説明

ベルト搬送式熱処理装置

【課題】被処理物の処理速度を高めて処理効率を向上させることができるベルト搬送式熱処理装置を提供する。
【解決手段】無端のメッシュベルト2は、第1ローラ21と第2ローラ22との間を略水平に延びる往路部分20Aを有している。この往路部分20Aに沿って、被処理物を載置して投入する投入部4と、被処理物を加熱処理する炉3とを設けている。また、炉3の下方に、往路部分20Aの末端からベルト走行方向が下方に転向された復路部分20Bを有している。この復路部分20Bに沿って、メッシュベルト2を駆動する駆動ユニット5と、メッシュベルト2を冷却する冷却ユニット6とを設けている。冷却ユニット6を、駆動ユニット5よりもベルト走行方向上流側に配置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉内で加熱処理した被処理物を加熱状態のままで出炉するようにしたベルト搬送式熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベルト搬送式熱処理装置として、被処理物を無端の搬送ベルトの往路部分に載せて炉内を搬送しつつ加熱処理を行い、冷却処理を施すことなく高温のままの被処理物を出炉するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載の加熱炉では、出炉した被処理物は、シュートを経て当該加熱炉の出口下方に設けられた水冷槽などの急冷部に送られる。
【0003】
ところで、このような熱処理装置では、被処理物を出炉した直後の搬送ベルトも高温のままである。搬送ベルトを駆動する駆動手段には、例えばゴムライニングを施したローラのように比較的耐熱性の低い部材が使用されている場合があり、かかる場合に充分冷却しないまま搬送ベルトが駆動手段に送り出されると、前記ローラなどの部材が損傷してしまうおそれがある。
特許文献1に示される例のように、搬送ベルトの送り速度が充分に遅く、かつ搬送工程の長さが充分に長い場合は、搬送ベルトの戻り工程が充分長いので、搬送ベルトの冷却時間が充分にとれるので、こうした問題は生じなかったが、一般の場合には必ずしもそうではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−116462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、仮に、ベルト搬送速度を遅くすれば、戻りベルトの冷却の点では都合がよいが、これでは、被処理物の処理速度が低下し、ベルト搬送式熱処理装置の処理効率を向上させることができない。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、被処理物の処理速度を高めて処理効率を向上させることができるベルト搬送式熱処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明では、被処理物を無端の搬送ベルトの往路部分に載せて炉内を搬送しつつ加熱処理を行うベルト搬送式熱処理装置であって、前記搬送ベルトを駆動する駆動手段と、この駆動手段よりもベルト走行方向上流側において前記搬送ベルトを冷却する冷却手段とが、前記搬送ベルトの復路部分に沿って設けられていることを特徴としている。
このように、駆動手段よりもベルト走行方向上流側において搬送ベルトが冷却されるので、搬送ベルトを連続的に駆動させながら冷却することができる。このため、ベルト搬送速度を遅くするなどして、冷却に要する時間を稼ぐ必要がない。これにより、ベルト搬送式熱処理装置の処理速度を高めて被処理物の処理効率を向上させることができる。
【0007】
また、前記冷却手段は、その上面を前記搬送ベルトが滑走可能な中空の滑走部と、この滑走部内に冷却水を通過させる冷却水通過手段とを備えていることが好ましい。
この場合、前記滑走部の上面を滑走する搬送ベルトは、当該滑走部内を通過する冷却水により冷却された滑走部上面との接触により、効率よく冷却される。
【0008】
また、前記冷却手段は、前記搬送ベルトの走行方向を前後に反転させる複数の反転ローラを備えていることが好ましい。
この場合、搬送ベルトの走行方向が前後に反転されて冷却部における復路部分の長さが増大されている。これにより、冷却に要する時間が充分に確保され、搬送ベルトをより効率よく冷却することができる。
【0009】
また、前記冷却手段は、前記搬送ベルトに冷却風を吹き付ける冷却風吹付手段を備えていることが好ましい。この場合、搬送ベルトに冷却風を吹き付けることで、搬送ベルトをさらに効率よく冷却することができる。
【0010】
更に、前記冷却手段は、前記炉の下方に配設されていることが好ましい。
この場合、冷却手段を炉の下方に配設することで、炉長を短くして、ベルト搬送式熱処理装置の省スペース化を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のベルト搬送式熱処理装置では、冷却手段によって、駆動手段よりもベルト走行方向上流側にて搬送ベルトを冷却しているので、搬送ベルトを連続的に駆動させながら冷却することができ、ベルト搬送式熱処理装置の処理速度を高めて被処理物の処理効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係わるベルト搬送式熱処理装置の側面説明図である。
【図2】冷却ユニットの断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係わるベルト搬送式熱処理装置の側面を示している。このベルト搬送式熱処理装置1(以下、単に「熱処理装置」という)は、アルミ基板等の被処理物(図示せず)を加熱処理する炉3を備えている。そして、被処理物は、搬送ベルトとしての無端のメッシュベルト2に載置した状態で炉3内に搬送される。このメッシュベルト2は、耐熱性という点で25Cr−20Ni系のメッシュベルトが用いられている。また、炉3は、上下2段構造となる装置基台11の上段12に設けられている。そして、炉3の上方には3基の熱風循環ファン駆動モータ31が設けられ、これらの熱風循環ファン駆動モータ31で駆動するファンおよびヒータ(図示せず)により炉3の上部空間で熱風を発生させ、この熱風により被処理物を所望の温度(例えば570°C)に加熱処理する。また、炉3の前方側(メッシュベルト2の走行方向上流側)には、入口トンネル部32が設けられている。一方、炉3の後方側(メッシュベルト2の走行方向下流側)には、出口トンネル部33が設けられている。更に、炉3の前方(入口トンネル部32の前方)には、メッシュベルト2に被処理物を載置して投入する投入部4が設けられている。そして、入口トンネル部32および出口トンネル部33により、被処理物と共にメッシュベルト2の炉3への出入りを可能にしている。そして、装置基台11の上段12側には、メッシュベルト2の走行方向上流側から順に、投入部4を有する投入エリア40と、炉3により加熱処理する加熱処理エリア30とが配置されている。また、炉3の後方(出口トンネル部33の後方)には、熱処理装置1からの被処理物を下方の水槽(図示せず)へ自然落下させるシュート(図示せず)が設けられている。この場合、水槽に自然落下した被処理物は、水中に没入して冷却されながら水槽内の搬送装置(図示せず)により回収されて水槽外に搬出される。
【0014】
前記メッシュベルト2は、装置基台11の前端(図1では左端)より上方へ突出するローラ支持枠121の上端に回転自在に支持された第1ローラ21と、装置基台11の後端(図1では右端)より上方へ突出するローラ支持台122の上端に回転自在に支持された第2ローラ22とに巻回されている。そして、メッシュベルト2は、上段12の上側位置において第1および第2ローラ21,22間を略水平に延びる往路部分20Aを構成している。この場合、投入部4と炉3とが、往路部分20Aに沿って設けられている。
【0015】
また、前記メッシュベルト2の復路部分20Bは、前記往路部分20Aの末端で前記第2ローラ22によりベルト走行方向が略下向きに転向されて炉3の下方に位置するように構成されている。そして、メッシュベルト2を駆動する駆動手段としての駆動ユニット5と、メッシュベルト2を冷却する冷却手段としての冷却ユニット6とが、前記復路部分20Bに沿って設けられている。冷却ユニット6は、駆動ユニット5よりもベルト走行方向上流側(図1では右側)に配置されている。
【0016】
前記駆動ユニット5は、装置基台11の下段13の前側の駆動エリア50に設けられている。また、駆動ユニット5は、装置基台11の下段13の略中央位置に取り付けられた駆動モータ(図示せず)と、この駆動モータの回転数を減速する減速機51と、この減速機51の出力軸52に連結された出力スプロケット53と、この出力スプロケット53にチェーン54を介して駆動連結される駆動スプロケット55と、この駆動スプロケット55に軸57を介して連結された駆動ローラ56とを備えている。駆動ローラ56は、メッシュベルト2との摩擦力を高めるために、例えば耐熱温度が160°C程度であるハイパロン(商品名。クロロスルホン化ポリエチレンゴム)により表面がライニング加工されている。
【0017】
前記冷却ユニット6は、装置基台11の下段13の後側の冷却エリア60に設けられている。この冷却エリア60内における下段13の後端上部位置には、第3ローラ23が回転自在に支持されている。この第3ローラ23は、前記第2ローラ22からのメッシュベルト2のベルト走行方向を略水平方向前方向きに転向している。また、冷却ユニット6は、メッシュベルト2のベルト走行方向を前後に反転させる2つの反転ローラとしての第4および第5ローラ24,25を備えている。第4ローラ24は、第3ローラ23からのメッシュベルト2のベルト走行方向を略水平方向後方向きに反転させている。一方、第5ローラ25は、第4ローラ24からのメッシュベルト2のベルト走行方向を略水平方向前方向きに反転させている。また、第5ローラ25の下流側には、第6ローラ26が回転自在に支持されている。この第6ローラ26は、第5ローラ25からのメッシュベルト2のベルト走行方向を略上向きに転向している。更に、第6ローラ26の下流側には、第7ローラ27が回転自在に支持されている。この第7ローラ27は、第6ローラ26からのメッシュベルト2のベルト走行方向を略水平方向前方向きに転向し、駆動エリア50に供出している。
【0018】
メッシュベルト2は、第3および第4ローラ23,24と、第4および第5ローラ24,25と、第5および第6ローラ25,26との間においてそれぞれ略水平に配置されている。そして、冷却ユニット6は、その上面をメッシュベルト2が滑走可能な中空の薄箱形状の滑走部61を備えている。この滑走部61は、第3および第4ローラ23,24と、第4および第5ローラ24,25と、第5および第6ローラ25,26との間においてメッシュベルト2のベルト走行方向に沿って設けられている。また、冷却ユニット6は、各滑走部61内に冷却水を通過させる冷却水通過手段(図示せず)を備えている。この冷却水通過手段は、各滑走部61内に冷却水を供給する冷却水供給口(図示せず)と各滑走部61内から冷却水を排出する冷却水排出口(図示せず)とを備えている。また、各滑走部61内に複数の折り返しなどにより経路を構成し、その経路の上流端を冷却水供給口に、下流端を冷却水排出口にそれぞれ連通させてもよい。これにより、各滑走部61を滑走するメッシュベルト2は、冷却水により冷却された滑走部61上面と接触している。なお、滑走部61は、中空の薄箱形状のものに代えて、例えば蛇行状の配管列よりなるもので構成されていてもよく、その場合には、この配管列の上流端が冷却水供給口に、下流端が冷却水排出口にそれぞれ連通される。
【0019】
更に、冷却ユニット6は、図2に示すように、冷却風吹付手段としての上下一対の冷却ファン65を備えている。この各冷却ファン65は、第3および第4ローラ23,24と、第4および第5ローラ24,25と、第5および第6ローラ25,26との間に位置するメッシュベルト2に対し冷却風を吹き付ける。
【0020】
また、図1に示すように、駆動ローラ56の上部には、前後一対の第8および第9ローラ28,29が回転自在に支持されている。この第8および第9ローラ28,29のうちの後側の第8ローラ28は、冷却エリア60から駆動エリア50に供出されたメッシュベルト2のベルト走行方向を略下向きに転向している。駆動ローラ56は、第8ローラ28からのメッシュベルト2のベルト走行方向を略上向きに転向している。更に、前側の第9ローラ29は、駆動ローラ56からのメッシュベルト2のベルト走行方向を略下向きに転向している。この第9ローラ29により転向されたメッシュベルト2は、駆動エリア50の前方(下流側)に設けられたベルトテンショナユニット7に供出している。
【0021】
ベルトテンショナユニット7は、装置基台11の下段13の前端のベルトテンショナエリア70に設けられている。また、ベルトテンショナ7は、下段13の前端より突出する軸71に上下方向へ揺動自在に支持されたアーム72と、このアーム72の先端に回転自在に支持されたテンショナローラ73とを備えている。また、装置基台11の下段13の前端(アーム72の軸71よりも上方位置)には、第1案内ローラ74が回転自在に支持されている。更に、前記ローラ支持枠121の上下方向略中央位置には、第2案内ローラ75が回転自在に支持されている。そして、テンショナローラ73は、前記駆動エリア50からベルトテンショナエリア70に供出されたメッシュベルト2のベルト走行方向を略上向きに転向している。また、第1案内ローラ74は、テンショナローラ73からのメッシュベルト2のベルト走行方向を前方向きに転向している。第2案内ローラ75は、第1案内ローラ74からのメッシュベルト2のベルト走行方向を略上向きに転向し、前記第1ローラ21に供出している。これにより、往路部分20Aに比して復路部分20Bが長い、メッシュベルト2の軌道を構成している。この場合、アーム72およびテンショナローラ73は、図1に一点鎖線および二点鎖線で示すように、メッシュベルト2の弛みに応じて揺動する。
【0022】
このように、本発明の熱処理装置1では、駆動ユニット5よりもベルト走行方向上流側においてメッシュベルト2を冷却する冷却ユニット6が復路部分20Bに沿って設けられているので、メッシュベルト2を連続的に駆動させながら冷却することができる。これにより、熱処理装置1の処理速度を高めて被処理物の処理効率を向上させることができる。
【0023】
しかも、メッシュベルト2は、第4および第5ローラ24,25によりベルト走行方向が前後に反転されて冷却エリア60における復路部分20Bでの長さが増大され、冷却に要する時間が充分に確保される。また、中空の滑走部61を滑走するメッシュベルト2が、冷却水により冷却された当該滑走部61上面との接触により冷却される。更に、冷却ファン65により冷却風を吹き付けてメッシュベルト2が冷却される。したがって、これらを備えた冷却ユニット6によって、メッシュベルト2を非常に効率よく冷却することができ、駆動ローラ56の耐熱温度を充分にクリアすることができる。
【0024】
更に、冷却ユニット6が、炉3の下方に配設されるので、炉長が短くなり、熱処理装置1の省スペース化を図ることができる。
【0025】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。例えば、前記実施形態では、冷却ユニット6に、メッシュベルト2のベルト走行方向を前後に反転させる第4および第5ローラ24,25と、メッシュベルト2を接触により冷却する滑走部61と、メッシュベルト2に冷却風を吹き付ける冷却ファン65とを備えたが、これらを全て用いる必要はなく、これらのうちのいずれか1つまたは2つの組み合わせによって冷却ユニットが構成されていてもよい。また、前記実施形態では、第4および第5ローラ24,25を前後に配置してメッシュベルトの走行方向を前後に反転
させたが、これらの反転ローラによってメッシュベルトの走行方向が前後に反転されさえすればよく、例えば各反転ローラが上下に配置されていてもよい。
【0026】
また、前記実施形態では、搬送ベルトとしてメッシュベルト2を適用したが、搬送ベルトは耐熱性と可撓性とを備えたものであればよい。
【符号の説明】
【0027】
1 熱処理装置(ベルト搬送式熱処理装置)
2 メッシュベルト(搬送ベルト)
20A 往路部分
20B 復路部分
24 第4ローラ(反転ローラ)
25 第5ローラ(反転ローラ)
3 炉
5 駆動ユニット(駆動手段)
6 冷却ユニット(冷却手段)
61 滑走部
65 冷却ファン(冷却風吹付手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を無端の搬送ベルトの往路部分に載せて炉内を搬送しつつ加熱処理を行うベルト搬送式熱処理装置であって、
前記搬送ベルトを駆動する駆動手段と、この駆動手段よりもベルト走行方向上流側において前記搬送ベルトを冷却する冷却手段とが、前記搬送ベルトの復路部分に沿って設けられていることを特徴とするベルト搬送式熱処理装置。
【請求項2】
前記冷却手段は、その上面を前記搬送ベルトが滑走可能な中空の滑走部と、この滑走部内に冷却水を通過させる冷却水通過手段とを備えている請求項1記載のベルト搬送式熱処理装置。
【請求項3】
前記冷却手段は、前記搬送ベルトの走行方向を前後に反転させる複数の反転ローラを備えている請求項1または請求項2記載のベルト搬送式熱処理装置。
【請求項4】
前記冷却手段は、前記搬送ベルトに冷却風を吹き付ける冷却風吹付手段を備えている請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のベルト搬送式熱処理装置。
【請求項5】
前記冷却手段は、前記炉の下方に配設されている請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のベルト搬送式熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−210184(P2010−210184A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58296(P2009−58296)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000167200)光洋サーモシステム株式会社 (180)
【Fターム(参考)】