説明

ベースコート塗料組成物、および光輝性複合塗膜

【課題】蒸着法またはスパッタリング法により形成される金属薄膜との付着性に優れるベースコート層を生産性よく形成でき、かつ、光輝性複合塗膜を生産性よく製造できるベースコート塗料組成物、およびこれを用いて形成された光輝性複合塗膜の実現。
【解決手段】蒸着膜またはスパッタリング膜からなる金属薄膜の下塗り用のベースコート塗料組成物であって、チオール化合物を3〜30質量%と、活性エネルギー線硬化性化合物(ただし、前記チオール化合物を除く)とを含む塗膜形成成分を含有することを特徴とするベースコート塗料組成物、およびこれを用いて形成された光輝性複合塗膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースコート塗料組成物、および光輝性複合塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
建材、車両部品などには、意匠性や高級感を付与するため、金属基材や樹脂基材の表面に、蒸着法やスパッタリング法によって金属薄膜が形成されることがある。基材表面に金属薄膜を形成する際には、金属薄膜に亀裂が発生するのを抑制するため、金属薄膜を形成する前にベースコート層を設ける場合が多い。
【0003】
ベースコート層を形成する塗料としては、例えば特許文献1には、メルカプト基を有するシランカップリング剤が配合されたアクリル系ウレタン塗料が開示されている。
また、特許文献2には、アクリル樹脂と、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、塩素化ポリオレフィンと、光重合開始剤とを含有する金属蒸着用紫外線硬化型下塗り塗料が開示されている。
【特許文献1】特開平11−34220号公報
【特許文献2】特開2002−348498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の塗料は、熱硬化性であるため作業時間がかかり、生産性が低かった。
また、特許文献2に記載の塗料は、紫外線等の活性エネルギー線の照射によって硬化する、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物などの活性エネルギー線硬化性化合物を含有するので、熱硬化性の塗料に比べて硬化時間は短いものの、未反応(未硬化)の活性エネルギー線硬化性化合物が残りやすかった。そのため、ベースコート層上に蒸着法やスパッタリング法により金属薄膜を形成する際、高真空化するのに時間がかり、ベースコート層および金属薄膜を備えた光輝性複合塗膜の生産性が低下しやすかった。さらに、活性エネルギー線硬化性の塗料は、熱硬化性の塗料に比べて硬化物(ベースコート層)の硬化収縮が起こりやすく、ベースコート層と金属薄膜との付着性が低下することがあった。
【0005】
本発明は上記事情を鑑みてなされたもので、蒸着法またはスパッタリング法により形成される金属薄膜との付着性に優れるベースコート層を生産性よく形成でき、かつ、光輝性複合塗膜を生産性よく製造できるベースコート塗料組成物、およびこれを用いて形成された光輝性複合塗膜の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、塗料組成物の成分としてチオール化合物を用いることにより、金属薄膜に対して優れた付着性を有するベースコート層を生産性よく形成できることを見出した。さらに、チオール化合物を含有する塗料組成物は、硬化時に未反応の活性エネルギー線硬化性化合物が残りにくいため、金属薄膜を形成する際に短時間で高真空化にでき、ベースコート層および金属薄膜を備えた光輝性複合塗膜を生産性よく製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明のベースコート塗料組成物は、蒸着膜またはスパッタリング膜からなる金属薄膜の下塗り用のベースコート塗料組成物であって、チオール化合物を3〜30質量%と、活性エネルギー線硬化性化合物(ただし、前記チオール化合物を除く)とを含む塗膜形成成分を含有することを特徴とする。
また、前記塗膜形成成分は、熱可塑性樹脂を50質量%以下含むことが好ましい。
【0008】
また、本発明の光輝性複合塗膜は、本発明のベースコート塗料組成物を基材の表面に塗布して形成されたベースコート層と、該ベースコート層上に、蒸着法またはスパッタリング法により設けられた金属薄膜と、該金属薄膜上に、2官能以上のチオール化合物と活性エネルギー線硬化性化合物(ただし、1官能以上のチオール化合物を除く)とを含有する金属薄膜用塗料組成物を被覆して形成された被覆膜とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、蒸着法またはスパッタリング法により形成される金属薄膜との付着性に優れるベースコート層を生産性よく形成でき、かつ、光輝性複合塗膜を生産性よく製造できるベースコート塗料組成物、およびこれを用いて形成された光輝性複合塗膜が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
[ベースコート塗料組成物]
本発明のベースコート塗料組成物(以下、「塗料組成物」という。)は、金属基材または樹脂基材上に金属薄膜を形成する前に、下塗りとしてベースコート層を形成するために使用される、活性エネルギー線硬化性の金属薄膜用の塗料組成物である。
この塗料組成物は、チオール化合物と活性エネルギー線硬化性化合物(ただし、前記チオール化合物を除く)とを含む塗膜形成成分を含有する。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの両方を示すものとする。
【0011】
<塗膜形成成分>
(チオール化合物)
チオール化合物は、金属に対して付着力の高い化合物である。従って、塗膜形成成分にチオール化合物を含有させることで、金属薄膜との付着性に優れたベースコート層を形成できる。
また、チオール化合物は、後述する活性エネルギー線硬化性化合物として好適に使用される(メタ)アクリレート化合物との光硬化による共重合性に優れる化合物である。さらに、ラジカル反応にも係らず酸素による重合阻害を受けにくい。従って、塗料組成物を硬化した際に未反応の活性エネルギー線硬化性化合物がベースコート層に残りにくい。よって、ベースコート層上に後述する金属薄膜を形成させて光輝性複合塗膜を形成する際に、短時間で高真空化できるので、光輝性複合塗膜を生産性よく製造できる。
【0012】
このようなチオール化合物の官能基数は1〜10が好ましく、2〜6がより好ましい。
1官能のチオール化合物としては、例えば、1−ペンタンチオール、1−ヘキサンチオール、1−ヘプタンチオール、1−オクタンチオール、1−デカンチオール、1−ドデカンチオール等が挙げられる。
【0013】
2官能のチオール化合物としては、例えば、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、メタンジチオール、エタンジチオール、プロパンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、シクロヘキサンジチオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジチオール、3,4−ジメトキシブタン−1,2−ジチオール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、1,2−ジメルカプト−プロピルメチルエーテル、8−オクタンジチオール、ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、ジプロピレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジプロピレングリコールビス(3−メルカプトアセテート)、ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、2−ジシクロヘキシルアミノ−4,6−ジメルカプト−S−トリアジン、ビス(2−メチルメルカプトメチル)スルフィド、6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール等が挙げられる。
【0014】
3官能のチオール化合物としては、例えば、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2−メチル−2−((3−メルカプト−1−オキソプロピル)−メチル)プロパン−1,3−ジイルビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコール、2,4,6−トリメルカプト−S−トリアジン等が挙げられる。
【0015】
4官能のチオール化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ジペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート等が挙げられる。
5官能のチオール化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタキスチオグリコレート等が挙げられる。
6官能のチオール化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサキスチオグリコレート等が挙げられる。
【0016】
また、チオール化合物としては市販のものを用いてもよく、例えば、昭和電工社製の「カレンズMT.BD1」、「カレンズMT.NR1」、「カレンズMT.PE1」;SC有機化学社製の「TMMP」、「PEMP」;淀化学社製の「EGTG」、「BDTG」、「TMTG」、「PETG」、「TMTP」、「PETP」等が挙げられる。
【0017】
チオール化合物の含有量は、塗膜形成成分100質量%中、3〜30質量%である。
チオール化合物の含有量が3質量%以上であれば、光硬化によって(メタ)アクリレート化合物などの活性エネルギー線硬化性化合物と十分に反応するため、未反応の活性エネルギー線硬化性化合物がベースコート層に残りにくくなる。チオール化合物の含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。
【0018】
上述したように、チオール化合物は活性エネルギー線硬化性化合物との共重合性に優れる化合物である。そのため、チオール化合物の含有量が必要以上に増えると、チオール化合物と反応する活性エネルギー線硬化性化合物の割合も増えるため、活性エネルギー線硬化性化合物同士の重合反応を抑制することになる。その結果、硬度が低く柔らかいベースコート層が形成されやすくなり、金属薄膜を形成する際にベースコート層が熱膨張収縮して、金属薄膜にクラックが発生し、ベースコート層と金属薄膜との付着性が低下しやすくなる。チオール化合物の含有量が30質量%以下であれば、活性エネルギー線硬化性化合物同士の重合反応を妨げにくくなるので、十分な硬度のベースコート層を形成でき、金属薄膜にクラックが発生するのを抑制できる。チオール化合物の含有量は、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
【0019】
(活性エネルギー線硬化性化合物)
本発明では、チオール化合物を除く活性エネルギー線硬化性化合物を用いる。このような活性エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物が挙げられ、後述する金属基材、または樹脂基材に応じて適宜選択して用いればよい。
ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリイソシアネート化合物と、ポリオールと、水酸基を有する(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。
ポリイソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネートの3量体、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0020】
ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルポリオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール、多価アルコールとアジピン酸などの多塩基酸との反応によって得られるポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンなどが挙げられる。中でも、1,6−ヘキサンジオールが好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリルレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
上述したポリイソシアネート化合物とポリオールを反応させ、得られた生成物に水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させることによって、ウレタン(メタ)アクリレートが得られる。この際、ポリイソシアネート化合物と、ポリオールと、水酸基を有する(メタ)アクリレートとの当量比は化学量論的に決定すればよいが、例えば、ポリオール:ポリイソシアネート化合物:水酸基を有する(メタ)アクリレート=1:1.1〜2.0:0.1〜1.2程度で使用することが好適である。また、反応には公知の触媒を使用できる。
【0023】
分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルペンタニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも脂環構造を有する化合物が好ましく、具体的にはシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルペンタニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、およびイソボロニル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0024】
分子内に2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、1,4ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、1,3ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレートが好ましく、特に脂環構造を有するジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、およびジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0025】
分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、形成されるベースコート層の硬度をより高めることができる。具体例としては、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
これらの中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、およびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0026】
塗膜形成成分がチオール化合物と活性エネルギー線硬化性化合物からなる場合、活性エネルギー線硬化性化合物の含有量は、塗膜形成成分100質量%中、70〜97質量%であり、75〜95質量%が好ましい。活性エネルギー線硬化性化合物の含有量が上記範囲内であれば、金属薄膜に対する付着性に優れたベースコート層を形成できる。
【0027】
本発明においては、分子内に脂環構造を有する活性エネルギー線硬化性化合物を、当該活性エネルギー線硬化性化合物100質量%中、50質量%以上含むことが好ましい。分子内に脂環構造を有する活性エネルギー線硬化性化合物を含有させることにより、ベースコート層上に金属薄膜を形成する際に、ベースコート層の硬化収縮を抑制でき、金属薄膜にクラックが発生するのを抑制できる。
【0028】
分子内に脂環構造を有する活性エネルギー線硬化性化合物としては、脂環構造のウレタン(メタ)アクリレート、上述したシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルペンタニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
脂環構造のウレタン(メタ)アクリレートは、上述した水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環構造を有するポリイソシアネート化合物を用い、上述したポリオールを反応させ、得られた生成物に上述した水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させることによって得られる。
なお、水添キシリレンジイソシアネートおよび水添ジフェニルメタンジイソシアネート等は、それぞれ市販品として入手できる。
【0030】
(熱可塑性樹脂)
塗膜形成成分には、熱可塑性樹脂が含まれていることが好ましい。熱可塑性樹脂を含むことで、塗料組成物の流動性を調節できる。
熱可塑性樹脂は、本発明の塗料組成物を塗布する金属基材、または樹脂基材に応じて適宜選択して用いられる。例えば、金属基材に塗布する場合、熱可塑性樹脂としては、例えば、油変性アルキッド樹脂、アクリル樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0031】
樹脂基材に塗布する場合は、例えば、油変性アルキッド樹脂、アクリル樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリルシリコーン樹脂等が挙げられる。
特に、樹脂基材がアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)を含む樹脂より形成される場合は、熱可塑性樹脂としてアクリル樹脂が好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを共重合したものが例示できる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。また、これらのアクリルモノマーと共重合可能なモノマーを共重合させてもよい。共重合可能なモノマーとしては、マレイン酸、フタル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、スチレン等が挙げられる。
アクリル樹脂としては市販のものを用いてもよく、例えば、藤倉化成社製の「アクリベースLH101」、「アクリベースLM−402」、DIC社製の「アクリディックA−165」、「アクリディックA−166」、「アクリディックA−181」、等が挙げられる。
【0032】
樹脂基材がポリプロピレン(PP)を含む樹脂より形成される場合は、熱可塑性樹脂として塩素化ポリオレフィン樹脂が好ましく、具体的には、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン−エチレン共重合樹脂、塩素化ポリエチレン−アクリル共重合樹脂等が挙げられる。中でも塩素化ポリプロピレン樹脂が好ましい。
塩素化ポリオレフィン樹脂としては市販のものを用いてもよく、例えば、日本製紙ケミカル社製の「スーパークロン773H」、「スーパークロン822」、「スーパークロン892L」、「スーパークロン832L」、「スーパークロンS−309」、東洋化成工業社製の「ハードレン14−LWP」、「ハードレンDX−526P」、「ハードレンHM−21P」、「ハードレンF−2P」、「ハードレンF−6P」等が挙げられる。
【0033】
樹脂基材が繊維強化複合材料(FRP)を含む樹脂より形成される場合は、熱可塑性樹脂として油変性アルキッド樹脂が好ましく、具体的には、多価アルコールと、多塩基酸またはその酸無水物とを混合し、さらに変性剤として油脂または油脂脂肪酸を加えることで得られる樹脂が挙げられる。油脂または油脂脂肪酸としては、不乾性油、半乾性油、乾性油のいずれであってもよく、例えばヤシ油、大豆油、トール油、サフラワー油、アマニ油、キリ油、ヒマシ油、これらの油脂の油脂脂肪酸類等が挙げられる。
油変性アルキッド樹脂としては市販のものを用いてもよく、例えば、DIC社製の「ベッコゾール1323−60−EL」、「ベッコゾールET−6502−60」、「ベッコゾールES−6505−70」、「ベッコゾールOD−E−198−50」、「ベッコゾールES−4020−55」、「ベッコゾールP−470−70」、「ベッコゾールJ−557」、「ベッコゾール45−163」、「ベッコゾールEL−4501−50」、「ベッコゾールEL−6501−70」等が挙げられる。
【0034】
熱可塑性樹脂の含有量は、塗膜形成成分100質量%中、50質量%以下が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、10〜30質量%が特に好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が50質量%以下であえば、金属薄膜との付着性に優れるベースコート層を形成できると共に、塗料組成物の流動性をより向上できる。この場合、チオール化合物と、活性エネルギー線硬化性化合物と、熱可塑性樹脂との質量比は、3〜30:20〜97:0〜50となる。
【0035】
<その他成分>
塗料組成物には、上述した塗膜形成成分の他、通常、光重合開始剤が含まれる。光重合開始剤としては、例えば商品名として、イルガキュア184、イルガキュア149、イルガキュア651、イルガキュア907、イルガキュア754、イルガキュア819、イルガキュア500、イルガキュア1000、イルガキュア1800、イルガキュア754(以上、チバスペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、ルシリンTPO(BASF社製)、カヤキュアDETX−S、カヤキュアEPA、カヤキュアDMBI(以上、日本化薬(株)製)等が挙げられる。これら光重合開始剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、光重合開始剤とともに、光増感剤や光促進剤を使用してもよい。
【0036】
光重合開始剤の含有量は、チオール化合物と活性エネルギー線硬化性化合物との合計100質量部に対して、1〜20質量部が好ましく、2〜10質量部がより好ましい。光重合開始剤の含有量が上記範囲内であれば、十分な架橋密度が得られる。
【0037】
塗料組成物は、必要に応じて各種溶剤を含んでいてもよい。溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン系溶剤が挙げられる。これら溶剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、塗料組成物は、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、表面調整剤、可塑剤、顔料沈降防止剤など、通常の塗料に用いられる添加剤や、艶消し剤、染料、顔料を適量含んでいてもよい。
【0038】
塗料組成物は、上述のチオール化合物および活性エネルギー線硬化性化合物の他、必要に応じて熱可塑性樹脂を含有する塗膜形成成分と、光重合開始剤、溶剤、各種添加剤等のその他成分とを混合することにより調製できる。
塗料組成物中の塗膜形成成分の割合は必要に応じて設定できるが、塗料組成物100質量%中、40〜98質量%が好ましく、50〜95質量%が好ましい。
【0039】
こうして調製された塗料組成物を硬化後の塗膜厚さが5〜100μm程度となるように、スプレー塗装法、刷毛塗り法、ローラ塗装法、カーテンコート法、フローコート法、浸漬塗り法などで金属基材または樹脂基材に塗装した後、例えば100〜3000mJ程度(日本電池(株)製「UVR−N1」による測定値)の紫外線をヒュージョンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等を用いて1〜10分間程度照射することにより、ベースコート層を形成できる。
活性エネルギー線としては、紫外線の他、電子線、ガンマ線なども使用できる。
【0040】
以上説明した本発明の塗料組成物は、チオール化合物と活性エネルギー線硬化性化合物を含有する塗膜形成成分を含んでいるため、金属薄膜に対する付着性に優れたベースコート層を形成することができる。
また、本発明の塗料組成物は活性エネルギー線硬化性であるので、熱硬化性の塗料に比べて硬化に要する時間が短時間ですみ、生産性よくベースコート層を形成できる。
さらに、本発明の塗料組成物より形成されるベースコート層は、未反応の活性エネルギー線硬化性化合物が残りにくいので、ベースコート層上に金属薄膜を形成させる際に短時間で高真空化できる。
【0041】
本発明の塗料組成物は、蒸着膜またはスパッタリング膜により形成される金属薄膜のベースコート用として好適である。
【0042】
[光輝性複合塗膜]
本発明の光輝性複合塗膜は、本発明のベースコート塗料組成物を基材の表面に塗布して形成されたベースコート層と、該ベースコート層上に設けられた金属薄膜と、該金属薄膜上に、金属薄膜用塗料組成物を被覆して形成された被覆膜とを備える。
基材の材質の具体例としては、アルミニウム、鉄、真鍮、銅、スズなどの金属や、ABS、ポリカーボネート(PC)、PP、FRPなどの樹脂が挙げられる。
【0043】
金属薄膜は、基材表面に本発明のベースコート塗料組成物を塗布してベースコート層を設けた後、蒸着法またはスパッタリング法により形成される。
金属薄膜の材質としては、アルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、銅、銀、亜鉛、スズ、インジウム、マグネシウム、これらの酸化物、およびこれらの合金などが挙げられるが、本発明のベースコート塗料組成物は特にアルミニウムや、クロムまたはクロム合金に対する付着性に優れる。
また、基材表面に設けられた金属薄膜の厚さは、15〜100nmが好ましく、30〜80nmがより好ましく、40〜60nmが特に好ましい。金属薄膜の厚さが15nm未満であると、反射率が低下して光輝感が乏しくなる傾向にある。一方、金属薄膜の厚さが100nmを超えると、クラックや剥離が発生しやすくなる。
【0044】
被覆膜は、ベースコート層上の金属薄膜を被覆するものであり、2官能以上のチオール化合物と活性エネルギー線硬化性化合物(ただし、1官能以上のチオール化合物を除く)とを含有する金属薄膜用塗料組成物を金属薄膜上に塗布し、紫外線などのエネルギー線を照射して硬化させることで形成される。被覆膜の厚さは5〜100μmが好ましい。
金属薄膜用塗料組成物の塗布方法および硬化条件は、ベースコート塗料組成物の塗布方法および硬化条件と同様である。
【0045】
金属薄膜用塗料組成物に含まれる2官能以上のチオール化合物、および活性エネルギー線硬化性化合物としては、本発明のベースコート塗料組成物の説明において先に例示したチオール化合物(ただし、1官能のチオール化合物を除く)、および活性エネルギー線硬化性化合物の中から1種以上を選択して用いることができる。
2官能以上のチオール化合物は、金属との付着性に優れ、活性エネルギー線硬化性化合物との反応性に優れる化合物である。従って、金属薄膜用塗料組成物に2官能以上のチオール化合物を含有させることで、金属薄膜との付着性に優れた被覆膜を形成できる。
【0046】
金属薄膜用塗料組成物には、必要に応じて公知のシランカップリング剤、熱可塑性樹脂、光重合開始剤、溶剤などが含まれていてもよい。
なお、金属薄膜用塗料組成物より形成される被覆膜は、金属薄膜を被覆していれば、最上層のトップコートとして設けられてもよく、中間層として設けられてもよい。中間層として設けられる場合、被覆膜の上には、必要に応じて、アクリル系ラッカー塗料、アクリルメラミン硬化系クリヤー塗料、アルミキレート硬化型アクリル系塗料などの熱硬化型のトップクリヤー塗料や、活性エネルギー線硬化型のトップクリヤー塗料からなるトップクリヤー層などを形成させてもよい。
【0047】
以上説明した本発明の光輝性複合塗膜は、本発明のベースコート塗料組成物より形成されるベースコート層を備えるので、金属薄膜に亀裂が発生するのを抑制できる。
また、ベースコート層には、未反応の活性エネルギー線硬化性化合物が残りにくいので、ベースコート層上に金属薄膜を形成させる際に短時間で高真空化できる。よって、生産性よく光輝性複合塗膜を製造できる。
さらに、光輝性複合塗膜を製造する際は、活性エネルギー線を照射することでベースコート層および被覆膜を形成するので、熱硬化の場合に比べて硬化に要する時間が短時間ですみ、生産性にも優れる。
【0048】
また、金属薄膜の材質としてクロムまたはクロム合金を用いれば、光の反射率が高く、腐食しにくく、かつ、高級感のある光輝性複合塗膜が得られる。
このような光輝性複合塗膜の用途としては特に制限はなく、アルミサッシなどの建材や、自動車などの車両部品など、種々のものが例示できる。
【実施例】
【0049】
[金属薄膜の形成]
<スパッタリング法;アルミニウムスパッタリング膜>
(形成例1:ABS/PC基材)
ABS/PC板(東レ社製、「トヨラックPX」)の表面に、ベースコート塗料組成物を、硬化後の塗膜厚が10〜15μmになるように、スプレーガンでスプレー塗装し、80℃で10分間予備乾燥して溶剤を除去した。その後、高圧水銀灯により300mJ/cm(日本電池社製「UVR−N1」による測定値)の紫外線を2〜3分間照射して、ベースコート層を形成した。
ついで、スパッタリング装置((株)徳田製作所製「CFS−8ES」)にセットし、真空度が1.3×10−2Paになるまで減圧した後、圧力を1.1×10−1Paになるようにアルゴンガスを通気しながら、300Vの電圧を印加することで、ベースコート層上にアルミニウム薄膜(アルミニウムスパッタリング膜)を形成した。該アルミニウムスパッタリング膜の厚さは300nmであった。
【0050】
<蒸着法;アルミニウム蒸着膜>
(形成例2:ABS基材)
基材として、ABS/PC板からABS板(東レ社製、「トヨラック」)に変更した以外は形成例1と同様にして基材上にベースコート層を形成した。
ついで、蒸着装置((株)アルバック製「EX−200」)にセットし、真空度が1.3×10−2Paになるまで減圧した後、アルミニウムを700℃に加熱することで、ベースコート層上にアルミニウム薄膜(アルミニウム蒸着膜)を形成した。該アルミニウム蒸着膜の厚さは300nmであった。
【0051】
(形成例3:PP基材)
基材として、ABS/PC板からPP板(日本ポリプロ社製、「ノバテックPP」)に変更した以外は形成例1と同様にして基材上にベースコート層を形成した。
ついで、形成例2と同様にして、ベースコート層上に厚さ300nmのアルミニウム蒸着膜を形成した。
【0052】
(形成例4:FRP基材)
基材として、ABS/PC板からFRP板(昭和高分子社製、「リゴラックBMC」)に変更した以外は形成例1と同様にして基材上にベースコート層を形成した。
ついで、形成例2と同様にして、ベースコート層上に厚さ300nmのアルミニウム蒸着膜を形成した。
【0053】
[実施例1]
表1に示す固形分比率(質量比)で各成分を混合して、ベースコート塗料組成物を調製した。
別途、2官能のチオール化合物として1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン(昭和電工社製、「カレンズMT.BD1」)5質量部と、活性エネルギー線硬化性化合物としてウレタンオリゴマー(ダイセルサイテック社製、「エベクリル1290」、6官能の非脂環構造のオリゴマー)50質量部と、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製、「アロニックスM−309」、3官能の非脂環構造モノマー)35質量部と、ジメチロールプロパンジアクリレート(日本化薬社製、「カヤラッドR−684」、2官能の脂環構造モノマー)10質量部と、光重合開始剤(チバスペシャリティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア184」)6質量部と、溶剤として酢酸ブチル50質量部を混合し、金属薄膜用塗料組成物を調製した。
【0054】
ついで、先に得られたベースコート塗料組成物を用い、表1に示す形成法(形成例)にて、基材上にベースコート層および金属薄膜を順次形成した。このとき、装置内の真空度が1.3×10−2Paになるまで減圧するのに要した時間(真空時間)を表1に示す。
【0055】
その後、金属薄膜の表面に、先に得られた金属薄膜用塗料組成物を、硬化後の塗膜厚が20μmになるように、スプレーガンでスプレー塗装した。ついで、80℃×3分間の条件で溶剤を乾燥させた後、高圧水銀灯により300mJ/cm(日本電池社製UVR−N1による測定値)の紫外線を2〜3分間照射して、被覆膜を形成し、これを試験片とした。
このようにして得られた試験片について、以下に示すように、初期付着性、耐水性、耐熱性を評価した。結果を表1に示す。
【0056】
<評価>
(初期付着性の評価)
試験片の塗膜に1mm幅で10×10の碁盤目状にカッターで切れ目を入れ、碁盤目状の部分にテープを貼着し剥がす操作を実施し、ベースコート層と金属薄膜との付着性について、以下の評価基準にて評価した。なお、テープとしては、セロハンテープを使用した。
○:塗膜が全く剥がれない。
△:塗膜の角の部分が剥がれた。
×:1個以上の塗膜が剥がれた。
【0057】
(耐水性の評価)
試験片を40℃の温水に24時間、および240時間浸漬した後、塗膜に1mm幅で10×10の碁盤目状にカッターで切れ目を入れ、碁盤目状の部分にテープを貼着し剥がす操作を実施し、ベースコート層と金属薄膜との付着性について、以下の評価基準にて評価した。なお、テープとしては、セロハンテープを使用した。
○:240時間温水に浸漬させても、塗膜が全く剥がれない。
△:浸漬時間が24時間であれば、塗膜が全く剥がれない。
×:24時間の浸漬で、1個以上の塗膜が剥がれた。
【0058】
(耐熱性の評価)
試験片を60℃の雰囲気下に240時間放置した後の金属薄膜の表面状態について、以下の評価基準にて目視評価した。
○:金属薄膜の表面にクラックが発生していない。
×:金属薄膜の表面にクラックが発生した。
【0059】
[実施例2〜7、比較例1〜6]
表1、2に示す固形分比率(質量比)で各成分を混合して、ベースコート塗料組成物を調製した。
こうして得られたベースコート塗料組成物を使用し、表1、2に示す形成法(形成例)にて、基材上にベースコート層および金属薄膜を順次形成した以外は実施例1と同様にして、試験片を作製し、評価した。結果を表1、2に示す。
【0060】
なお、表中の各成分の内容は以下の通りである。
(1)1官能チオール(1−デカンチオール):和光純薬工業社製。
(2)2官能チオール(1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン):昭和電工社製、「カレンズMT.BD1」。
(3)4官能チオール(ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)):昭和電工社製、「カレンズMT.PE1」。
(4)6官能モノマー(DPHA、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート):日本化薬社製、「カヤラッドDPHA」。
(5)3官能モノマー(TMPTA、トリメチロールプロパントリアクリレート):東亞合成社製、「アロニックスM−309」。
(6)2官能モノマーA(ネオペンチルグリコールジアクリレート):日本化薬社製、「カヤラッドNPGDA」。
(7)2官能モノマーB(ヘキサンジオールジアクリレート):BASF社製、「Laromer HDDA」。
(8)ヤシ油変性アルキッド樹脂:DIC社製、「ベッコゾール1323−60−EL」。
(9)アクリル樹脂:藤倉化成社製、「アクリベースLH101」。
(10)Cl−PP樹脂(塩素化ポリプロピレン):日本製紙ケミカル社製、「スーパークロン892L」。
(11)光重合開始剤:チバスペシャリティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア184」。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
表1、2から明らかなように、各実施例で得られたベースコート塗料組成物は、金属薄膜に対する付着性に優れたベースコート層を形成できた。
また、各実施例によれば、金属薄膜を形成する際の高真空化に要する時間(真空時間)が比較例よりも短く、短時間で金属薄膜を形成できた。
【0064】
一方、比較例1〜4で得られたベースコート塗料組成物は、チオール化合物を含有していないので、得られたベースコート層は金属薄膜との付着性が実施例に比べて劣っていた。その結果、耐水性の評価において金属薄膜が剥離しやすかった。
また、ベースコート層には未反応の活性エネルギー線硬化性化合物が多く残っていたため、実施例に比べて金属薄膜を形成する際の高真空化に時間がかかった。
【0065】
比較例5で得られたベースコート塗料組成物は、チオール化合物を含有していたので、比較例1〜4に比べて金属薄膜を形成する際の高真空化に要する時間は短かったものの、チオール化合物の含有量が塗膜形成成分100質量%中、2質量%と少なかったため、実施例の2倍以上の時間がかかった。
【0066】
比較例6で得られたベースコート塗料組成物は、チオール化合物を含有していたので、金属薄膜を形成する際の高真空化に要する時間が実施例と同程度であった。しかし、チオール化合物の含有量が塗膜形成成分100質量%中、40質量%と多かったため、実施例や比較例5に比べてチオール化合物と反応する活性エネルギー線硬化性化合物の割合が増え、活性エネルギー線硬化性化合物同士の重合反応が抑制されやすかった。その結果、柔らかいベースコート層が形成され、金属薄膜を形成する際にベースコート層が熱膨張収縮して、金属薄膜の表面にクラックが発生した。さらに、金属薄膜の表面にクラックが発生したことで、ベースコート層と金属薄膜との付着性が低下し、耐水性の評価において金属薄膜が剥離しやすかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着膜またはスパッタリング膜からなる金属薄膜の下塗り用のベースコート塗料組成物であって、
チオール化合物を3〜30質量%と、活性エネルギー線硬化性化合物(ただし、前記チオール化合物を除く)とを含む塗膜形成成分を含有することを特徴とするベースコート塗料組成物。
【請求項2】
前記塗膜形成成分は、熱可塑性樹脂を50質量%以下含むことを特徴とする請求項1に記載のベースコート塗料組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のベースコート塗料組成物を基材の表面に塗布して形成されたベースコート層と、該ベースコート層上に、蒸着法またはスパッタリング法により設けられた金属薄膜と、該金属薄膜上に、2官能以上のチオール化合物と活性エネルギー線硬化性化合物(ただし、1官能以上のチオール化合物を除く)とを含有する金属薄膜用塗料組成物を被覆して形成された被覆膜とを備えたことを特徴とする光輝性複合塗膜。

【公開番号】特開2010−90186(P2010−90186A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258426(P2008−258426)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000224123)藤倉化成株式会社 (124)
【Fターム(参考)】