説明

ペリクルの収納容器およびペリクル収納容器の搬送用台車

【課題】 大型のペリクルを収納するペリクル収納容器で、安全に、運搬することができるペリクルの収納容器を提供する。
【解決手段】 ペリクルの収納容器10は、ペリクルを載置するペリクル収納容器本体11と、その周縁部がペリクル収納容器本体11の開口部に嵌合することによって、ペリクルをペリクル収納容器11本体との間に収納可能な蓋体12と、ペリクル収納容器本体11の底部に設けられた6つ脚部13とを備え、脚部13が、ペリクル収納容器10を搬送する搬送手段の回動可能な載置台に嵌合可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSI、超LSIなどの半導体装置や液晶表示板を製造する場合に、マスクやレチクルの防塵カバーとして使用されるリソグラフィー用ペリクルの収納容器およびペリクルを搬送するために用いられるペリクル収納容器の搬送用台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSI、超LSIなどの半導体デバイスあるいは液晶ディスプレイを製造するにあたっては、半導体ウエハーあるいは液晶用原板に、フォトマスクやレチクルなどの露光用原版(本明細書においては、総称して、「フォトマスク」と称する。)を介して、露光用の光が照射されて、フォトマスクのパターンが転写され、半導体デバイスあるいは液晶ディスプレイのパターンが形成される。
【0003】
したがって、この場合に、フォトマスクにゴミなどの異物が付着していると、フォトマスクの表面に付着したゴミなどの異物によって、露光用の光が反射され、あるいは、吸収されるため、半導体ウエハーあるいは液晶用原板に転写されたパターンが変形したり、パターンのエッジ部分が不鮮明になるだけでなく、下地が黒く汚れて、寸法、品質、外観などを損ない、半導体ウエハーあるいは液晶用原板に、所望のように、フォトマスクのパターンを転写することができず、半導体デバイスあるいは液晶ディスプレイの性能が低下し、歩留まりが悪化するという問題があった。
【0004】
かかる問題を防止するために、半導体ウエハーあるいは液晶用原板の露光は、クリーンルーム内で行われるが、それでも、フォトマスクの表面に異物が付着することを完全に防止することは困難であるため、通常は、フォトマスクの表面に、露光用の光に対し高い透過率を有するペリクルと呼ばれる防塵カバーを取り付けて、半導体ウエハーあるいは液晶用原板を露光するように構成されている。
【0005】
一般に、ペリクルは、露光用の光に対し高い透過率を有するニトロセルロース、酢酸セルロースなどのセルロース系樹脂やフッ化樹脂などによって製作されたペリクル膜を、アルミニウム、ステンレス、ポリエチレンなどによって形成されたペリクルフレームの一方の面に、ペリクル膜材料の良溶媒を塗布し、ペリクル膜を風乾して、接着するか、アクリル樹脂、エポキシ樹脂やフッ素樹脂などの接着剤を用いて接着し、ペリクルフレームの他方の面に、ポリブテン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などからなり、フォトマスクに付着させるための粘着層を形成し、さらに、粘着層上に、粘着層保護用の離型層ないしセパレータを設けることによって、製作されている(特許文献1、2、3および4)。
【0006】
このように構成されたペリクルをフォトマスクの表面に取り付けて、半導体ウエハーあるいは液晶用原板を露光する場合には、ゴミなどの異物は、ペリクルの表面に付着し、フォトマスクの表面には直接付着しないため、フォトマスクに形成されたパターン上に、焦点が位置するように、露光用の光を照射すれば、ゴミなどの異物の影響を除去することが可能になる。
【0007】
近年、液晶ディスプレイの大型化に伴い、液晶用フォトマスクおよびペリクルも大型化が進んでおり、辺長が1000mmを超えるようなきわめて大きなペリクルも用いられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭58−219023号公報
【特許文献2】米国特許第4861402号明細書
【特許文献3】特公昭63−27707号公報
【特許文献4】特開平7−168345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このようなペリクルの大型化にともない、ペリクルを収納するための収納容器も必然的に大型化し、収納容器の剛性を高めるために、ペリクルの収納容器の重量も著しく増大するようになっている。ペリクルの収納容器の重量は、たとえば、520mm×800mmのフォトマスク用ペリクルを収納する容器では6kgに過ぎないが、1220×1400mmのフォトマスク用ペリクルを収納する容器の場合にはおよそ40kg、さらに、1620×1780mmのフォトマスク用ペリクルを収納する容器の場合では、およそ80kgにも達する。
【0010】
したがって、このように大型のペリクルの収納容器を運搬する場合、とりわけ、辺長が1000mmを超えるような特に大型のペリクルを収納する容器を運搬する場合には、重量やサイズの問題から、人手での運搬が困難になってくる。たとえば、1220×1400mmのフォトマスク用ペリクルを収納する容器を運搬する場合には、少なくとも2人の人手が必要であり、1620×1780mmのフォトマスク用ペリクルを収納する容器を運搬する場合には、少なくとも4人、できれば6人の人手が必要になる。
【0011】
このように、これら大型のペリクルを収納する収納容器の運搬作業は、工数がきわめて大きなものになるだけでなく、運搬の途中で、ペリクル収納容器が搬送機器から落下したりした場合には、作業者に重大な損傷を与えるおそれがあり、大型のペリクル収納容器の運搬作業は大きな危険を伴うものであった。
【0012】
さらに、このように大型のペリクル収納容器を水平状態で運搬し、保管する場合には、幅の広い通路、大きな扉、広い保管場所など、大きなスペースが必要になるという問題もあった。かかる問題は、ペリクル収納容器を垂直に立てて運搬し、保管することによって解決可能ではあるが、実際には、その重量が80kgにも達するペリクル収納容器を垂直に立てて運搬し、保管することは、大きな危険がともない、多くの人手が必要で現実的ではない。
【0013】
かかる問題を解決するために、チェーンブロック、クレーンなどの吊り下げ機械を用いることは可能ではあるが、このような吊り下げ機械を用いて、ペリクル容器を運搬するためには、運搬経路の各所に、これらの機械を設置する必要があるだけでなく、吊り下げ機械を設置した場所でしか、作業ができないという不都合がある。
【0014】
さらに、ペリクル収納容器を垂直に立てて運搬し、保管する場合には、水平状態で運搬し、保管する場合に比して、ペリクル収納容器の把持可能な部分が少なくなり、多くの人手が必要であるにもかかわらず、多くの人が運搬作業に加わることが困難で、1人が分担する重量が大きくなり、運搬中に、ペリクル収納容器が転倒したり、搬送機器から落下したりする危険が増大するという問題があった。
【0015】
このように、大型のペリクル収納容器を垂直に立てた状態で運搬することが困難であるため、大型のペリクル収納容器は、水平状態で、運搬されるのが通常であった。
【0016】
したがって、本発明は、少なくとも一つの辺長が1000mmを越えるような大型のペリクルを収納するペリクル収納容器で、安全に、運搬することができるペリクルの収納容器を提供することを目的とするものである。
【0017】
また、本発明の別の目的は、少なくとも一つの辺長が1000mmを越えるような大型のペリクルを収納するペリクル収納容器を安全に、かつ、少人数で運搬することができるペリクル収納容器の搬送用台車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のかかる目的は、少なくとも一つの辺長が1000mm以上のペリクルを載置するペリクル収納容器本体と、その周縁部が前記ペリクル収納容器本体の開口部に嵌合することによって、前記ペリクルを前記ペリクル収納容器本体との間に収納可能な蓋体と、前記ペリクル収納容器本体の底部に設けられた少なくとも4つの互いに離間する脚部とを備えたペリクル収納容器であって、前記脚部が、ペリクル収納容器を搬送する搬送手段の回動可能な載置台に嵌合可能に構成されたことを特徴とするペリクル収納容器によって達成される。
【0019】
本発明によれば、ペリクル収納容器本体の脚部が、ペリクル収納容器を搬送する搬送手段の回動可能な載置台に嵌合可能に構成されているから、少ない人数で、安全かつ容易に、組み立てたペリクル収納容器を、ペリクル収納容器の搬送手段にセットすることが可能になる。
【0020】
本発明の前記目的はまた、少なくとも一つの辺長が1000mm以上のペリクルを載置するペリクル収納容器本体と、その周縁部が前記ペリクル収納容器本体の開口部に嵌合することによって、前記ペリクルを前記ペリクル収納容器本体との間に収納可能な蓋体と、前記ペリクル収納容器本体の底部に設けられた少なくとも4つの互いに離間する脚部とを備えたペリクル収納容器を搬送するペリクル収納容器の搬送用台車であって、旋回可能な旋回軸によって支持され、その上に、前記ペリクル収納容器が載置可能な載置台と、前記載置台を任意の角度で固定可能な載置台固定手段を備えたペリクル収納容器の搬送用台車であって、前記載置台に、前記ペリクル収納容器の前記脚部が嵌合可能な連結部を備えたことを特徴とするペリクル収納容器の搬送用台車によって達成される。
【0021】
本発明によれば、ペリクル収納容器の搬送用台車の載置台には、ペリクル収納容器本体の底部に設けられた脚部が嵌合可能な連結部が設けられているから、容易に、ペリクル収納容器を載置台に連結することができ、また、ペリクル収納容器の搬送用台車は載置台を任意の角度で固定可能な載置台固定手段を備えているから、ペリクル収納容器を搬送する通路幅や、保管スペースに応じて、ペリクル収納容器が連結された載置台の角度を設定することが可能になるから、少なくとも一つの辺長が1000mmを越えるような大型のペリクルを収納するペリクル収納容器を安全に、かつ、少人数で運搬することができる。
【0022】
本発明の好ましい実施態様においては、前記旋回軸が、前記載置台上に、前記ペリクル収納容器を搭載したときの重心を通るように位置決めされている。
【0023】
本発明の好ましい実施態様によれば、旋回軸が、載置台上に、ペリクル収納容器を搭載したときの重心を通るように位置決めされているから、作業者が1人の場合にも、旋回軸まわりに、載置台を回転させて、容易に、ペリクル収納容器を任意の角度に固定し、ペリクル収納容器を運搬することが可能になる。
【0024】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、搬送用台車の底部に衝撃緩衝機構を有する車輪が取り付けられている。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、少なくとも一つの辺長が1000mmを越えるような大型のペリクルを収納するペリクルの収納容器で、安全に運搬することができるペリクルの収納容器を提供することが可能になる。
【0026】
また、本発明によれば、少なくとも一つの辺長が1000mmを越えるような大型のペリクルを収納するペリクルの収納容器を安全に、かつ、少人数で運搬することができるペリクル収納容器の搬送用台車を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施態様にかかるペリクルの収納容器の略平面図である。
【図2】図2は、図1に示されたペリクルの収納容器の略正面図である。
【図3】図3は、図1に示されたペリクルの収納容器の略右側面図である。
【図4】図4は、ペリクル収納容器が搭載された搬送用台車の略正面図である。
【図5】図5は、ペリクル収納容器を、水平面に対して75度の角度で傾斜させた状態を示すペリクル収納容器および搬送用台車の略正面図である。
【図6】図6は、ペリクル収納容器を、水平面に対して75度の角度で傾斜させた状態を示すペリクル収納容器および搬送用台車の略右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかるペリクルの収納容器の略平面図であり、図2は、その正面図、図3は、その右側面図である。
【0029】
図1ないし図3に示されるように、本実施態様にかかるペリクル収納容器10は、ペリクルを収納するペリクル収納容器本体11と蓋体12を備えている。
【0030】
ペリクルはペリクル収納容器本体11上に載置され、蓋体12の周縁部がペリクル収納容器本体11の内周部に嵌合されることによって、ペリクル収納容器10内に収納されるように構成されている。
【0031】
ペリクル収納容器本体11の底部には、6つの脚部13がボルト(図示せず)によって取り付けられている。
【0032】
ペリクル収納容器本体11は、PMMA、ABS、PCなどの樹脂を真空成型して、製造することができるが、より好ましくは、アルミニウム合金、マグネシウム合金などをプレス成型、鋳造などで加工し、適切な表面処理を施して、製造される。
【0033】
蓋体12は、PMMA、ABS、PCなどの樹脂を真空成型して、製造することが好ましいが、アルミニウム合金、マグネシウム合金などをプレス成型して、製造することもできる。
【0034】
ペリクル収納容器本体11には、8つの把持可能なハンドル14が取付けられており、蓋体12にも、4つの把持可能なハンドル15が取付けられている。ハンドル14、15は、合成樹脂あるいは金属によって形成されている。
【0035】
脚部13を形成するための材料としては、アルミニウム合金、鉄鋼、ステンレス鋼などの金属のほか、POM、PAなどのエンジニアリング樹脂を用いることができるが、帯電防止機能を有していることが好ましい。金属製の脚部13の加工方法としては、塊からの切削加工のほか、鋳造加工、板金加工、板金・溶接加工などを用いることができる。一方、樹脂製の脚部13の加工方法としては、射出成型、真空成型、板材の接着貼り合わせ、塊からの切削加工などを用いることができる。脚部13の材質および加工方法としては、所望の強度と寸法精度を有するものを適宜選択すればよいが、洗浄の際に、内部に洗浄水が溜まったりすることのない構造であることが好ましい。
【0036】
図4は、ペリクル収納容器10が搭載された搬送用台車の略正面図である。
【0037】
図4に示されるように、搬送用台車20は、下部に方向転換自在な車輪25が取付けられた架台部21を備え、架台部21の両端部には、支柱22が設けられている。
【0038】
ここに、車輪25は、ペリクル収納容器10の搬送中に、ペリクル収納容器に衝撃が加わり、異物が付着することを防止するために、図示しない衝撃緩衝機構を有している。
【0039】
ペリクル収納容器10は、載置台24上に取付けられた脚部受け座23上に搭載され、載置台24は、支柱22の先端部に旋回可能に取付けられた旋回軸26によって支持されている。本実施態様においては、旋回軸26の支持手段としては、ボールベアリング、クロスローラベアリングなどが用いられ、円滑に運動できるようになっている。
【0040】
ペリクル収納容器10は、ペリクル収納容器10の脚部13が、搬送用台車20の載置台24上に取付けられた脚部受け座23に嵌合することによって、搬送用台車20に搭載されるように構成されている。したがって、ペリクル収納容器10の脚部13および搬送用台車20の脚部受け座23は、ペリクル収納容器10の脚部13が脚部受け座23に嵌合するように、正確に位置決めされている。嵌合の形は、様々に設計可能であるが、ペリクル収納容器10の脚部13を、上部から脚部受け座23内に挿入しやすいこと、傾斜させた場合にも脚部受け座23が脚部13を確実に保持できること、洗浄が容易であることを考慮して、設計することが好ましい。
【0041】
このように、ペリクル収納容器10の脚部13が搬送用台車20の載置台24上に取付けられた脚部受け座23に嵌合することにより、ペリクル収納容器10が搬送用台車20に搭載されるように構成されているため、ペリクル収納容器本体11および蓋部12を設計する上での自由度が大きくなり、ハンドル14、15を所望の位置に設けることが可能になり、さらに、蓋体12を止めるためのバックルなどの機能部品を設けることが容易になる。
【0042】
載置台24を支持している旋回軸26は、搬送用台車20の載置台24上にペリクル収納容器10が搭載されたときの重心位置に設けられており、したがって、搬送用台車20の載置台24上に搭載されたペリクル収納容器10を、水平状態から垂直状態の間で傾斜させることができる。
【0043】
図4に示されるように、傾斜状態にあるときに、ペリクル収納容器10が転倒したり、落下したりすることを防止するために、搬送用台車20には、旋回するレバー型構造の脱落防止手段27が設けられている。
【0044】
図5は、ペリクル収納容器10を、水平面に対して75度の角度θで傾斜させた状態を示すペリクル収納容器10および搬送用台車20の略正面図であり、図6は、その右側面図である。
【0045】
上述のように、載置台24を支持している旋回軸26は、搬送用台車20の載置台24上にペリクル収納容器10が搭載されたときの重心位置に設けられているため、作業者1人のみで、容易に、ペリクル収納容器10を傾斜させることができる。本実施態様においては、さらに、任意の傾斜角度で、載置台24を固定することができるように、角度固定手段28を設けられている。本実施態様においては、角度固定手段28は、長孔28aとボルト28bを備え、ボルト28bを長孔28aにねじ込むことによって、水平面に対する載置台24の角度を所望の角度に設定することができるように構成されている。。
【0046】
かかる搬送用台車20に、ペリクル収納容器10を搭載して、ペリクル収納容器10を運搬するにあたっては、水平面に対する角度θが60度ないし80度になるように、ペリクル収納容器10が載置された載置台24を傾斜させて、ペリクル収納容器10を運搬し、保管することが好ましい。
【0047】
すなわち、省スペースの観点からは、ペリクル収納容器10が載置された載置台24の水平面に対する角度θが90度になるように、載置台24を垂直状態にして、ペリクル収納容器10を運搬し、保管することが好ましいが、この場合には、転倒の危険性も高まり、安全上の問題があるし、また、載置台24の水平面に対する角度θを大きくするほど、言い換えると、載置台24を垂直状態に近くするほど、横方向の幅、言い換えると、ペリクル収納容器10が載置された載置台24を水平面上に投影したときの幅が小さくなり、横方向のスペースを小さくすることができるが、その一方で、上下方向の長さが長くなり、ドアやエアシャワーなど、上方のスペースに制約がある部分を通過することが困難になるという問題がある。さらに、ペリクル収納容器10が載置された載置台24の横方向の幅を小さくして、横方向のスペースを小さくする場合には、支柱22を介して、載置台24を支持する架台部21の横幅も同様に小さくする必要があるが、架台部21の幅を狭めれば狭めるほど、搬送用台車20が不安定になり、この点からも、載置台24を垂直状態に近くすることには制約がある。したがって、搬送用台車20に、ペリクル収納容器10を搭載して、ペリクル収納容器10を運搬するにあたっては、水平面に対する角度θが60度ないし80度になるように、ペリクル収納容器10が載置された載置台24を傾斜させて、ペリクル収納容器10を運搬し、保管することが好ましい。
【0048】
本実施態様によれば、ペリクル収納容器10は、ペリクル収納容器10の脚部13を、搬送用台車20の載置台24上に取付けられた脚部受け座23に嵌合することにより、搬送用台車20に搭載されるから、ペリクル収納容器10の外周部の所望の位置に、ハンドル13など、作業者が把持可能な把持部を設けることができるから、1620×1780mmのフォトマスク用ペリクルを収納するペリクル収納容器10のように、80kgもの重量を有するペリクル収納容器10であっても、複数の作業者が協働して、容易に、搬送用台車20の載置台24上に搭載することができる。
【0049】
また、本実施態様によれば、載置台24を支持している旋回軸26が、搬送用台車20の載置台24上にペリクル収納容器10が搭載されたときの重心位置に設けられているため、作業者1人のみで、容易に、搬送用台車20の載置台24上に搭載されたペリクル収納容器10を傾斜させることができ、搬送用台車20の架台部21の下部には、方向転換自在な車輪25が取付けられているから、1620×1780mmのフォトマスク用ペリクルを収納するペリクル収納容器10のように、80kgもの重量を有するペリクル収納容器10であっても、作業者1人で、安全に、かつ、容易にペリクル収納容器10を運搬することができる。
【0050】
さらに、本実施態様によれば、水平面に対する角度θが60度ないし80度になるように、ペリクル収納容器10が載置された載置台24を傾斜させて、ペリクル収納容器10を安全に運搬することができるから、ペリクル収納容器10を運搬するのに必要な通路幅は、ペリクル収納容器10を水平にして運搬する場合の50%以下になり、また、ペリクル収納容器10を保管する場合にも、保管に必要なスペースは、ペリクル収納容器10を水平にして保管する場合の50%以下になり、省スペース化を実現することが可能になるし、搬送用台車20の架台部21の下部には、自在に方向転換可能な車輪25が取付けられているから、ペリクル収納容器10を保管している際に、ペリクル収納容器10を移動させる必要が生じた場合にも、容易に、ペリクル収納容器10を移動させることが可能になる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の効果を明らかにするため、実施例および比較例を掲げる。
【0052】
実施例
図1ないし図3に示される形状を有するペリクル収納容器10を、以下のようにして、製作した。
【0053】
ペリクル収納容器本体11はアルミニウム合金AC4Cを砂型鋳造した後、表面を研磨布で仕上げ、外周部およびペリクルが搭載される面について、フライス盤による切削加工を行い、併せて、ペリクル収納容器10の外周を基準にして、脚部13の取り付け用のネジ孔を加工した。
【0054】
以上の機械加工が終了した後、表面の巣などの鋳造欠陥をパテで仕上げ、導電性塗料を塗布し、オーブンで焼き付け乾燥を施した。
【0055】
脚部13は、厚さ4mmのSUS304冷間圧延板を曲げ加工して、製作した。脚部13のサイズは、70×80×100mmとし、M8の六角穴付ボルトによって、ペリクル収納容器本体11の下面の6箇所に取り付けた。
【0056】
次いで、厚さ3mmのPMMA板に帯電防止塗装を施した後、真空成型し、蓋体12を製作した。蓋体12の外周は、その寸法が、ペリクル収納容器本体11の外周と同じ寸法になるように、NCルーターにて切削加工した。
【0057】
こうして製作された蓋体12を、下面に6つの脚部13が取付けられたペリクル収納容器本体11に取り付けて、ペリクル収納容器10を完成させた。こうして製作されたペリクル収納容器10の重量は約80kgであった。
【0058】
さらに、図4ないし図6にされるペリクル収納容器10を載置し、搬送するための搬送用台車20を、以下のようにして、製作した。
【0059】
架台部21および支柱22は、アルミニウム合金中空押し出し材をボルト締結して、組み立て、架台部21の下部には、車輪25をボルトで取り付けた。2本ある支柱22の各々の上部には、2列配置されたクロスローラベアリングにより支持された旋回軸26が設けられている。ここに、旋回軸26の中心軸の位置が、そのまわりに旋回するペリクル収納容器10、後述する載置台24および脚部受け座23の重心に一致するように、各部材の位置を設定した。
【0060】
旋回軸26に支持される載置台24は、アルミニウム合金の中空押し出し材をボルト締結して、組み立てた。さらに、載置台24の所定の位置には、ペリクル収納容器10の脚部13が嵌合する脚部受け座23を取り付けた。ここに、脚部受け座23は、導電性MCナイロンの切削加工にて製作した。また、ペリクル収納容器10と接触する載置台24の表面には傷付き、発塵防止のため、薄い帯電防止用のPVC板を取り付けた。
【0061】
さらに、載置台22の周囲2箇所にはレバー型の脱落防止手段27を取り付けた。根元の旋回軸を中心に水平方向に0ないし90度の範囲で旋回可能な構造にした。
【0062】
また、旋回軸26の近傍の支柱22には、ノブを設けたM12のボルト28bからなる角度固定手段28を設けた。角度固定手段28は、支柱22に設けられた長孔28aにボルト28bを締め付けることによって、載置台24の角度を所望の角度に固定することができるように構成した。
【0063】
以上のように構成された搬送用台車20の載置台24上に取り付けられた脚部受け座23内に、ペリクル収納容器10の脚部13を嵌合して、搬送用台車20の載置台24上にペリクル収納容器10を搭載した後に、1人の作業者が、図6に示されるように、水平面に対する載置台24の角度θが75度になるように、ペリクル収納容器10が搭載された載置台24を傾斜させたが、容易に、ペリクル収納容器10が搭載された載置台24を傾斜させることができ、さらに、1人の作業者が、ペリクル収納容器10が搭載された搬送用台車20を移動させたが、危険を感じることがなかった。
【0064】
また、ペリクル収納容器10が搭載された搬送用台車20を移動させる際に必要な通路幅は、若干の余裕を見ても、約1500mmであった。
【0065】
比較例
実施例と全く同様にして製作したペリクル収納容器10を水平状態に保ちつつ、8人の作業者によって搬送した。各作業者は、ペリクル収納容器本体11のハンドル14を把持して、ペリクル収納容器10を搬送した。
【0066】
各作業者が分担する重量は約10kgであり、やや重いが、搬送作業に支障はなかった。
【0067】
しかしながら、ペリクル収納容器10を搬送するために必要な通路幅を計測してみたところ、2500mm以上の通路幅が必要であり、安全に作業できる余裕を考えるとおよそ3000mmの通路幅が必要であった。
【0068】
本発明は、以上の実施態様および実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0069】
たとえば、前記実施態様および実施例においては、ペリクル収納容器本体11の底部に、6つの車輪25が取り付けられているが、車輪25の数は、ペリクル収納容器10の剛性に応じて決定することが好ましく、6つの車輪25がペリクル収納容器本体11の底部に取り付けられていることは必ずしも必要でなく、少なくとも4つの車輪25が取付けられていればよい。
【0070】
さらに、前記実施態様においては、脱落防止手段27が旋回するレバー型の構造を有しているが、脱落防止手段27が旋回するレバー型の構造を有していることは必ずしも必要でなく、他の構造の脱落防止手段を選択することもできる。
【0071】
また、前記実施態様においては、角度固定手段28が、支柱22に形成された長孔28aにボルト28bを締め付けることによって、載置台24の角度を所望の角度に固定するように構成されているが、角度固定手段28が、支柱22に形成された長孔28aにボルト28bを締め付けることによって、載置台24の角度を所望の角度に固定するように構成されていることは必ずしも必要でなく、載置台24を所望の角度に固定することができるように、支柱22にメス孔を形成し、メス孔内にピンを差し込むことによって、載置台24を所望の角度に固定するなど、種々の構成を有する角度固定手段を用いることができる。
【0072】
さらに、前記実施態様においては、車輪25は、ペリクル収納容器10の搬送中に、ペリクル収納容器に衝撃が加わり、異物が付着することを防止するために、図示しない衝撃緩衝機構を有しているが、車輪25が衝撃緩衝機構を有していることは必ずしも必要でなく、搬送用台車20の架台部21の底部に、通常の車輪を取り付けることもできる。
【符号の説明】
【0073】
10 ペリクル収納容器
11 ペリクル収納容器本体
12 ペリクル収納容器の蓋体
13 ペリクル収納容器の脚部
14 ハンドル
15 ハンドル
20 搬送用台車
21 架台部
22 支柱
23 脚部受け座
24 載置台
25 車輪
26 旋回軸
27 脱落防止手段
28 角度固定手段
28a 長孔
28b ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの辺長が1000mm以上のペリクルを載置するペリクル収納容器本体と、その周縁部が前記ペリクル収納容器本体の開口部に嵌合することによって、前記ペリクルを前記ペリクル収納容器本体との間に収納可能な蓋体と、前記ペリクル収納容器本体の底部に設けられた少なくとも4つの互いに離間する脚部とを備えたペリクル収納容器であって、前記脚部が、ペリクル収納容器を搬送する搬送手段の回動可能な載置台に嵌合可能に構成されたことを特徴とするペリクル収納容器。
【請求項2】
少なくとも一つの辺長が1000mm以上のペリクルを載置するペリクル収納容器本体と、その周縁部が前記ペリクル収納容器本体の開口部に嵌合することによって、前記ペリクルを前記ペリクル収納容器本体との間に収納可能な蓋体と、前記ペリクル収納容器本体の底部に設けられた少なくとも4つの互いに離間する脚部とを備えたペリクル収納容器を搬送するペリクル収納容器の搬送用台車であって、旋回可能な旋回軸によって支持され、その上に、前記ペリクル収納容器が載置可能な載置台と、前記載置台を任意の角度で固定可能な載置台固定手段を備えたペリクル収納容器の搬送用台車であって、前記載置台に、前記ペリクル収納容器の前記脚部が嵌合可能な連結部を備えたことを特徴とするペリクル収納容器の搬送用台車。
【請求項3】
前記旋回軸が、前記載置台上に、前記ペリクル収納容器を搭載したときの重心を通るように位置決めされていることを特徴とする請求項2に記載のペリクル収納容器の搬送用台車。
【請求項4】
底部に衝撃緩衝機構を有する車輪が取り付けられていることを特徴とする請求項2または3に記載のペリクル収納容器の搬送用台車。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−203309(P2011−203309A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67952(P2010−67952)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】