説明

ペプチドの持続放出製剤

【課題】ソマトスタチンアゴニスト及びその持続放出複合体の提供。
【解決手段】化合物(A):


またはその医薬的に許容できる塩、およびポリ-(l)-乳酸-グリコール酸-酒石酸を含むコポリマー(P(l)LGT)を含む化合物(I)であって、化合物(A)のアミノ基がP(l)LGTのカルボキシル基にイオン結合している化合物に関する。さらに、この持続放出複合体の製造方法に関する。さらにまた、この持続放出複合体および医薬的に許容できるキャリヤーを含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
本発明は、持続放出性複合体である化合物(I)に関する。この複合体は、次式の化合物(A):
【0002】
【化1】

またはその医薬的に許容できる塩、およびコポリマーを含み、コポリマーがポリ-(l)-乳酸-グリコール酸-酒石酸(P(l)LGT)を含み、化合物(A)のアミノ基がP(l)LGTの酸単位のカルボキシル基にイオン結合している。本発明はさらに、この持続放出性複合体の製造方法に関する。さらに本発明は、この持続放出性複合体および医薬的に許容できるキャリヤーを含む医薬組成物に関する。
【0003】
さらに、化合物(A)はソマトスタチン類似体であり、ソマトスタチンの既知の潜在用途が多種多様なことは当業者に周知である。したがって本発明は、その必要がある患者の疾患または状態を治療するための化合物(A)、化合物(I)、または化合物(I)のミクロ粒子の使用に関する。これは患者に化合物(A)、化合物(I)、または化合物(I)のミクロ粒子を投与することを含み、治療すべき疾患または状態は、胃腸の症状および/または疾患、たとえばクローン病、全身性硬化症、膵外および膵内偽嚢胞、ならびに膵腹水、VIP産生腫瘍、島細胞症、高インスリン症、ガストリン産生腫瘍、ゾリンジャー-エリソン症候群、下痢、エイズ関連下痢、化学療法関連下痢、強皮症、過敏性腸症候群、膵炎、上部消化管出血、特に硬変患者における食後門脈高血圧症、門脈高血圧合併症、小腸閉塞症、胃食道逆流、十二指腸胃逆流の治療;内分泌疾患および/または状態、たとえばクッシング症候群、生殖腺腫瘍(gonadotropinoma)、上皮小体機能亢進症、グレーブス病、糖尿病性神経障害、筋退縮、悪性高カルシウム血症、パジェット病および多嚢胞卵巣の治療;各種の癌、たとえば甲状腺癌、白血病、髄膜腫、および癌関連状態、たとえば癌性悪液質の治療;低血圧症、たとえば起立性低血圧症および食後低血圧症ならびにパニック発作の治療よりなる群から選択される。
【0004】
医薬組成物の制御in vivo放出のために多くのドラッグデリバリーシステムが開発、試験および使用されている。たとえばポリエステル、たとえばポリ(DL-乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(ε-カプロラクトン)および他の各種コポリマーが、プロゲステロンなどの生物活性分子の放出に用いられている;これらはミクロカプセル、フィルムまたはロッドの形であった(M. Chasin and R. Langer編, Biodegradable Polymers as Drug Delivery Systems, Dekker, ニューヨーク, 1990)。ポリマー/療法薬組成物をたとえば皮下または筋肉内に埋め込むと、療法薬が特定期間にわたって放出される。このような生体適合生分解性ポリマー系は、封入された療法薬がポリマーマトリックスから拡散しうるように設計される。療法薬が放出されるとポラーはin vivo分解されるので、埋込み剤を外科的に摘出する必要がない。ポラーの分解に関与する要因は十分には分かっていないが、ポリエステルのこのような分解は、ポリマー成分のエステル結合の非酵素的自触加水分解されやすさにより調節できると考えられる。
【0005】
いくつかの欧州特許および米国特許により、ポリマーマトリックスの設計ならびにin vivoでの療法薬の放出速度および放出度におけるポリマーマトリックスの役割などの事項が検討されている。
【0006】
たとえばDeluca(EPO 0 467 389 A2)は、疎水性生分解性ポリマーとタンパク質またはポリペプチドとの物理的相互作用について述べている。形成された組成物は療法薬と疎水性ポリマーの混合物であり、対象に導入した後、マトリックスからの拡散放出を持続させた。
【0007】
Hutchinson(USP4,767,628)は、ポリマーデバイスに均一に分散させることにより療法薬の放出を制御した。この配合物は2相の重なりにより制御連続放出をもたらすと開示されている:第1に配合物表面からの拡散依存性の薬物漏出;第2にポリマーの分解により誘発される水路による放出。
【0008】
WO 93/24150には、塩基性基をもつペプチドおよびカルボキシ末端基付きポリエステルを含む持続放出配合物が開示されている。
USP5,612,052には、カチオン交換ミクロ粒子が記載され、これは一般にカルボキシ保有ポリエステル鎖で作成され、これに塩基性生物活性物質が固定化されて、吸収性のゲル形成性液体ポリエステル内における制御放出系をなしている。
【0009】
化合物(A)は、本出願人に譲渡されたUSP 5,552,520に記載および特許請求されている。
本出願人に譲渡されたWO 97/40085には、乳酸単位、グリコール酸単位およびヒドロキシポリカルボン酸単位、たとえば酒石酸またはパモイック酸(pamoic acid)を含む生分解性ポリエステル、ならびにそれらのポリエステルの製造方法が開示されている。より詳細には、それにはそれぞれ65/33/2の比率のポリ-ラクチド-グリコリド-酒石酸ポリマーが開示されている。
【0010】
本出願人に譲渡されたWO 94/15587には、遊離COOH基をもつポリエステルと少なくとも1つの有効イオン原性アミンをもつ生物活性ペプチドとのイオン結合体が開示されている。より詳細には、それにはコポリマーとリンゴ酸またはクエン酸を反応させることによりポリマーをポリカルボキシル形にすることが開示されている。USP 5,672,659はWO 94/15587の国内継続出願である。USP 5,863,985はUSP 5,672,659の継続出願である。出願中のUSP A 09/237,405はUSP 5,863,985の一部継続出願であり、これにはさらに、クエン酸、ε-カプロラクトンおよびグリコリドを含有することが必要なポリエステル;このポリエステルおよびポリペプチドを含む組成物;そのメンバーの1つとして酒石酸を含有することが必要なポリエステル;このポリエステルおよびポリペプチドを含む組成物;ならびに所望により生分解性ポリマーでコーティングされた、ロッド状のこれらの組成物が開示されている。
【0011】
本出願人に譲渡されたWO 97/39738には、WO 94/15587に記載の持続放出性イオン結合体のミクロ粒子を製造する方法が開示されている。
以上の特許、特許出願および刊行物の全体を本明細書に援用する。
【0012】
本発明は、ポリ-ラクチド-グリコリド-酒石酸ポリマーと化合物(A)の持続放出性イオン結合体(化合物(I)としても知られる)の好ましい態様であって、結合体からの化合物(A)放出がゼロオーダーであるという予想外の新規特性を特徴とする結合体に関する。より好ましくは、化合物(I)はミクロ粒子の形である。
【0013】
発明の概要
本発明は、次式の化合物(A):
【0014】
【化2】

およびポリマーを含み、ポリマーがラクチド単位、グリコリド単位および酒石酸単位を含み、該ポリマーにおいてラクチド単位の割合は約71〜約73%、グリコリド単位の割合は約26〜約28%、酒石酸単位の割合は約1〜約3%であり;化合物(A)のアミノ基がポリマーの酸単位のカルボキシル基にイオン結合している化合物(I)に関する。
【0015】
好ましい態様の化合物(I)は、ポリマーが約72%のラクチド単位、約27%のグリコリド単位および約1%の酒石酸単位を含むものである。
この化合物(I)の好ましい態様は、化合物(I)中の化合物(A)の割合が約8〜約12%のものである。
【0016】
他の態様において本発明は、次式の化合物(A):
【0017】
【化3】

およびポリマーを含み;ポリマーがラクチド単位、グリコリド単位および酒石酸単位を含み、該ポリマーにおいてラクチド単位の割合は約71〜約73%、グリコリド単位の割合は約26〜約28%、酒石酸単位の割合は約1〜約3%であり;化合物(A)のアミノ基がポリマーの酸単位のカルボキシル基にイオン結合している化合物(I)のミクロ粒子に関する。
【0018】
本発明の上記化合物(I)の好ましいミクロ粒子は、約10ミクロン〜約100ミクロンの平均サイズをもつミクロ粒子である。
本発明の上記化合物(I)のより好ましいミクロ粒子は、約40ミクロン〜約70ミクロンの平均サイズをもつミクロ粒子である。
【0019】
本発明の上記化合物(I)のさらに好ましいミクロ粒子は、ミクロ粒子からの化合物(A)放出がゼロオーダーのプロフィルを示すものである。
さらに他の態様において本発明は、
次式の化合物(A):
【0020】
【化4】

およびポリマーを含み;ポリマーがラクチド単位、グリコリド単位および酒石酸単位を含み、該ポリマーにおいてラクチド単位の割合は約71〜約73%、グリコリド単位の割合は約26〜約28%、酒石酸単位の割合は約1〜約3%であり;化合物(A)のアミノ基がポリマーの酸単位のカルボキシル基にイオン結合している化合物(I)のミクロ粒子;
ならびに医薬的に許容できるキャリヤー、希釈剤またはアジュバント
を含む、医薬組成物に関する。
【0021】
さらに他の態様において本発明は、その必要がある患者の疾患または状態を治療する方法であって、該患者に有効量の前記化合物(A)またはその医薬的に許容できる塩を投与し、その際、疾患または状態が全身性硬化症、膵偽嚢胞、膵腹水、VIP産生腫瘍、島細胞症、高インスリン症、ガストリン産生腫瘍、ゾリンジャー-エリソン症候群、過分泌下痢、強皮症、過敏性腸症候群、上部消化管出血、食後門脈高血圧症、門脈高血圧合併症、小腸閉塞症、十二指腸胃逆流、クッシング症候群、生殖腺腫瘍、上皮小体機能亢進症、糖尿病性神経障害、筋退縮、悪性高カルシウム血症、パジェット病、髄膜腫、癌性悪液質、乾癬、低血圧症およびパニック発作よりなる群から選択される方法に関する。
【0022】
さらに他の態様において本発明は、その必要がある患者の疾患または状態を治療する方法であって、該患者に有効量の前記化合物(I)を投与し、その際、疾患または状態が全身性硬化症、膵偽嚢胞、膵腹水、VIP産生腫瘍、島細胞症、高インスリン症、ガストリン産生腫瘍、ゾリンジャー-エリソン症候群、過分泌下痢、強皮症、過敏性腸症候群、上部消化管出血、食後門脈高血圧症、門脈高血圧合併症、小腸閉塞症、十二指腸胃逆流、クッシング症候群、生殖腺腫瘍、上皮小体機能亢進症、糖尿病性神経障害、筋退縮、悪性高カルシウム血症、パジェット病、髄膜腫、癌性悪液質、乾癬、低血圧症およびパニック発作よりなる群から選択される方法に関する。
【0023】
さらに他の態様において本発明は、その必要がある患者の疾患または状態を治療する方法であって、該患者に有効量の前記化合物(I)のミクロ粒子を投与し、その際、疾患または状態が全身性硬化症、膵偽嚢胞、膵腹水、VIP産生腫瘍、島細胞症、高インスリン症、ガストリン産生腫瘍、ゾリンジャー-エリソン症候群、過分泌下痢、強皮症、過敏性腸症候群、上部消化管出血、食後門脈高血圧症、門脈高血圧合併症、小腸閉塞症、十二指腸胃逆流、クッシング症候群、生殖腺腫瘍、上皮小体機能亢進症、糖尿病性神経障害、筋退縮、悪性高カルシウム血症、パジェット病、髄膜腫、癌性悪液質、乾癬、低血圧症およびパニック発作よりなる群から選択される方法に関する。
【0024】
詳細な記述
本明細書中でパラメーターおよび量に関して用いる用語”約”は、そのパラメーターまたは量が表記されたパラメーターまたは量の±5%以内であることを意味する。
【0025】
本明細書中で用いる用語”ミクロ粒子”は、化合物(A)ポリ-ラクチド-グリコリド-酒石酸ポリマーを含むイオン結合体のミクロンサイズの粒子を意味し、これらは好ましくは本質的に球形である。
【0026】
本発明は、アミノ酸を当技術分野で知られている標準3文字略号により表記する。たとえばPhe=フェニルアラニン;Abu=α-アミノ酪酸。
当業者に周知のように、ソマトスタチンの既知の潜在用途は多種多様である。ソマトスタチンは後記の疾患および/または状態の治療に有用であることが知られている。ソマトスタチンの多様な用途は下記のようにまとめることができる:クッシング症候群(Clark, R.V., et al., Clin. Res., 38, p. 943A, 1990参照);生殖腺腫瘍(Ambrosi, B., et al., Acta Endocr. (Copenh.)122, 569-576, 1990参照);上皮小体機能亢進症(Miller, D., et al., Canad. Med. Ass. J., Vol. 145, pp. 227-228, 1991参照);パジェット病(Palmieri, G.M.A., et al., J. of Bone and Mineral Research, 7(Suppl. 1), p. S240(Abs. 591)1992参照);VIP産生腫瘍(Koberstein, B., et al., Z. Gastroenterology, 28, 295-301, 1990およびChristensen, C., Acta Chir. Scand., 155, 541-543, 1989参照);島細胞症および高インスリン症(Laron, Z., Israel J. Med. Sci., 26, No. 1, 1-2, 1990;Wilson, D.C., Irish J. Med. Sci., 158, No. 1, 31-32, 1989;およびMicic, D., et al., Digestion, 16, Suppl. 1. 70. Abs. 193, 1990参照);ガストリン産生腫瘍(Bauer, F.E., Europ. J. Pharmacol., 183, 55, 1990参照);ゾリンジャー-エリソン症候群(Mozell, E., et al., Surg. Gynec. Obstet., 170, 476-484, 1990参照);エイズその他の状態に関連する過分泌下痢(エイズによるものはCello, J.P., et al., Gastroenterology, 98, No. 5, Part 2, Suppl., A163, 1990を参照;ガストリン放出ペプチド増加によるものはAlhindawi, R., et al., Can. J. Surg., 33, 139-142, 1990参照;移植臓器対個体反応疾患によるものはBianco, J.A., et al., Transplantation, 49, 1194-1195, 1990参照;化学療法による下痢はPetrelli, N., et al., Proc. Amer. Soc. Clin. Oncol., Vol. 10, p. 138, Abstr. No. 417, 1991参照);過敏性腸症候群(O’Donnell, L.J.D., et al., Aliment. Pharmacol. Therap., Vol. 4, 177-181, 1990参照);膵炎(Tulassay, Z., et al., Gastroenterology, 98, No. 5, Part 2, Suppl., A238, 1990参照);クローン病(Fedorak, R.N., et al., Can. J. Gastroenterology, 3, No. 2, 53-57, 1989参照);全身性硬化症(Soudah, H., et al., Gastroenterology, 98, No. 5, Part 2, Suppl., A129, 1990参照);甲状腺癌(Modigliani, E., et al., Ann. Endocr. (Paris)50, 483-488, 1989参照);乾癬(Camisa, C., et al., Cleveland Clin. J. Med., 57, No. 1, 71-76, 1990参照);低血圧症(Hoeldtke, R.D., et al., Arch. Phys. Med. Rehabil., 69, 895-898, 1988およびKooner, J.S., et al., Brit. J. Clin. Pharmacol., 28, 735P-736P, 1989参照);パニック発作(Abelson, J.L., et al., Clin. Pharmacol., 10, 128-132, 1990参照);強皮腫(Soudah, H., et al., Clin. Res., Vol. 39, p. 303A, 1991参照);小腸閉塞症(Nott, D.M., et al., Brit. J. Surg., Vol. 77, p. A691, 1990参照);胃食道逆流(Branch, M.S., et al., Gastroenterology, Vol. 100, No. 5, Part 2, Suppl., p. A425, 1991参照);十二指腸胃逆流(Hasler, W., et al., Gastroenterology, Vol. 100, No. 5, Part 2, Suppl., p. A448, 1991参照);グレーブス病(Chang, T.C., et al., Brit. Med. J., 304, p. 158, 1992参照);多嚢胞卵巣(Prelevic, G.M., et al., Metabolism Clinical and Experimental, 41, Suppl. 2, pp. 76-79, 1992参照);上部消化管出血(Jenkins, S.A., et al., Gut., 33, pp. 404-407, 1992およびArrigoni, A., et al., American Journal of Gastroenterology, 87, p. 1311(abs. 275)1992参照);膵偽嚢胞および膵腹水(Hartley, J.E., et al., J. Roy. Soc. Med., 85, pp. 107-108, 1992参照);白血病(Santini, et al., 78(Suppl. 1), p. 429A(Abs. 1708)1991参照);髄膜腫(Koper, J.W., et al., J. Clin. Endocr. Metab., 74, pp. 543-547, 1992参照)ならびに癌性悪液質(Bartlett, D.L., et al., Surg. Forum., 42, pp. 14-16, 1991参照)。以上の参考文献の内容を本明細書に援用する。
【0027】
本発明者らは、ソマトスタチンアゴニストである化合物(A)、化合物(I)、および化合物(I)のミクロ粒子が前記の状態、障害および疾患の治療に特に有用であることを今回見いだした。
【0028】
一般法:
コポリマーの形成:L-ラクチド、グリコリドおよびL(+)-酒石酸からなるコポリマーは、当業者に周知の方法および本明細書記載の方法で製造できる。したがって、反応器にグリコリド、L-ラクチドおよびL(+)-酒石酸モノマー、ならびにトルエン溶液状の2-エチルヘキサン酸スズ(II)を装填する。好ましくは、L-ラクチド、グリコリドおよびL(+)-酒石酸のモル%はそれぞれ72/27/1である。
【0029】
L(+)-酒石酸を予め、好ましくはAbdehanden乾燥器内においてシリカゲルで、約10時間乾燥させる。次いで反応器を撹拌しながら真空下におき、トルエンを除去する。次いで反応器を無酸素窒素雰囲気で、好ましくは油浴に浸漬することにより、約180〜190℃の温度に加熱し、約125 rpmにまで撹拌を高める。浸漬前に反応器の蓋に加熱テープを貼る。反応器内容物が完全に溶融する時間は、約300 gの装填量につき約180℃で一般に約15分間であることが認められた。合成中、1時間毎に試料を採取し、GPCにより分析して残留モノマー%を測定し、数平均分子量値(Mn)および重量平均分子量値(Mw)分布を求める。一般的な反応時間は約9〜15時間程度である。最終ポリマーも滴定により分析して酸価(meq/g)を求め、GCにより残留未反応モノマー含量を測定する。他の分析にはIR(特徴的なC=Oピークの検出);NMR(ポリマーのラクチドおよびグリコリド含量の測定)、および残留スズ(触媒として2-エチルヘキサン酸スズ(II)を用いたことによる残留スズの測定)が含まれる。
【0030】
前記コポリマーの精製/ナトリウム塩形成:残留モノマー(一般に<5%(W/W))を除去し、コポリマーを1工程でそのナトリウム塩形に変換する(イオン塩形成の促進のため)。このポリ-L-乳酸-co-グリコール酸-co-L(+)-酒石酸コポリマー(PLGTA)を超音波浴内での超音波処理によりアセトンに溶解して、19〜21重量%PLGTA濃度の溶液を得る。
【0031】
この溶液に無機塩基、たとえばNaOHまたはNa2CO3の弱い溶液を(好ましくは0.2 M炭酸ナトリウム-Na2CO3を使用)、得られるナトリウム濃度がコポリマーのカルボキシル基より1〜2倍モル過剰、好ましくは1.2倍モル過剰となる量で添加する。ナトリウム塩形成を補助するために、溶液を約15〜60分間、好ましくは30分間、室温で撹拌する。次いでこれを約50〜300 ml/分、好ましくは約100 ml/分で、循環浴により約1〜4℃、好ましくは2.5℃に冷却した脱イオン水を入れたジャケット付き反応器に供給する。水の量はアセトンの約20〜30体積倍過剰、好ましくはアセトンの20:1体積倍過剰である。表面乱流を形成して沈殿に際してのポリマー凝集を避けるのに十分な速度で、撹拌機モーターに連結した櫂により水を撹拌する。
【0032】
沈殿し終えると、モノマーの除去を補助するために分散液をさらに30〜60分間撹拌し続けた後、遠心ボトルに入れて遠心する。上清を廃棄し、ケークをさらに脱イオン水に再懸濁し、再遠心および乾燥(好ましくは凍結乾燥による)させる。
【0033】
化合物(A)-ポリマー-イオン結合体の調製:この合成により、両者が可溶性である媒質、好ましくは3:1(W/W)アセトニトリル:水中で、化合物(A)をコポリマーのナトリウム塩に結合させ、次いで生成したイオン結合体を脱イオン水中で沈殿させ、生じた水不溶性結合体の沈殿を回収する。
【0034】
脱イオン水中における化合物(A)アセテート塩の溶液を、12,000 MW、71/28/1〜73/26/1 PLGTAの洗浄Na塩のアセトニトリル溶液に添加する。後者の溶液には弱塩基、たとえば0.5 M Na2CO3が添加されており、その結果、化合物(A)アセテート塩のアセテート含量より1.05モルのNa過剰となる。これを約5分間撹拌して、アルカリ性環境、好ましくはpH8にし、化合物(A)のアセテート基を中和する。アセトニトリル:水の重量比は約3:1である。化合物(A)の必要量は、必要な目標装填量(通常は約8〜約12%)に基づいて決定される。これから化合物(A)アセテートの中和に必要な炭酸ナトリウム水溶液の体積を決定し、最後に、目的とする最終アセトニトリル:水(添加した炭酸ナトリウムを含む)体積比約3:1に基づいて化合物(A)の溶解のための水の体積を計算する。
【0035】
この化合物(A)-コポリマー溶液を、2成分間のイオン結合を促進しかつ共有結合を抑制する(低温の使用による)ために、約0〜5℃、好ましくは2.5℃で、約10〜15分間撹拌する。次いでこの溶液を、循環浴に連結したジャケット付き反応器内において、約50〜300 ml/分の速度で、前記3:1アセトニトリル-水溶液中のアセトニトリルの体積より約20〜30:1体積倍過剰の脱イオン水中へ供給し、表面撹拌しかつ凝集を避けるのに十分な速度で撹拌し、そして約1〜4℃、好ましくは1.7℃に冷却する。
【0036】
沈殿し終えると、水溶性の化合物(A)-オリゴマー化合物(オリゴマーはPLGTAの低分子量画分であり、水溶性であるため望ましくない)の除去を補助するために分散液をさらに30〜60分間撹拌し続けた後、遠心ボトルに入れ、遠心機により約5000 rpmで約15分間遠心する。得られた遠心ケークを脱イオン水に再懸濁し、再遠心する。次いでそれを2日間の凍結乾燥により凍結および乾燥させ、化合物(I)(化合物(A)がPLGTAにイオン結合したもの)を回収する。上清を非結合化合物(A)のHPLC分析および窒素分析(化合物(A)の窒素含量は既知であり、ポリマーは窒素を全く含有しない)することにより装填量を判定する。化合物(I)から化合物(A)を抽出した後にHPLC分析を行っても装填量を測定できる。
【0037】
化合物(I)の噴霧:患者に注射するのに好適な配合物を得るために、化合物(I)を下記によりミクロスフェアとして配合する:化合物(I)を酢酸エチルに溶解し、超音波噴霧(atomizationまたはnebulization)により溶液を低温(約-60〜-78℃)のエタノール、イソプロパノール、またはヘキサンとイソプロパノールの混合物(好ましくはイソプロパノール)内へ噴霧し、化合物(I)が低温のイソプロパノールと接触するとミクロスフェアが形成される。化合物(I)の酢酸エチル溶液を0.2μmのフィルターに通すことにより滅菌できる。
【0038】
化合物(I)を超音波処理/撹拌して酢酸エチルに溶解し、ポリマー分子量および化合物(A)装填量(両者とも溶液粘度を変化させる)に応じて約8〜約12%(W/W)溶液、好ましくは12%溶液を得る。これを約4.90〜5.10 ml/分、好ましくは5.00 ml/分で工業用アトマイザーまたはネブライザーに供給し[パワー-約70%、振幅-約80%、周波数-約34〜35 Hz、好ましくは34.5 Hz;一般にネブライザーは、濃度約8〜約12%(W/W)の化合物(I)酢酸エチル溶液を均一に(”スピッティング(spitting)”なしに)噴霧できる周波数を発生するのに十分なパワーをもつ必要がある:そのような濃度では固体ミクロスフェアが形成される;また周波数は40ミクロン〜70ミクロンの平均サイズが得られるものでなければならない:これにより21ゲージまたは19ゲージの注射針で容易に注射できる]、酢酸エチルの体積と比較して20〜30倍、好ましくは20倍過剰のイソプロパノール(IPA)中へ噴霧する。イソプロパノールは約-60〜約-78℃に冷却し(冷却はたとえば反応器ジャケット、ドライアイスの添加、または冷却コイルの挿入により達成できる)、少なくとも約200 rpmで撹拌しておく(ミクロスフェアの凝集を避けるために)。酢酸エチルの蒸発によりネブライザー先端を目詰まりさせる可能性のある局部加熱作用を除くために、約6℃の温度の脱イオン水を、好ましくは1.5 L/分でネブライザージャケットに供給する。溶液は均一に噴霧され、灰白色の粒子分散物がイソプロパノール中に形成されるのが見える。これを約30分ないし2時間かけて約0〜22℃にまで融解させた後、125μmの篩(注射できない大型の液滴/粒子を除去するために)およびWhatman、No. 1濾紙(真空濾過する)に通す。フィルターケークをさらにイソプロパノールですすぎ、次いで真空乾燥する。
【0039】
本発明を以下の実施例により説明するが、本発明はその詳細事項により限定されない。
実施例1
P(l)LGTA(72/27/1)と化合物Aのイオン結合体
工程A:300 gのP(l)LG/酒石酸コポリマー(l-ラクチド:グリコリド:酒石酸=72:27:1)の合成
反応器にグリコリド(Purac Biochem., オランダ, 68.71 g)、ラクチド(Purac Biochem., オランダ, 227.53 g)およびL(+)-酒石酸(Riedel-de Haen, ドイツ国ゼールツェ, 商品番号33801, 3.75 g)モノマー、ならびに2-エチルヘキサン酸スズ(II)(Sigma, 米国ミズーリ州セントルイス, 商品番号S-3252)のトルエン(Riedel-de Haen, ドイツ国ゼールツェ)溶液(0.0982 M, 4.47 ml)を装填した。これはそれぞれL-ラクチド、グリコリドおよびL(+)-酒石酸のモル%71.81%;26.82%;および1.36%に相当した。
【0040】
L(+)-酒石酸を予めAbderhalden乾燥器内に置いてシリカゲル(Riedel-de Haen, ドイツ国ゼールツェ)で約10分間乾燥させた。次いで反応器(液体窒素トラップを介してポンプに連結)を撹拌しながら約50分間、真空下(0.04 mbar)においてトルエンを除去した。次いで反応器を無酸素窒素(BOCガス、アイルランド、ダブリン、水分8 VPM)雰囲気下で油浴(温度=約180℃)に浸漬し、125 rpmに撹拌を高めた。浸漬前に反応器の蓋に加熱テープ(Thermolyneタイプ45500、入力制御設定=4)を貼った。反応器内容物が完全に溶融する時間は、約300 gの装填量につき約180℃で一般に約15分間であることが認められた。合成中、1時間毎に試料を採取し、GPCにより分析して残留モノマー%を測定し、数平均分子量値(Mn)および重量平均分子量値(Mw)分布を求めた。一般的な反応時間は約15時間程度であった。最終ポリマーも滴定により分析して酸価(meq/g)を求め、GCにより残留未反応モノマー含量を測定した。他の分析にはIR(特徴的なC=Oピークの検出);NMR(ポリマーのラクチドおよびグリコリド含量の測定)、および残留スズ(触媒として2-エチルヘキサン酸スズ(II)を用いたことによる残留スズの測定)が含まれた。
【0041】
工程B:前記コポリマーの精製/ナトリウム塩形成
残留モノマー(一般に<5%(W/W))を除去し、コポリマーを1工程でそのナトリウム塩形に変換した(イオン塩形成の促進のため)。12,000 g/molの72/27/1ポリ-L-乳酸-co-グリコール酸-co-L(+)-酒石酸コポリマー(滴定による酸価=0.231 meq/g)81.05 gを超音波浴(Branson、米国コネチカット州ダンベリー)内での超音波処理により324.24 gのアセトン(Riedel-de Haen, ドイツ国ゼールツェ)に溶解して、20.00重量%PLGTA濃度の溶液を得た。
【0042】
この溶液に無機塩基、56.17 mlの0.2 M Na2CO3(Aldrich、英国ドーセット州ギリンガム)溶液を添加し、これによりナトリウムがコポリマーのカルボキシル基より1.2倍モル過剰となった。ナトリウム塩形成を補助するために、溶液を室温で約30分間撹拌した。次いでこれを約100 ml/分で、循環浴(Huber、ドイツ国オッフェンバーグ)により約2.5℃に冷却した脱イオン水8.2 L(アセトンの20:1体積倍過剰)を入れた10 Lのジャケット付き反応器に供給した。表面乱流を形成して沈殿に際してのポリマー凝集を避けるために、撹拌機モーターに連結した櫂により800 rpmでこの水を撹拌した。
【0043】
沈殿し終えると、モノマーの除去を補助するために分散液をさらに30分間撹拌し続けた後、遠心ボトルに入れてSorvall遠心機(DuPont Sorvall Products、米国デラウェア州ウィルミントン)により5000 rpmで15分間遠心した。上清を廃棄し、ケークをさらに脱イオン水に再懸濁し、再遠心し、フリーザー(-13℃)で一夜凍結した後、翌日、小型凍結乾燥器(Edwards、英国ウェストサセックス州クローリー)で乾燥させた。この凍結乾燥器は冷却システムを備えていない。5日間の凍結乾燥後、65.37 gの洗浄コポリマーを回収した。これは80.65%の収率となった。
【0044】
工程C:化合物(I)の調製
化合物(A)アセテート塩(Kinerton社、バッチ97K-8501、アイルランド、ダブリン、力価=85.8%(力価はペプチドアセテート塩中に存在する遊離塩基ペプチドの%を表す);アセテート=10.87%)1.27 gの、脱イオン水5.87 g中における溶液を、12,000 MW、71/28/1〜73/26/1 PLGTAの洗浄Na塩8.01 gの、アセトニトリル(Riedel-de Haen)24.84 g中における溶液(24.38%(W/W))に添加した;後者の溶液には2.41 mlの0.5 M Na2CO3(これは化合物(A)アセテート塩のアセテート含量より1.05モル過剰のNaに相当する)が添加されていた。化合物(A)のアセテート基を中和するために約5分間撹拌してアルカリ性環境(pH8)にした。アセトニトリル:水の重量比は約3:1であった。化合物(A)の必要量は、必要な目標装填量に基づいて決定された。これから化合物(A)のアセテートの中和に必要な炭酸ナトリウム水溶液の体積を決定し、最後に、目的とする最終アセトニトリル:水(添加した炭酸ナトリウムを含む)体積比約3:1に基づいて化合物(A)の溶解のための水の体積を計算した。
【0045】
この化合物(A)-コポリマー溶液を、2成分間のイオン結合を促進しかつ共有結合を抑制するために、約2.5℃で約15分間撹拌した。次いでこの溶液を、循環浴に連結したジャケット付き反応器内において、約100 ml/分の速度で、脱イオン水630 ml(アセトニトリルより約20:1体積倍過剰)中へ供給し、350 rpmで撹拌し(表面撹拌して化合物(A)-コポリマーの凝集を避けるために)、そして循環浴に連結した6 Lのジャケット付き反応器内で約1.7℃に冷却した。
【0046】
沈殿し終えると、水溶性の化合物(A)-オリゴマー化合物の除去を補助するために分散液をさらに30分間撹拌し続けた後、遠心ボトルに入れ、Sorvall遠心機(DuPont Sorvall Products、米国デラウェア州ウィルミントン)により約5000 rpmで約15分間遠心した。得られた遠心ケークを脱イオン水に再懸濁し、再遠心した。次いでそれを2日間の凍結乾燥により凍結および乾燥させ、8.30 gの表題生成物を回収した。これは91.38%の収率となった。上清を非結合化合物(A)のHPLC分析および窒素分析(化合物(A)の窒素含量は既知であり、ポリマーは窒素を全く含有しない)することにより装填量を判定した。化合物(I)から化合物(A)を抽出した後にHPLC分析を行っても装填量を測定でき、この実施例については11.25%であった。
【0047】
工程D:化合物(I)の噴霧
工程Cからの化合物(I)8.27 gを超音波処理/撹拌(室温)により60.77 gの酢酸エチルに溶解して、12.00%(W/W)溶液を得た。これを5 ml/分で工業用アトマイザー/ネブライザー(Martin Walter Powersonic、モデルMW400GSIP、フランス国ソダバ)(パワー=70%、振幅=80%、周波数=34.50 Hz)に供給し、1.35 Lのイソプロピルアルコール(IPA)(酢酸エチルの体積と比較して20体積倍過剰)中へ噴霧した。イソプロピルアルコールはジャケット付き反応器内で-74±4℃に冷却され(冷却は反応器ジャケットによる)、200 rpmで撹拌されていた(ミクロスフェアの凝集を避けるために)。酢酸エチルの蒸発によりネブライザー先端を目詰まりさせる可能性のある局部加熱作用を除くために、約6℃の温度の脱イオン水を、1.5 L/分でネブライザージャケットに供給した。溶液は均一に噴霧され、灰白色の粒子分散物がイソプロパノール中に形成されるのが見えた。これを約30分ないし2時間かけて約0〜4℃にまで融解させた後、125μmの篩(注射できない大型の液滴/粒子を除去するために)およびWhatman、No. 1濾紙(真空濾過した)に通した。フィルターケークをさらにイソプロピルアルコールですすぎ、次いで真空乾燥した。注射可能な物質6.88 gが得られ、これは83.19%の収率となった。化合物(I)のミクロ粒子は約54ミクロンのサイズであった。
【0048】
化合物(I)のミクロスフェアからの化合物(A)のin vivo放出は下記の記載に従って試験することができ、これにより試験を行った。in vivo試験法は、化合物(I)のミクロ粒子を雄ビーグル犬に筋肉内投与した後の化合物(A)のin vivo放出プロフィルを、投与後の化合物(A)の薬物動態プロフィルにより評価するように設計された。
【0049】
化合物(I)ミクロ粒子の医薬配合物を後足筋に筋肉内投与した。化合物(I)のミクロ粒子を含有する照射または非照射剤形(化合物(I)中の化合物(A)の装填率は11.23%であったという測定に基づけば、注射したミクロ粒子の量は5 mgの化合物(A)に相当した)を、各剤形当たり6匹のイヌの群の筋肉内に1回投与した。血清試料中の化合物(A)の定量および薬物動態分析を下記により実施する。
【0050】
イヌからの採血を注射前(0時)、ならびに5、15および30分後;1、2、4、8および12時間後;1、2、3および4日後;次いで最初の1カ月間は週2回(たとえば月曜と木曜);最後に2カ月目から実験終了(化合物(A)の血清濃度がもはや検出されない時点)までは週1回実施する。ただし実際の採血時間を記録して薬物動態分析に用いた。0時(筋肉内投与前)ならびに筋肉内注射の7、21、35、56および84日後については血液試料(5 ml)、残りの採取時には血液試料(4 ml)を、指定時間に頚静脈または橈側皮静脈から採取した。
【0051】
試料を2画分に分けて装入した:一方は約2.5 mlまたは特定時間の採取については3.5 mlを、それぞれ50および80μlのアプロチニン溶液(10 mlのTrasylol(登録商標)500000KJUを親油性処理し、2 mlのp.p.i水に再希釈したもの)を入れた試験管に、他方は約1.5 mlを試験管に装入し、放置した。
【0052】
赤血球凝固の後、試験管を+4℃において30000 rpmで20分間遠心した。アプロチニン含有血清を分離し、2画分に分けて、試料を化合物(A)について分析するまで-20℃に保存した。
【0053】
血清試料の化合物(A)濃度をラジオイムノアッセイ法により分析した。ブランクイヌ血漿および化合物(A)標準溶液についての標準曲線を毎日作成した。この方法でイヌ血清試料中の化合物(A)の定量限界は約0.050 ng/mlである。曲線下面積(AUC)および最大血清濃度(Cmax)を供給量(各動物に投与した量をμg/kgで表示したもの)により正規化した。吸収速度指数(Cmax/AUC)も計算した。
【0054】
以上の実験結果を図1に示す。
化合物(A)もしくはその医薬的に許容できる塩、化合物(I)、または化合物(I)ミクロ粒子を、経口、非経口(たとえば筋肉内、腹腔内、静脈内もしくは皮下への注射、または埋込み)、鼻腔、膣、直腸、舌下または局所投与経路で投与することができ、医薬的に許容できるキャリヤーと配合して各投与経路に適した剤形を得ることができる。
【0055】
経口投与用の固体剤形には、カプセル剤、錠剤、丸薬、散剤および顆粒剤が含まれる。そのような固体剤形においては、有効化合物を少なくとも1種類の医薬的に許容できる不活性キャリヤー、たとえばショ糖、乳糖またはデンプンと混合する。そのような剤形は、常法によりこれらの不活性希釈剤以外の追加物質、たとえば潤滑剤(たとえばステアリン酸マグネシウム)を含有することもできる。カプセル剤、錠剤および丸薬の場合、これらの剤形は緩衝剤を含むこともできる。錠剤および丸薬はさらに腸溶コーティングを備えたものとして調製することができる。
【0056】
経口投与のための液体剤形には、当技術分野で一般に用いられる不活性希釈剤、たとえば水を含有する、医薬的に許容できる乳剤、液剤、懸濁液剤、シロップ剤、エリキシル剤が含まれる。そのような不活性希釈剤のほかに、組成物はアジュバント、たとえば湿潤剤、乳化剤および沈殿防止剤、ならびに甘味剤および香料を含有することもできる。
【0057】
非経口投与用製剤には、無菌の水性または非水性液剤、懸濁液剤または乳剤が含まれる。非水性溶剤またはビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、たとえばオリーブ油およびトウモロコシ油、ゼラチン、ならびに注射用有機エステル、たとえばオレイン酸エチルである。そのような剤形は、アジュバント、たとえば保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤を含有することもできる。それらは、たとえば細菌保持フィルターによる濾過、組成物中への殺菌剤の添加、組成物の照射、または組成物の加熱により殺菌できる。それらを無菌固体組成物の形で製造し、これを使用直前に無菌水または他のいずれかの注射用媒質に溶解してもよい。
【0058】
直腸または膣への投与のための組成物は、好ましくは坐剤であり、これらは有効物質のほかに、賦形剤、たとえばカカオ脂または坐剤用ろうを含有してもよい。
鼻腔または舌下への投与のための組成物も、当技術分野で周知の標準賦形剤を用いて製造できる。
【0059】
化合物(I)のミクロ粒子を非経口投与または経口投与により投与することが好ましい。
患者に投与する化合物(I)ミクロ粒子の有効投与量は、担当する医師または獣医が決定でき、化合物(A)について意図する適正な投与量、および化合物(I)のミクロ粒子中における化合物(A)の装填量に依存するであろう。そのような投与量は既知であるか、または当業者が容易に決定できる。好ましくは投与量は患者において少なくとも200 pg/mlのレベルになるべきである。
【0060】
即時放出組成物または持続放出組成物のいずれを使用するかは、目標とする適応症のタイプによる。適応症が急性または過急性障害である場合は、持続放出組成物より即時放出形による治療の方が好ましいであろう。これに対し、予防または長期治療のためには一般に持続放出組成物が好ましいであろう。
【0061】
一般に上部消化管出血は、1人当たり約80〜120μg/日、約5日間の投与量による急性または過急性治療に相当する。内視鏡治療の後、化合物(I)のミクロ粒子または他の持続放出形を通常の治療に対する補助として用いて、再発防止治療を行うことができる。
【0062】
上部消化管出血以外の、かなり長期の治療を必要とする他の適応症には、化合物(I)のミクロ粒子が好ましいであろう。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】イヌにおける化合物(I)試料からの化合物(A)のin vivo放出プロフィルを示す。化合物(I)は約11.23%の化合物(A)を含み、ポリマーはl-ラクチド-グリコリド-酒石酸(72:27:1)であり、化合物(I)をミクロ粒子として筋肉内投与した。照射試料はコバルト源からのγ-線で照射した化合物(I)の試料を意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全身性硬化症、膵偽嚢胞、膵腹水、VIP産生腫瘍、島細胞症、高インスリン症、ガストリン産生腫瘍、ゾリンジャー-エリソン症候群、過分泌下痢、強皮症、過敏性腸症候群、上部消化管出血、食後門脈高血圧症、門脈高血圧合併症、小腸閉塞症、十二指腸胃逆流、クッシング症候群、生殖腺腫瘍、上皮小体機能亢進症、糖尿病性神経障害、筋退縮、悪性高カルシウム血症、パジェット病、髄膜腫、癌性悪液質、乾癬、低血圧症およびパニック発作よりなる群から選択される患者の疾患または状態を治療するための、有効量の化合物(A):
【化1】

またはその医薬的に許容できる塩を含む、医薬組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2006−8701(P2006−8701A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−239282(P2005−239282)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【分割の表示】特願2001−516576(P2001−516576)の分割
【原出願日】平成12年8月16日(2000.8.16)
【出願人】(500511604)ソシエテ・ドゥ・コンセイユ・ドゥ・ルシェルシュ・エ・ダプリカーション・シャンティフィック・エス・ア・エス (22)
【Fターム(参考)】