ペントスタチン並びにその前駆体、類縁体及び誘導体の合成及び製造
ペントスタチンを効率的に調製及び製造するための方法及び組成物が提供される。また、新規なペントスタチンの前駆体、ペントスタチンの類縁体及び誘導体も提供される。本発明の一つの側面では、ヘテロ環拡大の経路を介した、ペントスタチンの全化学合成のための方法が提供される。例えば、ペントスタチンのような薬物のためのヘテロ環状製薬中間体、例えばジアゼピノン前駆体を、ヒポキサンチン又は2’−デオキシイノシン誘導体におけるO−C−N官能基の環拡大を通して、効率的に得ることができる。当該方法及び組成物はまた、ペントスタチン以外のヘテロ環化合物、特に薬学的に重要なヘテロ環化合物を合成及び製造するためにも使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2003年9月15日に出願された米国仮出願番号60/503,237の利益を主張する。
本発明は、ペントスタチン((8R)−3−(2−デオキシ−β−D−エリスロ−ペントフラノシル)−3,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]−ジアゼピン−8−オール)、ペントスタチンの前駆体、ペントスタチンの類縁体及び誘導体、並びに、O−C−N官能基でのへテロ環の拡大を必要とする他のヘテロ環を調製及び製造するための、組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペントスタチン、即ち、(8R)−3−(2−デオキシ−β−d−エリスロ−ペントフラノシル)−3,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]−ジアゼピン−8−オールは、アデノシンデアミナーゼの強力な阻害剤として有効な薬剤である。ペントスタチンの化学構造を下記に示す:
【化1】
この分子は、(1)ユニークで且つ不安定なヘテロ環塩基、(2)βアノマーに有利な立体的に制御されたグリコシル化の試みに反抗する2−デオキシ糖、及び(3)中央のキラル水酸基を含んでいるので、ペントスタチンの全合成は困難な問題を提起する。
如何なる化学変換の利点も、これら三つの重要な困難に対するその解決度によって評価される。
【0003】
ペントスタチンの最初の合成は、Warner-Lambert/Parke-Davis PharmaceuticalのShowalter及びBaker; Chan, E.; Putt, S. R.; Showalter, H. D. H.; Baker, D.C. J. Org. Chem. 1982, 47, 3457-3464によって示された。この方法では、主にヘテロ環塩基の合成に焦点が当てられた(図1A〜C)。この方法の肝要な点は、イミダゾールに対するα位にケトン官能基(図示の通り)又はキラルアルコールをもった、7のようなジアミン前駆体の合成である。後者の提案は未だ実現されたことがない。このアプローチの一定の側面は、改良に対して臨機応変に対応することを可能にし、且つ改良をし易くする。しかしながら、この方法は、当該塩基前駆体8aを合成するために8段階以上を必要とする。塩基前駆体8aの化学構造を下記に示す。このような方法は商業的に実施するのが困難であり、製造業的規模にスケールアップするためには費用が嵩む。これらの工程の多くにおいて、精製のためにカラムクロマトグラフィーが必要とされる。
【化2】
効率をさらに改善し、且つ合成ペントスタチンを製造するコストを最小限にするために、Chen等は、異なる出発物質から前駆体4を合成した(図2)。Chen, B. -C. ; Chao, S. T.; Sundeen, J. E.; Tellew, J.; Ahmad, S.; Tetrahedron Lett. 2002, 43, 1595-1596。この変法は、N−2ベンジル化の副反応を排除し(3bが形成されない)、前駆体7の全収率を19%から30%に改善し、且つ安価な出発物質1bを使用した。
【0004】
前駆体8aが合成及び精製されたときに、グリコシル化のために利用可能な多くの方法のうちで、Showalter及びBakerは、それをVorbruggenの塩化錫触媒法から適合された塩化パーアシルグリコシルを介して、2−デオキシ糖に縮合させ(図1B)、ペントスタチン前駆体である二つのアノマー9a及び9bを生じさせた。ペントスタチン前駆体9a及び9bの化学構造を下記に示す。
【化3】
Chan, E.; Putt, S. R.; Showalter, H. D. H.; Baker, D. C.; J. Org. Chem. 1982, 47, 3457-3464。グリコシル化の立体制御がされなかったため、慣用的なカラムクロマトグラフィー又は分別結晶化によって、1:1のアノマー混合物を分離することができた。図1Aに示した多段階経路に加えて、塩化パーアシルグリコシル出発物質もまた多段階経路によって調製されなければならず、これらが全体として、単離及び精製工程を必要とする既に非常に長い手順に追加されることになる。
9a(23%)が純粋な形態で単離された後に、保護基が除去され、引続きホウ水素化ナトリウムでペントスタチンに還元され(図1C、10a)、カルボニル官能基がキラル水酸基に変換された。しかし、この変換は立体制御なしで行われたので、化合物10a及び10bのジアステレオマー混合物が得られた。化合物10a及び10bの化学構造を下記に示す。
【化4】
【0005】
立体障害を受けた種々のホウ水素化物(ホウ水素化トリ−sec−ブチルカリウム及び9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン;水素化トリ−tert−ブトキシアルミニウムリチウム、水素化アルミニウムリチウム−(−)−メタノール錯体、水素化アルミニウムリチウム−(−)−N−メチルエフェドリン−3,5−キシレノール錯体)を検討したが、それらはエナンチオマー選択性又は収率において僅かな改善しか示さなかった。Chan, E.; Putt, S. R.; Showalter, H. D. H.; Baker, D. C.; J. Org. Chem. 1982, 47, 3457-3464。ジアステレオマー10a(33%)及び10b(29%)の1:1混合物の分離は、小スケールでは、C−18逆相分取HPLCが最良であると決定された。大スケールについては分別結晶化の方が良好であった。
【0006】
前記三つの重要な困難を解決するためのもう一つのアプローチが、Rapoport によって提案された(Ho, J. Z.; Mohareb, R. M.; Ahn, J. H.; Sim, T. B.; Rapoport, H.J.; Org. Chem. 2003, 68, 109-114)。このアプローチは、所定位置に天然のRコンフィギュレーションの水酸基を備えた塩基の、エナンチオ制御された合成を含んでいる。このアプローチを例示するために、ペントスタチンの類縁体を合成した(図3;シクロペンチル類縁体)。第1の前駆体11は、L−メチオニンから出発する多段階法によって得られ、これに少なくとも8段階の合成工程を必要とする。Truong, T. V.; Rapoport, H.J.; Org. Chem. 1993, 58, 6090-6096。しかし、ペントスタチン自身の合成は未だ実現されておらず、これはさらに長いプロセスを有するだけでなく、糖部分についての未解決の立体化学的困難性をも有するであろう。
Rapoportが提案したアプローチは非常に有望である。それは、注意深く設計された合成経路を組込むことによって、重要な立体化学的困難を解決する。一つの重大な欠点は、それが未だ幾つかの合成段階を含むことである。にもかかわらず、それはShowalter及びBakerが提案した合成経路によりも良好に適合する。
【0007】
対照的に、自然は、ペントスタチンを合成するための非常に効率的な経路を有している。Hanvey等は、S.antibioticusによるコンホルマイシン及びペントスタチンの生合性における中間体として、8−ケトコホルマイシン及び8−ケトデオキシコホルマイシン9aを同定した(図4)。Hanvey, J. C.; Hawkins, E. S; Tunac, J. B.; Dechter, J. J.; Baker, D. C.; Suhadolnik, R. J.; Biochemistry 1987,26, 5636-5641; and Hanvey, J. C.; Hawkins, E. S.; Baker, D. C.; Suhadolnik, R. J.; Biochemistry 1988,27, 5790-5795。1,3−ジアゼピン環の形成は、D−リボースのC−1を用いた、アデノシンのアデニン部分の環拡大によって生じる。次いで、8−ケト官能基の還元が立体特異的に生じて、コホルマイシン又はペントスタチンになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記で述べたペントスタチンの異なる合成スキームに付随する欠点を考慮すれば、微生物によるペントスタチンの生合成を必要としないで、ペントスタチン、ペントスタチンの誘導体及び類縁体を得るための高収率かつ効率的な化学合成が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ペントスタチン、その前駆体、類縁体及び誘導体、並びに他のヘテロ環化合物を効率的に調製及び製造するための方法及び組成物が提供される。
本発明の一つの側面では、ヘテロ環の環拡大の経路を介した、ペントスタチンの全化学合成が提供される。一つの実施形態において、該方法は、
イミダゾール二級アミン及び環式O−C−N官能基(O=C−NH又はHO−C=N)の少なくとも一方が保護基によって保護されているヒポキサンチン誘導体を準備することと;
ヒポキサンチン誘導体の6員環を拡大して、次式を有する保護されたジアゼピノン前駆体を形成することと;
【化5】
該保護されたジアゼピノン前駆体を脱保護して、次式を有するジアゼピノン前駆体8a を得ることと;
【化6】
該ジアゼピノン前駆体8aのN−2を、2−デオキシ−D−リボース又はその誘導体のC−1と縮合させて、次式9aを有する中間体を得ることと;
【化7】
該化合物9aの8−ケト官能基を還元してペントスタチンを得ることと;
を含んでなり、
前記R1及びR1’はそれぞれ独立にH又は保護基であり、R3及びR3’はそれぞれ独立にH又は保護基である。
【0010】
イミダゾール二級アミン及び環式O−C−N官能基のための保護基R3及びR3’の例には、カルバメート(例えばメチル、エチル、t−ブチル、ベンジル、9−フルオレニルメチル、2,2,2−トリクロロエチル、1−メチル−1−(4−ビフェニル)エチル、及び1−(3,5−ジ−t−ブチル)−1−メチルエチル);アミド(例えばアセタミド、トリフルオロアセタミド、及びベンズアミド);アリールアミン(例えばベンジルアミン、4−メトキシベンジルアミン、及び2−ヒドロキシベンジルアミン);及びシリルアミンが含まれるが、これらに限定されない。
【0011】
もう一つの実施形態において、当該方法は、
ヒポキサンチン酸素、ヒポキサンチンアミド窒素、3’−ヒドロキシル酸素、及び5’−ヒドロキシル酸素のうちの少なくとも一つが保護基によって保護された、2’−デオキシイノシン誘導体を準備することと;
2’−デオキシイノシン誘導体の6員環のO−C−N官能基を拡大して、次式20a又は20bを有する中間体を生成することと;
【化8】
化合物20a又は20bの8−ケト官能基を脱保護及び還元して、ペントスタチンを得ることと;
を含んでなり、ここでのR7、R7’、R7’’、及びR7’’’はそれぞれ独立にH又は保護基である。
【0012】
保護基R7、R7’の例には、ベンジルエーテル(例えばp−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、ニトロベンジル、及びp−シアノベンジル);シリルエーテル(例えばトリアルキルシリル及びアルコキシジアルキルシリル);エステル(例えばアセテート、ハロゲン化アセテート、アルコキシアセテート、及びベンゾエート)が含まれるが、これらに限定されない。
保護基R7’’の例には、ベンジルエーテル(例えばp−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、ニトロベンジル、及びp−シアノベンジル);並びにシリルエーテル(例えばトリアルキルシリル及びアルコキシジアルキルシリル)が含まれるが、これらに限定されない。
R7’’’は、カルバメート保護基(例えばメチルカルバメート、エチルカルバメート、t−ブチルカルバメート、ベンジルカルバメート、9−フルオレニルメチルカルバメート、2,2,2−トリクロロエチルカルバメート、1−メチル−1−(4−ビフェニル)エチルカルバメート、及び1−(3,5−ジ−t−ブチル)−1−メチルエチルカルバメート)であってよい。
【0013】
この方法に従えば、2’−デオキシイノシン誘導体の6員環におけるO−C−N官能基は、該2’−デオキシイノシン誘導体を、ルイス酸触媒の存在下でジアゾメタン又はトリメチルシリルジアゾメタンと反応させ、好ましくはエーテル中のジアゾメタン又はトリメチルシリルジアゾメタンの無水溶液と反応させることによって拡大されてよい。
前記ルイス酸触媒の例には、トリメチルシリルトリフレート(TMSOTf)、BX3、AlX3、FeX3、GaX3、SbX5、SnX4、AsX5、ZnX2、及びHgX2が含まれるがこれらに限定されず、ここでのXはハロゲンである。好ましくは、前記ルイス酸触媒はZnCl2又はHgBr2である。
【0014】
本発明のもう一つの側面においては、コホルマイシンを調製するための方法が提供される。
この方法は、
ヒポキサンチン酸素、ヒポキサンチンアミド窒素、2’−ヒドロキシル酸素、3’−ヒドロキシル酸素、及び5’−ヒドロキシル酸素のうちの少なくとも一つが保護基によって保護された、イノシン誘導体を準備することと;
前記シイノシン誘導体の6員環のO−C−N官能基を拡大して、次式21a又は21bを有する中間体を生成することと;
【化9】
化合物21a及び21bの8−ケト官能基を脱保護及び還元して、コホルマイシンを得ることと;
を含んでなり、ここでのR8、R8’、R8’’、R’’’及びR8’’’’はそれぞれ独立にH又は保護基である。
R8、R8’及びR8’’’保護基は、ベンジルエーテル、シリルエーテル、及びエステルであってよい。
R8’’保護基は、ベンジルエーテル及びシリルエーテルであってよい。R8’’’’は、カルバメート保護基であってよい。
【0015】
この方法に従えば、イノシン誘導体の6員環におけるO−C−N官能基は、該イノシン誘導体を、ルイス酸触媒の存在下でジアゾメタン又はトリメチルシリルジアゾメタンと反応させ、好ましくはエーテル中のジアゾメタン又はトリメチルシリルジアゾメタンの無水溶液と反応させることによって拡大されてよい。
前記ルイス酸触媒の例には、トリメチルシリルトリフレート(TMSOTf)、BX3、AlX3、FeX3、GaX3、SbX5、SnX4、AsX5、ZnX2、及びHgX2が含まれるが、これらに限定されず、ここでのXはハロゲンである。好ましくは、前記ルイス酸はZnCl2又はHgBr2である。
【0016】
本発明のもう一つの側面においては、ペントスタチン又は次式を有する他のヘテロ環化合物の前駆体である化合物が提供される:
【化10】
ここでのR3及びR3’は、それぞれ独立にH又は保護基であり、且つR3及びR3’の少なくとも一方は保護基である。
【0017】
本発明のさらにもう一つの側面においては、ペントスタチンの前駆体であるジアゼピノン8aを製造する方法が提供される。一つの実施形態において、該方法は、
保護基を使用して1以上の位置でヒポキサンチンを保護することと;
該保護されたヒポキサンチンを適切な溶媒中において適切な条件下に反応させて、保護されたジアゼピノン前駆体を得ることと;
該保護されたジアゼピノン前駆体を沈殿させることと;
該保護されたジアゼピノン前駆体を脱保護して、ジアゼピノン前駆体8aを得ることと;を含んでなるものである。
【0018】
本発明のさらにもう一つの側面においては、ペントスタチンを製造する方法が提供される。一つの実施形態において、該方法は、保護基を使用して1以上の位置でヒポキサンチンを保護することと;該保護されたヒポキサンチンを適切な溶媒中において適切な条件下に反応させて、保護されたジアゼピノン前駆体を得ることと;該保護されたジアゼピノン前駆体を脱保護して、ジアゼピノン前駆体8aを得ることと;該ジアゼピノン前駆体8aのN−2を、2−デオキシ−D−リボース又はその誘導体 のC−1位と縮合させて、中間体9aを得ることと;該中間体9aの8−ケト官能基を脱保護及び還元して、ペントスタチンを得ることとを含んでなるものである。
【0019】
もう一つの実施形態において、このペントスタチンを製造する方法は、保護基を使用して1以上の位置で2’−デオキシイノシンを保護することと;該保護された2’−デオキシイノシンの6員環を拡大して中間体9aを得ることと;該中間体9aの8−ケト官能基を脱保護及び還元してペントスタチンを得ることとを含んでなるものであり、ここでのR1及びR1’はそれぞれ独立に保護基である。
【0020】
本発明のもう一つの側面においては、コホルマイシンの製造方法が提供される。該方法は、
保護基を使用して1以上の位置でイノシンを保護することと;
保護されたイノシンの6員環におけるO−C−N官能基を拡大して、次式22を有する中間体を得ることと;
【化11】
該中間体22の8−ケト官能基を脱保護及び還元して、コホルマイシンを得ることとを含んでなり、ここでの前記R1、R1’及びR1’’はそれぞれ独立にH又は保護基である。
【0021】
上記で述べた方法及び組成物は、ペントスタチン以外のヘテロ環式化合物、特に、コホルマイシンのような薬学的に重要なヘテロ環式化合物を合成及び製造するために使用することもできる。ペントスタチン、その前駆体及び誘導体は、種々の疾患若しくは症状、例えば血液学的障害、癌、自己免疫疾患、及び移植片vs宿主病の治療における治療薬又は診断薬として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、ペントスタチンを効率的に調製及び製造するための新規な組成物及び方法を提供する。また、ペントスタチン、ペントスタチンの類縁体及び誘導体の新規な前駆体も提供される。
【0023】
本発明の一つの側面では、ヘテロ環拡大の経路を介して、ペントスタチンを全化学合成するための方法が提供される。より詳細に言えば、ペントスタチンのような薬物のためのヘテロ環式薬学的中間体、例えば、ジアゼピノン前駆体8a及び中間体9aを、ヒポキサンチン誘導体又は保護された2’−デオキシイノシンにおける、O−C−N官能基の環拡大によって効率的に得ることができる。発明者等は、この環拡大は容易に入手可能な経済的出発物質から、複雑で活性な薬学的分子へと化学変換するための非常に効率的な経路であると確信する。この環拡大法を使用することによって、ペントスタチンの重要な前駆体及び中間体であるジアゼピノン前駆体8a及び9aを、3工程を越えない合成段階によって得ることができ、これによりペントスタチンを合成するために必要な合計の工程数を大幅に低減することができる。ジアゼピノン前駆体8aは、種々の方法で2−デオキシ−D−リボース(又は他の誘導体)と縮合させることができ、中間体9aは還元されてペントスタチン(又はペントスタチンの他の誘導体又は類縁体)を生じることができる。
なお、ここに提供される方法及び前駆体は、O−C−N官能基においてヘテロ環の拡大を必要とする他のヘテロ環を含む化合物の合成、例えば、イノシン及び2’−デオキシイノシンから出発するヘテロ環の合成にも適用できることに留意すべきである。
【0024】
本発明の幾つかの実施形態において、ペントスタチンの合成は三つの部分を含む;即ち、モジュールAは、ジアゼピノン塩基の調製であり;モジュールBは、ヘテロ環塩基と2−デオキシ−D−リボースとの縮合であり;またモジュールCは、8−(R)水酸基の形成である。これらの実施形態に従えば、ペントスタチンを合成する方法には三つのモジュール変形例が存在する:即ち、ABC;ACB;及びBACである。これらモジュールに基づく如何なる変形例も、本発明の範囲内にあることに留意すべきである。各変形例の基礎は、ヒポキサンチン、2’−デオキシイノシン、又はイノシンにおけるO−C−N官能基の、環式αアミノケトンジアゼピノンへの環拡大である。各変形例は異なる利点を提供するが、全体の堅牢さ、効率,収率,及び経済性の程度は変化する可能性がある。
【0025】
1.モジュールA−ジアゼピノン前駆体8a(6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3R)−オン)の合成
本発明は,ペントスタチンの重要な中間体、即ち、ジアゼピノン前駆体8aを合成するための有効な化学的方法を提供する。以下で概説するように、ジアゼピノン前駆体8aは、ヒポキサンチンの環拡大経路を通して得ることができる。
【化12】
【0026】
一般に、ヒポキサンチンの環拡大は、ジアゾメタンのような試薬を用いたメチレン官能基の直接挿入によって達成されてよく、これは光触媒されることができ(Doering, W. von E.; Knox, L. H., J. Am. Chem. Soc., 1951, 75, 297-303)、又はルイス酸で触媒されることができる(Wittig, von G.; Schwarzenbach, K., Liebigs Ann. Chem., 1961, 650, 1-21)。好ましくは、より安定な試薬であり且つ揮発性ジアゾメタンに対する安全な代替品を与えることができるので、トリメチルシリルジアゾメタンが使用される(Seyferth, D.; Menzel, H.; Dow, A. W.; Flood, T., C. J. Organometallie Chem., 1972, 44, 279-290)。
本発明によれば、O−C−N官能基を含むへテロ環を拡大するために、ジアゾメタン及びトリメチルシリルジアゾメタンが利用される。本発明の環拡大化学は、全ての適切に保護されたO−C−N及び環式O−C−Nに適用可能である。加えて、この環拡大は、必要な数の環拡大のみを生じるように特異的かつ速度論的に制御することができ、これは適切に保護された基を組み込むことによって、また適切な溶媒条件下で達成される。
【0027】
一つの実施形態において、ジアゼピノン前駆体8aを合成する方法は、適切に保護されたヒポキサンチン誘導体を、ルイス酸触媒と共に有機溶媒の溶液中かつ無水の雰囲気下において、新たに調製されたエーテル中のジアゾメタンの無水溶液で処理することを含んでいる。図6Aは、このような合成スキームの例を示している。この反応は、−78℃〜25℃において数分から数時間で行われる。
出発材料であるヒポキサンチン、2’−デオキシイノシン又はイノシンについては、ヘテロ環式のヒポキサンチン環は如何なる立体中心も含んでいない。これは、Alfa Aesar, a Johnson Matthey Co., Ward Hill, MA、及びAldrich Chemical Co., Milwaukee, WIのような供給業者から商業的に入手可能である。何れの純度のヒポキサンチン、2’−デオキシイノシン、及びイノシンも使用できるが、少なくとも約92%の純度が好ましい。使用するヒポキサンチン、2’−デオキシイノシン、又はイノシンの量は、保護されたヒポキサンチン誘導体にするために充分な、保護基及び求核性ヒポキサンチンイオン環の形成を補助する上で有効な塩基が存在する限り、如何なる量であってもよい。
【0028】
この塩基は、救核性ヒポキサンチンイオンを形成でき、又はイミダゾール二級アミン及びO−C−N官能基の保護をもたらすことに関して保護剤を誘導できる如何なる塩基であってもよい。この保護は、少なくとも一つのイミダゾール二級アミンンにおいて生じる。塩基の例には、ピリミジン;水性NaOH;NEt3;DMAP;K2CO3;Na2CO3;NaH;Na/NH3;MeLi;及びt−BuOKが含まれるが、これらに限定されない。図5は、ヒポキサンチンに、R2及びR2’保護基を導入するためのスキームを示しており、ここでのR2及びR2’は如何なる保護基であってもよく、また相互に同じでも異なってもよい。
【0029】
当該保護基は、その何れかの組合せ及び変形により、ヒポキサンチン環における全てのイミダゾール二級アミン、環式アミン及びO−C−N(O=C−NH⇔HO−C=N)官能基と共有結合を形成でき、それによってヒポキサンチン、2’−デオキシイノシン及びイノシンのヒポキサンチン環を保護することができる全ての基である。全ての適用可能な保護基の追加の特徴は、それらが(1)ヒポキサンチン、2’−デオキシイノシン,及びイノシン誘導体を、有機溶媒中においてより可溶性にするのを助けること、(2)副反応及び分解を伴わずに環拡大を進行させること(即ち,それらはジアゾメタン及びルイス酸の条件下で安定であること)、及び(3)環拡大を妨害することなく、ジアゼピノンの単離及び精製を助けることである。イミダゾール二級アミン及びO−C−N官能基のための保護基の例は、カルバメート(即ちメチル、エチル、t−ブチル、ベンジル、9−フルオレニルメチル、2,2,2−トリクロロエチル、1−メチル−1−(4−ビフェニル)エチル、及び1−(3,5−ジ−t−ブチル)−1−メチルエチル);アミド(即ちアセタミド、トリフルオロアセタミド、及びベンズアミド);アリールアミン(即ちベンジルアミン、4−メトキシベンジルアミン、及び2−ヒドロキシベンジルアミン);並びにシリルアミンであるが、これらに限定されない。
【0030】
環拡大のために使用されるルイス酸に関して、この酸は、O−C−N官能基のC−N結合において特異的に反応を触媒する上で有効であり、これはO−C−N結合の間にメチレン基を挿入して別のケトン官能基及びアミン官能基形成し、所謂α−アミノケトンを形成する。酸の例には、トリメチルシリルトリフレート(TMSOTf);BX3;AlX3;FeX3;GaX3;SbX5;SnX4;AsX5;ZnX2;及びHgX2が含まれるが、これらに限定されず、ここでのXはハロゲンである。この反応において使用されるルイス酸の量は、化学量論的当量の1%〜200%の範囲内にある。
【0031】
有機溶媒に関しては、該溶媒は、反応を障害なく且つタイムリーに進行させるために、出発物質を可溶化する上で有効で、且つ単離及び精製を妨げないものであるべきである。好ましくは、これら有機溶媒は薬学的処理のために許容可能な溶媒に限定されるべきであり、これにはアセトニトリル;クロロベンゼン;ジクロロメタン;メチルシクロヘキサン;N−メチルピロリドン;ニトロメタン;アセトン;DMSO;酢酸エチル;エチルエーテル;及び蟻酸エチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
一つの実施形態において、前記保護されたヒポキサンチン、2’−デオキシイノシン、又はイノシンは、無水雰囲気を維持しながら、選択された有機溶媒及びルイス酸を添加する前に、撹拌バーで撹拌しながら反応容器に添加される。この撹拌された混合物は、−78℃〜25℃において透明で、且つ均一である。無水雰囲気を維持しながら、充分に新鮮に調製されたエーテル中のジアゾメタンを、過剰なバブリング及び多過ぎるジアゾメタンの添加を防止するために徐々に添加し;該混合物は、TLC又はHPLCで測定しながら、保護されたヒポキサンチン、2’−デオキシイノシン又はイノシンが完全に消費されるまで、数分〜数時間連続的に撹拌される。保護されたヒポキサンチン、2’−デオキシイノシン、又はイノシンが完全に消費されたら、保護されたジアゼピノンが既に該反応混合物から沈殿し始めており;該環拡大された生成物、即ち、望ましいジアゼピノン誘導体をさらに沈殿させるために、抗溶媒、好ましくは上記で述べたのと同様の薬学的処理に許容可能な抗溶媒が添加される。該ジアゼピノン誘導体は、適切な再結晶化溶媒、又はSiO2フラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製してよい。次いで、各ジアゼピノン誘導体は、その化学に特異的な脱保護手順を受けて、ジアゼピノン前駆体8a及び中間体9aへと脱保護される(例えば図7)。
【0033】
何れの脱保護手順が使用されるかを決定する二つの因子、即ち、ジアゼピノンの収率及び規模適合性が考慮されてよい。苛酷な脱保護手順は、特に長時間を必要とする場合には、ジアゼピノンの顕著な分解を伴うであろう。一定の条件下での収率は、マイクロスケールでは優れていても、グラムスケール及びキログラムスケールでは乏しいであろう。
【0034】
2.モジュールB−化合物9a(3−[2−デオキシ−β−D−エリスロ−ペントフラノシル]−6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8(3H)−オン]の合成
ジアゼピノン前駆体8aが合成されたら、背景技術の項で上述したShowalter及びBakerの方法を改良する合成スキーム、特に取扱い性、効率、規模適合性、及び収率の改善されたスキームが提供される。
Showalter及びBakerの方法では、パートリメチルシリル化されたジアゼピノン誘導体は、その高い毒性のために薬学的に許容可能でなく回避すべき有毒な溶媒である1,2−ジクロロエタン中において、−35℃の低温で、Vorbruggenの塩化錫触媒法から適合された塩化パーアシルグリコシルを介して、2−デオキシ糖に縮合された。
【0035】
この縮合を改良するために、本発明に従えば、弱いルイス酸(これにはZnCl2及びHgBr2が含まれるが、これらに限定されない)が用いられる。低温では徐々にしか縮合を起こさせない薬学的に許容可能な溶媒(これにはトルエン及びテトラヒドロフランが含まれるが、これらに限定されない)は、上昇した温度(0℃〜50℃)で充分に作用して、規模適合性及び取扱い性を改善するはずである。図8は、改善された縮合法の一つの実施形態を示している。このα/β混合物は、分別結晶化によって分離することができる。
ジアゼピノンと2−デオキシ−D−リボースとの縮合をさらに改善するために、Vorbruggenによる遊離ヌクレオシドの1ポット合成(Bennua-Skalmowski, B.; Krolikiewicz, K.; Vorbruggen, H. , Tetrahedron Lett., 1995, 36, 7845-7848)が、遊離の 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンを直接製造するために適合される(図9、化合物9c)。
【0036】
過剰な2−デオキシ−D−リボース及びジアゼピノン8a、2’−デオキシイノシン、及びイノシンのパーシリル化は、薬学的に許容可能な溶媒(これにはアセトニトリル及びテトラヒドロフラザンが含まれるが、これらに限定されない)中において、還流温度で3時間、種々のシリル化剤(これにはヘキサメチルジシラザン(HMDS);トリメチルクロロシラン;ブロモトリメチルシラン;N−(トリメチルシリル)アセタミド;ビス−(トリメチルシリル)トリフルオロアセタミド;トリメチルシリルトリフルオロアセテート;トリメチルシリルトリフレート;及びそれらの何れかの組合せが含まれるが、これらに限定されない)を用いて達成できるであろう。
【0037】
過剰な2−デオキシ−D−リボース及びジアゼピノン8aのパーシリル化、及び蒸発、これに続く薬学的に許容可能な溶媒(これにはアセトニトリル及びテトラヒドロフラザンが含まれるが、これらに限定されない)中でのルイス酸の存在下における1.1当量のルイス酸(これにはTMSOTf、BX3、AlX3、FeX3、GaX3、SbX5、SnX4、AsX5、ZnX2、及びHgX2:ここでのXはハロゲンである)との縮合、並びにメタノール性塩基(これにはメタノール中のNaHCO3又はNH3が含まれるが、これらに限定されない)を用いたトランスシリル化によって、遊離の9cが与えられ、これは分別結晶化でαアノマーから分離されるであろう。
【0038】
図8において、2−デオキシ−D−リボース上に示された保護基はp−トルオイルであり、これは一例に過ぎない。保護基R4には、エーテル(例えばメトキシメチル、ベンジルオキシメチル、アリル、プロパルギル、p−クロロフェニル、p−メトキシフェニル、p−ニトロフェニル、ベンジル、p−メトキシベンジル、ジメトキシベンジル、ニトロベンジル、ハロゲン化ベンジル、シアノベンジル、トリメチルシリル、トリメチルシリル、トリイソプロピルシリル、トリベンジルシリル、及びアルコキシシリル);エステル(例えば種々のアセテート及びベンゾエート);カルボネート(例えばメトキシメチル、9−フルオレニルメチル、2,2,2−トリクロロエチル、ビニル、アリル、ニトロフェニル、及びベンジル);スルホネート(例えばアリルスルホネート、メシレート、ベンジルスルホネート、及びトシレート);環状アセタール及びケタール(例えばメチレン、エチリデン、アクロレイン、イソプロピリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、種々のベンジリデン、メシチレン、1−ナフトアルデヒドアセタール、ベンゾフェノンケタール、o−キシリルエーテル);キラルケトン(例えば樟脳及びメントン);環状オルトエステル(例えばメトキシメチレン、エトキシメチレン、1−メトキシエチリデン、メチリデン、フタリド、エチリデン及びベンジリデン誘導体、ブタン−2,3−ビスアセタール、シクロヘキサン−1,2−ジアセタール、及びジスピロケタール); シリル誘導体(例えばジ−t−ブチルシリレン及びジアルキルシリレン基); 環状カルボネート; 環状ボレート;並びにそれらの組合せ及び変形が含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
3.モジュールC−ペントスタチン((8R)−3−(2−デオキシ−β−d−エリスロ−ペントフラノシル)−3,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−オール)の合成
8−ケト基の還元へと進む前に、保護基が存在するならば、それらは除去することができるであろう。Showalter及びBakerの方法では、メタノール性ナトリウムメトキシドが使用された。これは苛酷な環境であり、ジアゼピノン部分の分解を導く可能性がある。分解を最小限にし、遊離の6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オン(化合物9c)の収率を増大させるためには、還元の前に、より穏やかな脱保護法(Phiasivongsa, P.; Gallagher, J.; C. Chen; P. R. Jones; Samoshin, V. V.; Gross, P. H., Org. Lett., 2002, 4, 4587-4590)がより好ましい(図10)。中間体9c等の中間体の調製をさらに改善するために、図13に示すように、商業的に利用可能な 2’−デオキシイノシンを用いて合成を開始することができる。
【0040】
Showalter及びBakerは、種々の立体障害を受けたボロハイドライドを試みたが、最良の収率を生じるプロセスは、ホウ水素化ナトリウム及びニッケル触媒の水素添加を用いた非選択的還元であることが分かった。Chan, E.; Putt, S. R.; Showalter, H. D. H.; Baker, D. C., J. Org Chem. 1982, 47, 3457-3464。図10は、8−ケト官能基をペントスタチンにするための、脱保護及び他の不斉還元のための改善された方法のスキームを示している。
【0041】
本発明においては、キラル補助剤をドープした水素化物が好ましく実施される。水素化物の例には、NaBH4;LiAlH4;BF3−THF;及びLiBH4が含まれるが、これらに限定されない。またキラル補助剤の例には、N,N’−ジベンゾイルシスチン; Kグルコリド;B−クロロジイソピノカンフェイボラン(chlorodiisopinocampheyboran);[(lS)−エンド]−(−)−ボルネオール;及び(S)−(+)−及び(R)−(−)−2−アミノブタン−l−オールが含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
遊離の6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オン(9c)及び9aのような保護された誘導体におけるジアゼピノン部分の存在によって、それらは良好なα−アミノケトン候補となる。このアプローチは、α−アミノケトンと共に充分に機能することが示されている。(S)−(+)−又は(R)−(−)−2−(2−イソインドリニル)ブタン−1−オール(それぞれ商業的に入手可能な(S)−(+)−及び(R)−(−)−2−アミノブタン−1−オールから1段階で容易に調製される)で処理されたLiAH4での、α−アミノケトンのアミノアルコールへの不斉還元が、40〜97%のエナンチオマー過剰で達成されている。Brown, E.; Leze, A; Touet, J. Tetrahedron : Asymmetry 1996,7, 2029-2040。本発明者等は、α−アミノケトンについての成功が示されているこの種類の不斉還元は、ペントスタチンの収率を改善するはずであると確信している。
【0043】
加えて、この8−ケト官能基の還元は、経済的な水素化物(KBH4;NaBH3CN;MgH2;モンモリロナイト−KSF支持体上のボロハイドライド;及びアンバーライト(登録商標)支持体上のボロハイドライドが含まれるが、これらに限定されない)、金属(Li、Na、又はK/NH3;Li、Na又はK/アルコール;H2及びニッケル触媒、例えばホウ化ニッケル及びラネーニッケル;H2及びプラチナ触媒;H2及び鉄触媒、例えばFeCl2;及びFe/酢酸が含まれるが、これらに限定されない)、及び水及び金属屑(亜鉛及びマンガンが含まれるが、これらに限定されない)でのチタノセン触媒還元を用いて達成されてもよい。
【0044】
上記説明に基づいて、ペントスタチンの全合成は、モジュールA、B及びCの何れかの順序での組み合わせによって達成することができる。特別な合成経路はモジュールABCである。同様に好ましい他の二つの変形例には、以下で説明するモジュールACB及びBACが含まれる。
【0045】
4.モジュールACB−ペントスタチンの全合成
図11は、環拡大によるペントスタチンの全合成に関する一つの変形例を示しており、ここでのR5及びR5’は何れの保護基であってもよく、相互に同一でも異なってもよく;またR6及びR6’は何れの保護基であってもよく、相互に同一でも異なってもよい。
図10及び図12においては、脱保護が還元の前に行われるが、還元の間は保護基がその場所に残され、次いで除去される逆の順序がさらに望ましいこともあり得る。糖の上での異なる保護基(図8の説明を参照のこと)は、脱保護及び還元のシーケンスを何れの方法で行うことも可能にする。図11においては、取扱い性、収率及び精製に関する理由で、場合によっては保護基の除去の前に還元を行うことが望ましかった。その場合、縮合の前に保護基を除去することが必要であった。縮合の後、最終生成物であるペントスタチンを得るために、糖の保護基は除去されなければならなかった。
【0046】
5.モジュールBAC−ペントスタチンの全合成
図12は、環隔大によるペントスタチンの合成に関するもう一つの変形例を示しており、ここでのR6及びR6’は何れの保護基であってもよく、相互に同一でも異なってもよい。
【0047】
6.モジュールAC−ペントスタチンの全合成
図13は、環拡大によるペントスタチンの全合成に関するもう一つの変形例を示しており、ここでのR7、R7’及びR7’’は何れの保護基であってもよく、相互に同一でも異なってもよい。この合成は商業的に入手可能な2’−デオキシイノシンで始まるので、ペントスタチンの全合成は、幾つかの合成ステップをバイパスすることによってさらに短縮される。
【0048】
2’−デオキシリボース環における水酸基のための保護基R7及びR7’には、ベンジルエーテル(例えばp−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、ニトロベンジル、及びp−シアノベンジル);シリルエーテル(例えばトリアルキルシリル及びアルコキシジアルキルシリル);及びエステル(例えばアセテート、ハロゲン化アセテート、アルコキシアセテート、及びベンゾエート)が含まれるが、これらに限定されない。ヘテロ環であるヒポキサンチン環上の酸素の保護基R7’’の例には、ベンジルエーテル(例えばp−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、ニトロベンジル、及びp−シアノベンジル)及びシリルエーテル(例えばトリアルキルシリル、及びアルコキシジアルキルシリル)が含まれるが、これらに限定されない。或いは、該ヘテロ環のNHアミドは、カルバメート(即ち、メチル、エチル、t−ブチル、ベンジル、9−フルオレニルメチル、2,2,2−トリクロロエチル、1−メチル−1−(4−ビフェニル)エチル、又は1−(3,5−ジ−t−ブチル)−l−メチルエチルカルバメート)への変換(下記に示すようにNH→N−R7’’’)によって保護されることもできるであろう。
【化13】
【0049】
ベンジルエーテルの脱保護は、次のような温和な試薬を用いて達成できるであろう;即ち、PhSTMS、ZnI2、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、1,2−ジクロロエタン、60℃で2時間;ローダミン/A12O3/H2;及びジクロロメタン中のPh3C+BF4-である。当該エステル保護基は、塩基性メタノール及びアルコール(例えばアンモニア/メタノール、及びナトリウムメトキシド)で開裂させることができるであろう。 当該シリルエーテルは次の試薬で容易に除去できるであろう:テトラヒドロフラン中のフッ化テトラブチルアンモニウム ;20℃のメタノール中のクエン酸;周囲温度のアセトニトリル中のFeCl3;及びBF3−エーテラート。Bocのようなカルバメートは、実施例2に記載するように容易に除去できるであろう。
【0050】
図14は、コホルマイシンの合成のような他のペントスタチン誘導体を、環拡大によって得ることができる方法の一例を示しており、ここでのR8、R8’、R8’’及びR8’’’ は何れの保護基であってもよく、相互に同一でも異なってもよい。この合成は商業的に入手可能なイノシンで始まるので、該コホルマイシンの全合成は、幾つかの合成段階をバイパスすることによってさらに短縮される。
【0051】
ペントスタチン、その類縁体及び誘導体のこれら短縮された合成方法は、全体の堅牢さ、効率,収率及び経済性を考慮したときに非常に望ましいものである。
以下の実施例は、上記で述べた本発明を使用する方法を完全に説明するために役立てるものである。これらの例は、如何なる意味においても本発明の範囲を制限するものではなく、例示の目的で提示されるものであることが理解される。ここに引用した参照文献は、その全体を、本明細書の一部として本願に援用する。
【0052】
実施例
1. ジベンジルヒポキサンチンからのペントスタチンの合成
本発明に従えば、ペントスタチンは、図6Aに概説したように、保護されたヒポキサンチンを環拡大して、ジアゼピノン誘導体を生じさせる経路を通して合成することができ、ここでのR3及びR3’は如何なる保護基であってもよく、相互に同じか又は異なることができる。この実施例において、ペントスタチンは、ベンジルで保護されたヒポキサンチンの環拡大を介して合成される。
【0053】
500mLの三つ口丸底フラスコ中の、16mLの水及び10gのKOHを含有する溶液に、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(28mL)を添加した。該フラスコに、水コンデンサ及び氷浴中に浸漬された250mLの丸底受液ラスコを備えた簡単な蒸留ユニットを取付けた。また、エーテル(90mL)中に溶解した10gのジアザルド(Diazald)を含む100mLの滴下漏斗も取付けた。受液フラスコの未使用の口をゴム隔壁及び窒素を充填したバルーンで閉鎖した。冷却水の供給を開始し、ジアザルド溶液を徐々に添加しながら、蒸留フラスコを油浴(75〜80℃)中にて徐々に加熱した。添加速度は蒸留速度に等しくすべきであり、これには約20分を要する。全てのジアザルドが使用されてしまった後に、追加の10mLのエーテルを添加し、蒸留液が透明になるまで継続する。該エーテルは、約30mmolのジアゾメタンを含有すべきである。
【0054】
三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(0.4mL、2.6mmol)を添加する前に、ジベンジルヒポキサンチンの異性体混合物(0.5g、1.58mmol)を、250mLの丸底フラスコ中の無水ジクロロメタン(50mL)中に溶解させる。該混合物をN2雰囲気下でゴム隔壁で密封し、氷浴中で冷却した後、新たに調製されたジアゾメタンエーテラート(50mL)を、過剰なバブリング及び多過ぎるジアゾメタンの添加を防止するためにシリンジを通して徐々に添加する。該混合物は、TLC(石油エーテル:酢酸エチル:メタノール=1:1:0.2)が反応の完了を示すまで、N2雰囲気下に氷浴中で約30分間撹拌され、この時点では生成物が沈殿するのが見えるであろう。無水ジエチルエーテル(200mL)を添加して生成物を完全に沈殿させ、次いでフラスコをN2ガスでフラッシュし、ゴム隔壁で密封し、冷蔵庫内(0℃)で一晩保存する。ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンの三つの異性体混合物である白色の固体を濾過し、ジエチルエーテル(50mL)で濯ぎ、少なくとも6時間真空中で乾燥させる。
【0055】
ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンの三つの異性体の正確な質量は、それぞれのジベンジルヒポキサンチンについての316.132ダルトンに比較したときに、330.148ダルトンであり、メチレン(−CH2−)官能基の分だけ異なっている。図6B及び図6Cは、ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンの粗製異性体混合物のAPI−ES質量スペクトル、及び400MHz1HNMRスペクトル(d6DMSO)を示しているが、これは二重の反復環拡大に由来する8員環のβアミノケトンで汚染されており、該汚染物は二つのメチレン(−CH2−)官能基を得ている。図6Bは、異性体混合物であるジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンの質量スペクトルを示しており、m/z=331[M+H]+であり、m/z=345[M+H]+には二重に反復環拡大された不純物がある。図6Cは、ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンの異性体混合物の1HNMRスペクトルを示しており、2.50ppmにDMSOが存在する。しかし、このp−アミノケトン不純物は、種々の精製法(これには分別再結晶化;カラムクロマトグラフィー;及び分取HPLCが含まれるが、これらに限定されない)によって除去できるであろうし、或いは、反応条件を制御して所望のジアゼピノンのみを沈殿させることにより、そもそもその形成自体を防止できるであろう。図6Dは、4.12〜3.92ppmに、ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンの三つの全ての異性体におけるメチレン(−CH2−)官能基の存在を示している。図6Eは、d6−DMSO中におけるジベンジルヒポキサンチンの異性体混合物の、6.0〜2.0ppmの間の400MHz1HNMRスペクトルを示している。
【0056】
図6C及び図6Dの4.2〜3.8ppmの領域は、4.12、4.01、及び3.92ppmに、三つの異性体についての三つの新たに形成された異なるメチレン(−CH2−)シングレットを明瞭に示しており、これらは、図6E及び図6Fの4.5〜3.5ppmの選択された領域に示した、ジベンジルヒポキサンチンの出発異性体混合物には明らかに存在しない。6.5〜2.0ppmの拡大図領域(図6F)は、2.50ppmのDMSO、約3.33ppmの溶媒不純物、及び5.57〜5.21ppmのベンジル水素核(Ph−CH2−)のみを示している。
文献(Chan, E.; Putt, S. R.; Showalter, H. D. H.; Baker, D. C., J. Org. Cherra., 1982, 47, 3457-3464)において、d6−DMSO中における未保護のジアゼピノン8aの200MHz1HNMRスペクトルは、4.37ppmにおいてシングレットとして見えるメチレン(−CH2−)官能基を有しており、これはジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンのものに近接している。しかし、未保護のジアゼピノン8aにおけるスプリットパターン及びケミカルシフトは、ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンを完全に表していない可能性がある。このメチレン(−CH2−)水素核はジアステレオマー的であり、それらはヘテロ環の一部であり、従って異なる電子的環境を経験する可能性が非常に高いので、ジェミナルカップリング(二つの結合カップリング又は2Jとも呼ばれる)による一組の二重ダブレットピークを示すはずである。ジェミナルカップリング定数は、+42〜−20Hzに亘る大きなものであることができ、典型的には約10〜20Hzであり、−CH2−結合角(図6G及び図6H)、隣接するπ結合の影響、環の大きさ、及び電気陰性β置換基の向きに依存する。
【0057】
これらの保護されたジアゼピノン類は新規であるので、the ACD/I-Lab 1H NMR Predictor, a service provided Advanced Chemistry Development, Inc.(ACD/Labs at ilab. acdlabs. Com)を使用して、ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンのスプリットパターン及びケミカルシフトを評価し(図6I及び図6J)、メチレン官能基の出現をさらに確認した。図6Iは、非極性かつ非芳香族性の溶媒中における、ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンの400MHzACD/HNMRスペクトルを示している。図6Jは、非極性かつ非芳香族性の溶媒中における、ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンの、4.30〜3.90ppmにおける400MHzACD/HNMRスペクトルの拡大図を示しており、ここには環式−CH2−基が現れる。
【0058】
当該プログラムは、観察されたデータ(図6D及び文献(Chan, E.; Putt, S. R.; Showalter, H. D. H.; Baker, D.C. , J. Org Chem., 1982, 47, 3457-3464))とは逆に、メチレン(−CH2−)水素核がジアステレオマー的であることを予測した;しかし、それは非極性且つ非芳香族性の溶媒中においてシミュレートされたものであり、完全に正確なものではないかもしれない。しかし、ジアステレオマー水素核の化学シフト(4.25及び3.98ppm)は、ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンの三つの異性体について観察されたメチレンシングレット(4.12、4.01、及び3.92ppm)から約0.1ppmしか外れていなかった。従って、これら三つの異性体の環式−CH2−核は類似しており、120°に近いHCH角度を有しているように見える。
【0059】
文献にはベンジル保護基を除去するための多くの方法が存在し、これには蟻酸/メタノールを用いたパラジウム−活性炭触媒による水素化;20%Pd(OH)2/エタノール; Na、NH3;hν、405nm(CuSO4:NH3);CCl3CH2OCOCl/アセトニトリル;及びRuO4/NH3/水が含まれるが、これらに限定されない。最も普通なのは、H2ガスを用いたパラジウム−活性炭触媒による水素化である。規模適応性を改善するために、H2ガスの代りにホルムアミドを使用することができるであろう。
一例として、ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オン(2mmol)を、メタノール(50mL)、テトラヒドロフラン(25mL)、及び蟻酸(1.0mL)の中に懸濁させた。パラジウム(5%)−活性炭を添加(200mg)した後、10〜30気圧のH2下に50℃において、TLC(石油エーテル:酢酸エチル:メタノール=1:1:0.2)により反応の完了が示されるまで(24〜48時間)、該混合物を激しく撹拌した。セライト上で触媒を濾過し、メタノールで完全に洗浄する。濾液を蒸発させると、ジアゼピノール8bの異性体混合物を含有する固体が残る。
【0060】
乾燥条件の下で、ジアゼピノール8b及び N,N-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセタミド(6.0mmol)、ピリミジン(6.0mmol)、及び無水アセトニトリル(5mL)の混合物を12時間以上、又は反応が完了するまで撹拌する。過剰な試薬及び溶媒を60℃で蒸発させる。さらにアセトニトリル(20mL)を加え、均一になるまで撹拌し、60℃で蒸発させて、シリル化された中間体を得る。それを無水アセトニトリル(15mL)中に再度懸濁させ、−30〜−50℃に冷却した後、塩化錫(IV)(4mmol)を加える。約10分後に、乾燥1,2−ジクロロエタン中の塩化2−デオキシ−3,5−ジ−O−p−クロロベンゾイル−D−ペントフラノシルを加える。この混合物を、TLC(酢酸エチル:メタノール=9:1)によって反応の完了が示されるまで、約1時間撹拌する。該溶液を飽和重炭酸塩溶液(50mL)に注ぎ、酢酸エチル(50mL)で希釈し、セライトを通して濾過した後、層を分離し、水層を酢酸エチルで2回抽出する(2×50mL)。有機層を合体させ、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮して乾固させる。フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=95:5)により、所望の (8R)−及び(8S)−3−(2−デオキシ−3,5−ジ−O−p−ベンゾイル−p−D−エリスロ−ペントフラノシル)−3,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−オールをα−アノマーから分離した後、それらをメタノール(200mL)中のアンモニア溶液(5倍過剰より多い)の中に懸濁させ、該混合物を周囲温度で24時間撹拌する。過剰のアンモニアを除去し、必要であれば、メタノール溶液を活性炭(200mg)で脱色した後、蒸発乾固させる。このジアステレオマー混合物を、水/メタノール中での分別結晶化及び/又はC−18逆相カラム(水:メタノール=93:7)により分離して、純粋なペントスタチンを得る。
【0061】
2. N,N−ジ−Bocヒポキサンチンからのペントスタチンの合成
この例では、図6Aに概説したように、N,N−ジ−Boc保護されたヒポキサンチンの環拡大によりジアゼピノン誘導体を生じさせる経路を通して、ペントスタチンを合成する。図7は、N,N−ジ−Bocジアゼピノンの、ジアゼピノン8a及びジアゼピノール8bへの脱保護を示している。ジアゾメタンは上記の実施例1で述べたようにして調製した。
N,N−ジ−Bocヒポキサンチン(531mg、1.58mmol)を、250mLの丸底フラスコ内の無水ジクロロメタン(50mL)中に溶解した後、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(0.2mL、1.3mmol)を添加した。該混合物をN2雰囲気下にゴム隔壁で密閉し、氷浴中で冷却した後、上記の新たに調製したジアゾメタンエーテラートを、過剰なバブリング及び多過ぎるジアゾメタンの添加を防止するためにシリンジを通して徐々に添加した。該混合物は、TLC(石油エーテル:酢酸エチル:メタノール=1:1:0.2)が反応の完了を示すまで、約30分間、N2雰囲気下に氷浴中で撹拌され、その時点では生成物が沈殿するのを見ることができるであろう。無水のジエチルエーテル又はヘキサン(200mL)を添加し、フラスコをN2ガスでフラッシュし、ゴム隔膜で密閉し、冷蔵庫(0℃)中で一晩(12時間)保存する。白色固体のN,N−ジ−terブトキシカルボニル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンを濾過し、ジエチルエーテル(50mL)で濯ぎ、少なくとも6時間真空中で乾燥した。
【0062】
文献中にはBoc保護基を除去するための多くの方法が存在し、それには塩化アセチル/メタノール;CF3CO2H/PhSH;TsOH/THF/CH2Cl2;10%H2SO4/ジオキサン;Me3SiI/アセトニトリル;Me3SiCl/フェノール/CH2Cl2;SiCl4/フェノール/CH2Cl2;TMSOTf/PhSCH3;Me3SO3H/ジオキサン/CH2Cl2;CF3CO2H/CH2Cl2;BF3−Et2O/4Åms/CH2Cl2/23℃/20h;SnCl4/AcOH/THF/CH2Cl2/トルエン又はアセトニトリル;及びZnBr2/CH2Cl2が含まれるが、これらに限定されない。メタノール中の塩化アセチルは、メタノール中で無水HClを発生する。これは、Boc保護基を除去して8aを得るための便利な方法である。
【0063】
乾燥条件下で、ジアゼピノン8a、N,N−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセタミド(6.0mmol)、ピリミジン(6.0mmol)、及び無水アセトニトリル(5mL)の混合物を、12時間以上又は反応が完了するまで撹拌する。過剰な試薬及び溶媒を60℃で蒸発させる。さらにアセトニトリル(20mL)を加え、均一になるまで撹拌し、60℃で蒸発させて、シリル化された中間体を得る。それを無水アセトニトリル(15mL)中に再度懸濁させ、−30〜−50℃に冷却した後、塩化錫(IV)(4mmol)を加える。約10分後に、乾燥1,2−ジクロロエタン中の塩化2−デオキシ−3,5−ジ−O−p−クロロベンゾイル−D−ペントフラノシルを加える。この混合物を、TLC(酢酸エチル:メタノール=9:1)によって反応の完了が示されるまで、約1時間撹拌する。該溶液を飽和重炭酸塩溶液(50mL)に注ぎ、酢酸エチル(50mL)で希釈し、セライトを通して濾過した後、層を分離し、水層を酢酸エチルで2回抽出する(2×50mL)。有機層を合体させ、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮して乾固させる。フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=95:5)により、所望の3−(2−デオキシ−3,5−ジ−O−p−ベンゾイル−β−D−エリスロ−ペントフラノシル)−3,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8(3H)−オンをα−アノマーから分離した後、それらをメタノール(200mL)中のアンモニア溶液(5倍過剰より多い)中に懸濁させ、該混合物を周囲温度で24時間撹拌する。過剰のアンモニアを除去し、溶媒を60℃で蒸発させて9cを得る。この粗製中間体を水(10mL)及びメタノール(10mL)中に溶解した後、ホウ水素化ナトリウム(1mmol)を加える。該溶液を周囲温度で1時間撹拌し、その最後に、ドライアイスの添加によって過剰なホウ水素化物を分解する。蒸発によりメタノールを蒸発させ、水溶液を活性炭(200mg)で脱色し、濾過した後に凍結乾燥して、綿毛状の固体を得る。このジアステレオマー異性体混合物を、水/メタノール中での分別結晶化、及び/又はC−18逆相カラム(水:メタノール=93:7)により分離して、純粋なペントスタチンを得る。
【0064】
3. 2’−デオキシイノシンからのペントスタチンの合成
この実施例では、図13に概説したように、2’−デオキシイノシンの直接環拡大の経路を介してペントスタチンが合成される。ジアゾメタンは実施例1で述べたようにして調製される。
乾燥条件下において、2’−デオキシイノシン(2.0mmol)、N,N−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセタミド(6.0mmol)、ピリミジン(6.0mmol)、及び無水アセトニトリル(5mL)の混合物を、12時間以上又は反応が完了するまで撹拌する。過剰な試薬及び溶媒を60℃で蒸発させる。さらにアセトニトリル(20mL)を加え、均一になるまで撹拌し、60℃で蒸発させて、ペル−O−シリル化された2’−デオキシイノシンを得る。該出発物質を、250mLの無水ジクロロメタン(50mL)中に溶解した後、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(0.2mL、1.3mmol)を添加する。該混合物をN2雰囲気下にゴム隔壁で密閉し、氷浴中で冷却した後、上記の新たに調製したジアゾメタンエーテラートを、過剰なバブリング及び多過ぎるジアゾメタンの添加を防止するためにシリンジを通して徐々に添加する。該混合物を、TLCによって反応が完了したことが示されるまで、約30分間、N2雰囲気下に氷浴中で撹拌する。テトラヒドロフラン(100mL)中に溶解されたフッ化テトラブチルアンモニウム(3.0mmol)の溶液を徐々に添加し、該混合物を2時間以上氷浴中で撹拌し、その時点で中間体生成物9cが沈殿するのを見ることができる。この粗製中間体を濾過し、真空中で乾燥し、次いで水(10mL)及びメタノール(10mL)中に溶解した後、ホウ水素化ナトリウム(1mmol)を加える。該溶液を周囲温度で1時間撹拌し、その最後に、ドライアイスの添加によって過剰なホウ水素化物を分解する。蒸発によりメタノールを蒸発させ、水溶液を活性炭(200mg)で脱色し、濾過した後に凍結乾燥して、綿毛状の固体を得る。このジアステレオマー異性体混合物を、水/メタノール中での分別結晶化、及び/又はC−18逆相カラム(水:メタノール=93:7)により分離して、純粋なペントスタチンを得る。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1A】図1Aは、Showalter及びBakerによるジアゼピノン前駆体の合成スキームである(Chan, E. ; Putt, S. R.; Showalter, H. D.H. ; Baker, D. C.;J. Org. Chem. 1982, 47, 3457-3464)。
【図1B】図1Bは、塩化パーアシルグリコシルを用いたグリコシル化のスキームである(Chan et al.による上記論文)
【図1C】図1Cは、立体制御されない還元についてのスキームである(Chan et al.による上記論文)。
【図2】図2は、Chenによって改良されたペントスタチン合成スキームである(Chen, B. -C. ; Chao, S.T.; Sundeen, J. E.; Tellew, J.; Ahmad, S., Tetrahedron Lett. 2002, 43, 1595-1596)。
【図3】図3は、ペントスタチンのシクロペンチル類縁体についての、立体的に制御された合成スキームである(Ho, J. Z.; Mohareb, R. M.; Ahn, J. H.; Sim, T. B.; Rapoport, H. J., Org. Chem. 2003, 68, 109-114)。
【図4】図4は、リン酸化を伴わずに示された、S.antibioticusによるペントスタチン生合成についての機構及び中間体を示している。
【図5】図5は、ヒポキサンチンにR2保護基を導入するためのスキームであり、ここでのR2は如何なる保護基であってもよい。
【図6A】図6Aは、保護されたヒポキサンチンをジアゼピノン誘導体へと環拡大するためのスキームであり、ここでのR3は如何なる保護基であってもよい。
【図6B】図6Bは、m/z=331[M+H]+のジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]−ジアゼピン−8−(3H)−オンの異性体混合物、及びm/z=345[M+H]+の二重に反復環拡大された不純物のマススペクトルを示している。
【図6C】図6Cは、ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]−ジアゼピン−8−(3H)−オンの異性体混合物の1HNMRを示しており、DMSOが2.50ppmにある。
【図6D】図6Dは、ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]−ジアゼピン−8−(3H)−オンの三つの全ての異性体の、4.12〜3.92ppmにおけるメチレン(−CH2−)官能基の存在を示している。
【図6E】図6Eは、d6−DMSO中でのジベンジルヒポキサンチンの異性体混合物の400MHz1HNMRスペクトルを示している。
【図6F】図6Fは、d6−DMSO中でのジベンジルヒポキサンチンの三つの異性体の、6.0〜2.0ppmにおける400MHz1HNMRスペクトルを示している。
【図6G】図6Gは、ジェミナルカップリング定数のHCH角度に対する依存性を示している。
【図6H】図6Hは、2Jカップリング定数のサンプルを列挙している。
【図6I】図6Iは、非極性かつ非芳香族性溶媒中での、ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]−ジアゼピン−8−(3H)−オンの400MHzACD/HNMRスペクトルを示している。
【図6J】図6Jは、非極性かつ非芳香族性溶媒中での、ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]−ジアゼピン−8−(3H)−オンの4.30〜3.90ppmにおける400MHzACD/HNMRスペクトルの拡大図であり、ここには環式−CH2−基が現れている。
【図7】図7は、保護されたジアゼピノンからジアゼピノン8aへの脱保護スキームを示している。
【図8】図8は、取扱い性及び規模適合性を改善するための、縮合条件の変更スキームを示している。
【図9】図9は、ジアゼピノンと2−デオキシ−D−リボースとの縮合の効率、及び収率を改善するための合成スキームを示している。
【図10】図10は、8−ケト官能基のペントスタチンへの改善された脱保護、及び他の不斉還元のためのスキームである。
【図11】図11は、環拡大によるペントスタチン合成の一つの変形例である。
【図12】図12は、環拡大によるペントスタチン合成のもう一つの変形例である。
【図13】図13は、環拡大によるペントスタチン合成のもう一つの変形例である。
【図14】図14は、環拡大によるコホルマイシン合成の一例である。
【技術分野】
【0001】
この出願は、2003年9月15日に出願された米国仮出願番号60/503,237の利益を主張する。
本発明は、ペントスタチン((8R)−3−(2−デオキシ−β−D−エリスロ−ペントフラノシル)−3,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]−ジアゼピン−8−オール)、ペントスタチンの前駆体、ペントスタチンの類縁体及び誘導体、並びに、O−C−N官能基でのへテロ環の拡大を必要とする他のヘテロ環を調製及び製造するための、組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペントスタチン、即ち、(8R)−3−(2−デオキシ−β−d−エリスロ−ペントフラノシル)−3,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]−ジアゼピン−8−オールは、アデノシンデアミナーゼの強力な阻害剤として有効な薬剤である。ペントスタチンの化学構造を下記に示す:
【化1】
この分子は、(1)ユニークで且つ不安定なヘテロ環塩基、(2)βアノマーに有利な立体的に制御されたグリコシル化の試みに反抗する2−デオキシ糖、及び(3)中央のキラル水酸基を含んでいるので、ペントスタチンの全合成は困難な問題を提起する。
如何なる化学変換の利点も、これら三つの重要な困難に対するその解決度によって評価される。
【0003】
ペントスタチンの最初の合成は、Warner-Lambert/Parke-Davis PharmaceuticalのShowalter及びBaker; Chan, E.; Putt, S. R.; Showalter, H. D. H.; Baker, D.C. J. Org. Chem. 1982, 47, 3457-3464によって示された。この方法では、主にヘテロ環塩基の合成に焦点が当てられた(図1A〜C)。この方法の肝要な点は、イミダゾールに対するα位にケトン官能基(図示の通り)又はキラルアルコールをもった、7のようなジアミン前駆体の合成である。後者の提案は未だ実現されたことがない。このアプローチの一定の側面は、改良に対して臨機応変に対応することを可能にし、且つ改良をし易くする。しかしながら、この方法は、当該塩基前駆体8aを合成するために8段階以上を必要とする。塩基前駆体8aの化学構造を下記に示す。このような方法は商業的に実施するのが困難であり、製造業的規模にスケールアップするためには費用が嵩む。これらの工程の多くにおいて、精製のためにカラムクロマトグラフィーが必要とされる。
【化2】
効率をさらに改善し、且つ合成ペントスタチンを製造するコストを最小限にするために、Chen等は、異なる出発物質から前駆体4を合成した(図2)。Chen, B. -C. ; Chao, S. T.; Sundeen, J. E.; Tellew, J.; Ahmad, S.; Tetrahedron Lett. 2002, 43, 1595-1596。この変法は、N−2ベンジル化の副反応を排除し(3bが形成されない)、前駆体7の全収率を19%から30%に改善し、且つ安価な出発物質1bを使用した。
【0004】
前駆体8aが合成及び精製されたときに、グリコシル化のために利用可能な多くの方法のうちで、Showalter及びBakerは、それをVorbruggenの塩化錫触媒法から適合された塩化パーアシルグリコシルを介して、2−デオキシ糖に縮合させ(図1B)、ペントスタチン前駆体である二つのアノマー9a及び9bを生じさせた。ペントスタチン前駆体9a及び9bの化学構造を下記に示す。
【化3】
Chan, E.; Putt, S. R.; Showalter, H. D. H.; Baker, D. C.; J. Org. Chem. 1982, 47, 3457-3464。グリコシル化の立体制御がされなかったため、慣用的なカラムクロマトグラフィー又は分別結晶化によって、1:1のアノマー混合物を分離することができた。図1Aに示した多段階経路に加えて、塩化パーアシルグリコシル出発物質もまた多段階経路によって調製されなければならず、これらが全体として、単離及び精製工程を必要とする既に非常に長い手順に追加されることになる。
9a(23%)が純粋な形態で単離された後に、保護基が除去され、引続きホウ水素化ナトリウムでペントスタチンに還元され(図1C、10a)、カルボニル官能基がキラル水酸基に変換された。しかし、この変換は立体制御なしで行われたので、化合物10a及び10bのジアステレオマー混合物が得られた。化合物10a及び10bの化学構造を下記に示す。
【化4】
【0005】
立体障害を受けた種々のホウ水素化物(ホウ水素化トリ−sec−ブチルカリウム及び9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン;水素化トリ−tert−ブトキシアルミニウムリチウム、水素化アルミニウムリチウム−(−)−メタノール錯体、水素化アルミニウムリチウム−(−)−N−メチルエフェドリン−3,5−キシレノール錯体)を検討したが、それらはエナンチオマー選択性又は収率において僅かな改善しか示さなかった。Chan, E.; Putt, S. R.; Showalter, H. D. H.; Baker, D. C.; J. Org. Chem. 1982, 47, 3457-3464。ジアステレオマー10a(33%)及び10b(29%)の1:1混合物の分離は、小スケールでは、C−18逆相分取HPLCが最良であると決定された。大スケールについては分別結晶化の方が良好であった。
【0006】
前記三つの重要な困難を解決するためのもう一つのアプローチが、Rapoport によって提案された(Ho, J. Z.; Mohareb, R. M.; Ahn, J. H.; Sim, T. B.; Rapoport, H.J.; Org. Chem. 2003, 68, 109-114)。このアプローチは、所定位置に天然のRコンフィギュレーションの水酸基を備えた塩基の、エナンチオ制御された合成を含んでいる。このアプローチを例示するために、ペントスタチンの類縁体を合成した(図3;シクロペンチル類縁体)。第1の前駆体11は、L−メチオニンから出発する多段階法によって得られ、これに少なくとも8段階の合成工程を必要とする。Truong, T. V.; Rapoport, H.J.; Org. Chem. 1993, 58, 6090-6096。しかし、ペントスタチン自身の合成は未だ実現されておらず、これはさらに長いプロセスを有するだけでなく、糖部分についての未解決の立体化学的困難性をも有するであろう。
Rapoportが提案したアプローチは非常に有望である。それは、注意深く設計された合成経路を組込むことによって、重要な立体化学的困難を解決する。一つの重大な欠点は、それが未だ幾つかの合成段階を含むことである。にもかかわらず、それはShowalter及びBakerが提案した合成経路によりも良好に適合する。
【0007】
対照的に、自然は、ペントスタチンを合成するための非常に効率的な経路を有している。Hanvey等は、S.antibioticusによるコンホルマイシン及びペントスタチンの生合性における中間体として、8−ケトコホルマイシン及び8−ケトデオキシコホルマイシン9aを同定した(図4)。Hanvey, J. C.; Hawkins, E. S; Tunac, J. B.; Dechter, J. J.; Baker, D. C.; Suhadolnik, R. J.; Biochemistry 1987,26, 5636-5641; and Hanvey, J. C.; Hawkins, E. S.; Baker, D. C.; Suhadolnik, R. J.; Biochemistry 1988,27, 5790-5795。1,3−ジアゼピン環の形成は、D−リボースのC−1を用いた、アデノシンのアデニン部分の環拡大によって生じる。次いで、8−ケト官能基の還元が立体特異的に生じて、コホルマイシン又はペントスタチンになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記で述べたペントスタチンの異なる合成スキームに付随する欠点を考慮すれば、微生物によるペントスタチンの生合成を必要としないで、ペントスタチン、ペントスタチンの誘導体及び類縁体を得るための高収率かつ効率的な化学合成が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ペントスタチン、その前駆体、類縁体及び誘導体、並びに他のヘテロ環化合物を効率的に調製及び製造するための方法及び組成物が提供される。
本発明の一つの側面では、ヘテロ環の環拡大の経路を介した、ペントスタチンの全化学合成が提供される。一つの実施形態において、該方法は、
イミダゾール二級アミン及び環式O−C−N官能基(O=C−NH又はHO−C=N)の少なくとも一方が保護基によって保護されているヒポキサンチン誘導体を準備することと;
ヒポキサンチン誘導体の6員環を拡大して、次式を有する保護されたジアゼピノン前駆体を形成することと;
【化5】
該保護されたジアゼピノン前駆体を脱保護して、次式を有するジアゼピノン前駆体8a を得ることと;
【化6】
該ジアゼピノン前駆体8aのN−2を、2−デオキシ−D−リボース又はその誘導体のC−1と縮合させて、次式9aを有する中間体を得ることと;
【化7】
該化合物9aの8−ケト官能基を還元してペントスタチンを得ることと;
を含んでなり、
前記R1及びR1’はそれぞれ独立にH又は保護基であり、R3及びR3’はそれぞれ独立にH又は保護基である。
【0010】
イミダゾール二級アミン及び環式O−C−N官能基のための保護基R3及びR3’の例には、カルバメート(例えばメチル、エチル、t−ブチル、ベンジル、9−フルオレニルメチル、2,2,2−トリクロロエチル、1−メチル−1−(4−ビフェニル)エチル、及び1−(3,5−ジ−t−ブチル)−1−メチルエチル);アミド(例えばアセタミド、トリフルオロアセタミド、及びベンズアミド);アリールアミン(例えばベンジルアミン、4−メトキシベンジルアミン、及び2−ヒドロキシベンジルアミン);及びシリルアミンが含まれるが、これらに限定されない。
【0011】
もう一つの実施形態において、当該方法は、
ヒポキサンチン酸素、ヒポキサンチンアミド窒素、3’−ヒドロキシル酸素、及び5’−ヒドロキシル酸素のうちの少なくとも一つが保護基によって保護された、2’−デオキシイノシン誘導体を準備することと;
2’−デオキシイノシン誘導体の6員環のO−C−N官能基を拡大して、次式20a又は20bを有する中間体を生成することと;
【化8】
化合物20a又は20bの8−ケト官能基を脱保護及び還元して、ペントスタチンを得ることと;
を含んでなり、ここでのR7、R7’、R7’’、及びR7’’’はそれぞれ独立にH又は保護基である。
【0012】
保護基R7、R7’の例には、ベンジルエーテル(例えばp−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、ニトロベンジル、及びp−シアノベンジル);シリルエーテル(例えばトリアルキルシリル及びアルコキシジアルキルシリル);エステル(例えばアセテート、ハロゲン化アセテート、アルコキシアセテート、及びベンゾエート)が含まれるが、これらに限定されない。
保護基R7’’の例には、ベンジルエーテル(例えばp−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、ニトロベンジル、及びp−シアノベンジル);並びにシリルエーテル(例えばトリアルキルシリル及びアルコキシジアルキルシリル)が含まれるが、これらに限定されない。
R7’’’は、カルバメート保護基(例えばメチルカルバメート、エチルカルバメート、t−ブチルカルバメート、ベンジルカルバメート、9−フルオレニルメチルカルバメート、2,2,2−トリクロロエチルカルバメート、1−メチル−1−(4−ビフェニル)エチルカルバメート、及び1−(3,5−ジ−t−ブチル)−1−メチルエチルカルバメート)であってよい。
【0013】
この方法に従えば、2’−デオキシイノシン誘導体の6員環におけるO−C−N官能基は、該2’−デオキシイノシン誘導体を、ルイス酸触媒の存在下でジアゾメタン又はトリメチルシリルジアゾメタンと反応させ、好ましくはエーテル中のジアゾメタン又はトリメチルシリルジアゾメタンの無水溶液と反応させることによって拡大されてよい。
前記ルイス酸触媒の例には、トリメチルシリルトリフレート(TMSOTf)、BX3、AlX3、FeX3、GaX3、SbX5、SnX4、AsX5、ZnX2、及びHgX2が含まれるがこれらに限定されず、ここでのXはハロゲンである。好ましくは、前記ルイス酸触媒はZnCl2又はHgBr2である。
【0014】
本発明のもう一つの側面においては、コホルマイシンを調製するための方法が提供される。
この方法は、
ヒポキサンチン酸素、ヒポキサンチンアミド窒素、2’−ヒドロキシル酸素、3’−ヒドロキシル酸素、及び5’−ヒドロキシル酸素のうちの少なくとも一つが保護基によって保護された、イノシン誘導体を準備することと;
前記シイノシン誘導体の6員環のO−C−N官能基を拡大して、次式21a又は21bを有する中間体を生成することと;
【化9】
化合物21a及び21bの8−ケト官能基を脱保護及び還元して、コホルマイシンを得ることと;
を含んでなり、ここでのR8、R8’、R8’’、R’’’及びR8’’’’はそれぞれ独立にH又は保護基である。
R8、R8’及びR8’’’保護基は、ベンジルエーテル、シリルエーテル、及びエステルであってよい。
R8’’保護基は、ベンジルエーテル及びシリルエーテルであってよい。R8’’’’は、カルバメート保護基であってよい。
【0015】
この方法に従えば、イノシン誘導体の6員環におけるO−C−N官能基は、該イノシン誘導体を、ルイス酸触媒の存在下でジアゾメタン又はトリメチルシリルジアゾメタンと反応させ、好ましくはエーテル中のジアゾメタン又はトリメチルシリルジアゾメタンの無水溶液と反応させることによって拡大されてよい。
前記ルイス酸触媒の例には、トリメチルシリルトリフレート(TMSOTf)、BX3、AlX3、FeX3、GaX3、SbX5、SnX4、AsX5、ZnX2、及びHgX2が含まれるが、これらに限定されず、ここでのXはハロゲンである。好ましくは、前記ルイス酸はZnCl2又はHgBr2である。
【0016】
本発明のもう一つの側面においては、ペントスタチン又は次式を有する他のヘテロ環化合物の前駆体である化合物が提供される:
【化10】
ここでのR3及びR3’は、それぞれ独立にH又は保護基であり、且つR3及びR3’の少なくとも一方は保護基である。
【0017】
本発明のさらにもう一つの側面においては、ペントスタチンの前駆体であるジアゼピノン8aを製造する方法が提供される。一つの実施形態において、該方法は、
保護基を使用して1以上の位置でヒポキサンチンを保護することと;
該保護されたヒポキサンチンを適切な溶媒中において適切な条件下に反応させて、保護されたジアゼピノン前駆体を得ることと;
該保護されたジアゼピノン前駆体を沈殿させることと;
該保護されたジアゼピノン前駆体を脱保護して、ジアゼピノン前駆体8aを得ることと;を含んでなるものである。
【0018】
本発明のさらにもう一つの側面においては、ペントスタチンを製造する方法が提供される。一つの実施形態において、該方法は、保護基を使用して1以上の位置でヒポキサンチンを保護することと;該保護されたヒポキサンチンを適切な溶媒中において適切な条件下に反応させて、保護されたジアゼピノン前駆体を得ることと;該保護されたジアゼピノン前駆体を脱保護して、ジアゼピノン前駆体8aを得ることと;該ジアゼピノン前駆体8aのN−2を、2−デオキシ−D−リボース又はその誘導体 のC−1位と縮合させて、中間体9aを得ることと;該中間体9aの8−ケト官能基を脱保護及び還元して、ペントスタチンを得ることとを含んでなるものである。
【0019】
もう一つの実施形態において、このペントスタチンを製造する方法は、保護基を使用して1以上の位置で2’−デオキシイノシンを保護することと;該保護された2’−デオキシイノシンの6員環を拡大して中間体9aを得ることと;該中間体9aの8−ケト官能基を脱保護及び還元してペントスタチンを得ることとを含んでなるものであり、ここでのR1及びR1’はそれぞれ独立に保護基である。
【0020】
本発明のもう一つの側面においては、コホルマイシンの製造方法が提供される。該方法は、
保護基を使用して1以上の位置でイノシンを保護することと;
保護されたイノシンの6員環におけるO−C−N官能基を拡大して、次式22を有する中間体を得ることと;
【化11】
該中間体22の8−ケト官能基を脱保護及び還元して、コホルマイシンを得ることとを含んでなり、ここでの前記R1、R1’及びR1’’はそれぞれ独立にH又は保護基である。
【0021】
上記で述べた方法及び組成物は、ペントスタチン以外のヘテロ環式化合物、特に、コホルマイシンのような薬学的に重要なヘテロ環式化合物を合成及び製造するために使用することもできる。ペントスタチン、その前駆体及び誘導体は、種々の疾患若しくは症状、例えば血液学的障害、癌、自己免疫疾患、及び移植片vs宿主病の治療における治療薬又は診断薬として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、ペントスタチンを効率的に調製及び製造するための新規な組成物及び方法を提供する。また、ペントスタチン、ペントスタチンの類縁体及び誘導体の新規な前駆体も提供される。
【0023】
本発明の一つの側面では、ヘテロ環拡大の経路を介して、ペントスタチンを全化学合成するための方法が提供される。より詳細に言えば、ペントスタチンのような薬物のためのヘテロ環式薬学的中間体、例えば、ジアゼピノン前駆体8a及び中間体9aを、ヒポキサンチン誘導体又は保護された2’−デオキシイノシンにおける、O−C−N官能基の環拡大によって効率的に得ることができる。発明者等は、この環拡大は容易に入手可能な経済的出発物質から、複雑で活性な薬学的分子へと化学変換するための非常に効率的な経路であると確信する。この環拡大法を使用することによって、ペントスタチンの重要な前駆体及び中間体であるジアゼピノン前駆体8a及び9aを、3工程を越えない合成段階によって得ることができ、これによりペントスタチンを合成するために必要な合計の工程数を大幅に低減することができる。ジアゼピノン前駆体8aは、種々の方法で2−デオキシ−D−リボース(又は他の誘導体)と縮合させることができ、中間体9aは還元されてペントスタチン(又はペントスタチンの他の誘導体又は類縁体)を生じることができる。
なお、ここに提供される方法及び前駆体は、O−C−N官能基においてヘテロ環の拡大を必要とする他のヘテロ環を含む化合物の合成、例えば、イノシン及び2’−デオキシイノシンから出発するヘテロ環の合成にも適用できることに留意すべきである。
【0024】
本発明の幾つかの実施形態において、ペントスタチンの合成は三つの部分を含む;即ち、モジュールAは、ジアゼピノン塩基の調製であり;モジュールBは、ヘテロ環塩基と2−デオキシ−D−リボースとの縮合であり;またモジュールCは、8−(R)水酸基の形成である。これらの実施形態に従えば、ペントスタチンを合成する方法には三つのモジュール変形例が存在する:即ち、ABC;ACB;及びBACである。これらモジュールに基づく如何なる変形例も、本発明の範囲内にあることに留意すべきである。各変形例の基礎は、ヒポキサンチン、2’−デオキシイノシン、又はイノシンにおけるO−C−N官能基の、環式αアミノケトンジアゼピノンへの環拡大である。各変形例は異なる利点を提供するが、全体の堅牢さ、効率,収率,及び経済性の程度は変化する可能性がある。
【0025】
1.モジュールA−ジアゼピノン前駆体8a(6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3R)−オン)の合成
本発明は,ペントスタチンの重要な中間体、即ち、ジアゼピノン前駆体8aを合成するための有効な化学的方法を提供する。以下で概説するように、ジアゼピノン前駆体8aは、ヒポキサンチンの環拡大経路を通して得ることができる。
【化12】
【0026】
一般に、ヒポキサンチンの環拡大は、ジアゾメタンのような試薬を用いたメチレン官能基の直接挿入によって達成されてよく、これは光触媒されることができ(Doering, W. von E.; Knox, L. H., J. Am. Chem. Soc., 1951, 75, 297-303)、又はルイス酸で触媒されることができる(Wittig, von G.; Schwarzenbach, K., Liebigs Ann. Chem., 1961, 650, 1-21)。好ましくは、より安定な試薬であり且つ揮発性ジアゾメタンに対する安全な代替品を与えることができるので、トリメチルシリルジアゾメタンが使用される(Seyferth, D.; Menzel, H.; Dow, A. W.; Flood, T., C. J. Organometallie Chem., 1972, 44, 279-290)。
本発明によれば、O−C−N官能基を含むへテロ環を拡大するために、ジアゾメタン及びトリメチルシリルジアゾメタンが利用される。本発明の環拡大化学は、全ての適切に保護されたO−C−N及び環式O−C−Nに適用可能である。加えて、この環拡大は、必要な数の環拡大のみを生じるように特異的かつ速度論的に制御することができ、これは適切に保護された基を組み込むことによって、また適切な溶媒条件下で達成される。
【0027】
一つの実施形態において、ジアゼピノン前駆体8aを合成する方法は、適切に保護されたヒポキサンチン誘導体を、ルイス酸触媒と共に有機溶媒の溶液中かつ無水の雰囲気下において、新たに調製されたエーテル中のジアゾメタンの無水溶液で処理することを含んでいる。図6Aは、このような合成スキームの例を示している。この反応は、−78℃〜25℃において数分から数時間で行われる。
出発材料であるヒポキサンチン、2’−デオキシイノシン又はイノシンについては、ヘテロ環式のヒポキサンチン環は如何なる立体中心も含んでいない。これは、Alfa Aesar, a Johnson Matthey Co., Ward Hill, MA、及びAldrich Chemical Co., Milwaukee, WIのような供給業者から商業的に入手可能である。何れの純度のヒポキサンチン、2’−デオキシイノシン、及びイノシンも使用できるが、少なくとも約92%の純度が好ましい。使用するヒポキサンチン、2’−デオキシイノシン、又はイノシンの量は、保護されたヒポキサンチン誘導体にするために充分な、保護基及び求核性ヒポキサンチンイオン環の形成を補助する上で有効な塩基が存在する限り、如何なる量であってもよい。
【0028】
この塩基は、救核性ヒポキサンチンイオンを形成でき、又はイミダゾール二級アミン及びO−C−N官能基の保護をもたらすことに関して保護剤を誘導できる如何なる塩基であってもよい。この保護は、少なくとも一つのイミダゾール二級アミンンにおいて生じる。塩基の例には、ピリミジン;水性NaOH;NEt3;DMAP;K2CO3;Na2CO3;NaH;Na/NH3;MeLi;及びt−BuOKが含まれるが、これらに限定されない。図5は、ヒポキサンチンに、R2及びR2’保護基を導入するためのスキームを示しており、ここでのR2及びR2’は如何なる保護基であってもよく、また相互に同じでも異なってもよい。
【0029】
当該保護基は、その何れかの組合せ及び変形により、ヒポキサンチン環における全てのイミダゾール二級アミン、環式アミン及びO−C−N(O=C−NH⇔HO−C=N)官能基と共有結合を形成でき、それによってヒポキサンチン、2’−デオキシイノシン及びイノシンのヒポキサンチン環を保護することができる全ての基である。全ての適用可能な保護基の追加の特徴は、それらが(1)ヒポキサンチン、2’−デオキシイノシン,及びイノシン誘導体を、有機溶媒中においてより可溶性にするのを助けること、(2)副反応及び分解を伴わずに環拡大を進行させること(即ち,それらはジアゾメタン及びルイス酸の条件下で安定であること)、及び(3)環拡大を妨害することなく、ジアゼピノンの単離及び精製を助けることである。イミダゾール二級アミン及びO−C−N官能基のための保護基の例は、カルバメート(即ちメチル、エチル、t−ブチル、ベンジル、9−フルオレニルメチル、2,2,2−トリクロロエチル、1−メチル−1−(4−ビフェニル)エチル、及び1−(3,5−ジ−t−ブチル)−1−メチルエチル);アミド(即ちアセタミド、トリフルオロアセタミド、及びベンズアミド);アリールアミン(即ちベンジルアミン、4−メトキシベンジルアミン、及び2−ヒドロキシベンジルアミン);並びにシリルアミンであるが、これらに限定されない。
【0030】
環拡大のために使用されるルイス酸に関して、この酸は、O−C−N官能基のC−N結合において特異的に反応を触媒する上で有効であり、これはO−C−N結合の間にメチレン基を挿入して別のケトン官能基及びアミン官能基形成し、所謂α−アミノケトンを形成する。酸の例には、トリメチルシリルトリフレート(TMSOTf);BX3;AlX3;FeX3;GaX3;SbX5;SnX4;AsX5;ZnX2;及びHgX2が含まれるが、これらに限定されず、ここでのXはハロゲンである。この反応において使用されるルイス酸の量は、化学量論的当量の1%〜200%の範囲内にある。
【0031】
有機溶媒に関しては、該溶媒は、反応を障害なく且つタイムリーに進行させるために、出発物質を可溶化する上で有効で、且つ単離及び精製を妨げないものであるべきである。好ましくは、これら有機溶媒は薬学的処理のために許容可能な溶媒に限定されるべきであり、これにはアセトニトリル;クロロベンゼン;ジクロロメタン;メチルシクロヘキサン;N−メチルピロリドン;ニトロメタン;アセトン;DMSO;酢酸エチル;エチルエーテル;及び蟻酸エチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
一つの実施形態において、前記保護されたヒポキサンチン、2’−デオキシイノシン、又はイノシンは、無水雰囲気を維持しながら、選択された有機溶媒及びルイス酸を添加する前に、撹拌バーで撹拌しながら反応容器に添加される。この撹拌された混合物は、−78℃〜25℃において透明で、且つ均一である。無水雰囲気を維持しながら、充分に新鮮に調製されたエーテル中のジアゾメタンを、過剰なバブリング及び多過ぎるジアゾメタンの添加を防止するために徐々に添加し;該混合物は、TLC又はHPLCで測定しながら、保護されたヒポキサンチン、2’−デオキシイノシン又はイノシンが完全に消費されるまで、数分〜数時間連続的に撹拌される。保護されたヒポキサンチン、2’−デオキシイノシン、又はイノシンが完全に消費されたら、保護されたジアゼピノンが既に該反応混合物から沈殿し始めており;該環拡大された生成物、即ち、望ましいジアゼピノン誘導体をさらに沈殿させるために、抗溶媒、好ましくは上記で述べたのと同様の薬学的処理に許容可能な抗溶媒が添加される。該ジアゼピノン誘導体は、適切な再結晶化溶媒、又はSiO2フラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製してよい。次いで、各ジアゼピノン誘導体は、その化学に特異的な脱保護手順を受けて、ジアゼピノン前駆体8a及び中間体9aへと脱保護される(例えば図7)。
【0033】
何れの脱保護手順が使用されるかを決定する二つの因子、即ち、ジアゼピノンの収率及び規模適合性が考慮されてよい。苛酷な脱保護手順は、特に長時間を必要とする場合には、ジアゼピノンの顕著な分解を伴うであろう。一定の条件下での収率は、マイクロスケールでは優れていても、グラムスケール及びキログラムスケールでは乏しいであろう。
【0034】
2.モジュールB−化合物9a(3−[2−デオキシ−β−D−エリスロ−ペントフラノシル]−6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8(3H)−オン]の合成
ジアゼピノン前駆体8aが合成されたら、背景技術の項で上述したShowalter及びBakerの方法を改良する合成スキーム、特に取扱い性、効率、規模適合性、及び収率の改善されたスキームが提供される。
Showalter及びBakerの方法では、パートリメチルシリル化されたジアゼピノン誘導体は、その高い毒性のために薬学的に許容可能でなく回避すべき有毒な溶媒である1,2−ジクロロエタン中において、−35℃の低温で、Vorbruggenの塩化錫触媒法から適合された塩化パーアシルグリコシルを介して、2−デオキシ糖に縮合された。
【0035】
この縮合を改良するために、本発明に従えば、弱いルイス酸(これにはZnCl2及びHgBr2が含まれるが、これらに限定されない)が用いられる。低温では徐々にしか縮合を起こさせない薬学的に許容可能な溶媒(これにはトルエン及びテトラヒドロフランが含まれるが、これらに限定されない)は、上昇した温度(0℃〜50℃)で充分に作用して、規模適合性及び取扱い性を改善するはずである。図8は、改善された縮合法の一つの実施形態を示している。このα/β混合物は、分別結晶化によって分離することができる。
ジアゼピノンと2−デオキシ−D−リボースとの縮合をさらに改善するために、Vorbruggenによる遊離ヌクレオシドの1ポット合成(Bennua-Skalmowski, B.; Krolikiewicz, K.; Vorbruggen, H. , Tetrahedron Lett., 1995, 36, 7845-7848)が、遊離の 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンを直接製造するために適合される(図9、化合物9c)。
【0036】
過剰な2−デオキシ−D−リボース及びジアゼピノン8a、2’−デオキシイノシン、及びイノシンのパーシリル化は、薬学的に許容可能な溶媒(これにはアセトニトリル及びテトラヒドロフラザンが含まれるが、これらに限定されない)中において、還流温度で3時間、種々のシリル化剤(これにはヘキサメチルジシラザン(HMDS);トリメチルクロロシラン;ブロモトリメチルシラン;N−(トリメチルシリル)アセタミド;ビス−(トリメチルシリル)トリフルオロアセタミド;トリメチルシリルトリフルオロアセテート;トリメチルシリルトリフレート;及びそれらの何れかの組合せが含まれるが、これらに限定されない)を用いて達成できるであろう。
【0037】
過剰な2−デオキシ−D−リボース及びジアゼピノン8aのパーシリル化、及び蒸発、これに続く薬学的に許容可能な溶媒(これにはアセトニトリル及びテトラヒドロフラザンが含まれるが、これらに限定されない)中でのルイス酸の存在下における1.1当量のルイス酸(これにはTMSOTf、BX3、AlX3、FeX3、GaX3、SbX5、SnX4、AsX5、ZnX2、及びHgX2:ここでのXはハロゲンである)との縮合、並びにメタノール性塩基(これにはメタノール中のNaHCO3又はNH3が含まれるが、これらに限定されない)を用いたトランスシリル化によって、遊離の9cが与えられ、これは分別結晶化でαアノマーから分離されるであろう。
【0038】
図8において、2−デオキシ−D−リボース上に示された保護基はp−トルオイルであり、これは一例に過ぎない。保護基R4には、エーテル(例えばメトキシメチル、ベンジルオキシメチル、アリル、プロパルギル、p−クロロフェニル、p−メトキシフェニル、p−ニトロフェニル、ベンジル、p−メトキシベンジル、ジメトキシベンジル、ニトロベンジル、ハロゲン化ベンジル、シアノベンジル、トリメチルシリル、トリメチルシリル、トリイソプロピルシリル、トリベンジルシリル、及びアルコキシシリル);エステル(例えば種々のアセテート及びベンゾエート);カルボネート(例えばメトキシメチル、9−フルオレニルメチル、2,2,2−トリクロロエチル、ビニル、アリル、ニトロフェニル、及びベンジル);スルホネート(例えばアリルスルホネート、メシレート、ベンジルスルホネート、及びトシレート);環状アセタール及びケタール(例えばメチレン、エチリデン、アクロレイン、イソプロピリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、種々のベンジリデン、メシチレン、1−ナフトアルデヒドアセタール、ベンゾフェノンケタール、o−キシリルエーテル);キラルケトン(例えば樟脳及びメントン);環状オルトエステル(例えばメトキシメチレン、エトキシメチレン、1−メトキシエチリデン、メチリデン、フタリド、エチリデン及びベンジリデン誘導体、ブタン−2,3−ビスアセタール、シクロヘキサン−1,2−ジアセタール、及びジスピロケタール); シリル誘導体(例えばジ−t−ブチルシリレン及びジアルキルシリレン基); 環状カルボネート; 環状ボレート;並びにそれらの組合せ及び変形が含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
3.モジュールC−ペントスタチン((8R)−3−(2−デオキシ−β−d−エリスロ−ペントフラノシル)−3,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−オール)の合成
8−ケト基の還元へと進む前に、保護基が存在するならば、それらは除去することができるであろう。Showalter及びBakerの方法では、メタノール性ナトリウムメトキシドが使用された。これは苛酷な環境であり、ジアゼピノン部分の分解を導く可能性がある。分解を最小限にし、遊離の6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オン(化合物9c)の収率を増大させるためには、還元の前に、より穏やかな脱保護法(Phiasivongsa, P.; Gallagher, J.; C. Chen; P. R. Jones; Samoshin, V. V.; Gross, P. H., Org. Lett., 2002, 4, 4587-4590)がより好ましい(図10)。中間体9c等の中間体の調製をさらに改善するために、図13に示すように、商業的に利用可能な 2’−デオキシイノシンを用いて合成を開始することができる。
【0040】
Showalter及びBakerは、種々の立体障害を受けたボロハイドライドを試みたが、最良の収率を生じるプロセスは、ホウ水素化ナトリウム及びニッケル触媒の水素添加を用いた非選択的還元であることが分かった。Chan, E.; Putt, S. R.; Showalter, H. D. H.; Baker, D. C., J. Org Chem. 1982, 47, 3457-3464。図10は、8−ケト官能基をペントスタチンにするための、脱保護及び他の不斉還元のための改善された方法のスキームを示している。
【0041】
本発明においては、キラル補助剤をドープした水素化物が好ましく実施される。水素化物の例には、NaBH4;LiAlH4;BF3−THF;及びLiBH4が含まれるが、これらに限定されない。またキラル補助剤の例には、N,N’−ジベンゾイルシスチン; Kグルコリド;B−クロロジイソピノカンフェイボラン(chlorodiisopinocampheyboran);[(lS)−エンド]−(−)−ボルネオール;及び(S)−(+)−及び(R)−(−)−2−アミノブタン−l−オールが含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
遊離の6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オン(9c)及び9aのような保護された誘導体におけるジアゼピノン部分の存在によって、それらは良好なα−アミノケトン候補となる。このアプローチは、α−アミノケトンと共に充分に機能することが示されている。(S)−(+)−又は(R)−(−)−2−(2−イソインドリニル)ブタン−1−オール(それぞれ商業的に入手可能な(S)−(+)−及び(R)−(−)−2−アミノブタン−1−オールから1段階で容易に調製される)で処理されたLiAH4での、α−アミノケトンのアミノアルコールへの不斉還元が、40〜97%のエナンチオマー過剰で達成されている。Brown, E.; Leze, A; Touet, J. Tetrahedron : Asymmetry 1996,7, 2029-2040。本発明者等は、α−アミノケトンについての成功が示されているこの種類の不斉還元は、ペントスタチンの収率を改善するはずであると確信している。
【0043】
加えて、この8−ケト官能基の還元は、経済的な水素化物(KBH4;NaBH3CN;MgH2;モンモリロナイト−KSF支持体上のボロハイドライド;及びアンバーライト(登録商標)支持体上のボロハイドライドが含まれるが、これらに限定されない)、金属(Li、Na、又はK/NH3;Li、Na又はK/アルコール;H2及びニッケル触媒、例えばホウ化ニッケル及びラネーニッケル;H2及びプラチナ触媒;H2及び鉄触媒、例えばFeCl2;及びFe/酢酸が含まれるが、これらに限定されない)、及び水及び金属屑(亜鉛及びマンガンが含まれるが、これらに限定されない)でのチタノセン触媒還元を用いて達成されてもよい。
【0044】
上記説明に基づいて、ペントスタチンの全合成は、モジュールA、B及びCの何れかの順序での組み合わせによって達成することができる。特別な合成経路はモジュールABCである。同様に好ましい他の二つの変形例には、以下で説明するモジュールACB及びBACが含まれる。
【0045】
4.モジュールACB−ペントスタチンの全合成
図11は、環拡大によるペントスタチンの全合成に関する一つの変形例を示しており、ここでのR5及びR5’は何れの保護基であってもよく、相互に同一でも異なってもよく;またR6及びR6’は何れの保護基であってもよく、相互に同一でも異なってもよい。
図10及び図12においては、脱保護が還元の前に行われるが、還元の間は保護基がその場所に残され、次いで除去される逆の順序がさらに望ましいこともあり得る。糖の上での異なる保護基(図8の説明を参照のこと)は、脱保護及び還元のシーケンスを何れの方法で行うことも可能にする。図11においては、取扱い性、収率及び精製に関する理由で、場合によっては保護基の除去の前に還元を行うことが望ましかった。その場合、縮合の前に保護基を除去することが必要であった。縮合の後、最終生成物であるペントスタチンを得るために、糖の保護基は除去されなければならなかった。
【0046】
5.モジュールBAC−ペントスタチンの全合成
図12は、環隔大によるペントスタチンの合成に関するもう一つの変形例を示しており、ここでのR6及びR6’は何れの保護基であってもよく、相互に同一でも異なってもよい。
【0047】
6.モジュールAC−ペントスタチンの全合成
図13は、環拡大によるペントスタチンの全合成に関するもう一つの変形例を示しており、ここでのR7、R7’及びR7’’は何れの保護基であってもよく、相互に同一でも異なってもよい。この合成は商業的に入手可能な2’−デオキシイノシンで始まるので、ペントスタチンの全合成は、幾つかの合成ステップをバイパスすることによってさらに短縮される。
【0048】
2’−デオキシリボース環における水酸基のための保護基R7及びR7’には、ベンジルエーテル(例えばp−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、ニトロベンジル、及びp−シアノベンジル);シリルエーテル(例えばトリアルキルシリル及びアルコキシジアルキルシリル);及びエステル(例えばアセテート、ハロゲン化アセテート、アルコキシアセテート、及びベンゾエート)が含まれるが、これらに限定されない。ヘテロ環であるヒポキサンチン環上の酸素の保護基R7’’の例には、ベンジルエーテル(例えばp−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、ニトロベンジル、及びp−シアノベンジル)及びシリルエーテル(例えばトリアルキルシリル、及びアルコキシジアルキルシリル)が含まれるが、これらに限定されない。或いは、該ヘテロ環のNHアミドは、カルバメート(即ち、メチル、エチル、t−ブチル、ベンジル、9−フルオレニルメチル、2,2,2−トリクロロエチル、1−メチル−1−(4−ビフェニル)エチル、又は1−(3,5−ジ−t−ブチル)−l−メチルエチルカルバメート)への変換(下記に示すようにNH→N−R7’’’)によって保護されることもできるであろう。
【化13】
【0049】
ベンジルエーテルの脱保護は、次のような温和な試薬を用いて達成できるであろう;即ち、PhSTMS、ZnI2、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、1,2−ジクロロエタン、60℃で2時間;ローダミン/A12O3/H2;及びジクロロメタン中のPh3C+BF4-である。当該エステル保護基は、塩基性メタノール及びアルコール(例えばアンモニア/メタノール、及びナトリウムメトキシド)で開裂させることができるであろう。 当該シリルエーテルは次の試薬で容易に除去できるであろう:テトラヒドロフラン中のフッ化テトラブチルアンモニウム ;20℃のメタノール中のクエン酸;周囲温度のアセトニトリル中のFeCl3;及びBF3−エーテラート。Bocのようなカルバメートは、実施例2に記載するように容易に除去できるであろう。
【0050】
図14は、コホルマイシンの合成のような他のペントスタチン誘導体を、環拡大によって得ることができる方法の一例を示しており、ここでのR8、R8’、R8’’及びR8’’’ は何れの保護基であってもよく、相互に同一でも異なってもよい。この合成は商業的に入手可能なイノシンで始まるので、該コホルマイシンの全合成は、幾つかの合成段階をバイパスすることによってさらに短縮される。
【0051】
ペントスタチン、その類縁体及び誘導体のこれら短縮された合成方法は、全体の堅牢さ、効率,収率及び経済性を考慮したときに非常に望ましいものである。
以下の実施例は、上記で述べた本発明を使用する方法を完全に説明するために役立てるものである。これらの例は、如何なる意味においても本発明の範囲を制限するものではなく、例示の目的で提示されるものであることが理解される。ここに引用した参照文献は、その全体を、本明細書の一部として本願に援用する。
【0052】
実施例
1. ジベンジルヒポキサンチンからのペントスタチンの合成
本発明に従えば、ペントスタチンは、図6Aに概説したように、保護されたヒポキサンチンを環拡大して、ジアゼピノン誘導体を生じさせる経路を通して合成することができ、ここでのR3及びR3’は如何なる保護基であってもよく、相互に同じか又は異なることができる。この実施例において、ペントスタチンは、ベンジルで保護されたヒポキサンチンの環拡大を介して合成される。
【0053】
500mLの三つ口丸底フラスコ中の、16mLの水及び10gのKOHを含有する溶液に、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(28mL)を添加した。該フラスコに、水コンデンサ及び氷浴中に浸漬された250mLの丸底受液ラスコを備えた簡単な蒸留ユニットを取付けた。また、エーテル(90mL)中に溶解した10gのジアザルド(Diazald)を含む100mLの滴下漏斗も取付けた。受液フラスコの未使用の口をゴム隔壁及び窒素を充填したバルーンで閉鎖した。冷却水の供給を開始し、ジアザルド溶液を徐々に添加しながら、蒸留フラスコを油浴(75〜80℃)中にて徐々に加熱した。添加速度は蒸留速度に等しくすべきであり、これには約20分を要する。全てのジアザルドが使用されてしまった後に、追加の10mLのエーテルを添加し、蒸留液が透明になるまで継続する。該エーテルは、約30mmolのジアゾメタンを含有すべきである。
【0054】
三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(0.4mL、2.6mmol)を添加する前に、ジベンジルヒポキサンチンの異性体混合物(0.5g、1.58mmol)を、250mLの丸底フラスコ中の無水ジクロロメタン(50mL)中に溶解させる。該混合物をN2雰囲気下でゴム隔壁で密封し、氷浴中で冷却した後、新たに調製されたジアゾメタンエーテラート(50mL)を、過剰なバブリング及び多過ぎるジアゾメタンの添加を防止するためにシリンジを通して徐々に添加する。該混合物は、TLC(石油エーテル:酢酸エチル:メタノール=1:1:0.2)が反応の完了を示すまで、N2雰囲気下に氷浴中で約30分間撹拌され、この時点では生成物が沈殿するのが見えるであろう。無水ジエチルエーテル(200mL)を添加して生成物を完全に沈殿させ、次いでフラスコをN2ガスでフラッシュし、ゴム隔壁で密封し、冷蔵庫内(0℃)で一晩保存する。ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンの三つの異性体混合物である白色の固体を濾過し、ジエチルエーテル(50mL)で濯ぎ、少なくとも6時間真空中で乾燥させる。
【0055】
ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンの三つの異性体の正確な質量は、それぞれのジベンジルヒポキサンチンについての316.132ダルトンに比較したときに、330.148ダルトンであり、メチレン(−CH2−)官能基の分だけ異なっている。図6B及び図6Cは、ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンの粗製異性体混合物のAPI−ES質量スペクトル、及び400MHz1HNMRスペクトル(d6DMSO)を示しているが、これは二重の反復環拡大に由来する8員環のβアミノケトンで汚染されており、該汚染物は二つのメチレン(−CH2−)官能基を得ている。図6Bは、異性体混合物であるジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンの質量スペクトルを示しており、m/z=331[M+H]+であり、m/z=345[M+H]+には二重に反復環拡大された不純物がある。図6Cは、ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンの異性体混合物の1HNMRスペクトルを示しており、2.50ppmにDMSOが存在する。しかし、このp−アミノケトン不純物は、種々の精製法(これには分別再結晶化;カラムクロマトグラフィー;及び分取HPLCが含まれるが、これらに限定されない)によって除去できるであろうし、或いは、反応条件を制御して所望のジアゼピノンのみを沈殿させることにより、そもそもその形成自体を防止できるであろう。図6Dは、4.12〜3.92ppmに、ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンの三つの全ての異性体におけるメチレン(−CH2−)官能基の存在を示している。図6Eは、d6−DMSO中におけるジベンジルヒポキサンチンの異性体混合物の、6.0〜2.0ppmの間の400MHz1HNMRスペクトルを示している。
【0056】
図6C及び図6Dの4.2〜3.8ppmの領域は、4.12、4.01、及び3.92ppmに、三つの異性体についての三つの新たに形成された異なるメチレン(−CH2−)シングレットを明瞭に示しており、これらは、図6E及び図6Fの4.5〜3.5ppmの選択された領域に示した、ジベンジルヒポキサンチンの出発異性体混合物には明らかに存在しない。6.5〜2.0ppmの拡大図領域(図6F)は、2.50ppmのDMSO、約3.33ppmの溶媒不純物、及び5.57〜5.21ppmのベンジル水素核(Ph−CH2−)のみを示している。
文献(Chan, E.; Putt, S. R.; Showalter, H. D. H.; Baker, D. C., J. Org. Cherra., 1982, 47, 3457-3464)において、d6−DMSO中における未保護のジアゼピノン8aの200MHz1HNMRスペクトルは、4.37ppmにおいてシングレットとして見えるメチレン(−CH2−)官能基を有しており、これはジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンのものに近接している。しかし、未保護のジアゼピノン8aにおけるスプリットパターン及びケミカルシフトは、ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンを完全に表していない可能性がある。このメチレン(−CH2−)水素核はジアステレオマー的であり、それらはヘテロ環の一部であり、従って異なる電子的環境を経験する可能性が非常に高いので、ジェミナルカップリング(二つの結合カップリング又は2Jとも呼ばれる)による一組の二重ダブレットピークを示すはずである。ジェミナルカップリング定数は、+42〜−20Hzに亘る大きなものであることができ、典型的には約10〜20Hzであり、−CH2−結合角(図6G及び図6H)、隣接するπ結合の影響、環の大きさ、及び電気陰性β置換基の向きに依存する。
【0057】
これらの保護されたジアゼピノン類は新規であるので、the ACD/I-Lab 1H NMR Predictor, a service provided Advanced Chemistry Development, Inc.(ACD/Labs at ilab. acdlabs. Com)を使用して、ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンのスプリットパターン及びケミカルシフトを評価し(図6I及び図6J)、メチレン官能基の出現をさらに確認した。図6Iは、非極性かつ非芳香族性の溶媒中における、ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンの400MHzACD/HNMRスペクトルを示している。図6Jは、非極性かつ非芳香族性の溶媒中における、ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンの、4.30〜3.90ppmにおける400MHzACD/HNMRスペクトルの拡大図を示しており、ここには環式−CH2−基が現れる。
【0058】
当該プログラムは、観察されたデータ(図6D及び文献(Chan, E.; Putt, S. R.; Showalter, H. D. H.; Baker, D.C. , J. Org Chem., 1982, 47, 3457-3464))とは逆に、メチレン(−CH2−)水素核がジアステレオマー的であることを予測した;しかし、それは非極性且つ非芳香族性の溶媒中においてシミュレートされたものであり、完全に正確なものではないかもしれない。しかし、ジアステレオマー水素核の化学シフト(4.25及び3.98ppm)は、ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンの三つの異性体について観察されたメチレンシングレット(4.12、4.01、及び3.92ppm)から約0.1ppmしか外れていなかった。従って、これら三つの異性体の環式−CH2−核は類似しており、120°に近いHCH角度を有しているように見える。
【0059】
文献にはベンジル保護基を除去するための多くの方法が存在し、これには蟻酸/メタノールを用いたパラジウム−活性炭触媒による水素化;20%Pd(OH)2/エタノール; Na、NH3;hν、405nm(CuSO4:NH3);CCl3CH2OCOCl/アセトニトリル;及びRuO4/NH3/水が含まれるが、これらに限定されない。最も普通なのは、H2ガスを用いたパラジウム−活性炭触媒による水素化である。規模適応性を改善するために、H2ガスの代りにホルムアミドを使用することができるであろう。
一例として、ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オン(2mmol)を、メタノール(50mL)、テトラヒドロフラン(25mL)、及び蟻酸(1.0mL)の中に懸濁させた。パラジウム(5%)−活性炭を添加(200mg)した後、10〜30気圧のH2下に50℃において、TLC(石油エーテル:酢酸エチル:メタノール=1:1:0.2)により反応の完了が示されるまで(24〜48時間)、該混合物を激しく撹拌した。セライト上で触媒を濾過し、メタノールで完全に洗浄する。濾液を蒸発させると、ジアゼピノール8bの異性体混合物を含有する固体が残る。
【0060】
乾燥条件の下で、ジアゼピノール8b及び N,N-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセタミド(6.0mmol)、ピリミジン(6.0mmol)、及び無水アセトニトリル(5mL)の混合物を12時間以上、又は反応が完了するまで撹拌する。過剰な試薬及び溶媒を60℃で蒸発させる。さらにアセトニトリル(20mL)を加え、均一になるまで撹拌し、60℃で蒸発させて、シリル化された中間体を得る。それを無水アセトニトリル(15mL)中に再度懸濁させ、−30〜−50℃に冷却した後、塩化錫(IV)(4mmol)を加える。約10分後に、乾燥1,2−ジクロロエタン中の塩化2−デオキシ−3,5−ジ−O−p−クロロベンゾイル−D−ペントフラノシルを加える。この混合物を、TLC(酢酸エチル:メタノール=9:1)によって反応の完了が示されるまで、約1時間撹拌する。該溶液を飽和重炭酸塩溶液(50mL)に注ぎ、酢酸エチル(50mL)で希釈し、セライトを通して濾過した後、層を分離し、水層を酢酸エチルで2回抽出する(2×50mL)。有機層を合体させ、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮して乾固させる。フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=95:5)により、所望の (8R)−及び(8S)−3−(2−デオキシ−3,5−ジ−O−p−ベンゾイル−p−D−エリスロ−ペントフラノシル)−3,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−オールをα−アノマーから分離した後、それらをメタノール(200mL)中のアンモニア溶液(5倍過剰より多い)の中に懸濁させ、該混合物を周囲温度で24時間撹拌する。過剰のアンモニアを除去し、必要であれば、メタノール溶液を活性炭(200mg)で脱色した後、蒸発乾固させる。このジアステレオマー混合物を、水/メタノール中での分別結晶化及び/又はC−18逆相カラム(水:メタノール=93:7)により分離して、純粋なペントスタチンを得る。
【0061】
2. N,N−ジ−Bocヒポキサンチンからのペントスタチンの合成
この例では、図6Aに概説したように、N,N−ジ−Boc保護されたヒポキサンチンの環拡大によりジアゼピノン誘導体を生じさせる経路を通して、ペントスタチンを合成する。図7は、N,N−ジ−Bocジアゼピノンの、ジアゼピノン8a及びジアゼピノール8bへの脱保護を示している。ジアゾメタンは上記の実施例1で述べたようにして調製した。
N,N−ジ−Bocヒポキサンチン(531mg、1.58mmol)を、250mLの丸底フラスコ内の無水ジクロロメタン(50mL)中に溶解した後、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(0.2mL、1.3mmol)を添加した。該混合物をN2雰囲気下にゴム隔壁で密閉し、氷浴中で冷却した後、上記の新たに調製したジアゾメタンエーテラートを、過剰なバブリング及び多過ぎるジアゾメタンの添加を防止するためにシリンジを通して徐々に添加した。該混合物は、TLC(石油エーテル:酢酸エチル:メタノール=1:1:0.2)が反応の完了を示すまで、約30分間、N2雰囲気下に氷浴中で撹拌され、その時点では生成物が沈殿するのを見ることができるであろう。無水のジエチルエーテル又はヘキサン(200mL)を添加し、フラスコをN2ガスでフラッシュし、ゴム隔膜で密閉し、冷蔵庫(0℃)中で一晩(12時間)保存する。白色固体のN,N−ジ−terブトキシカルボニル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8−(3H)−オンを濾過し、ジエチルエーテル(50mL)で濯ぎ、少なくとも6時間真空中で乾燥した。
【0062】
文献中にはBoc保護基を除去するための多くの方法が存在し、それには塩化アセチル/メタノール;CF3CO2H/PhSH;TsOH/THF/CH2Cl2;10%H2SO4/ジオキサン;Me3SiI/アセトニトリル;Me3SiCl/フェノール/CH2Cl2;SiCl4/フェノール/CH2Cl2;TMSOTf/PhSCH3;Me3SO3H/ジオキサン/CH2Cl2;CF3CO2H/CH2Cl2;BF3−Et2O/4Åms/CH2Cl2/23℃/20h;SnCl4/AcOH/THF/CH2Cl2/トルエン又はアセトニトリル;及びZnBr2/CH2Cl2が含まれるが、これらに限定されない。メタノール中の塩化アセチルは、メタノール中で無水HClを発生する。これは、Boc保護基を除去して8aを得るための便利な方法である。
【0063】
乾燥条件下で、ジアゼピノン8a、N,N−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセタミド(6.0mmol)、ピリミジン(6.0mmol)、及び無水アセトニトリル(5mL)の混合物を、12時間以上又は反応が完了するまで撹拌する。過剰な試薬及び溶媒を60℃で蒸発させる。さらにアセトニトリル(20mL)を加え、均一になるまで撹拌し、60℃で蒸発させて、シリル化された中間体を得る。それを無水アセトニトリル(15mL)中に再度懸濁させ、−30〜−50℃に冷却した後、塩化錫(IV)(4mmol)を加える。約10分後に、乾燥1,2−ジクロロエタン中の塩化2−デオキシ−3,5−ジ−O−p−クロロベンゾイル−D−ペントフラノシルを加える。この混合物を、TLC(酢酸エチル:メタノール=9:1)によって反応の完了が示されるまで、約1時間撹拌する。該溶液を飽和重炭酸塩溶液(50mL)に注ぎ、酢酸エチル(50mL)で希釈し、セライトを通して濾過した後、層を分離し、水層を酢酸エチルで2回抽出する(2×50mL)。有機層を合体させ、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮して乾固させる。フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=95:5)により、所望の3−(2−デオキシ−3,5−ジ−O−p−ベンゾイル−β−D−エリスロ−ペントフラノシル)−3,6,7,8−テトラヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]ジアゼピン−8(3H)−オンをα−アノマーから分離した後、それらをメタノール(200mL)中のアンモニア溶液(5倍過剰より多い)中に懸濁させ、該混合物を周囲温度で24時間撹拌する。過剰のアンモニアを除去し、溶媒を60℃で蒸発させて9cを得る。この粗製中間体を水(10mL)及びメタノール(10mL)中に溶解した後、ホウ水素化ナトリウム(1mmol)を加える。該溶液を周囲温度で1時間撹拌し、その最後に、ドライアイスの添加によって過剰なホウ水素化物を分解する。蒸発によりメタノールを蒸発させ、水溶液を活性炭(200mg)で脱色し、濾過した後に凍結乾燥して、綿毛状の固体を得る。このジアステレオマー異性体混合物を、水/メタノール中での分別結晶化、及び/又はC−18逆相カラム(水:メタノール=93:7)により分離して、純粋なペントスタチンを得る。
【0064】
3. 2’−デオキシイノシンからのペントスタチンの合成
この実施例では、図13に概説したように、2’−デオキシイノシンの直接環拡大の経路を介してペントスタチンが合成される。ジアゾメタンは実施例1で述べたようにして調製される。
乾燥条件下において、2’−デオキシイノシン(2.0mmol)、N,N−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセタミド(6.0mmol)、ピリミジン(6.0mmol)、及び無水アセトニトリル(5mL)の混合物を、12時間以上又は反応が完了するまで撹拌する。過剰な試薬及び溶媒を60℃で蒸発させる。さらにアセトニトリル(20mL)を加え、均一になるまで撹拌し、60℃で蒸発させて、ペル−O−シリル化された2’−デオキシイノシンを得る。該出発物質を、250mLの無水ジクロロメタン(50mL)中に溶解した後、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(0.2mL、1.3mmol)を添加する。該混合物をN2雰囲気下にゴム隔壁で密閉し、氷浴中で冷却した後、上記の新たに調製したジアゾメタンエーテラートを、過剰なバブリング及び多過ぎるジアゾメタンの添加を防止するためにシリンジを通して徐々に添加する。該混合物を、TLCによって反応が完了したことが示されるまで、約30分間、N2雰囲気下に氷浴中で撹拌する。テトラヒドロフラン(100mL)中に溶解されたフッ化テトラブチルアンモニウム(3.0mmol)の溶液を徐々に添加し、該混合物を2時間以上氷浴中で撹拌し、その時点で中間体生成物9cが沈殿するのを見ることができる。この粗製中間体を濾過し、真空中で乾燥し、次いで水(10mL)及びメタノール(10mL)中に溶解した後、ホウ水素化ナトリウム(1mmol)を加える。該溶液を周囲温度で1時間撹拌し、その最後に、ドライアイスの添加によって過剰なホウ水素化物を分解する。蒸発によりメタノールを蒸発させ、水溶液を活性炭(200mg)で脱色し、濾過した後に凍結乾燥して、綿毛状の固体を得る。このジアステレオマー異性体混合物を、水/メタノール中での分別結晶化、及び/又はC−18逆相カラム(水:メタノール=93:7)により分離して、純粋なペントスタチンを得る。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1A】図1Aは、Showalter及びBakerによるジアゼピノン前駆体の合成スキームである(Chan, E. ; Putt, S. R.; Showalter, H. D.H. ; Baker, D. C.;J. Org. Chem. 1982, 47, 3457-3464)。
【図1B】図1Bは、塩化パーアシルグリコシルを用いたグリコシル化のスキームである(Chan et al.による上記論文)
【図1C】図1Cは、立体制御されない還元についてのスキームである(Chan et al.による上記論文)。
【図2】図2は、Chenによって改良されたペントスタチン合成スキームである(Chen, B. -C. ; Chao, S.T.; Sundeen, J. E.; Tellew, J.; Ahmad, S., Tetrahedron Lett. 2002, 43, 1595-1596)。
【図3】図3は、ペントスタチンのシクロペンチル類縁体についての、立体的に制御された合成スキームである(Ho, J. Z.; Mohareb, R. M.; Ahn, J. H.; Sim, T. B.; Rapoport, H. J., Org. Chem. 2003, 68, 109-114)。
【図4】図4は、リン酸化を伴わずに示された、S.antibioticusによるペントスタチン生合成についての機構及び中間体を示している。
【図5】図5は、ヒポキサンチンにR2保護基を導入するためのスキームであり、ここでのR2は如何なる保護基であってもよい。
【図6A】図6Aは、保護されたヒポキサンチンをジアゼピノン誘導体へと環拡大するためのスキームであり、ここでのR3は如何なる保護基であってもよい。
【図6B】図6Bは、m/z=331[M+H]+のジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]−ジアゼピン−8−(3H)−オンの異性体混合物、及びm/z=345[M+H]+の二重に反復環拡大された不純物のマススペクトルを示している。
【図6C】図6Cは、ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]−ジアゼピン−8−(3H)−オンの異性体混合物の1HNMRを示しており、DMSOが2.50ppmにある。
【図6D】図6Dは、ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]−ジアゼピン−8−(3H)−オンの三つの全ての異性体の、4.12〜3.92ppmにおけるメチレン(−CH2−)官能基の存在を示している。
【図6E】図6Eは、d6−DMSO中でのジベンジルヒポキサンチンの異性体混合物の400MHz1HNMRスペクトルを示している。
【図6F】図6Fは、d6−DMSO中でのジベンジルヒポキサンチンの三つの異性体の、6.0〜2.0ppmにおける400MHz1HNMRスペクトルを示している。
【図6G】図6Gは、ジェミナルカップリング定数のHCH角度に対する依存性を示している。
【図6H】図6Hは、2Jカップリング定数のサンプルを列挙している。
【図6I】図6Iは、非極性かつ非芳香族性溶媒中での、ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]−ジアゼピン−8−(3H)−オンの400MHzACD/HNMRスペクトルを示している。
【図6J】図6Jは、非極性かつ非芳香族性溶媒中での、ジベンジル 6,7−ジヒドロイミダゾ[4,5−d][1,3]−ジアゼピン−8−(3H)−オンの4.30〜3.90ppmにおける400MHzACD/HNMRスペクトルの拡大図であり、ここには環式−CH2−基が現れている。
【図7】図7は、保護されたジアゼピノンからジアゼピノン8aへの脱保護スキームを示している。
【図8】図8は、取扱い性及び規模適合性を改善するための、縮合条件の変更スキームを示している。
【図9】図9は、ジアゼピノンと2−デオキシ−D−リボースとの縮合の効率、及び収率を改善するための合成スキームを示している。
【図10】図10は、8−ケト官能基のペントスタチンへの改善された脱保護、及び他の不斉還元のためのスキームである。
【図11】図11は、環拡大によるペントスタチン合成の一つの変形例である。
【図12】図12は、環拡大によるペントスタチン合成のもう一つの変形例である。
【図13】図13は、環拡大によるペントスタチン合成のもう一つの変形例である。
【図14】図14は、環拡大によるコホルマイシン合成の一例である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペントスタチンを製造する方法であって:
イミダゾール二級アミン及びO−C−N官能基(O=C−NH又はHO−C=N)の少なくとも一方が、保護基によって保護されているヒポキサンチン誘導体を準備することと;
ヒポキサンチン誘導体の6員環を拡大して、次式を有する保護されたジアゼピノン前駆体を形成することと;
【化1】
該保護されたジアゼピノン前駆体を脱保護して、次式を有するジアゼピノン前駆体8a を得ることと;
【化2】
該ジアゼピノン前駆体8aのN−2を、2−デオキシ−D−リボース又はその誘導体のC−1と縮合させて、次式9aを有する中間体を得ることと;
【化3】
該化合物9aの8−ケト官能基を還元してペントスタチンを得ることと;
を含んでなり、
前記R1及びR1’はそれぞれ独立にH又は保護基であり、R3及びR3’はそれぞれ独立にH又は保護基である方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、R3及びR3’が、それぞれ独立に、カルバメート保護基、アミド保護基、アリールアミン保護基、又はシリルアミン保護基である方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記カルバメート保護基が、メチル、エチル、t−ブチル、ベンジル、9−フルオレニルメチル、2,2,2−トリクロロエチル、l−メチル−l−(4−ビフェニル)エチル、及び1−(3,5−ジ−t−ブチル)−1−メチルエチルからなる群から選択される方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、前記アミド保護基が、アセタミド、トリフルオロアセタミド、及びベンズアミドからなる群から選択される方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法であって、前記アリールアミン保護基が、ベンジルアミン、4−メトキシベンジルアミン、及び2−ヒドロキシベンジルアミンからなる群から選択される方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記R1及びR1’が、それぞれ独立に、エーテル、エステル、カルボネート、スルホネート、環状アセタール及びケタール、キラルケトン、環状オルトエステル、シリル誘導体、環状カルボネート、及び環状ボレートからなる群から選択される保護基である方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記R1及びR1’が、それぞれ独立に、p−トルオイルの保護基である方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、前記エーテル保護基が、メトキシメチル、ベンジルオキシメチル、アリル、プロパルギル、p−クロロフェニル、p−メトキシフェニル、p−ニトロフェニル、ベンジル、p−メトキシベンジル、ジメトキシベンジル、ニトロベンジル、ハロゲン化ベンジル、シアノベンジル、トリメチルシリル、トリメチルシリル、トリイソプロピルシリル、トリベンジルシリル、及びアルコキシシリルからなる群から選択される方法。
【請求項9】
請求項6に記載の方法であって、前記エステル保護基が、アセテート及びベンゾエートからなる群から選択される方法。
【請求項10】
請求項6に記載の方法であって、前記カルボネート保護基が、メトキシメチル、9−フルオレニルメチル、2,2,2−トリクロロエチル、ビニル、アリル、ニトロフェニル、及びベンジルからなる群から選択される方法。
【請求項11】
請求項6に記載の方法であって、前記スルホネート 保護基が、アリルスルホネート、メシレート、ベンジルスルホネート、及びトシレートからなる群から選択される方法。
【請求項12】
請求項6に記載の方法であって、前記環状アセタール若しくはケタール保護基が、メチレン、エチリデン、アクロレイン、イソプロピリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、ベンジリデン、メシチレン、1−ナフトアルデヒドアセタール、ベンゾフェノンケタール、及びオキシリルエーテルからなる群から選択される方法。
【請求項13】
請求項6に記載の方法であって、前記キラルケトン保護基が、樟脳及びメントンからなる群から選択される方法。
【請求項14】
請求項6に記載の方法であって、前記環状オルトエステル保護基が、メトキシメチレン、エトキシメチレン、1−メトキシエチリデン、メチリデン、フタリド、エチリデン及び ベンジリデン誘導体、ブタン−2,3−ビスアセタール、シクロヘキサン−1,2−ジアセタール、及びジスピロケタールからなる群から選択される方法。
【請求項15】
請求項6に記載の方法であって、前記シリル誘導体保護基が、ジ−t−ブチルシリレン 及びジアルキルシリレン基からなる群から選択される方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、前記ヒポキサンチンの6員環を拡大することには、前記ヒポキサンチン誘導体とジアゾメタン又はトリメチルシリルジアゾメタンとを、ルイス酸触媒の存在下で反応させることが含まれる方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記ルイス酸触媒は、トリメチルシリルトリフレート(TMSOTf)、BX3、AlX3、FeX3、GaX3、SbX5,SnX4、AsX5、ZnX2、及びHgX2からなる群から選択され、ここでのXはハロゲンである方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、前記ルイス酸触媒が、BF3−Et2O、ZnCl2又はHgBr2である方法。
【請求項19】
請求項16に記載の方法であって、前記ヒポキサンチン誘導体とジアゾメタン又はトリメチルシリルジアゾメタンとを反応させることには、前記ヒポキサンチン誘導体を、ジアゾメタン若しくはトリメチルシリルジアゾメタンのエーテル中の無水溶液と反応させることが含まれる方法。
【請求項20】
次式を有するペントスタチン又はヘテロ環化合物の前駆体である化合物:
【化4】
ここでのR3及びR3’は、それぞれ独立にH又は保護基であり、且つR3及びR3’の少なくとも一方は保護基である。
【請求項21】
請求項20に記載の化合物であって、R3及びR3’が、それぞれ独立に、カルバメート保護基、アミド保護基、アリールアミン保護基、又はシリルアミン保護基.である化合物。
【請求項22】
請求項21に記載の化合物であって、前記カルバメート保護基が、メチル、エチル、t−ブチル、ベンジル、9−フルオレニルメチル、2,2,2トリクロロエチル、1−メチル−1−(4−ビフェニル)エチル、及び1−(3,5−ジ−t−ブチル)−1−メチルエチルからなる群から選択される化合物。
【請求項23】
請求項21に記載の化合物であって、前記アミド 保護基が、アセタミド、トリフルオロアセタミド、及びベンズアミドからなる群から選択される化合物。
【請求項24】
請求項21に記載の化合物であって、前記アリールアミン保護基が、ベンジルアミン、4−メトキシベンジルアミン、及び2−ヒドロキシベンジルアミンからなる群から選択される方法。
【請求項25】
ペントスタチンのジアゼピノン前駆体を製造する方法であって:
保護基を使用して、1以上の位置でヒポキサンチンを保護することと;
該保護されたヒポキサンチンを適切な溶媒中で適切な条件下に反応させて、次式を有する保護されたジアゼピノン前駆体を得ることと;
【化5】
ここでのR3及びR3’は、それぞれ独立にH又は保護基である
前記保護されたジアゼピノン前駆体を沈殿させることと;
前記保護されたジアゼピノン前駆体を脱保護して、次式を有するジアゼピノン前駆体8aを得ることと;
【化6】
を含んでなる方法。
【請求項26】
ペントスタチンを製造する方法であって:
保護基を使用して、1以上の位置でヒポキサンチンを保護することと;
該保護されたヒポキサンチンを適切な溶媒中で適切な条件下に反応させて、次式を有する保護されたジアゼピノン前駆体を得ることと;
【化7】
前記保護されたジアゼピノン前駆体を脱保護して、次式を有するジアゼピノン前駆体8aを得ることと;
【化8】
該ジアゼピノン前駆体8aのN−2を、2−デオキシ−D−リボース又はその誘導体 のC−1位と縮合させて、次式を有する中間体9aを得ることと;
【化9】
該化合物9aの8−ケト官能基を還元して、ペントスタチンを得ることと;
を含んでなり、
前記R1及びR1’は、それぞれ独立にH又は保護基であり、また前記R3及びR3’は、それぞれ独立にH又は保護基である方法。
【請求項27】
ペントスタチンを製造する方法であって:
ヒポキサンチン酸素、ヒポキサンチンアミド窒素、3’−ヒドロキシル酸素、及び5’−ヒドロキシル酸素のうちの少なくとも一つが保護基によって保護された、2’−デオキシイノシン誘導体を準備することと;
2’−デオキシイノシン誘導体の6員環のO−C−N官能基(O=C−NH又はHO−C=N)を拡大して、次式20a又は20bを有する中間体を得ることと;
【化10】
化合物20a及び20bの8−ケト官能基を脱保護及び還元して、ペントスタチンを得ることと;
を含んでなり、ここでのR7、R7’、R7’’、及びR7’’’は、それぞれ独立にH又は保護基である方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、R7及びR7’は、それぞれ独立に、ベンジルエーテル、シリルエーテル、及びエステルからなる群から選択される保護基である方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、前記ベンジルエーテル保護基が、p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、ニトロベンジル、及びp−シアノベンジルからなる群から選択される方法。
【請求項30】
請求項28に記載の方法であって、前記シリルエーテル保護基が、トリアルキルシリル及びアルコキシジアルキルシリルからなる群から選択される方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、前記トリアルキルシリル保護基が、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、ジメチルイソプロピルシリル、ジエチルイソプロピルシリル、t−ブチルジメチルシリル、トリベンジルシリル、トリフェニルシリル、ジ−t−ブチルメチルシリル、及びトリス(トリメチルシリル)シリルからなる群から選択される方法。
【請求項32】
請求項30に記載の方法であって、前記アルコキシジアルキルシリル保護基が、t−ブチルメトキシフェニルシリル及びt−ブトキシジフェニルシリルからなる群から選択される方法。
【請求項33】
請求項28に記載の方法であって、前記エステル保護基が、アセテート、ハロゲン化アセテート、アルコキシアセテート、及びベンゾエートからなる群から選択される方法。
【請求項34】
請求項27に記載の方法であって、R7’’が、ベンジルエーテル及びシリルエーテルから選択される保護基である方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、前記ベンジルエーテル保護基が、p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、ニトロベンジル、及びp−シアノベンジルからなる群から選択される方法。
【請求項36】
請求項34に記載の方法であって、前記シリルエーテル保護基が、トリアルキルシリル及びアルコキシジアルキルシリルからなる群から選択される方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法であって、前記トリアルキルシリル保護基が、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、ジメチルイソプロピルシリル、ジエチルイソプロピルシリル、t−ブチルジメチルシリル、トリベンジルシリル、トリフェニルシリル、ジ−t−ブチルメチルシリル、及びトリス(トリメチルシリル)シリルからなる群から選択される方法。
【請求項38】
請求項36に記載の方法であって、前記アルコキシジアルキルシリル保護基が、t−ブチルメトキシフェニルシリル及びt−ブトキシジフェニルシリルからなる群から選択される方法。
【請求項39】
請求項27に記載の方法であって、前記R7’’’がカルバメート保護基である方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法であって、前記カルバメート保護基が、メチルカルバメート、エチルカルバメート、t−ブチルカルバメート、ベンジルカルバメート、9−フルオレニルメチルカルバメート、2,2,2−トリクロロエチルカルバメート、1−メチル−1− (4−ビフェニル)エチルカルバメート、及び1−(3,5−ジ−t−ブチル)−1−メチルエチルカルバメートからなる群から選択される方法。
【請求項41】
請求項27に記載の方法であって、前記2’−デオキシイノシン誘導体の6員環のO−C−N官能基(O=C−NH又はHO−C=N)を拡大することが、該2’−デオキシイノシン誘導体を、ルイス酸触媒の存在下でジアゾメタン又はトリメチルシリルジアゾメタンと反応させることを含む方法。
【請求項42】
請求項41に記載の方法であって、前記ルイス酸触媒が、トリメチルシリルトリフレート(TMSOTf)、BX3、AlX3、FeX3、GaX3、SbX5、SnX4、AsX5、ZnX2、及びHgX2からなる群から選択され、ここでのXはハロゲンである方法。
【請求項43】
請求項41に記載の方法であって、前記ルイス酸触媒が、BF3−Et2O、ZnCl2又はHgBr2である方法。
【請求項44】
請求項41に記載の方法であって、前記2’−デオキシイノシン誘導体をジアゾメタン又はトリメチルシリルジアゾメタンと反応させることが、2’−デオキシイノシン誘導体を、エーテル中のジアゾメタン又はトリメチルシリルジアゾメタンの無水溶液と反応させることを含む方法。
【請求項45】
請求項27に記載の方法であって、R7、R7’、R7’’、及びR7’’’が、それぞれ独立にシリルエーテル保護基である方法。
【請求項46】
請求項27に記載の方法であって、前記化合物20a又は20bの8−ケト官能基を脱保護及び還元することには、
化合物20a又は20bを脱保護して、次式を有するペントスタチン前駆体を得ることと;
【化11】
前記ペントスタチン前駆体の8−ケト官能基を還元して、ペントスタチンを得ることと;
が含まれる方法。
【請求項47】
コホルマイシン(coformycin)を製造する方法であって:
ヒポキサンチン酸素、ヒポキサンチンアミド窒素、2’−ヒドロキシル酸素、3’−ヒドロキシル酸素、及び5’−ヒドロキシル酸素のうちの少なくとも一つが、保護基によって保護されたイノシン誘導体を準備することと;
前記シイノシン誘導体の6員環のO−C−N官能基(O=C−NH又はHO−C=N)を拡大して、次式21a又は21bを有する中間体を得ることと;
【化12】
化合物21a及び21bの8−ケト官能基を脱保護及び還元して、コホルマイシンを得ることと;
を含んでなり、ここでのR8、R8’、R8’’、R’’’及びR8’’’’はそれぞれ独立にH又は保護基である方法。
【請求項48】
請求項47に記載の方法であって、R8、R8’及びR8’’’は、それぞれ独立に、ベンジルエーテル、シリルエーテル、及びエステルからなる群から選択される保護基である方法。
【請求項49】
請求項48に記載の方法であって、前記ベンジルエーテル保護基が、p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、ニトロベンジル、及びp−シアノベンジルからなる群から選択される方法。
【請求項50】
請求項49に記載の方法であって、前記シリルエーテル保護基が、トリアルキルシリル及びアルコキシジアルキルシリルからなる群から選択される方法。
【請求項51】
請求項50に記載の方法であって、前記トリアルキルシリル保護基が、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、ジメチルイソプロピルシリル、ジエチルイソプロピルシリル、t−ブチルジメチルシリル、トリベンジルシリル、トリフェニルシリル、ジ−t−ブチルメチルシリル、及びトリス(トリメチルシリル)シリルからなる群から選択される方法。
【請求項52】
請求項50に記載の方法であって、前記アルコキシジアルキルシリル保護基が、t−ブチルメトキシフェニルシリル及びt−ブトキシジフェニルシリルからなる群から選択される方法。
【請求項53】
請求項48に記載の方法であって、前記エステル保護基が、アセテート、ハロゲン化アセテート、アルコキシアセテート、及びベンゾエートからなる群から選択される方法。
【請求項54】
請求項47に記載の方法であって、R8’’は、ベンジルエーテル及びシリルエーテルから選択される保護基である方法。
【請求項55】
請求項54に記載の方法であって、前記ベンジルエーテル保護基が、p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、ニトロベンジル、及びp−シアノベンジルからなる群から選択される方法。
【請求項56】
請求項54に記載の方法であって、前記シリルエーテル保護基が、トリアルキルシリル及びアルコキシジアルキルシリルからなる群から選択される方法。
【請求項57】
請求項56に記載の方法であって、前記トリアルキルシリル保護基が、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、ジメチルイソプロピルシリル、ジエチルイソプロピルシリル、t−ブチルジメチルシリル、トリベンジルシリル、トリフェニルシリル、ジ−t−ブチルメチルシリル、及びトリス(トリメチルシリル)シリルからなる群から選択される方法。
【請求項58】
請求項56に記載の方法であって、前記アルコキシジアルキルシリル保護基が、t−ブチルメトキシフェニルシリル及びt−ブトキシジフェニルシリルからなる群から選択される方法。
【請求項59】
請求項47に記載の方法であって、前記R8’’’’がカルバメート保護基である方法。
【請求項60】
請求項59に記載の方法であって、前記カルバメート保護基が、メチルカルバメート、エチルカルバメート、t−ブチルカルバメート、ベンジルカルバメート、9−フルオレニルメチルカルバメート、2,2,2−トリクロロエチルカルバメート、1−メチル−1−(4−ビフェニル)エチルカルバメート、及び1−(3,5−ジ−t−ブチル)−1−メチルエチルカルバメートからなる群から選択される方法。
【請求項61】
請求項47に記載の方法であって、前記イノシン誘導体の6員環を拡大することが、前記イノシン誘導体を、ルイス酸触媒の存在下でジアゾメタン又はトリメチルシリルジアゾメタンと反応させることを含む方法。
【請求項62】
請求項61に記載の方法であって、前記ルイス酸触媒が、トリメチルシリルトリフレート(TMSOTf)、BX3、AlX3、FeX3、GaX3、SbX5、SnX4、AsX5、ZnX2、及びHgX2からなる群から選択され、ここでのXはハロゲンである方法。
【請求項63】
請求項61に記載の方法であって、前記ルイス酸触媒が、BF3−Et2O、ZnCl2又はHgBr2である方法。
【請求項64】
請求項61に記載の方法であって、前記シイノシン誘導体をジアゾメタン又はトリメチルシリルジアゾメタンと反応させることが、前記ヒポキサンチン誘導体を、ジアゾメタン又はトリメチルシリルジアゾメタンのエーテル中の無水溶液と反応させることを含む方法。
【請求項1】
ペントスタチンを製造する方法であって:
イミダゾール二級アミン及びO−C−N官能基(O=C−NH又はHO−C=N)の少なくとも一方が、保護基によって保護されているヒポキサンチン誘導体を準備することと;
ヒポキサンチン誘導体の6員環を拡大して、次式を有する保護されたジアゼピノン前駆体を形成することと;
【化1】
該保護されたジアゼピノン前駆体を脱保護して、次式を有するジアゼピノン前駆体8a を得ることと;
【化2】
該ジアゼピノン前駆体8aのN−2を、2−デオキシ−D−リボース又はその誘導体のC−1と縮合させて、次式9aを有する中間体を得ることと;
【化3】
該化合物9aの8−ケト官能基を還元してペントスタチンを得ることと;
を含んでなり、
前記R1及びR1’はそれぞれ独立にH又は保護基であり、R3及びR3’はそれぞれ独立にH又は保護基である方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、R3及びR3’が、それぞれ独立に、カルバメート保護基、アミド保護基、アリールアミン保護基、又はシリルアミン保護基である方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記カルバメート保護基が、メチル、エチル、t−ブチル、ベンジル、9−フルオレニルメチル、2,2,2−トリクロロエチル、l−メチル−l−(4−ビフェニル)エチル、及び1−(3,5−ジ−t−ブチル)−1−メチルエチルからなる群から選択される方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、前記アミド保護基が、アセタミド、トリフルオロアセタミド、及びベンズアミドからなる群から選択される方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法であって、前記アリールアミン保護基が、ベンジルアミン、4−メトキシベンジルアミン、及び2−ヒドロキシベンジルアミンからなる群から選択される方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記R1及びR1’が、それぞれ独立に、エーテル、エステル、カルボネート、スルホネート、環状アセタール及びケタール、キラルケトン、環状オルトエステル、シリル誘導体、環状カルボネート、及び環状ボレートからなる群から選択される保護基である方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、前記R1及びR1’が、それぞれ独立に、p−トルオイルの保護基である方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、前記エーテル保護基が、メトキシメチル、ベンジルオキシメチル、アリル、プロパルギル、p−クロロフェニル、p−メトキシフェニル、p−ニトロフェニル、ベンジル、p−メトキシベンジル、ジメトキシベンジル、ニトロベンジル、ハロゲン化ベンジル、シアノベンジル、トリメチルシリル、トリメチルシリル、トリイソプロピルシリル、トリベンジルシリル、及びアルコキシシリルからなる群から選択される方法。
【請求項9】
請求項6に記載の方法であって、前記エステル保護基が、アセテート及びベンゾエートからなる群から選択される方法。
【請求項10】
請求項6に記載の方法であって、前記カルボネート保護基が、メトキシメチル、9−フルオレニルメチル、2,2,2−トリクロロエチル、ビニル、アリル、ニトロフェニル、及びベンジルからなる群から選択される方法。
【請求項11】
請求項6に記載の方法であって、前記スルホネート 保護基が、アリルスルホネート、メシレート、ベンジルスルホネート、及びトシレートからなる群から選択される方法。
【請求項12】
請求項6に記載の方法であって、前記環状アセタール若しくはケタール保護基が、メチレン、エチリデン、アクロレイン、イソプロピリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、ベンジリデン、メシチレン、1−ナフトアルデヒドアセタール、ベンゾフェノンケタール、及びオキシリルエーテルからなる群から選択される方法。
【請求項13】
請求項6に記載の方法であって、前記キラルケトン保護基が、樟脳及びメントンからなる群から選択される方法。
【請求項14】
請求項6に記載の方法であって、前記環状オルトエステル保護基が、メトキシメチレン、エトキシメチレン、1−メトキシエチリデン、メチリデン、フタリド、エチリデン及び ベンジリデン誘導体、ブタン−2,3−ビスアセタール、シクロヘキサン−1,2−ジアセタール、及びジスピロケタールからなる群から選択される方法。
【請求項15】
請求項6に記載の方法であって、前記シリル誘導体保護基が、ジ−t−ブチルシリレン 及びジアルキルシリレン基からなる群から選択される方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、前記ヒポキサンチンの6員環を拡大することには、前記ヒポキサンチン誘導体とジアゾメタン又はトリメチルシリルジアゾメタンとを、ルイス酸触媒の存在下で反応させることが含まれる方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記ルイス酸触媒は、トリメチルシリルトリフレート(TMSOTf)、BX3、AlX3、FeX3、GaX3、SbX5,SnX4、AsX5、ZnX2、及びHgX2からなる群から選択され、ここでのXはハロゲンである方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、前記ルイス酸触媒が、BF3−Et2O、ZnCl2又はHgBr2である方法。
【請求項19】
請求項16に記載の方法であって、前記ヒポキサンチン誘導体とジアゾメタン又はトリメチルシリルジアゾメタンとを反応させることには、前記ヒポキサンチン誘導体を、ジアゾメタン若しくはトリメチルシリルジアゾメタンのエーテル中の無水溶液と反応させることが含まれる方法。
【請求項20】
次式を有するペントスタチン又はヘテロ環化合物の前駆体である化合物:
【化4】
ここでのR3及びR3’は、それぞれ独立にH又は保護基であり、且つR3及びR3’の少なくとも一方は保護基である。
【請求項21】
請求項20に記載の化合物であって、R3及びR3’が、それぞれ独立に、カルバメート保護基、アミド保護基、アリールアミン保護基、又はシリルアミン保護基.である化合物。
【請求項22】
請求項21に記載の化合物であって、前記カルバメート保護基が、メチル、エチル、t−ブチル、ベンジル、9−フルオレニルメチル、2,2,2トリクロロエチル、1−メチル−1−(4−ビフェニル)エチル、及び1−(3,5−ジ−t−ブチル)−1−メチルエチルからなる群から選択される化合物。
【請求項23】
請求項21に記載の化合物であって、前記アミド 保護基が、アセタミド、トリフルオロアセタミド、及びベンズアミドからなる群から選択される化合物。
【請求項24】
請求項21に記載の化合物であって、前記アリールアミン保護基が、ベンジルアミン、4−メトキシベンジルアミン、及び2−ヒドロキシベンジルアミンからなる群から選択される方法。
【請求項25】
ペントスタチンのジアゼピノン前駆体を製造する方法であって:
保護基を使用して、1以上の位置でヒポキサンチンを保護することと;
該保護されたヒポキサンチンを適切な溶媒中で適切な条件下に反応させて、次式を有する保護されたジアゼピノン前駆体を得ることと;
【化5】
ここでのR3及びR3’は、それぞれ独立にH又は保護基である
前記保護されたジアゼピノン前駆体を沈殿させることと;
前記保護されたジアゼピノン前駆体を脱保護して、次式を有するジアゼピノン前駆体8aを得ることと;
【化6】
を含んでなる方法。
【請求項26】
ペントスタチンを製造する方法であって:
保護基を使用して、1以上の位置でヒポキサンチンを保護することと;
該保護されたヒポキサンチンを適切な溶媒中で適切な条件下に反応させて、次式を有する保護されたジアゼピノン前駆体を得ることと;
【化7】
前記保護されたジアゼピノン前駆体を脱保護して、次式を有するジアゼピノン前駆体8aを得ることと;
【化8】
該ジアゼピノン前駆体8aのN−2を、2−デオキシ−D−リボース又はその誘導体 のC−1位と縮合させて、次式を有する中間体9aを得ることと;
【化9】
該化合物9aの8−ケト官能基を還元して、ペントスタチンを得ることと;
を含んでなり、
前記R1及びR1’は、それぞれ独立にH又は保護基であり、また前記R3及びR3’は、それぞれ独立にH又は保護基である方法。
【請求項27】
ペントスタチンを製造する方法であって:
ヒポキサンチン酸素、ヒポキサンチンアミド窒素、3’−ヒドロキシル酸素、及び5’−ヒドロキシル酸素のうちの少なくとも一つが保護基によって保護された、2’−デオキシイノシン誘導体を準備することと;
2’−デオキシイノシン誘導体の6員環のO−C−N官能基(O=C−NH又はHO−C=N)を拡大して、次式20a又は20bを有する中間体を得ることと;
【化10】
化合物20a及び20bの8−ケト官能基を脱保護及び還元して、ペントスタチンを得ることと;
を含んでなり、ここでのR7、R7’、R7’’、及びR7’’’は、それぞれ独立にH又は保護基である方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、R7及びR7’は、それぞれ独立に、ベンジルエーテル、シリルエーテル、及びエステルからなる群から選択される保護基である方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、前記ベンジルエーテル保護基が、p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、ニトロベンジル、及びp−シアノベンジルからなる群から選択される方法。
【請求項30】
請求項28に記載の方法であって、前記シリルエーテル保護基が、トリアルキルシリル及びアルコキシジアルキルシリルからなる群から選択される方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、前記トリアルキルシリル保護基が、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、ジメチルイソプロピルシリル、ジエチルイソプロピルシリル、t−ブチルジメチルシリル、トリベンジルシリル、トリフェニルシリル、ジ−t−ブチルメチルシリル、及びトリス(トリメチルシリル)シリルからなる群から選択される方法。
【請求項32】
請求項30に記載の方法であって、前記アルコキシジアルキルシリル保護基が、t−ブチルメトキシフェニルシリル及びt−ブトキシジフェニルシリルからなる群から選択される方法。
【請求項33】
請求項28に記載の方法であって、前記エステル保護基が、アセテート、ハロゲン化アセテート、アルコキシアセテート、及びベンゾエートからなる群から選択される方法。
【請求項34】
請求項27に記載の方法であって、R7’’が、ベンジルエーテル及びシリルエーテルから選択される保護基である方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、前記ベンジルエーテル保護基が、p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、ニトロベンジル、及びp−シアノベンジルからなる群から選択される方法。
【請求項36】
請求項34に記載の方法であって、前記シリルエーテル保護基が、トリアルキルシリル及びアルコキシジアルキルシリルからなる群から選択される方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法であって、前記トリアルキルシリル保護基が、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、ジメチルイソプロピルシリル、ジエチルイソプロピルシリル、t−ブチルジメチルシリル、トリベンジルシリル、トリフェニルシリル、ジ−t−ブチルメチルシリル、及びトリス(トリメチルシリル)シリルからなる群から選択される方法。
【請求項38】
請求項36に記載の方法であって、前記アルコキシジアルキルシリル保護基が、t−ブチルメトキシフェニルシリル及びt−ブトキシジフェニルシリルからなる群から選択される方法。
【請求項39】
請求項27に記載の方法であって、前記R7’’’がカルバメート保護基である方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法であって、前記カルバメート保護基が、メチルカルバメート、エチルカルバメート、t−ブチルカルバメート、ベンジルカルバメート、9−フルオレニルメチルカルバメート、2,2,2−トリクロロエチルカルバメート、1−メチル−1− (4−ビフェニル)エチルカルバメート、及び1−(3,5−ジ−t−ブチル)−1−メチルエチルカルバメートからなる群から選択される方法。
【請求項41】
請求項27に記載の方法であって、前記2’−デオキシイノシン誘導体の6員環のO−C−N官能基(O=C−NH又はHO−C=N)を拡大することが、該2’−デオキシイノシン誘導体を、ルイス酸触媒の存在下でジアゾメタン又はトリメチルシリルジアゾメタンと反応させることを含む方法。
【請求項42】
請求項41に記載の方法であって、前記ルイス酸触媒が、トリメチルシリルトリフレート(TMSOTf)、BX3、AlX3、FeX3、GaX3、SbX5、SnX4、AsX5、ZnX2、及びHgX2からなる群から選択され、ここでのXはハロゲンである方法。
【請求項43】
請求項41に記載の方法であって、前記ルイス酸触媒が、BF3−Et2O、ZnCl2又はHgBr2である方法。
【請求項44】
請求項41に記載の方法であって、前記2’−デオキシイノシン誘導体をジアゾメタン又はトリメチルシリルジアゾメタンと反応させることが、2’−デオキシイノシン誘導体を、エーテル中のジアゾメタン又はトリメチルシリルジアゾメタンの無水溶液と反応させることを含む方法。
【請求項45】
請求項27に記載の方法であって、R7、R7’、R7’’、及びR7’’’が、それぞれ独立にシリルエーテル保護基である方法。
【請求項46】
請求項27に記載の方法であって、前記化合物20a又は20bの8−ケト官能基を脱保護及び還元することには、
化合物20a又は20bを脱保護して、次式を有するペントスタチン前駆体を得ることと;
【化11】
前記ペントスタチン前駆体の8−ケト官能基を還元して、ペントスタチンを得ることと;
が含まれる方法。
【請求項47】
コホルマイシン(coformycin)を製造する方法であって:
ヒポキサンチン酸素、ヒポキサンチンアミド窒素、2’−ヒドロキシル酸素、3’−ヒドロキシル酸素、及び5’−ヒドロキシル酸素のうちの少なくとも一つが、保護基によって保護されたイノシン誘導体を準備することと;
前記シイノシン誘導体の6員環のO−C−N官能基(O=C−NH又はHO−C=N)を拡大して、次式21a又は21bを有する中間体を得ることと;
【化12】
化合物21a及び21bの8−ケト官能基を脱保護及び還元して、コホルマイシンを得ることと;
を含んでなり、ここでのR8、R8’、R8’’、R’’’及びR8’’’’はそれぞれ独立にH又は保護基である方法。
【請求項48】
請求項47に記載の方法であって、R8、R8’及びR8’’’は、それぞれ独立に、ベンジルエーテル、シリルエーテル、及びエステルからなる群から選択される保護基である方法。
【請求項49】
請求項48に記載の方法であって、前記ベンジルエーテル保護基が、p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、ニトロベンジル、及びp−シアノベンジルからなる群から選択される方法。
【請求項50】
請求項49に記載の方法であって、前記シリルエーテル保護基が、トリアルキルシリル及びアルコキシジアルキルシリルからなる群から選択される方法。
【請求項51】
請求項50に記載の方法であって、前記トリアルキルシリル保護基が、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、ジメチルイソプロピルシリル、ジエチルイソプロピルシリル、t−ブチルジメチルシリル、トリベンジルシリル、トリフェニルシリル、ジ−t−ブチルメチルシリル、及びトリス(トリメチルシリル)シリルからなる群から選択される方法。
【請求項52】
請求項50に記載の方法であって、前記アルコキシジアルキルシリル保護基が、t−ブチルメトキシフェニルシリル及びt−ブトキシジフェニルシリルからなる群から選択される方法。
【請求項53】
請求項48に記載の方法であって、前記エステル保護基が、アセテート、ハロゲン化アセテート、アルコキシアセテート、及びベンゾエートからなる群から選択される方法。
【請求項54】
請求項47に記載の方法であって、R8’’は、ベンジルエーテル及びシリルエーテルから選択される保護基である方法。
【請求項55】
請求項54に記載の方法であって、前記ベンジルエーテル保護基が、p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、ニトロベンジル、及びp−シアノベンジルからなる群から選択される方法。
【請求項56】
請求項54に記載の方法であって、前記シリルエーテル保護基が、トリアルキルシリル及びアルコキシジアルキルシリルからなる群から選択される方法。
【請求項57】
請求項56に記載の方法であって、前記トリアルキルシリル保護基が、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、ジメチルイソプロピルシリル、ジエチルイソプロピルシリル、t−ブチルジメチルシリル、トリベンジルシリル、トリフェニルシリル、ジ−t−ブチルメチルシリル、及びトリス(トリメチルシリル)シリルからなる群から選択される方法。
【請求項58】
請求項56に記載の方法であって、前記アルコキシジアルキルシリル保護基が、t−ブチルメトキシフェニルシリル及びt−ブトキシジフェニルシリルからなる群から選択される方法。
【請求項59】
請求項47に記載の方法であって、前記R8’’’’がカルバメート保護基である方法。
【請求項60】
請求項59に記載の方法であって、前記カルバメート保護基が、メチルカルバメート、エチルカルバメート、t−ブチルカルバメート、ベンジルカルバメート、9−フルオレニルメチルカルバメート、2,2,2−トリクロロエチルカルバメート、1−メチル−1−(4−ビフェニル)エチルカルバメート、及び1−(3,5−ジ−t−ブチル)−1−メチルエチルカルバメートからなる群から選択される方法。
【請求項61】
請求項47に記載の方法であって、前記イノシン誘導体の6員環を拡大することが、前記イノシン誘導体を、ルイス酸触媒の存在下でジアゾメタン又はトリメチルシリルジアゾメタンと反応させることを含む方法。
【請求項62】
請求項61に記載の方法であって、前記ルイス酸触媒が、トリメチルシリルトリフレート(TMSOTf)、BX3、AlX3、FeX3、GaX3、SbX5、SnX4、AsX5、ZnX2、及びHgX2からなる群から選択され、ここでのXはハロゲンである方法。
【請求項63】
請求項61に記載の方法であって、前記ルイス酸触媒が、BF3−Et2O、ZnCl2又はHgBr2である方法。
【請求項64】
請求項61に記載の方法であって、前記シイノシン誘導体をジアゾメタン又はトリメチルシリルジアゾメタンと反応させることが、前記ヒポキサンチン誘導体を、ジアゾメタン又はトリメチルシリルジアゾメタンのエーテル中の無水溶液と反応させることを含む方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図6I】
【図6J】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図6I】
【図6J】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2007−505909(P2007−505909A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526997(P2006−526997)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/030203
【国際公開番号】WO2005/027838
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(501170688)スーパージェン インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/030203
【国際公開番号】WO2005/027838
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(501170688)スーパージェン インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】
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