説明

ペンシル状化粧料

【課題】塗布時のなめらかさに優れ、しかも化粧持ちのよいペンシル状化粧料を提供する。
【解決手段】(a)ベヘニルアルコールを5〜20質量%と、(b)トリメチルシロキシケイ酸を5〜20質量%と、(c)ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ビスジグリセリルポリアシルアジペート−2、ヒドロキシアルキルダイマージリノレイルエーテルから選ばれる一種又は二種以上よりなる融点が30℃〜50℃である半固形油分を1〜20質量%と、を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペンシル状化粧料に関し、より詳しくは、化粧持ちと塗布時のなめらかさに優れたペンシル状化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に化粧持ちのよいアイライナーペンシル、アイブローペンシルなどのペンシル状化粧料は、固型油分、流動油分、揮発油分、樹脂を主成分とし、塗布後、処方中の揮発油分が揮散すると連続的な皮膜を皮膚上に形成するものである。生成された皮膜は水に不溶であるから汗や涙に滲まず、皮脂にも強く、取り除く際はリムーバーで濡らせばはがし取ることができる。このタイプのペンシル状化粧料は使用性の点から樹脂の選択が重要である。近年開発された有機シリコーン樹脂(例えばトリメチルシロキシケイ酸のデカメチルシクロペンタシロキサン50%溶液)を用いたペンシル状化粧料は、耐水性、耐油性が良好で、化粧持ちに優れているため、汎用されている樹脂である(例えば特許文献1)。
【0003】
一方、アイライナーペンシル、アイブローペンシル、リップペンシルのようなペンシル状化粧料は、鉛筆のように削って使用するタイプと、シャープペンシルのように繰り出して使用するタイプがあり、繰り出しタイプには、カートリッジ式に中身が取り替えられるタイプがある。
【0004】
これらのペンシル状化粧料は、目元や唇に直接塗布して用いるため、化粧持ちが良いことに加えて、なめらかに塗布できるものであることが好ましいが、従来知られているペンシル状化粧料は、この点で必ずしも満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−210958
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、化粧持ちと塗布時のなめらかさに優れたペンシル状化粧料および化粧製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究の結果、ベヘニルアルコールと、トリメチルシロキシケイ酸と、特定の半固形油分を配合することで、化粧持ちと塗布時のなめらかさに優れたペンシル状化粧料が得られることを見出した。
【0008】
すなわち本発明は、
(a)ベヘニルアルコールを5〜20質量%と、(b)トリメチルシロキシケイ酸を5〜20質量%と、(c)ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ビスジグリセリルポリアシルアジペート−2、ヒドロキシアルキルダイマージリノレイルエーテルから選ばれる一種又は二種以上よりなる融点が30℃〜50℃である半固形油分を1〜20質量%と、を配合してなることを特徴とするペンシル状化粧料である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のペンシル状化粧料は、塗布時のなめらかさに優れ、しかも化粧持ちのよいものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の最良の実施形態について説明する。
本発明においては、ベヘニルアルコールとトリメチルシロキシケイ酸を配合することで化粧持ちを高め、これに特定の半固形油分を配合することで、化粧持ちのよさに加えてなめらかな塗布感をも有するペンシル状化粧料とすることができたものである。
【0011】
本発明で用いられる(a)ベヘニルアルコールは、高級アルコールに分類される油性原料で、ナタネ油の還元アルコールより得られる融点65〜73℃の白色の固体である。
【0012】
(a)ベヘニルアルコールの配合量は、ペンシル状化粧料全量中、5〜20質量%であり、好ましくは10〜15質量%である。(a)成分が多すぎると硬くなり、少なすぎると柔らかくなり、いずれも適度な硬さが得られない。
【0013】
次に、(b)トリメチルシロキシケイ酸について説明する。
(b)トリメチルシロキシケイ酸は、R3SiO1/2単位およびSiO2単位の組み合わせからなり、その割合は平均式:RnSiO(4-n)/2(nは1.0から1.8までの値を表す。)を満足するように選ばれ、約1500〜10000までの平均分子量を有することが望ましい。
【0014】
上記トリメチルシロキシケイ酸はベンゼンに可溶であり、各種の方法で製造し得る。一例をあげると、一般式R3SiX、およびSiX4(Xは加水分解し得る基、たとえば塩素、臭素、フッ素、アルコキシ基、たとえばメトキシ、エトキシなどの基、アシロキシ基を表す)で示される化合物を、目的とする樹脂組成に応じてトルエン、ベンゼン、キシレンなどのごとき適当な溶媒に添加し、次いでこの溶媒を適当な酸性溶媒中における希望する加水分解および共縮合を得るのに十分な量の水中に加える。こうして得られた二相系から水相を除去し、残留する樹脂状物質を重炭酸ナトリウムあるいは他のアルカリ性物質の充分量を用いて中和し、溶媒を留去すれば目的のトリメチルシロキシケイ酸が得られる。
【0015】
このようなトリメチルシロキシケイ酸としては、あらかじめ揮発油分(溶剤)に溶解させたものを化粧料中に配合することが望ましい。例えば、KF−7312J、KF−9021、X−21−5595(信越シリコーン社製商品名)、BY11−018(東レ社製商品名)等が挙げられる。
また、トリメチルシロキシケイ酸を溶解させるのに用いられる揮発油分(溶剤)としては、例えばデカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、イソパラフィン等が挙げられる。
【0016】
本発明における(b)トリメチルシロキシケイ酸の配合量はペンシル状化粧料全量中の5〜20質量%、好ましくは10〜15質量%である。トリメチルシロキシケイ酸が5質量%未満では化粧持ちに欠け、20質量%を超えて使用すると、のびが重くなる。
【0017】
次に、(c)融点が30℃〜50℃である半固形油分について説明する。
(c)成分としては、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ビスジグリセリルポリアシルアジペート−2、ヒドロキシアルキルダイマージリノレイルエーテルから選ばれる一種又は二種以上であることが好ましい。
【0018】
ここで、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルとしては市販品としてコスモール 168M(日清オイリオ社製)が挙げられる。ビスジグリセリルポリアシルアジペート−2としては市販品としてSOFTISAN 649(SASOL社製)が挙げられる。ヒドロキシアルキルダイマージリノレイルエーテルとしては市販品としてスーパーモル PS(クローダジャパン社製)が挙げられる。
【0019】
(c)成分の配合量は1〜20質量%であるものとし、好ましくは5〜15質量%である。(b)成分の配合量が1質量%未満の場合は塗布時のなめらかさに欠けるようになり、20質量%を超えると塗布時ののびが重くなる。
【0020】
本発明においては、上記必須成分としての油分のほか、2−エチルヘキサン酸セチル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、イソステアリルアルコールリンゴ酸ジエステル、トリメチロールプロパントリイソオクタノエート、イソオクタン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトライソオクタノエート、パルミチン酸オクチル、クエン酸アセチルトリブチル、ジメチルポリシロキサン(6〜5000cs)、メチルフェニルポリシロキサン等の流動油分を用いることができる。
【0021】
本発明においては、必須成分であるベヘニルアルコールの他にも、ワックスやロウなどの固形油分を併用してもよい。ベヘニルアルコール以外の固形油分の融点としては、特に限定されるものではないが、製造の容易性や製品安定性の面から、55℃〜105℃、好ましくは、60〜100℃である。固形油分としてはカルナバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、硬化ヒマシ油、ベヘニン酸、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックスとマイクロクリスタリンワックスの混合ワックス、セレシンワックス、固形パラフィンワックス、コメヌカロウ、フィッシャートロプシュワックス、トリステアリン等を用いることができる。これらの固形油分は、1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0022】
ベヘニルアルコール以外の固形油分の配合量としては、特に限定されるものではないが、0〜35質量%、好ましくは5〜25質量%、さらに好ましくは、10〜20質量%の場合に良好な固化力と使用感を得られる。
【0023】
また、ベヘニルアルコールとベヘニルアルコール以外の固形油分との合計量としては、20〜40質量%が好ましい。
【0024】
本発明においては、上記必須成分以外に色材が配合される。色材はペンシル状化粧料に通常用いられる色材であれば良く、粉末状でもレーキ状(油を練り込んだ状態)でもよい。無機顔料であっても、有機顔料であっても、パール剤であってもよい。
【0025】
本発明のペンシル状化粧料には、上記成分に加えて必要に応じ、顔料、保湿剤、防腐剤、酸化防止剤、香料、薬剤、溶剤等を本発明の効果を損なわない質的、量的条件下で使用することが可能である。
【0026】
本発明のペンシル状化粧料としては、アイブローペンシル、アイライナーペンシルの他に、リップペンシル、ペンシル状アイシャドー等が含まれ、特にアイブローペンシル、アイライナーペンシルが好適である。形態としては、ペンシル形またはシャープペンシル形が挙げられる。中でも、樹脂軸に直接流し込む樹脂軸タイプのアイブローペンシル、アイライナーペンシルが好ましい。
【実施例】
【0027】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限り質量%で示す。
実施例の説明に先立ち本発明で用いた効果試験方法について説明する。
【0028】
(1)なめらかさ、化粧持ちのよさの評価試験
塗布時のなめらかさおよび塗布後の化粧持ちのよさについて、パネル10名による使用テストを行い、パネル各人が下記評価にて7段階に評価し、それぞれの試料ごとにパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
6:非常に良い
5:良い
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
0:非常に悪い
【0029】
(4段階判定基準)
5.2以上 :◎(非常に良好)
3.2以上5.2未満:○(良好)
1.2以上3.2未満:△(どちらともいえない〜やや不良)
1.2未満 :×(不良)
【0030】
(2)硬さの評価試験
硬さについて、パネル10名による使用テストを行い、パネル各人が下記評価にて3段階に評価し、各試料のパネル全員の評点合計から、その平均点を算出し、下記3段階判定基準により判定した。
0:非常に硬い、もしくは非常に脆い。
1:やや硬い、もしくはやや脆い。
2:ちょうどよい。
(3段階判定基準)
1.5以上 :○(良好)
1以上1.5未満:△(どちらともいえない〜やや不良)
1未満 :×(不良)
【0031】
実施例1〜3、比較例1(アイブローペンシル)
次の表1に記載する固形油分、半固形油分、流動油分、界面活性剤および酸化防止剤を95〜100℃で加熱溶解し、ここに色材と体質顔料を加えて分散・混合した後、さらに有機シリコーン樹脂液(トリメチルシロキシケイ酸−50質量%デカメチルシクロペンタシロキサン溶液)とデカメチルシクロペンタシロキサンを加えて90℃で分散・混合し、次いで脱気後、樹脂軸に充填した。
【0032】
得られた実施例1〜3、比較例1のアイブローペンシルのなめらかさについて、上記した基準で評価した。その結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
※1:水添パーム油(安定剤含む)(50質量%)−パーム核油(30質量%)−パーム油(20質量%)、融点:44〜50℃
※2:トリメチルシロキシケイ酸−50質量%デカメチルシクロペンタシロキサン溶液
【0035】
表1から、本発明の(c)成分であるヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ビスジグリセリルポリアシルアジペート−2、またはヒドロキシアルキルダイマージリノレイルエーテルを用いた実施例1〜3は、用いていない比較例1に比べて、塗布時のなめらかさに優れていることが分かる。
【0036】
実施例4〜12(アイブローペンシル)
次の表2に記載する材料を用いて上記と同様にしてアイブローペンシルを調製した。
得られた実施例4〜12のアイブローペンシルの塗布時のなめらかさ、塗布後の化粧持ちのよさ、および硬さについて、上記した基準で評価した。その結果を表2に示す。
【0037】
【表2】

【0038】
※2:トリメチルシロキシケイ酸−50質量%デカメチルシクロペンタシロキサン溶液
※3:若干のびが重い。
【0039】
実施例4〜6は、ベヘニルアルコールの配合量を変化させたもので、実施例4はベヘニルアルコールの下限値での配合であるため、若干柔らかくなっている。また実施例6はベヘニルアルコールの上限値での使用であるため、若干硬くなっている。
実施例7〜9は、(b)成分であるトリメチルシロキシケイ酸の配合量を変化させたもので、実施例7はトリメチルシロキシケイ酸の下限値での配合であるため、若干化粧持ちに劣る結果になっている。また実施例9はトリメチルシロキシケイ酸の上限値での使用であるため、若干のびが重くなっている。
実施例10〜12は、(c)成分であるヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルの配合量を変化させたもので、実施例10はヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルの下限値での配合であるため、若干なめらかさに劣る結果になっている。また実施例12はヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルの上限値での使用であるため、若干のびが重くなっている。
これに対し、実施例5,8,11(処方はいずれも同じ)は、硬さ、なめらかさ共に良好なものとなっている。
【0040】
以下に、本発明のペンシル状化粧料の処方例を挙げる。本発明はこの処方例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
【0041】
処方例1(アイブロー)
ベヘニルアルコール 14.0 質量%
カルナバロウ 2.0
キャンデリラロウ 10.0
ミツロウ 2.0
ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル 10.0
セスキイソステアリン酸ソルビタン 1.0
トリメチルシロキシケイ酸−デカメチルシクロペンタシロキサン溶液 15.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 4.0
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 5.0
トリエチルヘキサノイン 2.0
トコフェロール 適量
マイカ 残余
色材 32.0
【0042】
(製造方法)
揮発性油剤以外を95〜100℃で融解及び攪拌混合する。次に揮発性油剤を添加し、80℃以上で攪拌混合し脱気後所定の容器に充填する。
【0043】
処方例2(アイライナー)
ベヘニルアルコール 10.0 質量%
カルナバロウ 2.0
キャンデリラロウ 8.0
ビスジグリセリルポリアシルアジペート−2 10.0
セスキイソステアリン酸ソルビタン 1.0
トリメチルシロキシケイ酸−デカメチルシクロペンタシロキサン溶液 22.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 5.0
トリエチルヘキサノイン 7.0
リンゴ酸ジイソステアリル 3.0
トコフェロール 適量
マイカ 残余
色材 30.0
【0044】
(製造方法)
揮発性油剤以外を95〜100℃で融解及び攪拌混合する。次に揮発性油剤を添加し、80℃以上で攪拌混合して脱気後、所定の容器に充填する
【0045】
処方例3(リップライナー)
ベヘニルアルコール 10.0 質量%
カルナバロウ 1.0
キャンデリラロウ 10.0
ヒドロキシアルキルダイマージリノレイルエーテル 15.0
トリメチルシロキシケイ酸−デカメチルシクロペンタシロキサン溶液 15.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 3.0
水添ポリイソブテン 3.0
トリエチルヘキサノイン 12.0
リンゴ酸ジイソステアリル 3.0
トコフェロール 適量
マイカ 残余
色材 25.0
【0046】
(製造方法)
揮発性油剤以外を95〜100℃で融解及び攪拌混合する。次に揮発性油剤を添加し、80℃以上で攪拌混合して脱気後、所定の容器に充填する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ベヘニルアルコールを5〜20質量%と、
(b)トリメチルシロキシケイ酸を5〜20質量%と、
(c)ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ビスジグリセリルポリアシルアジペート−2、ヒドロキシアルキルダイマージリノレイルエーテルから選ばれる一種又は二種以上よりなる融点が30℃〜50℃である半固形油分を1〜20質量%と、
を配合してなることを特徴とするペンシル状化粧料。

【公開番号】特開2010−215525(P2010−215525A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61002(P2009−61002)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】