説明

ベルト移動装置及びこれを用いた画像形成装置

【課題】複数の張架ロールに掛け渡されて循環移動する無端状のベルト部材に対し、突発的な負荷変動があってもベルト部材の速度変動を抑制し安定した移動を持続させる。
【解決手段】ベルト移動装置1は、無端状のベルト部材2と、このベルト部材2を移動可能に掛け渡す回転可能な複数の張架ロールと、を備え、前記張架ロールは、ベルト部材2の移動に伴って追従して回転する一以上の従動ロール3を含むと共に、この従動ロール3の少なくとも一つを慣性量が増大する方向に付与させられた慣性付与ロール4としたものであり、慣性付与ロール4は、ロール本体5と、このロール本体5に追従して回転可能に設けられ且つロール本体5の慣性量を増大する方向に付与する回転慣性体6と、前記ロール本体5の周表面に設けられ且つ誘電分極が可能な体積抵抗率を有する絶縁層7と、ロール本体5に電圧を供給し且つ絶縁層7に誘電分極を生じさせる電圧供給源8と、を有す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト移動装置及びこれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、中間転写ベルトの張架ロールに対してイナーシャ(フライホイールに相当)を設け、二次転写部での振動を抑える構成が記載されている。
特許文献2には、中間転写ベルトを張架するローラに慣性体を有する動吸振器を設けた構成が記載されている。
特許文献3には、中間転写ベルトを張架する従動ローラにフライホイールを設けた構成が記載されている。
特許文献4には、感光体ベルトの露光位置にある支持ローラにフライフォイル(フライホイールに相当)を設けた構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−268595号公報(発明の実施の形態、図2)
【特許文献2】特開2008−76499号公報(発明を実施するための最良の形態、図3)
【特許文献3】特開2007−264292号公報(発明を実施するための最良の形態、図1)
【特許文献4】特開平8−272264号公報(実施例、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、複数の張架ロールに掛け渡されて循環移動する無端状のベルト部材に対し、突発的な負荷変動があってもベルト部材の速度変動を抑制し安定した移動を持続するベルト移動装置及びこれを用いた画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、循環移動が可能な無端状のベルト部材と、このベルト部材を移動可能に掛け渡す回転可能な複数の張架ロールと、を備え、前記張架ロールは、前記ベルト部材の移動に伴って追従して回転する一以上の従動ロールを含むと共に、この従動ロールの少なくとも一つを慣性量が増大する方向に付与させられた慣性付与ロールとしたものであり、前記慣性付与ロールは、回転可能な導電性のロール本体と、このロール本体に追従して回転可能に設けられ且つ当該ロール本体の慣性量を増大する方向に付与する回転慣性体と、前記ロール本体の周表面に設けられ且つ誘電分極が可能な体積抵抗率を有する絶縁層と、前記ロール本体に電圧を供給し且つ前記絶縁層に誘電分極を生じさせる電圧供給源と、を有していることを特徴とするベルト移動装置である。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係るベルト移動装置において、前記慣性付与ロールは、前記回転慣性体の表面の全部若しくは少なくとも前記ロール本体側に面していない表面を覆う絶縁性の保護部材を備えることを特徴とするベルト移動装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係るベルト移動装置において、前記電圧供給源は、前記ロール本体のうち前記回転慣性体を設ける側とは異なる側にて当該ロール本体に電圧を供給することを特徴とするベルト移動装置である。
請求項4に係る発明は、トナー像を保持する像保持体と、この像保持体に保持されたトナー像を記録材上に転写する転写手段と、を備え、前記像保持体及び前記転写手段のうち少なくともいずれかは循環移動が可能な無端状のベルト部材を含み、このベルト部材を移動させるベルト移動装置として請求項1乃至3のいずれかに係るベルト移動装置を用いることを特徴とする画像形成装置である。
請求項5に係る発明は、請求項4に係る画像形成装置において、前記像保持体は、トナー像を形成して保持する像形成保持体と、この像形成保持体に対向して設けられ且つ像形成保持体上のトナー像を記録材への転写前に一時的に保持する前記ベルト部材としての中間転写ベルトと、を有するものであり、前記ベルト移動装置は、前記中間転写ベルトを移動させるものであることを特徴とする画像形成装置である。
請求項6に係る発明は、請求項5に係る画像形成装置において、前記ベルト移動装置は、前記中間転写ベルトを張架する張架ロールを構成し且つ循環移動中の中間転写ベルトの張力が保たれるように当該中間転写ベルトに張力を付与する張力付与ロールを有し、前記慣性付与ロールは、前記張力付与ロールと、前記像形成保持体から前記中間転写ベルトへのトナー像の転写位置のうち前記張力付与ロールに最も近い位置にある転写位置との間に設けられる従動ロールに対して構成されたものであることを特徴とする画像形成装置である。
請求項7に係る発明は、請求項5に係る画像形成装置において、前記ベルト移動装置は、前記中間転写ベルトを張架する張架ロールを構成し且つ当該中間転写ベルトの循環移動が可能なように中間転写ベルトを駆動する駆動ロールを有し、前記慣性付与ロールは、前記駆動ロールと、前記像形成保持体から前記中間転写ベルトへのトナー像の転写位置のうち前記駆動ロールに最も近い位置にある転写位置との間に設けられる従動ロールに対して構成されたものであることを特徴とする画像形成装置である。
請求項8に係る発明は、請求項4に係る画像形成装置において、前記転写手段は、前記像保持体に対向して設けられ且つ像保持体上のトナー像を記録材に転写するロール状の転写部材と、この転写部材を含む複数の張架ロールに掛け渡されて循環移動し且つ像保持体と前記転写部材との間の転写部位から延びる直線経路に沿って記録材を搬送する無端状のベルト部材としての転写ベルトと、を備え、前記ベルト移動装置は、前記転写ベルトを移動させるものであることを特徴とする画像形成装置である。
請求項9に係る発明は、トナー像を保持する像保持体と、この像保持体に保持されたトナー像を記録材上に転写する転写手段と、前記像保持体と前記転写手段との対向部位に向かって記録材を搬送する記録材搬送手段と、を備え、前記記録材搬送手段は記録材を搬送する循環移動が可能な無端状のベルト部材としての記録材搬送ベルトを含み、この記録材搬送ベルトを移動させるベルト移動装置として請求項1乃至3のいずれかに係るベルト移動装置を用いることを特徴とする画像形成装置である。
請求項10に係る発明は、請求項5乃至7のいずれかに係る画像形成装置のうち、前記像形成保持体から前記中間転写ベルトへのトナー像の転写位置及び前記中間転写ベルトから記録材へのトナー像の転写位置までの間の中間転写ベルトに対し前記慣性付与ロールが設けられる態様において、前記電圧供給源は、前記ロール本体側がトナーの帯電特性と逆の極性となる電圧を供給するようにしたことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明によれば、複数の張架ロールに掛け渡されて循環移動する無端状のベルト部材に対し、突発的な負荷変動があってもベルト部材の速度変動を抑制し安定した移動が持続されるベルト移動装置を提供できる。
請求項2に係る発明によれば、複数の張架ロールに掛け渡されて循環移動する無端状のベルト部材に対し、突発的な負荷変動があってもベルト部材の速度変動が抑えられると共に、人的あるいは電気的な安全性にも配慮したベルト移動装置を提供できる。
請求項3に係る発明によれば、電圧供給源からの給電を回転慣性体の近くで行う態様に比べて、回転慣性体の回転動作をより安定して行うことができる。
請求項4に係る発明によれば、無端状のベルト部材に対し、突発的な負荷変動があってもベルト部材の速度変動を抑制し安定した移動が持続される画像形成装置を提供できる。
請求項5に係る発明によれば、記録材への転写前にトナー像を一時的に保持する無端状の中間転写ベルトに対し、突発的な負荷変動があっても中間転写ベルトの速度変動を抑制し安定した移動が持続される画像形成装置を提供できる。
請求項6に係る発明によれば、記録材への転写前にトナー像を一時的に保持する無端状の中間転写ベルトを備える態様に対し、本構成を有さない場合に比べて、張力付与ロールの振動による画像乱れの発生を抑えることができる。
請求項7に係る発明によれば、記録材への転写前にトナー像を一時的に保持する無端状の中間転写ベルトを備える態様に対し、本構成を有さない場合に比べて、駆動系の振動による画像乱れの発生を抑えることができる。
請求項8に係る発明によれば、トナー像を記録材に転写する転写手段に設けられた無端状の転写ベルトに対し、突発的な負荷変動があっても転写ベルトの速度変動を抑制し安定した移動が持続される画像形成装置を提供できる。
請求項9に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、記録材搬送ベルトからのトナーの飛び散りを防ぎながら、ベルト部材に突発的な負荷変動があってもベルト部材の速度変動を抑えることができる。
請求項10に係る発明によれば。本構成を有さない場合に比べて、中間転写ベルトに保持されたトナーの飛び散りを防ぎながら、中間転写ベルトに突発的な負荷変動があっても中間転写ベルトの速度変動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1(a)は本発明を具現化する実施の形態モデルに係るベルト移動装置の概要を示す模式図であり、(b)は(a)の慣性付与ロールを示す模式図である。
【図2】(a)は慣性付与ロールの作用を示す説明図、(b)は比較例の作用を示す説明図である。
【図3】(a)〜(c)は本発明のベルト移動装置を用いた各種画像形成装置の概要を示す模式図である。
【図4】実施の形態1の画像形成装置の概要を示す模式図である。
【図5】(a)及び(b)は実施の形態1の慣性付与ロールの概要を示す説明図である。
【図6】回転慣性体の他の取り付け構造を示す模式図である。
【図7】回転慣性体の他の構成を示す模式図である。
【図8】実施の形態2の画像形成装置の概要を示す模式図である。
【図9】実施の形態3の画像形成装置の概要を示す模式図である。
【図10】実施の形態4の画像形成装置の転写装置の概要を示す模式図である。
【図11】実施の形態4の転写装置の変形例の概要を示す模式図である。
【図12】実施の形態5の画像形成装置の概要を示す模式図である。
【図13】(a)及び(b)は実施の形態5の慣性付与ロールを示す模式図、(c)は作用を示す説明図である。
【図14】(a)は実施の形態5の画像形成装置の概要を示す模式図、(b)はその変形例を示す模式図である。
【図15】実施例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
◎実施の形態の概要
図1(a)は本発明を具現化する実施の形態モデルに係る一態様としてのベルト移動装置の概要を示す模式図、(b)は慣性付与ロールの概要を示す模式図である。
【0010】
図1(a)において、ベルト移動装置1は、循環移動が可能な無端状のベルト部材2と、このベルト部材2を移動可能に掛け渡す回転可能な複数の張架ロールと、を備え、前記張架ロールは、ベルト部材2の移動に伴って追従して回転する一以上の従動ロール3を含むと共に、この従動ロール3の少なくとも一つを慣性量が増大する方向に付与させられた慣性付与ロール4としたものであり、慣性付与ロール4は、回転可能な導電性のロール本体5と、このロール本体5に追従して回転可能に設けられ且つロール本体5の慣性量を増大する方向に付与する回転慣性体6と、前記ロール本体5の周表面に設けられ且つ誘電分極が可能な体積抵抗率を有する絶縁層7と、ロール本体5に電圧を供給し且つ絶縁層7に誘電分極を生じさせる電圧供給源8と、を有している。
【0011】
ここで、ベルト部材2としては特に限定されず、例えば中間転写ベルト、転写ベルト、感光体ベルト等が挙げられる。また、ベルト部材2としては、慣性付与ロール4に対する静電吸着力を有効に作用させる観点からすれば、その体積抵抗率が高い方が望ましく、例えば体積抵抗率が10Ω・cm以上である方がよい。
【0012】
また、慣性付与ロール4の数量は特に限定されず、複数備えるようにしても差し支えない。このような慣性付与ロール4の絶縁層7としては、その体積抵抗率は誘電分極が可能なもので、通常、体積抵抗率が1011Ω・cm以上が適用される。
【0013】
更に、電圧供給源8によって供給される電圧は、一部に交流成分を含んでいても絶縁層7での誘電分極が可能であればよいが、安定した特性を維持するには直流電圧がよい。
【0014】
また、回転慣性体6の代表的態様としては、フライホイールが挙げられるが、その形状は特に限定されず、円板状、外周に凹凸を有する形状等であってもよい。また、回転慣性体6としては、粘性流体等を一部に適用した構成であっても慣性付与ロール4として回転慣性力が有効に作用する構成であればよい。
【0015】
次に、慣性付与ロール4による作用について説明する。
慣性付与ロール4の絶縁層7及び電圧供給源8による作用は、図2(a)に示すように推定される。今、ベルト部材2の慣性付与ロール4に対する巻き付き角(ラップアングル)をθとし、ベルト部材2は図中矢印A方向に移動し、電圧供給源8からロール本体5にプラスの電圧が供給されるものとする。このような構成において、絶縁層7(図ではわかり易くするため絶縁層7の層厚を大きく描いている)によるベルト部材2の吸引効果は次の要因に依るものと考えられる。
【0016】
要因としては、絶縁層7に発生する電荷に依るもので、絶縁層7では、電圧供給源8から供給される電圧によりその全周に亘って誘電分極がなされる。このような誘電分極によって絶縁層7中にはロール本体5側にマイナス電荷、外周側にプラス電荷が発生する。この絶縁層7中のプラス電荷による静電誘導によってベルト部材2にはその裏面側にマイナス電荷が発生し、表面側には裏面側のマイナス電荷に対抗してプラス電荷が発生する。これにより、ベルト部材2が絶縁層7側へ吸引される作用が生じる。更に、絶縁層7とベルト部材2との間では、漏れ電流を考慮する必要が殆どないため、ベルト部材2内に誘導された誘導電荷と絶縁層7との間の静電的な吸引力は安定する。その結果、ベルト部材2はより大きな吸引力で絶縁層7側に静電吸着される。そして、絶縁層7を有することで、漏れ電流もほぼない状態が維持され、ベルト部材2の体積抵抗率に依らずベルト部材2は静電吸着されるようになる。
【0017】
また、別の要因としては、絶縁層7中の発生電荷は全周に亘って安定的に保たれるため、絶縁層7とベルト部材2との間では、ベルト部材2の実際の巻き付き領域(巻き付き角θの部位)のみならず、その前後の微小間隙部においても、ベルト部材2と絶縁層7との間では静電的な吸引力が作用するようになり、結果的に、巻き付き角θより大きな角度θrでベルト部材2は絶縁層7側に吸引されるようになり、巻き付き角θが小さくても慣性付与ロール4とベルト部材2との間の実効的な摩擦力が大きくなるということも考えられる。
【0018】
一方、図2(b)は、比較例として、絶縁層7のない、導電性のロール本体5のみで構成された従動ロール3’を用いた場合を示している。このような構成で電圧供給源8による電圧が供給されると、ベルト部材2と従動ロール3’との間では静電誘導が作用し、ベルト部材2の裏面側にマイナス電荷、表面側にプラスの電荷が発生する。このような導電体(従動ロール3’に相当)とベルト部材2との接触部位では、一部に電荷が集中し易く、ベルト部材2の巻き付き領域(巻き付き角θの部位)では均一な誘導電荷の発生がなされない虞がある。また、このような構成では、導電体とベルト部材2間の放電により、ベルト部材2に発生する電荷の一部も相殺され易く、ベルト部材2中に発生する電荷量は少なくなる。そのため、ベルト部材2と従動ロール3’との間では、巻き付き角θが小さいと両者間の摩擦力が小さく、結果的にベルト部材2と従動ロール3’との間で滑りが発生し易くなる。更に、導電体とベルト部材2との間では、ベルト部材2の体積抵抗率が小さくなると、静電吸着力が発揮されない虞もあり、ベルト部材2の適用が制限されるようにもなる。
【0019】
そして、ベルト部材2の環境変化や経時変化を想定すると、ベルト部材2の体積抵抗率は変化することが想定される。このような場合であっても、図2(a)のように、絶縁層7を備えることで、摩擦力は維持される。
【0020】
次に、慣性付与ロール4の回転慣性体6(図1参照)による作用について説明する。
通常、張架ロールに回転慣性体6を付けたときの角運動量Lは、回転慣性体6の質量をm、半径をr、角速度をωとすると、
L=mrω
となる。
ここで、回転慣性体6による力のモーメントNは、角運動量Lの時間変化が相当し、
N=dL/dt
となる。
角運動量Lの大きな物体の回転を停止させるには、大きな力のモーメントNが必要で、このことは、張架ロールが角運動量の大きな物体を備えている場合、この張架ロールは停止し難いこととなる。つまり、回転慣性体6を使用すると、張架ロールの回転に対する変動が抑えられることを意味する。
【0021】
本実施の形態モデルでは、図1に示すように、従動ロール3のうち少なくとも一つを慣性付与ロール4としたことで、ベルト部材2との静電的な吸引力が大きく、更に、角運動量の大きな張架ロール(慣性付与ロール4が相当)を有していることとなる。
それ故、ベルト部材2の巻き付き角θが小さくても、ベルト部材2と慣性付与ロール4との間の滑りが抑えられると共に、慣性付与ロール4の回転が維持されることで、ベルト部材2の突発的な速度変動が抑えられるようになる。
【0022】
また、力のモーメントNを大きくするには、回転慣性体6の大きさを大きくしたり、角速度ωを大きくすることが考えられる。回転慣性体6の大きさについては、物理的制約があるため、ベルト部材2の速度が同じであれば、角速度ωを大きくする方が好適である。したがって、回転慣性体6を外径の小さい張架ロールに適用するようにすればよい。
【0023】
更に、このようなベルト移動装置1における電圧供給源8からの電圧による影響を考慮すると、慣性付与ロール4は、回転慣性体6の表面の全部若しくは少なくともロール本体5側に面していない表面を覆う絶縁性の保護部材を備えることが好ましい。このような保護部材としては、例えば回転慣性体6にゴムカバーを被せる等が挙げられる。このような保護部材を設けることで、操作者が触れても安全で、また、他の部位との放電も抑えられる。更に、回転慣性体6の回転動作への影響を低減し、回転動作をより安定的に行う観点から、電圧供給源8は、ロール本体5のうち回転慣性体6を設ける側とは異なる側にてロール本体5に電圧を供給することが好ましい。
【0024】
そして、このようなベルト移動装置1を画像形成装置に適用するには、次のようにすればよい。すなわち、トナー像を保持する像保持体と、この像保持体に保持されたトナー像を記録材上に転写する転写手段と、を備え、像保持体及び転写手段のうち少なくともいずれかは循環移動が可能な無端状のベルト部材2を含み、このベルト部材2を移動させるベルト移動装置1として上述のベルト移動装置1を用いるようにすればよい。つまり、ベルト移動装置1を像保持体側及び転写手段側のいずれか一方側にのみ設けるようにしてもよいし、両方に設けるようにしてもよい。
【0025】
このような画像形成装置の代表的態様としては、図3に示すものが挙げられる。
図3(a)は、像保持体10が、トナー像を形成して保持する像形成保持体11と、この像形成保持体11に対向して設けられ且つ像形成保持体11上のトナー像を記録材12への転写前に一時的に保持するベルト部材2としての中間転写ベルト13と、を有するものであり、ベルト移動装置1は、中間転写ベルト13を移動させる態様である。尚、符号14は像保持体10に保持されたトナー像を記録材12上に転写する転写手段である。
【0026】
このような態様における像形成保持体11の代表的態様としては、トナー像を形成して保持する感光体が挙げられる。また、特に、このようにベルト部材2が中間転写ベルト13である態様においては、循環移動するベルト部材2の張力を維持したり、駆動を行ったりするための張架ロールとして、張力付与ロールや駆動ロールが適用されることが多い。このような張架ロールが適用される場合、次のようにすればよい。
【0027】
すなわち、ベルト移動装置1は、中間転写ベルト13を張架する張架ロールを構成し且つ循環移動中の中間転写ベルト13の張力が保たれるように中間転写ベルト13に張力を付与する張力付与ロールを有し、慣性付与ロール4は、張力付与ロールと、像形成保持体11から中間転写ベルト13へのトナー像の転写位置のうち張力付与ロールに最も近い位置にある転写位置との間に設けられる従動ロール3に対して構成されることが好ましい。この場合、張力付与ロールの振動が中間転写ベルト13に影響するような事態に際しても、像形成保持体11上のトナー像が中間転写ベルト13に受け渡される部位(転写部位)への影響が抑えられる。
【0028】
また、ベルト移動装置1は、中間転写ベルト13を張架する張架ロールを構成し且つ中間転写ベルト13の循環移動が可能なように中間転写ベルト13を駆動する駆動ロールを有し、慣性付与ロール4は、駆動ロールと、像形成保持体11から中間転写ベルト13へのトナー像の転写位置のうち駆動ロールに最も近い位置にある転写位置との間に設けられる従動ロール3に対して構成されることが好ましい。この場合、駆動系による駆動ロールの振動が中間転写ベルト13に影響するような事態に際しても、像形成保持体11上のトナー像が中間転写ベルト13に受け渡される部位への影響が抑えられる。
【0029】
更に、トナー像を形成して保持する像保持体として、循環移動が可能な感光体ベルトを有する態様であっても差し支えなく、この場合、感光体ベルトを移動させるベルト移動装置1として上述のベルト移動装置1を用いるようにしてもよい。
【0030】
そして、画像形成装置の他の態様としては、図3(b)に示すように、転写手段14は、像保持体10に対向して設けられ且つ像保持体10上のトナー像を記録材12に転写するロール状の転写部材15と、この転写部材15を含む複数の張架ロールに掛け渡されて循環移動し且つ像保持体10と転写部材15との間の転写部位から延びる直線経路に沿って記録材12を搬送する無端状のベルト部材としての転写ベルト16と、を備え、ベルト移動装置1は、転写ベルト16を移動させる態様である。
【0031】
この態様における像保持体10としては、トナー像を形成して保持する像形成保持体11や、像形成保持体11からのトナー像を記録材12への転写前に一時的に保持する中間転写体の態様(図3(a)参照)が挙げられる。そのため、転写ベルト16としては、中間転写体上に一次転写されたトナー像を記録材12に転写する二次転写部位に用いられる態様、像形成保持体11上のトナー像を記録材12に転写する転写部位に用いられる態様が挙げられる。尚、転写ベルト16の配設形状については、転写部位に対し記録材12の搬送方向下流側に延びる部分を有する態様や、転写部位に対し記録材12の搬送方向上流側に延びる部分を有する態様や、あるいは、転写部位に対し記録材12の搬送方向上流側及び下流側の両方に延びる部分を有する態様のいずれでも差し支えない。また、この態様においては、転写部材15を慣性付与ロール4とするものではない。
【0032】
更に、図3(c)に示す他の態様としては、トナー像を保持する像保持体10と、この像保持体10に保持されたトナー像を記録材12上に転写する転写手段14と、像保持体10と転写手段14との対向部位に向かって記録材12を搬送する記録材搬送手段と、を備え、記録材搬送手段は記録材12を搬送する循環移動が可能な無端状のベルト部材としての記録材搬送ベルト17を含み、この記録材搬送ベルト17を移動させるベルト移動装置1として上述のベルト移動装置1を用いる態様である。
【0033】
そして、特に、図3(a)のように、ベルト部材2が中間転写ベルト13である態様のうち、像形成保持体11から中間転写ベルト13へのトナー像の転写位置及び中間転写ベルト13から記録材12へのトナー像の転写位置までの間の中間転写ベルト13に対し慣性付与ロール4が設けられる態様において、ベルト部材2に付着したトナーに対し、ベルト部材2からの飛び散りを抑える観点から、電圧供給源8は、ロール本体5側がトナーの帯電特性と逆の極性となる電圧を供給することが好ましい。この場合、絶縁層7を介してベルト部材2表面には、トナーを吸引する方向の静電力が作用するようになり、ベルト部材2からのトナーの飛び散りが抑えられる。
【0034】
次に、図面に示す実施の形態に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
◎実施の形態1
図4は、一例として本発明のベルト移動装置が適用された実施の形態1の画像形成装置の概要を示す模式図である。
【0035】
同図において、本実施の形態の画像形成装置は、例えば電子写真方式を用いた画像形成装置であり、トナー像を形成して保持する像形成保持体として直線状に並べられた六つの作像装置20(20a〜20f)と、これらの作像装置20に対向して設けられ、作像装置20のトナー像を記録材Pへの転写前に一時的に保持する循環移動が可能な無端状のベルト部材としての中間転写ベルト30と、中間転写ベルト30上に一時的に保持されたトナー像を記録材Pに転写する転写手段としての転写装置50とを備えている。
【0036】
作像装置20(20a〜20f)は、図中矢印Aで示す中間転写ベルト30の移動方向に沿って、例えば透明色、特色、イエロー色、マゼンタ色、シアン色、黒色の夫々のトナーを用いた作像装置20を備えている。本例では、作像装置20c〜20fが例えばフルカラー用であり、その他に、透明色の作像装置20a及び特色の作像装置20bが追加された構成となっている。尚、各色の色や配列はこれに限られず、適宜選定すればよい。
【0037】
作像装置20(20a〜20f)は、使用するトナーの他は略同様の構成のため、ここでは、最上流側に配置された作像装置20a(20)を代表例として説明する。
作像装置20は、表面に感光層を有し矢印B方向に回転する感光体21と、感光体21の感光層に予め定めた帯電電位を持たせるための帯電器22、帯電された感光体21に潜像を形成する露光器23、感光体21上に形成された潜像を顕像化するためにトナーにて現像する現像器24、現像された感光体21上のトナー像を中間転写ベルト30上に転写する一次転写器25、転写後の感光体21上の残留トナーを清掃する清掃器26等を備えている。
【0038】
ここで、帯電器22としてはコロナ帯電器のタイプを示しているが、例えば張架ロールを用いた接触型の帯電器であっても差し支えない。また、露光器23としては、潜像が形成されるものであればよく、レーザ走査型のものであってもよいし、LEDをライン状に並べたLEDアレイ型のものであっても差し支えない。更に、一次転写器25としては中間転写ベルト30の裏面側に接触するロール状のものであってもよいし、中間転写ベルト30から離間して配置したコロナ帯電器であっても差し支えない。更にまた、清掃器26の清掃に用いる部材は、ブレード、ブラシ等適宜選定すればよい。そして、感光体21の周囲には、例えば必要な除電を施す除電器等を更に設けるようにしても差し支えない。
【0039】
また、中間転写ベルト30は、複数の張架ロール31〜40に掛け渡されて回転するもので、本例では、例えばポリイミド樹脂にカーボンブラック等の導電性フィラーを含有させ、体積抵抗率を例えば10Ω・cmに調整した構成のものとなっている。そして、このような中間転写ベルト30が掛け渡されている張架ロール31〜40のうち、中間転写ベルト30の回転方向にて最上流側の作像装置20aより上流側には、中間転写ベルト30を回転させるための駆動ロール31が設けられ、図示外のモータからの回転力が駆動ロール31に伝達されることで、中間転写ベルト30を回転させるようになっている。また、最下流側の作像装置20fより中間転写ベルト30の回転方向の下流側には、回転する中間転写ベルト30の張力を安定に保つための張力付与ロール38が設けられ、例えばばね等の付勢手段によって中間転写ベルト30を表面側に張り出させ、中間転写ベルト30に対する安定した張力が与えられている。
【0040】
また、張架ロール39と中間転写ベルト30を挟んで対向する位置には、転写装置(二次転写装置)50が設けられ、図示外の記録材供給部から供給される記録材Pに対して、中間転写ベルト30上のトナー像を一括転写(二次転写)するようになる。本実施の形態の転写装置50は、張架ロール39に対して中間転写ベルト30を挟んで対向する位置に設けられた転写部材としての転写ロール51と、この転写ロール51より小径な構成の従動ロール52と、転写ロール51及び従動ロール52に掛け渡されて回転する転写ベルト53で構成されている。
【0041】
転写ロール51は、表面に予め決められた体積抵抗率に調整されたゴム層を有し、この転写ロール51と張架ロール39との間に転写電界を作用させることで、中間転写ベルト30上のトナー像が記録材P上に転写される。また、転写ベルト53は、例えばポリイミド樹脂にカーボンブラック等の導電性フィラーを加えて体積抵抗率が例えば10Ω・cmになるように調整されたもので、中間転写ベルト30の回転によって転写ベルト53が追従して回転するようになっている。
【0042】
そして、本実施の形態では、張力付与ロール38に対して中間転写ベルト30の回転方向の上流側に隣り合う張架ロール37は中間転写ベルト30の回転に追従して回転する従動ロールであり、この張架ロール37が後述する慣性付与ロール100として構成されている。尚、符号41は二次転写後の中間転写ベルト30上の残留トナーを清掃する清掃装置である。
【0043】
また、本実施の形態の画像形成装置での記録材Pの搬送系は次のようになっている。図示外の記録材供給部から搬送された記録材Pは、転写ロール51と張架ロール39とが対向する二次転写部に達する前にレジストレーションロール(レジストロール)71によって一旦位置決めされた後、予め決められたタイミングで二次転写部に向かって搬送される。レジストロール71の下流側には、記録材Pを二次転写部に案内する案内部材72が設けられ、記録材Pは案内部材72の間を案内されて二次転写部に至る。二次転写部を通過した記録材Pは転写ベルト53の回転に伴って転写ベルト53上を進み、搬送ベルト73を経由して、例えば加熱ロール61と加圧ロール62とで構成される定着器60を通った後、排出ロール74によって装置外へ排出される。
【0044】
次に、本実施の形態の特徴である張架ロール37に対する構成を説明する。本例では、張架ロール37が慣性付与ロール100として構成される。図5(a)及び(b)は、張架ロール37(慣性付与ロール100)の構成を示すもので、(a)は中間転写ベルト30の表面側から見た図、(b)は張架ロール37(慣性付与ロール100)の回転軸37a方向から見た図である。
【0045】
慣性付与ロール100は、回転可能な導電性のロール本体101と、ロール本体101の回転軸37aに対して回転可能に設けられ且つロール本体101の慣性量を増大する方向に付与する回転慣性体としてのフライホイール104と、ロール本体101の周表面に設けられ、誘電分極が可能で且つ中間転写ベルト30より大きい体積抵抗率を有する絶縁層102と、ロール本体101に電圧を供給し且つ絶縁層102に誘電分極を生じさせる電圧供給源103と、を有している。
【0046】
本実施の形態の張架ロール37は、例えばアルミニウム合金製のものから構成され、その表面に例えばシュウ酸による陽極化成処理を施してアルミナ皮膜を形成し、その後ベーマイト処理や電着塗装を行うことで封孔処理を行い、高電圧にも耐える薄い絶縁皮膜の絶縁層102が形成されている。このような絶縁層102としては、例えば体積抵抗率が1012〜1014Ω・cmで、比誘電率が8〜10のものが形成される。尚、仮に回転軸37a部分に絶縁皮膜が形成された場合には、研削等で取り除く処理を行っている。
【0047】
また、本実施の形態では負帯電トナーを使用しているため、電圧供給源103からの電圧はプラス電圧が回転軸37aに作用するようになっており、例えば1kVが適用されている。更に、フライホイール104は質量を大きくするため、例えば鋼製のもので、その中央部分が窪んだ凹部104aとなっており、外周寄りの質量を中央部より大きくすることで、一層安定した回転がなされる。そして、フライホイール104の表面には、保護部材としての絶縁性のゴムカバー105が被せられている。尚、電圧供給源103からの電圧としては、例えば数100V〜数kVの間で実験等によって適宜選定すればよい。
【0048】
一般に、図4に示す画像形成装置のような中間転写ベルト30を用いる場合、駆動ロール31や張力付与ロール38に対しては、機能上から中間転写ベルト30が巻き付く巻き付き角(ラップアングル)θは大きく取られる。そのため、中間転写ベルト30が掛け渡される張架ロール31〜40の中で、駆動ロール31や張力付与ロール38以外の張架ロールに大きな巻き付き角θを与えることは困難となる。一方、中間転写ベルト30の表面側に張架ロールを配置することで、巻き付き角θを大きくすることも可能であるが、この場合、中間転写ベルト30上の残留トナーの影響がない部分での適用となり、適用箇所の選択肢は狭まる。それ故、本実施の形態の張架ロール37も、図4に示すように、その巻き付き角θは小さくなる。
【0049】
次に、本実施の形態の画像形成装置での動作について説明する。
図4に示すように、中間転写ベルト30の回転に合わせて、各作像装置20(20a〜20f)では、各色に応じたトナー像が夫々の感光体21上に形成される。夫々の感光体21上に形成されたトナー像は、中間転写ベルト30の回転に合わせて、一次転写器25によって順次中間転写ベルト30上に一次転写され、中間転写ベルト30上で多重化される。中間転写ベルト30上で多重化されたトナー像は、転写装置50によって記録材P上に一括転写される。トナー像が転写された記録材Pは、転写ベルト53によって、転写ベルト53側に吸引される方向の力が作用し、中間転写ベルト30側に貼り付くことなく転写ベルト53によって搬送される。トナー像が転写された記録材Pは、その後、定着器60を経由して装置外に排出される。
【0050】
このような中間転写ベルト30を用いた構成の画像形成装置において、中間転写ベルト30に速度変動が生じると、一次転写部での転写位置ずれ等が生じ、画像乱れが生じる虞がある。中間転写ベルト30に速度変動をもたらす負荷変動としては、例えば張力付与ロール38での振動や、二次転写部への記録材Pの突入時や二次転写部からの記録材Pの排出時等が挙げられる。このような負荷変動に対しては、本実施の形態では張架ロール37を慣性付与ロール100とすることで対応している。
【0051】
本実施の形態の慣性付与ロール100は、図5に示すように、ロール本体101と、絶縁層102と、電圧供給源103と、フライホイール104と、を備えることで、絶縁層102と中間転写ベルト30との間に大きな静電的な吸引力が作用し、中間転写ベルト30が慣性付与ロール100側に静電吸着される。それ故、絶縁層102を設けない場合に比べて張架ロール37(慣性付与ロール100)と中間転写ベルト30との間の実効的な摩擦力が大きくなっている。更に、本実施の形態では、絶縁層102の比誘電率εが例えば通常の合成樹脂皮膜の場合より大きいため、より一層静電的な吸引力が大きくなる。その結果、巻き付き角θが小さくても十分な摩擦力が確保され、中間転写ベルト30の回転に合わせて、張架ロール37が安定して追従した回転をするようになる。つまり、張架ロール37の回転に対して中間転写ベルト30が安定して回転することとなる。更にまた、本実施の形態ではフライホイール104を設けているため、張架ロール37には大きな慣性量が付与され、張架ロール37としては安定した回転が長く維持される。
【0052】
このような構成にあって、張力付与ロール38は中間転写ベルト30を外側に押し付けるように付勢されており、中間転写ベルト30の回転に伴って振動する。このような振動によって、中間転写ベルト30は影響を受け、中間転写ベルト30が張力付与ロール38の振動によって引っ張られたり緩められたりを繰り返すことで、張架ロール37側では中間転写ベルト30の速度変動が生じる虞がある。仮に、このような中間転写ベルト30の速度変動がそのままであると、例えば作像装置20f等では一次転写部で転写中のトナー像に画像乱れが生じるようにもなる。
【0053】
本実施の形態では、張架ロール37を慣性付与ロール100とすることで、中間転写ベルト30での突発的な速度変動が生じ、このような速度変動が張架ロール37の速度変動をもたらそうとしても、張架ロール37が安定した回転を持続しようとし、更に、張架ロール37と中間転写ベルト30との間の摩擦力も大きいため、安定した回転の張架ロール37によって中間転写ベルト30の速度変動が抑えられる。それ故、一次転写時のトナー像の画像乱れが抑えられる。
また、このような中間転写ベルト30での突発的な速度変動は、二次転写部に記録材Pが侵入する際や二次転写部から記録材Pが抜ける際にも生じるが、このときも張架ロール37が同様に作用することで、中間転写ベルト30の速度変動が抑えられる。
【0054】
また、本実施の形態では、張架ロール37にトナーの帯電極性とは異なる極性の電圧を供給しているため、作像装置20によって中間転写ベルト30上に転写されたトナー像が張架ロール37に対向する部位を通過する際にも、中間転写ベルト30上からのトナーの飛び散りも抑えられ、中間転写ベルト30上で安定したトナー像が維持される。
【0055】
そして、本実施の形態では、フライホイール104にゴムカバー105を被せているため、張架ロール37に電圧供給源103からの電圧が供給された状態のときに、操作者が仮にフライホイール104に近づいても、直接接触することがなく、ゴムカバー105によって操作者が感電することの危険性が免れる。また、電圧供給源103からの電圧によってフライホイール104と他の部位との間での電気的な影響(放電等)も抑えられる。
【0056】
本実施の形態では、フライホイール104を張架ロール37の回転軸37aに取り付ける構成を示したが、フライホイール104を張架ロール37の回転軸37aに取り付けることがレイアウト上の制約などで困難な場合には、図6に示すようにしてもよい。図6は張架ロール37の回転軸37aに対しギア37bを設け、フライホール104側にもギア104bを設け、双方のギア37b,104bを互いに噛み合わせるようにしている。このような構成を採用することで、フライホイール104の外径が大きくなっても、レイアウトの自由度が増やせると共に、例えばギア37b及びギア104bのギア比を工夫すれば、フライホイール104の角速度の選択自由度も向上する。
【0057】
また、フライホイール104の形状は特に限定されず、安定した回転がなされるものであればよく、例えば図7(a)〜(c)に示す形状であっても差し支えない。図7(a)は円板状のフライホイール104、(b)は円板の外周に歯状の突起104Aを持ったフライホイール104、(c)は円板の外周の一部に弧状の切り欠き部104Bを有するフライホイール104である。このような形状で、特に、(b)や(c)の形状のフライホイール104は、例えばフライホイール104を速く停止させたい場合に、歯状の突起104Aや弧状の切り欠き部104Bに他の部材を突き当てるようにすれば、フライホイール104の回転が容易に停止される。
【0058】
本実施の形態では、張架ロール37を慣性付与ロール100として構成する態様を示したが、例えば張架ロール36を慣性付与ロール100としても差し支えない。更に、本実施の形態では、慣性付与ロール100の絶縁層102として、アルマイト処理を施す態様を示したが、例えばポリイミド樹脂等の溶液を塗布して、絶縁皮膜を構成してもよい。そして、このような絶縁皮膜としては、次のような構成を適用してもよい。例えば、中間転写ベルト30との摩擦力を大きくするために、合成樹脂中にフィラーを混合して粗面化することで、摩擦力を大きくしたり、中間転写ベルト30の材質に対して例えば帯電系列で大きく異なる絶縁材料(例えばポリアミド樹脂等)の絶縁皮膜を設けることであってもよい。更には、合成樹脂に比誘電率の高い材料(例えばチタン酸バリウム)の粉末を混ぜたり、粘着性のあるシリコーン樹脂を塗布したりしてもよい。
【0059】
本実施の形態では、慣性付与ロール100の絶縁層102の体積抵抗率が中間転写ベルト30の体積抵抗率より大きいものとしたが、絶縁層102として誘電分極が可能な体積抵抗率を有し、電圧供給源103により供給される電圧で絶縁層102が誘電分極する条件であれば、中間転写ベルト30の体積抵抗率は特に問われない。この場合、絶縁層102による誘電分極により、中間転写ベルト30には十分な静電誘導がなされる。
【0060】
そして、本実施の形態では、図4に示す画像形成装置、つまり、六つの作像装置20を有する構成を示したが、画像形成装置としてはこれに限られず、作像装置20の数量は幾つであっても差し支えない。また、中間転写ベルト30を用いる構成であれば、一つの作像装置20で複数色のトナー像を形成する構成の画像形成装置であってもよい。
【0061】
◎実施の形態2
図8は、実施の形態2の画像形成装置の概要を示す模式図である。本実施の形態の画像形成装置は、実施の形態1の画像形成装置(図4参照)とほぼ同じ構成であるが、慣性付与ロール100の配置場所が実施の形態1と異なる。本実施の形態では、駆動ロール31の下流側に隣り合う張架ロール32を慣性付与ロール100としている。尚、画像形成装置の構成や動作は、実施の形態1と同様のため、ここでは、その説明を省略する。
【0062】
このような画像形成装置では、図示外のモータやギアを含む駆動系を介して駆動ロール31が駆動されるが、このような駆動系の振動によって駆動ロール31が振動し、これによって中間転写ベルト30での突発的な速度変動が生じる。その結果、作像装置20での一次転写時に転写している最中の画像を乱してしまう虞がある。本実施の形態では、駆動ロール31に対して中間転写ベルト30の回転方向の下流側に隣り合う張架ロール32を慣性付与ロール100とすると共に、駆動ロール31の外径より張架ロール32(慣性付与ロール100)の外径の方が小さいため、フライホイール104の慣性量も大きなものとなっている。そのため、駆動ロール31での振動があっても、中間転写ベルト30での速度変動が抑えられ、一次転写部での画像乱れの発生が抑えられる。
【0063】
本実施の形態では、電圧供給源(図示せず)からの電圧は、トナーの帯電特性と逆の極性であってもよいし、同じ極性であってもよい。この張架ロール32は、中間転写ベルト30の残留トナーが清掃された後の中間転写ベルト30の裏面側に接触するため、仮に、電圧供給源からの電圧がトナーの帯電特性と同じ極性であっても、中間転写ベルト30上にはトナーが殆どない状態であり、トナーの飛び散りを起こす虞は殆どない。
【0064】
以上の実施の形態1及び実施の形態2では、張力付与ロール38や駆動ロール31に近い部位の張架ロールを慣性付与ロール100とする態様を示したが、慣性付与ロール100としては他の従動ロールに適用しても差し支えない。例えば、張架ロール40を慣性付与ロール100とするようにしてもよい。また、慣性付与ロール100を一箇所とする態様を示したが、慣性付与ロール100を複数箇所に設けるようにしてもよい。
【0065】
◎実施の形態3
図9は、実施の形態3の画像形成装置の概要を示す模式図である。本実施の形態の画像形成装置は、実施の形態1の画像形成装置(図4参照)とほぼ同じ構成であるが、駆動ロール31の下流側に隣り合う位置に、中間転写ベルト30の表面側から中間転写ベルト30を押し付けるように張架ロール42を設け、この張架ロール42を慣性付与ロール100として構成したものである。尚、画像形成装置の構成や動作は、実施の形態1と同様のため、ここでは、その説明を省略する。
【0066】
本実施の形態では、張架ロール42を中間転写ベルト30の表面側から中間転写ベルト30を押し付けるように設けている。このような無端状の中間転写ベルト30に対して全ての張架ロールが裏面側から支持する構成の場合、夫々の張架ロールに対する中間転写ベルト30の巻き付き角θの総和は360度となり、慣性付与ロール100を設ける張架ロール(従動ロール)では、中間転写ベルト30に対する巻き付き角θが大きく取れない。しかしながら、本実施の形態では、張架ロール42を中間転写ベルト30の表面側から押し付けているので、中間転写ベルト30の巻き付き角θを大きくすることができ、張架ロール42(慣性付与ロール100)と中間転写ベルト30との摩擦力は巻き付き角θが小さい場合に比べて大きくなる。
【0067】
本実施の形態では、電圧供給源(図示せず)からの電圧は、トナーの帯電特性と逆の極性であってもよいし、同じ極性であってもよい。この張架ロール42は、中間転写ベルト30の残留トナーが清掃された後に中間転写ベルト30の表面側に接触するため、この張架ロール42の表面の汚れは殆どなく、また、中間転写ベルト30上の残留トナーも殆どないことから、電圧供給源からの電圧の極性はいずれであっても差し支えない。
【0068】
◎実施の形態4
図10(a)は、実施の形態4の画像形成装置の転写装置(二次転写装置)50の概要を示す模式図であり、(b)及び(c)は本実施の形態における慣性付与ロール100を示す模式図である。本実施の形態の画像形成装置は、実施の形態1の画像形成装置(図4参照)と略同様であるため、ここでは省略する。そして、本実施の形態では、慣性付与ロール100が、実施の形態1のように中間転写ベルト30が掛け渡される張架ロールではなく、転写装置50側に設けられている点に特徴がある。尚、画像形成装置の構成や動作は、実施の形態1と略同様のため、ここでは、その説明を省略し、転写装置50の周りについて説明する。
【0069】
本実施の形態の転写装置50は、中間転写ベルト30側の張架ロール39に対向する位置に設けられた転写部材としての転写ロール51と、この転写ロール51より小径な構成の従動ロール52と、転写ロール51と従動ロール52との間に掛け渡されて回転する、例えばポリイミド等の合成樹脂製の転写ベルト53等で構成されている。また、本実施の形態の転写ベルト53は、体積抵抗率が例えば10Ω・cmに調整される。
【0070】
このような転写装置50では、転写ロール51が表面に弾性層を備え、中間転写ベルト30上のトナー像を記録材P上に二次転写する際、安定した転写がなされるようになる。更に、中間転写ベルト30を挟んで、張架ロール39と転写ロール51とが対向して配置されているため、中間転写ベルト30の回転によって転写ベルト53が回転し、転写ロール51が追従して回転する。これにより、従動ロール52が回転する。このような転写装置50では、従動ロール52に対する転写ベルト53の巻き付き角θを大きくでき、その分、従動ロール52と転写ベルト53との摩擦力は巻き付き角θが小さい場合に比べて大きくなる。
【0071】
更に、本実施の形態では、転写装置50の従動ロール52が慣性付与ロール100となっている。慣性付与ロール100は、回転可能な導電性のロール本体101と、このロール本体101の周表面に設けられ且つ誘電分極が可能な体積抵抗率を有する絶縁層102と、ロール本体101に電圧を供給し且つ絶縁層102に誘電分極を生じさせる電圧供給源103と、ロール本体101の回転軸52aに対応して設けられ且つロール本体101の慣性量を増大する方向に付与するフライホイール104とで構成されている。
【0072】
本実施の形態では、慣性付与ロール100が、転写ロール51より小径の従動ロール52に対して設けられることで、フライホイール104の角速度も大きく、慣性量も一層大きいものとなっている。尚、符号105はフライホイール104に被せられたゴムカバーである。
【0073】
このような構成の転写装置50を用いることで、中間転写ベルト30に何らかの負荷変動、例えば二次転写部に対して記録材Pが侵入したとき、中間転写ベルト30に突発的な速度変動が生じると、この速度変動はそのまま転写装置50側にも伝達され、転写ベルト53に速度変動をもたらすように作用する。本実施の形態では、転写装置50側の従動ロール52を慣性付与ロール100としたので、転写装置50側の転写ベルト53の速度変動が抑えられ、この作用が転写ベルト53から中間転写ベルト30に伝達される結果、中間転写ベルト30の速度変動が抑えられる。それにより、画像乱れ等の発生が抑えられる。
【0074】
本実施の形態では、転写ベルト53が、転写部位から記録材Pの搬送方向における下流側に延びて設けられる構成を示したが、転写ロール51によって張架されるベルト部材であれば、転写ベルト53と見なすことができ、転写部位を挟んで上流側から下流側まで設けられる態様や、転写部位から上流側に設けられる態様も含まれる。
【0075】
また、図11は、実施の形態4の変形例としての転写装置50を示したものである。同図において、転写装置50は、図10(a)で示した構成と異なり、転写ロール51に駆動系を備える構成となっている。ここでは、転写ロール51は、トルクリミッタ55を介してモータ54に接続されている。これにより、モータ54からの回転力は転写ロール51に伝達されるが、トルクリミッタ55によってモータ54の回転力が制限された状態で伝達される。
【0076】
このように本例では中間転写ベルト30及び転写装置50の双方に駆動源を備えているため、中間転写ベルト30と転写ベルト53との対向部での滑りが抑えられ、追従した回転がより一層安定してなされることで、記録材Pの搬送性が向上する。また、従動ロール52を慣性付与ロール100としているため、中間転写ベルト30に突発的な速度変動が生じても、転写装置50の転写ベルト53の速度変動が抑えられる分、中間転写ベルト30での速度変動が抑えられる。
【0077】
◎実施の形態5
図12は、実施の形態5の画像形成装置の概要を示す模式図である。本実施の形態の画像形成装置は、記録材Pを搬送する記録材搬送ベルト80を用いた構成のものとなっている。尚、画像形成装置の構成は、実施の形態1に近似するため、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明は省略する。
【0078】
本実施の形態の画像形成装置は、トナー像を形成して保持する像保持体としての四つの作像装置20(20c〜20f)と、この作像装置20に保持されたトナー像を記録材P上に転写手段とを備え、転写手段は、作像装置20に対向して設けられ且つ記録材Pを保持して搬送する循環回転が可能な無端状のベルト部材としての記録材搬送ベルト80と、この記録材搬送ベルト80の裏面側に設けられ且つ作像装置20との間でトナー像を記録材Pに転写する転写部材としての一次転写器25と、を備えている。各作像装置20は、実施の形態1と同様の構成のため、ここではその詳細な説明は省略する。
【0079】
記録材搬送ベルト80は、複数の張架ロール43〜47に掛け渡されて図中矢印A方向に回転するようになっている。張架ロール43は記録材搬送ベルト80を回転させる駆動ロールであり、張架ロール46が記録材搬送ベルト80に張力を付与する張力付与ロールである。また、張力付与ロール46と駆動ロール43との間の張架ロール47に対して記録材搬送ベルト80を挟んで対向する位置には、記録材搬送ベルト80上の汚れを清掃する清掃器81が設けられている。尚、符号60は、例えば加熱ロール61と加圧ロール62とで構成される定着器である。
【0080】
更に、本実施の形態では、駆動ロール43の下流側に隣り合う張架ロール44を慣性付与ロール100としており、記録材搬送ベルト80に対して巻き付き角θで接している。本実施の形態における慣性付与ロール100は、図13(a)及び(b)に示すようになっている。回転可能な導電性のロール本体101と、このロール本体101の周表面に設けられ且つ誘電分極が可能な体積抵抗率を有する絶縁層102と、ロール本体101に電圧を供給し且つ絶縁層102に誘電分極を生じさせる電圧供給源103と、ロール本体101の回転軸44aに対応して設けられ且つロール本体101での慣性量を増大する方向に付与するフライホイール104とで構成されている。尚、符号105はフライホイール104に被せたゴムカバーである。
【0081】
本実施の形態の記録材搬送ベルト80は、例えば体積抵抗率が10Ω・cmに調整されたポリイミド樹脂製のベルトが用いられ、慣性付与ロール100は実施の形態1と略同様の構成となっている。
【0082】
本実施の形態における画像形成装置の動作について図12を基に説明する。図示外の記録材供給部から搬送された記録材Pは、記録材搬送ベルト80の張架ロール44(慣性付与ロール100)の位置で、記録材搬送ベルト80を静電的に吸引され、記録材搬送ベルト80の移動に伴って移動する。作像装置20c〜20f(20)にて形成されたトナー像が、記録材搬送ベルト80の移動に合わせて、一次転写器25によって順次記録材P上に転写され、最下流側の作像装置20fを通過したときには、記録材P上に多重化されたトナー像が形成される。その後、記録材Pは記録材搬送ベルト80から離れて、定着器60に搬送され、装置外へ排出される。また、仮に、ジャム等で記録材Pがない状態で直接記録材搬送ベルト80上にトナーが付着した場合には、清掃器81で清掃される。
【0083】
このような実施の形態における慣性付与ロール100での動作について説明する。本実施の形態では、図13(c)に示すように、電圧供給源103からの電圧は、トナーとして負帯電トナーを用いる場合、ロール本体101に対し絶縁層102の表面側がトナーの帯電極性とは逆の極性となる電圧を供給している。この電圧によって、絶縁層102では誘電分極が十分行われ、記録材搬送ベルト80を静電的に吸引する。更にこのとき、記録材搬送ベルト80では絶縁層102による誘導電荷が多く発生することから、この記録材搬送ベルト80で発生した誘導電荷によって、記録材搬送ベルト80上の記録材Pが記録材搬送ベルト80側に静電的に吸引される。そのため、例えば別途帯電器を用いて、記録材搬送ベルト80を帯電させなくても、記録材Pは慣性付与ロール100との対向部位で記録材搬送ベルト80側に静電的に吸着される。
【0084】
本実施の形態では、記録材搬送ベルト80が掛け渡される張架ロール44を慣性付与ロール44としたので、記録材搬送ベルト80に対して、例えば駆動ロール43の振動による記録材搬送ベルト80の突発的な速度変動があっても、慣性付与ロール100によって記録材搬送ベルト80の速度変動は抑えられる。そのため、一次転写器25における転写部位での画像ずれが抑えられる。また、記録材Pが転写部位に侵入したときのような負荷変動に対しても、記録材搬送ベルト80の速度変動は抑えられる。
【0085】
◎実施の形態6
図14(a)は、実施の形態6の画像形成装置の概要を示す模式図である。本実施の形態の画像形成装置は、像形成保持体としての作像装置90を備え、この作像装置90に対向する位置に、記録材搬送ベルト80を備えた構成となっている。
【0086】
作像装置90は、図中矢印C方向に回転する感光体91を有し、感光体91の周りに、感光体91を帯電する帯電器92、帯電した感光体91に潜像を形成するために露光する露光器93、感光体91上に形成された潜像を現像する現像器94、現像された感光体91上のトナー像を記録材P上に転写するコロナ帯電器からなる転写器95、転写後の感光体91上の残留トナーを清掃する清掃器96等が設けられている。
【0087】
また、記録材搬送ベルト80は、二つの張架ロールである、駆動ロール82と従動ロール83に掛け渡され、記録材搬送ベルト80の内側に転写器95が設けられている。駆動ロール82には、トルクリミッタ85を介してモータ84が設けられ、モータ84の駆動力がトルクリミッタ85によって制限されるようになっている。そして、本実施の形態では、記録材搬送ベルト80を張架する従動ロール83が慣性付与ロール100となっている。
【0088】
このような構成において、感光体91と記録材搬送ベルト80との対向部位である転写部位に記録材Pが侵入すると、感光体91の回転速度の変動を生じる虞がある。しかしながら、記録材搬送ベルト80を張架する従動ロール83を慣性付与ロール100としているため、感光体91の速度変動は、記録材搬送ベルト80の速度変動が抑えられることで抑えられ、画像ずれの発生が抑えられる。尚、このような構成における転写器95としては、図14(a)に示す構成に限られず、他の構成を採用してもよいことは言うまでもない。例えば転写器95としてコロナ帯電器を用いる代わりに、ロール部材を適用するようにしてもよい。
【0089】
また、図14(b)は本実施の形態の変形例を示し、作像装置90の代わりに、中間転写ベルト30を適用した構成となっている。同図において、記録材搬送ベルト80は、二つの張架ロール、駆動ロール82及び従動ロール83に掛け渡され、駆動ロール82は、トルクリミッタ85を介してモータ84によって駆動されるようになっている。更に、中間転写ベルト30上のトナー像を記録材Pに転写するために、中間転写ベルト30の張架ロール39に対向する位置には、記録材搬送ベルト80の裏面側にコロナ帯電器型の転写器95が設けられている。
【0090】
このような構成では、転写器95を記録材搬送ベルト80から離した状態で設けているため、中間転写ベルト30と記録材搬送ベルト80との間では、十分な重なり部分が確保される構成となっている。そして、記録材搬送ベルト80を張架する従動ロール83を慣性付与ロール100としている。
【0091】
このような構成において、中間転写ベルト30と記録材搬送ベルト80との間では、滑りが抑えられ、安定した回転がなされるが、例えば記録材Pが転写部位に侵入した際には中間転写ベルト30での突発的な速度変動が発生する。しかしながら、記録材搬送ベルト80側の従動ロール83を慣性付与ロール100とすることで、記録材搬送ベルト80の速度変動が抑えられ、結果的に中間転写ベルト30の速度変動が抑えられる。
【0092】
本例では、転写器95としてコロナ帯電器型のものを用いる構成としたが、例えばこの部位にロール部材を用いるようにすることも可能で、適宜選定すればよい。また、本例では駆動ロール82を用いる態様を示したが、駆動ロール82の代わりにこの部位にも従動ロールを用いてもよく、この場合、中間転写ベルト30と記録材搬送ベルト80との重なり部位を広くとり、両者間での滑りが抑えられた状態とすればよい。
【実施例】
【0093】
◎実施例1
本実施例は、実施の形態1の画像形成装置のうち、中間転写ベルト30と転写装置50との組み合わせからなる画像転写要素を取り出した状態で、慣性付与ロール100が負荷変動に対して中間転写ベルトの速度変動にどのように寄与するかを評価確認したものである。このとき、使用した慣性付与ロールは、外径が18mmで、1kVの電圧が印加されたもので、また、中間転写ベルトはポリイミド製の厚さ0.1mmのものを使用した。
評価方法は、転写装置の転写ロール51は従動回転とし、この転写ロールと中間転写ベルトを挟んで対向する張架ロール39(バックアップロール)に対する制動力を変化させることで、中間転写ベルトへ与える外乱負荷量を変化させ、このような負荷変動を与える前後の中間転写ベルトの速度からベルト速度変動量を求めた。負荷は動トルク計にて計測し、ベルト速度変動量はベルトの移動速度をセンサにて計測することで行った。
【0094】
◎比較例1
本比較例は、実施例1の慣性付与ロールに代えて、従前の慣性付与ロール(フライホイール付きのアルミニウム製張架ロールで電圧非印加の態様)を用いたものである。尚、この張架ロールの外径は実施例1と同様に18mmとした。
【0095】
◎実施例1と比較例1の対比
実施例1の評価に先立って、フライホイールの効果を確認するため、比較例1の慣性付与ロールを用い、このロールに対する中間転写ベルトの巻き付き角(ラップアングル)が15度、26度、37度、42度の四水準で変化できるように他の張架ロールの配置を変更して、負荷変動とベルト速度変動量との関係を求めた。尚、巻き付き角を42度としてフライホイールを使用しない例も加えた。
結果は、図15に示すように、フライホイールなし(FWなし)に比べてフライホイールを設けることでベルト速度変動量は大幅に低下することが判明し、フライホイールの効果が確認された。また、巻き付き角を小さくすると、中間転写ベルトの滑りによるフライホイールの効果が減少し、外乱負荷量が大きくなればなるほど、巻き付き角の影響が現れることも確認された。
【0096】
次に、実施例1において、比較例1と同様の負荷を与えて実験を行ったところ、巻き付き角が約15度であるにも関わらず、図15の比較例1における巻き付き角が42度の特性とほぼ同様の特性が得られることが確認された。
また、このようなベルト速度変動量の低減効果は、ベルト部材が中間転写ベルトに限らず、例えば転写ベルト(転写装置側のベルト部材)であっても同様に作用することは言うまでもない。
以上のことから、実施例1における慣性付与ロールの作用は、ベルト部材の突発的な速度変動を抑えるために効果的であることが十分理解された。
【符号の説明】
【0097】
1…ベルト移動装置,2…ベルト部材,3…従動ロール,4…慣性付与ロール,5…ロール本体,6…回転慣性体,7…絶縁層,8…電圧供給源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環移動が可能な無端状のベルト部材と、
このベルト部材を移動可能に掛け渡す回転可能な複数の張架ロールと、を備え、
前記張架ロールは、前記ベルト部材の移動に伴って追従して回転する一以上の従動ロールを含むと共に、この従動ロールの少なくとも一つを慣性量が増大する方向に付与させられた慣性付与ロールとしたものであり、
前記慣性付与ロールは、
回転可能な導電性のロール本体と、
このロール本体に追従して回転可能に設けられ且つ当該ロール本体の慣性量を増大する方向に付与する回転慣性体と、
前記ロール本体の周表面に設けられ且つ誘電分極が可能な体積抵抗率を有する絶縁層と、
前記ロール本体に電圧を供給し且つ前記絶縁層に誘電分極を生じさせる電圧供給源と、
を有していることを特徴とするベルト移動装置。
【請求項2】
請求項1記載のベルト移動装置において、
前記慣性付与ロールは、前記回転慣性体の表面の全部若しくは少なくとも前記ロール本体側に面していない表面を覆う絶縁性の保護部材を備えることを特徴とするベルト移動装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のベルト移動装置において、
前記電圧供給源は、前記ロール本体のうち前記回転慣性体を設ける側とは異なる側にて当該ロール本体に電圧を供給することを特徴とするベルト移動装置。
【請求項4】
トナー像を保持する像保持体と、
この像保持体に保持されたトナー像を記録材上に転写する転写手段と、を備え、
前記像保持体及び前記転写手段のうち少なくともいずれかは循環移動が可能な無端状のベルト部材を含み、
このベルト部材を移動させるベルト移動装置として請求項1乃至3のいずれかに記載のベルト移動装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4記載の画像形成装置において、
前記像保持体は、トナー像を形成して保持する像形成保持体と、この像形成保持体に対向して設けられ且つ像形成保持体上のトナー像を記録材への転写前に一時的に保持する前記ベルト部材としての中間転写ベルトと、を有するものであり、
前記ベルト移動装置は、前記中間転写ベルトを移動させるものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5記載の画像形成装置において、
前記ベルト移動装置は、前記中間転写ベルトを張架する張架ロールを構成し且つ循環移動中の中間転写ベルトの張力が保たれるように当該中間転写ベルトに張力を付与する張力付与ロールを有し、
前記慣性付与ロールは、前記張力付与ロールと、前記像形成保持体から前記中間転写ベルトへのトナー像の転写位置のうち前記張力付与ロールに最も近い位置にある転写位置との間に設けられる従動ロールに対して構成されたものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項5記載の画像形成装置において、
前記ベルト移動装置は、前記中間転写ベルトを張架する張架ロールを構成し且つ当該中間転写ベルトの循環移動が可能なように中間転写ベルトを駆動する駆動ロールを有し、
前記慣性付与ロールは、前記駆動ロールと、前記像形成保持体から前記中間転写ベルトへのトナー像の転写位置のうち前記駆動ロールに最も近い位置にある転写位置との間に設けられる従動ロールに対して構成されたものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項4記載の画像形成装置において、
前記転写手段は、前記像保持体に対向して設けられ且つ像保持体上のトナー像を記録材に転写するロール状の転写部材と、この転写部材を含む複数の張架ロールに掛け渡されて循環移動し且つ像保持体と前記転写部材との間の転写部位から延びる直線経路に沿って記録材を搬送する無端状のベルト部材としての転写ベルトと、を備え、
前記ベルト移動装置は、前記転写ベルトを移動させるものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
トナー像を保持する像保持体と、
この像保持体に保持されたトナー像を記録材上に転写する転写手段と、
前記像保持体と前記転写手段との対向部位に向かって記録材を搬送する記録材搬送手段と、を備え、
前記記録材搬送手段は記録材を搬送する循環移動が可能な無端状のベルト部材としての記録材搬送ベルトを含み、
この記録材搬送ベルトを移動させるベルト移動装置として請求項1乃至3のいずれかに記載のベルト移動装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項5乃至7のいずれかに記載の画像形成装置のうち、前記像形成保持体から前記中間転写ベルトへのトナー像の転写位置及び前記中間転写ベルトから記録材へのトナー像の転写位置までの間の中間転写ベルトに対し前記慣性付与ロールが設けられる態様において、
前記電圧供給源は、前記ロール本体側がトナーの帯電特性と逆の極性となる電圧を供給するようにしたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−114245(P2013−114245A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263352(P2011−263352)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】