説明

ベースネット及び座席構造

【課題】 姿勢支持性、体圧分散性、エネルギー吸収性等を向上させる。
【解決手段】バック用べーネット170が、三次元立体編物から形成され、その一対のグランド編地同士を厚み方向に近接させる縫い目171a〜171dが部分的に設けられ、縫い目により厚み方向に所定の予備圧縮が付与され、面方向(張設方向)に残留応力が発生する構成である。そのため、部分的な残留応力の向上により、部分的に剛性が増し、その結果、凹凸の多い人の体を均一に近い圧力で支えることになり、所望の部位に縫い目171a〜171dを設けるという簡易な構成でありながら、姿勢支持性、体圧分散性を高めることができる。また、縫い目171a〜171dの形成位置を任意に調整することで、圧力分布を調整して振動モードを所望の設定に容易に制御でき、振動吸収性の向上も容易に図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はベースネット及び座席構造に関し、特に、自動車、航空機、列車などの輸送機器用シートとして適するベースネット及び座席構造に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、座席構造の軽量化を図るため、クッションフレームやバックフレームに三次元立体編物や二次元の布帛をベースネットとして用いた座席構造を種々提案している。特許文献1〜3では、トーションョンバーを介してベースネットを張設して所定のクッション特性を付与したものであり、従来の所定厚みのウレタン材をクッションパン上に載置したいわゆる「置き構造」のタイプと比較して、軽量化を図りつつ、姿勢支持性、体圧分散性、振動吸収特性等の向上を図ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−188164号公報
【特許文献2】特開2006−345952号公報
【特許文献3】特開2006−345953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、姿勢支持性、体圧分散性やエネルギー吸収性等の特性は、ベースネットの特性と大きく関係する。ベースネットは、編組織、糸の材質、直径、厚さなどによって特性が決まってくる。従って、シートメーカーとしては、ベースネットとして目的とする特性を得ることができる素材(三次元立体編物や二次元の布帛等)を準備する必要がある。ところが、市販の素材ではシートメーカーが望む特性を満足できないとすれば、専用のものを特注しなければならない。それではコストが高くなる。そのため、素材の入手後、シートメーカー側の処理でその特性を簡易かつ低コストで制御できることが望まれる。
【0005】
また、例えば、輸送機器用のベースネットにおいて姿勢支持性を重視した場合には、比較的伸びの少ないものが選択される。この際、二軸織物や三次元立体編物の場合、原反状態での巻き方向であるロール方向やその直交方向である幅方向に対しては、上記した編組織や糸の材質等によって所望の伸び率に制御することは比較的容易である。しかし、ロール方向や幅方向に対して斜め方向では、編組織の調整等によって所望の伸び率に制御することは困難である。そのため、姿勢支持性を重視する場合、斜め方向における伸びの少ない3軸織物や4軸織物を選択することがあるが、3軸織物や4軸織物は、コストが高く、重量が重くなる。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、低コストの簡易な処理で部分的に剛性を高めることで所望の特性に制御され、姿勢支持性、体圧分散性、エネルギー吸収性等を向上させることができるベースネット及びそれを用いた座席構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のベースネットは、座席構造のシートバック部又はシートクッション部における表層クッション部に被覆され、バックフレーム又はクッションフレームに張られて支持されるベースネットであって、互いに離間して配置された一対のグランド編地同士を連結糸で結合することにより形成される三次元立体編物から形成され、前記連結糸を挟んだ一対のグランド編地同士を厚み方向に近接させる縫い目が部分的に縫製により設けられ、前記縫い目により厚み方向に所定の予備圧縮が付与され、張設方向に残留応力が発生する構造であることを特徴とする。
前記ベースネットは、前記縫い目が、骨盤から腰部を支持する部位を含んだ位置に設けられ、前記バックフレームに張られて支持される構成とすることができる。また、前記ベースネットは、前記縫い目が、座骨結節を支持する部位を略中心とした所定範囲を含む位置及び大腿部を支持する部位のいずれか少なくとも一方に設けられ、前記クッションフレームに張られて支持される構成とすることができる。
前記三次元立体編物のロール方向及び幅方向に対する斜め方向に沿って、前記縫い目が設けられていることが好ましい。所定間隔をおいた略平行な2本の前記縫い目の組み合わせが一組以上形成されていることが好ましい。前記略平行な2本の縫い目の組み合わせが二組以上形成され、少なくとも1箇所において両者が交差していることが好ましい。前記縫い目は、略平行な2本を略V字状、略X字状又は略菱格子状となるように形成したものであることが好ましい。前記縫い目が、一筆書きの要領で縫製することにより形成されていることが好ましい。前記縫い目を形成する糸が弾性糸であることが好ましい。前記三次元立体編物に代えて、二次元の布帛又は三次元立体編物に、他の層を1層以上積層した積層構造の布帛を用いてなる構成とすることもできる。前記三次元立体編物に代えて、二次元の布帛を用いてなる構成とすることもできる。
【0008】
また、本発明の座席構造は、シートバック部とシートクッション部とを備えた座席構造であって、前記シートバック部のバックフレームに張られて支持されるベースネットとして前記ベースネットが用いられることを特徴とする。前記シートバック部のバックフレームに張られるベースネットの裏側おいて、前記バックフレームにおける上下方向中央部よりも下方位置に幅方向に掛け渡される面状バネ部材を有することが好ましい。前記面状バネ部材の前面を被覆する前面被覆部を備え、前記面状バネ部材により弾性的に支持される骨盤支持部材をさらに有することが好ましい。前記骨盤支持部材を面で支え、前記骨盤支持部材の回転運動の作用点となる支持プレートが、前記面状バネ部材に、前記シートバック部のセンターラインを挟んだ左右に所定間隔をおいて設けられていることが好ましい。さらに、本発明の座席構造は、シートバック部とシートクッション部とを備えた座席構造であって、前記シートバック部のバックフレームに張られて支持されるベースネットとして前記ベースネットが用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、三次元立体編物の一対のグランド編地同士を厚み方向に近接させる縫い目が部分的に設けられ、縫い目により厚み方向に所定の予備圧縮が付与され、面方向(張設方向)に残留応力が発生する構成である。そのため、部分的な残留応力の向上により、部分的に剛性が増し、その結果、凹凸の多い人の体を均一に近い圧力で支えることになり、所望の部位に縫い目を設けるという簡易な構成でありながら、姿勢支持性、体圧分散性を高めることができる。また、縫い目の形成位置を任意に調整することで、圧力分布を調整して振動モードを所望の設定に容易に制御でき、振動吸収性の向上も容易に図ることができる。
【0010】
また、シートバック部に設けるベースネットの場合には、縫い目を、骨盤から腰部応部付近に設けることが好ましい。これにより、着座者の骨盤から腰部付近を必要最小限の支持面積でありながら相対的に大きな支持力でもって確実に支持でき、姿勢支持性を効率よく高めることができると共に、縫い目が入った部分以外では、相対的に伸縮量を大きく確保できるため、振動吸収性、エネルギー吸収性を高めることができる。シートクッション部に設けるベースネットの場合には、縫い目を、座骨結節を支持する部位を略中心とした所定範囲を含む位置及び大腿部を支持する部位のいずれか少なくとも一方に設けることが好ましい。座骨結節付近に設けた場合には、座骨結節付近の支持力を高め底付き感を抑制することができると共に、より廉価なものを使用でき、座席構造全体の低コスト化にも寄与する。大腿部を支持する部位を設けた場合にも同様に底付きを防止できる共に、前方への尻滑りの抑制にも役立つ。
【0011】
また、三次元立体編物でなくても、二次元の布帛に1層以上の他の層を積層した積層構造の布帛、あるいは、二次元の布帛において所望部位に縫い目を設けることによっても同様の効果を奏することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一の実施形態に係る座席構造の内部構造を示す正面側から見た斜視図である。
【図2】図2は、図1を背面側から見た斜視図である。
【図3】図3は、図1の正面図である。
【図4】図4は、図1の背面図である。
【図5】図5は、図1の側面図である。
【図6】図6は、図5のB−B線断面図である。
【図7】図7は、図3のA−A線断面図である。
【図8】図8は、図3の矢印C方向から見たバック用ベースネットを示した図であって、略V字状の縫い目が形成された例を示した図である。
【図9】図9は、図3の矢印C方向から見たバック用ベースネットを示した図であって、略X字状の縫い目が形成された例を示した図である。
【図10】図10は、図3の矢印C方向から見たバック用ベースネットを示した図であって、略菱格子状の縫い目が形成された例を示した図である。
【図11】図11は、試験例1の引張り試験の結果を示した図である。
【図12】図12は、試験例1の引張り試験の結果のうち通常使用域の範囲を抽出した図である。
【図13】図13(a)〜(d)は、試験例2の略V字状の縫い目が形成されたバック用ベースネットを用いた場合の体圧分布の測定結果を示した図である。
【図14】図14(a)〜(d)は、試験例2の略X字状の縫い目が形成されたバック用ベースネットを用いた場合の体圧分布の測定結果を示した図である。
【図15】図15(a)〜(d)は、試験例2の略菱格子状の縫い目が形成されたバック用ベースネットを用いた場合の体圧分布の測定結果を示した図である。
【図16】図16(a)〜(d)は、試験例2の縫い目のないバック用ベースネットを用いた場合の体圧分布の測定結果を示した図である。
【図17】図17は、試験例3の体調マップを示した図である。
【図18】図18は、試験例3の感覚応答マップを示した図である。
【図19】図19は、試験例4の振動伝達率を示した図である。
【図20】図20は、クッション用ベースネットの座骨結節を支持する付近に縫い目を形成した本発明の他の実施形態を説明するための図である。
【図21】図21は、クッション用ベースネットの大腿部を支持する付近に縫い目を形成した本発明のさらに他の実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に示した実施の形態に基づき本発明をさらに詳細に説明する。これらの図に示したように、本実施形態の座席構造1は、シートバック部10及びシートクッション部30を有している。
【0014】
シートバック部10を構成するバックフレーム100は、図1〜図7に示したように、所定間隔をおいて配置される一対のサイドフレーム110,120と、該サイドフレーム110,120の上部間に配置される上部フレーム130,140(以下、場合により、「第1上部フレーム130」、「第2上部フレーム140」)と、該サイドフレーム110,120の下部間に配置される下部フレーム150とを備えてなる。そして、シートクッション部30のクッションフレーム300のサイドフレームの後部に、バックフレーム100のサイドフレーム110,120の下部がリクライニング機構40を介して連結され、シートバック部10はシートクッション部30に対して前後に傾動可能に設けられる。
【0015】
バックフレーム100の各サイドフレーム110,120は、所定の幅を備えた板状部材から形成され、その幅方向がほぼ前後方向に沿う向きで配置される。具体的には、図5に示したように、その幅は、上側から下側に向かうに従って若干幅が広くなる形状を備えており、クッションフレーム300に対するバックフレーム100の傾きを略90度とした状態で側面から見た際に、前縁部110a,120aは、上側から下側に向かうに従って若干前方に膨出する方向に傾斜するラインに沿った形状となっている。
【0016】
第1上部フレーム130及び第2上部フレーム140は、開放端側を下方に向けた略コ字状に形成されたパイプ材からなり、中央から外側に向かって略水平に延びる横方向フレーム部131,141と、開放端側の縦方向フレーム部132,142を備えている。また、横方向フレーム部131,141と縦方向フレーム部132,142のそれぞれの間は、横方向フレーム部131,141の各端部から斜め下方に延びて縦方向フレーム部132,142につながる傾斜フレーム部133,143を備えている。そして、第1上部フレーム130は、サイドフレーム110,120の前縁部110a,120a側に縦方向フレーム部132が連結され、第2上部フレーム140は後縁部110b,120b側に縦方向フレーム部142が連結される。このため、第1上部フレーム130及び第2上部フレーム140は、前後に間隔をもって配設されており、横方向フレーム部131,141の中央部において、横方向フレーム部131,141間にヘッドレスト支持部145が設けられている。
【0017】
下部フレーム150よりもやや上方位置において、すなわち、着座者の骨盤から腰部付近に対応する位置において、サイドフレーム110,120の前縁側付近には、面状バネ部材としてのSバネ151が掛け渡される(図2参照)。Sバネ151は、着座者の骨盤から腰部付近に当接し、前後方向へのストローク感を出すと共に、骨盤に生じた回転・往復運動に対する復元力を作り出す。Sバネ151は、幅方向中央部が前方又は後方に膨出したアーチ形状に設けられていることが好ましい。前方に膨出するアーチ形状に形成されていると、ストロークを感じさせやすくでき、後方に膨出するアーチ形状に形成されていると、人の背に沿ったフィット感が向上する。着座者の好みの問題もあるため、いずれにするかは、例えば、本実施形態の座席構造を設置する自動車等の乗物のタイプ(セダンタイプ、スポーツタイプなど)により選択することができる。Sバネ151を設けることにより、その上端縁側が押圧されると下端縁側を中心として後方に回動し、骨盤を、斜め下から斜め上方向にバネによる反力で支持できる。また、左右方向に慣性力が入力された際には、相対的に小さなバネ定数により、反力の小さいストロークが生じ、回転運動を生じながら骨盤をしっかりと支えてくれ、骨盤に生じる運動に対して復元力を作り出していく。なお、斜め下から斜め上に支持圧を作用させやすくするため、Sバネ151は、本実施形態のように、骨盤支持部材152と一体に設けることが好ましい。
【0018】
骨盤支持部材152は、図1〜図7に示したように、ビーズ発泡体等から、側面視で略L字状に加工して形成される。正面からみた場合、Sバネ151よりも狭い幅で形成され、Sバネ151の前面側に配置される前面被覆部152aを有する。略L字状の骨盤支持部材152の角部付近には、幅方向に外面溝部152mが形成されており、この外面溝部152mよりも後方部位の内面側に、下部フレーム150に係合する溝部152nが形成されている。そして、外面溝部152mがリクライナ間の連結ロッド330の後部側に沿うように配置される。着座者が後方へ荷重をかけ、前面被覆部152aが後方斜め下方向に回転していくと、Sバネ151の反力が作用し、着座者の骨盤から腰部にかけての部位を斜め下から斜め上方向に押圧して支持し、Sバネ151のみで支持する場合よりも支持感が高まる。また、Sバネ151の両端部付近には、支持プレート(Sバネ支持プレート)151aが取り付けられていることがさらに好ましい。骨盤支持部材152の前面被覆部152aが後方に回転運動する際には、該Sバネ支持プレート151aが作用点となり、該Sバネ支持プレート151aにより面で支えられることになるため、さらに支持感を高めることができる。
【0019】
バックフレーム100のサイドフレーム110,120、第1及び第2上部フレーム130,140には、本実施形態のベースネット(以下、「バック用ベースネット」という)170が支持される。バック用ベースネット170は、略袋状に形成され、バックフレーム100の正面側を被覆する正面被覆部171を有すると共に、背面側を被覆する背面被覆部172とを有している。
【0020】
正面被覆部171は、第1上部フレーム130の各横方向フレーム部131から下部フレーム150に対応する位置に至るまでの大きさを有している。正面被覆部171には、下方に延びる下方突出部176を有しており、該下方突出部176は、骨盤支持部材152の下側に回し込まれるて配設される(図7参照)。背面被覆部172は、第2上部フレーム140の後縁側を回って、さらに、下部フレーム150付近に至るまで延びている(図2及び図5参照)。
【0021】
バック用ベースネット170をこのようにして張設することで、着座者の体側部に対応するサイドフレーム110,120寄りの部分は前後への撓みの小さな部位となり、バック用ベースネット170のセンターラインに沿った脊柱に対応した部分が、前後に撓み易くなる。これにより、コーナリングの際に左右方向に慣性力が作用すると、脊柱を中心とした回転運動が生じやすくなる。回転運動が生じた際に、センターラインに沿った部分が前後に撓むと、Sバネ151及び骨盤支持部材152の支持圧が作用する。これにより、体が左右方向にずれるのを防止する。
【0022】
バック用ベースネット170は、三次元立体編物、二次元布帛、二次元布帛に1以上の他の層を積層した積層構造の布帛等から形成できるが、張力方向の復元性に優れた三次元立体編物を用いることが好ましい。なお、三次元立体編物は、例えば、特開2002−331603号公報、特開2003−182427号公報等に開示されているように、互いに離間して配置された一対のグランド編地と、該一対のグランド編地間を往復して両者を結合する多数の連結糸とを有する立体的な三次元構造となった編地である。また、二次元布帛を用いる場合には、本出願人による特開2008−259885号公報に開示したもの用いることが好ましい。この二次元布帛は、たて糸とよこ糸のいずれか一方が弾性糸から構成され、他方が該弾性糸よりも弾性の小さい普通糸から構成されており、長さ200mm、幅50mmで切り出した試験片をその長手方向各端部から50mm内側に寄った部位までを掴み代として長手方向に沿って50mm/分で引っ張ることにより測定された引っ張り特性として、弾性糸の配置方向に沿って引っ張った際に軟化バネ特性を示すと共に、普通糸の配置方向に引っ張った際に線形バネ特性を示し、バックフレーム100に張設した状態で面方向に略垂直に加圧した際の荷重−たわみ特性から求められるバネ定数として、直径30mmの圧縮板で加圧した際の荷重−たわみ特性から求められるバネ定数よりも直径98mmの圧縮板で加圧した際の荷重−たわみ特性から求められるバネ定数が高いことを特徴とするものである。この構成により、人の筋肉の荷重特性と同様の特性を有することになり、フィット感の増加、姿勢支持性の向上等を図ることができる。二次元布帛に他の層を積層する場合、薄手のウレタン材や不織布等を積層して2層の布帛としたものや、2枚の二次元布帛間に薄手のウレタン材や不織布等を挟んだ3層の布帛としたもの等を用いることができる。
【0023】
ここで、バック用ベースネット170の正面被覆部171には、図3及び図8に示したように、縫い目171a〜171dが設けられている。これらは、正面から見て、幅方向中央のセンターラインを挟んで左右対象に設けられており、センターラインを挟んだ一方側で上端から下端まで互いに略平行に設けられた2本一組の縫い目171a,171bと、他方側で上端から下端まで互いに略平行に設けられた2本一組の縫い目171c,171dとにより、略V字状をなすように、上部側ほど間隔が広がるように形成されている。縫い目171a〜171dは、例えば8番手の糸でバック用ベースネット170の正面被覆部171を縫うことにより形成される。バック用ベースネット170が三次元立体編物の場合、このような縫い目171a〜171dが部分的に形成されることにより、当該部分において連結糸を挟んだ一対のグランド編地同士が厚み方向に近接することになる。そのため、縫い目171a〜171dが形成されたラインに沿って予備圧縮が付与され、面方向(張設方向)に残留応力が発生することになる。この残留応力により、上記したように、部分的に剛性が増し、その結果、凹凸の多い人の体を均一に近い圧力で支えることができることになる。
【0024】
三次元立体編物に縫い目171a〜171dを施した場合のこの作用、効果は、二次元布帛に薄手のウレタン材や不織布等を積層した2層の布帛、あるいは、2枚の二次元の布帛間に薄手のウレタン材や不織布等を挟んだ3層の布帛でも同様に生じる。また、いずれの場合も、縫い目171a〜171dの縫製ラインに沿った方向に引っ張った際、縫い目171a〜171dを形成している糸の破断が生じるため、所定以上の衝撃を受けた際のエネルギー吸収性が向上するが、この作用、効果は二次元布帛のみからなるものに縫い目を形成した場合も同様である。バック用ベースネット170に要求される引張り特性等として、素材状態ではその要求基準に満たないものであっても、糸を縫い付けてこのような縫い目171a〜171dを設けることにより、所定の要求基準を満たすものとすることができる。素材状態での特性が低いものを使用した場合、バック用ベースネット170に要求される特性の中でも、特に、斜め方向の強度(引張り特性)が要求基準を満たさなくなることが多い。そこで、原反状態のロール方向や幅方向に対して斜め方向に沿って縫い目171a〜171dを形成すると、当該方向へのエネルギー吸収性を特に高めることができるため好ましい。従って、バック用ベースネット170としてより剛性の低いものを利用できコストダウンに寄与する。
【0025】
糸を縫製して縫い目を形成する本数や形成位置は任意であり、1本であってもよいが、平行な2本を一組として斜め方向に複数設けることがより好ましい。そのような形態としては、上記した略V字状の例以外に、例えば、図9に示したように、正面から見て、縫い目171e〜171hが略X字状に交差するように形成したり、図10に示したように、正面から見て、縫い目171i〜mによって略菱形の縫い目が隣接して連続する略菱格子状に形成したりすることができる。
【0026】
また、図9のように略X字状に形成する場合の縫い目171e〜171h間の交差部1711、図10のように略菱格子の縫い目171i〜m間の交差部1712,1713,1714は、着座者の骨盤から腰部に対応する部位となるように設けることが好ましい。交差部1711〜1714は縫い目により四方が取り囲まれているため、当該部位の引張り方向の強度が高まると共に、厚み方向の剛性も高くなり、骨盤から腰部の支持力が高くなって、姿勢支持性が向上する。また、交差部1711〜1714の強度が高まり、相対的にその上方部の強度が低くなるため、大きな衝撃を受けた際には、この交差部1711〜1714で着座者の衝撃荷重を受けると共に、着座者の体がさらに上方にせり上がろうとした際には、上方部の縫い目の糸が切れ始めエネルギーを吸収しやすい。
なお、上記した各縫い目は、一筆書きの要領で縫製可能な模様とすると、自動ミシンでの縫製が可能となり、より低コストで実施できる。また、縫い目を形成する糸は、綿糸、合成繊維等を用いることができるが、引張り特性を向上させるためには弾性糸を用いることが好ましい。
【0027】
シートバック部10には、バック用ベースネット170を上記したように配設した状態で、表皮200(図1,図2等において想像線で示す)が被覆されるが、表皮200とバック用ベースネット170との間には、例えばスラブウレタンを用いたパッド210が配設される(図6参照)。パッド210は、脊柱を境とした左右のそれぞれに設けら、左右のパッド210,210間の隙間を通じて表皮200とバック用ベースネット170とが縫製される。パッド210を有することにより、集中荷重を分散荷重に変化させることができる。また、パッド210,210の各外側縁からサイドフレーム110,120の外面を被覆し、着座者の両サイドで前方に膨出するモールドウレタン等のサイドパッド220,220が配設されており、その外面も表皮200により被覆されている。サイドパッド220,220をこのように設けることで着座者の左右方向の姿勢支持性を高めている。
【0028】
本実施形態によれば、三次元立体編物からなるバック用ベースネット170に、縫い目171a〜171d、171e〜171h、171i〜mが形成されているため、縫い目が形成されたラインに沿って予備圧縮が付与され、面方向(張設方向)に残留応力が発生して部分的に剛性が増し、凹凸の多い人の体を均一に近い圧力で支えることができることになる。従って、体圧分散性、姿勢支持性に優れると共に、上記したように、縫い目を形成している糸の切れを利用して衝撃吸収性を高めることもできる。
【0029】
(試験例1)
厚さ3mmの三次元立体編物のロール方向及び幅方向に対して斜めの方向に8番手のポリエステル製の糸による縫い目を形成し、縫い目を形成した方向である斜め方向に引張り試験を行った。試験は、縫い目を1本形成した場合、2cmの間隔をおいて平行に2本の縫い目を形成した場合について行った。また、縫い目を形成する糸としてPTT繊維(ポリトリメチレンテレフレート)からなる弾性糸を1本使用した場合についても同様に測定した。そして、縫い目を全く形成しない場合との比較を行った。図11及び図12にその結果を示す。
図11から、ポリエステル製の糸の場合(図中、「縫い糸1本−1」、「縫い糸2本−2」と表示のデータ)、引張り強さは縫い目の有無に拘わらずあまり変わらないが、縫い目を形成したものの方が、いずれも、中途における荷重値の上下変動量が大きいのに対し、縫い目を形成していないものは線形に近い形で増加している。これは、縫い目を形成している糸の破断作用によるものであり、エネルギー吸収性が向上することがわかる。一方、弾性糸の場合(図中、「弾性糸追加」と表示)には、引張り強さが約2.5倍に上昇している。従って、強度をより高く設定した場合には、弾性糸により縫い目を形成することが好ましい。また、図12に示したように、通常の使用時における変位量の範囲(約25mmまでの範囲)では、縫い糸2本の強度が高く、次に、縫い糸1本、縫い糸なしの順になっている。このことから、糸による縫い目を設けることにより通常使用域において斜め方向の強度を高めることができることがわかる。
【0030】
(試験例2)
試験例1で用いた厚さ3mmの三次元立体編物について、バック用ベースネット170に、図8に示した略V字状の縫い目171a〜171dを形成した場合、図9に示した略X字状の縫い目171e〜171hを形成した場合、図10に示した略菱格子状の縫い目171i〜mを形成した場合、並びに、縫い目を形成していない場合について、それぞれ、体圧分散性を測定した。結果を図13〜図16に示す。
【0031】
なお、各図の(a)は、バックフレーム100にバック用ベースネット170、Sバネ151、Sバネ支持プレート151a、骨盤支持部材152、表皮200、スラブウレタン210、サイドパッド220等を支持させた図1〜図7に示した完成状態の座席構造1に着座した場合であり、各図の(b)は、バックフレーム100にバック用ベースネット170、Sバネ151、Sバネ支持プレート151a、骨盤支持部材152が配設されているが、表皮200、スラブウレタン210、サイドパッド220が配設されていない状態で着座した場合であり、各図の(c)は、さらに、骨盤支持部材152がなく、バックフレーム100にバック用ベースネット170、Sバネ151、Sバネ支持プレート151aのみを配設した状態で着座した場合であり、各図の(d)は、バックフレーム100にバック用ベースネット170のみを配設した状態で着座した場合である。なお、着座者は、身長172cm、体重56kgの40歳代の男性である。
【0032】
まず、各図の(d)のバック用ベースネット170のみの場合を比較すると、図16(d)の縫い目がない場合よりも、図13(d)、図14(d)及び図15(d)の方が、肩胛骨付近での支持面積が大きくなっており、体圧分散性が高まっていることがわかる。中でも、図15(d)の略菱格子状のものが体圧分散性が高い。
【0033】
また、各図の(b),(c)同士を比較した場合、図13(b),(c)、図14(b),(c)及び図15(b),(c)は、いずれも、骨盤上部から腰部付近での支持圧が顕著に高くなっているが、図16(b),(c)の縫い目がない場合の骨盤上部から腰部付近での支持圧はそれらよりも低いことがわかる。すなわち、縫い目を設けたバック用ベースネット170と、Sバネ151や骨盤支持部材152等とを組み合わせると、バック用ベースネット170の剛性が上がることによって、Sバネ151や骨盤支持部材152等による骨盤上部から腰部付近での支持力を顕著に発揮させることができる。
【0034】
一方、各図の(a)同士を比較した場合には、上記と逆に、図16(d)の縫い目がない場合は、骨盤上部から腰部付近の支持圧が顕著に高くなっているのに対し、図13(a)、図14(a)及び図15(a)は、いずれも、骨盤上部から腰部付近での支持圧が図16(d)の縫い目がない場合よりも低くなっている。これは、縫い目がない場合には、剛性が低いため、バック用ベースネット170とSバネ151や骨盤支持部材152等とを組み合わせた支持力が小さく、その分、表皮200及びスラブウレタン210における負担が大きくなり、組立状態では、骨盤上部から腰部付近の支持圧が顕著に高くなり、体圧分散性の点でバック用ベースネット170に縫い目を設けたいずれの場合よりも劣るものである。
【0035】
なお、縫い目を設けた図13(a)、図14(a)及び図15(a)を比較した場合、体圧分散性の点では、図13(a)の略V字状のものが支持圧の偏りが小さくが最も優れているといえる。
【0036】
上記した試験例から、バック用ベースネット170に縫い目を形成することにより、骨盤から腰部付近の支持力を高めることができることから、着座者の背筋が自然に伸びやすく、腹部は柔らかく保たれやく、骨盤付近以外の身体部位は動きの自由度が十分保たれることになる。従って、車内という狭い空間の中で、姿勢をスムーズかつ自由に変更が可能で、スムーズな呼吸運動が促進され、着座者を副交感神経優位なリラックス状態に誘導しやすい。また、骨盤から腰部付近の支持力を高めると共に、肩胛骨付近での支持面積が大きくかつ柔らかな支持力であるため、抗重力筋はリラックスしやすく、頭部の揺動が抑えられ目線の安定をもたらし、走行中という動的環境下でも安定した姿勢保持性を発揮できる。
【0037】
(試験例3)
副交感神経優位なリラックス状態に誘導できるか否かについて、生理指標を用いた快適性評価試験を行った。被験者は模範的な運転技能を有する70歳代の男性2名(被験者A、B)である。被験者Aは、図1〜図8に示した座席構造(バック用ベースネット170の縫い目は図8の略V字状(以下、「開発シート」と呼ぶ))を運転席にセットした車両で運転した。被験者Bは、座席の上に載置して使用するドライブクッションであって、骨盤支持部材152、Sバネ151等と同様の機能を果たす構造を備え、その前面に図8の略V字状の縫い目を施した三次元立体編物を配置し、さらにその表面を表皮で被覆したもの(以下、「体側クッションシート」と呼ぶ)を、一般的なウレタンシートのシートバック部の表面に支持させて運転を実施した。
【0038】
実験は、背部の体表脈波(APW)を検出するセンサーを、開発シート及び体側クッションシートのバック部に仕込み、運転中のAPWの変化を計測する。その計測結果を、本出願人が特願2011−108909号等として提案した定量化手法により体調マップ及び感覚応答マップとして表した。これは、採取したAPWを周波数分析し、対象となる解析区間について、解析波形を両対数軸表示に表し、その解析波形を低周波帯域、中周波帯域、高周波帯域に分け、区分けした解析波形の傾きと、全体の解析波形の形とから一定の基準に基づいて解析波形の点数化を行い、それを座標軸にプロットしたものである。体調マップは、自律神経系の制御の様子を交感神経と副交感神経のバランスとして見たものであり、感覚応答マップは、体調マップに心拍変動の変化の様子を重畳させたものである。図17及び図18がその結果であるが、いずれも、開始点から第1点目までの解析区間の時間間隔は約40分であり、それ以降の時間間隔は約10分である。
【0039】
図17及び図18から、開発シートを使用した被験者Aは、体調は終始ハツラツ状態を維持して適応性を高めており、感覚応答では次第に集中力が高まっている。このことから被験者Aは持続的な集中力を発揮する性質であると推定され、開発シートは少なくとも体調の維持と集中力の高まりを阻害するものではなかったと判定できる。
【0040】
体側クッションシートを使用した被験者Bは、運転を始めると体調は不活発になり、感覚応答は沈静化してエネルギー消費量を少なくする傾向が見て取れる。この傾向は体側クッションシートの特性が促した可能性がある。但し、高速道で渋滞にあった際においては、感覚応答が急激に沈静化したことと、その後、満足と不満足が活発に切り替わったことから、被験者Bは、飽きやすいが瞬発的な集中力を発揮する性質であると推定でき、これがエネルギー消費量を少なくする傾向をもたらした可能性も考えられる。
【0041】
(試験例4)
図1〜図8に示した座席構造(バック用ベースネット170の縫い目は図8の略V字状(以下、「開発シート」と呼ぶ))について、振動試験を行った。このとき、Sバネ151におけるSバネ支持プレート151aの取り付け位置を3つの設定条件で変化させて行った。第1の設定条件(体側支持条件)は、左右のSバネ支持プレート151a,151aの中心が、サイドフレーム110,120のそれぞれから85mm、バック用ベースネットのセンターライン寄りに離間した位置に取り付けた場合、第2の設定条件(内側条件)は、同じく115mm、センターライン寄りに離間した位置(着座者の背の重心位置に相当)に取り付けた場合である。第3の設定条件(体側支持+中央支持条件)は、2つのSバネ支持プレート151a,151は、第1の設定条件と同様に配置し、3つ目のSバネ支持プレート151aを両者の中央に追加で配置した場合である。なお、座席構造を構成するバックフレーム100及びクッションフレームからなるシート骨格の固有振動数がハンマリング試験で45Hzのものを使用した。これは、シート骨格の固有振動数を40〜50Hzにして骨格からの振動を伝播しにくくし、運動の支点となる肩部を支持するクッション材の減衰比を大きくして底付き感をなくすことにより、シート骨格に体重があずけられ、腰部が前後に運動しやすくなり、肩部及び頭部に生じる前後動を抑制できるという本発明者らの知見に基づく。
【0042】
実験は、自動車用シートを上下方向のみの加振機上に設置し、加振機上の上下加速度と、開発シートのシートバック部の上部の前後方向の加速度を計測した。入力条件は、0.5〜25Hzの周波数帯で、振幅0.5mmの正弦波ログスイープによる上下方向振動である。
【0043】
図19から、体側支持条件に比べ、内側条件では、5Hz付近の共振周波数帯での伝達率は低下しているものの、15Hz以上の高周波帯での伝達率が高くなり、いわゆるごつごつ感が生じた。体側支持+中央支持条件でも同様の結果であるが、内側条件よりもその傾向は低い。これらのことから、腰部支持に最も適しているのは体側支持条件であることがわかる。すなわち、Sバネ支持プレート151aを作用点とする骨盤支持部材152の運動の作用点を、第1の設定条件(体側支持条件)のように、着座者の背の重心位置よりも約30mm外側にオフセットするように設定することが好ましい。なお、このことは、バック用ベースネット170に縫い目を形成することにより剛性を上げる場合でも同様であり、略V字状、略X字状、略菱格子状等の縫い目は、これと同様の位置において、すなわち、着座者の背の重心位置よりも約30mm外側にオフセットした位置の面剛性が特に上がるように設けることが好ましい。
【0044】
上記においては、バック用ベースネット170に縫い目を設けた例について説明しているが、シートクッション部30のクッションフレーム300に支持されるベースネット(以下、「クッション用ベースネット」という)310に縫い目310aを設けることも可能である。
【0045】
ここで、クッション用ベースネット310は、例えば、図20に示したように、クッションフレーム300を構成する前後の支持フレーム301,302間に掛け渡されて配設される。また、いずれか少なくとも一方、図20の例では前側の支持フレーム301がトーションバー303により弾性的に前後動可能に設けられている。従って、シートクッション部30に人が着座すると、クッション用ベースネット310は座骨結節付近を中心として沈み込み、トーションバー303の弾性に従って前側の支持フレーム301が後方に回動し、平衡点で支持される。走行中に入力されるフロアからの振動により、前側の支持フレーム301が弾性的に前後動し、振動を吸収する。
【0046】
クッション用ベースネット310はこのような機能を果たすため、着座者を臀部下からしっかりと支持できる必要がある。そのため、クッション用ベースネット310においても縫い目310aを形成するに当たっては、座骨結節を支持する部位Aを略中心とした所定範囲を含む位置に設けることが好ましい。特に、座骨結節を支持する部位Aを略中心とした直径200mmの範囲を含んで形成されていることがより好ましい。これにより、座骨結節付近を中心として臀部を支持する部位の面剛性が高くなり支持力が上がり、着座時の底付き感を低減できる。
【0047】
また、クッション用ベースネット310には、図21に示したように、大腿部を支持する部位(クッション用ベースネット310の前後方向中央寄りも前方寄り)に縫い目310bを形成した構成とすることもできる。この構成によっても、着座時の大きな沈み込みを抑え、底付き感の低減に資すると共に、走行時の振動等や長時間着座によって臀部が前方に移動するのを防ぐ堰の役目を果たし、着座姿勢の安定性を向上することができる。また、座骨結節付近に設ける縫い目310aと大腿部付近に設ける縫い目310bは、いずれか一方で上記した機能をそれぞれ果たすが、両方設けることももちろん可能である。
【0048】
なお、縫い目310a,310bは、上記実施形態と同様に、クッション用ベースネット310において斜め方向に形成されたラインを少なくとも一つ有することが好ましく、略V字状、略X字状、略菱格子状等で形成することができる。また、図20及び図21に示したように、上面から見て2つの三角形の頂点同士を合致させたような、一筆書きの要領で形成できる形状の縫い目310a,310bとすると、上記したように、自動ミシンにより容易に形成でき、一層の低コスト化に資する。
【産業上の利用可能性】
【0049】
上記した説明は、本発明を自動車等の乗物用のシートに適用した場合を示したが、これに限らず、事務用椅子や家具用のソファなどに適用することもできる。
【符号の説明】
【0050】
1 座席構造
10 シートバック部
100 バックフレーム
110,120 サイドフレーム
130 第1上部フレーム
140 第2上部フレーム
150 下部フレーム
151 Sバネ
151a Sバネ支持プレート
152 骨盤支持部材
170 バック用ベースネット
171a〜m 縫い目
30 シートクッション部
300 クッションフレーム
310 クッション用ベースネット
310a,310b 縫い目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席構造のシートバック部又はシートクッション部における表層クッション部に被覆され、バックフレーム又はクッションフレームに張られて支持されるベースネットであって、
互いに離間して配置された一対のグランド編地同士を連結糸で結合することにより形成される三次元立体編物から形成され、前記連結糸を挟んだ一対のグランド編地同士を厚み方向に近接させる縫い目が部分的に縫製により設けられ、前記縫い目により厚み方向に所定の予備圧縮が付与され、張設方向に残留応力が発生する構造であることを特徴とするベースネット。
【請求項2】
前記縫い目が、骨盤から腰部を支持する部位を含んだ位置に設けられ、前記バックフレームに張られて支持される請求項1記載のベースネット。
【請求項3】
前記縫い目が、座骨結節を支持する部位を略中心とした所定範囲を含む位置及び大腿部を支持する部位のいずれか少なくとも一方に設けられ、前記クッションフレームに張られて支持される請求項1記載のベースネット。
【請求項4】
前記三次元立体編物のロール方向及び幅方向に対する斜め方向に沿って、前記縫い目が設けられている請求項1〜3のいずれか1に記載のベースネット。
【請求項5】
所定間隔をおいた略平行な2本の前記縫い目の組み合わせが一組以上形成されている請求項1〜4のいずれか1に記載のベースネット。
【請求項6】
前記略平行な2本の縫い目の組み合わせが二組以上形成され、少なくとも1箇所において両者が交差している請求項5記載のベースネット。
【請求項7】
前記縫い目は、略平行な2本を略V字状、略X字状又は略菱格子状となるように形成したものである請求項5又は6記載のベースネット。
【請求項8】
前記縫い目が、一筆書きの要領で縫製することにより形成されている請求項1〜7のいずれか1に記載のベースネット。
【請求項9】
前記縫い目を形成する糸が弾性糸である請求項1〜8のいずれか1に記載のベースネット。
【請求項10】
前記三次元立体編物に代えて、二次元の布帛又は三次元立体編物に、他の層を1層以上積層した積層構造の布帛を用いてなる請求項1〜9のいずれか1に記載のベースネット。
【請求項11】
前記三次元立体編物に代えて、二次元の布帛を用いてなる請求項1〜9のいずれか1に記載のベースネット。
【請求項12】
シートバック部とシートクッション部とを備えた座席構造であって、
前記シートバック部のバックフレームに張られて支持されるベースネットが、請求項1、2、4〜11のいずれか1に記載のベースネットからなることを特徴とする座席構造。
【請求項13】
前記シートバック部のバックフレームに張られるベースネットの裏側おいて、前記バックフレームにおける上下方向中央部よりも下方位置に幅方向に掛け渡される面状バネ部材を有する請求項12記載の座席構造。
【請求項14】
前記面状バネ部材の前面を被覆する前面被覆部を備え、前記面状バネ部材により弾性的に支持される骨盤支持部材をさらに有する請求項13記載の座席構造。
【請求項15】
前記骨盤支持部材を面で支え、前記骨盤支持部材の回転運動の作用点となる支持プレートが、前記面状バネ部材に、前記シートバック部のセンターラインを挟んだ左右に所定間隔をおいて設けられている請求項14記載の座席構造。
【請求項16】
シートバック部とシートクッション部とを備えた座席構造であって、
前記シートバック部のバックフレームに張られて支持されるベースネットが、請求項1、3、4〜11のいずれか1に記載のベースネットからなることを特徴とする座席構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図20】
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【図21】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−112084(P2013−112084A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258352(P2011−258352)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(594176202)株式会社デルタツーリング (111)
【Fターム(参考)】