説明

ペリクル用梱包箱

【課題】少なくともひとつの辺長が1000mmを超えるような特に大型のペリクルを収納したペリクル収納容器を傾斜及び脱落させることなく安定にかつ清浄な状態を保ち保管するとともに、ペリクル収納容器及び収納されているペリクルに十分な緩衝能力を発揮して衝撃や振動を与えず、輸送及び運搬することが可能なペリクル用梱包箱を提供する。
【解決手段】ペリクル用梱包箱1は、少なくともひとつの辺長が1000mmを超えるペリクルを収納するペリクル収納容器30を保管及び/又は輸送するための梱包箱であって、該梱包箱の内部底面に、該ペリクル収納容器の外部底面に突出した複数の脚部33を夫々挿入する凹みを有する複数の緩衝体18が、分離して取り付けられているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス、プリント基板、大規模集積回路、液晶ディスプレイを製造する際のゴミよけとして使用されるペリクルを収納している容器を輸送及び保管する梱包箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大規模集積回路などの製造において、半導体ウエハや液晶用ガラス原板に光を照射してパターンを作製する際に用いるレチクルであるフォトマスクにゴミが付着していると、このゴミが光を遮ったり、曲げたりしてしまうために、転写したパターンが損なわれるという問題があった。このため、これらの作業は通常クリーンルーム内で行われているが、それでもフォトマスクを常に清浄に保つ事が難しく、フォトマスク表面にゴミよけとして、ペリクルを貼付する方法が取られている。
【0003】
貼付けられたペリクルにより、異物はフォトマスクの表面上には直接付着せず、ペリクル上に付着するため、リソグラフィー時に焦点をフォトマスクのパターン上に合わせておけば、ペリクル上の異物は転写に無関係となる。このペリクルは、ペリクルフレームの上端面に、通常光を十分に透過させる透明なペリクル膜が、溶媒を塗布して風乾させ接着され、又は接着剤で接着され、更にペリクルフレームの下端面に、フォトマスクに装着するための粘着層、及び粘着層の保護を目的とした離型層(セパレータ)が設けられているものである。
【0004】
また、近年、液晶ディスプレイの大型化に伴い、液晶用フォトマスクやペリクルも大型化が進んでおり、辺長が1000mmを超えるような極めて大きなものが出現している。このようなペリクルは当然、それを収納する容器も大型になり、かつ大型化に伴い収納容器の剛性を高める必要が出てくるため、それに伴う重量の増加も著しい。
【0005】
このようなペリクル収納容器を運搬する場合、重量、サイズの問題から、人手での運搬が困難になってくる。辺長が1000mmを超えるような特に大型のペリクルの運搬作業は、工数が極めて大きなものであるとともに、落下等させた場合には作業者に重大な損傷を与える恐れがあり、極めて危険が伴う作業であるため、フォークリフトなどのフォーク型搬送手段が用いられる。そのため、ペリクル収納容器の外部底部にはフォーク差込みを考慮して、突出した脚部が設けられる。
【0006】
このようなペリクル収納容器を収納し、輸送するための梱包箱は、図8に示すようにペリクル収納容器に衝撃を与えないようにするため、内部底面に底面緩衝体81及び内部側面に側面緩衝体14を配置し、ペリクル収納容器30を支持するように構成される。ここで、ペリクル辺長が500mmを超えるような大型のペリクル収納容器の場合、緩衝体の単位面積当たりの荷重が小さくなり、緩衝能力が発揮できないことがある。その様な場合、緩衝体の接触面積を減少させることで、緩衝能力を高めることができる(特許文献1)。一方、辺長が1000mmを超えるような極めて大型のペリクルの場合、ペリクル収納容器がかなりの重量となるため、硬度を適切に設計することが難しい。緩衝体の沈み込み初期の緩衝性と大きな衝撃が加わった際の底付き防止との両立が難しいためである。
【0007】
さらには、水平方向の衝撃に対して緩衝能力を発揮しにくいという問題がある。ペリクル収納容器の重量が軽い場合には、緩衝体へのペリクル収納容器の沈み込みは少ないものとなり、水平方向から衝撃が加わった際には、緩衝体の上でペリクル収納容器がいくらか横滑りすることができた。側面に配置された緩衝体は、主として、横滑りしたペリクル収納容器をここで受け止めて衝撃を緩和するために配置されたものである。しかし、ペリクル収納容器の重量が極めて重い場合、そして、底面積が極めて大きい場合は、ペリクル収納容器は緩衝体に沈み込んでいるか、又は非常に摩擦の高い状態で載っている状態となる。したがって、水平方向の衝撃緩和には下面の緩衝体が水平方向にせん断変形することが必要となるが、大きな平板状の緩衝体はこの方向にはほとんど変形することはできないため、十分な緩衝能力が発揮できない。
【0008】
これに対して、緩衝体の形状を、水平面の面積を小さく、厚さを極めて高くする、すなわち柱のような形状とすることで、水平方向への変形を向上することは可能である。しかし、単純に厚さを増すと無駄なスペースが増大することに加えて、さらにはペリクル収納容器の搭載時に極めて正確にペリクル収納容器を緩衝体上に載せないと、バランスの崩れから傾斜及び脱落する恐れがあり好ましくない。これらの点から、これまでペリクル収納容器の収納、取り出しが容易であるとともに、緩衝性が適切に設計され、異物付着の恐れがないペリクル用梱包箱は存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−100733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、少なくともひとつの辺長が1000mmを超えるような特に大型のペリクルを収納したペリクル収納容器を傾斜及び脱落させることなく安定にかつ清浄な状態を保って保管するとともに、ペリクル収納容器及び収納されているペリクルに十分な緩衝能力を発揮して衝撃や振動を与えず、輸送及び運搬することが可能なペリクル用梱包箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載されたペリクル用梱包箱は、少なくともひとつの辺長が1000mmを超えるペリクルを収納するペリクル収納容器を保管及び/又は輸送するための梱包箱であって、該梱包箱の内部底面に、該ペリクル収納容器の外部底面から突出した複数の脚部を夫々挿入する凹みを有する複数の緩衝体が、分離して取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載されたペリクル用梱包箱は、請求項1に記載されたものであって、前記緩衝体は、硬度の異なる複数の層が積層されて形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載されたペリクル用梱包箱は、請求項2に記載されたものであって、前記緩衝体が2層構造であって、上層の前記硬度に比べて下層の前記硬度が高いことを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載されたペリクル用梱包箱は、請求項1に記載されたものであって、前記梱包箱の外部底面に少なくとも4つの脚部又は車輪が取り付けられていることによって、該外部底面と床面との間隙が少なくとも100mmとなっているとともに、直方体をなす該梱包箱の四方側面のうち少なくとも一面の壁材が着脱可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のペリクル用梱包箱は、ひとつの辺長が1000mmを超えるような特に大型で重いペリクルを収納しているペリクル収納容器から突出した複数の脚部を、各脚部夫々に対して個別に独立して梱包箱の内部底面に固定され設置されている底面緩衝体の凹みに挿入することで、ペリクル収納容器を支持し、安定にかつ清浄な状態を保って保管することができる。高さのある底面緩衝体に対して、正確にペリクル収納容器が搭載され、なおかつその脚部が各底面緩衝体の凹みに嵌合しているので、ペリクル収納容器が底面緩衝体から傾斜及び脱落する恐れがない。このため、輸送及び運搬の際に、収納されたペリクル及びペリクル収納容器にかかる垂直方向及び水平方向への振動及び衝撃を緩衝することができる。
【0016】
また、このペリクル用梱包箱の底面緩衝体は、硬度の異なる複数の層が積層されており、重量の重いペリクル収納容器に対して、底面緩衝体の厚みを制御しつつ、小さな衝撃から緩衝性を発揮し、大きな衝撃に対しても底面緩衝体の緩衝機能が無くなる程に圧縮されたり底突きしたりすることなく、十分に緩衝能力を発揮することができる。ペリクル収納容器の重量、輸送手段、想定する衝撃の程度により、底面緩衝体の大きさ、厚み、硬度、層の組合せを調整することで、十分な緩衝能力を発揮し、収納されたペリクル及びペリクル収納容器に振動や衝撃を与えず、安全に輸送及び運搬することができる。
【0017】
さらに、本発明のペリクル用梱包箱は、直方体をなす梱包箱の四方側面の少なくとも一面の壁材が取り外し可能であるため、ペリクル収納容器の搭載や取り出しにおいてフォーク型搬送手段を用いることができる。同様に、ペリクル用梱包箱の移動においても、梱包箱の外部底面と床面との間隙が確保されているため、フォーク型搬送手段を用いることができる。従って、移動、輸送、運搬などにおける作業の安全性を確保するとともに、作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用するペリクル用梱包箱の斜視図である。
【図2】本発明を適用するペリクル用梱包箱のA−A線正面断面図である。
【図3】本発明を適用するペリクル用梱包箱のB−B線平面断面図である。
【図4】本発明を適用するペリクル用梱包箱のC−C線平面断面図である。
【図5】本発明を適用するペリクル用梱包箱の底面緩衝体とペリクル収納容器の脚部との嵌合前後における底面緩衝体付近の一部断面図である。
【図6】本発明を適用する別のペリクル用梱包箱におけるペリクル収納容器の脚部及び底面緩衝体付近の一部断面図である。
【図7】本発明を適用するペリクル用梱包箱に搭載するペリクル収納容器の平面図及びそのD−D線断面図である。
【図8】本発明を適用外である従来のペリクル用梱包箱の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0020】
本発明のペリクル用梱包箱は、一辺が1000mmを超えるような大型のペリクルを収納するペリクル収納容器を安定に保管し輸送及び運搬するためのものであって、ペリクル収納容器底面から突出した複数の脚部を嵌め合せる複数の底面緩衝体が梱包箱内の底面に設置されているものである。
【0021】
このペリクル用梱包箱のペリクル収納容器を搭載した使用状態における一実施形態を図1〜5に示す。
【0022】
ペリクル用梱包箱1は、図1の斜視図に示されるように、四方側面が壁材13で覆われており、また天面が蓋体20で覆われている直方体の箱状のものである。その蓋体20は、固定用バンド21にて梱包箱全体に締結されている。壁材13の一部には、取っ手22が設けられており、このペリクル用梱包箱1の外部底面の角部には4つのキャスタ23がそれぞれ取り付けられている。ペリクル用梱包箱1は、キャスタ23により、ペリクル用梱包箱の外部底面と床面との間隔が100mm以上確保されていると好ましい。間隙が確保されることで、ペリクル用梱包箱1の移動、収納及び取り出しに際して、例えばフォークリフトやパレットリフターやハンドリフターなどの搬送機を容易に使用することができる。
【0023】
図1のA−A断面線における正面断面図を図2に示す。
【0024】
搭載されているペリクル収納容器30は、トレイ32と、それと対向配置されるカバー31との間に形成される空間にペリクルを収納しているものである。また、このペリクル収納容器30は、その外部底面から突出した4つの脚部33を有する。収納されるペリクルは、アルミニウム、ステンレス、ポリエチレンなどからなるペリクルフレームの上端面に、通常光を十分に透過させるニトロセルロース、酢酸セルロース又はフッ素系樹脂などからなる透明なペリクル膜が、溶媒を塗布して風乾させ接着され、又はアクリル樹脂やエポキシ樹脂などの接着剤で接着され、更にペリクルフレームの下端面に、フォトマスクに装着するためのポリブデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂などからなる粘着層、及び粘着層の保護を目的とした離型層(セパレータ)が設けられるものである。また、ペリクルをフォトマスクに貼り付けた状態において、ペリクル内部に囲まれた空間と外部との気圧差をなくすために、ペリクルフレームの一部に気圧調整用の小孔を開け、小孔を通じて移動する空気からの異物侵入を防ぐためのフィルターが設置されることもある。
【0025】
カバー31、トレイ32及び脚部33からなるペリクル収納容器30を搭載する内部底面では、パレット板10の上面に底板11がリベット及び/又はエポキシ系接着剤のような接着剤を用いて取り付けられている。その底板11上の四隅に、四方側面を覆い壁面となる壁材13に当接しているL字型の側面緩衝体14が固定され設置されている。また、底板11上であって、その側面緩衝体14より内側で、ペリクル収納容器30の搭載時における各脚部33の位置に、天面側に凹部17を有する凹型の底面緩衝体18がそれぞれ両面テープで固定され設置されている。底面緩衝体18の固定は、底板11上に固定できればよく、両面テープのような粘着テープだけでなく、粘着剤や接着剤やリベットを用いてもよい。
【0026】
この側面緩衝体14が当接している壁材13は、その四方側面が別々に構成された板状であって、底板11上の周囲に形成された縁12で着脱可能に嵌め合わされ互いに固定されているものである。この壁材13は、所望の面を1面ずつ取り外しが可能となっていると好ましい。必要なところだけ壁材を取り外して、ペリクル収納容器30をフォークリフトのような搬送機(非図示)により収納、取出しすることが可能となり、作業性が向上する。また、壁材13は、底板11上に形成された溝やパレット板10と底板11とで形成された溝に、着脱可能に嵌め合わされ互いに固定されていてもよい。
【0027】
天面を覆う蓋体20は、ペリクル収納容器30側の一部に、ペリクル収納容器30に当接又は近接する程度の高さを有する上面緩衝体19が形成されているものである。この上面緩衝体19は、直方体でペリクル収納容器30のカバー31との接触面が平面状のものである。上面緩衝体19は、ペリクル収納容器30の上面に接触又は近接しており蓋体20とペリクル収納容器30との間隙を埋めるものである。この蓋体20は、バックルで固定されていてもよい。
【0028】
図2のB−B断面線における平面断面図を図3に示し、また、図2のC−C断面線における平面断面図を図4に示す。
【0029】
L字型の側面緩衝体14は、底板11上の四隅において直方体の側面緩衝体14を2つ接合することで形成されている。この側面緩衝体14は、底面緩衝体18の凹部17にペリクル収納容器30の脚部33が嵌合されると、そのペリクル収納容器30の四隅が側面緩衝体14のL字型にそれぞれ接触又は近接する位置に設けられているものである。側面緩衝体14の接触面は、平面状である。この側面緩衝体14は、ペリクル収納容器30の側面に接触又は近接しており輸送及び運搬における水平方向にかかる衝撃や振動を緩衝することができる。側面緩衝体14とペリクル収納容器30とは、程よく嵌り合う程度に接触しているか、最大でも30mmの隙間を有する程度に近接している。
【0030】
4つの底面緩衝体18は、ペリクル収納容器30の脚部33と嵌合される凹部17を天面側に向けそれぞれ分離されて設置されている。ペリクル収納容器30の脚部33と底面緩衝体18周辺との一部断面図である図5に示すように、底面緩衝体18は、2種類の硬度の異なる緩衝体層が積層されたものであり、高硬度緩衝体層15に低硬度緩衝体層16が積層されて形成されている。この底面緩衝体18の凹部17にペリクル収納容器30の底面から突出した4つの脚部33がそれぞれ嵌合することで、ペリクル収納容器30がペリクル用梱包箱内に安定に収納される。この脚部33は、人手での運搬の場合、1220×1400mmフォトマスク用ペリクルで少なくとも2人、1620×1780mmフォトマスク用ペリクルで最低4人、好ましくは6人以上が必要となるペリクル収納容器30を、フォーク型搬送手段を用いて運搬するために設けたもので、90〜200mmの高さである。底面緩衝体18は、ペリクル収納容器30を支持すると同時に、輸送及び運搬による垂直方向及び水平方向の衝撃や振動を吸収し緩和させるものである。硬度の異なるものを積層することで、厚みを抑制しつつ、さらに小さな衝撃から緩衝性を発揮し、大きな衝撃にも底突きすることなく緩衝する高い緩衝機能を確保することができる。
【0031】
この底面緩衝体18は、脚部33に合わせその側面に当接又は近接する幅と、脚部33を全て挿入することができ且つ脚部底面が底面緩衝体18に接しない深さとからなる凹部17を有しており、輸送や運搬における振動及び衝撃を吸収するために十分な大きさ及び厚みを有する。ペリクル収納容器30に収納されるペリクルは、例えば、520×800mmフォトマスク用ペリクルの場合は6kgに過ぎないが、1220×1400mmフォトマスク用ペリクルの場合はおよそ40kg、さらに、1620×1780mmフォトマスク用ペリクルの場合では、およそ90kgにも達する。従って、脚部周辺のペリクル収納容器底面34と底面緩衝体18とが接触し、その接触面でペリクル収納容器30の荷重を分散して受けている。常にペリクル収納容器底面34と接触する部分に硬度の低い低硬度緩衝体層16を配置することで、小さな衝撃に対する緩衝性を高めている。
【0032】
例えば、輸送及び運搬において小さな衝撃を受けた場合、常にペリクル収納容器底面34と接触して荷重を受けている低硬度緩衝体層16によりその衝撃を吸収し、大きな衝撃を受けた場合、低硬度緩衝体層16がその衝撃により大きく圧縮されるが、上層の圧縮に伴い下層である硬度の高い高硬度緩衝体層15の変形が始まり、高硬度緩衝体層15によりその衝撃を吸収する。これより、底面緩衝体18は、その緩衝機能が無くなる程に圧縮されることで脚部33を底板11に打ちつけるような底突きをすることなく、優れた緩衝効果を発揮することができる。
【0033】
この底面緩衝体18は、ペリクル収納容器30の重量、輸送手段、想定する衝撃の程度などにより、その凹部17や全体の大きさ、厚み、硬度、及び接触面積を適宜選択すると好ましい。また、底面緩衝体18の大きさは、その硬度と合わせて適宜選択されると好ましい。
【0034】
底面緩衝体18の大きさは、水平方位へのせん断変形性を確保する観点から、一辺の長さが概ね200〜400mmの範囲であると好ましい。
【0035】
底面緩衝体18の厚みは、150〜400mmであり、ペリクル収納容器30との接触面積は、30000〜150000mmであると好ましい。
【0036】
底面緩衝体18の硬度は、SRIS0101(日本ゴム協会標準規格)に規定されたデュロメータ(スプリング式硬度計)の一つであるアスカーC硬度計において、アスカーC20〜70であると好ましい。
【0037】
底面緩衝体18の凹部17は、脚部33の側面と凹部17の壁面とが程よく嵌り合う程度に接触する幅、又は脚部33の側面と凹部17の壁面とが最大でも20mmの隙間を有する程度に近接する幅であると好ましい。
【0038】
この底面緩衝体18に対して正確にペリクル収納容器30の脚部33が嵌合しているので、ペリクル収納容器30を傾斜させたり脱落させたりすることなく、安定に保管し、振動や衝撃をペリクル収納容器30やペリクルに与えることなく輸送及び運搬することができる。
【0039】
また、底面緩衝体18の構造は、高硬度緩衝体層15上に低硬度緩衝体層16が積層された2層構造で、その低硬度緩衝体層16とペリクル収納容器底面34とが接触する底面緩衝体18を例示したが、これに限られない。その構造は、多層構造であってもよく、低硬度緩衝体層16上に高硬度緩衝体層15が形成されたものであってもよく、脚部底面と底面緩衝体18の凹部17とが接触しペリクル収納容器底面34と底面緩衝体18とが非接触となるものであってもよい。
【0040】
ペリクル用梱包箱の別の形態として、ペリクル収納容器の脚部及び底面緩衝体付近の一部断面図を図6に示す。
【0041】
図6の(a)に示すように、底面緩衝体18は、低硬度緩衝体層16に高硬度緩衝体層15が形成され、低硬度緩衝体層16に脚部底面が接触し、高硬度緩衝体層15とペリクル収納容器底面34とが非接触となるものであってもよい。この構造は、底面積の小さい脚部底面でペリクル収納容器30の荷重を受けるため、下層である低硬度緩衝体層16を大きな厚みで配置している。このような形態の場合、初期状態で低硬度緩衝体層16はある程度沈みこんでいる。大きな衝撃を受けると、下層の低硬度緩衝体層16はさらに大きく沈みこむが、ある程度沈みこんだところで高硬度緩衝体層15にペリクル収納容器底面34が接触し、大きな面積で荷重をかけるようになることから、大きな反発力が発生する。その結果、大きな衝撃でも底面緩衝体18が底突きすることがなくなり、図5に示す形態と同様の緩衝効果を得ることができる。
【0042】
また、図6の(b)に示すように、底面緩衝体18は、低硬度緩衝体層16を高硬度緩衝体層15で挟み3層構造で形成されたものであってもよい。このような形態の場合、低硬度緩衝体層16の厚さが薄いため、低荷重での緩衝性は図5に示す形態よりも若干劣るが、最表面に出ている高硬度緩衝体層15である緩衝材に硬さがあり、ペリクル収納容器30を搭載する際の位置あわせがしやすいなど、取り扱い上の利点がある。これらの緩衝体層の硬度は、3層とも異なるものであってもよい。さらに3層以上の多層化した形態であってもよい。
【0043】
これらの底面緩衝体18の凹部17の深さは、脚部33が全て挿入されるものであってもよく、脚部33の一部が挿入されるのであってもよい。
【0044】
これらの底面緩衝体18は、その硬度と層の順番、接触面積により様々な緩衝特性を得ることができるため、使用するペリクル収納容器30の重量、輸送手段、想定する衝撃の程度を総合的に考慮して、適宜選択し最適なものを使用すると好ましい。特には、上層の緩衝体の硬度が下層の緩衝体の硬度に比べて低いと好ましい。
【0045】
このような衝撃や振動を緩衝する底面緩衝体18、側面緩衝体14、及び上面緩衝体19の材料は、適切な緩衝能力を有するものであって、例えば、ウレタン発泡材、ポリエチレン発泡体、エチレン酢酸ビニルコポリマー発泡体、エチレン−プロピレン−ジエン−メチレンゴム発泡体などが挙げられる。
【0046】
ペリクル用梱包箱1に用いられるパレット板10、底板11、壁材13、蓋体20は、十分な強度を有する材質で形成されたものである。その材質は、具体的に、プラスチックダンボール、強化ダンボール、アルミニウム板、アルミハニカム板などが挙げられる。
【0047】
ペリクル用梱包箱1は、キャスタ23の代替として、アジャスタや他の脚部などのブロック状のものが付いていてもよい。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
(実施例)
図1に示すようなペリクル用梱包箱1を製作した。製作した梱包箱1の外寸は、2250×2000×高さ850mm(キャスタ部含む)である。
【0050】
パレット板10はアルミニウム合金角パイプの溶接構造となっており、その4箇所の角部にはキャスタ23を設けた。壁材13は厚さ12mmのプラスチックダンボールを用いて製作したが、角部はアルミニウム合金押し出し材が取り付けられており、このアルミニウム合金押し出し材は相互に組み合わせて接続できる構造とした。
【0051】
パレット板10の上面は厚さ15mmのプラスチックダンボール製の底板11をリベット及びエポキシ系接着剤を用いて取り付けており、その外周部は壁材13と嵌め合いになっている。底板11の上面には所定の位置に底面緩衝材18を両面テープで固定した。この底面緩衝材18の構造は、図5に示すような断面構造となっており、中に搭載するペリクル収納容器30の脚部33とほぼ嵌合するように凹部17を設けた。なお、この底面緩衝材18は発泡ウレタン((株)ブリジストン製、商品名;エバーライト)で製作し、その大きさは、250×300×高さ250mmとした。そして、硬度の低い層16は高さ150mmとして見掛密度25kg/mのものを用い、硬度の高い層15は高さ100mm、見掛密度35kg/mのものを用いた。
【0052】
この底面緩衝材18上に搭載するペリクル収納容器30の平面図を図7(a)に示し、そのD−D線断面図を図7(b)に示す。ペリクル収納容器30は、1620×1780mmマスク用ペリクルを収納するためのもので、ペリクル70を収納したところを上方より透視できるアクリル製カバー31、アルミニウム合金製トレイ32、ステンレス鋼製脚部33からなる外寸1940×1700×高さ190mmの本体底部に高さ100mmの脚部33が取り付けられており、総重量は90kgである。トレイ32上面にはSUS304製のフレーム保持ピン75及びそれを支持するABS樹脂製のピンホルダ74が取り付けられている。フレーム保持ピン75はピンホルダ74の孔(非図示)に嵌合保持され、その軸方向に抜き差しが可能な構造となっている。ペリクル収納容器30に収納されるペリクル70は、例えば、外寸1748×1526mm、高さ8mmのもので、ペリクルフレーム71の上面にペリクル膜接着剤(非図示)でペリクル膜72が接着され、ペリクルフレーム71の下面にマスク粘着層73及びペリクル使用時にその粘着層から剥がされるセパレータ(非図示)が設けられているものである。このペリクルフレーム71の4箇所の外側面角部近傍にはφ2.5mmの非貫通の丸孔(非図示)が設けられており、フレーム保持ピン75の先端を挿入、嵌合することでトレイ32上においてペリクル70が動かないように固定される構造となっている。
【0053】
このペリクル収納容器30を、Class10のクリーンルーム内にて界面活性剤と純水を用いて洗浄し、風乾により完全に乾燥させた。その後、暗室内にて40万ルクスの集光ランプにてカバー31、トレイ32の内側を念入りに異物検査し、目視で確認できる洗浄残りの異物は粘着テープにて転写除去して、全く異物がない状態とした。なお、この時に目視確認したカバー31、トレイ32上の異物は概ね10μm以上の大きさのものである。
【0054】
そして、異物検査後にカバー31をトレイ32上に注意深く載せ、嵌合部は粘着テープ(非図示)で隙間無くシールした。さらには、帯電防止ポリエチレン袋(非図示)に収納し、ヒートシールにて密封した。
【0055】
ペリクル収納容器30と壁材13の間隙には、ウレタン発泡体からなる側面緩衝体14が配置されている。蓋体20は厚さ9mmプラスチックダンボールをアルミニウム合金製アングルで補強して製作したもので、壁材13の外側を覆うような寸法となっている。さらに、極めて大きな揺れによりペリクル収納容器30が梱包箱1内で暴れた事態を想定し、念のため、蓋体20の内側にはウレタン発泡体製の上面緩衝体19を取り付けた。そして、蓋体20を載せた後、ポリアミド樹脂製の固定用バンド21で全体を締結した。
【0056】
前記のようにしてペリクル収納容器30を収納したペリクル用梱包箱1を、群馬県高崎市―福岡県福岡市までの約1000kmの間をトラック輸送にて往復させた。このとき、トラック車両への積み下ろしはフォークリフトが利用でき、容易に作業することができた。
【0057】
往復輸送後、再びペリクル用梱包箱1を開梱し、ペリクル収納容器30を前記クリーンルームに搬入した。そして、前記と全く同じ工程により暗室内にてカバー31、トレイ32の内側に付着している異物を再確認した。
【0058】
その結果、目視にて確認できたのはカバー31の内側でわずかに1個、トレイ32の内側で4個であり、しかも全てがエアブローにて容易に除去することができた。なお、往復輸送はペリクル70未収納のペリクル収納容器30で行ったが、ペリクル70を収容しても同様の結果である。
【0059】
(比較例)
図1に示すような外観で、内部断面が図8に示す形態となっている梱包箱80を製作した。この外観、寸法は実施例のペリクル用梱包箱1と全く同一であるが、内部で使用されている底面緩衝材の構造が異なるものである。搭載したペリクル収納容器30は実施例と全く同じものを用いた。
【0060】
底面緩衝材81は発泡ウレタン((株)ブリジストン製、商品名;エバーライト、見掛密度25kg/m)を用いて製作し、その外寸は1400×1500×高さ(最頂部)200mmである。ここで、ペリクル収納容器30との接触部には図8の一部拡大図に示すような四角錐状で深さ約30mmの凹凸加工を施した。この底面緩衝材81以外の部材は上記実施例と全て同一の構成とした。
【0061】
この梱包箱80を実施例と全く同じ工程にて輸送試験を行い、同じ検査方法にてペリクル収納容器内部の異物増加について確認した。その結果、カバー31の内側で12個、トレイ32の内側で34個の異物が確認された。異物の多くはエアブローにて除去できるものであったが、中には50μmを超えるような大きなものもあり、ペリクルの輸送手段としては使用が困難なレベルであった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のペリクル用梱包箱は、半導体デバイス、プリント基板又は液晶ディスプレイなどを製造する際のゴミよけとして使用される、リソグラフィー用ペリクル、特には液晶製造用途で使用される大型のペリクルを収納している容器を保管及び/又は輸送するために用いられる。
【符号の説明】
【0063】
1はペリクル用梱包箱、10はパレット板、11は底板、12は縁、13は壁材、14は側面緩衝体、15は高硬度緩衝体層、16は低硬度緩衝体層、17は凹部、18は底面緩衝体、19は上面緩衝体、20は蓋体、21は固定用バンド、22は取っ手、23はキャスタ、30はペリクル収納容器、31はカバー、32はトレイ、33は脚部、34はペリクル収納容器底面、70はペリクル、71はペリクルフレーム、72はペリクル膜、73はマスク粘着層、74はピンホルダ、75はフレーム保持ピン、80は梱包箱、81は底面緩衝材、A−A,B−B,C−C,D−Dは断面線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともひとつの辺長が1000mmを超えるペリクルを収納するペリクル収納容器を保管及び/又は輸送するための梱包箱であって、該梱包箱の内部底面に、該ペリクル収納容器の外部底面から突出した複数の脚部を夫々挿入する凹みを有する複数の緩衝体が、分離して取り付けられていることを特徴とするペリクル用梱包箱。
【請求項2】
前記緩衝体は、硬度の異なる複数の層が積層されて形成されていることを特徴とする請求項1に記載のペリクル用梱包箱。
【請求項3】
前記緩衝体が2層構造であって、上層の前記硬度に比べて下層の前記硬度が高いことを特徴とする請求項2に記載のペリクル用梱包箱。
【請求項4】
前記梱包箱の外部底面に少なくとも4つの脚部又は車輪が取り付けられていることによって、該外部底面と床面との間隙が少なくとも100mmとなっているとともに、直方体をなす該梱包箱の四方側面のうち少なくとも一面の壁材が着脱可能であることを特徴とする請求項1に記載のペリクル用梱包箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−158370(P2012−158370A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19967(P2011−19967)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】