説明

ペースト膜形成装置

【課題】複数のスキージを用意することなく所望の厚さのペースト膜を得ることができるペースト膜形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】スキージ20を保持して基台3に対してその前後方向に相対的に往復移動するスキージ保持具10が、スキージ20を上下方向に移動自在に支持する本体部11と、基台3の前後方向に傾斜する傾斜面13bによってスキージ20に接続された突起部21を支持するカム部材(左右のカム板13)と、カム部材を本体部11に対して基台3の前後方向に移動させ、スキージ20に接続された突起部21とカム部材が有する傾斜面13bの接触部のペースト膜形成面3aからの高さを増減させることによってスキージ20の下縁20aとペースト膜形成面3aの間隔を変化させるカム部材移動手段とから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト膜形成面上に供給されたペーストをスキージによって均して一定厚さのペースト膜を形成するペースト膜形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品の実装プロセスにおいて、ピックアップした電子部品の電極部分にフラックスや半田等のペーストを塗布する場合、予め一定の厚さに調節しておいたペースト膜に電子部品の電極部分を浸すようにする。ペースト膜形成装置は、このような一定の厚さのペースト膜を形成するための装置であり、水平かつ平坦なペースト膜形成面を有する基台と、基台の前後方向に往復移動するスキージとを有して成る(特許文献1)。ペースト膜の厚さはスキージの下縁とペースト膜形成面の間隔によって決まり、スキージの下縁の両端部に下方に突出する凸状部を形成してその凸状部がペースト膜形成面上を滑走するようにすることにより、凸状部の高さに対応した一定厚さのペースト膜を得ることができる。
【特許文献1】特許第3289604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、スキージの下縁の両端部に形成した凸状部の高さによってペースト膜の厚さが決まるペースト膜形成装置では、ペースト膜の厚さを変更したい場合にはスキージそのものを交換する必要がある。このため形成しようとするペースト膜の厚さごとにスキージを用意しなければならず、スキージの製造、保管及び交換作業に多くのコストが必要となっていた。
【0004】
そこで本発明は、複数のスキージを用意することなく所望の厚さのペースト膜を得ることができるペースト膜形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載のペースト膜形成装置は、ペースト膜形成面を有する基台と、基台に対してその前後方向に相対的に往復移動するスキージ保持具と、スキージ保持具に保持されて下縁をペースト膜形成面と対向させたスキージとを有し、スキージ保持具を基台に対してその前後方向に相対的に往復移動させることにより、ペースト膜形成面に供給したペーストをスキージによって均し、ペースト膜形成面上にペースト膜を形成するペースト膜形成装置であって、スキージ保持具は、スキージを上下方向に移動自在に支持する本体部と、基台の前後方向に傾斜する傾斜面によってスキージに接続された突起部を支持するカム部材と、カム部材を本体部に対して基台の前後方向に移動させ、スキージに接続された突起部とカム部材が有する傾斜面の接触部のペースト膜形成面からの高さを増減させることによってスキージの下縁とペースト膜形成面の間隔を変化させるカム部材移動手段から成る。
【0006】
請求項2に記載のペースト膜形成装置は、請求項1に記載のペースト膜形成装置において、カム部材は本体部に対して上下方向に移動自在であり、ペースト膜形成面に上方から接している。
【発明の効果】
【0007】
本発明のペースト膜形成装置では、スキージを保持して基台に対してその前後方向に往復移動するスキージ保持具が、スキージを上下方向に移動自在に支持する本体部と、基台の前後方向に傾斜する傾斜面によってスキージに接続された突起部を支持するカム部材と
、カム部材を本体部に対して基台の前後方向に移動させ、スキージに接続された突起部とカム部材が有する傾斜面の接触部のペースト膜形成面からの高さを増減させることによってスキージの下縁とペースト膜形成面の間隔を変化させるカム部材移動手段から成っており、カム部材を本体部に対して基台の前後方向に移動させることによって容易にスキージの下縁とペースト膜形成面の間隔、すなわちペースト膜の厚さを変更することができるので、複数のスキージを用意することなく所望の厚さのペースト膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の一実施の形態におけるペースト膜形成装置の斜視図、図2は本発明の一実施の形態におけるペースト膜形成装置の側面図、図3は本発明の一実施の形態におけるペースト膜形成装置の正面図、図4は本発明の一実施の形態におけるスキージ保持具の本体部の斜視図、図5は本発明の一実施の形態におけるスキージ保持具の板カム保持部及び板カムの斜視図、図6は本発明の一実施の形態におけるスキージの斜視図、図7は本発明の一実施の形態におけるペースト膜形成装置によりペースト膜を形成する様子を示す部分断面図、図8は本発明の一実施の形態におけるペースト膜形成装置においてペースト膜の厚さを調整する工程を説明する図である。
【0009】
図1、図2及び図3(図3は図2の矢視III−III断面図)において、ペースト膜形成装置1はベース部2、ベース部2により水平に支持された長方形平板状の基台3、基台3の長辺方向に往復移動するスキージ保持具10及びスキージ保持具10に保持されたスキージ20を備えている。基台3の上面は水平かつ平坦なペースト膜形成面3aとなっており、周辺部にはペースト膜形成面3aよりも高さがやや高い土手部3bが形成されている。以下、説明の便宜上、図1及び図2に示すように、基台3の長辺方向を基台3の前後方向、基台3の短辺方向を基台3の左右方向と定義する。
【0010】
スキージ保持具10は本体部11、板カム支持部材12、左右一対の板カム13等を有して成る。
【0011】
図2、図3及び図4において、スキージ保持具10の本体部11は、ベース部2を基台3の前後方向に延びた平行な2本の第1レール14によって支持されて基台3の下方に位置する下方水平部11a、下方水平部11aの後部から基台3の左右側方を上方に延びた垂直部11b、垂直部11bの上端部からペースト膜形成面3aの上方を前方水平に延びた上方水平部11c及び上方水平部11cの前端部に形成されたスキージ保持部11dを有する。
【0012】
本体部11の下方水平部11aは、2本の第1レール14の間を基台3の前後方向に延びて前後の端部がベース部2に支持された第1送り軸15と螺合しており、ベース部2に固定された第1電動モータ16を作動させて第1送り軸15を軸心まわりに回転させることにより、本体部11を第1レール14に沿って基台3の前後方向に移動させることができる。スキージ保持部11dには下方に開口したスキージ保持溝11eが形成されており、このスキージ保持溝11eにはスキージ20の上部が下方から挿入されている。
【0013】
図2、図3及び図5において、スキージ保持具10の板カム支持部材12は、本体部11を基台3の前後方向に延びた平行な2本の第2レール17によって支持されて本体部11の下方水平部11aと基台3の間に位置した水平部12a、水平部12aから基台3の左右側方を上方に延びた4つの垂直部12b及び各垂直部12bの上端部からペースト膜形成面3aの上方を左右内方に向かって張り出した板カム支持部12cを有する。前後に対向する2つの板カム支持部12cには互いに対向するように開口した板カム支持溝12dが設けられている。
【0014】
板カム支持部材12の水平部12aは、2本の第2レール17の間を基台3の前後方向に延びて前後の端部が本体部11に支持された第2送り軸18と螺合しており、本体部11に固定されたサーボモータやステッピングモータなどから成る第2電動モータ19を作動させて第2送り軸18を軸心まわりに回転させることにより、板カム支持部材12を第2レール17に沿って基台3の前後方向に移動させることができる。なお、第2電動モータ19を停止させた状態では、板カム保持部材12は第2送り軸18との螺合部による機械的なロックによって本体部11に対して移動することができず、本体部11が基台3の前後方向に移動したときにはこれと一体となって基台3の前後方向に移動する。
【0015】
図5において、左右一対の板カム13はそれぞれ基台3の前後方向に延びており、板カム支持部材12の板カム支持溝12dによって上下方向に移動自在に支持されている。各板カム13の下面13aはペースト膜形成面3aに上方から接しており、この状態で各板カム13の上面は基台3の前後方向に(基台3の後方から前方に向かって低くなるように)傾斜している。以下、板カム13の上面を傾斜面13bと称する。
【0016】
スキージ20は、スキージ保持具10に保持されて基台3の左右方向に延び、その下縁20aをペースト膜形成面3aと上下に対向させている。
【0017】
図6において、スキージ20は左右方向に延びるとともに下方に尖った形状を有している。垂直かつ左右方向に延びた平行な前後の外面20b,20cの間隔は、スキージ保持溝11eを形成している垂直かつ左右方向に延びた平行な前後の内面11f,11g(図2中の拡大図参照)の間隔よりもわずかに小さくなっており、スキージ20はスキージ保持溝11e内で上下方向にスライド移動できるようになっている。
【0018】
スキージ20の左右両側部には外方に水平に突出して延びた一対の突起部21が設けられており、これら一対の突起部21は左右の板カム13の一対の(左右一対の)傾斜面13bによって下方から支持されている。本体部11のスキージ保持溝11e内には圧縮ばねからなる付勢ばね22が設けられており、スキージ20はこの付勢ばね22によって常時下方に付勢され、左右両側部に設けられた一対の突起部21は左右の板カム13の一対の傾斜面13bに押し付けられている。なお、このようにスキージ20の左右両側部に設けられた一対の突起部21が左右の板カム13の一対の傾斜面13bに上方から押し付けられることにより、左右の板カム13の下面13aはペースト膜形成面3aに上方から押し付けられる。
【0019】
このペースト膜形成装置1において一定厚さのペースト膜を形成するには、ペースト膜形成面3a上にディスペンサ等によってペーストを供給したうえで、第1電動モータ16を正逆交互に回転させる。第1電動モータ16が作動すると第1送り軸15が軸心まわりに回転され、これによりスキージ保持具10が第1レール14に沿って基台3の前後方向に移動するので、第1電動モータ16を正逆交互に回転させるとスキージ保持具10は基台3の前後方向に往復移動し、ペースト膜形成面3a上に供給されたペーストはスキージ保持具10に保持されたスキージ20によって均され、スキージ20の下縁20aとペースト膜形成面3aの間隔に対応した厚さのペースト膜が形成される。図7に、スキージ20が矢印Aの方向に移動することによってペースト30が均されてスキージ20の下縁20aとペースト膜形成面3aの間隔tに対応した厚さのペースト膜30aが形成されている様子を示す。
【0020】
このペースト膜形成装置1において形成されるペースト膜30aの厚さを変化させるには、スキージ20の下縁20aとペースト膜形成面3aの間隔tを変えればよく、このためには第2電動モータ19を作動させて第2送り軸18を軸心まわりに回転させればよい
。これにより板カム支持部材12が第2レール17に沿って基台3の前後方向に移動し、板カム支持部材12に支持された左右一対の板カム13も本体部11に対して基台3の前後方向に移動するので、スキージ20の左右両側部に設けられた一対の突起部21と左右の板カム13の一対の傾斜面13bの接触部のペースト膜形成面3aからの高さH(図8)が増減し、結果としてスキージ20の下縁20aとペースト膜形成面3aの間隔が変化する。
【0021】
具体的には、本実施の形態の場合、第2電動モータ19を作動させて板カム支持部材12を基台3の後方に移動させたときには(図8(a)→図8(b))、スキージ20の左右両側部に設けられた一対の突起部21と左右の板カム13の一対の傾斜面13bの接触部の高さHはHからHに減少して、スキージ20の下縁20aとペースト膜形成面3aの間隔は狭くなり、第2電動モータ19を作動させて板カム支持部材12を基台3の前方に移動させたときには(図8(a)→図8(c))、スキージ20の左右両側部に設けられた一対の突起部21と左右の板カム13の一対の傾斜面13bの接触部の高さHはHからHに増大して、スキージ20の下縁20aとペースト膜形成面3aの間隔は広くなる。
【0022】
ここで、第2電動モータ19を回転させたときのスキージ20の下縁20aとペースト膜形成面3aの間隔tの変化量は、第2電動モータ19の回転量と板カム13の傾斜面13bの傾斜角度に依存する。具体的には、第2電動モータ19の回転量が大きいときほど間隔tは大きくなり、第2電動モータ19の回転量が同じであれば、板カム13の傾斜面13aの傾斜角度が大きいときほど間隔tは大きくなる。従って、形成されるペースト膜の厚さをより精度良く設定したい場合には、第2電動モータ19の回転量制御を高精度に行うことができるようにし、板カム13の傾斜角度をできるだけ小さくすればよい。
【0023】
このように本実施の形態におけるペースト膜形成装置1では、スキージ20を保持して基台3の前後方向に往復移動するスキージ保持具10が、スキージ20を上下方向に移動自在に支持する本体部11と、基台3の前後方向に傾斜する左右一対の傾斜面13bによってスキージ20の左右両側部に設けられた一対の突起部21を下方から支持するカム部材(左右の板カム13)と、カム部材を本体部11に対して基台3の前後方向に移動させ、スキージ20の左右両側部に設けられた一対の突起部21とカム部材が有する左右一対の傾斜面13bの接触部のペースト膜形成面3aからの高さを増減させることによってスキージ20の下縁20aとペースト膜形成面3aの間隔を変化させるカム部材移動手段(板カム保持部材12、第2送り軸18及び第2電動モータ19等)から成っており、カム部材を本体部11に対して基台3の前後方向に移動させることによって容易にスキージ20の下縁20aとペースト膜形成面3cの間隔、すなわちペースト膜の厚さを変更することができるので、複数のスキージを用意することなく所望の厚さのペースト膜を得ることができる。
【0024】
また、本実施の形態におけるペースト膜形成装置1では、前述のように、左右の板カム13は本体部11に対して上下方向に移動自在であり、各板カム13の下面13aはペースト膜形成面3aに上方から接しているので、左右の板カム13がペースト膜形成面3aに対して移動するときには、ペースト膜形成面3aの形状に従って上下方向に移動することになる。このため、スキージ20に設けられた突起部21とペースト膜形成面3aとの距離はペースト膜形成面3aの高さ・形状によらず常に一定となり、部材交換などによりペースト膜形成面3aの高さに変動があった場合であってもペースト膜の厚さが変動することはなく、電子部品の電極等に塗布されるペーストの量にばらつきが生じてしまう不都合を防止することができる。なお、このように左右の板カム13がペースト膜形成面3aの形状に従って上下方向に移動するようにする必要がないのであれば、左右の板カム13はペースト膜形成面3aと剛に結合された部分(例えば左右の土手部3b)のペースト膜
形成面3aと平行な面上を移動するようにしてもよいし、板カム支持部材12の水平部12aの上面を移動するようにしてもよい。
【0025】
これまで本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上述の実施の形態に示したものに限定されない。例えば、上述の実施の形態では、カム部材は左右の独立した一対の板カム13からなっていたが、このカム部材は基台の前後方向に傾斜する左右一対の傾斜面によってスキージの左右両側部に設けられた一対の突起部を下方から支持するものであればよく、左右の板カム13を連結したものや、1つの部材を加工して左右一対の傾斜面を形成したもの等であってもよい。なお、スキージ保持具10を水平方向に固定して、基台3をその前後方向に往復移動するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
複数のスキージを用意することなく所望の厚さのペースト膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態におけるペースト膜形成装置の斜視図
【図2】本発明の一実施の形態におけるペースト膜形成装置の側面図
【図3】本発明の一実施の形態におけるペースト膜形成装置の正面図
【図4】本発明の一実施の形態におけるスキージ保持具の本体部の斜視図
【図5】本発明の一実施の形態におけるスキージ保持具の板カム保持部及び板カムの斜視図
【図6】本発明の一実施の形態におけるスキージの斜視図
【図7】本発明の一実施の形態におけるペースト膜形成装置によりペースト膜を形成する様子を示す部分断面図
【図8】本発明の一実施の形態におけるペースト膜形成装置においてペースト膜の厚さを調整する工程を説明する図
【符号の説明】
【0028】
1 ペースト膜形成装置
3 基台
3a ペースト膜形成面
10 スキージ保持具
11 本体部
12 板カム支持部材(カム部材移動手段)
13 板カム(カム部材)
13b 傾斜面
18 第2送り軸(カム部材移動手段)
19 第2電動モータ(カム部材移動手段)
20 スキージ
20a スキージの下縁
21 突起部
30 ペースト
30a ペースト膜
t スキージの下縁とペースト膜形成面の間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペースト膜形成面を有する基台と、基台に対してその前後方向に相対的に往復移動するスキージ保持具と、スキージ保持具に保持されて下縁をペースト膜形成面と対向させたスキージとを有し、スキージ保持具を基台に対してその前後方向に相対的に往復移動させることにより、ペースト膜形成面に供給したペーストをスキージによって均し、ペースト膜形成面上にペースト膜を形成するペースト膜形成装置であって、
スキージ保持具は、スキージを上下方向に移動自在に支持する本体部と、基台の前後方向に傾斜する傾斜面によってスキージに接続された突起部を支持するカム部材と、カム部材を本体部に対して基台の前後方向に移動させ、スキージに接続された突起部とカム部材が有する傾斜面の接触部のペースト膜形成面からの高さを増減させることによってスキージの下縁とペースト膜形成面の間隔を変化させるカム部材移動手段から成ることを特徴とするペースト膜形成装置。
【請求項2】
カム部材は本体部に対して上下方向に移動自在であり、ペースト膜形成面に上方から接していることを特徴とする請求項1に記載のペースト膜形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−78296(P2008−78296A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−254342(P2006−254342)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】