルト体から前記走行方向と逆向きに作用する力である走行抵抗力を、コンピュータを用いて予測するベルト体の走行抵抗力予測方法であって、
前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、
前記走行方向において1つの回転ローラーが前記ベルト体に接触する接触位置を中心とし前記1つの回転ローラーの両側に配置された回転ローラーに接触しない範囲でかつ前記走行方向に沿った所定長の範囲に位置する前記ベルト体の部分を単位ベルト体とし、
予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性を示す損失正接tanδのマスターカーブを作成しておき、
前記処理手段が、
前記単位ベルト体が静止した状態で、前記単位ベルト体が前記1つの回転ローラーから受ける応力と、前記応力に応じて前記単位ベルト体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、
前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、
特定された前記単位ベルト体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記単位ベルト体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、
前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記単位ベルト体の全体について反復実行することにより前記単位ベルト体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、
前記走行発熱エネルギーと前記所定長との積によって前記走行抵抗力を生成する走行抵抗力生成ステップと、
前記走行抵抗力を前記出力手段を介して出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とするベルト体の走行抵抗力予測方法。
【請求項6】
粘弾性材料を含むベルト体が複数の回転ローラー上を走行する際に、前記回転ローラーに対して前記ベルト体から前記走行方向と逆向きに作用する力である走行抵抗力を、コンピュータを用いて予測するベルト体の走行抵抗力予測方法であって、
前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、
前記走行方向において1つの回転ローラーが前記ベルト体に接触する接触位置を中心とし前記1つの回転ローラーの両側に配置された回転ローラーに接触しない範囲でかつ前記走行方向に沿った所定長の範囲に位置する前記ベルト体の部分を単位ベルト体とし、
予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性および温度特性を示すマスターカーブを作成しておき、
前記処理手段が、
前記単位ベルト体が静止した状態で、前記単位ベルト体が前記1つの回転ローラーから受ける応力と、前記応力に応じて前記単位ベルト体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、
前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、
特定された前記単位ベルト体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを、特定された温度に基づいて前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記単位ベルト体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、
前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記単位ベルト体の全体について反復実行することにより前記単位ベルト体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、
前記走行発熱エネルギーと前記所定長との積によって前記走行抵抗力を生成する走行抵抗力生成ステップと、
前記走行抵抗力を前記出力手段を介して出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とするベルト体の走行抵抗力予測方法。
【請求項7】
前記所定長は、前記単位ベルト体に作用する前記応力およびひずみの1次成分が示す特徴を十分にあらわすに足る寸法である、
ことを特徴とする請求項5または6記載のベルト体の走行抵抗力予測方法。
【請求項8】
前記応力ひずみ生成ステップによる応力およびひずみの変化特性の曲線の導出は、前記単位ベルトの断面内における一点の応力およびひずみを求め、前記単位ベルト体の走行方向に隣接する諸点の応力およびひずみを順次計算することでなされる、
ことを特徴とする請求項5または6記載のベルト体の走行抵抗力予測方法。
【請求項9】
粘弾性材料を含む回転体が接地面上を走行する際に、前記回転体から発生する発熱を、コンピュータを用いて予測する回転体の走行発熱予測方法であって、
前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、
予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性を示す損失正接tanδのマスターカーブを作成しておき、
前記処理手段が、
前記回転体が静止した状態で、前記回転体が前記接地面から受ける応力と、前記応力に応じて前記回転体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、
前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、
特定された前記回転体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記回転体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、
前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記回転体の全体について反復実行することにより前記回転体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、
前記走行発熱エネルギーを前記出力手段を介して出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする回転体の走行発熱予測方法。
【請求項10】
粘弾性材料を含む回転体が接地面上を走行する際に、前記回転体から発生する発熱を、コンピュータを用いて予測する回転体の走行発熱予測方法であって、
前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、
予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性および温度特性を示すマスターカーブを作成しておき、
前記処理手段が、
前記回転体が静止した状態で、前記回転体が前記接地面から受ける応力と、前記応力に応じて前記回転体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、
前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、
特定された前記単位ベルト体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを、特定された温度に基づいて前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記回転体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、
前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記回転体の全体について反復実行することにより前記回転体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、
前記走行発熱エネルギーを前記出力手段を介して出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする回転体の走行発熱予測方法。
【請求項11】
前記応力ひずみ生成ステップによる応力およびひずみの変化特性の曲線の導出は、前記回転体の断面内における一点の応力およびひずみを求め、前記回転体の円周方向に隣接する諸点の応力およびひずみを順次計算することでなされる、
ことを特徴とする請求項9または10記載の回転体の走行発熱予測方法。
【請求項12】
粘弾性材料を含む回転体が複数の接地面上を走行する際に、前記回転体に作用する転動抵抗を、コンピュータを用いて予測する回転体の転動抵抗予測方法であって、
前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、
予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性を示す損失正接tanδのマスターカーブを作成しておき、
前記処理手段が、
前記回転体が静止した状態で、前記回転体が前記接地面から受ける応力と、前記応力に応じて前記回転体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、
前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、
特定された前記回転体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記回転体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、
前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記回転体の全体について反復実行することにより前記回転体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、
荷重を負荷していない前記回転体の外半径、および荷重を負荷したときの負荷半径を、有限要素法により演算しその結果を用いて前記回転体が一回転したときの走行距離を導出し、前記走行発熱エネルギー生成ステップで生成された前記回転体一回転時の前記走行発熱エネルギーと前記回転体が一回転したときの走行距離にもとづき前記回転体の転動抵抗を導出する転動抵抗生成ステップと、
前記走行抵抗力を前記出力手段を介して出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする回転体の転動抵抗予測方法。
【請求項13】
粘弾性材料を含む回転体が複数の接地面上を走行する際に、前記回転体に作用する転動抵抗を、コンピュータを用いて予測する回転体の転動抵抗予測方法であって、
前記コンピュータは、データが入力される入力手段と、前記入力手段によって入力されたデータを処理する処理手段と、前記処理手段で処理されたデータの出力を行う出力手段とを備え、
予め前記粘弾性材料の損失正接tanδの周波数特性および温度特性を示すマスターカーブを作成しておき、
前記処理手段が、
前記回転体が静止した状態で、前記回転体が前記接地面から受ける応力と、前記応力に応じて前記回転体に生じるひずみとを、前記入力手段を介して入力される解析用データに基づいて有限要素法解析によって求めることにより応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ生成する応力ひずみ生成ステップと、
前記応力およびひずみの変化特性の曲線をそれぞれ1次からN次(Nは2以上の自然数)のフーリエ次数までフーリエ級数展開することによってフーリエ次数ごとに前記応力およびひずみを表す波形をそれぞれ求める波形生成ステップと、
特定された前記単位ベルト体の走行速度に基づいて前記応力または前記ひずみを表す波形の周波数を1次からN次にわたってそれぞれ演算し、前記周波数のそれぞれに対応する損失正接tanδを、特定された温度に基づいて前記入力手段を介して入力された前記マスターカーブから求める損失正接決定ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形の位相に対して、前記ひずみの波形の位相を前記決定された損失正接tanδで特定されるδ分だけ遅延させることで遅延ひずみ波形を生成する遅延ひずみ波形生成ステップと、
フーリエ次数ごとに前記応力の波形と前記遅延ひずみ波形とから形成されるヒステリシスループの面積を求め、該面積とフーリエ次数との積を1次からN次まで総和することにより前記回転体の断面内の一点で発生する発熱エネルギー密度を生成し、前記発熱エネルギー密度と前記一点を含む領域の体積との積を演算することにより当該領域における発熱エネルギーを生成する発熱エネルギー生成ステップと、
前記波形生成ステップと、損失正接決定ステップと、前記遅延ひずみ波形生成ステップと、前記発熱エネルギー密度生成ステップとを前記回転体の全体について反復実行することにより前記回転体の全体で発生する走行発熱エネルギーを演算する走行発熱エネルギー生成ステップと、
荷重を負荷していない前記回転体の外半径、および荷重を負荷したときの負荷半径を、有限要素法により演算しその結果を用いて前記回転体が一回転したときの走行距離を導出し、前記走行発熱エネルギー生成ステップで生成された前記回転体一回転時の前記走行発熱エネルギーと前記回転体が一回転したときの走行距離にもとづき前記回転体の転動抵抗を導出する転動抵抗生成ステップと、
前記走行抵抗力を前記出力手段を介して出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする回転体の転動抵抗予測方法。
【請求項14】
前記応力ひずみ生成ステップによる応力およびひずみの変化特性の曲線の導出は、前記回転体の断面内における一点の応力およびひずみを求め、前記回転体の円周方向に隣接する諸点の応力およびひずみを順次計算することでなされる、
ことを特徴とする請求項12または13記載の回転体の転動抵抗予測方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−222656(P2009−222656A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69602(P2008−69602)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
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