説明

ペリクル用収納容器

【課題】摩耗粉を低減できるペリクル用収納容器を提供する。
【解決手段】ペリクル膜6と当該ペリクル膜6を支持する支持枠7とからなるペリクル5を輸送するためのペリクル用収納容器1であって、トレイ3とその蓋となるカバー2と、トレイ3とカバー2の外側または内側において、トレイ3とカバー2との隙間を塞ぐ閉塞部材4とを備え、閉塞部材4における少なくとも上記トレイまたは上記カバーに接する接触部がウレタンエラストマーからなるペリクル用収納容器1としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペリクル膜とペリクル膜を支持する支持枠とからなるペリクルを輸送するためのペリクル用収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体回路パターンの製造工程の一部であるリソグラフィ工程で使用されるフォトマスク上に異物が付着すると、その異物のパターンが転写され、半導体チップの多くを不良品としてしまう危険性がある。このため、従来からフォトマスクの防塵を目的に、ペリクルが用いられている。
【0003】
ペリクルは、一般的に、ニトロセルロース等の透明な高分子膜からなる厚さ約10ミクロン程度のペリクル膜と、それを一方の周端面にて支持する厚さ数ミリ程度の支持枠とから構成されている。支持枠におけるペリクル膜と反対側の周端面には、フォトマスクに支持枠を固定するための剥離シート付きの粘着材が備えられている。粘着材は、ペリクルをフォトマスク上に配置した際にフォトマスクと支持枠との間に隙間ができないよう、均一の厚みをもって備え付けられている。
【0004】
フォトマスクに支持枠を固定する際には、フォトマスクの上方にペリクル膜が配置されるようにペリクルをセッティングし、剥離シートを剥がして粘着材を介して支持枠をフォトマスクに固定して、フォトマスク上に異物が入ることを防止するようにしている。
【0005】
また、近年、ペリクルは、液晶表示体の製造工程におけるリソグラフィ工程で使用されるフォトマスクの防塵手段としても多用されてきている。液晶表示体は、シリコンウェハに比べて大きな面積を有することから、フォトマスクも大型化している。これに伴いペリクル膜も大型化してきており、1000mm×1000mm以上の大型ペリクル膜も多く使用されている。
【0006】
一般に、ペリクルを製造元から使用者に輸送するには、樹脂製のペリクル用収納容器が用いられる。ペリクル用収納容器は、主に、ペリクルを載置するトレイと、そのトレイの上から被せる蓋とから構成される。トレイと蓋とを固定する方法としては、例えば、両者の外周部を互いに密着する方向に挟みつける固定部品(クリップ)で固定する方法が知られている(特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開平7−142562号公報(段落番号0015、図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来から使用されるクリップは、ポリプロピレン製あるいはポリエチレン製のものであり、トレイと蓋とを挟みつける保持力、クリップ自身の強度の点で優れた特性を有している。しかし、ポリプロピレン製あるいはポリエチレン製のクリップを使用する場合、トレイと蓋との分離および嵌合の度にトレイおよび蓋と擦れ合い、トレイおよび蓋との摩擦により摩耗粉が生成することも危惧される。このことから、かかる摩耗粉をより少なくするためのペリクル用収納容器が求められていた。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、トレイおよび蓋とクリップとの摩擦により生成する摩耗粉を低減できるペリクル用収納容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、ペリクル膜と当該ペリクル膜を支持する支持枠とからなるペリクルを輸送するためのペリクル用収納容器であって、トレイとその蓋となるカバーと、トレイとカバーの外側または内側においてトレイとカバーとの隙間を塞ぐ閉塞部材とを備え、その閉塞部材における少なくともトレイまたはカバーに接する接触部がウレタンエラストマーからなるペリクル用収納容器としている。このため、トレイおよびカバーと閉塞部材との間の摩擦により生成する摩耗粉を低減できる。
【0010】
また、別の本発明は、閉塞部材を、トレイとカバーの内側に配置され、トレイおよびカバーの各対向面の少なくともいずれか一方の面に備えられるウレタンエラストマー製のシール部材としたペリクル用収納容器としている。このように、トレイとカバーの隙間にウレタンエラストマー製のシール部材が挟持されているので、摩耗粉を低減でき、かつ当該隙間から異物が入ってくる危険性も低減できる。
【0011】
また、別の本発明は、トレイとカバーを挟持して固定するクリップを、さらに備えたペリクル用収納容器としている。このため、閉塞部材がトレイとカバーとを強固に挟持する役割を有しない場合であっても、クリップを用いることによって、トレイとカバーに囲まれた空間内に外部から異物が入る危険性を低減できる。一方、閉塞部材がトレイとカバーを強固に挟持する役割を有する場合には、より確実に異物の侵入を低減できる。
【0012】
また、別の本発明は、ウレタンエラストマーが、主なポリオールとしてポリエーテルポリオールを使用して製造されたペリクル用収納容器としている。このため、閉塞部材の一部または全部が空気中の水分によって加水分解する可能性を低くすることができ、ペリクル用収納容器を長期にわたって使用できる。
【0013】
また、別の本発明は、ペリクル膜と当該ペリクル膜を支持する支持枠とからなるペリクルを輸送するためのペリクル用収納容器であって、トレイと、その蓋となるカバーと、トレイとカバーとを挟持して固定するクリップとを備え、クリップを、ウレタンエラストマーからなるものとしたペリクル用収納容器としている。このため、トレイおよびカバーとクリップとの間の摩擦により生成する摩耗粉を低減できる。
【0014】
また、別の本発明は、先の各発明におけるクリップを、そのショアー硬度がA80以上のウレタンエラストマーからなるものとしたペリクル用収納容器とするようにしている。このため、クリップの強度がより高くなり、挟持力をより長期間保持できる。硬度の調整は、ポリオールと鎖延長剤の比率を変化させることで行う。
【0015】
また、別の本発明は、先の各発明におけるクリップを、主なポリオールとしてポリエーテルポリオールを使用して製造されるウレタンエラストマーからなるものとしたペリクル用収納容器とするようにしている。このため、より長期間、保持力を維持可能なクリップとすることができる。ポリエーテルポリオールを主に用いて製造されるエラストマーは、ポリエステルを主に用いて製造されるエラストマーに比べて、加水分解されにくい。これは、エステル結合が加水分解しやすいからである。したがって、クリップが空気中の水分によって加水分解する可能性を低くすることができ、ペリクル用収納容器を長期にわたって使用できる。
【0016】
本発明に係るペリクル用収納容器を構成するトレイとカバーとの隙間を塞ぐ閉塞部材(クリップ、シール部材を包含する広義の部材)は、ウレタン結合を有するゴム状弾性体であるウレタンエラストマーから成る。ウレタンエラストマーは、ポリオール(通常、ポリエーテルまたはポリエステル)とイソシアネート(R−N=C=O)とを反応させて製造される、ウレタン結合(−NH−CO−O−)を持つエラストマーである。ウレタンエラストマーの化学式は、一般的に、−(O−R’−OCO−NH−R−NHCO)−で表される。この化学式中、R’は、通常、ポリエーテルまたはポリエステルである。
【0017】
ポリオールとしてポリエーテルポリオール等のポリエーテルを用いて製造されるウレタンエラストマーは、ポリエーテル系ウレタンエラストマーといい、ポリオールとしてポリエステルポリオール等のポリエステルを用いて製造されるウレタンエラストマーは、ポリエステル系ウレタンエラストマーという。ただし、ポリエーテルおよびポリエステル以外のポリオールとして、ヒドロキシ末端ポリブタジエン及び部分的/完全に水素添加した誘導体、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール等を用いて製造されるウレタンエラストマーも、本発明に係るペリクル用収納容器に用いられる閉塞部材の材料として用いることができる。
【0018】
本発明に係るペリクル用収納容器を構成するトレイおよびカバーの材料には、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(アクリロニトリル、ブタジエンおよびスチレンの3種類の単量体からなる共重合体であり、以後、「ABS樹脂」という。)の他、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂等を用いることができ、特に、ABS樹脂を用いるのがより好ましい。ただし、上述の樹脂は一例に過ぎず、他の樹脂材料を採用しても良い。
【0019】
ウレタンエラストマーは、OH基を末端に持つポリオールあるいは鎖延長剤と、NCO基を持つジイソシアネートとを重合することによって製造され、ポリオールとジイソシアネート(OCN−R−NCO)との重合によって形成されるソフトセグメント(−O〜O−CO−NH−R−NH−CO−)と、鎖延長剤(HO−(CH−OH)とジイソシアネート(OCN−R−NCO)との重合によって形成されるハードセグメント(−O−(CH−O−CO−NH−R−NH−CO−)とから構成されている。一般的に、ポリマー鎖は、類似した構造が集まりやすい性質を有するため、上記2種類のセグメントは、それぞれ集合した状態で存在する。
【0020】
閉塞部材を含めたペリクル用収納容器は、ペリクルへの塵、微粒子等の付着を防止すべく、純粋で洗浄される。この際、閉塞部材の材料にエステル結合が含まれていないほど、加水分解しにくくなり、長期間の使用に耐える。なお、ポリエーテルポリオールを主に用いて製造されるウレタンエラストマーは、上述のポリエーテル系ウレタンエラストマーに限定されず、ポリエーテルポリオールが主であれば、ポリエステルポリオールを含めて製造されたウレタンエラストマーも含むように広義に解釈される。本発明に係るペリクル用収納容器は、好適には真空成形にて製造される。ここで、「真空成形」とは、軟化状態の樹脂を金型に配置して、その樹脂と金型との間の空間を真空にすることによって、樹脂を金型に吸い付けて成形する方法をいい、金型への樹脂の供給方法は問わない。したがって、シート形状の樹脂を金型に配置したり、あるいは溶融状態の樹脂を金型に吐出しても良い。真空成形の例としては、雌型を用いるストレート法、雄型によるドレープ法、樹脂シートを半球状にふくらませてその中に雄型を入れて成形するエアスリップ法、エアスリップ法で用いられる雄型の代わりに雌型を用いるリバースドロー法、雌型上にクランプした樹脂シートをプラグで雌型に突き降ろし、樹脂シートを予張して真空にひく補助プラグ法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、真空成形以外に、樹脂側から金型方向にガス圧を及ぼして成形する圧空成形、当該圧空成形と真空成形の両方を組み合わせた圧空真空成形によって製造することもできる。また、真空成形、圧空成形、圧空真空成形以外の成形方法を採用しても良い。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、トレイおよび蓋と閉塞部材との摩擦により生成する摩耗粉を低減できるペリクル用収納容器となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係るペリクル用収納容器の好適な各実施の形態について、図面を参照しながら詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るペリクル用収納容器の分解斜視図である。また、図2は、図1に示すペリクル用収納容器にクリップを装着する状態を示す斜視図である。
【0024】
図1および図2に示すように、ペリクル用収納容器1は、トレイ3と、その蓋であるカバー2とを備えている。カバー2とトレイ3とは、互いの外周部において重ね合わせるように接合できる構造を有している。ペリクルをペリクル用収納容器1内に収納して輸送する際には、カバー2とトレイ3の両外周部に、当該外周部を挟持して固定するためのクリップ4が装着される。本実施の形態では、カバー2およびトレイ3は共に矩形の凹状体としているので、クリップ4は、カバー2とトレイ3とが密着する四辺に装着できるように、4個用意される。ただし、四辺に各1個のクリップ4を装着せずに、各辺に複数のクリップを装着したり、各辺毎の装着個数を変えたり、一部の辺にクリップを装着しなくてもよい。
【0025】
クリップ4は、カバー2とトレイ3との両外周部を挟持する部分がへこむ凹形状を有している。クリップ4は、ポリエーテルポリオールおよび鎖延長剤と、ジイソシアネートとを重合させて製造したウレタンエラストマーの成形体である。クリップ4の材料をウレタンエラストマーとすることにより、クリップ4と、ABS樹脂製のトレイ3およびカバー2との着脱を繰り返しても、摩耗粉等が発生しにくい。したがって、ペリクル用収納容器1内への摩耗粉の混入の危険性がほとんどなく、よってペリクルの汚染の危険性が低くなる。
【0026】
なお、カバー2とトレイ3とをウレタンエラストマーあるいはそれより低硬度の材料で製造することは理論的には可能ではある。しかし、ペリクル用収納容器の材料は、ウレタンエラストマーの硬度以上の硬度を持つ材料でなければ実用に耐えない。したがって、クリップ4は、常に、カバー2およびトレイ3よりも低硬度の材料になる。この結果、カバー2およびトレイ3がクリップ4との摩擦により削れる危険性はほとんどなくなる。
【0027】
また、ウレタンエラストマーは、それより高い硬度を持つカバー2およびトレイ3との間で摩擦が生じても、削れにくい。したがって、ペリクル用収納容器1内へのクリップ4の摩耗粉の混入の危険性がほとんどなく、よってペリクルの汚染の危険性が低くなる。
【0028】
ウレタンエラストマーの耐摩耗性を調べるために、ウレタンエラストマー、オレフィン系エラストマー、軟質塩化ビニルおよび天然ゴムの4種材料の摩擦減量テーパー式H18摩擦輪を使用した摩耗試験を行った。その結果、上記材料の各摩耗減量は、それぞれ、30〜60mg、約340mg、約485mgおよび280mgであった。この結果から、ウレタンエラストマーが極めて耐摩耗性に優れた材料であることがわかった。
【0029】
第1の実施の形態に係るペリクル用収納容器1に使用するクリップ4の原料であるポリエーテルポリオールは、同じ原料となる鎖延長剤よりも重量比率が高い。ポリエーテルポリオールと鎖延長剤との重量比率を調整することにより、ウレタンエラストマーのショアー硬度を変化させることができる。ポリエーテルポリオールの重量比率を高くするほど、ウレタンエラストマー中のソフトセグメントの比率が高くなり、ショアー硬度も低くなる。
【0030】
第1の実施の形態では、クリップ4のショアー硬度は、約A90である。ただし、ショアー硬度は、A90に限定されるものではない。ショアー硬度をA80以上とすると、クリップ4の強度がより高くなり、挟持力をより長期間保持できる。
【0031】
カバー2およびトレイ3は、元板の厚さが約3mmのABS樹脂を原料とし、真空成形用金型を用いた真空成形法により製造される。ただし、ABS樹脂以外の樹脂を用いても良い。さらに、元板の厚みは3mmに限定されず、3mmより薄いあるいは3mmを超える板状の樹脂を成形してもよい。すなわち、ペリクル用収納容器1の大きさは、特に限定されない。
【0032】
図3は、図2に示すペリクル用収納容器1にクリップ4を装着した状態において、A−A線にて切断した際の断面図である。
【0033】
カバー2は、トレイ3と対向する側に開口部を有する凹状体である。カバー2は、平面形状のカバー天面20と、当該カバー天面20から開口方向に広がるように筒状に形成される側面21と、当該側面21から水平に外方向に延出される水平面22と、当該水平面22から開口方向に広がるように筒状に形成される側面23と、当該側面23から水平に外方向に延出される水平面24と、当該水平面24から略垂直上向きに延びる垂直面25と、当該垂直面25から水平に外方向に延出される水平面26とを備えている。
【0034】
一方、トレイ3は、カバー2と対向する側に、丘を形成すると共に開口部を有する凹状体である。トレイ3は、側面21の開口面積よりも大きい平面形状のトレイ底面30と、当該トレイ底面30からその周囲にカバー2と逆側に下方傾斜させた斜面31と、当該斜面31から水平に外方向に延出される水平面32と、当該水平面32から略垂直上向きに延びる垂直面33と、当該垂直面33から水平に外方向に延出される水平面34とを備えている。
【0035】
カバー2の水平面22とトレイ底面30とは、上下方向に対向する重複部分を有しており、この部分で、後述するペリクルの支持枠が挟持される。また、カバー2の水平面24、垂直面25および水平面26とから構成されるクランク形状部分は、トレイ3の水平面32、垂直面33および水平面34から構成されるクランク形状部分とほぼ同じ形状であり、カバー2側のクランク形状部分の下面がトレイ3側のクランク形状部分の上面と密着可能となっている。カバー2の水平面26とトレイ3の水平面34とは、上述のクリップ4で挟持されて固定される。
【0036】
図4は、図3に示すペリクル用収納容器1に収納するペリクル5を図2に示すA−A線で切断した際の断面図である。
【0037】
ペリクル5は、ニトロセルロース等の材質からなる厚さ10ミクロン以下のペリクル膜6を、四角枠形状の支持枠7の一方の端面(図4における上面)に展張して張り付けた構成を有している。支持枠7の高さは、約5mmである。ただし、ペリクル膜5の材質および厚さならびに支持枠7の高さは、上記に限定されるものではない。
【0038】
図4におけるXで示される部分の拡大図に示すように、支持枠7におけるペリクル膜6と反対側の周端面(底面)には、粘着材8が備えられている。粘着材8の表面には、通常、薄い剥離シート(不図示)が貼られている。ペリクル5を使用する場合には、当該剥離シートを粘着材8から剥がして、粘着力を発揮し得る状態としてから、支持枠7をフォトマスクに貼り付けて固定する。
【0039】
図5は、図3に示すペリクル用収納容器1内に、図4に示すペリクル5を収納した状態を示す図である。
【0040】
ペリクル5は、その支持枠7の底面をトレイ底面30に載置し、支持枠7の上面をカバー2の水平面22に接触させた状態で、ペリクル用収納容器1内に収納される。このように、支持枠7の高さ方向をカバー2とトレイ3とで挟持した状態にて輸送されるので、ペリクル5がペリクル用収納容器1内で動く危険性は低くなる。
【0041】
また、上述のクリップ4以外の形態を有するクリップを採用することもできる。例えば、カバー2の垂直面25とトレイ3の垂直面33とを挟持するクリップ、カバー2の水平面24とトレイ3の水平面32とを挟持するクリップ、カバー2の水平面26とトレイ3の水平面32とを挟持するクリップ、あるいはカバー天面20とトレイ底面30とを挟持するクリップを採用してもよい。
【0042】
また、直線形状の4つのクリップ4を採用する以外に、1つの直線形状のクリップ4と、3つの直線形状のクリップ4を一体化したクリップとを採用してもよい。さらに、カバー2とトレイ3とを接合した状態において、互いの4つの角部のみを挟持するクリップを採用してもよい。このように、クリップは、カバー2とトレイ3とを密着させる方向に固定させる部材であれば、その個数および形状は問わない。
【0043】
図6は、図1〜図5に示す形態と異なる形態を持つペリクル用収納容器1の一例を示す図である。
【0044】
なお、図6は、図2に示すA−A線と同様の線で切断した際の断面図を示している。図6では、クリップ4は、見やすくするため白抜きで示している。また、図7は、図6に示すペリクル用収納容器1に用いられるクリップ4の拡大斜視図である。
【0045】
図6に示すペリクル用収納容器1は、図1〜図5に示すペリクル用収納容器1と異なり、カバー2の垂直面25からトレイ3の水平面32までを覆うように接して、カバー2とトレイ3とを狭持するクリップ4を備えている。また、図7に示すように、クリップ4は、図2で示したクリップ4と異なり、カバー2とトレイ3との各辺につき所定間隔おきに複数箇所で狭持する比較的短い長さを有している。
【0046】
図7に示すクリップ4は、平板41と、平板41からわずかに曲げた平板42と、平板42から平板42を曲げた方向と同じ方向に略直角に曲げた平板43とを備え、平板41と平板42との曲部にその内側に突出する凸部44を、また平板43の先端に平板42と略平行となる方向に突出する凸部45を、それぞれ有している。また、平板41の内側(凸部44のある側)には、平板41と略垂直に伸びる平板46が備えられている。平板46には、平板41と平行よりやや内側に向かって伸びる平板47が備えられている。平板47は、平板41とほぼ同じ長さであり、その先端に、凸部44と対向するように凸部48を有している。
【0047】
このような形態のクリップ4を用いてカバー2とトレイ3を挟持するには、平板47と平板41との間を拡げ、かつ平板42を平板41と一直線になる方向に拡げて、カバー2とトレイ3との端部に被せる。その後、クリップ4は、その復元力で元の形状にほぼ戻る。クリップ4は、カバー2およびトレイ3よりも弾性に富む材質から成るため、カバー2およびトレイ3を合わせた部分の形状に沿って、カバー2とトレイ3とを狭持する。
【0048】
このように、カバー2とトレイ3とを比較的広い面積にて狭持可能なクリップ4を採用すると、ペリクル用収納容器1の狭持力を高めることができる。また、クリップ4の長さは、ペリクル用収納容器1の各辺を部分的に狭持する長さとしているので、クリップ4の小型化を図ることができる。
【0049】
(第2の実施の形態)
次に、本発明に係るペリクル用収納容器の第2の実施の形態について、説明する。
【0050】
図8は、第2の実施の形態に係るペリクル用収納容器1を、図2に示すA−A線と同様の線で切断した際の断面図を示している。また、図9は、図8に示すペリクル用収納容器1に用いられる閉塞部材の一例である複合クリップ50の拡大斜視図である。
【0051】
図8および図9に示す複合クリップ50は、図6および図7に示すクリップ4と同じ形状を有する。しかし、複合クリップ50とクリップ4とは、次の点で異なっている。クリップ4は、ウレタンエラストマーのみで構成されている。これに対して、複合クリップ50は、金属あるいは樹脂と、ウレタンエラストマーとから構成されている。具体的には、複合クリップ50の骨格部分である本体51は、金属あるいは樹脂で構成され、カバー2およびトレイ3に接触して押さえている接触部52は、ウレタンエラストマーにて構成されている。
【0052】
複合クリップ50は、上記形態以外に、本体51の内面全体にウレタンエラストマー製のシートを貼り付け、そのシートとカバー2およびトレイ3との接触部分のみを突出させても良い。本体51と接触部52との接合は、接着、溶着、嵌め込み等のいずれの方法で行っても良い。
【0053】
複合クリップ50は、カバー2およびトレイ3とを押さえる接触部分にのみウレタンエラストマーからなる接触部52を採用している。このような形態であっても、第1の実施の形態に係るペリクル用収納容器1と同様、摩耗粉の発生を低減できる。加えて、本体51を金属製あるいは樹脂製とすることにより、複合クリップ50の挟持力をより高めることも可能である。
【0054】
(第3の実施の形態)
次に、本発明に係るペリクル用収納容器の第3の実施の形態について、説明する。
【0055】
図10は、ペリクル用収納容器1のカバー2の端部とトレイ3の端部に、閉塞部材の一例であるカバーシート60を覆い、その上からクリップ61で固定する状況を示す部分拡大斜視図である。図11は、第3の実施の形態に係るペリクル用収納容器1を、図2に示すA−A線と同様の線で切断したときの、図10に示す部分の断面図である。なお、図11では、見易さを考慮して、カバーシート60を白抜きで示している。
【0056】
第3の実施の形態に係るペリクル用収納容器1は、カバー2とトレイ3の端部をウレタンエラストマー製のカバーシート60にて覆い、その外側からクリップ61を装着する構造を採用している。このように、カバー2およびトレイ3と直接接触する部分にウレタンエラストマー製のカバーシート60を使用しているため、摩耗粉の発生を低減する効果が得られる。加えて、クリップ61を金属製あるいは樹脂製とすることにより、カバー2とトレイ3を固定する力をより高めることも可能である。
【0057】
(第4の実施の形態)
次に、本発明に係るペリクル用収納容器の第4の実施の形態について、説明する。
【0058】
図12は、ペリクル用収納容器1のカバー2とトレイ3の接触面に閉塞部材の一例であるシール部材70を配し、カバー2とトレイ3の端部をクリップ4で固定する状況を示す部分拡大斜視図である。クリップ4の構造は、図7に示すクリップ4と同じ構造である。図13は、第4の実施の形態に係るペリクル用収納容器1を、図2に示すA−A線と同様の線で切断したときの、図12に示す部分の断面図である。なお、図13では、見易さを考慮して、シール部材70を白抜きで示している。
【0059】
図12および図13に示すように、第4の実施の形態に係るペリクル用収納容器1は、カバー2とトレイ3との隙間にウレタンエラストマー製のシール部材70を介在させて、シール部材70を挟むようにカバー2の内面とトレイ3の内面を重ねる構造を有している。このような構造の採用により、クリップ4をウレタンエラストマー製とするか否かにかかわらず、ペリクル用収納容器1の内部への摩耗粉の侵入を防止することができる。クリップ4を金属あるいは樹脂で構成すると、カバー2とトレイ3を固定する力をより高めることも可能である。また、固定するシール部材70をトレイ3に接着し、シール部材70におけるカバー2との接触面に凹凸を形成することにより、カバー2とシール部材70との接触面積を小さくすることができる。この結果、シール部材70およびカバー2からの摩耗粉を低減できる。
【0060】
なお、シール部材70をカバー2に接着し、シール部材70におけるトレイ3との接触面に凹凸を形成するようにしても良い。また、シール部材70をカバー2またはトレイ3に固定することなく、カバー2とトレイ3の間にシール部材70を挟んで、クリップ4にて固定するようにしても良い。また、シール部材70を、カバー2とトレイ3の両水平面に介在させるのではなく、当該水平面から上方に立ち上がった部分に介在させるようにしても良い。さらに、シール部材70の表面に凹凸を形成する形態は、必須の形態ではない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、ペリクルを輸送するための収納容器を製造あるいは使用する産業において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態に係るペリクル用収納容器の分解斜視図である。
【図2】図1に示すペリクル用収納容器にクリップを装着する状況を示す斜視図である。
【図3】図2に示すペリクル用収納容器にクリップを装着した状態において、A−A線にて切断した際の断面図である。
【図4】図3に示すペリクル用収納容器に収納するペリクルを、図2に示すA−A線と同様の線で切断した際の断面図である。
【図5】図3に示すペリクル用収納容器内に、図4に示すペリクルを収納した状態の断面図である。
【図6】図1〜図5に示す形態と異なる形態を持つペリクル用収納容器の一例を示す図であり、図2に示すA−A線と同様の線で切断した際の断面図である。
【図7】図6に示すペリクル用収納容器に用いられるクリップの拡大斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係るペリクル用収納容器を、図2に示すA−A線と同様の線で切断した際の断面図である。
【図9】図8に示すペリクル用収納容器に用いられる閉塞部材(複合クリップ)の拡大斜視図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係るペリクル用収納容器のカバーの端部とトレイの端部に、閉塞部材(カバーシート)を覆い、その上からクリップで固定する状況を示す部分拡大斜視図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係るペリクル用収納容器を、図2に示すA−A線と同様の線で切断したときの、図10に示す部分の断面図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係るペリクル用収納容器のカバーとトレイの接触面に、閉塞部材(シール部材)を配し、カバーとトレイの端部をクリップで固定する状況を示す部分拡大斜視図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態に係るペリクル用収納容器を、図2に示すA−A線と同様の線で切断したときの、図12に示す部分の断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 ペリクル用収納容器
2 カバー
3 トレイ
4 クリップ(閉塞部材の一例)
5 ペリクル
6 ペリクル膜
7 支持枠
8 粘着材
20 カバー天面
21 側面
22 水平面
23 側面
24 水平面
25 垂直面
26 水平面
30 トレイ底面
31 斜面
32 水平面
33 垂直面
34 水平面
50 複合クリップ(閉塞部材の一例)
52 接触部
60 カバーシート(閉塞部材の一例)
61 クリップ
70 シール部材(閉塞部材の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペリクル膜と当該ペリクル膜を支持する支持枠とからなるペリクルを輸送するためのペリクル用収納容器であって、
トレイと
その蓋となるカバーと、
上記トレイと上記カバーの外側または内側において、上記トレイと上記カバーとの隙間を塞ぐ閉塞部材とを備え、
上記閉塞部材における少なくとも上記トレイまたは上記カバーに接する接触部がウレタンエラストマーからなることを特徴とするペリクル用収納容器。
【請求項2】
前記閉塞部材は、前記トレイと前記カバーの内側に配置され、前記トレイおよび前記カバーの各対向面の少なくともいずれか一方の面に備えられるウレタンエラストマー製のシール部材であることを特徴とする請求項1に記載のペリクル用収納容器。
【請求項3】
前記トレイと前記カバーを挟持して固定するクリップを、さらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載のペリクル用収納容器。
【請求項4】
前記ウレタンエラストマーは、主なポリオールとしてポリエーテルポリオールを使用して製造されるものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のペリクル用収納容器。
【請求項5】
ペリクル膜と当該ペリクル膜を支持する支持枠とからなるペリクルを輸送するためのペリクル用収納容器であって、
トレイと
その蓋となるカバーと、
上記トレイと上記カバーを挟持して固定するクリップとを備え、
上記クリップは、ウレタンエラストマーからなることを特徴とするペリクル用収納容器。
【請求項6】
前記クリップは、そのショアー硬度がA80以上のウレタンエラストマーからなることを特徴とする請求項5に記載のペリクル用収納容器。
【請求項7】
前記クリップは、主なポリオールとしてポリエーテルポリオールを使用して製造されるウレタンエラストマーからなることを特徴とする請求項5または6に記載のペリクル用収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−128030(P2007−128030A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142826(P2006−142826)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】