説明

ペンシル状化粧料および化粧製品

【課題】塗布時のなめらかさに優れたペンシル状化粧料および化粧製品を提供する。
【解決手段】(a)硬化ヒマシ油、ベヘニン酸およびモクロウからなる混合油分であって、硬化ヒマシ油とベヘニン酸との合計配合量が混合油分中55〜90質量%、ベヘニン酸とモクロウとの合計配合量が混合油分中75〜95質量%、である混合油分を20〜40質量%と、(b)ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ビスジグリセリルポリアシルアジペート−2、ヒドロキシアルキルダイマージリノレイルエーテルから選ばれる一種又は二種以上よりなる融点が30℃〜50℃である半固形油分を1〜20質量%と、を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペンシル状化粧料および化粧製品に関し、より詳しくは、塗布時のなめらかさに優れたペンシル状化粧料および化粧製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、アイライナーペンシル、アイブローペンシル、リップペンシルのようなペンシル状化粧料は、押出成形でペンシル芯を製造する。そして、一般的にペンシル状化粧料は、芯の固形化剤として、硬化ヒマシ油、モクロウなどの固形油分が用いられている(特許文献1,2参照)。
これらのペンシル状化粧料は、目元や唇に直接塗布して用いるため、なめらかに塗布できるものであることが好ましいが、従来知られているペンシル状化粧料は、この点で必ずしも満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−056116号公報
【特許文献2】特開昭61−221109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、塗布時のなめらかさに優れたペンシル状化粧料および化粧製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究の結果、固形油分と半固形油分を、特定の油分構成で用いることで、塗布時のなめらかさに優れたペンシル状化粧料が得られることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、
(a)硬化ヒマシ油、ベヘニン酸およびモクロウからなる混合油分であって、硬化ヒマシ油とベヘニン酸との合計配合量が混合油分中、55〜90質量%、ベヘニン酸とモクロウとの合計配合量が混合油分中、75〜95質量%、である混合油分を20〜40質量%と、
(b)ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ビスジグリセリルポリアシルアジペート−2、ヒドロキシアルキルダイマージリノレイルエーテルから選ばれる一種又は二種以上よりなる融点が30℃〜50℃である半固形油分を1〜20質量%と、
を配合してなることを特徴とするペンシル状化粧料である。
【0007】
また本発明は、上記ペンシル状化粧料が、シャープペンシル形収納容器に繰り出し可能に収納されていることを特徴とする化粧製品である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のペンシル状化粧料は、塗布時のなめらかさに優れ、しかものびが良好で使用性の良いものである。
また、本発明の化粧製品によれば、上記ペンシル状化粧料を木軸タイプのペンシルのように芯を木軸等にセットするだけでなく、シャープペンシル形収納容器に繰り出し可能に収納することで、ペンシル状化粧料を簡易な方法で塗布でき、使用性がさらに高められたものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の最良の実施形態について説明する。
本発明においては、硬化ヒマシ油、ベヘニン酸、モクロウの組み合わせでのペンシル状化粧料であって、これらの固形油分を特定の使用割合とし、さらに融点が30℃〜50℃である特定の半固形油分を配合することで、ペンシル状でありながら、なめらかな塗布感を有するペンシル状化粧料とすることができたものである。
【0010】
先ず、(a)硬化ヒマシ油、ベヘニン酸およびモクロウからなる混合油分について説明する。
これらの各油分の配合量は、混合油分全量を100とした時に、硬化ヒマシ油とベヘニン酸との合計配合量が55〜90質量%、ベヘニン酸とモクロウとの合計配合量が75〜95質量%であるようにする。より好ましくは、硬化ヒマシ油とベヘニン酸との合計配合量が60〜85質量%、ベヘニン酸とモクロウとの合計配合量が80〜90質量%であるようにする。
硬化ヒマシ油とベヘニン酸との合計配合量、およびベヘニン酸とモクロウとの合計配合量が少なすぎたり、多すぎたりする場合は、いずれの場合も発粉が生じやすくなる。
【0011】
(a)硬化ヒマシ油、ベヘニン酸およびモクロウからなる混合油分の配合量は、ペンシル状化粧料全量中、20〜40質量%であり、好ましくは25〜35質量%である。
(a)成分が少なすぎたり、多すぎたりすると、いずれも適度な硬さと、なめらかさが得られない。
【0012】
次に、(b)融点が30℃〜50℃である半固形油分について説明する。
(b)成分としては、(b)成分が、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ビスジグリセリルポリアシルアジペート−2、ヒドロキシアルキルダイマージリノレイルエーテルから選ばれる一種又は二種以上であることが好ましい。
【0013】
ここで、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルとしては市販品としてコスモール 168M(日清オイリオ社製)が挙げられる。ビスジグリセリルポリアシルアジペート−2としては市販品としてSOFTISAN 649(SASOL社製)が挙げられる。ヒドロキシアルキルダイマージリノレイルエーテルとしては市販品としてスーパーモル PS(クローダジャパン社製)が挙げられる。
【0014】
(b)融点が30℃〜50℃である半固形油分の配合量は1〜20質量%であるものとし、好ましくは5〜15質量%である。(b)成分の配合量が1質量%未満の場合は塗布時のなめらかさに欠けるようになり、20質量%を超えると塗布時ののびが重くなる。
【0015】
本発明においては、上記必須成分としての油分のほか、2−エチルヘキサン酸セチル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、イソステアリルアルコールリンゴ酸ジエステル、トリメチロールプロパントリイソオクタノエート、イソオクタン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトライソオクタノエート、パルミチン酸オクチル、クエン酸アセチルトリブチル、ジメチルポリシロキサン(6〜5000cs)、メチルフェニルポリシロキサン等の流動油分を用いることができる。
【0016】
本発明においては、上記必須成分以外に色材が配合される。色材はペンシル状化粧料に通常用いられる色材であれば良く、粉末状でもレーキ状(油を練り込んだ状態)でもよい。無機顔料であっても、有機顔料であっても、パール剤であってもよい。
【0017】
本発明のペンシル状化粧料には、上記成分に加えて必要に応じ、顔料、保湿剤、防腐剤、酸化防止剤、香料、薬剤、溶剤等を本発明の効果を損なわない質的、量的条件下で使用することが可能である。
【0018】
本発明のペンシル状化粧料としては、アイブローペンシル、アイライナーペンシルの他に、リップペンシル、ペンシル状アイシャドー等が含まれ、特にアイブローペンシル、アイライナーペンシルが好適である。形態としては、ペンシル形またはシャープペンシル形が挙げられる。中でも、繰出しするシャープペンシル形のアイブローペンシル、アイライナーペンシルが使用上便利である。
【実施例】
【0019】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限り質量%で示す。
実施例の説明に先立ち本発明で用いた効果試験方法について説明する。
【0020】
(1)なめらかさの評価試験
塗布時のなめらかさについて、パネル10名による使用テストを行い、パネル各人が下記評価にて7段階に評価し、各試料ごとにパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
6:非常に良い
5:良い
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
0:非常に悪い
【0021】
(4段階判定基準)
5.2以上 :◎(非常に良好)
3.2以上5.2未満:○(良好)
1.2以上3.2未満:△(どちらともいえない〜やや不良)
1.2未満 :×(不良)
【0022】
(2)硬さの評価試験
硬さについて、パネル10名による使用テストを行い、パネル各人が下記評価にて3段階に評価し、各試料のパネル全員の評点合計から、その平均点を算出し、下記3段階判定基準により判定した。
0:非常に硬い、もしくは非常に脆い。
1:やや硬い、もしくはやや脆い。
2:ちょうどよい。
(3段階判定基準)
1.5以上 :○(良好)
1以上1.5未満:△(どちらともいえない〜やや不良)
1未満 :×(不良)
【0023】
(3)発粉の評価試験
45℃、2ヵ月条件下に芯を置き、目視で確認した。
【0024】
実施例1〜3、比較例1(アイブローペンシル)
次の表1に記載する材料を練り合わせ、該練り合わせ体を出口に所定の径のダイスをセットしたノズルを組み付けた芯成型機に入れ、押し伸ばし出しすることにより、芯体を成型した。芯体のサイズ(芯の切断面)は、2×3(mm)の楕円芯とした。この芯体を繰出し芯としてシャープペンシル形の繰出し器に挿入してアイブローペンシルとした。
【0025】
得られた実施例1〜3、比較例1のアイブローペンシルのなめらかさについて、上記した基準で評価した。その結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
※1:水添パーム油(安定剤含む)(50質量%)−パーム核油(30質量%)−パーム油(20質量%)、融点:44〜50℃
【0028】
表1から、本発明の(b)成分であるヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ビスジグリセリルポリアシルアジペート−2、またはヒドロキシアルキルダイマージリノレイルエーテルを用いた実施例1〜3は、用いていない比較例1に比べて、塗布時のなめらかさに優れていることが分かる。
【0029】
実施例4〜9(アイブローペンシル)
次の表2に記載する材料を用いて上記と同様にしてアイブローペンシルを調製した。
得られた実施例4〜9のアイブローペンシルのなめらかさ、および硬さについて、上記した基準で評価した。その結果を表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
※2:若干のびが重い。
実施例4〜6は、硬化ヒマシ油、ベヘニン酸およびモクロウからなる混合油分の配合量を変化させたもので、実施例4は混合油分の下限値での配合であるため、若干柔らかくなっている。また実施例6は混合油分の上限値での使用であるため、若干硬くなっている。
実施例7〜9は、(b)成分であるヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルの配合量を変化させたもので、実施例7はヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルの下限値での配合であるため、若干なめらかさに劣る結果になっている。また実施例9はヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルの上限値での使用であるため、若干のびが重くなっている。
これに対し、実施例5,8(処方はいずれも同じ)は、硬さ、なめらかさ共に良好なものとなっている。
【0032】
実施例10〜14(アイブローペンシル)
次の表3に記載する材料を用いて上記と同様にしてアイブローペンシルを調製した。
得られた実施例10〜14のアイブローペンシルの発粉のなさについて、上記した基準で評価した。その結果を表3に示す。
なお表3中、(硬化ヒマシ油+ベヘニン酸+モクロウ)は、これらの合計配合量割合であり、(ベヘニン酸+硬化ヒマシ油)は、(硬化ヒマシ油+ベヘニン酸+モクロウ)に対する(ベヘニン酸+硬化ヒマシ油)の割合であり、(ベヘニン酸+モクロウ)は、(硬化ヒマシ油+ベヘニン酸+モクロウ)に対する(ベヘニン酸+モクロウ)の割合である。
【0033】
【表3】

【0034】
実施例11,12はそれぞれ混合油分中の硬化ヒマシ油およびベヘニン酸の合計配合量が下限値および上限値であるため、いずれもやや発粉をしている。また実施例13,14はそれぞれ混合油分中のベヘニン酸およびモクロウの合計配合量が下限値および上限値であるため、いずれもやや発粉をしている。
これに対し、実施例10は、混合油分中の硬化ヒマシ油およびベヘニン酸の合計配合量、および混合油分中のベヘニン酸およびモクロウの合計配合量がいずれも好適な範囲内であることから、発粉のない良好なアイブローペンシルであることが分かる。
【0035】
以下に、本発明のペンシル状化粧料の処方例を挙げる。本発明はこの処方例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
【0036】
処方例1(アイブロー)
硬化ヒマシ油 5.0 質量%
モクロウ 10.0
ベヘニン酸 12.5
ミツロウ 4.0
ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル 10.0
酢酸ステアリン酸スクロース 5.0
リンゴ酸ジイソステアリル 3.0
トコフェロール 0.05
マイカ 残余
色材 40.0
【0037】
(製造方法)
油分部を100℃で融解、混合し、粉末部を添加し、90℃で混合する。その後80℃以下になったところでローラーにて適宜混練し、所定のダイスを用いて成型する。その後所定の長さに切断し、容器に装填する。
【0038】
処方例2(アイライナー)
硬化ヒマシ油 5.0 質量%
モクロウ 8.0
ベヘニン酸 16.0
ビスジグリセリルポリアシルアジペート−2 15.0
酢酸ステアリン酸スクロース 5.0
トリエチルヘキサノイン 9.0
トコフェロール 0.05
マイカ 残余
色材 40.0
【0039】
(製造方法)
油分部を100℃で融解、混合し、粉末部を添加し、90℃で混合する。その後80℃以下になったところでローラーにて適宜混練し、所定のダイスを用いて成型する。その後所定の長さに切断し、容器に装填する。
【0040】
処方例3(リップライナー)
硬化ヒマシ油 4.5
水添パーム油 8.0
パーム核油 4.8
パーム油 3.2
モクロウ 6.0
ベヘニン酸 14.0
ヒドロキシアルキルダイマージリノレイルエーテル 15.0
酢酸ステアリン酸スクロース 5.0
トリエチルヘキサノイン 10.0
トコフェロール 0.05
マイカ 残余
色材 25.0
【0041】
(製造方法)
油分部を100℃で融解、混合し、粉末部を添加し、90℃で混合する。その後80℃以下になったところでローラーにて適宜混練し、所定のダイスを用いて成型する。その後所定の長さに切断し、容器に装填する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)硬化ヒマシ油、ベヘニン酸およびモクロウからなる混合油分であって、
硬化ヒマシ油とベヘニン酸との合計配合量が混合油分中、55〜90質量%、
ベヘニン酸とモクロウとの合計配合量が混合油分中、75〜95質量%、
である混合油分を20〜40質量%と、
(b)ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ビスジグリセリルポリアシルアジペート−2、ヒドロキシアルキルダイマージリノレイルエーテルから選ばれる一種又は二種以上よりなる融点が30℃〜50℃である半固形油分を1〜20質量%と、
を配合してなることを特徴とするペンシル状化粧料。
【請求項2】
請求項1に記載のペンシル状化粧料が、シャープペンシル形収納容器に繰り出し可能に収納されていることを特徴とする化粧製品。

【公開番号】特開2010−209009(P2010−209009A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57825(P2009−57825)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】