説明

ホイップクリーム用安定剤及びその応用

【課題】離水が抑制され、また、艶が付与され、更には「ダレ」が防止され、保形性が良好であるホイップクリームを提供する。
【解決手段】ホイップクリーム用安定剤に、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース及びカラギナンを含む。更に、ショ糖脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル及びレシチンから選ばれる1種又は2種以上を含む。ホイップクリームに、前記ホイップクリーム用安定剤及び油脂を20〜40重量%含む。ホイップクリーム調製時にUHT殺菌処理により殺菌する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホイップクリームに関する。詳細には、離水が抑制され、また、艶が付与され、更には「ダレ」が防止され、保形性が良好であるホイップクリームに関する。
【背景技術】
【0002】
ホイップクリームは、ケーキやプリン、ムース等のデザートといった洋菓子のトッピングに広く使用されており、生乳・牛乳等の乳由来のクリーム、例えば、生クリーム等を用いるものと、いわゆる合成クリーム(非乳クリーム)と呼ばれる、乳脂肪以外の脂肪を用いて脱脂乳、乳化剤、香料等を混合して得られるものがある。
【0003】
これらホイップクリームは、乳由来のクリーム、非乳クリームのいずれも、温度が高くなるといわゆる「ダレ」という現象、即ち、ホイップクリームの起泡維持が難しくなり、例えばクリームのデコレーションの形状を維持できなくなるといった保型性維持が難しくなる現象が起こりやすくなる。更には、近年、嗜好の甘味離れが進んでいるが、低糖度で低甘味の生クリームを用いると、水分の分離、即ち離水が起こりやすくなるという種々の問題点がある。
【0004】
これらホイップクリームの保形性維持、離水防止のために、増粘多糖類などを安定剤に使用することが従来から行われている。例えば、安定剤として、ヒドロキシプロピルセルロースを使用することは知られており、モノグリセリン脂肪酸エステルやジグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどの乳化剤と併用して使用することが記載されている(特許文献1、特許文献2など)。しかし、起泡(オーバーラン)が出にくかったり、保形性が低くなったり、離水が多く、花模様に絞り出したとき、エッジキレが悪くなったり、艶がなくなったりするという問題点がある。更には、微結晶セルロースおよびプルランから選ばれる高分子物質を含み、ホイップ後のオーバーランが200%以下であり、油分が40重量%以下の低油分クリーム(特許文献3)が記載されているが、油分が高いホイップクリームには安定化効果を示すものの、油分が低くなると安定性に問題があった。
【0005】
更には、ホイップクリームを調製する際、泡立てる前に殺菌を行うことがあるが、その殺菌にはUHT殺菌が行われている(特許文献4)。しかし、UHT処理を行った場合、オーバーランに時間がかかったり、ミックスの粘度が上昇したり、起泡後の保形性が悪くなったり、また離水を起こしやすくなるなどの問題がある。このような問題があるため、UHT殺菌後もオーバーラン性が良好であり、保形性維持や離水防止効果などホイップクリームに求められる特性を付与された製品が求められている。
【0006】
【特許文献1】United States Patent 第3806605号
【特許文献2】European Patent 第354356号
【特許文献3】特開平7−236443号公報
【特許文献4】特公平7−108201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みて開発されたものであり、離水が抑制され、また、艶が付与され、更には「ダレ」が防止され保形性が良好であり、更にはUHT殺菌の工程を経ても、かかる特性を兼ね備えたホイップクリームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み、鋭意研究を重ねていたところ、ホイップクリーム用安定剤として、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース及びカラギナンを併用することにより、離水が抑制され、また、艶が付与され、更には「ダレ」が防止され保形性が良好であり、更にはUHT殺菌の工程を経ても、かかる特性を兼ね備えたホイップクリームとなることを見いだした。
【0009】
すなわち本発明は以下の態様を有するものである;
項1.ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース及びカラギナンを含むことを特徴とするホイップクリーム用安定剤。
項2.更に、ショ糖脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル及びレシチンから選ばれる1種又は2種以上を含む項1に記載のホイップクリーム用安定剤。
項3.項1又は2に記載のホイップクリーム用安定剤及び油脂を20〜40重量%含むホイップクリーム。
項4.UHT殺菌処理により殺菌する工程を含む、項3に記載のホイップクリームの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、離水が抑制され、また、艶が付与され、更には「ダレ」が防止され保形性が良好であり、更にはUHT殺菌の工程を経ても、かかる特性を兼ね備えたホイップクリームが提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係るホイップクリーム安定剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース及びカラギナンを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明で用いられるヒドロキシプロピルセルロースは、天然に広く存在するセルロース(パルプ)を原料とし、これを水酸化ナトリウムで処理した後、プロピレンオキサイド等のエーテル化剤と反応して得られる非イオン性の水溶性セルロースエーテルである。ヒドロキシプロピルセルロースの粘度としては特に制限されないが、2重量%水溶液に調製した場合の室温(25℃)時の粘度として、1〜100,000mPa・s程度を挙げることができる(測定条件;BL型回転粘度計、ローターNo.1〜4、回転数6rpm、25℃)。好ましくは1〜10,000mPa・s、より好ましくは1〜1,000mPa・s、さらに好ましくは100〜500mPa・sである(測定条件;BL型回転粘度計、ローターNo.1〜4、回転数6rpm、25℃)。
【0013】
このようなヒドロキシプロピルセルロースは商業上入手することができ、例えば、ハーキュリーズ社製のクルーセル ニュートラ(KLUCEL NUTRA:商標、以下同じ)シリーズ、エアロホイップ(AeroWhip)シリーズを使用することができる。
【0014】
ヒドロキシプロピルセルロースのホイップクリームに対する添加量は、0.01〜3.0重量%、好ましくは0.02〜2.0重量%、更に好ましくは0.1〜1.0重量%である。
【0015】
本発明で使用する微結晶セルロースは、微結晶セルロースと分散剤や崩壊剤を特定の割合で含有する複合体とした微結晶セルロース製剤を好適に使用することが出来る。微結晶セルロース製剤の製法としては、例えば、パルプを磨砕して得られた微細セルロースを分散剤や崩壊剤と均一に混合して均質なスラリーとしてこれを乾燥することにより得られる方法を挙げることができるが、具体的には、特公昭40−14174号公報、特公昭62−43661号公報、特開平6−335365号公報などに記載のものが使用できる。分散剤や崩壊剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ガラクトマンナン(グァーガム、酵素分解グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム等)、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、アラビアガム、アラビノガラクタン、アルギン酸及びその塩、カードラン、ガティガム、カラギナン、カラヤガム、寒天、キサンタンガム、サイリウムシードガム、タマリンドシードガム、ジェランガム、ゼラチン、トラガントガム、ファーセレラン、プルラン、ペクチンなどを使用することが出来る。中でも、好ましいのは、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギナン、カラヤガム、キサンタンガム、ジェランガム、難消化性デキストリン、ペクチンである。また、微結晶セルロースの結晶粒子の大きさとしては、平均粒径20μm以下、好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下である。本発明で使用する微結晶セルロース製剤は商業上入手可能であり、例えば、旭化成工業株式会社製のセオラス製品や、FMC社製アビセル製品などを挙げることができる。
【0016】
微結晶セルロースのホイップクリームに対する添加量は、0.01〜2.0重量%、好ましくは0.03〜1.0重量%、更に好ましくは0.1〜0.3重量%である。
【0017】
本発明で使用するカラギナンについて、一般的にカラギナンとして市販されているものは、イオタタイプ、カッパタイプ、ラムダタイプのものがあり、本発明はいずれを使用しても良いが、好ましいのは、イオタタイプのカラギナンである。カラギナンのホイップクリームに対する添加量は、0.001〜0.2重量%、好ましくは0.005〜0.1重量%、更に好ましくは0.01〜0.05重量%である。
【0018】
本発明に係るホイップクリーム安定剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース及びカラギナンを含むことを特徴とするが、更に、ショ糖脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル及びレシチンから選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましい。
【0019】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、構成脂肪酸の炭素原子数が10〜24の飽和及び不飽和の脂肪酸とショ糖とのモノ、ジ、トリ、ポリエステル及びその混合物であり、全エステルに占めるモノエステルが70重量%以上であるものが好ましい。構成脂肪酸としてはは、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等を挙げることができる。好ましくは炭素数14〜18の脂肪酸であり、例えばミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸を挙げることができる。より好ましくはパルミチン酸である。なお、HLBの低い(1〜7程度)親油性のもの、HLBの高い(9〜16)親水性のもののいずれも使用することができる。
【0020】
本発明で用いられるレシチンは、食品添加物として一般に用いられるものであればよく、由来の別や加工処理の有無によって何ら制限されるものではない。具体的には大豆レシチンやアブラナレシチン等の植物レシチン;卵黄レシチンなどの動物性レシチン;上記植物レシチンや動物性レシチンに化学的若しくは物理的処理を施した例えば酵素分解レシチン、酵素処理レシチン及び分別レシチン等を挙げることができる。
【0021】
モノグリセリン脂肪酸エステルとしては、構成脂肪酸が、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、ベヘン酸、オレイン酸などの、炭素原子数10〜24の飽和及び/又は不飽和の脂肪酸のモノエステルである。また、構成脂肪酸が異なるモノエステルの混合物であっても良い。モノグリセリン脂肪酸エステルとしては、HLBの低い(1〜7程度)親油性のものを使用することができる。
【0022】
ショ糖脂肪酸エステルのホイップクリームに対する添加量は0.01〜1.0重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%、モノグリセリン脂肪酸エステルのホイップクリームに対する添加量は0.01〜1.0重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%、レシチンのホイップクリームに対する添加量は0.005〜0.5重量%、好ましくは0.01〜0.2重量%を挙げることができる。
【0023】
本発明で言うホイップクリームは、前記の生乳・牛乳等の乳由来のクリーム、例えば生クリーム等を用いるものと、いわゆる合成クリーム(非乳クリーム)と呼ばれる、乳脂肪以外の脂肪を用いて脱脂乳、乳化剤、香料等を混合して得られるものがあり、本発明ではいずれを用いても良い。
【0024】
本発明にかかるホイップクリームにおける乳脂肪を含む油脂の含有量としては、ホイップクリームに対して20〜40重量%含むのが好ましい。含まれる油脂としては、植物油脂、バター、乳脂肪分、あるいはこれらの分別油脂、硬化油脂、エステル交換油脂等があり、植物油脂の例としては、マーガリン、ショートニング、ヤシ油、パーム油、大豆油、菜種油、綿実油、コーン油、ひまわり油、オリーブ油、サフラワー油及びパーム核油等を挙げることができ、これらを1種又は2種以上組みあわせて含有させることができる。
【0025】
更に、本発明のホイップクリームは、ダレが防止され、デコレーションしたときの形を安定に保持することが可能で、保型性が良好となったものである。更には、ホイップクリームのミックスの殺菌にUHT殺菌を使用した場合にも、ミックスの粘度が過度に増粘することがないため製造しやすく、前記ホイップクリームの特性を兼ね備えたホイップクリームとなる。このような本発明の効果が顕著に現れるのは、乳由来のクリームであり、また、風味等の点からも乳由来のクリームを用いるのが好ましい。
【0026】
本発明に係るホイップクリームの調製方法であるが、まず、水にヒドロキシプロピルセルロースを溶解させる。溶解方法としては、水にヒドロキシプロピルセルロースを添加して、加熱せずに冷時(0〜30℃程度の水)溶解させる方法を採っても良いし、75〜95℃5〜20分程度加熱して攪拌溶解する方法を採っても良い。好ましくは、冷時溶解する方が好ましい。ヒドロキシプロピルセルロースを冷時溶解した水溶液はある程度の粘性を示すものの、ホイップクリームミックスを調製したときには低粘度に調製することができるため、取扱が容易となるという利点がある。
【0027】
また、ヒドロキシプロピルセルロース溶液と別に、油脂と必要に応じてショ糖脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル及びレシチンから選ばれる1種以上を含む乳化剤を加え、60〜80℃程度に加熱して溶融しておき、前記調製したヒドロキシプロピルセルロース溶液に、微結晶セルロース、カラギナン、糖類、脱脂粉乳などの粉体混合物を添加して、75〜80℃5〜20分程度加熱してから、油脂溶融物を少しずつ添加して、70〜80℃5〜20分間程度攪拌混合し、必要に応じてリン酸塩溶液などを添加して全量補正後、予備均質化(例えば、圧力条件:第一段0kg/cm,第二段0kg/cmなど)する。
【0028】
その後得られたホイップクリームミックスは殺菌を行うことが一般的であるが、殺菌方法としては、UHT殺菌、バッチ式殺菌などを挙げることが出来る。中でも、UHT殺菌を行った場合、ミックスの粘度が過度に上昇する場合があるが、本発明のホイップクリーム用安定剤を使用した場合は、ミックスの粘度上昇が抑制され、殺菌工程が容易になり、ロスも少なくなる。
【0029】
殺菌後は、再度、均質化(例えば、圧力条件:第一段75kg/cm,第二段25kg/cmなど)を行い、冷却してホイップクリームミックスを調製する。
【0030】
こうして得られたホイップクリームミックスを公知の方法によりホイップ(泡立て)することにより、ホイップクリームを調製することができる。ホイップクリームを調製する際のホイップ方法については、市販の泡立てることができる機械(例えば、工業用攪拌機、ホイッパー、家庭用ハンドミキサー等)を用いて、ホイッピングを行うことができる。
【0031】
本発明のホイップクリームは前記成分以外に、乳製品、甘味料、卵黄、前述以外の安定剤や乳化剤、香料、保存料、酸化防止剤、ビタミン、ミネラル等の添加剤を、本発明の効果に影響を及ぼさない限りにおいて、適宜用いることができる。
【0032】
乳製品としては、牛乳、粉乳、練乳、チーズ類などをあげることができる。
【0033】
甘味料としては、砂糖、果糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴、はちみつ、異性化糖、転化糖、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、テアンデオリゴ糖、大豆オリゴ糖等)、トレハロース、糖アルコール(マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、パラチニット、キシリトール、ラクチトール等)、砂糖結合水飴(カップリングシュガー)、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア抽出物、ステビア末等があげられる。
【0034】
ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、カラギナン以外の安定剤についても、本発明の効果に影響を及ぼさない限りにおいて使用することが出来る。例えば、寒天、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タマリンド種子多糖類、タラガム、グァーガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、プルラン、大豆多糖類、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム、ガティガム、カードラン、ラムザンガム、ウエランガム、サイリウムシードガム、マクロホモプシスガム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、澱粉、加工・化工澱粉等から選ばれる1種以上を選択して用いることができる。
【0035】
また、ショ糖脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、レシチン以外の乳化剤についても、本発明の効果に影響を及ぼさない限りにおいて使用することが出来る。例えば、グリセリン脂肪酸エステル(ジグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル)、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸塩、ユッカ抽出物、サポニン、ポリソルベート等を挙げることができる。
【0036】
なお、本発明に係るホイップクリームは、エアゾール容器に充填後、噴射剤ガスを封入して、エアゾールクリームとすることもできる。例えば、前記ホイップクリームをエアゾール容器に充填し、噴射剤ガスとして、炭酸ガス、窒素ガス、笑気ガス、LPG及びLNG等から選ばれる1種以上を選択して、加圧充填することにより製造することができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例等を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、処方中、特に記載のない限り、「部」は「重量部」を示すものとし、文中「*」印のものは、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、文中「※」印は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標を示す。
【0038】
実施例1:ホイップクリームの調製(1)
1.ホイップクリームミックスの調製
(製法1):熱時溶解法による調製(実施例1,比較例1〜3)
熱水にヒドロキシプロピルセルロースを加え、80℃10分間加熱攪拌溶解してヒドロキシプロピルセルロース溶液を調製した以外は、後述する製法2と同様の方法でホイップクリームミックスを調製した。
【0039】
(製法2):冷時溶解法による調製(実施例2〜5、比較例4〜6)
20℃の水にヒドロキシプロピルセルロース(以下、「HPC」と言う)を加え、加熱せず30分間冷時攪拌溶解する。別に精製ヤシ油に乳化剤を加え、75℃で溶融しておき、前述のヒドロキシプロピルセルロース溶液を加熱しながら、砂糖、脱脂粉乳の粉体混合物を加え、80℃10分間攪拌溶解した後、攪拌しながら、前述の調製したヤシ油溶融物を少しずつ加え、75℃10分間攪拌混合した後、リン酸塩を10%w/v溶液として添加し、全量補正する。得られたミックスを予備均質化(圧力:第一段0kg/cm,第二段0kg/cm)、UHT殺菌(130℃30秒間)を行い、約70℃で取り出した液を均質化(圧力:第一段75kg/cm,第二段25kg/cm)を行い、5℃の流水中に浮かべたステンレスバットに入れ急冷して、ホイップクリームミックスを調製した。
【0040】
2.ホイップテスト
1で得られたホイップクリームミックスを7℃12時間エージングした後、ステンレスボールに7℃のミックスを300g入れ、氷水に浸しながら、ハンドミキサー(ナショナル製、2メモリ)にて、コシが出るまで(最大オーバーランに達するまで)ホイップした。このホイップクリームのオーバーラン(OR)及びホイップに要した時間を測定した。また、このホイップクリームを、絞り出し袋に入れ、星型の口金にて花形を描き、キメ(ホイップした組織の状態を指し、組織が粗いか、細かいかを表わす)、エッジ(花形をかいたときの花形のシャープさを表わす)、艶、離水(1時間放置後の離水の状態)の程度を評価した。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
記号:
◎・・・非常によい。 ○・・・よい。
△・・・やや悪い。 ×・・・悪い。
【0044】
【表3】

【0045】
表2及び表3より、安定剤として、HPC、微結晶セルロース及びカラギナンを使用したホイップクリームは、キメ、エッジ、艶、離水ともに良好であり、中でも、HPC溶液を冷時調製したものはミックスの粘度も低く調製でき、更に良好であった。それに対して、HPC、微結晶セルロース、カラギナンのうち1つでも欠くものは、エッジ、艶が悪くなったり、離水が多くなったり、またミックスの粘度が高くなったりしていた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明により、離水が抑制され、また、艶が付与され、更には「ダレ」が防止され、保形性が良好であるホイップクリームが提供できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース及びカラギナンを含むことを特徴とするホイップクリーム用安定剤。
【請求項2】
更に、ショ糖脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル及びレシチンから選ばれる1種又は2種以上を含む請求項1に記載のホイップクリーム用安定剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のホイップクリーム用安定剤及び油脂を20〜40重量%含むホイップクリーム。
【請求項4】
UHT殺菌処理により殺菌する工程を含む、請求項3に記載のホイップクリームの製造方法。







【公開番号】特開2007−189950(P2007−189950A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−11290(P2006−11290)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】