説明

ペダル装置

【課題】ハウジング内に異物が堆積することを抑制可能なペダル装置を提供する。
【解決手段】車体に取り付け可能なハウジング3の内壁に回転可能に設けられるペダルアーム2は、ハウジング3に形成された開口部35から外側に延びる操作部に運転者の踏力を受けて回転する。スプリング4は、運転者の踏込み操作によりペダルアーム2が回転する方向と反対方向にペダルアーム2を付勢する。ハウジング3の車体側で、車体との間に隙間を開けてカバー6が設けられる。カバー6は、ハウジング3の開口部35からハウジング3内へ侵入した異物をカバー6と車体との間の隙間60へ排出することの可能な排出孔61を有する。これにより、ハウジング3内の摺動箇所、又はペダルアーム2の当接部23とハウジング3のストッパ36との間等に異物が噛み込むことを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のアクセル操作等に用いられるペダル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者によるペダルアームの踏込量に応じて車速状態を制御するペダル装置が知られている。特許文献1に記載のペダル装置は、ハウジング内に回転可能に設けられた軸部材にペダルアームが取り付けられている。ペダルアームは、ハウジングに形成された開口部からハウジングの外側に延び出した操作部に運転者の踏力を受けて回転する。運転者の踏込み操作によりペダルアームが回転する方向と反対方向へペダルアームをスプリングが付勢している。
ハウジングに設けられたストッパと、ペダルアームの外壁に設けられた当接部とが当接することで、スプリングの付勢する方向のペダルアームの回転が制限される。これにより、運転者がペダルアームに踏力を与えていないとき、ペダルアームは全閉位置に保持される。このとき、ペダルアームの回転を検出する回転角センサから車両のエンジンコントロールユニット(ECU)へペダルアームが全閉位置にあることを示す信号が出力される。これにより、ECUはエンジンに加速の指示を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−169812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のペダル装置は、車室内を清掃する際、埃、砂又は石などの異物が送風機などで吹き飛ばされると、ペダルアームが挿通しているハウジングの開口部から、これらの異物がハウジング内に侵入するおそれがある。ハウジング内には、ペダルアームが取り付けられた軸部材とハウジングの内壁との隙間、又はペダルアームの回転に所定の摩擦力を与える摩擦板とロータとの隙間などの摺動箇所が形成されている。このような摺動箇所に異物が噛み込むと、ペダル装置に予め設定された踏力特性が変化し、操作フィーリングが悪化することが懸念される。
【0005】
さらに、ペダルアームの回転時には、ハウジングのストッパとペダルアームの当接部との間隔が変化すると共に、スプリングの付勢力をペダルアームに伝達するロータとハウジングの車体側に設けられたカバーとの間隔が変化する。このため、ペダルアームが回転したとき、ハウジング内に異物が堆積していると、その異物がハウジングのストッパとペダルアームの当接部との間、又はロータとカバーとの間に噛み込むおそれがある。これらの箇所に異物が噛み込むと、運転者がペダルアームに与える踏力を解除したとき、ペダルアームが全閉位置に戻らないことが懸念される。この場合、回転角センサから車両のECUへペダルアームが所定量回転していることを示す信号が出力され、ECUが運転者の意図に反し、エンジンを加速状態に制御する。これにより、運転者に不安または危険を感じさせるおそれがある。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ハウジング内に異物が堆積することを抑制可能なペダル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、請求項1に係る発明によると、車体に取り付け可能なハウジングの内壁に回転可能に設けられるペダルアームは、ハウジングに形成された開口部から外側に延びる端部に運転者の踏力を受けて回転する。付勢手段は、運転者の踏込み操作によりペダルアームが回転する方向と反対方向にペダルアームを付勢する。ハウジングの車体側で、車体との間に隙間を開けてカバーが設けられる。カバーは、ハウジングの開口部からハウジング内へ侵入した異物をカバーと車体との間の隙間へ排出することの可能な排出孔を有する。
これにより、ハウジングの開口部から侵入した異物が排出口から排出されるので、ハウジング内に異物が堆積することを抑制することができる。このため、ペダルアームが取り付けられた軸部材とハウジングの内壁との隙間、又はペダルアームの回転に所定の摩擦力を与える摩擦板とロータとの隙間など、ハウジング内の摺動箇所に異物が噛み込むことが抑制される。したがって、ペダル装置に予め設定された踏力特性が維持され、操作フィーリングの悪化を抑制することができる。
さらに、ペダルアームの回転時、ハウジング内に侵入した異物がハウジングのストッパとペダルアームの当接部との間、またはロータとカバーとの間などに噛み込むことが抑制される。このため、運転者がペダルアームに与える踏力を解除したとき、ペダルアームは付勢手段の付勢力により全閉位置に確実に戻される。このとき、ペダルアームの回転を検出する回転角センサから車両のECUへペダルアームが全閉位置にあることを示す信号が出力され、ECUはエンジンへ加速指示を停止する。したがって、ペダル装置の安全性を高めることができる。
【0008】
請求項2に係る発明によると、ペダル装置は、ペダルアームの回転軸周りに設けられ、ペダルアームと共に回転し、付勢手段から付勢力を受けてペダルアームに伝達するロータを備える。ペダルアームの径方向の外壁又はロータの径方向の外壁とカバーの内壁との間に形成される間隙の断面積がペダルアームの全閉時に最小となる位置よりもハウジングの開口部側に排出孔は設けられる。また、排出孔の開口断面積は、間隙の最小断面積より大きく形成される。
これにより、開口部からハウジング内に侵入した異物は、間隙の断面積が最小となる位置よりも手前で、その間隙の最小断面積より大きく形成された排出孔からカバーと車体との間の隙間へ排出される。このため、ハウジング内に異物が堆積することを抑制することができる。
【0009】
請求項3に係る発明によると、ハウジングの開口部の内壁は、ハウジングの外側から排出孔に向かう方向に傾斜している。また、請求項4に係る発明によると、ペダルアームのカバー側の外壁は、ペダルアームの全閉時において、ハウジングの外側から排出孔に向かう方向に傾斜している。これにより、ハウジングの開口部からハウジング内に侵入する異物は、その移動する方向を変えることなく、排出孔から排出される。
【0010】
請求項5に係る発明によると、ペダル装置は、カバーの排出孔より開口部と反対側でカバーの外壁から車体側に突出し、ハウジング内に異物が侵入することを抑制する防塵壁を備える。これにより、カバーと車体との間の隙間から排出孔を通り、ハウジング内に異物が侵入することを抑制することができる。
【0011】
請求項6に係る発明によると、ペダル装置は、カバーの排出孔を塞ぐと共に、車体側へ開閉可能な弁体を備える。これにより、ハウジングの開口部から異物が弁体に衝突したときの衝撃、又は気流の流れ等、ハウジングの内側から弁体に力が作用すると、弁体が車体側へ開く。このため、開口部からハウジング内に侵入した異物は、カバーと車体との間の隙間へ排出される。
一方、通常時には弁体が閉じているので、排出孔からハウジング内に異物が侵入することを抑制することができる。
【0012】
請求項7に係る発明によると、ペダル装置は、カバーの内壁に設けられ、排出孔より開口部と反対側の間隙を塞ぐ弾性部材を備える。これにより、開口部から間隙に侵入した異物は、間隙からハウジングの深部へ侵入することが弾性部材により制限され、排出孔からカバーと車体との間の隙間へ排出される。
【0013】
請求項8に係る発明によると、ペダル装置は、ペダルアームの全閉時にハウジングの開口部の内壁とペダルアームとの間に形成される空間を遮蔽すると共に、ペダルアームの回転に伴って弾性変形可能な遮蔽部材を備える。これにより、開口部からハウジング内へ異物の侵入を制限することができる。
【0014】
請求項9に係る発明によると、カバーの排出孔の内壁は、車体側からハウジング内側に向けて開口部側に傾斜している。これにより、開口部からハウジング内へ侵入した異物は、排出孔から排出される可能性が高くなる。
【0015】
請求項10に係る発明によると、車体に取り付け可能なハウジングの内壁に回転可能に設けられるペダルアームは、ハウジングに形成された開口部から外側に延びる端部に運転者の踏力を受けて回転する。付勢手段は、運転者の踏込み操作によりペダルアームが回転する方向と反対方向にペダルアームを付勢する。遮蔽部材は、ペダルアームの全閉時にハウジングの開口部の内壁とペダルアームとの間に形成される空間を遮蔽すると共に、ペダルアームの回転に伴って弾性変形可能である。これにより、開口部からハウジング内へ異物の侵入を制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態によるペダル装置の断面図である。
【図2】図1のII方向の矢視図である。
【図3】図1のIII−III線の断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態によるペダル装置の断面図であり、ペダルアームが開位置にあるときの状態を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態によるペダル装置の断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態によるペダル装置の断面図である。
【図7】図6のVII方向の矢視図である。
【図8】本発明の第4実施形態によるペダル装置の断面図である。
【図9】本発明の第5実施形態によるペダル装置の断面図である。
【図10】本発明の第6実施形態によるペダル装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明による複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態によるペダル装置を図1〜図4に示す。
ペダル装置1は、車両に搭載され、運転者によるペダルアーム2の踏み込み量に応じてエンジンの運転状態を制御する。本実施形態のペダル装置1は、アクセルバイワイヤ方式を採用しており、ペダルアーム2の回転角度を回転角センサ5で電気信号に変換し、車両のECUに出力する。ECUは、回転角センサ5からの信号及び車両のスピード情報等に基づいてスロットル装置及びインジェクタの噴射量等、エンジンの各部を制御し、エンジンの運転状態を制御する。
【0018】
ペダル装置1は、運転者に踏込み操作されるペダルアーム2、このペダルアームを回転可能に支持するハウジング3、カバー6、付勢手段としてのスプリング4及び回転角センサ5などを備えている。
以下、運転者の踏込み操作に伴う踏力の増加によりペダルアーム2が回転する方向をX方向といい、その反対方向をY方向という。
【0019】
ハウジング3は、例えば樹脂により略箱状に形成されている。ハウジング3は、天板32及び側板33、34等を有している。側板33と側板34とは、互いに略平行に形成され天板32に接続されている。側板33、34の天板32と反対側には、それぞれ車体に当接可能な取付部37、38が天板32と略平行に設けられている。取付部37、38に形成された取付孔311、312にボルト等が取り付けられることで、ハウジング3は車体に取り付けられる。なお、本実施形態においてペダル装置1は、図1に示すように、車体の重力方向に延びる壁面100に取り付けられている。
【0020】
ハウジング3の車体側にカバー6が設けられている。カバー6は、例えば樹脂により形成され、ハウジング3の側板33、34の間に取り付けられている。カバー6の外壁と車体の壁面100との間には、取付部37、38の板厚と略同じ距離の隙間60が形成されている。
カバー6には、排出孔61が設けられている。この排出孔61については後述する。
ハウジング3には、ペダルアーム2が挿通する開口部35が形成されている。開口部35は、略矩形に形成されている。開口部35の天板32側にペダルアーム2の回転を制限するストッパ36が設けられている。
開口部35のストッパ36と反対側の内壁351は、ハウジング3の外側から排出孔61に向かう方向に傾斜している。
【0021】
ペダルアーム2は、ハウジング3の開口部35から外側に延びる端部に運転者の踏力を受ける図示しない操作部を有している。ペダルアーム2は、ハウジング3の内側に円筒部22を有している。また、ペダルアーム2は、ハウジング3の開口部35の外側でY方向の外壁に当接部23を有している。当接部23は、ハウジング3のストッパ36に当接可能である。
円筒部22のカバー6側の外壁24は、ペダルアーム2の全閉時において、ハウジング3の外側から排出孔61に向かう方向に傾斜している。
【0022】
ペダルアーム2の円筒部22には、回転軸方向に通じる孔221が形成されている。この孔221に軸部材11が嵌合している。軸部材11は、一端がハウジング3の側板33の内壁に形成された凹部331に回転可能に支持され、他端がハウジング3の側板34の内壁に形成された凹部341に回転可能に支持されている。よって、ペダルアーム2は、軸部材11の中心を回転軸Oとして軸部材11と一体に回転可能である。
【0023】
ペダルアーム2の円筒部22の軸方向にロータ12が設けられている。ロータ12は、略円環状の環状部121、及びこの環状部121から径外方向へ突出する突出部122を有している。環状部121は、内側に軸部材11が通され、軸部材11によって回転可能に支持されている。環状部121と軸部材11とは、相対回転可能である。
ペダルアーム2の円筒部22およびロータ12の環状部121と、カバー6の内壁との間には間隙20が形成されている。この間隙20は、スプリング4等が設けられるハウジング3の深部30とハウジング3の開口部35とを連通している。
【0024】
上述したカバー6に設けられた排出孔61は、略矩形に形成され、図1に示すように、ペダルアーム2の全閉時に間隙20の断面積が最小となる位置Aよりも開口部35側に設けられている。
ここで、カバー6の排出孔61において、車体の壁面100に略平行かつペダルアーム2の回転軸に垂直な方向の距離をbとする。また、ロータ12の環状部121とカバー6の内壁との間の最短距離をaとする。このとき、排出孔61は、b>a の関係を満たすように形成されている。
なお、図2および図3に示すように、カバー6の排出孔61において、車体の壁面100に略平行かつペダルアーム2の回転軸に平行な方向の距離cは、ハウジング3の側壁と側壁との間の距離dと略同じである。したがって、排出孔61の断面積は、間隙20の最小断面積より大きく形成される。
【0025】
環状部121の円筒部22側の面には、傾斜面を有するはす歯123が周方向に複数形成されている。一方、円筒部22の環状部121側の面には、環状部121のはす歯123に対応する傾斜面を有するはす歯222が周方向に複数形成されている。これにより、運転者がペダルアーム2の操作部に踏力を印加すると、環状部121のはす歯123と円筒部22のはす歯222とが噛み合い、環状部121は、円筒部22とともに回転する。このとき、環状部121は、はす歯123とはす歯222の傾斜面により側板34側へ押し付けられる。環状部121と側板34との間には、摩擦板14が設けられ、環状部121に摩擦力を与える。これにより、ペダルアーム2の回転角に応じた大きさの摩擦力がペダルアーム2に作用する。
【0026】
突出部122の天板32側には、略皿状のホルダ13が設けられている。ホルダ13と天板32との間にスプリング4が設けられている。スプリング4は、第1コイルスプリング41及び第2コイルスプリング42から構成される二重コイルスプリングである。
スプリング4は、軸方向に伸びる力を有しており、ホルダ13をロータ12の突出部122側へ押し付けている。スプリング4の付勢力により、ロータ12の突出部122がカバー6側へ付勢され、環状部121が回転する。環状部121の回転に伴い、はす歯123とはす歯222との噛み合いにより、円筒部22を有するペダルアーム2も回転する。つまり、スプリング4は、運転者の踏込み操作によりペダルアーム2が回転する方向と反対方向(Y方向)にペダルアーム2を付勢している。
【0027】
回転角センサ5は、ハウジング3の側板33に取り付けられている。回転角センサ5はホールIC52を有している。一方、軸部材11の側板33側の端部には、磁石53が固定されている。ペダルアーム2の回転と共に軸部材11に固定された磁石53が回転し、軸部材11の端部の周囲の磁界が変化する。ホールIC52は、この磁界の変化を電気信号に変換し、その電気信号をECUへ伝達する。これにより、ECUは、ペダルアーム2の回転角を検知し、エンジンの運転状態を制御する。
【0028】
ペダル装置1の作動を説明する。
図1に示すように、運転者がペダルアーム2に踏力を印加していない状態において、当接部23とストッパ36とが当接し、ペダルアーム2は全閉位置に維持される。この場合、エンジンが運転状態であると、回転角センサ5は、ペダルアーム2が全閉位置にあることを示す信号をECUへ出力する。
図4に示すように、運転者がペダルアーム2に踏力を印加すると、ペダルアーム2はX方向に回転する。この場合、回転角センサ5は、ペダルアーム2が所定量回転していることを示す信号をECUへ出力する。
【0029】
ところで、ペダルアーム2が全閉位置に維持されている状態で、車室内を清掃する際、埃、砂又は石などの異物を送風機などで吹き飛ばすと、巻き上がった異物が開口部35からハウジング3内に侵入することが考えられる。異物がハウジング3内の間隙20を通過し、深部30に堆積すると、その異物が軸部材11とハウジング3の側板33、34の凹部331、341との隙間、又は摩擦板14とロータ12との隙間などの摺動箇所に噛み込むことが考えられる。この場合、ペダル装置1に予め設定された踏力特性が変化し、操作フィーリングが悪化する。
【0030】
また、ハウジング3内の深部30に異物が堆積していると、ペダルアーム2に踏力が印加され、ペダルアーム2がX方向に回転した際に、その異物がペダルアーム2の円筒部22及びロータ12の環状部121とハウジング3の天板32との間を通り、ストッパ36と当接部23との間に噛み込むことが考えられる。または、ハウジング3内の深部30に異物が堆積していると、ペダルアーム2がX方向に回転した際に、その異物がロータ12の突出部122とカバー6との間などに噛み込むことが考えられる。
この場合、運転者がペダルアーム2に与える踏力を解除したとき、ペダルアーム2の当接部2又はロータ12の突出部122が異物と干渉し、ペダルアーム2が全閉位置に戻らないおそれがある。すると、回転角センサ5から車両のECUへペダルアーム2が所定量回転していることを示す信号が出力されるので、ECUは運転者の意図に反し、エンジンを加速状態に制御するおそれがある。
【0031】
これに対し、本実施形態では、円筒部22および環状部121とカバー6の内壁との間の間隙20の断面積が最小となる位置よりも開口部35側で、間隙20の最小断面積よりも断面積が大きく形成された排出孔61がカバー6に形成されている。このため、ハウジング3の開口部35から侵入した異物は、開口部35の内壁351と、円筒部22のカバー6側の外壁24との間を通過した後、その移動する方向を変えることなく、排出孔61からカバー6と車体との間の隙間60へ排出される。これにより、ハウジング3の深部30に異物が堆積することを抑制することができる。このため、ハウジング3内の摺動箇所に異物が噛み込むことが抑制される。したがって、ペダル装置1に予め設定された踏力特性が維持され、操作フィーリングの悪化を抑制することができる。
【0032】
さらに、ペダルアーム2の回転時、ハウジング3のストッパ36とペダルアーム2の当接部23との間、またはロータ12の突出部122とカバー6との間などに異物が噛み込むことを抑制することができる。このため、運転者がペダルアーム2に与える踏力を解除したとき、ペダルアーム2はスプリング4の付勢力により全閉位置に確実に戻される。したがって、回転角センサ5からECUへペダルアーム2が全閉位置にあることを示す信号が出力されるので、ECUはエンジンへ加速指示を停止する。この結果、ペダル装置1の安全性を高めることができる。
【0033】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態を図5に示す。以下、複数の実施形態において、上述した第1実施形態と実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、カバー6の排出孔61より開口部35と反対側に、カバー6の外壁から車体側に突出する防塵壁62が設けられている。この防塵壁62は、車体の壁面100とカバー6との間の距離より僅かに短い。このため、防塵壁62と車体の壁面100との間には僅かな隙間が形成されている。
なお、防塵壁62と車体の壁面100との間に隙間を設けず、車体の壁面100に当接するように防塵壁62を形成してもよい。
本実施形態では、カバー6の車体側の外壁に防塵壁62を設けることで、ハウジング3の重力方向上側から、カバー6と車体との間の隙間60を通り、排出孔61へ異物が侵入することを抑制することができる。したがって、ハウジング3内に異物が堆積することを抑制することができる。
【0034】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態を図6及び図7に示す。本実施形態では、カバー6の排出孔61に弁体63が設けられている。この弁体63は、樹脂またはゴムなどから平板状に形成され、カバー6の排出孔61を塞いでいる。弁体63は、開口部35と反対側に軸64を有している。この軸64は、カバー6の外壁に設けられた軸孔65に回転可能に取り付けられている。これにより、弁体63は、車体側へ開閉可能となる。
車室内の清掃などの際、埃、砂又は石などの異物が送風機などで吹き飛され、巻き上がった異物が開口部35からハウジング3内に侵入すると、その異物が弁体63に当たったときの衝撃、又は送風機の気流の流れにより、弁体63は車体側へ開く(図6の破線部分を参照)。このため、開口部35からハウジング3内に侵入した異物は、カバー6と車体の壁面100との間の隙間60へ排出される。
一方、ハウジング3の内側から弁体63に力が作用しない場合、弁体63は閉じている。これにより、通常時には、カバー6と車体の壁面100との間の隙間60から排出孔61を通り、ハウジング3内に異物が侵入することを抑制することができる。したがって、ハウジング3内に異物が堆積することを抑制することができる。
【0035】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態を図8に示す。本実施形態では、ペダルアーム2及びロータ12とカバー6の内壁との間の間隙20に弾性部材66が設けられている。弾性部材66は、排出孔61より開口部35と反対側のカバー6の内壁に取り付けられている。弾性部材66は、例えば樹脂、ゴム又はスポンジなどから略矩形に形成され、接着又は溶着等によりカバー6の内壁に接合されている。なお、カバー6と弾性部材66とを一体に形成してもよい。
弾性部材66は、その板厚tが、ロータ12の環状部121とカバー6の内壁との間の距離aと略同じ、又は僅かに小さく形成されている。また、弾性部材66は、ペダルアーム2の回転軸方向の長さが、一方の側板33と他方の側板34との間の長さと略同じに形成されている。これにより、弾性部材66は、排出孔61より開口部35と反対側の間隙20を塞いでいる。
本実施形態では、開口部35から間隙20に侵入した異物は、弾性部材66によってハウジング3の深部30へ侵入することが制限され、排出孔61からカバー6と車体との間の隙間60へ排出される。したがって、ハウジング3の深部30に異物が堆積することを抑制することができる。
【0036】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態を図9に示す。本実施形態では、開口部35の内壁に遮蔽部材67が設けられている。遮蔽部材67は、例えば樹脂またはゴムなどの板材から略矩形に形成されている。
遮蔽部材67は、一方の縁部が、開口部35の内壁に設けられた嵌合溝68に嵌合している。また、遮蔽部材67は、他方の縁部が、ペダルアーム2のX方向の外壁に当接している。遮蔽部材67は、ペダルアーム2の回転に伴って弾性変形可能である。このため、遮蔽部材67は、ペダルアーム2の全閉時および回転時において、ハウジング3の開口部35の内壁とペダルアーム2との間に形成される空間を常に遮蔽する。
本実施形態では、車室内の清掃などにより、車室内の埃、砂又は石などの異物が巻き上がった場合、開口部35からハウジング3内への異物の侵入を遮蔽部材67によって制限することができる。
なお、本実施形態では、ハウジング3内への異物の侵入が制限されるので、カバー6に排出孔を設けていない。但し、必要に応じて、カバー6に排出孔を設けてもよい。
【0037】
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態を図10に示す。本実施形態では、カバー6の排出孔61の内壁611、612は、車体の壁面100側からハウジング3の内側に向けて開口部35側に傾斜して形成されている。特に、排出孔61の開口部35と反対側の内壁611は、円筒部22のカバー6側の外壁24に対し、略一直線状になるように形成されている。
本実施形態では、ハウジング3の開口部35から侵入した異物は、開口部35の内壁351と円筒部22のカバー6側の外壁24との間を通過した後、移動する方向を変えることなく、排出孔61へ移動する。そしてその異物は排出孔61の内壁611、612に沿って移動し、カバー6と車体の壁面100との間の隙間60へ排出される。したがって、ハウジング3内に異物が堆積することを抑制することができる。
【0038】
(他の実施形態)
上述した複数の実施形態では、車両のアクセル操作に用いられるペダル装置1について説明した。これに対し、本発明は、車両のブレーキ操作に用いられるペダル装置に適用してもよい。
上述した複数の実施形態では、カバー6の排出孔61を矩形状に形成した。これに対し、本発明は、排出孔の形状に制限はなく、例えば円形又は楕円形などであってもよい。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、上述した複数の実施形態を組み合わせることに加え、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 ・・・ペダル装置
2 ・・・ペダルアーム
3 ・・・ハウジング
4 ・・・スプリング(付勢手段)
6 ・・・カバー
12・・・ロータ
20・・・間隙
35・・・開口部
60・・・隙間
61・・・排出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付け可能なハウジングと、
前記ハウジングの内壁に回転可能に設けられ、前記ハウジングに形成された開口部から外側に延びる端部に運転者の踏力を受けて回転するペダルアームと、
前記運転者の踏込み操作により前記ペダルアームが回転する方向と反対方向に前記ペダルアームを付勢する付勢手段と、
前記ハウジングの前記車体側で、前記車体との間に隙間を開けて設けられるカバーと、を備え、
前記カバーは、前記ハウジングの前記開口部から前記ハウジング内へ侵入した異物を前記カバーと前記車体との間の前記隙間へ排出することの可能な排出孔を有することを特徴とするペダル装置。
【請求項2】
前記ペダルアームの回転軸周りに設けられ、前記ペダルアームと共に回転し、前記付勢手段から付勢力を受けて前記ペダルアームに伝達するロータを備え、
前記カバーの前記排出孔は、前記ペダルアームの径方向の外壁又は前記ロータの径方向の外壁と前記カバーの内壁との間に形成される間隙の断面積が前記ペダルアームの全閉時に最小となる位置よりも前記ハウジングの前記開口部側に設けられ、
前記排出孔の開口断面積は、前記間隙の最小断面積より大きく形成されることを特徴とする請求項1に記載のペダル装置。
【請求項3】
前記ハウジングの前記開口部の内壁は、前記ハウジングの外側から前記排出孔に向かう方向に傾斜していることを特徴とする請求項1または2に記載のペダル装置。
【請求項4】
前記ペダルアームの前記カバー側の外壁は、前記ペダルアームの全閉時において、前記ハウジングの外側から前記排出孔に向かう方向に傾斜していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のペダル装置。
【請求項5】
前記カバーの前記排出孔より前記開口部と反対側で前記カバーの外壁から前記車体側に突出し、前記ハウジング内に異物が侵入することを抑制する防塵壁を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のペダル装置。
【請求項6】
前記カバーの前記排出孔を塞ぐと共に、前記車体側へ開閉可能な弁体を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のペダル装置。
【請求項7】
前記カバーの内壁に設けられ、前記排出孔より前記開口部と反対側の前記間隙を塞ぐ弾性部材を備えることを特徴とする請求項2〜6のいずれか一項に記載のペダル装置。
【請求項8】
前記ペダルアームの全閉時に前記ハウジングの前記開口部の内壁と前記ペダルアームとの間に形成される空間を遮蔽すると共に、前記ペダルアームの回転に伴って弾性変形可能な遮蔽部材を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のペダル装置。
【請求項9】
前記カバーの前記排出孔の内壁は、前記車体側から前記ハウジング内側に向けて前記開口部側に傾斜していることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のペダル装置。
【請求項10】
車体に取り付け可能なハウジングと、
前記ハウジングの内壁に回転可能に設けられ、前記ハウジングに形成された開口部から外側に延びる端部に運転者の踏力を受けて回転するペダルアームと、
前記運転者の踏込み操作により前記ペダルアームが回転する方向と反対方向に前記ペダルアームを付勢する付勢手段と、
前記ペダルアームの全閉時に前記ハウジングの前記開口部の内壁と前記ペダルアームとの間に形成される空間を遮蔽すると共に、前記ペダルアームの回転に伴って弾性変形可能な遮蔽部材と、を備えることを特徴とするペダル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−88898(P2012−88898A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234470(P2010−234470)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】