説明

ペースト保管容器

【課題】気泡の混入を抑制できるペーストの保管容器を提供する。
【解決手段】ペースト保管容器100は、底部5b、底部5bに対向する位置に開口5oを形成する開口部5t、及び、底部5bと開口部5tとを接続する側面部5sを有する容器本体5と、容器本体5の開口5oを塞ぐ蓋10と、蓋10を貫通するように蓋10に固定され、開口5oよりも底部5bに近接して配置された開口端1eを有する第一管1と、蓋10を貫通するように蓋10に固定され、底部5bよりも開口5oに近接して配置された開口端2eを有する第二管2と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペーストの保管容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、種々のペーストが知られている。ペーストとは、ある一定の応力が掛かるまでは固体として振る舞い、当該応力以上の応力が掛かると液体のように流動する材料である。通常、ペーストは、溶媒と、固体粒子と、バインダとの混合物である。
【0003】
このペーストを保存する容器として例えば、特許文献1に記載されるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−339000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の容器では、外部で調製したペーストを容器内へ供給する際や、容器内のペーストを外部へ排出する際に気泡が混入することが多い。ペーストに気泡が混入すると、気泡の除去が困難である。そして、ペーストに気泡が残ると後工程で種々の問題が生ずる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、気泡の混入を抑制できるペーストの保管容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るペースト保管容器は、
底部、前記底部に対向する位置に開口を形成する開口部、及び底部と開口部とを接続する側面部を有する容器本体と、
容器本体の開口を塞ぐ蓋と、
蓋を貫通するように蓋に固定され、開口よりも底部に近接して配置された開口端を有する第一管と、
蓋を貫通するように蓋に固定され、底部よりも開口に近接して配置された開口端を有する第二管と、を備える。
【0008】
本発明によれば、まず、外部で調製したペーストを容器内に移送する際には、容器本体の開口を上にし底部を下にした状態で、第一管を介してペーストを容器内に供給する一方、第二管を介して容器内のガスを容器外に排出させればよい。この場合、第一管の開口端が底部に近接しているのでペーストが容器の底部から上方に向かって供給され、ペーストへの気泡の混入を抑制できる。また、第二管の開口端が容器の開口に近接しているので、ガスを効率よく排出させられる。
【0009】
続いて、ペーストを容器から排出させる場合には、容器本体の開口を下にし底部を上にした状態で、第二管を介してペーストを容器外に排出させる一方、第一管を介してガスを容器内に供給すればよい。この場合、第一管の開口端が底部に近接しているので、ガス流入時にペーストへ気泡が混入することが抑制される。また、第二管の開口端が容器の開口に近接しているので、気泡の混入の少ない底部にあるペーストを選択的に外部に排出できる。
【0010】
さらに、蓋に第一管、第二管が貫通固定されているので、蓋と共に第一管及び第二管を容易に取り外すことが出来、容器本体内の洗浄等も容易である。
【0011】
ここで、側面部は円筒であることが好ましい。これによれば、容器内でペーストを保管する際に、容器本体の軸方向を水平方向に配置し、ボールミルの回転装置等を用いて容器本体を軸周りに回転させることにより、ペーストを好適に攪拌させ、保存時の分離等を抑制することが出来る。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、気泡の混入を抑制できるペーストの保管容器を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るペースト保管容器100にペーストを供給する際の様子を示す概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係るペースト保管容器100からペーストを排出する際の様子を示す概略断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態に係るペースト保管容器100中でペーストを保管する際の様子を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、本発明の実施形態に係るペースト保管容器の一例について説明する。図1は、本実施形態の一例に係るペースト保管容器の断面図である。
【0015】
このペースト保管容器100は、主として、容器本体5、蓋10、第一管1、第二管2を備えている。
【0016】
容器本体5は、円板状の底部5b、底部5bに対向する位置に円形の開口5oを形成する開口部5t、底部5bと開口部5tとを接続する円筒状の側面部5sを有する。
【0017】
側面部5sの内直径は、特に限定されないが、例えば、50〜500mmとすることができる。また、側面部5sの高さは、特に限定されないが、例えば、100〜1000mmとすることができる。容器本体5の内容積は、例えば、0.2〜200Lとすることができる。
【0018】
容器本体5の材料は特に限定されないが、ポリエチレン等の樹脂、ガラス、ステンレス等の金属等とすることが好ましい、容器本体5は、一体に成形されていることが好ましい。容器本体5の厚みは、例えば、0.1〜20mmとすることができる。
【0019】
開口部5tは、側面部5sの内直径よりも狭い内直径の開口5oを形成する円筒部5tと、円筒部5tと側面部5sとを接続するツバ状の接続部5tとを有する。円筒部5tの外面には、らせん状に配置されたネジ山5pが形成されている。
【0020】
開口部5tの開口5oの内直径は、特に限定されないが、容器本体5の側面部5sの内直径を1としたときに、0.3〜1.0であることが好ましい。
【0021】
蓋10は、開口部5tの開口5oを塞ぐものである。具体的には、開口5oと対向する底面10bと、底面10bに接続した円筒状の側面10sとを有する。側面10sの内面には、開口部5tの円筒部5tの外面のネジ山5pと対応するネジ山5が形成されている。底面10bの内表面には、パッキン12が設けられており、このパッキン12が、開口部5tの円筒部5tの上端部と当接することにより、容器本体5の開口5oが密封される。蓋10の材質は、容器本体5と同様である。
【0022】
第一管1及び第二管2は、それぞれ蓋10の底面10bを貫通するように蓋10に固定されている。具体的には、第一管1、及び、第二管2は、筒状のパッキン14で覆われた状態で蓋10の底面10bに設けられた貫通孔に挿入されることにより固定されている。第一管1及び第二管2の材質は、容器本体5と同様である。パッキン12,14としては、例えば、種々のゴム材料が利用できる。
【0023】
そして、第一管1の容器本体5内の開口端1eは、開口5oよりも底部5bに近接して配置される一方、第二管2の容器本体5内の開口端2eは、底部5bよりも開口5oに近接して配置されている。開口端1eと底部5bとの距離は、0.5〜20mmが好ましい。また、開口端2eと開口5oとの距離は、0.5〜50mmが好ましい。
【0024】
第一管1、第二管2の他の開口端1f、2fは容器本体5の外側に出ている。また、第一管1、第二管2の容器本体5の外側の部分には、バルブV1,V2がそれぞれ接続されている。
【0025】
第一管1、第二管2の内径は特に限定されないが、例えば、5〜30mmとすることができる。
【0026】
続いて、本実施形態に係るペースト保管容器100の使用方法について説明する。
【0027】
まず公知の方法でペーストPを調製する。ペーストPは特に限定されないが、典型的には、ペーストPは、溶媒、固体粒子、及び、バインダを有する。
【0028】
例えば、セラミクスハニカムフィルタの流路の一端を閉鎖する封口材用のペーストとしては、固体粒子としてのセラミクス材料又はセラミクス原料と、バインダと、潤滑剤と、造孔剤と、溶媒とを含むペーストが例示できる。
【0029】
セラミクス材料としては、例えば、アルミナ、シリカ、ムライト、コーディエライト、ガラス、チタン酸アルミニウム等の酸化物、シリコンカーバイド、窒化珪素、金属等が挙げられる。なお、チタン酸アルミニウムは、さらに、マグネシウム及び/又はケイ素を含むことができる。セラミクス原料は、上述のようなセラミクス材料の原料であり、例えば、各セラミクスの構成元素を含む材料が挙げられる。セラミクス材料の使用量は、例えば、ペースト100重量部に対して50〜85重量部とすることができる。
【0030】
バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩等の有機バインダを例示できる。バインダの使用量は、例えば、ペースト100重量部に対して0〜30重量部とすることができる。
【0031】
潤滑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸アルミニウムなどのステアリン酸金属塩などが挙げられる。潤滑剤の使用量は、例えば、ペースト100重量部に対して0.5〜20重量部とすることができる。
【0032】
造孔剤としては、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物材料;氷;およびドライアイス等などが挙げられる。造孔剤の使用量は、例えば、ペースト100重量部に対して0〜20重量部とすることができる。
【0033】
溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;および水などを用いることができる。なかでも、水が好ましく、不純物が少ない点で、より好ましくはイオン交換水が用いられる。溶媒の使用量は、例えば、ペースト100重量部に対して10〜40重量部とすることができる。
【0034】
ペーストPの調製方法は特に限定されないが、各種原料を混合容器200内で公知の方法で混合すればよい。なお、混合後は、静置する等によりペースト中の空気等の気泡を十分に追い出しておくことが好ましい。
【0035】
続いて、得られたペーストPを、混合容器200からペースト保管容器100に移送する。ここでは、例えば、ポンプP1を有するラインL1を、混合容器200及び第一管1の開口端1fに接続し、バルブV1及びV2を開放すればよい。これにより、ペーストPは、第一管1の開口端1eから容器本体5内に供給される一方、容器本体5内の空気等のガスは第二管2を介して外部に排出される。このとき、第一管1の開口端1fは、底部5bに近接して配置されているので、ペースト移送時にガスの巻き込み等が抑制され気泡が生じ難い。移送終了後は、バルブV1,V2を閉じればよい。なお、供給後のペースト保管容器100内のペースト量は、後述するように容器を図2のように上下ひっくり返した場合に第一管の開口端1eが液面よりも上に突出する程度に抑えておくことが好ましい。
【0036】
続いて、図2を参照して、ペースト保管容器100内のペーストを排出する場合について説明する。まず、ペースト保管容器100を、開口5oが下になり、底部5bが上になるように配置する。続いて、ペーストPを必要とする装置、例えば、公知のハニカムフィルタの封口装置400と、第二管2の開口端2fとを、ポンプP2を有するラインL2により接続する。そして、バルブV1,V2を開放し、ポンプP2を駆動させればよい。なお、ポンプP2を使用せず、水頭差によって移動させてもよい。
【0037】
これにより、ペーストPは、第二管2の開口端2fから封口装置400に供給される一方、空気等のガスが第一管1を介して容器本体5内に供給される。このとき、空気等のガスが流入する第一管1の開口端1eが底部5bに近接しているので、流入するガスによってペーストPをバブリングしにくくなり、ペーストPへの気泡の混入を抑制できる。また、第二管2の開口端2eが容器本体5の開口5oに近接しているので、気泡の混入の少ない底部にあるペーストPを選択的に排出できる。
【0038】
封口装置400へのペーストPを供給することにより容器内のペーストが減少したら、再び、前述のように外部からペーストPを補充することができる。
【0039】
続いて、図3を参照して、ペースト保管容器100内で、ペーストPを保管する方法の一例を説明する。この場合には、バルブV1,V2を閉めた状態とし、容器本体5の軸が水平方向に配置されるようにして、ペースト保管容器100をボールミル用の回転装置300上に載置する。
【0040】
このボールミル用の回転装置300は、一対の軸305a,305b、及び、各軸305a,305b周りに回転する一対のローラ303a、303b、各軸305a,305bを回転させるモータ301a,301bが水平方向に離間して配置されたものである。
【0041】
ペースト保管容器100を、一対のローラ303a,303bとの間に載置し、ローラ303a,303bを回転させることにより、ペースト保管容器100がその軸周りに回転する。ペースト保管容器100が回転することにより、ペーストPを長時間保管しても、液体と固体との分離等の変質を抑制できる。
【0042】
ペースト保管容器100を回転させる際の回転数は特に限定されないが、例えば、5〜60rpmが好ましい。
【0043】
本発明は上記実施形態に限定されず、様々な変形態様が可能である。例えば、容器本体、蓋、第一管、第二管の形状は上記実施形態に限定されない。また、パッキンの構造も限定されず、パッキンが無くても実施は可能である。
【符号の説明】
【0044】
1…第一管、1e…開口端、2…第二管、2e…開口端、5b…底部、5o…開口、5s…側面部、5t…開口部、5…容器本体、10…蓋、100…ペースト保管容器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部、前記底部に対向する位置に開口を形成する開口部、及び前記底部と前記開口部とを接続する側面部を有する容器本体と、
前記容器本体の開口を塞ぐ蓋と、
前記蓋を貫通するように前記蓋に固定され、前記開口よりも前記底部に近接して配置された開口端を有する第一管と、
前記蓋を貫通するように前記蓋に固定され、前記底部よりも前記開口に近接して配置された開口端を有する第二管と、を備えるペースト保管容器。
【請求項2】
前記側面部は円筒である請求項1記載のペースト保管容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−240950(P2011−240950A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113287(P2010−113287)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】