説明

ベーカリー製品の製造方法

【課題】中麺の老化および変質が防止され、該中麺を長期間保存可能とするベーカリー製品の製造方法を提供すること。
【解決手段】(1)穀粉と水分とを混捏して中麺を作製する中麺作製工程と、(2)該中麺を凍結乾燥して凍結乾燥中麺とする凍結乾燥工程と、(3)該凍結乾燥中麺と、水分および副材料とを混捏してベーカリー製品用生地を作製する生地作製工程とを包含することを特徴とするベーカリー製品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーカリー製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パン類等のベーカリー製品の製造方法としては、小麦粉と水分とを常温ではなく、加熱しながら混捏して中麺を製造する工程を含む方法が知られている(特許文献1、2参照)。しかしながら、製造された中麺は保存すると急速に品質劣化(または老化)が起こり、中麺の変色や細菌の繁殖、生地物性の低下を引き起こす。このため、長期保存により品質の劣化した中麺を用いてベーカリー製品を製造すると、製パン適性の低下や、製パン吸水の低下等の問題が生じるため、中麺を長期間流通過程に置くことは不可能であった。中麺の品質劣化の主要因は、小麦粉に含まれる澱粉の構造変化や酵素による分解作用にあると考えられており、中麺の品質劣化を遅延させる方法として、中麺を冷凍保存するか、あるいは中麺に乳化剤等を添加する方法が知られている(特許文献3参照)。
しかしながら、冷凍保存する方法は、流通過程で中麺を冷凍保存するための設備が必要となり、使用時には解凍工程を必要とするため煩雑であった。また乳化剤を添加する方法は、中麺を長期間に亘って保存することが難しいという難点があった。
【0003】
凍結乾燥食品としては、例えば、ブロック状凍結乾燥食品(特許文献4参照)が知られており、凍結乾燥食品の製造方法として、肉、野菜等を凍結乾燥させる方法も知られている(特許文献5参照)。
【0004】
しかしながら、ベーカリー製品の製造工程の中間生地である中麺を凍結乾燥させることは、知られていなかった。
【特許文献1】特開2000−245332号公報
【特許文献2】特開2002−34436号公報
【特許文献3】特開2003−23955号公報
【特許文献4】特開平9−23807号公報
【特許文献5】特開2004−248549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、中麺の老化および変質が防止され、該中麺を長期間保存可能とするベーカリー製品の製造方法を提供すること並びに粉末化することによりプレミックス等従来の中麺では提供できなかった粉体としての中麺を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、中麺を凍結乾燥させることにより顕著に老化および変質が防止されることを見出し、この知見に基づいてさらに研究を進め、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
[1] (1)穀粉と水分とを混捏して中麺を作製する中麺作製工程と、(2)該中麺を凍結乾燥して凍結乾燥中麺とする凍結乾燥工程と、(3)該凍結乾燥中麺と、水分および副材料とを混捏してベーカリー製品用生地を作製する生地作製工程とを包含することを特徴とするベーカリー製品の製造方法、
[2] 穀粉が小麦粉である前記[1]に記載の製造方法、
[3] 穀粉が、大麦粉、ライ麦粉、そば粉、とうもろこし粉、米粉、あわ粉、ひえ粉、はと麦粉および大豆粉からなる群から選択される少なくとも1種以上であるか、あるいはこれらの少なくとも1種以上と小麦粉との混合物である前記[1]に記載の製造方法、
[4] 副材料が、澱粉、イースト、イーストフード、油脂類、糖類、乳製品、卵製品、塩類、膨張剤、乳化剤、酵素類、調味料、保存料、蛋白質、アミノ酸およびフレーバーからなる群から選択される少なくとも1種以上である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法、
[5] 凍結乾燥中麺が粉末状である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法、[6] 中麺作製工程において、さらに、副材料を加えて混捏することを特徴する前記[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法、
[7] 副材料が、イースト、イーストフード、油脂類、澱粉、糖類、乳製品、卵製品、塩類、膨張剤、乳化剤、酵素類、調味料、保存料、蛋白質、アミノ酸およびフレーバーからなる群から選択される少なくとも1種以上である前記[6]に記載の製造方法、
[8] 生地作製工程において、さらに、穀粉を加えて混捏することを特徴とする前記[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法、
[9] 中麺作製工程において、中麺が50〜98℃に練り上げられた中麺であることを特徴とする前記[1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法、
[10] 生地作製工程に続いて、さらに、生地発酵工程と加熱処理工程を包含することを特徴とする前記[1]〜[9]のいずれかに記載の製造方法、
[11] 穀粉と水分とを混捏してなる中麺を凍結乾燥することを特徴とする凍結乾燥中麺の製造方法、
[12] 中麺が50〜98℃に練り上げた中麺である前記[11]に記載の凍結乾燥中麺の製造方法、
[13] 前記[11]または[12]により製造された凍結乾燥中麺、
[14] 前記[13]に記載の凍結乾燥中麺を含有するベーカリー製品用プレミックス、
[15] さらに、穀粉を含有する前記[14]に記載のベーカリー製品用プレミックス、
[16] さらに、副材料を含有する前記[14]または[15]に記載のベーカリー製品用プレミックス、
[17] 副材料が、イースト、イーストフード、油脂類、澱粉、糖類、乳製品、卵製品、塩類、膨張剤、乳化剤、酵素類、調味料、保存料、蛋白質、アミノ酸およびフレーバーからなる群から選択される少なくとも1種以上である前記[16]に記載のベーカリー製品用プレミックス、
[18] 前記[14]〜[17]のいずれかに記載のベーカリー製品用プレミックスと、水分とを混捏してベーカリー製品用生地を作製する生地作製工程を包含することを特徴とするベーカリー製品の製造方法、および
[19] 前記[18]に記載の製造方法により製造されたベーカリー製品、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法により、常温にて長期間保存した場合でも中麺の老化を防止することができるため、このような長期間保存した後、ベーカリー製品を製造しても品質の良好なベーカリー製品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のベーカリー製品の製造方法は、穀粉と水分とを含有する混合物を混捏して中麺を作製する中麺作製工程と、該中麺を凍結乾燥して凍結乾燥中麺とする凍結乾燥工程と、該凍結乾燥中麺、水および副材料を混捏してベーカリー製品用生地を作製する生地作製工程を包含する。
さらに、製造するベーカリー製品の種類に応じて、前記工程で得られたベーカリー製品用生地を発酵し、分割して丸めを行ない、ベンチタイムをとって、ガス抜きや整形を行なってからホイロをとる生地発酵工程と、この発酵後の生地を焼成する、蒸すまたは揚げる加熱処理工程を包含してなる。以下、各工程について詳しく説明する。
【0010】
中麺作製工程では、穀粉と水分とを混捏して中麺を作製する。作製された中麺は約50〜98℃に練り上げられていることが好ましい。水分は、熱湯であってもよく、常温の水であってもよい。常温の水を使用する場合、穀粉を常温の水とともに加熱しながら混捏することにより、中麺を約50〜98℃に練り上げることが好ましい。あるいは穀粉を常温の水とともに電子レンジで加熱した後に混捏することにより、中麺を約50〜98℃に練り上げてもよい。また、必要に応じて、中麺作製工程で副材料を加えてもよい。さらに、練り上げられた中麺を−7℃〜+10℃程度にて約1〜100時間程度冷蔵熟成させた後に凍結乾燥工程に用いてもよい。
【0011】
中麺作製工程で用いる穀粉と水分との使用比率は、通常1:約0.2〜3.0、好ましくは1:約0.3〜2.5である。
中麺作製工程で副材料を加える場合は、穀粉と該副材料の使用比率は、通常1:約0.001〜10、好ましくは1:約0.01〜2.0である。
【0012】
本発明に用いる穀粉としては、一般にベーカリー製品の原料となり得る穀粉であれば特に限定されず使用し得る。穀粉としては、例えば、小麦粉(例えば、強力粉、薄力粉、準強力粉、中力粉等)、大麦粉、ライ麦粉、そば粉、とうもろこし粉、米粉、あわ粉、ひえ粉、はと麦粉または大豆粉等が挙げられる。中でも、小麦粉が好ましく、強力粉がより好ましい。穀粉は、単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いることができる。混合して用いる場合は、例えば、大麦粉、ライ麦粉、そば粉、とうもろこし粉、米粉、あわ粉、ひえ粉、はと麦粉および大豆粉からなる群から選択される少なくとも1種以上であるか、あるいはこれらの少なくとも1種以上と小麦粉との混合物が好適に挙げられる。
【0013】
中麺作製工程で任意的に用いる副材料としては、イースト、イーストフード、油脂類(ショートニング、ラード、マーガリン、バター、液状油、粉末油等)、澱粉(コーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、エンドウ豆澱粉、またはこれらの加工澱粉)、糖類(単糖類、少糖類、多糖類)、乳製品(乳類、粉乳類、クリーム類、チーズ類等)、卵製品、塩類(食塩等)、調味料(アミノ酸、核酸等)、膨張剤(重曹、炭酸アンモニウム、ベーキングパウダー等)、乳化剤(レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等)、酵素類、保存料、蛋白質、アミノ酸(グリシン、グルタミン酸)、フレーバー等が挙げられる。
【0014】
凍結乾燥工程では、上記工程で作製された中麺を凍結乾燥させて、凍結乾燥中麺を得る。凍結乾燥の方法は、特に限定されず、公知の方法を使用することができ、例えば、中麺を急速冷凍凍結し、凍結した中麺を真空凍結乾燥することにより行われる。得られた凍結乾燥中麺は、そのままの形でもよく、粉砕して粉末状にしてもよい。これにより、室温においても長期間に亘り、凍結乾燥中麺に含まれる澱粉の老化および変質を抑制することができる。
【0015】
この工程で得られた凍結乾燥中麺は長期に亘って保存することができる。凍結乾燥中麺の保存は、常温であってもよいが、中麺が冷凍しない−7℃〜+10℃程度の温度による冷蔵保存、あるいは−7℃以下の温度帯にて冷凍しての保存のいずれであってもよい。
【0016】
生地作製工程では、凍結乾燥中麺と、水分および副材料とを混捏してベーカリー製品用生地を作製する。このとき、凍結乾燥中麺、水分および副材料を一緒にミキサーに投入して一度に混捏することにより該生地を作製することができる。
生地作製工程に用いる副材料としては、澱粉、イースト、イーストフード、油脂類、糖類、乳製品、卵製品、塩類、膨張剤、乳化剤、酵素類、調味料、保存料、蛋白質、アミノ酸またはフレーバー等が好適に挙げられる。尚、後述するとおり、油脂類は最初に添加しないで、途中で添加して混捏することが望ましい。
【0017】
生地作製工程で用いる凍結乾燥中麺と水分の比率は、通常1:約0.5〜50、好ましくは1:約1〜10である。穀粉に対する各種副材料の種類、割合等は、通常のベーカリー製品の製造方法と同様であり、特に限定されない。
また、混捏時にさらに穀粉を加えるのが好ましい。穀粉の添加量は、中麺作製工程の穀粉の使用量を100重量部として、約50〜10000重量部が好ましく、約100〜1000重量部がさらに好ましい。また、凍結乾燥中麺以外のベーカリー製品用生地を構成する原料(水、副材料、穀粉等)をあらかじめ混捏して中間生地を作製したのち、凍結乾燥中麺と中間生地とを混捏してベーカリー製品用生地を作製してもよい。この際、副材料の油脂類は、中間生地の混捏時には添加しないで、ベーカリー製品用生地を作製するための中間生地と凍結乾燥中麺の混捏時において小麦グルテンが完全に結合した後に添加して混捏し、ベーカリー製品用生地中に均一に練り込むことが望ましい。小麦グルテンが完全に結合する前に油脂類を添加すると結合が阻害されるおそれがあるからである。
【0018】
ベーカリー製品の種類に応じて、作製した生地を用いて常法に従ってベーカリー製品を製造することができる。例えば、ベーカリー製品がパン類の場合は、生地作製工程に続いて、生地発酵工程、加熱処理工程に移る。生地発酵工程および加熱処理工程は、常法の製パン工程でよい。加熱処理工程は、ベーカリー製品の種類に応じて、焼成する、蒸す、蒸し焼きにする、油で揚げるなどの方法によって行う。
【0019】
本発明のベーカリー製品としては、例えばパン類、パン類乾燥品、ケーキ類、ワッフル、シュー、ドーナツ、揚げ物菓子、パイ、ピザ、クレープ等が挙げられる。
パン類としては、食パン(例えば白パン、黒パン、フランスパン、乾パン、バラエティブレッド、ロールパン等)、調理パン(例えばホットドッグ、ハンバーガー、ピザパイ等)、菓子パン(例えばジャムパン、アンパン、クリームパン、レーズンパン、メロンパン、スイートロール、クロワッサン、ブリオッシュ、デニッシュ、コロネ等)、蒸しパン(例えば肉まん、あんまん等)、特殊パン(例えばグリッシーニ、マフィン、ナン等)等が挙げられる。中でも、本発明の製造方法は、食パンの製造に適している。
パン類乾燥品としては、ラスクやパン粉等が挙げられる。ラスクは一般に食パン等のパン類を薄切りにし、中が乾燥するまできつね色にトーストして得られるものである。パン粉は一般にパン類を粉砕し、そのまま生パン粉とするか、あるいは乾燥してドライパン粉として得られる。
ケーキ類としては、蒸しケーキ、スポンジケーキ、バターケーキ、ロールケーキ、ホットケーキ、ブッセ、バームクーヘン、パウンドケーキ、チーズケーキまたはスナックケーキ等が挙げられる。
【0020】
本発明の他の態様は、前記凍結乾燥中麺を含有するベーカリー製品用プレミックスである。プレミックスとは、ケーキ、パン等を簡便に調理できる調製粉を意味し、本発明のベーカリー製品用プレミックスとしては、パン類用プレミックス、ケーキ類用プレミックス、調理用プレミックス(例えばピザ用プレミックス等)等が挙げられる。本発明のベーカリー製品用プレミックスは、前記凍結乾燥中麺のほか、穀粉や副材料を加えることもできる。プレミックスに用いる穀粉としては、小麦粉(例えば、強力粉、薄力粉、準強力粉、中力粉等)、大麦粉、ライ麦粉、そば粉、とうもろこし粉、米粉、あわ粉、ひえ粉、はと麦粉または大豆粉等が挙げられる。プレミックスに用いる副材料としては、イースト、イーストフード、油脂類、澱粉、糖類、乳製品、卵製品、塩類、膨張剤、乳化剤、酵素類、調味料、保存料、蛋白質、アミノ酸またはフレーバー等が好適に挙げられる。
前記プレミックスは水分と混捏してベーカリー製品用生地を作製し、以下常法によりベーカリー製品を製造することもできる。
【実施例】
【0021】
以下に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
[実施例1]
<中麺作製工程>
パンを製造するために必要とする全小麦粉量(100重量部)に対して、40重量部の小麦粉が中麺の作製に使用される。
まず、40重量部の小麦粉に対して、砂糖1重量部、食塩1重量部、脱脂粉乳1重量部を加え、20重量部の熱湯とともに混捏して、中麺に練り上げた。この場合、沸騰した熱湯をすばやく計量し、99℃程度の温度で小麦粉および副材料に加えて混捏し、練り上げ終了時には、70℃程度の温度になっていた。練り上げられた中麺は、8時間以上に亘って、冷蔵下(約3〜8℃)にて保存した。
<凍結乾燥工程>
上記中麺を2.5cm程度の厚みになるように広げて−30〜−40℃程度になるまで冷凍し、フリーズドライ装置(日精株式会社製)に入れた。次いで、該装置内の空気を抜いて真空状態にし、凍結している水分子(氷結晶)を昇華させることで十分に乾燥させ、凍結乾燥中麺を得た。
<生地作製工程>
得られた凍結乾燥中麺30重量部に対して、残りの小麦粉60重量部、砂糖4重量部、食塩1重量部、脱脂粉乳2重量部、ショートニング4重量部、生イースト3重量部を副材料として添加して、60重量部の常温の水とともに、パン生地とした。
<パン製造工程>
得られたパン生地は通常のパンの製法と同様に発酵させた後に焼成することによりパンとした。
【0023】
[比較例]
凍結乾燥工程を行わない以外は、実施例1と同様にして、パンを製造した。
【0024】
[試験例]
比較例で製造した中麺((イ):練り上げられた中麺を約3〜8℃で8時間冷蔵保存した後と(ロ):さらに約3〜8℃で10日間冷蔵保存した後を比較)と実施例1で製造した凍結乾燥中麺((ハ):凍結乾燥中麺製造直後と(ニ):その後1年間常温保存した後を比較)を官能性の面から10名のモニターを用いて下記評価基準に従い、評価した。
また、比較例で製造した中麺を用いたパン((ホ):前記(イ)の中麺を用いて製造したパンと(ヘ):前記(ロ)の中麺を用いて製造したパンを比較)および実施例1で製造した凍結乾燥中麺を用いたパン((ト):前記(ハ)の凍結乾燥中麺を用いて製造したパンと(チ):前記(ニ)の凍結乾燥中麺を用いて製造したパンを比較)を用いて、製パン性を同じく10名のモニターを用いて下記評価基準に従い、評価した。
【0025】
<官能評価基準>
(色)
○:変化なし(白色のまま)
△:少し灰色化
(硬さ)
○:変化なし
△:少し軟化
<製パン性評価基準>
(加水:製パン時に入れる仕込み水の量を評価した。)
前記(ホ)、(ヘ)間および(ト)、(チ)間で製パン時に入れる仕込み水の量を測定し、仕込み水の減少量を評価した。仕込み水が減少した場合、歩留まり(生産されたすべての製品に対する、不良品でない製品の割合)が下がる。
○:変化なし(ベーカーズパーセント1%未満減)
△:ベーカーズパーセント1%減
(生地状態)
○:変化なし
△:少しベタつく
(パンの状態(形):パンの焼成後に上部あるいは側面が凹むかどうかを評価した。)
○:変化なし
△:少し腰折れ(パンの上部あるいは側面に凹みが有る)
(パンの状態(色):パンのクラスト(外側、外皮)の部分について、標準的な焼色(きつね色)を基準として評価した。)
○:変化なし
△:少し濃くなる(こげ茶色になる)
【0026】
(結果)
結果は下記表1の通りである。
【表1】

【0027】
上記の結果から、本発明を用いてベーカリー製品を製造した場合、常温で長期間保存してもベーカリー製品の品質が損なわれないことが確認された。
【0028】
[処方例1]
以下の処方で食パン用プレミックスを作製した。なお、凍結乾燥中麺は実施例1で得たものを使用した。
【表2】

【0029】
[処方例2]
以下の処方でケーキドーナツ用プレミックスを作製した。なお、凍結乾燥中麺は実施例1で得たものを使用した。
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の製造方法により、中麺の老化および変質を防止することができ、ベーカリー製品を中麺の状態で流通させ、常温にて長期間保存することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)穀粉と水分とを混捏して中麺を作製する中麺作製工程と、(2)該中麺を凍結乾燥して凍結乾燥中麺とする凍結乾燥工程と、(3)該凍結乾燥中麺と、水分および副材料とを混捏してベーカリー製品用生地を作製する生地作製工程とを包含することを特徴とするベーカリー製品の製造方法。
【請求項2】
穀粉が小麦粉である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
穀粉が、大麦粉、ライ麦粉、そば粉、とうもろこし粉、米粉、あわ粉、ひえ粉、はと麦粉および大豆粉からなる群から選択される少なくとも1種以上であるか、あるいはこれらの少なくとも1種以上と小麦粉との混合物である請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
副材料が、澱粉、イースト、イーストフード、油脂類、糖類、乳製品、卵製品、塩類、膨張剤、乳化剤、酵素類、調味料、保存料、蛋白質、アミノ酸およびフレーバーからなる群から選択される少なくとも1種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
凍結乾燥中麺が粉末状である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
中麺作製工程において、さらに、副材料を加えて混捏することを特徴する請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
副材料が、イースト、イーストフード、油脂類、澱粉、糖類、乳製品、卵製品、塩類、膨張剤、乳化剤、酵素類、調味料、保存料、蛋白質、アミノ酸およびフレーバーからなる群から選択される少なくとも1種以上である請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
生地作製工程において、さらに、穀粉を加えて混捏することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
中麺作製工程において、中麺が50〜98℃に練り上げられた中麺であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
生地作製工程に続いて、さらに、生地発酵工程と加熱処理工程を包含することを特徴とする請求項1〜9いずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
穀粉と水分とを混捏してなる中麺を凍結乾燥することを特徴とする凍結乾燥中麺の製造方法。
【請求項12】
中麺が50〜98℃に練り上げた中麺である請求項11に記載の凍結乾燥中麺の製造方法。
【請求項13】
請求項11または12により製造された凍結乾燥中麺。
【請求項14】
請求項13に記載の凍結乾燥中麺を含有するベーカリー製品用プレミックス。
【請求項15】
さらに、穀粉を含有する請求項14に記載のベーカリー製品用プレミックス。
【請求項16】
さらに、副材料を含有する請求項14または15に記載のベーカリー製品用プレミックス。
【請求項17】
副材料が、イースト、イーストフード、油脂類、澱粉、糖類、乳製品、卵製品、塩類、膨張剤、乳化剤、酵素類、調味料、保存料、蛋白質、アミノ酸およびフレーバーからなる群から選択される少なくとも1種以上である請求項16に記載のベーカリー製品用プレミックス。
【請求項18】
請求項14〜17のいずれかに記載のベーカリー製品用プレミックスと、水分とを混捏してベーカリー製品用生地を作製する生地作製工程を包含することを特徴とするベーカリー製品の製造方法。
【請求項19】
請求項18に記載の製造方法により製造されたベーカリー製品。

【公開番号】特開2009−195196(P2009−195196A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42000(P2008−42000)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(591018534)奥本製粉株式会社 (20)
【Fターム(参考)】