説明

ベンゾフロ−1,4−ジアゼピン−2−オン誘導体

本発明は、新規ベンゾフロ−1,4−ジアゼピン−2−オン誘導体、該誘導体の製造方法、および、疾患の、特に動脈硬化症、再狭窄および他の炎症性疾患の、処置および/または予防用の医薬を製造するための、P2X受容体アンタゴニストとしてのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、新規ベンゾフロ−1,4−ジアゼピン−2−オン誘導体、それらの製造方法、および、疾患の、特に動脈硬化症、再狭窄および他の炎症性疾患の、処置および/または予防用の医薬を製造するための、P2X受容体アンタゴニストとしてのそれらの使用に関する。
【0002】
動脈硬化症は、その発症が多くの異なる要因により影響される、多因子性の障害である。炎症過程は、なかんずく、これに中心的な役割を果たし、CD40LおよびIFNγなどの炎症誘導性サイトカインが関与する[P. Libby, Nature 420 (6917): 868-74 (2002)]。プリン作動性受容体P2Xは、P2Xファミリーに属する。今日までに、6個の異なるP2X受容体がヒトで記載されてきた。それらは、ATPにより活性化できるカルシウム透過性チャネルの形をとる[F. Di Virgilio et al., Blood 97 (3): 587-600 (2001); R.A. North, A. Surprenant, Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 40: 563-80 (2000)]。高度に血管化した器官および血管でP2Xチャネルの高レベルの発現があるのを示すことができる[K. Yamamoto et al., Circ. Res. 87(5): 385-91 (2000)]。驚くべきことに、P2X受容体は、ヒトの単球でも発現する。ヒト単球をCD40LおよびIFNγとインキュベートすると、P2X発現の5倍の上昇が観察できた。P2X受容体の高レベル発現は、バルーン血管形成術およびコレステロール摂食による損傷後のウサギの動脈の血管壁[T.J. Pulvirenti et al., J. Neurocytol. 29 (9): 623-31 (2000)]および動脈硬化的に変化したapoEノックアウトマウスの血管セグメントでも見られた。活性化単球は、アテローム発生の初期段階および再狭窄において鍵となる機能を担い、単球は該サイトカイン類により活性化されるので、その活性化の阻害は、アテローム発生の減少を導く[P. Libby, Nature 420 (6917): 868-74 (2002)]。CD40LおよびIFNγによる単球活性化は明らかにP2X受容体発現の上昇およびそれと関係するカルシウム流入の上昇を介して関連しているので、P2X受容体の遮断は、炎症過程を低下させるはずである[F. Di Virgilio, A. Solini, Br. J. Pharmacol. 135 (4): 831-42 (2002)]。従って、炎症過程が関与する疾患は、P2X受容体の遮断により処置できるであろう。
【0003】
動脈硬化症および再狭窄、並びにそれらの続発症(卒中、狭心症、心筋梗塞、腎不全、四肢の灌流の減損)の適応症の他にも、例えば乾癬およびリウマチ性関節炎などの他の炎症性障害の処置も、このように上述のメカニズムにより可能であろう。
【0004】
いくつかのベンゾフロ[3,2−e]−1,4−ジアゼピン−2−オン誘導体の合成は、J. Heterocyclic Chem. 16, 189-90 (1979) and ibid. 20, 1251-1254 (1983)に記載されている。抗潰瘍効果を有するベンゾフロ−1,4−ジアゼピン誘導体は、EP350131Aに開示されている。
【0005】
本発明は、一般式(I)
【化1】

式中、
は、ハロゲンであり、そして、
は、水素、ハロゲン、ニトロ、シアノまたは式−C(O)−OR、−C(O)−NR、−SO−ORもしくは−SO−NRの基(式中、R、RおよびRは、相互に独立して、水素または(C−C)−アルキルである)であるか、
または、
は水素であり、そして、
は、ハロゲン、ニトロ、シアノまたは式−C(O)−OR、−C(O)−NR、−SO−ORもしくは−SONRの基(式中、R、RおよびRは、相互に独立して、水素または(C−C)−アルキルである)である、
の化合物に関する。
【0006】
本発明の化合物は、それらの塩、溶媒和物およびそれらの塩の溶媒和物の形態で存在してもよい。
【0007】
本発明のために、置換基は、一般的に以下の意味を有する:
(C−C)−アルキルおよび(C−C)−アルキルは、本発明のために、各々1個ないし6個および1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキル基である。1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基が好ましい。言及し得る好ましい例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルおよびtert−ブチルである。
【0008】
ハロゲンには、本発明のために、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が含まれる。塩素または臭素が好ましい。
【0009】
本発明の化合物は、置換パターンに応じて、像および鏡像をとる(エナンチオマー)か、または像および鏡像をとらない(ジアステレオマー)いずれかの立体異性体で存在する。本発明は、エナンチオマーまたはジアステレオマーおよびそれらの各々の混合物の両方に関する。ちょうどジアステレオマーのように、ラセミ体は、既知のやり方で立体異性的に純粋な成分に分離できる。
【0010】
ある種の化合物は、さらに、互変体で存在し得る。これは、当業者に知られており、そのような化合物は同様に本発明の範囲に含まれる。
【0011】
本発明の化合物は、塩としても存在し得る。生理的に許容し得る塩が本発明のために好ましい。
生理的に許容し得る塩は、本発明の化合物の無機または有機酸との塩であり得る。無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸または硫酸との塩、または有機カルボン酸またはスルホン酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、安息香酸、またはメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸またはナフタレンジスルホン酸との塩が好ましい。
【0012】
同様に、生理的に許容し得る塩は、例えば、金属またはアンモニウム塩などの、本発明の化合物の塩基との塩であり得る。好ましい例はアルカリ金属塩(例えば、ナトリウムまたはカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウムまたはカルシウム塩)、およびアンモニアまたは有機アミン(例えば、エチルアミン、ジ−またはトリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジ−またはトリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエタノール、ジベンジルアミン、N−メチルモルホリン、デヒドロアビエチルアミン、1−エフェナミン(ephenamine)、N−メチルピペリジン、アルギニン、リジン、エチレンジアミンまたは2−フェニルエチルアミンなど)から誘導されるアンモニウム塩である。
【0013】
本発明の化合物およびそれらの塩はまた、それらの溶媒和物の形態で、特にそれらの水和物の形態で存在してもよい。
【0014】
好ましい一般式(I)の化合物は、式中、
が塩素または臭素であり、そして、
が、水素、塩素、臭素、ニトロ、シアノまたは式−C(O)−ORまたは−C(O)−NR(式中、R、RおよびRは、相互に独立して、水素または(C−C)−アルキルである)の基であるか、
または、
が水素であり、そして、
が、塩素、臭素、ニトロ、シアノまたは式−C(O)−ORまたは−C(O)−NR(式中、R、RおよびRは、相互に独立して、水素または(C−C)−アルキルである)の基である、
ものである。
【0015】
特に好ましい化合物は、一般式(Ia)のものである;
【化2】

式中、
は、塩素または臭素であり、そして、
は、水素、塩素、臭素、ニトロまたはシアノであるか、
または、
は水素であり、そして、
は、塩素、臭素、ニトロまたはシアノである。
【0016】
以下を特徴とする本発明の化合物の製造方法も見出された。即ち、式(II)
【化3】

(式中、Rは上記の意味を有する)
の化合物を、不活性溶媒中、塩基の存在下、式(III)
【化4】

(式中、Rは上記の意味を有し、そして、Xは、例えば、塩素、臭素またはヨウ素などの適する脱離基である)
の化合物と反応させて、最初に式(IV)
【化5】

(式中、RおよびRは上記の意味を有する)
の化合物を得、次いで、後者を、中間体分離またはワンポット反応で、塩基の存在下、式(V)
【化6】

(式中、RおよびRは上記の意味を有する)
の化合物に環化して、その後、不活性溶媒中、塩基の存在下、式(VI)
【化7】

(式中、XおよびXは、同一であるかまたは異なり、例えば塩素、臭素またはヨウ素などの適する脱離基である)
の化合物により式(VII)
【化8】

(式中、R、RおよびXは、上記の意味を有する)
の化合物に変換し、最後に環化のために不活性溶媒中でアンモニアと反応させ、得られた式(I)の化合物を、適するならば適切な溶媒および/または塩基もしくは酸により、それらの溶媒和物、塩および/または塩の溶媒和物に変換する。
【0017】
本方法の段階(II)+(III)→(IV)に適する溶媒は、反応条件下で変化しない不活性有機溶媒である。これらには、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロエタンもしくはトリクロロエチレンなどのハロ炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、グリコールジメチルエーテルもしくはジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ベンゼン、キシレン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサンもしくは石油留分などの炭化水素類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトンもしくは2−ブタノンなどのケトン類、ピリジンなどのヘテロ芳香族、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのジアルキルスルホキシド類、またはアセトニトリルなどのニトリル類が含まれる。同様に、該溶媒類の混合物を用いることが可能である。ジメチルホルムアミドが好ましい。
【0018】
通常の無機または有機塩基は、本方法の段階(II)+(III)→(IV)の塩基として適する。これらには、好ましくは、炭酸ナトリウム、カリウムもしくはカルシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、水素化ナトリウムなどのアルカリ金属水素化物、リチウムビス(トリメチルシリル)アミドもしくはリチウムジイソプロピルアミドなどのアミド類、またはピリジン、4−N,N−ジメチルアミノピリジン、4−ピロリジノピリジン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)もしくは1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)などの有機アミンが含まれる。トリエチルアミンが特に好ましい。
この場合、塩基は、式(II)の化合物1molをベースとして、1ないし5molの量で、好ましくは1ないし2molの量で用いる。
【0019】
この反応は、一般的に、0℃ないし+150℃の温度範囲、好ましくは+20℃ないし+100℃の温度範囲で行う。この反応は、大気圧、加圧または減圧下で実施できる(例えば、0.5ないし5バール)。一般的には大気圧下で実施する。
【0020】
同様に、本方法の段階(IV)→(V)に適する溶媒は、反応条件下で変化しない不活性有機溶媒である。これらには、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロエタンもしくはトリクロロエチレンなどのハロ炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、グリコールジメチルエーテルもしくはジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールもしくはtert−ブタノールなどのアルコール類、ベンゼン、キシレン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサンもしくは石油留分などの炭化水素類、アセトンもしくは2−ブタノンなどのケトン類、ピリジンなどのヘテロ芳香族、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのジアルキルスルホキシド類、またはアセトニトリルなどのニトリル類が含まれる。同様に、該溶媒類の混合物を用いることが可能である。メタノールおよびエタノールが好ましい。
【0021】
通常の無機または有機塩基は、本方法の段階(IV)→(V)の塩基として適する。これらには、好ましくは、炭酸ナトリウム、カリウムもしくはカルシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化リチウム、ナトリウムもしくはカリウムなどのアルカリ金属水酸化物、ナトリウムもしくはカリウムメタノラート、ナトリウムもしくはカリウムエタノラート、もしくはカリウムtert−ブトキシドなどのアルカリ金属アルコラート類、水素化ナトリウムなどのアルカリ金属水素化物、リチウムビス(トリメチルシリル)アミドもしくはリチウムジイソプロピルアミドなどのアミド類、またはピリジン、4−N,N−ジメチルアミノピリジン、4−ピロリジノピリジン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)もしくは1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)などの有機アミンが含まれる。ナトリウムメタノラートおよびナトリウムエタノラートが特に好ましい。
この場合、塩基は、式(IV)の化合物1molをベースとして、0.5ないし5molの量で、好ましくは1ないし2molの量で用いる。
【0022】
この反応は、一般的に、0℃ないし+120℃の温度範囲、好ましくは+20℃ないし+100℃の温度範囲で行う。この反応は、大気圧、加圧または減圧下で実施できる(例えば、0.5ないし5バール)。一般的には大気圧下で実施する。
【0023】
本方法の段階(V)+(VI)→(VII)に適する溶媒は、反応条件下で変化しない全ての不活性有機溶媒である。これらには、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロエタンもしくはトリクロロエチレンなどのハロ炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、グリコールジメチルエーテルもしくはジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ベンゼン、キシレン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサンもしくは石油留分などの炭化水素類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトンもしくは2−ブタノンなどのケトン類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのジアルキルスルホキシド類、またはアセトニトリルなどのニトリル類が含まれる。同様に、該溶媒類の混合物を用いることも可能である。ジクロロメタンおよびトリクロロメタンが好ましい。
【0024】
通常の無機または有機塩基は、本方法の段階(V)+(VI)→(VII)の塩基として適する。これらには、好ましくは、炭酸ナトリウム、カリウムもしくはカルシウム、および重炭酸ナトリウムもしくはカリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩および重炭酸塩、水素化ナトリウムなどのアルカリ金属水素化物、リチウムビス(トリメチルシリル)アミドもしくはリチウムジイソプロピルアミドなどのアミド類、またはピリジン、4−N,N−ジメチルアミノピリジン、4−ピロリジノピリジン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)もしくは1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)などの有機アミンが含まれる。重炭酸ナトリウムが特に好ましい。
この場合、塩基は、式(V)の化合物1molをベースとして、1ないし10molの量で、好ましくは1ないし5molの量で用いる。
【0025】
この反応は、一般的に、−20℃ないし+50℃の温度範囲、好ましくは−20℃ないし+20℃の温度範囲で行う。この反応は、大気圧、加圧または減圧下で実施できる(例えば、0.5ないし5バール)。一般的には大気圧下で実施する。
【0026】
本方法の(VII)→(I)に適する溶媒は、反応条件下で変化しない全ての不活性溶媒である。これらには、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロエタンもしくはトリクロロエチレンなどのハロ炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、グリコールジメチルエーテルもしくはジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ベンゼン、キシレン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサンもしくは石油留分などの炭化水素類が含まれる。同様に、該溶媒類の混合物を用いることが可能である。ジオキサンが好ましい。
【0027】
式(II)、(III)および(VI)の化合物は、市販されているか、文献から知られているか、または、常套の文献記載の方法により製造できる [例えば、J. Med. Chem. 13, 674-680 (1970) 参照]。
【0028】
本発明の方法は、以下の式のスキームにより例示説明できる:
スキーム
【化9】

【0029】
本発明の化合物は、予想し得なかった価値ある薬理的効果の範囲を示し、それ故に、ヒトおよび動物の疾患の処置および/または予防用の医薬としての使用に適する。
本発明の化合物は、P2X受容体のアンタゴニストとして作用する。
【0030】
それらの薬理特性のために、本発明の化合物は、単独で、または、炎症性障害の処置および/または予防用の他の医薬と組み合わせて、用いることができる。それらは、例えば動脈硬化症および再狭窄などの血管内膜の慢性的炎症性障害の、例えば多発性硬化症および疼痛などの中枢神経系の炎症性障害の、例えばリウマチ性関節炎、慢性多発性関節炎、皮下脂肪組織炎および腱炎などの結合組織の炎症性障害の、ベヒテレフ(Bechterew)病の、乾癬および神経性皮膚炎などの皮膚の炎症性障害の、腸炎、全腸炎、クローン病および潰瘍性大腸炎などの慢性炎症性腸障害の、末梢気道(small airways)の炎症性障害の、および筋肉炎および心内膜炎の処置に、特に適する。
【0031】
本発明の化合物は、単独で、または、必要ならば、好ましくはCETP阻害剤、抗糖尿病剤、抗酸化剤、甲状腺ホルモンおよび/または甲状腺模倣物(thyroid mimetics)、HMG−CoAリダクターゼの阻害剤、HMG−CoAリダクターゼ遺伝子発現の阻害剤、スクアレン合成阻害剤、ACAT阻害剤、コレステロール吸収阻害剤、フィブラート類、MTP阻害剤、トリグリセリド低下剤、ニコチン酸およびその誘導体、血小板凝集阻害剤、抗凝固剤、カルシウムアンタゴニスト、ACE阻害剤、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、ベータブロッカーおよびステロイド性および非ステロイド性抗炎症薬の群からの、他の有効成分と組み合わせて投与できる。
【0032】
本発明の化合物の活性は、例えば実施例の部に記載の試験により試験できる。
【0033】
本発明はさらに、少なくとも1種の本発明の化合物を、好ましくは1種またはそれ以上の薬理的に許容し得る賦形剤または担体と共に含む医薬、および上述の目的のためのそれらの使用に関する。
【0034】
本発明の化合物は、全身的および/または局所的効果を有し得る。それらは、この目的のために、適するやり方で、例えば、経口、非経腸、肺、鼻腔、舌下、舌、頬側、直腸、皮膚、経皮、結膜もしくは耳の経路により、またはインプラントもしくはステントとして、投与できる。経口投与が好ましい。
【0035】
これらの投与経路のために、有効成分を適する投与形で投与することが可能である。経口投与に適するのは、先行技術に準じて機能し、有効成分を迅速におよび/または修飾された様式で送達する投与形、例えば、錠剤(非被覆および被覆錠剤、例えば、胃液耐性の被覆)、カプセル剤、糖衣錠剤、顆粒剤、ペレット剤、粉末剤、乳剤、懸濁剤および液剤である。非経腸投与は、吸収段階を避けて(例えば、静脈内、動脈内、心臓内、脊髄内または腰椎内)、または吸収を含めて(例えば、筋肉内、皮下、皮内または腹膜内)、行うことができる。非経腸投与に適する投与形は、なかんずく、液剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤および滅菌粉末剤形態の、注射および点滴用製剤である。
【0036】
他の投与経路に適する例は、吸入用医薬形態(なかんずく、粉末吸入器、噴霧器)、点鼻薬/液、スプレー剤、舌、舌下または頬側投与用の錠剤もしくはカプセル剤、坐剤、耳または眼用製剤、膣用カプセル剤、水性懸濁剤(ローション、振盪混合物)、親油性懸濁剤、軟膏、クリーム、ミルク、ペースト、散剤、インプラントまたはステントである。
【0037】
有効成分は、それ自体既知のやり方で、上述の投与形に変換できる。これは、不活性、非毒性、医薬的に適する賦形剤を使用して行う。これらには、なかんずく、担体(例えば、微結晶セルロース)、溶媒(例えば、液体ポリエチレングリコール類)、乳化剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム)、分散剤(例えば、ポリビニルピロリドン)、合成および/または天然バイオポリマー(例えば、アルブミン)、安定化剤(例えば、アスコルビン酸などの抗酸化剤)、着色剤(例えば、酸化鉄などの無機色素)、または味および/または臭気のマスキング剤が含まれる。
【0038】
一般的に、非経腸投与で体重の約0.001ないし10mg/kg、好ましくは約0.005ないし3mg/kgの量を投与するのが有効な結果を得るのに有利であることが明らかになった。経口投与量は、体重の約0.001ないし100mg/kg、好ましくは約0.005ないし30mg/kgである。
【0039】
それでもやはり、適するならば、特に、体重、投与経路、有効成分に対する個体の反応、製剤のタイプおよび投与を行う時間または間隔に応じて、上述の量から逸脱することが必要であり得る。従って、上述の最小量より少なく行っても十分な場合もあり、一方上述の上限を超えなければならない場合もあり得る。大量に投与する場合、これらを1日にわたる複数の個別用量に分割するのが望ましいことがある。
【0040】
以下の試験および実施例におけるパーセントのデータは、断りのない限り、重量パーセントである;部は重量部である。液体−液体溶液の溶媒比、希釈比および濃度のデータは、各場合で体積に基づく。
【0041】
以下の例示的実施態様は、本発明を例示説明する。本発明は、これらの実施例に制限されない。
【0042】
略号:
【表1】

【0043】
LC/MSの方法:
方法1:
MS器具タイプ:Micromass ZQ;HPLC器具タイプ:Waters Alliance 2790;カラム:Uptisphere C 18, 50 mm x 2.0 mm, 3.0 μm;溶離剤B:アセトニトリル+0.05%蟻酸、溶離剤A:水+0.05%蟻酸;勾配:0.0分5%B→2.0分40%B→4.5分90%B→5.5分90%B;オーブン:45℃;流速:0.0分0.75ml/分→4.5分0.75ml/分→5.5分1.25ml/分;UV検出:210nm
【0044】
方法2:
器具:Micromass Platform LCZ with HPLC Agilent series 1100;カラム:Grom-SIL 120 ODS-4 HE, 50 mm x 2.0 mm, 3 μm;溶離剤A:水1l+50%蟻酸1ml、溶離剤B:アセトニトリル1l+50%蟻酸1ml;勾配:0.0分100%A→0.2分100%A→2.9分30%A→3.1分10%A→4.5分10%A;オーブン:55℃;流速:0.8ml/分;UV検出:208−400nm
【0045】
A.出発化合物:
実施例I
(3−アミノベンゾフラン−2−イル)−(3−ブロモフェニル)メタノン
【化10】

2−ヒドロキシベンゾニトリル2.00g(16.8mmol)、3−ブロモフェナシルブロミド4.67g(16.8mmol)およびトリエチルアミン1.87g(18.5mmol)を、ジメチルホルムアミド20ml中、70℃で2時間撹拌する。酢酸エチル100mlの添加後、反応混合物を水(3x100ml)および飽和塩化ナトリウム溶液(2x100ml)で洗浄する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去する。残渣をエタノール30mlに溶解する。ナトリウムエタノラート5.98g(18.5mmol)の添加後、混合物を還流下に2時間加熱する。酢酸エチル50mlを添加し、混合物を水(3x100ml)および飽和塩化ナトリウム溶液(2x100ml)で洗浄する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させる。溶媒を減圧下で除去した後、所望の生成物5.08g(理論値の92%)が得られる。
MS(DCI):m/z=315.9[M+H]
1H-NMR (200 MHz, DMSO-d6): δ = 7.27-7.36 (m, 1H); 7.49-7.65 (m, 5H); 7.77-7.84 (m, 1H); 8.04-8.20 (m, 3H).
【0046】
実施例II
2−ブロモ−N−{2−[(3−ブロモフェニル)カルボニル]ベンゾフラン−3−イル}アセトアミド
【化11】

ブロモアセチルブロミド3.53g(17.5mmol)を、クロロホルム250ml中の実施例I由来の化合物5.03g(15.9mmol)および重炭酸ナトリウム5.35g(63.6mmol)の混合物に、0℃で添加する。混合物を0℃で1時間撹拌する。溶媒を減圧下で除去した後、酢酸エチル200mlを添加し、混合物を飽和重炭酸ナトリウム溶液(100ml)および飽和塩化ナトリウム溶液(100ml)で洗浄する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させる。溶媒を減圧下で除去した後、所望の生成物5.81g(理論値の83%)を得る。
MS(CI):m/z=436[M+H]
1H-NMR (200 MHz, DMSO-d6): δ = 4.20 (s, 2H); 7.37-8.14 (m, 8H); 10.98 (s, 1H).
【0047】
B.例示的実施態様
実施例1
5−(3−ブロモフェニル)−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾフロ[3,2−e]−1,4−ジアゼピン−2−オン
【化12】

ジオキサン中の0.5Mアンモニア溶液245ml(123mmol)を、ジエチルエーテル100ml中の実施例II由来の化合物5.37g(12.3mmol)に添加する。混合物を室温で2日間撹拌する。酢酸エチル100mlを添加し、混合物を水(3x250ml)および飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄する。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去する。所望の生成物1.81g(理論値の42%)を得る。
=0.24(ジクロロメタン/メタノール100:2)
MS(ESI):m/z=355[M+H]
LC/MS(方法1):R=3.47分、m/z=354[M]
1H-NMR (200 MHz, DMSO-d6): δ = 4.45 (s, 2H); 7.37-7.80 (m, 6H); 7.88-7.93 (m, 1H); 7.96-8.03 (m, 1H); 11.59 (s, 1H).
【0048】
以下のものは、類似のやり方で得られる:
実施例2
1,3−ジヒドロ−5−(3−ニトロフェニル)−2H−ベンゾフロ[3,2−e]−1,4−ジアゼピン−2−オン
【化13】

LC/MS(方法2):R=3.5分、m/z=321[M+H]
【0049】
実施例3
9−ブロモ−1,3−ジヒドロ−5−フェニル−2H−ベンゾフロ[3,2−e]−1,4−ジアゼピン−2−オン
【化14】

LC/MS(方法2):R=3.5分、m/z=355[M+H]
【0050】
C.生物学的試験の説明:
a)細胞アッセイ:
P2X受容体は、リガンドにより活性化されるイオンチャネルである。アゴニストのATPの結合は、P2X受容体の活性化、イオンチャネルの開口および細胞外カルシウムの細胞内への流入を導く。このカルシウム流入を、カルシウム感受性光タンパク質エクオリンを利用して測定する。このために、ヒトP2X受容体およびアポエクオリンを構成的に発現する組換えCHO細胞株(チャイニーズハムスター卵巣細胞)を調製した。
【0051】
実験は、1−2日前に、CHO細胞を96−、384−または1536−ウェル形式のマイクロタイタープレートに、具体的には使用するマイクロタイタープレートの形式に応じて、ウェル毎に5000個(96形式)、2000個(384形式)または500個(1536形式)の細胞で播いて実施する。実験当日、細胞の培養培地を除去し、細胞を生理塩水(Tyrode バッファー)中の5μg/mlセレンテラジンと4時間インキュベートする。試験物質を実際の実験の5分前に添加する。次いで、P2X受容体を1−2μmの濃度のATPの添加により活性化し、ATPに誘導されるカルシウムシグナルを、ルミノメーター中でエクオリン発光として測定する。
【0052】
P2X受容体のアンタゴニスト活性を有する物質は、ATPのP2X受容体への結合を妨害することにより、チャネル開口を防止することにより、または開口したチャネルを通るカルシウム流入を遮断することにより、ATPに誘導されるカルシウムシグナルを阻害できる。
【0053】
例示的実施態様1−3は、この試験で、各々0.5、2および0.6μMのIC50値を示す。
【0054】
b)初代ヒト単球におけるATPに誘導される酸素フリーラジカル形成(ROS):
10mMを添加したハンクス平衡塩溶液(HBSS)中でアッセイを実施する。単球を、例えば"Becton Dickinson Vacutainer System"を製造業者による記載の通りに使用して単離し、HBSSに懸濁する。酸素フリーラジカルを、基本的に、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)の存在下、ルミノールで増強される化学発光の方法で検出する [H. Lundqvist, C. Dahlgren, Free Radic. Biol. Med. 20 (6): 785-92 (1996)]。
【0055】
最初に、調べようとする物質、ルミノール(最終濃度50μM)、HRPO(最終濃度10U/ml)を、5x10個の単球と37℃で15分間インキュベートする。次いで、ATPを試験混合物に添加する(最終濃度100μM)。試験混合物の最終体積は200μlである。ATPの添加直後に、マイクロプレートルミノメーターを使用し、120秒にわたってROS形成を追跡する。
【0056】
c)ATPに誘導される初代ヒト単球の走化性:
単球を標準的方法により血液から単離する。単球の走化性を、Transwell システム [C.C. Bleul et al., J. Exp. Med. 184: 1101-1109 (1996)] で観察する。使用するメンブレン(孔サイズ3μm、ポリエチレンテレフタレート、Falcon より) を、最初にフィブロネクチンで被覆する。RPMI1640培地中の10個の単球を、上部チャンバーに入れる。下部チャンバーは、様々な濃度の刺激物質または一定の刺激物質濃度(500μM ATPまたは10nM MCP−1)、および、様々な濃度の試験物質を含む。調べようとする物質は、両チャンバーに存在する。試験混合物を37℃、5%COで3時間インキュベートする [W. Falk et al., J. Immunol. Methods 38: 239-247 (1980)]。インキュベーション後、下部チャンバーに移動した細胞を測定する。
【0057】
D.医薬組成物の例示的実施態様:
本発明の化合物は、以下のやり方で医薬製剤に変換できる:
錠剤:
組成:
実施例1の化合物100mg、ラクトース(一水和物)50g、コーンスターチ(天然)50mg、ポリビニルピロリドン(PVP25)10mgおよびステアリン酸マグネシウム2mg。
錠剤重量212mg。直径8mm、曲率半径12mm。
【0058】
製造:
有効成分、ラクトースおよびスターチの混合物を、PVPの5%強度水溶液(m/m)で造粒する。顆粒を乾燥し、次いでステアリン酸マグネシウムと5分間混合する。この混合物を常套の打錠機で打錠する(錠剤の形状について上記参照)。打錠のガイドラインとして、15kNの打錠力を使用する。
【0059】
経口投与できる懸濁剤:
組成:
実施例1の化合物1000mg、エタノール(96%)1000mg、Rhodigel(登録商標)(FMC, Pennsylvania, USA のキサンタンゴム)400mgおよび水99g。
経口懸濁液10mlは、本発明の化合物100mgの単回用量に等しい。
【0060】
製造:
Rhodigel をエタノールに懸濁し、その懸濁液に有効成分を添加する。撹拌しながら水を添加する。混合物を約6時間、Rhodigel の膨潤が完了するまで撹拌する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

式中、
は、ハロゲンであり、そして、
は、水素、ハロゲン、ニトロ、シアノまたは式−C(O)−OR、−C(O)−NR、−SO−ORもしくは−SO−NRの基(式中、R、RおよびRは、相互に独立して、水素または(C−C)−アルキルである)であるか、
または、
は水素であり、そして、
は、ハロゲン、ニトロ、シアノまたは式−C(O)−OR、−C(O)−NR、−SO−ORもしくは−SO−NRの基(式中、R、RおよびRは、相互に独立して、水素または(C−C)−アルキルである)である、
の化合物、およびそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物。
【請求項2】
式中、
が塩素または臭素であり、そして、
が、水素、塩素、臭素、ニトロ、シアノまたは式−C(O)−ORまたは−C(O)−NR(式中、R、RおよびRは、相互に独立して、水素または(C−C)−アルキルである)の基であるか、
または、
が水素であり、そして、
が、塩素、臭素、ニトロ、シアノまたは式−C(O)−ORまたは−C(O)−NR(式中、R、RおよびRは、相互に独立して、水素または(C−C)−アルキルである)の基である、
請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
式(Ia)
【化2】

式中、
は、塩素または臭素であり、そして、
は、水素、塩素、臭素、ニトロまたはシアノであるか、
または、
は水素であり、そして、
は、塩素、臭素、ニトロまたはシアノである、
の化合物、およびそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3で定義される式(I)または(Ia)の化合物の製造方法であって、式(II)
【化3】

(式中、Rは上記の意味を有する)
の化合物を、不活性溶媒中、塩基の存在下、式(III)
【化4】

(式中、Rは上記の意味を有し、そして、Xは、例えば、塩素、臭素またはヨウ素などの適する脱離基である)
の化合物と反応させて、最初に式(IV)
【化5】

(式中、RおよびRは上記の意味を有する)
の化合物を得、次いで、後者を、中間体分離またはワンポット反応で、塩基の存在下、式(V)
【化6】

(式中、RおよびRは上記の意味を有する)
の化合物に環化して、その後、不活性溶媒中、塩基の存在下、式(VI)
【化7】

(式中、XおよびXは、同一であるかまたは異なり、例えば塩素、臭素またはヨウ素などの適する脱離基である)
の化合物により、式(VII)
【化8】

(式中、R、RおよびXは、上記の意味を有する)
の化合物に変換し、最後に環化のために不活性溶媒中でアンモニアと反応させ、得られた式(I)の化合物を、適するならば適切な溶媒および/または塩基もしくは酸により、それらの溶媒和物、塩および/または塩の溶媒和物に変換する、
を特徴とする製造方法。
【請求項5】
疾患の処置および/または予防のための、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
医薬を製造するための、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項7】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の化合物の少なくとも1種を、少なくとも1種の医薬的に許容し得る、医薬的に適する担体または賦形剤と組み合わせて含む、医薬。
【請求項8】
動脈硬化症および再狭窄の処置および/または予防用の医薬を製造するための、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項9】
動脈硬化症および再狭窄の処置および/または予防のための、請求項7に記載の医薬。
【請求項10】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の少なくとも1種の化合物の有効量を投与することによる、ヒトおよび動物における動脈硬化症および再狭窄の制御方法。

【公表番号】特表2006−521308(P2006−521308A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504663(P2006−504663)
【出願日】平成16年3月12日(2004.3.12)
【国際出願番号】PCT/EP2004/002580
【国際公開番号】WO2004/085440
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(503412148)バイエル・ヘルスケア・アクチェンゲゼルシャフト (206)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare AG
【Fターム(参考)】