説明

ペースト、導電性配線の製造方法およびディスプレイパネルの製造方法

【課題】ペースト中の金属粉末量を比較的少なくしても、基板と導電性配線との密着力が高く、かつ抵抗値が低く、膨らみ等が発生せず所望する適切な形状の導電性配線を形成することができるペーストを提供する。
【解決手段】有機バインダー成分を含む有機成分、ならびに金属粉末および軟化点が620℃〜720℃の範囲内である高軟化点ガラス粉末を含む無機成分からなり、前記有機成分の含有量が10〜35質量%の範囲内、前記無機成分の含有量が65〜90質量%の範囲内であり、かつ、前記金属粉末の含有量が前記無機成分に対し80〜95質量%、前記高軟化点ガラス粉末の含有量が前記無機成分に対し5〜20質量%の範囲内であることを特徴とするペーストとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト、特にシリコンやガラス、セラミックスやコンポジットの基板上にパターン形成して導電性配線を形成するために用いるペースト、それを用いた導電性配線の製造方法およびディスプレイパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セラミックス、コンポジット材料等の基板上に塗布、描画、印刷等して導電性配線のパターンを形成する目的で、金属粉末を含有するペーストがディスプレイ、太陽電池などの分野において採用されている。さらなる高性能化を図るとともに、環境負荷低減、低コスト化が注目される中、導電性配線材料の微細化、低価格化が必至である。
【0003】
例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)は液晶パネルに比べて高速の表示が可能であり、かつ大型化が容易であることから、OA機器および広報表示装置等の分野に浸透している。また、高品位テレビジョンの分野等で活用されている。
【0004】
PDPは、前面板と背面板の2枚のガラス基板の間に作られた僅かな隙間を放電空間とし、アノード電極およびカソード電極の間にプラズマ放電を生じさせ、放電空間内に封入されているガスから発生した紫外線を、放電空間内に設けた蛍光体にあてて発光させることにより表示を行うものである。この場合、電極は前面板と背面板にそれぞれストライプ状に配置され、複数本の電極が平行にあり、前面板の電極と背面板の電極は僅かの間隙を介して対向し、かつ互いに直交するように形成される。PDPの中で、蛍光体によるカラー表示に適した3電極構造の面放電型PDPは、互いに平行に隣接した表示電極からなる複数の電極対と、各電極対と略直交する複数のアドレス電極とを有する。また、背面板には光のクロストークを防ぎ、放電空間を確保するための隔壁が、電極間のスペースに形成される。さらに、その放電空間内に蛍光体が形成されている。
【0005】
前記電極のうち、背面板に形成されるアドレス電極は、広い範囲に、厚みや線幅を均一に形成する必要がある。さらに、PDPの高精細化に伴い、アドレス電極のファインピッチ化が進んでいる。なお、PDPは、空気中で500℃以上の温度での焼成工程を経るために、焼成工程を経てもライン形状が屈曲、膨らみなどの変形を起こさない材料を用いる必要があった。これらの制約から、電極材料として、銀、金といった貴金属を用いた感光性ペーストを使用することが提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1で用いられている電極ペーストは、貴金属を多く含有していることから、コストが高いという問題があった。一方、アルミニウムや銅などの非金属性の導電性配線の場合、配線形成において、それらを単体材料として粉末体含有ペーストを使うような場合、空気中での焼成工程において厚い酸化皮膜が形成されるために粉末同士の融着が阻害されてしまい、低抵抗を達成できない問題がある。よって銅などのパターン形成には酸化皮膜を形成しないようにするための被覆層を施すといったような複雑な工程を要するのが一般的である。
【0006】
一方、金や銀などの貴金属は、金属単体で用いても酸化することなく、展性に富み保存安定性に優れた貴金属は、粉体で用いてペーストやインクとして使用され、導電性配線を形成するのにより安定で取扱いにおいて優れた特性を持っている。一般にPDPの電極としては、これらのうち比較的安価な銀を用いた電極が使用されている。銀を用い、より安価な電極を得るためには、銀の含有量を低減する策をとることが考えられるが、銀含有量のみを低減していくと、以下のような問題があった。
【0007】
一般的にPDPなどで使用される電極などの導電性配線を形成するためには、ペーストやインクとして流動性をもつものが利用されるが、そのために銀などの金属粉末と有機バインダー成分を含む有機成分を含むペーストが多く用いられている。このようなペーストは特定のパターン形状に印刷・塗布したり、一様に塗布した後にパターン加工を行ったりすることによってパターン化された塗膜を形成し、これを焼成して有機バインダー成分などの有機成分を除去し、金属同士を焼結し導電性を発現して使用可能となる。そのとき、金属同士の焼結と基板との密着性を上げるためにガラス粉末等の比較的低温度で軟化しやすい材料を添加することが多い。また、一般的にガラスの軟化が有機バインダー成分のガス化を阻害することのないようにガラス粉末の添加量は少量で使用されている(例えば、特許文献2)。
【0008】
このようななか、上記導電性配線中の高価な金属粉末の含有量を低減するには、ペースト中の有機バインダー成分の量を増量することが考えられるが金属成分の低減により金属同士の焼結が進まず、抵抗値が高くなる問題がある。一方、金属粉末の量を少なくする代わりにガラス粉末の量を増量した場合、基板と導電性配線との密着力は大きくなるが、有機バインダー成分が完全に除去される前に増量したガラス粉末によって、有機バインダー成分の蒸発が阻害されてしまい、焼成後の導電性配線に膨らみが発生する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−273338号公報
【特許文献2】特許3567606号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる問題を解決、ペースト中の金属粉末量を比較的少なくしても、基板と導電性配線との密着力が高く、かつ抵抗値が低く、膨らみ等が発生せず所望する適切な形状の導電性配線を形成することのできるペーストを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明のペーストは以下の構成をとる。すなわち、有機バインダー成分を含む有機成分、ならびに金属粉末および軟化点が620℃〜720℃の範囲内である高軟化点ガラス粉末を含む無機成分からなり、前記有機成分の含有量が10〜35質量%の範囲内、前記無機成分の含有量が65〜90質量%の範囲内であり、かつ、前記金属粉末の含有量が前記無機成分に対し80〜95質量%、前記高軟化点ガラス粉末の含有量が前記無機成分に対し5〜20質量%の範囲内であることを特徴とするペーストである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のペーストを用いることにより、ペースト中の金属粉末量を比較的少なくしても、基板と導電性配線との密着力が高く、かつ抵抗値が低く、膨らみ等が発生せず所望する適切な形状の導電性配線を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のペーストに用いられる有機成分は、有機バインダー成分を含む。本発明のペーストに含まれる有機バインダー成分は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのうち少なくとも1種類を含有する。
【0014】
本発明のペーストは、さらにペースト中には必要に応じて、有機成分として重合開始剤、紫外線吸収剤、増感剤、増感助剤、重合禁止剤、可塑剤、増粘剤、有機溶媒、酸化防止剤、分散剤を用いることができる。従来の感光性導電ペーストにおいては、これらの有機成分は、抵抗値や導通性を考慮して、できる限り少ない含有量でペーストを作製することが多いが、本発明のペーストでは、有機成分の含有量は10〜35質量%の範囲内である必要がある。有機成分の含有量が10質量%未満の場合、金属粉末の量が多く高価なペーストとなってしまうか、ガラス粉末の量が多くなるため焼成後の導電性配線の抵抗値が大きくなったり、膨らみが発生したりするといった問題が生じる。一方、有機成分の含有量が35質量%よりも大きい場合、焼成後の導電性配線の抵抗値が大きくなったり、基板と導電性配線との密着力が低くなったりすると言った問題を生じる。
【0015】
以下、本発明の有機成分の有機バインダー成分について説明する。
【0016】
本発明のペーストに含まれる有機バインダー成分は、感光性有機成分を含むことが好ましい。感光性有機成分を含み、さらに有機成分として必要に応じて重合開始剤、紫外線吸収剤、増感剤、増感助剤、重合禁止剤等を含むことによって、塗布、露光、現像することによりパターン化した塗膜を得る感光性ペーストとして用いることができる。
【0017】
感光性有機成分としては、感光性ポリマー、感光性オリゴマー、感光性モノマー類から用いるのが好ましい。感光性モノマーは、炭素−炭素不飽和結合を含有する化合物で、その具体的な例としては、単官能および多官能の(メタ)アクリレート類、ビニル系化合物類、アリル系化合物類などを用いることができ、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソ−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA−プロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレート等のアクリレート、また、これらの芳香環の水素原子のうち、1〜5個を塩素原子または臭素原子に置換したモノマー、もしくは、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、塩素化スチレン、臭素化スチレン、α−メチルスチレン、塩素化α−メチルスチレン、臭素化α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、カルボキシメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、および、上記化合物の分子内のアクリレートを一部もしくはすべてをメタクリレートに変えたもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドンなどがあげられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。
【0018】
これら以外に、不飽和カルボン酸等の不飽和酸を加えることによって、感光後の現像性を向上させることができる。不飽和カルボン酸の具体的な例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、またはこれらの酸無水物などがあげられる。
【0019】
これら感光性モノマーの含有率は、ペースト中の0.5〜20質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。含有量が0.5質量%未満、または20質量%を超えて使用すると、パターンの形成性の悪化、硬化後の硬度不足が発生するため好ましくない。
【0020】
また、感光性オリゴマー、感光性ポリマーとしては、前記炭素−炭素不飽和結合を含有する化合物のうちの少なくとも1種類を重合して得られるオリゴマーやポリマーを用いることができる。
【0021】
さらに、感光性オリゴマー、感光性ポリマーに不飽和カルボン酸などの不飽和酸を共重合することによって、感光後の現像性を向上することができるため好ましい。不飽和カルボン酸の具体的な例として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸またはこれらの酸無水物などがあげられる。こうして得られた側鎖にカルボキシル基等の酸性基を有するオリゴマーまたはポリマーの酸価(AV)は30〜150mgKOH/gであることが好ましく、70〜120mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が30mgKOH/g未満であると、未露光部の現像液に対する溶解性が低下するため現像液濃度を濃くすると露光部まで剥がれが発生し、高精細なパターンが得られにくい傾向がある。また、酸価が150mgKOH/gを超えると現像許容幅が狭くなる傾向がある。
【0022】
これらの感光性オリゴマー、感光性ポリマーに対して、光反応性基を側鎖または分子末端に付加させることによって、感光性を持つ感光性ポリマーや感光性オリゴマーとして用いることができる。好ましい光反応性基は、エチレン性不飽和基を有するものである。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などがあげられる。
【0023】
このような側鎖をオリゴマーやポリマーに付加させる方法は、ポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させる方法がある。
【0024】
グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル、イソクロトン酸グリシジルエーテルなどがあげられる。
【0025】
イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリロイルイソシアネート、(メタ)アクリロイルエチルイソシアネート等がある。
【0026】
また、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドは、ポリマー中のメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して0.05〜1モル当量付加させることが好ましい。
【0027】
本発明のペースト中の感光性オリゴマーおよび感光性ポリマーの含有量は、パターン形成性、焼成後の収縮率の点から、ペースト中に1〜15質量%であることが好ましい。この範囲外では、パターン形成が不可能もしくは、パターンのゆがみや太りがでるため好ましくない。
【0028】
重合開始剤としては光重合可能な開始剤が選ばれ、具体的な例として、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタノール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4’−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾインおよびエオシン、メチレンブルーなどの光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの還元剤などがあげられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。
【0029】
光重合開始剤は、感光性有機成分に対し、0.05〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%である。光重合開始剤が0.05質量%未満であると、光感度が不良となる傾向があり、光重合開始剤が20質量%を超えると、露光部の残存率が小さくなりすぎる傾向がある。
【0030】
本発明ではまた光重合開始剤と併用して増感剤を使用してもよく、感度を向上させるために添加される。増感剤の具体例としては、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,3−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、ミヒラーケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)−ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)−イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3−カルボニル−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3’−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−トリルジエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、3−フェニル−5−ベンゾイルチオテトラゾール、1−フェニル−5−エトキシカルボニルチオテトラゾールなどがあげられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができるが、増感剤の中には光重合開始剤としても使用できるものがあり、前記光重合開始剤と適宜併用するとより好ましい。増感剤を本発明のペーストに添加する場合、その添加量は、感光性有機成分に対して通常0.05〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜20質量%である。0.05質量%未満では光感度を向上させる効果が発揮されにくい傾向があり、30質量%を超えると露光部の残存率が小さくなりすぎる傾向がある。
【0031】
重合禁止剤は、保存時の熱安定性を向上させるために添加される。重合禁止剤の具体的な例としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンのモノエステル化物、N−ニトロソジフェニルアミン、フェノチアジン、p−t−ブチルカテコール、N−フェニルナフチルアミン、2,6−ジ−t−ブチル−p−メチルフェノール、クロラニール、ピロガロール、p−メトキシフェノールなどがあげられる。また添加することにより、光硬化反応のしきい値があがり、パターン線幅の縮小化、ギャップに対するパターン上部の太りがなくなる。
【0032】
重合禁止剤の添加量は、ペースト中に、0.01〜1質量%であることが好ましい。0.01質量%未満であると添加効果がでにくい傾向があり、1質量%を超えると感度が低下するため、パターン形成するための露光量が多く必要になる傾向がある。
【0033】
可塑剤の具体的な例としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ポリエチレングリコール、グリセリンなどがあげられる。
【0034】
また、必要に応じ酸化防止剤を添加するとよい。酸化防止剤は、保存時におけるアクリル系共重合体の酸化を防ぐために添加される。酸化防止剤の具体的な例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−6−t−ブチルフェニル)ブタン、ビス[3,3−ビス−(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、ジラウリルチオジプロピオナート、トリフェニルホスファイトなどがあげられる。酸化防止剤を添加する場合、その添加量は、ペースト中に、0.01〜1質量%であることが好ましい。
【0035】
本発明のペーストには、溶液の粘度を調整したい場合、有機溶媒を加えることが好ましい。この有機溶媒の含有量は、ペースト中に20〜40質量%であることが好ましい。これ以外の範囲では、ペーストの塗布が上手くできず、均一な膜が得られない。また、このとき使用される有機溶媒としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、γ−ブチロラクトン、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモ安息香酸、クロロ安息香酸、テルピネオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどやこれらのうちの1種以上を含有する有機溶媒混合物が用いられる。次に本発明の無機成分について記載する。
【0036】
本発明のペーストに含まれる無機成分は、金属粉末および軟化点が620℃〜720℃の範囲内である高軟化点ガラス粉末を必須成分として含む。
【0037】
本発明のペーストに含まれる金属粉末は、導電性を有する金属の粉末であればよく、好ましくは、銀、銅、金、パラジウム、タングステンおよび白金のうち少なくとも1種を含有するもので、これらは、単独、合金、混合粉末のいずれの状態であっても用いることができる。
【0038】
金属粉末の粒子径としては、体積基準分布の中心径が0.7〜6μmが好ましい。より好ましくは1.3〜4μmである。粒子径がこの範囲にあることで、緻密な微細パターンの形成が可能となる。金属粉末の比表面積は、0.3〜2.5m2/gのサイズを有していることが電極パターンの精度の点で好ましい。より好ましくは、比表面積0.35〜2.0m2/gである。
【0039】
また、金属粉末のタップ密度は3〜6g/cm2であるのが好ましい。より好ましくは、3.5〜5g/cm2の範囲である。タップ密度がこの範囲にあると有機バインダー成分を極力少なくすることができ、塗膜パターンの形状保持性が良くパターン制度が向上し、焼成して得られる電極の抵抗値が小さくなるので好ましい。
【0040】
本発明におけるガラス粉末としては、金属粉末の溶融温度領域と同等以上の温度で軟化することが好ましく、具体的には軟化点が620℃〜720℃の範囲内である高軟化点ガラス粉末であることが好ましい。さらには軟化点が400℃〜600℃の範囲内である低軟化点ガラス粉末と混合して用いるとより好ましい。
【0041】
軟化点が620℃〜720℃の範囲内で高軟化点ガラス粉末を使用すると、軟化点が上がることによって有機バインダー成分のガス化が促進され膨らみを抑制し、好ましい。軟化点が720℃を超えるようなガラス粉末を単独で使用すると、有機バインダー成分のガス化は比較的容易に進行するが、基板と導電性配線の密着性が低下してしまうという問題を生じる。
【0042】
軟化点が620℃未満のガラス粉末単体で使用する場合、焼成時におけるガラスの軟化と有機バインダー成分のガス化が同時期に始まることによって、軟化しつつあるガラスにガスが包含されながらガラスが流動し、大気中へのガス放出が妨げられ、さらには金属粉末の軟化が重なり、金属とガラスの焼結時に膨らみを生じやすい。結果としてパターンの断線、亀裂を発生し、抵抗値の上昇、導通不良が起こる。また軟化点が400℃より低いガラス粉末と併用する場合は有機バインダー成分のガス化を著しく阻害し、同じく膨らみを生じやすい。
【0043】
ガラス粉末粒子径は、前述の軟化点の範囲内を維持し、かつ平均粒子径が0.5〜1.4μm、90%粒子径が1〜2μmおよびトップサイズが4.5μm以下であることが好ましい。平均粒子径、90%粒子径がそれぞれ0.5μm、1μm未満では、ガラス粉末の粒子サイズが小さくなり過ぎて紫外線が未露光部まで散乱され、電極膜のエッジ部・端部の光硬化が起こり、完全に現像できなくなることがあり、電極膜のパターンの切れ・解像度が低下する傾向がある。平均粒子径、90%粒子径およびトップサイズがそれぞれ1.4μm、2μm、4.5μmを超えると、粗大なガラス粉末と金属粉末との熱膨張係数が異なることにより、特に10μm以下の薄膜では、導電性配線の接着強度が低下するため膜はがれが起こることがあり、また、粗大ガラス粉末が導電性配線中に残留し、接着強度が低下する傾向がある。
【0044】
本発明のペーストにおいては、ガラス粉末の組成としては、Bi、Si、B、Zr、Al、Ca、Ba、Zn、Mgの元素の酸化物で形成することが好ましい。特に高軟化点ガラスとしては、酸化物換算表記でBi23を0〜15質量%含むとよく、1〜5質量%であるとより好ましい。またそのときのSiO2、Al23、ZrO2、ZnO、B23合計量で30〜95量%含むとよく、30〜60質量%含むとより好ましい。またCaO、BaO、MgOを合計量で0〜70質量%含有すると好ましく、合計量が30〜60質量%であるとより好ましく、CaO、BaOの合計で40質量%以上であるとより好ましく使用できる。またさらに、これら組成範囲となるものを80質量%以上含有し、かつPb,Na,K,Liを実質的に含有しないガラス粉末であることがより好ましく用いられる。一方、低軟化点ガラスはBi23を30〜80質量%で含有することが好ましいが、これに限定されるものでなく、高軟化点ガラスと合計することで0.1〜10質量%の範囲で含んで使用するとより好ましい。有機成分と無機成分を使用して成る本発明のペーストについて記載する。
【0045】
本発明におけるペーストは、金属粉末の含有量が比較的少ない場合であっても導電性を高くし、基板と導電性配線の密着性を保持し、さらに導電性配線に膨れが生じないようにするために、金属粉末、高軟化点ガラス粉末の量を上述の範囲内とすることが重要である。すなわち、有機成分が10〜35質量%の範囲内、無機成分が65〜90質量%の範囲内であることが必要であり、有機成分が10質量%より少ない場合、ペーストの粘度、チキソ性、レベリング性等の物性が劣化し、基板へのパターン形成が困難となり、無機成分が65質量%より少なければ導電性が劣化してしまう。
【0046】
また本発明のペーストの無機成分のうち、高軟化点ガラス粉末の含有量は、無機成分に対し5〜20質量%の範囲内である必要があり、好ましくは3〜19.8質量%の範囲内である。高軟化点ガラス粉末が5質量%より少ない場合は基板と導電性配線の密着性が低下してしまうという問題を生じ、また高価なペーストとなってしまい好ましくない。高軟化点ガラス粉末が20質量%より多い場合は焼成後の配線に十分な導電性を得ることができない。
【0047】
また、前述の通り、軟化点が620℃〜720℃の範囲内である高軟化点ガラス粉末と軟化点が400℃〜600℃の範囲内である低軟化点ガラス粉末とを適当に混合することによって、膨らみの抑制および基板密着性を適切に制御することができ、より好ましく扱うことができる。低軟化点ガラス粉末の含有量は、無機成分に対し0.2〜2質量%の範囲内であることが好ましい。この範囲において作製したペーストを使用して形成したパターンは、例えば450〜620℃の温度で10〜60分間焼成を行うことによって、好適な導電性配線を得ることができる。本発明のペーストは、通常、上述の有機成分と無機成分を所定の組成となるように調合した後、3本ローラーや混練機で均質に混合分散し作製する。
【0048】
本発明のペーストの粘度は、有機成分量によって適宜調整される。粘度の範囲は0.2〜200Pa・sであることが好ましい。たとえば、ガラス基板への塗布をスピンコート法で行う場合は、0.2〜5Pa・sがより好ましく、スクリーン印刷法で1回塗布して膜厚10〜20μmを得るには、10〜100Pa・sがより好ましい。
【0049】
また、本発明は、上記したペーストを用いて配線パターンを形成し、焼成することにより導電性配線を製造する導電性配線の製造方法、さらにはこの導電性配線の製造方法により電極を形成するディスプレイパネルの製造方法に関する。
【0050】
次に、本発明のペーストについて、感光性成分を有する感光性ペーストとし、これを用いて導電性配線を形成する方法の例について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0051】
ガラス基板やセラミックスの基板、もしくは、ポリマー製フィルムの上に、感光性ペーストを全面塗布、もしくは部分的に塗布する。塗布方法としては、スクリーン印刷法、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、ブレードコーターなど一般的な方法を用いることができる。塗布厚みは、塗布回数、スクリーンのメッシュ、ペーストの粘度を選ぶことによって調整できる。また、ポリエステルフィルムなどのフィルム上に感光性ペーストを塗布した感光性シートを作製して、ラミネーターなどの装置を用いて基板上に感光性ペーストを転写する方法を用いても良い。
【0052】
感光性ペーストを塗布した後、露光装置を用いて露光を行う。露光は、通常のフォトリソグラフィで行われるように、フォトマスクを用いてマスク露光する方法が一般的である。用いるマスクは、感光性有機成分の種類によって、ネガ型もしくはポジ型のどちらかを選定する。また、フォトマスクを用いずに、赤色や青色のレーザー光などで直接描画する方法を用いても良い。
【0053】
露光装置としては、ステッパー露光機、プロキシミティ露光機などを用いることができる。また、大面積の露光を行う場合は、ガラス基板などの基板上に感光性ペーストを塗布した後に、搬送しながら露光を行うことによって、小さな露光面積の露光機で、大きな面積を露光することができる。使用される活性光源としては、例えば、可視光線、近紫外線、紫外線、電子線、X線、レーザー光などがあげられる。これらの中で紫外線が最も好ましく、その光源として、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ、殺菌灯などが使用できる。これらのなかでも超高圧水銀灯が好適である。露光条件は、塗布厚みによって異なるが、通常、1〜100mW/cm2の出力の超高圧水銀灯を用いて0.1〜10分間露光を行う。
【0054】
露光後、露光部分と非露光部分の現像液に対する溶解度差を利用して、現像を行うが、この場合、浸漬法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法で行える。
【0055】
現像液は、感光性ペースト中の溶解させたい有機成分が溶解可能である溶液を用いる。また、有機溶媒にその溶解力が失われない範囲で水を添加してもよい。感光性ペースト中にカルボキシル基などの酸性基をもつ化合物が存在する場合、アルカリ水溶液で現像できる。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、または、水酸化カルシウムの水溶液などが使用できるが、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去しやすいので好ましい。有機アルカリとしては、一般的なアミン化合物を用いることができる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどがあげられる。アルカリ水溶液の濃度は、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。アルカリ水溶液の濃度が0.01質量%未満であると可溶部が除去されない傾向があり、10質量%を超えるとパターン部を剥離させ、また、非可溶部を腐食させる傾向がある。また、現像時の現像温度は、20〜50℃で行うことが工程管理上好ましい。
【0056】
次に、焼成炉にて焼成を行う。焼成雰囲気や温度は、ペーストや基板の種類によって異なるが、空気、窒素、水素などの雰囲気中で焼成する。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やベルト式の連続型焼成炉を用いることができる。焼成温度は、通常400〜1000℃であるが、ガラス基板上にパターン加工する場合は、一般的には上述のように450〜620℃の温度で10〜60分間保持して焼成を行う。なお焼成温度は用いるガラス粉末によって決まるが、パターン形成後の形が崩れず、かつガラス粉末の形状が残らない適正な温度で焼成するのが好ましい。
【0057】
また、以上の塗布や露光、現像、焼成の各工程中に、乾燥、予備反応の目的で、50〜300℃加熱工程を導入しても良い。
【実施例】
【0058】
次に本発明を実施例により具体的に記載する。
【0059】
実施例1〜16、比較例1〜17
(ペースト作製)
金属粉末として下記の銀粉末を用意し、有機バインダー成分として感光性ポリマー、感光性モノマー、有機成分として重合開始剤、重合禁止剤、有機溶媒、表1に示す各熱特性(ガラス転移温度、軟化温度)を有する高軟化点ガラス粉末、軟化点560℃の低軟化点ガラス粉末を用意した。
【0060】
【表1】

【0061】
その他の材料として、以下のものを用いた。
【0062】
金属粉末:湿式還元法により製造されたもので平均粒径1.70μm、比表面積0.41m2/g、タップ密度5.0g/cm3の銀粉末を用いた。
【0063】
有機バインダー成分として、アクリル酸、メチルメタクリレート、スチレンを重量比で40/30/30の比率で共重合し、グリシジルメタクリレートをアクリル酸1モルに対し0.4モル付加させた感光性ポリマー(重量平均分子量32,000、酸価110)
と感光性モノマー(トリメチロールプロパントリアクリレート)を用いた。
【0064】
また、有機成分として有機溶媒1(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートと有機溶媒2(2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)を重量比で有機溶媒1:有機溶媒2=3:2の割合で混合して用いた。
【0065】
さらに、重合禁止剤(ヒドロキノンモノメチルエーテル)、重合開始剤(4,4−ビス(ジエチルアミノベンゾフェノン))を用いた。
【0066】
前記材料について表2、表3に示す配合量となるように配合し、かき混ぜた後、三本ロールにて混練を行ってペーストを作製した。なお、比較例10、11、12では軟化点が620〜720℃の範囲内である高軟化点ガラス粉末を用いない代わりに、それぞれガラス粉末A、G、Hを、それぞれ高軟化点ガラス粉末の配合量の欄に記載した量で配合した。
【0067】
なお、無機粉末の平均粒子径(D50)および最大粒子径(Dmax)は日機装株式会社製「MT3300」を用いて測定した値である。また、ガラス粉末の軟化点は、株式会社リガク製示差式熱分析計により測定した。
【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
(基板作製)
スクリーン印刷機で実施例1〜16、比較例1〜17のペーストを340×260×1.8mmサイズのガラス基板(PD−200;旭硝子株式会社製)上に全面に塗布した。130℃10分の条件で有機溶媒を乾かし、ピッチ100μm、ライン幅60μmフォトマスクを使って、超高圧水銀灯によるパターン露光を行い、0.1%2−アミノエタノール水溶液でシャワー現像してパターンを得た。基板を大気雰囲気中590℃で10分保持して焼成し、焼成後厚み3μmのストライプ状の導電性配線を得た。
【0071】
(導電性配線の評価)
SEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を使用して、パターン形成された電極を斜め60°より観察し、電極の凹凸を確認する。次に凸部の電極断面をSEM観察し、基板からの厚みが3.00μm以上であり、電極下に空洞が観測された場合に膨らみと判断した。さらに電極付き基板を表面粗さ計(東京精密株式会社製)にて電極平均厚み(測定範囲2.0cm、n=100)を算出した。
膨らみがなく、平均厚みが3.0μm未満の場合を「◎」、
膨らみがなく、平均厚みが3.0μm以上3.1μm未満の場合を「○」、
膨らみは観測できないが、平均厚みが3.0μm以上3.1μm未満の場合を「△」、
膨らみが観測され、平均厚みが3.1μm以上3.2μm未満の場合を「△△」、
膨らみが観測され、平均厚みが3.2μm以上を「×」とした。
【0072】
また、導電率についてはライン抵抗値を測定し評価した。電極ライン幅300μm、ライン長374000μmとし、テスターを用いてライン抵抗を評価した。30Ω未満の場合を「◎」、30Ω以上50Ω未満の場合を「○」、50Ω以上100Ω未満の場合を「△」、100Ω以上の場合を「△△」、断線により評価できなかった場合を「×」とした。
【0073】
また導電性配線と基板との密着性について、パターン端にデジタルフォース・ゲージDFG−5KR(日本電産シンポ製)を使用して評価した。密着強度測定用パターンにコネクト治具を半田付け、直角方向に引っ張り、基板から2mm角の測定部分が外れた時点での強度を20回測定し、その平均値を求め、2kgf以上を◎、1.7kgf以上2kgf未満を○、1.5kgf以上1.7kgf未満を△、1.3以上1.5kgf未満を△△、1.3kgfより小さい場合を×とした。
【0074】
表4に実施例1〜16の評価結果を、表5に比較例1〜17の評価結果を記す。
実施例1〜16で得られたパターンは良好なパターン表面と基板密着性、導電性を得た。比較例1〜17については電極の抵抗値、密着強度、および電極パターン形状のいずれかの点で満足なものが得られなかった。
【0075】
【表4】

【0076】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機バインダー成分を含む有機成分、ならびに金属粉末および軟化点が620℃〜720℃の範囲内である高軟化点ガラス粉末を含む無機成分からなり、前記有機成分の含有量が10〜35質量%の範囲内、前記無機成分の含有量が65〜90質量%の範囲内であり、かつ、前記金属粉末の含有量が前記無機成分に対し80〜95質量%、前記高軟化点ガラス粉末の含有量が前記無機成分に対し5〜20質量%の範囲内であることを特徴とするペースト。
【請求項2】
前記無機成分がさらに軟化点が400℃〜600℃の範囲内である低軟化点ガラス粉末を含み、前記金属粉末の含有量が前記無機成分に対し80〜95重量%、前記低軟化点ガラス粉末の含有量が前記無機成分に対し0.2〜2質量%、前記高軟化点ガラス粉末の含有量が前記無機成分に対し3〜19.8質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のペースト。
【請求項3】
前記金属粉末が、銀、銅、金、パラジウム、タングステンおよび白金のうち少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のペースト。
【請求項4】
前記有機バインダー成分が感光性有機成分を含む請求項1〜3のいずれか記載のペースト。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のペーストを用いて配線パターンを形成し、焼成することにより導電性配線を製造することを特徴とする導電性配線の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の導電性配線の製造方法により電極を形成することを特徴とするディスプレイパネルの製造方法。

【公開番号】特開2011−210393(P2011−210393A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74299(P2010−74299)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】