説明

ペルシリル化ペプチドを製造する方法

ペルシリル化ペプチドまたはペルシリル化ペプチド類似体を製造する方法であって、
(a)トリメチルシリルシアニド以外のシリル化剤との反応によって対応するペプチドをシリル化することによりペルシリル化ペプチドまたはペルシリル化ペプチド類似体を製造する工程と、
(b)式(I)X−A−COOH(式中、Xはアミノ保護基であり、Aは、アミノ酸残基、ペプチド残基またはペプチド類似体残基であり、−COOHは任意に活性化されたカルボキシル基を表す)の化合物を4〜15個のアミノ酸を含有するペルシリル化ペプチドまたはペルシリル化ペプチド類似体と反応させる工程と
を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、米国仮特許出願第61/014,923号明細書の利益を主張するものである。この仮特許出願の全内容は参照により本願に援用される。
本発明は、ペルシリル化技術を利用するペプチドまたはペプチド類似体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチドまたはペプチド類似体は、例えば医薬品として有用である。こうしたペプチドの一例は、女性における子宮内膜症および子宮類線維腫ならびに男性における良性前立腺肥大症の治療のために使用できるCetrorelixである。Cetrorelixは、配列Ac−D−Nal−D−Cl−Phe−D−Pal−Ser−Tyr−D−Cit−Leu−Arg−Pro−D−AlaNH2(配列番号1)を有するゴナドトロピン放出ホルモン拮抗薬(GnRH拮抗薬)である。
【0003】
ペルシリル化技術は、カレンズ(Callens)のEP第−A−184243号明細書、IBCのペプチド技術に関する第二回国際会議(IBC’s 2nd International Conference on Peptide Technologies)、ロゴジン(Rogozhin)ら、Isvestija Akademia Nauk SSSR、セリヤ キメチェスカヤ(Seriya Khimecheskaya)、No.3、657−660頁(1978年)およびクリチェルドルフ(Kricheldorf)、Liebigs Ann.Chem.763、17〜38頁(1972年)において論じられている。
【0004】
生産性および製造されたペプチドまたはペプチド類似体の純度の点で良好な結果を見込んでいるペルシリル化技術を用いる効率的で迅速なペプチド合成のための方法が今見出された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明は、ペプチドまたはペプチド類似体を製造する方法であって、
式(I)X−A−COOH(式中、Xはアミノ保護基であり、Aは、アミノ酸残基、ペプチド残基またはペプチド類似体残基であり、−COOHは任意に活性化されたカルボキシル基を表す)の化合物を4〜15個のアミノ酸を含有するペルシリル化ペプチドまたはペルシリル化ペプチド類似体と反応させる工程を含む方法に関する。
【0006】
大規模な調製ペルシリル化が、テトラペプチド、ペンタペプチドなどのより高級なペプチドのために可能であり、後者が、高い純度、特に光学的純度を有するより長い鎖のペプチドおよびペプチド類似体の高収率製造を見込むのに十分な反応性および溶解性を有することが見出された。トリメチルシアノシラン以外のシリル化試薬がより長い鎖のペプチドのために適することも見出された。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明における「ペプチド」は、特に、アミド結合により互いに結合されたアミノ酸から本質的になる化合物を表すと理解される。
本発明における「ペプチド類似体」は、特に、アミノ酸から本質的になる化合物であって、ヘテロ置換カルボン酸、例えばヒドロキシカルボン酸またはメルカプトカルボン酸などのペプチドに導入され得る他の化合物を任意に含む化合物を表すと理解される。ペプチド類似体は、通常、ウレタン結合、ウレア結合、エステル結合またはチオエステル結合などのアミド結合とは異なる、ペプチド配列中に少なくとも1つの結合を含む。本発明におけるペプチドまたはペプチド類似体は、線状、環式または分岐であることが可能であり、好ましくは線状である。
【0008】
本発明におけるペプチドまたはペプチド類似体および残基「A」の成分として有用であるアミノ酸は、天然アミノ酸および非天然アミノ酸を含む。アミノ酸は、例えば、天然アミノ酸:アラニン、バリン、ノルバリン、レウシン、ノルレウシン、イソレウシン、セリン、イソセリン、ホモセリン、スレオニン、アロスレオニン、メチオニン、エチオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アスパラギン、システイン、シスチン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、オルニチン、グルタミンおよびシトルリンから選択することが可能である。
【0009】
特に、セリン、イソセリン、ホモセリンおよび/またはチロシン、より特にセリンおよび/またはチロシンを含有するペルシリル化部分は好ましい。
それらの非天然鏡像異性体を用いることも可能である。
【0010】
アミノ酸は、例えば、合成由来のアミノ酸:(1−ナフチル)アラニン、(2−ナフチル)アラニン、ホモフェニルアラニン、(4−クロロフェニル)アラニン、(4−フルオロフェニル)アラニン、(3−ピリジル)アラニン、フェニルグリシン、ジアミノピメリン酸(2,6−ジアミノヘプタン−1,7−二酸)、2アミノ酪酸、2アミノテトラリン−2−カルボン酸、エリトロ−β−メチルフェニルアラニン、トレオ−β−メチルフェニルアラニン、(2−メトキシフェニル)アラニン、1アミノ−5−ヒドロキシインダン−2−カルボン酸、2−アミノヘプタン−1,7−二酸、(2,6−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)アラニン、エリトロ−β−メチルチロシンまたはトレオ−β−メチルチロシンから選択することが可能である。
【0011】
本発明による方法のプロセス工程は、一般に液相中で行われる。
本発明による方法において、ペルシリル化ペプチドは、4、5、6、7または8個のアミノ酸、より好ましくは、4、5または6個のアミノ酸を含有する。これらの数が、ペプチド類似体における連結単位の数に同様に当てはまることは言うまでもない。
【0012】
本発明による方法においてペルシリル化形態を取って適切に反応され得るペプチド配列の特定の例には、H−Phe−Ile−Gly−Leu−H(配列番号2)、
H−Leu−Arg−Pro−(D)AlaNH2(配列番号3)、
H−Ser−Tyr−(D)Cit−Leu−Arg−Pro−(D)AlaNH2(配列番号4)、
H−Ser(tBu)−Thr−Cys(Trt)−Val−Leu−Gly−OH(配列番号5)
H−Trp−Ser−Tyr−(D)Ser(tBu)−Leu−Arg−Pro−NHNHCONH2(配列番号6)
が挙げられる。
【0013】
本発明による方法の工程(a)において、ペルシリル化ペプチドまたはペルシリル化ペプチド類似体は、好ましくは有機溶媒中でのシリル化剤との反応によって対応するペプチド(類似体)をシリル化することにより得られる。ペルシリル化ペプチドまたはペルシリル化ペプチド類似体は、必要ならば、単離し精製することが可能である。しかし、例えば、ペルシリル化ペプチドまたはペルシリル化ペプチド類似体を含有する溶液と式(I)の任意に活性化された化合物を含有する溶液とを組み合わせることにより、現場(in situ)でペルシリル化ペプチドまたはペルシリル化ペプチド類似体を用いることが好ましい。
【0014】
本発明において、N−トリアルキルシリルアミンまたはN−トリアルキルシリルアミドなどのシアノ基を含有しないシリル化剤を用いることが好ましい。こうしたシリル化試薬の例には、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、ヘキサメチルジシラザン、N−メチル−N−トリメチルシリルアセトアミド(MSA)、N−メチル−N−トリメチルシリルトリフルオロアセトアミド、N−(トリメチルシリル)アセトアミド、N−(トリメチルシリル)ジエチルアミン、N−(トリメチルシリル)ジメチルアミン、1−(トリメチルシリル)イミダゾール、3−(トリメチルシリル)−2−オキサゾリドンが挙げられる。N−メチル−N−トリメチルシリルアセトアミド(MSA)が好ましい。
【0015】
工程(a)の反応は、一般には0℃〜100℃、好ましくは25℃〜50℃の温度で行われる。
工程(a)の反応において、シリル化されるべき官能基のモル量を基準として一般には0.5〜5当量、好ましくは0.7〜2当量、より好ましくは約1または1〜1.5当量のシリル化剤が用いられる。シリル化されるべき官能基のモル量を基準として2〜4当量のシリル化剤の使用も可能である。「シリル化されるべき官能基」は、特に、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基またはカルボキシル基などのシリル化剤と反応する活性水素原子を有する基を表すと理解される。
【0016】
「ペルシリル化」は、特に、シリル化剤と反応できる活性水素原子を有する基がカップリング工程(b)のための均質反応媒体を確実に得るのに十分にシリル化されているペプチドまたはペプチド類似体を表すことを意図していることは言うまでもない。
シリル化を溶媒の存在下で行うとき、前記溶媒は、好ましくは極性有機溶媒、より好ましくは極性非プロトン性有機溶媒である。N,N−ジメチルホルムアミドまたは特にN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)などのアミド型溶媒は、より特に好ましい。
別の実施形態において、シリル化は、シリル化剤およびペプチドまたはペプチド類似体から本質的になる液体シリル化媒体中で行われる。
【0017】
本発明のペプチドまたはペプチド類似体において、残基Aは、特に、2〜20個のアミノ酸、より好ましくは2、3、4、5、6、7、8または9個のアミノ酸を含むアミノ保護Aのカルボキシル基に、ペプチドのN末端としてまたはペプチド類似体における任意に対応する位置として結合されるペプチドまたはペプチド類似体を表すと理解される。
【0018】
本発明による方法において適切に反応され得る式Aの化合物の配列の特定の例には、
Z−Asp(OtBu)−Ala−OH
Z−Ser−Tyr−(D)Cit−OH
Ac−(D)Nal−(D)Cph−(D)Pal−OH
Boc−Cys(Trt)−Ser(tBu)−Asn−Leu−OH(配列番号7)
Fmoc−His(Trt)−OH
が挙げられる。
【0019】
本発明による方法は、特に、以下の反応に適用することが可能である。
【表1】

【0020】
「アミノ保護基X」という用語は、アミノ基の酸性陽子を取り替えて、その求核性を減少させるために用いられ得る保護基を意味する。典型的には、アミノ保護基Xは、成長ペプチド鎖に付加されるべき次のアミノ酸の付加の前に脱保護反応において除去される。アミノ保護基Xは、好ましくは立体的に妨害している。「立体的に妨害している」という用語は、特に、少なくとも1個の第二炭素原子、第三炭素原子または第四炭素原子を含む少なくとも3個の炭素原子、特に少なくとも4個の炭素原子を含む置換基を表すべく意図されている。立体的に妨害している基は、しばしば、多くとも100個、好ましくは多くとも50個の炭素原子を含む。
【0021】
Xによって本明細書において表されたアミノ保護基の非限定的なとして、ホルミル、アクリリル(Acr)、ベンゾイル(Bz)、アセチル(Ac)、トリフルオロアセチルなどのアシル型の置換基または非置換基;ベンジルオキシカルボニル(Z)、pクロロベンジルオキシカルボニル、pブロモベンジルオキシカルボニル、pニトロベンジルオキシカルボニル、pメトキシベンジルオキシカルボニル、ベンズヒドリルオキシカルボニル、2(pビフェニルイル)イソプロピルオキシカルボニル、2(3,5ジメトキシフェニル)イソプロピルオキシカルボニル、pフェニルアゾベンジルオキシカルボニル、トリフェニルホスホノエチルオキシカルボニル、または9フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)などのアラルキルオキシカルボニル型の置換基または非置換基;t−ブチルオキシカルボニル(BOC)、t−アミルオキシカルボニル、ジイソプロピルメチルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、2メチルスルホニルエチルオキシカルボニルまたは2,2,2トリクロロエチルオキシカルボニル基などのアルキルオキシカルボニル型の置換基または非置換基;シクロペンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニルまたはイソボルニルオキシカルボニル基などのシクロアルキルオキシカルボニル型の基;およびベンゼンスルホニル、pトルエンスルホニル、メシチレンスルホニル、メトキシトリメチルフェニルスルホニル、2−ニトロベンゼンスルホニル、2−ニトロベンゼンスルフェニル、4−ニトロベンゼンスルホニルまたは4−ニトロベンゼンスルフェニル基などのヘテロ原子を含有する基について特に言及してもよい。これらのX基の中で、カルボニル、スルフェニルまたはスルホニル基を含む基が好ましい。アミノ保護基Xは、好ましくは、アリルオキシカルボニル基、t−ブチルオキシカルボニル基(BOC)、ベンジルオキシカルボニル基(Z)、9フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、4−ニトロベンゼンスルホニル(Nosyl)、2−ニトロベンゼンスルフェニル(Nps)および置換誘導体から選択される。より好ましくは、アミノ保護基Xはt−ブチルオキシカルボニル基(BOC)である。
【0022】
アミノ保護基Xは、種々の方法、例えば、カルボベンズオキシクロリドなどの適する酸ハロゲン化物または無水酢酸などの酸無水物およびジ−t−ブチルジカーボネート(BOC2O)との反応によって導入してもよい。他方、アミノ保護基Xは、酸分解、水添分解、希水酸化アンモニウムによる処理、ナトリウムによる処理、ナトリウムアミドによる処理、ヒドラジンによる処理、または酵素加水分解によって除去してもよい。本発明による方法は、しばしば、式(I)の化合物とペルシリル化ペプチドの反応によって生成する化合物から基Xを除去する工程を更に含む。
【0023】
本発明による方法において、式(I)の化合物とペルシリル化ペプチドとの間の反応は、しばしば、カルボキシル基活性化剤の存在下で行われる。こうした場合、カルボン酸活性化剤は、カルボジイミド、ハロゲン化アシル、ホスホニウム塩およびウロニウム塩またはグアニジニウム塩から適切に選択される。より好ましくは、カルボン酸活性化剤はハロゲン化アシルである。なおより好ましくは、カルボン酸活性化剤は、イソブチルクロロホルメートおよび塩化ピバロイルから選択される。
【0024】
良好な結果は、しばしば、副反応を減少させるおよび/または反応効率を向上させる追加のカルボン酸活性化剤を用いるときに得られる。例えば、ホスホニウム塩およびウロニウム塩は、第三塩基、例えば、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)およびトリエチルアミン(TEA)の存在下で、保護アミノ酸を活性化化学種(例えば、BOP、PyBOP、HBTUおよびTBTU、すべてはHOBtエステルを発生させる)に転化させることが可能である。他の試薬は、保護試薬を提供することによりラセミ化を妨げるのを助ける。これらの試薬には、補助求核性試薬(例えば、1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール(HOBt)、1−ヒドロキシ−アザベンゾトリアゾール(HOAt)またはHOSu)またはその誘導体が添加されたカルボジイミド(例えば、DCCまたはWSCDI)が挙げられる。用いることができる別の試薬はTBTUである。アジド法がそうである通り、補助求核性試薬が添加されたイソブチルクロロホルメートまたは補助求核性試薬が添加されていないイソブチルクロロホルメートを用いる混合無水物法も用いられる。その理由は、それに附随した低いラセミ化のゆえである。これらのタイプの化合物は、Asn残留物およびGln残留物の脱水を妨げるばかりでなく、カルボジイミド介在カップリングの速度を増加させることも可能である。典型的な追加の試薬は、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、トリエチルアミン(TEA)またはN−メチルモルホリン(NMM)などの塩基も含む。
【0025】
本発明による方法において、工程(b)の反応は、一般に、−50℃〜50℃、好ましくは−40℃〜10℃の温度で行われる。
【0026】
別の態様において、本発明は、式(I)X−A−COOH(式中、Xはアミノ保護基であり、Aは、アミノ酸残基、ペプチド残基またはペプチド類似体残基であり、−COOHは任意に活性化されたカルボキシル基を表す)の化合物をペルシリル化ペプチドまたはペルシリル化ペプチド類似体と反応させることによって得られる部分シリル化ペプチドまたは部分シリル化ペプチド類似体の溶液を提供するための極性有機溶媒の使用に関する。
【0027】
処理および精製または脱保護および後続のカップリング工程などの任意の更なる反応工程のために特に適する均質溶液を提供するために反応全体を通して少なくとも5個のアミノ酸(または任意に類似体単位)を特に有する部分シリル化カップリング製品を極性有機溶媒中の溶液において維持できることが見出された。驚くべきことに、これは、反応を低温で行うときにも可能である。
【0028】
極性有機溶媒は、例えば、エーテル、特に水混和性エーテル、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサンまたは1,2−ジメトキシエタンから、ニトロアルカン、特に水混和性ニトロアルカン、例えば、ニトロメタンから、またはアミド型溶媒、特に水混和性アミドから選択することが可能である。
本発明による使用において、極性有機溶媒は、好ましくは、N,N,ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジメチルアセトアミドならびにN−メチルピロリドンから選択される好ましくはアミド型溶媒である。より好ましくは、溶媒はN,N−ジメチルアセトアミドである。この溶媒は、副生物の実質的な生成なしで生成したペプチドまたはペプチド類似体の特に効率的な処理および回収を見込んでいる。
【0029】
本発明による使用において、溶液中の部分シリル化ペプチドまたは部分シリル化ペプチド類似体の濃度は、一般に、溶液の全質量を基準として約1質量%以上、好ましくは約5質量%以上である。本発明による使用において、溶液中の部分シリル化ペプチドまたは部分シリル化ペプチド類似体の濃度は、一般に、溶液の全質量を基準として約20質量%以下、好ましくは約15質量%以下である。
【0030】
本発明による使用の特定の態様において、Aにおけるアミノ酸単位および任意の類似体単位の数対ペルシリル化ペプチドまたはペルシリル化ペプチド類似体におけるアミノ酸単位および任意の類似体単位の数の比は、一般に、1:5以上、好ましくは1:4以上である。この態様において、前記比は、3:2以下、好ましくは1:1以下である。
【0031】
本発明による使用において、溶液は、一般に、溶液の全質量を基準として10質量%〜95質量%の極性有機溶媒を含有する。
本発明による使用において、部分シリル化ペプチドまたは部分シリル化ペプチド類似体は、好ましくは、前に本明細書に記載された本発明による方法によって得られる。
本発明による使用の特に好ましい実施形態において、溶液は−40℃〜+10℃の温度で均質である。
【0032】
本発明は、本発明による使用を含む、ペプチドまたはペプチド類似体を製造する方法にも関する。
【0033】
以後の実施例は本発明を例示するべく意図されているが、しかし、本発明を限定するものではない。
これらの実施例において且つ本明細書全体を通して、用いられた略号を次の通り定義する。
AcOHは酢酸であり、AcOEtは酢酸エチルであり、Bocはt−ブトキシカルボニルであり、n−BuOHはn−ブタノールであり、i−BuOHはイソブタノールであり、Cbzはベンジルオキシカルボニルであり、DCCは1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドであり、DCMはジクロロメタンであり、DICは1,3−ジイソプロピルカルボジイミドであり、DIPEAはN,N−ジイソプロピルエチルアミンであり、DMFはN,N−ジメチルホルムアミドであり、DMAはN,N−ジメチルアセトアミドであり、EDCは1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミドであり、Fmocはフルオレニルメチルオキシカルボニルであり、HBTUはN,N,N’,N’−テトラメチル−O−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)ウロニウム−ヘキサフルオロルホスフェート)であり、HOBTは1−ヒドロキシベンゾトリアゾールであり、HOOBTは3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジンであり、IBCFはイソブチルクロロホルメートであり、i−BuOHはイソブタノールであり、IPEはジイソプロピルエーテルであり、MeCNはアセトニトリルであり、MeOHはメタノールであり、MSAはN−メチル−N−トリメチルシリルアセトアミドであり、NMMはN−メチルモルホリンであり、NMPは1−メチル−2−ピロリドンであり、tBuはt−ブチルであり、TEAはトリエチルアミンであり、THFはテトラヒドロフランであり、Tosはトシルであり、Trtはトリチルである。
【実施例】
【0034】
実施例1:[2+4]:Z−Asp(OtBu)−Ala−Phe−Ile−Gly−Leu−OH(配列番号8)
窒素雰囲気下で、Phe−Ile−Gly−Leu(配列番号2)(1.0当量)をDCMに分散させ、MSAにより室温で溶解した。窒素雰囲気下で、Z−Asp(OtBu)−Ala(1.05当量)およびTEA(1.0当量)を25℃±5でCH2Cl2/DMFの混合物に溶解し、その後−15℃に冷却した。カルボキシル官能基をピリジン(1.0当量)および塩化ピバロイル(1.0当量)の添加によって活性化させた。10分後、シリル化ペプチドを活性化ペプチド上に移送した。均質であったカップリング反応媒体を水で希釈し、2相系に導いた。CH2Cl2を真空下で除去し、それによってペプチドは沈殿し、濾過によってZ−Asp(OtBut)−Ala−Phe−Ile−Gly−Leuを単離し、水で洗浄し、その後、真空下で乾燥させた。本出願人らは少なくとも70質量%の収率で白色固体を得た。
【0035】
実施例2:[3+4]:Z−Ser−Tyr−(D)Cit−Leu−Arg−Pro−(D)AlaNH2.HCl(配列番号4)
窒素雰囲気下で、LeuArgPro(D)AlaNH2(配列番号3)(1.05当量)をDMAに溶解し、最高40℃でMSAによりシリル化させ、その後、溶液を約5℃に冷却した。窒素雰囲気下で、ZSerTyr(D)CitOH(1.0当量)およびHOOBt(1.05当量)を最高40℃でMSAに溶解し、溶液を約−5℃に冷却した。その後、溶液Aを溶液Bに移送し、EDCの添加によってカップリングを開始した。HCl(1.1当量)および反応混合物を少なくとも1時間にわたり−5℃で、その後、少なくとも3時間の間約5℃で攪拌した。反応の終わりをHPLCによって調べた。溶媒を真空下で除去し、その後、濃縮物をNaClの1%水溶液中で希釈し、pHを希HClの制御された添加によって2.5〜3.3の間に調節した。HOOBtおよびDMAを除去するために、水溶液をDCMで洗浄し、その後、ペプチドをn−BuOHで3回抽出した。含水率が1質量%以下になるまで減圧下での蒸発によって溶媒を除去した。約45℃で温度を維持することによりスラリーをアセトンで漸次希釈して、ペプチドを白色固体として沈殿させた。約20℃で少なくとも1時間の間攪拌後に白色固体を濾過した。固体をアセトンで、最後にアセトニトリルで洗浄した。アセトン含有率が20質量%以下になるまで沈殿物を乾燥させた。本出願人らは少なくとも70質量%の収率で白色固体を得た。
【0036】
実施例3:[3+7]:Ac−(D)Nal−(D)Cph−(D)Pal−Ser−Tyr−(D)Cit−Leu−Arg−Pro−(D)Ala−NH2.HCl(配列番号1)
窒素雰囲気下で、SerTyr(D)CitLeuArgPro(D)AlaNH2(配列番号4)(1.05当量)をDMAに溶解し、少なくとも60分にわたり最高40℃でMSAによりシリル化させ、その後、溶液を約−5℃に冷却した。窒素雰囲気下で、Ac(D)Nal(D)Cph(D)PalOH(1.0当量)およびHOOBt(1.05当量)を最高40℃でDMAに溶解し、溶液を約−5℃に冷却した。その後、溶液Aを溶液Bに移送し、EDCの添加によってカップリングを開始した。HCl(1.1当量)および反応混合物を少なくとも2時間にわたり−5℃で、その後、少なくとも8時間の間約5℃±5で攪拌した。反応の終わりをHPLCによって調べた。反応全体を通して均質なままであった反応混合物を水で希釈し、HClの希釈水溶液によりpHを2.0±0.5で調節した。その後、溶液を±35℃でDCMで2回洗浄し、その後、n−BuOHでペプチドを3回抽出した。組み合わせた有機相を最後に水で洗浄した。含水率が2質量%以下になるまで減圧下での蒸発によって溶媒を除去した。スラリーをアセトンで希釈して、ペプチドを白色固体として沈殿させた。約15℃で少なくとも1時間の間攪拌後に白色固体を濾過した。固体をアセトンで洗浄した。アセトン含有率が5質量%以下になるまで沈殿物を乾燥させた。その後、少なくとも1時間の間約20℃でMeOHとアセトンの1/1混合物中で、乾燥させた固体を粉砕し、濾過し、アセトンで洗浄した。本出願人らは少なくとも70質量%の収率で白色固体を得た。
【0037】
実施例4:[4+7]:Boc−Cys(Trt)−Ser(tBu)−Asn−Leu−Ser(tBu)−Thr−Cys(Trt)Val Leu Gly OH (配列番号9)
窒素雰囲気下で、Ser(tBu)Thr−Cys(Trt)Val Leu GlyOH(配列番号5)(1.0当量)をNMPに溶解し、少なくとも90分にわたり最高50℃でMSAによりシリル化させ、その後、溶液を約5℃に冷却した。窒素雰囲気下で、Boc−Cys(Trt)−Ser(tBu)−Asn−Leu OH(配列番号7)(1.02当量)およびNMM(1.05当量)をNMPに溶解し、その後、溶液を約−15℃±5に冷却した。その後、カルボキシル部分をIBCF(1.05当量)の添加によって活性化した。その後、溶液Aを溶液Bに移送し、反応混合物を少なくとも60分にわたり0℃で攪拌した。反応全体を通して均質なままであった反応混合物をKHSO4の水溶液で希釈し、それはペプチドを沈殿させた。固体を濾過し、水、その後、アセトンと水の9/1混合物で洗浄した。乾燥後、本出願人らは少なくとも75質量%の収率で白色固体を得た。
【0038】
実施例5:[4+7]:Fmoc−His(Trt)−Trp−Ser−Tyr−(D)Ser(tBu)−Leu−Arg−Pro−NHNHCONH2(配列番号10)
窒素雰囲気下で、H−TrpSerTyr(D)Ser(tBu)LeuArgProNHNHCONH2(配列番号6)(1.0当量)をDMAに溶解し、少なくとも60分にわたり最高40℃でMSAによりシリル化させた。溶液を約±25℃に冷却し、Fmoc−His(Trt)−OH(1.0当量)およびHBTU(1.1当量)を添加し、完全に溶解するまで±25℃で溶液を混合し、次に約−5℃まで冷却した。DIPEA(1.1当量)の制御された添加によってカップリングを開始した。反応の終わりをHPLCによって調べた。カップリング中に均質なままであった反応混合物をKHSO4の水溶液で希釈し、それはペプチドを沈殿させた。固体を濾過し、水で洗浄した。乾燥後、本出願人らは少なくとも70質量%の収率で白色固体を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドまたはペプチド類似体を製造する方法であって、
(a)トリメチルシリルシアニド以外のシリル化剤との反応によって対応するペプチドをシリル化することによりペルシリル化ペプチドまたはペルシリル化ペプチド類似体を製造する工程と、
(b)式(I)X−A−COOH(式中、Xはアミノ保護基であり、Aは、アミノ酸残基、ペプチド残基またはペプチド類似体残基であり、−COOHは任意に活性化されたカルボキシル基を表す)の化合物を4〜15個のアミノ酸を含有するペルシリル化ペプチドまたはペルシリル化ペプチド類似体と反応させる工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記ペルシリル化ペプチドが、4、5、6、7または8個のアミノ酸を含有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ペルシリル化ペプチドが、4、5または6個のアミノ酸を含有する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(b)の反応が有機溶媒中で行われる請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記シリル化剤が、N−トリアルキルシリルアミンおよびN−トリアルキルシリルアミドから選択され、好ましくは、N−メチル−N−トリメチルシリルアセトアミド(MSA)である請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記有機溶媒が、極性有機溶媒、好ましくはアミド型溶媒、より好ましくはN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)である請求項4または5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(a)のシリル化反応が25℃〜50℃の温度で行われる請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
シリル化されるべき官能基のモル量を基準として、0.5〜5当量、好ましくは0.7〜1.5当量のシリル化剤が用いられる請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
Aが、2、3、4、5、6、7、8または9個のアミノ酸を含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
Xが電子求引性アミノ保護基である請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
XがBoc基である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程(b)の反応が、カルボキシル基活性化剤、好ましくはピバロイルクロリドまたはイソブチルクロロホルメートの存在下で行われる請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記反応によって生成した化合物から基Xを除去する工程を更に含む請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
式(I)X−A−COOH(式中、Xはアミノ保護基であり、Aは、アミノ酸残基、ペプチド残基またはペプチド類似体残基であり、−COOHは任意に活性化されたカルボキシル基を表す)の化合物をペルシリル化ペプチドまたはペルシリル化ペプチド類似体と反応させることによって得られる部分シリル化ペプチドまたは部分シリル化ペプチド類似体の溶液を提供するための極性有機溶媒の使用。
【請求項15】
前記極性有機溶媒が、好ましくはN,N−ジメチルホルムアミドおよびN,N−ジメチルアセトアミドから選択されるアミド型溶媒である請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドである請求項15に記載の使用。
【請求項17】
Aにおけるアミノ酸単位および任意の類似体単位の数対ペルシリル化ペプチドまたはペルシリル化ペプチド類似体におけるアミノ酸単位および任意の類似体単位の数の比が、1:5〜3:2、好ましくは1:4〜1:1である請求項14〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記溶液が10質量%〜95質量%の極性有機溶媒を含有する請求項14〜17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
部分シリル化ペプチドまたは部分シリル化ペプチド類似体が、請求項9または10のいずれか一項に記載の式(I)の化合物を請求項1〜3のいずれか一項に記載のペルシリル化ペプチドまたはペルシリル化ペプチド類似体と反応させることにより得られる請求項14〜18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
前記溶液が−40℃〜+10℃の温度で均質である請求項14〜19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
請求項14〜20のいずれか一項に記載の使用を含む、ペプチドまたはペプチド類似体を製造する方法。
【請求項22】
N−メチル−N−トリメチルシリルアセトアミドおよびアミド型溶媒を含有する液媒体中に4〜15個のアミノ酸を含有するペプチドまたはペプチド類似体を含む溶液。
【請求項23】
前記アミド型溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドである請求項23に記載の溶液。

【公表番号】特表2011−503223(P2011−503223A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534457(P2010−534457)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065767
【国際公開番号】WO2009/065836
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】