説明

ホイルの熱可塑性ポリマーへの接着

開示されているのは、エチレン/ブチルアクリレートコポリマー組成物をタイ層として用いて熱可塑性組成物に積層されたホイルを含む、またはそれから製造された多層構造体である。多層構造体は、包装用フィルムおよび工業用フィルムとして有用である。構造体を製造するための積層プロセスも開示されている。更に開示されているのは、構造体を含むパッケージである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイルのエチレン/ブチルアクリレートコポリマーを含む熱可塑性組成物への接着、熱可塑性組成物に積層されたホイルを含む多層構造体、およびこれらの多層構造体を含むパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムホイル(Al)は、水分およびガスバリアとして食品包装産業において広く用いられている。ホイルの耐屈曲亀裂性は劣っていて、気密シールを形成することができず、コストの面からも、紙、ポリエチレン(PE)および配向ポリプロピレン(OPP)のようなその他の材料と多層構造体において組み合わせられるのが一般的である。用途としては、粉末飲料ミックスパウチのような多くの乾燥食品パッケージおよびパッケージ以外の用途が挙げられる。一般的な多層構造体としては、紙/LDPE/Al/LDPEおよびOPP/プライマー/LDPE/Al/LDPEが挙げられる。LDPEは低密度ポリエチレンであり、紙またはOPPは剛性および印刷のための表面を与える。プライマーによって、LDPEがOPP基材に結合され、第1のLDPE層はアルミニウムホイルへの接着を与え、第2はシーリング層として作用する。
【0003】
これらの構造体は、一般的に、押出しコーティングまたは積層により作成され、これは、基材間にポリマーの溶融カーテンを設けて、冷間ロールと接触させる際に、高速で移動させることが含まれる。ポリエチレンのホイルに対する接着は、ポリエチレンの一部が酸化するような高いコーティング温度(300〜330℃)での処理によりなされる。LDPEの酸化によって、アルミニウムホイルに対する適度な接着を与える極性種が作成される。
【0004】
多くの用途において、シール剤としてLDPEのコート層を用いるよりも、LDPEまたはLLDPE(鎖状低密度ポリエチレン)フィルムを用いる。例えば、紙/LDPE/Al/LDPE/PE−フィルムである。PE−フィルムは、LDPEまたはLLDPEであってよいが、一般的にはLLDPE−系である。PEフィルムにはLDPEコーティングに比べて数多くの長所がある。例えば、PE−フィルムはコーティングより厚く作成して、シール界面のコーキングを可能にする。LLDPE−フィルムはより高いシール強度を与える。ブローンフィルムは、良好な強度および引裂き抵抗を有している。ブローンフィルムはより大きな剛性を与える。押出しコーティングよりも遥かに低い温度で処理されたブローンフィルムは、(LDPEの酸化に関連した)味覚および臭気の問題が少ない。
【0005】
LDPEは現在押出し積層に用いられている主流の樹脂である。しかしながら、PE−フィルムをアルミニウムホイルに押出し積層するのにLDPEを用いる重要な問題は、LDPEのアルミニウムホイルへの接着力が経時により「劣化」することである。LDPEのアルミニウムホイルへの接着力は、1週間から数週間の期間にわたるが、始めから僅かしかなく、結合強度は、その用途にもう機能しないレベルまで落ちることが多い。この老化は、LDPEの二次結晶化に関連すると説明される。積層プロセス中、LDPEは非常に即時に冷却されて、一次結晶化はほとんど生じない。経時により、小さな「二次」結晶が形成することがある。PEが結晶化すると、収縮する。収縮によって、結合に応力がかかり、剥離強度が減じる。LDPE−Al結合は、構造体中で最も弱い結合であるため(LDPEのPEフィルムに対する結合は一般的には分離できない)、剥離強度が減じる。
【0006】
ホイルを非極性ポリマー組成物に接着する際、接着剤または「タイ」層として追加のポリマー組成物を用いると有利である。より極性のポリマー材料は、極性の少ない材料よりもより容易にホイルに接着することが多い。しかしながら、ホイルによく接着する極性ポリマーは非極性ポリマーにはよく接着しない。従って、タイ層は、ホイルと非極性ポリマーの両方に接着できる特性の釣り合いを提供するのが好ましい。
【0007】
化学プライマーを用いて非極性基材への接着を促進することがあるが、コストが加わり、溶剤ベースの系に係る環境上の問題が生じる。このように、プライマーを用いない非極性ポリマー組成物へのホイルの接着が望まれている。
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,028,674号明細書
【特許文献2】米国特許第2,897,183号明細書
【特許文献3】米国特許第3,350,372号明細書
【特許文献4】米国特許第3,756,996号明細書
【特許文献5】米国特許第5,532,066号明細書
【特許文献6】米国特許第4,076,698号明細書
【特許文献7】米国特許第3,645,992号明細書
【特許文献8】米国特許第5,198,401号明細書
【特許文献9】米国特許第5,405,922号明細書
【特許文献10】米国特許第3,278,663号明細書
【特許文献11】米国特許第3,337,665号明細書
【特許文献12】米国特許第3,456,044号明細書
【特許文献13】米国特許第4,590,106号明細書
【特許文献14】米国特許第4,760,116号明細書
【特許文献15】米国特許第4,769,421号明細書
【特許文献16】米国特許第4,797,235号明細書
【特許文献17】米国特許第4,886,634号明細書
【特許文献18】米国特許第3,456,044号明細書
【非特許文献1】リチャードT.シュー(Richard T. Chou)、ミミY.キーティング(Mimi Y. Keating)およびレスターJ.ヒューズ(Lester J. Hughes)、「高圧管状プロセスから製造した高可撓性EMA(High Flexibility EMA made from High Pressure Tubular Process)」、年次技術会議(Annual Technical Conference)−プラスチックエンジニア協会(Society of Plastics Engineers)(2002年)、第60回(Vol.2)、1832−1836、CODEN:ACPED4 ISSN:0272−5223;AN2002:572809
【非特許文献2】1973年のアプライドサイエンスパブリッシャーズ社(Applied Science Publishers Ltd)出版のD.C.オールポート(Allport)およびW.H.ジェーンズ(Janes)編「ブロックコポリマー(Block Copolymers)」研究の4.4および4.7章
【非特許文献3】V.アントノフ(Antonov)およびA.スーター(Soutar)1991年、TAPPI PLC会議録(Conference Proceedings)、553頁
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、多層構造体を含む、またはそれから製造される組成物を含む。本構造体は、少なくとも1層のホイルと;少なくとも1層のエチレン/ブチルアクリレートコポリマー組成物と;少なくとも1層の熱可塑性ポリオレフィン組成物と;紙、ポリエステル、ポリアミド、エチレンビニルアルコール、ポリエチレン酢酸ビニル、エチレン/アクリル酸コポリマーまたはそのイオノマー、ポリ塩化ビニリデン、無水物で変性されたエチレンホモ−およびコ−ポリマー、またはこれらの2つ以上の組み合せとを含む任意選択的な少なくとも1つの追加層とを含む、またはそれから製造される。
【0010】
本発明はまた、ホイルの熱可塑性組成物への接着を向上する方法も含む。本方法は、エチレン/ブチルアクリレートコポリマー組成物を、ホイルの層と熱可塑性ポリオレフィン組成物の層の間で押出し等により組み合わせることを含む。
【0011】
本発明はまた、多層構造体を含むパッケージも含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
熱可塑性組成物は、圧力をかけて加熱すると流れるポリマー材料である。メルトインデックス(MI)は、温度および圧力の制御された条件下での専用の毛管を通したポリマーの流れの質量レートである。本明細書で記録されたメルトインデックスは、2160gの重りを用いて190℃でASTM1238に従って求めてある。MIの値はグラム/10分で記録してある。本明細書に記載した熱可塑性組成物は、押出し処理によるフィルムおよび多層構造体の作成に好適である。
【0013】
本明細書で用いる「ホイル」という用語は、金属、特にアルミニウムの薄い可撓性フィルムまたはシートのことを指す。多層構造体の少なくとも一面がアルミニウム層の場合には、少なくとも1つのアルミニウム層が他の材料の追加の層に接着した多層構造体のことも指す。
【0014】
「エチレン/ブチルアクリレートコポリマー」という用語には、エチレンとブチルアクリレートのコポリマーが含まれ、アルキル部分は4つの炭素原子を含有している。「エチレン/ブチルアクリレート(EBAと略記)」とは、エチレン(Eと略記)とブチルアクリレート(BAと略記)のコポリマーのことを意味する。注目すべきは、n−ブチルアクリレートコモノマー(EnBA)から作成されたエチレン/ブチルアクリレートコポリマーである。注目すべきは、i−ブチルアクリレートコモノマー(EiBA)から作成されたエチレン/ブチルアクリレートコポリマーである。
【0015】
エチレン/ブチルアクリレートコポリマーに組み込まれたブチルアクリレートコモノマーの相対量は、原則として、数重量パーセントからコポリマーの合計の40重量パーセントまで、またはそれ以上まで広く変化し得る。エチレン/ブチルアクリレートコポリマー中に存在するブチルアクリレート基の相対量は、結果として得られるエチレンポリマーが、どのように及びどの程度まで極性ポリマー組成物として考えられるかを確定するものと考えることができる。
【0016】
ブチルアクリレートコモノマーの濃度範囲は5〜30重量%、あるいは、7〜27重量%のエチレン/ブチルアクリレートコポリマー、より好ましくは15〜30重量%、あるいは17〜27重量%であるのが好ましい。
【0017】
エチレン/ブチルアクリレートコポリマーは、オートクレーブか管状反応器のいずれかを用いて、ポリマー業界に周知のプロセスにより作成することができる。共重合は、オートクレーブにおける連続プロセスとして進めることができ、エチレン、ブチルアクリレート、任意選択的にメタノールのような溶剤(米国特許公報(特許文献1)を参照)を、開始剤と共に、米国特許公報(特許文献2)に開示されているようなタイプの攪拌オートクレーブに連続的に供給する。添加速度は、重合温度、圧力、コポリマーの目的組成物を得るのに必要な反応混合物中のブチルアクリレートモノマーの濃度のような変数に応じて異なる。場合によっては、分子量を制御するために、プロパンのようなテロゲンを用いるのが望ましい。反応混合物は、オートクレーブから連続的に除去される。反応混合物を反応容器から出した後、コポリマーを未反応モノマーおよび溶剤(溶剤を用いた場合には)から従来の手段により、例えば、非重合材料および溶剤を減圧下で高温にて蒸発させることにより分離する。
【0018】
エチレン/ブチルアクリレートコポリマーを製造する管状反応器は、当業界で一般的に知られているエチレン/ブチルアクリレートを製造する従来のオートクレーブとは区別される。このように、本発明において、エチレン/ブチルアクリレートコポリマーを「製造する管状反応器」という用語または語句は、高圧および高温で管状反応器等において製造されるエチレンコポリマーを意味し、各エチレンおよびブチルアクリレートコモノマーの異なる反応運動の本来の結果は、管状反応器内の反応流路に沿ったモノマーの意図された導入により緩和または部分的に補償される。当業界で一般的に認識されているように、かかる管状反応器共重合技術は、ポリマー主鎖(コモノマーのより固まった状態の分布)に沿って不均一性の、より大きな相対的な程度を有するコポリマーを製造し、分岐した長鎖の存在を減じる傾向があり、高圧攪拌オートクレーブ反応器における同じコモノマー比率で製造されるものより高い融点を有することを特徴とするコポリマーを製造する。エチレン/ブチルアクリレートコポリマーを製造する管状反応器は、通常、エチレン/ブチルアクリレートコポリマーを製造するオートクレーブよりも剛性で弾性がある。
【0019】
この性質のエチレン/ブチルアクリレートコポリマーを製造する管状反応器は、本願特許出願人より市販されている。
【0020】
前述した管状反応器エチレン/ブチルアクリレートコポリマーの実際の製造は、管に沿って反応物質コポリマーを追加投入して、高温高圧管状反応器中で行われるのが好ましく、単に攪拌高温高圧オートクレーブタイプの反応器中では製造されない。しかしながら、同様のエチレン/ブチルアクリレートコポリマー材料は、一連のオートクレーブ反応器中で製造することができ、コモノマーの置換は、米国特許公報(特許文献3)、米国特許公報(特許文献4)、米国特許公報(特許文献5)に開示されている通り、反応物質コモノマーの多数ゾーン導入によりなされ、それ自体これらの高融点材料は等価と考えられる。
【0021】
エチレン/アルキルアクリレートコポリマーを製造する管状反応器とオートクレーブの違いに関する更なる概要については、(非特許文献1)を参照のこと。
【0022】
本発明に用いるのに好適なエチレン/ブチルアクリレートコポリマーは本願特許出願人より入手可能である。本願特許出願人より入手可能なエチレン/ブチルアクリレートコポリマーの具体例については表Aを参照のこと。
【0023】
【表1】

【0024】
本発明に用いることのできるエチレン/ブチルアクリレートコポリマーは、表Aのメルトインデックス範囲により示される通り、分子量が異なる。メルトインデックス(MI)等級のポリマー成分の具体的な選択は、押出し積層におけるEBAの処理性と、ホイルと熱可塑性組成物間の接着力の必要性との釣り合いにより影響され得る。好ましいのは、約4〜約12g/10分のMIを有するエチレン/ブチルアクリレートコポリマーである。注目すべきは、MIがそれぞれ4.3および7.4g/10分のEBA−5およびEBA−6である。
【0025】
本発明に有用なEBA組成物は、任意選択的に、熱および紫外線(UV)安定剤、UV吸収剤、帯電防止剤、処理助剤、蛍光増白剤、顔料、潤滑剤等のような添加剤を更に含んでいてもよい。これらの従来の成分は、ポリマーの接着機能を損なわない限りは、本発明に用いる組成物に、0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%の量で存在してよい。
【0026】
本発明に有用なEBA組成物は、任意選択的に、約1〜約30重量%、好ましくは5〜25重量%、より好ましくは10〜20重量%のポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィンを更に含んでいてもよい。ポリオレフィンをEBA組成物に添加して、ポリオレフィン基材との相容性を改善してもよい。
【0027】
任意選択的にかかる従来の成分を組成物に組み込むことは、公知のプロセスにより実施することができる。この組み込みは、例えば、従来のマスターバッチ技術等により、様々な構成成分の混合物をドライブレンド、または押出すことにより実施することができる。任意選択的なポリオレフィンを、リサイクルプロセスの一部として組み込んでもよい。
【0028】
本発明において用いるのに好適なポリオレフィンは、ポリプロピレンまたはポリエチレンポリマー、およびエチレンまたはプロピレンを含むコポリマーとすることができる。ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)は、周知のチーグラー−ナッタ触媒重合(例えば、米国特許公報(特許文献6)、米国特許公報(特許文献7))、メタロセン触媒重合(例えば、米国特許公報(特許文献8)、米国特許公報(特許文献9))および遊離基重合をはじめとする当業者に公知の手段により作成することができる。当該手段は当業者に周知であることから、簡潔にするためその説明は省く。PEポリマーとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、LLDPE、極低または超低密度ポリエチレン(VLDPEまたはULDPE)およびLDPEのような鎖状ポリエチレンまたは分岐ポリエチレンを挙げることができる。本発明に用いるのに好適なポリエチレンの密度としては、全て公知のPEが含まれ、0.865g/cc〜0.970g/ccである。本発明で用いる鎖状ポリエチレンは、記載された密度範囲内で密度を減少させるために、ブテン、ヘキセンまたはオクテンのようなアルファ−オレフィンコモノマーを組み込むことができる。本明細書で用いるとき、「ポリエチレン」という用語は、上述したエチレンを含む任意または全てのポリマーのことを指すのに総称して用いられる。
【0029】
PPポリマーとしては、プロピレンのホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーおよびターポリマーを挙げることができる。プロピレンのコポリマーとしては、エチレン、1−ブテン、2−ブテンおよび様々なペンテンイソマー等のようなその他のオレフィンとのプロピレンのコポリマーが挙げられ、プロピレンとエチレンのコポリマーが好ましい。プロピレンのターポリマーとしては、エチレンおよび他のオレフィンとのプロピレンのコポリマーが挙げられる。統計的コポリマーとしても知られているランダムコポリマーは、プロピレン対コモノマーの供給比に対応した比率でプロピレンとコモノマーがポリマー鎖全体にランダムに分配されたポリマーである。ブロックコポリマーは、プロピレンホモポリマーからなる鎖セグメントと、例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマーからなる鎖セグメントからできている。本明細書で用いるとき、「ポリプロピレン」という用語は、上述したプロピレンを含む任意または全てのポリマーのことを指すのに総称して用いられる。ブロックコポリマーおよびその製造に関する更なる情報については、特に、(非特許文献2)にある。
【0030】
多層構造体は、押出しコーティングまたは積層を含むプロセスにより製造することができ、冷間ロールと接触する際に高速(例えば、1分当たり約100〜1000フィート、好ましくは1分当たり約300〜800フィート)で動くホイルとポリオレフィンフィルム基材の間でエチレン/ブチルアクリレートコポリマー組成物の溶融カーテンを設けることが含まれる。溶融カーテンは、エチレン/ブチルコポリマー組成物をフラットダイを通して押出すことにより形成することができる。ダイを出るエチレン/ブチルコポリマー組成物の温度は、好ましくは約300〜340℃、最も好ましくは約310〜330℃である。ダイ出口と冷間ロールの間の空隙は一般的には約3〜15インチ、好ましくは約5〜約10インチである。高温であればあるほど、接着力値が高くなり、ポリマーの熱安定性の制限を受ける。遅いラインスピードおよび大きな空隙も接着に有利である。一般的に、ラインスピードで除算した空隙として定義される空隙における時間(TIAG)は、押出し積層における最良の接着のためには約50〜100msでなければならない。(非特許文献3)を参照のこと。ラミネートを冷間ロールで冷却し、約100〜1000フィート/分、好ましくは約300〜800フィート/分のラインスピードで引っ張った。
【0031】
積層プロセスに有用なフィルムは、実質的に当業者に公知の任意の方法により作成することができる。フィルムは、単一層または多層ポリマーフィルムのいずれかとすることができる。このように、フィルムおよびフィルム構造体は、一般的に、様々な手法(例えば、ブローンフィルム、機械的伸張等)による配向(単軸か二軸)をはじめとする鋳造、押出し、共押出し、積層等することができる。様々な添加剤を、タイ層等の存在をはじめとして、各フィルム層に存在させることができる。添加剤は、1つまたは複数の酸化防止剤、熱安定剤、紫外線(UV)安定剤、顔料および染料、フィラー、艶消し剤、滑り止め剤、可塑剤、ブロッキング防止剤、その他処理助剤等とすることができる。
【0032】
フィルムは、公知の方法に従って製造することができる。例えば、一次フィルムは、当業者に周知のいわゆる「ブローンフィルム」または「フラットダイ」法を用いて組成物を押出すことにより製造することができる。ブローンフィルムは、ポリマー組成物を環形ダイを通して押出し、得られた管状フィルムを気流により膨張させて、ブローンフィルムを提供することにより作成した。鋳造フラットフィルムは、組成物をフラットダイを通して押出すことにより作成することができる。ダイから出したフィルムを、内部循環流体を含有する少なくとも1本のロール(チルロール)または水浴により冷却して、鋳造フィルムを提供する。
【0033】
フィルムは、フィルムの即時冷却または鋳造を超えて更に配向させることができる。このプロセスは、溶融ポリマーの層流を押出しする工程と、押出し物を急冷する工程と、急冷した押出し物を少なくとも一方向に配向する工程とを含む。「急冷された」とは、固体フィルム材料を得るためにその融点より実質的に低く冷却された押出し物のことを説明している。
【0034】
フィルムは未配向、単軸方向(例えば、流れ方向)に配向、または二軸方向(例えば、流れ方向と交差方向)に配向することができる。フィルムは、機械的特性と物理的特性の満足いく組み合せを得るために、フィルムの面に互いに垂直な2つの方向に延伸することにより二軸配向されるのが好ましい。
【0035】
フィルムを単軸または二軸伸張するための配向および伸張装置は当業界に公知であり、本発明のフィルムを製造するのに当業者は対応できる。かかる装置およびプロセスとしては、例えば、米国特許公報(特許文献10)、米国特許公報(特許文献11)、米国特許公報(特許文献12)、米国特許公報(特許文献13)、米国特許公報(特許文献14)、米国特許公報(特許文献15)、米国特許公報(特許文献16)、米国特許公報(特許文献17)に記載されているようなものが例示される。
【0036】
ブローンフィルムは、ダブルバブル押出しプロセスを用いて配向される。一次管を押出し、後に冷却、再加熱してから、内部ガス圧力により膨張させて、交差配向を行い、長手方向配向を行う、異なる速度ニップまたは搬送ローラにより延伸することにより同時に二軸配向を行うものである。
【0037】
配向ブローンフィルムを得るための処理は、ダブルバブル技術として当業界に公知であり、米国特許公報(特許文献18)に開示されている通りに実施することができる。一次管は環形ダイから溶融押出しすることができる。結晶化を最小にするために、この押出された一次管を即時に冷却することができる。次に、配向温度まで加熱する(例えば、水浴により)。フィルム製造ユニットの配向ゾーンにおいて、膨張により二次管を形成して、フィルムを放射状に交差方向に膨張させ、膨張が両方向に、好ましくは同時に生じるような温度で流れ方向に引っ張る、または伸張する。管の膨張は、延伸点で厚さの鋭い、急な減少を伴う。管状フィルムをニップロールを通して再び平坦化する。フィルムを再膨張させアニール工程(熱定着)を通過させることができ、この工程でもう一度加熱して、収縮特性を調整する。
【0038】
一実施形態において、フィルムは、押出しプロセスにより形成されて、フィルム中のポリマー鎖が押出し方向に概して配列される。高単軸配向後、直鎖ポリマーの、配向方向の強度は大きいが、交差方向の強度は小さい。この配列によって、押出し方向のフィルムに強度が加わる。
【0039】
本発明に用いるフィルムは、コロナ放電、オゾンまたは当業界で標準的なその他手段により処理してもよい。ただし、EBA接着層に良好な接着力を得るために処理が必要なわけではない。フィルムは、接着層としてEBA組成物を用いてホイルのような基材に積層されて、本発明の多層構造体を提供する。多層構造体の接着力は、一般的に、EBA層の厚さを増大することにより改善される。EBA層の厚さは、好ましくは約10〜40ミクロン、最も好ましくは約15〜30ミクロンの厚さである。
【0040】
多層構造体は、(a)少なくとも1層のホイルと;(b)少なくとも1層のエチレン/ブチルアクリレートコポリマー組成物と;(c)少なくとも1層の熱可塑性ポリオレフィン組成物と;任意選択的に(d)紙、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル、ポリアミド、ポリエチレンビニルアルコール、ポリエチレン酢酸ビニル、エチレン/アクリル酸コポリマーおよびそのイオノマー、ポリ塩化ビニリデンおよび無水物で変性されたエチレンホモ−およびコ−ポリマーからなる群より選択される材料とを含む。
【0041】
多層構造体は、上述した通りにして作成することができ、ホイル含有基材(例えば、積層または押出しコーティングにより作成されたもの)は、EBAコポリマー組成物を接着層として用いてポリオレフィンを含むフィルムに接着する。ホイル含有基材、ポリオレフィンを含むフィルム(または両方)は多層構造体であってもよい。
【0042】
注目すべきは、配向ポリエステル(特にポリエチレンテレフタレート)を含む層と、エチレン/アクリル酸コポリマーを含む層と、ホイルを含む層と、エチレン/ブチルアクリレートコポリマー組成物を含む層と、ポリエチレンを含む層とを含む多層構造体である。さらに注目すべきは、ホイルを含む層と、エチレン/ブチルアクリレートコポリマー組成物を含む層と、ポリプロピレンを含む層とを含む多層構造体である。
【0043】
本明細書に開示した多層構造体は、包装用途または包装材料として有用である。工業用フィルム(例えば、絶縁シートにおける構造コンポーネントとして)として用いてもよい。
【0044】
包装材料はまた、これらに限られるものではないが、例えば、印刷、エンボス加工および/または着色により更に処理して、包装材料を提供して、製品についての情報を消費者に与えたり、かつ/またはパッケージの外観を快いものとしてもよい。
【0045】
包装材料は、当業界に周知の標準的な方法によりパウチのようなパッケージへ形成してもよい。従って、本発明は、上述した多層構造体を含むパッケージを提供する。
【0046】
以下の実施例は単なる例証にすぎず、記載した本発明の範囲および/または請求の範囲を制限するものとは解釈されない。
【実施例】
【0047】
(ラミネートを作成するのに用いる一般手順)
押出し積層プロセスを用いてラミネートを作成した。基材Aを、接着層Bを用いて基材Cと組み合わせた。
【0048】
(基材A)
実施例1〜8において、基材Aは配向ポリエステル(OPET)およびアルミニウムホイルのラミネートであった。7重量%AA/9−ミクロンのアルミニウムホイルを備えた13−ミクロンのOPET/19−ミクロンのエチレン/アクリル酸(E/AA)コポリマー。OPETは、デュポン帝人フィルム(DuPont Teijin Films)製メリネックス(Melinex)(登録商標)7100であった。(E/AA)コポリマーは、ニュクレル(Nucrel)(登録商標)30707、本願特許出願人製の7%AAを含むエチレンアクリル酸コポリマーであった。直径4.5−インチ、長さ126−インチの単軸押出し機(出口温度321℃)を用いて、321℃、背圧500psigで操作される、30−ミルのギャップを有する幅40−インチ(29インチまでインナーデッケル)クローレン(Cloeren)エッジビーズ縮径ダイによりER−WE−PAブロックを通してE/AAコポリマーを押出して、ホイルとOPET層の間に設けられた19−ミクロンの厚さの層を形成することにより、基材Aを作成した。ダイプラグおよびブレード設定は夫々2.25と1.5インチであった。ダイ出口とニップ(押出し物がホイルおよびOPETフィルムと接触する)の間の空隙は8インチであった。組み立て品を10℃で操作されたチルロールに通過させた。ラインスピードは1分当たり500フィートであった。
【0049】
(接着層B)
後述の実施例で積層接着層Bに用いる樹脂を表1にまとめてある。MAはメチルアクリレート、EAはエチルアクリレート、BAはブチルアクリレート、AAはアクリル酸を表す。樹脂eおよびfは、本発明の多層構造体を作成するために本発明による積層プロセスに用いたEBA樹脂であった。樹脂aは、本発明により用いるEBA/PE組成物を形成するために(または比較例の接着組成物として用いる)、EBA樹脂とブレンド可能なポリエチレン組成物であった。表1に挙げたその他の樹脂は比較例の作成のために用いた。
【0050】
【表2】

【0051】
(基材C)
基材Cは、ブテンLLDPE(ノヴァ(Nova)製スクレイア(Sclair)11E1)80%および高圧LDPE(ノヴァ(Nova)製ノヴァポール(Novapol)LF−0219A)20%でできた厚さ50μのポリエチレンブローンフィルムであった。フィルムは、直径8−インチのビクター(Victor)ダイでヴェレックス(Welex)ブローンフィルムラインで製造した。引取速度は1分当たり38フィート、フロストライン高さは26インチ、ブローアップ比は2.7、レイフラットは34インチであった。ダイギャップは1/15000インチであった。処理温度は210℃であった。
【0052】
ラミネートA/B/Cは、直径4.5−インチ、長さ126−インチの単軸押出し機を用いて接着ポリマーを押出すことにより作成した。押出し機からの押出し物は、ブレードを1.5インチにセットし、プラグを2.25インチにセットして、30−ミルのギャップを有する幅40−インチ(29インチまでインナーデッケル)クローレン(Cloeren)エッジビーズ縮径ダイによりER−WE−PAフィードブロックを通して流れた。接着層Bを基材AとCの間に設けて、基材Aのホイル層と接触するようにした。
【0053】
(実施例で用いた試験)
剥離強度:幅1インチのストリップを、ラミネートの中心近くから流れ方向に切断した。特に断りのない限り、層をA−B界面で分離し、分離速度12インチ/分で「T−剥離」構成において室温にて引張り試験機で引っ張った。幅で除算した、層を分離するのに必要な平均の力を剥離強度として記録した。与えられた平均値(表中の値は、10の位で四捨五入し、5で終わる値は切り上げた)と共に5つの個別の判定を平均した。標準偏差(Std)も記録した。ASTM F904を参照のこと。構造体を製造する4時間以内でグリーン剥離強度を測定した。同じ試料での剥離強度を、50%の相対湿度、23℃の制御された環境で1、4および6週間貯蔵した後に再び測定した。
【0054】
表2〜5に記した不合格モードは以下の記述によって分類した。
P=基材からきれいに剥離する。
LS=B/Cフィルム層が分離する。
E=基材から引っ張ると、剥離アームが伸びる。
D=C層がB層から剥がれ、BはA層に留まる。
FT=ホイルが裂ける。
【0055】
(実施例1、比較例C1〜C3)
押出し機出口温度321℃、空隙8インチ、ラインスピード500フィート/分、チルロール温度10℃、リードイン−0.6インチ、ニップ圧60psigを用いてラミネートA/B/Cを作成した。幅740mmにわたるニップとチルロールの接触は、約13〜約15mmであった。層Bの厚さは約0.6〜約0.8ミルであった。
【0056】
【表3】

【0057】
(実施例2〜4、比較例C4〜C9)
押出し機出口温度321℃、空隙8インチ、ラインスピード500フィート/分、チルロール温度10℃、リードイン−0.5インチ、ニップ圧60psigを用いてラミネートA/B/Cを作成した。幅740mmにわたるニップとチルロールの接触は、約13〜約15mmであった。層Bの厚さは約0.6〜約0.8ミルであった。
【0058】
【表4】

【0059】
(実施例5〜8:押出し温度の影響)
層B用の樹脂f、空隙8−インチ、ラインスピード500フィート/分、チルロール温度10℃、リードイン−0.5インチ、ニップ圧60psigを用いてラミネートA/B/Cを作成した。幅740mmにわたるニップとチルロールの接触は、約13〜約15mmであった。層Bの厚さは約0.6〜約0.8ミルであった。押出し温度は約545〜約326℃で変えた。
【0060】
【表5】

【0061】
(実施例9および10:アルミニウムホイルおよびBOPPの積層)
実施例9および10において、基材Aは厚さ30−ミクロンのアルミニウムホイルであり、接着ポリマー層Bは樹脂fであり、基材Cは二軸配向ポリプロピレン(エクソンモービル(ExxonMobil)製BOPP、等級17MB400)であった。樹脂fは、直径3.5−インチの押出し機で、溶融温度330℃で押出した。イーガン(Egan)フィードブロックおよびアウターデッケルのT−スロットダイを通して供給した。ダイギャップは0.7mm、ダイ幅は720mmであった。チルロール温度は12℃、空隙は150mm、ラインスピードは100メートル/分であった。ニップにかかった力は5.4N/mであった。コロナ処理は4.5kWの出力に設定した。
【0062】
【表6】

【0063】
表1〜5の剥離強度データを見ると、ポリオレフィンに対するホイルの積層において接着層としてエチレン/ブチルアクリレートコポリマーを用いると、非常に良好な接着力を与え、この接着力が経時にわたって維持されたということが分かる。
【0064】
(実施例11)
基材Aは、実施例1〜8に開示したのと同じOPET/ニュクレル(Nucrel)/ホイルラミネートであった。接着層Bは表1から「f」であった。基材Cは、東レプラスチックス(Toray Plastics)(等級Y177)日本製の0.7−ミルのOPPフィルムであった。ラミネートA/B/Cを、実施例1〜8に開示した通りにして作成した。具体的な処理条件は、324℃のコーティング温度、400フィート/分のラインスピード、6−インチの空隙、10℃のチルロール温度、60psigのニップ圧、−0.5−インチのリードインであった。
【0065】
剥離強度測定は、1週間〜4週間でグリーンでなされた。ホイルまたはOPPへの剥離は開始できず、これは、接着強度がOPPの引裂き強度を超えていることを示していた。
【0066】
(実施例12および13)
基材Aは2−ミルのアルミニウムホイルであった。基材Bは表1から「f」であった。基材Cは、片側がコロナ処理され、もう一方の側は未処理のアプライドエクストルージョンテクノロジー(Applied Extrusion Technologies)(等級B602)製の0.6−ミルのOPPフィルムであった。ラミネートA/B/Cを、実施例1〜8に記載した通りにして作成した。具体的な処理条件は、321℃のコーティング温度、500フィート/分のラインスピード、8−インチの空隙、10℃のチルロール温度、60psigのニップ圧、−0.5−インチのリードインであった。結果を表6に示す。実施例12の第2の基材は処理済OPPであり、実施例13は未処理OPPであった。
【0067】
【表7】

【0068】
層Bと層C(タイ層とOPP)の間の剥離強度を測定しようとしたが、剥離が開始されなかった。これは、接着強度がOPPの引裂き強度を超えていたことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層のホイル、好ましくはアルミニウムホイルと;好ましくは1〜30重量%のポリオレフィンを含む少なくとも1層のエチレン/ブチルアクリレートコポリマー組成物と;好ましくはポリエチレン、ポリプロピレンまたはその両方である少なくとも1層の熱可塑性ポリオレフィンと;紙、ポリエステル、ポリアミド、エチレンビニルアルコール、ポリエチレン酢酸ビニル、エチレン/アクリル酸コポリマーまたはそのイオノマー、ポリ塩化ビニリデン、無水物で変性されたエチレンポリマー、またはこれらの2つ以上の組み合せとを含む、またはそれから製造された任意選択的な少なくとも1つの追加層とを含む、またはそれから製造されたことを特徴とする多層構造体。
【請求項2】
少なくとも1つの追加層を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の多層構造体。
【請求項3】
前記エチレン/ブチルアクリレートコポリマーが管状反応器で生成されることを特徴とする請求項1または2に記載の多層構造体。
【請求項4】
前記ホイルがアルミニウムホイルであることを特徴とする請求項1、2または3に記載に多層構造体。
【請求項5】
請求項1、2、3または4に記載の多層構造体を含む、またはそれから製造されたことを特徴とするパッケージ。
【請求項6】
パウチに形成されたことを特徴とする請求項5に記載のパッケージ。
【請求項7】
エチレン/ブチルアクリレートコポリマー組成物をホイルの層と熱可塑性ポリオレフィン組成物の層との間で組み合わせる、または押出す工程を含む方法であって、それによって、請求項1、2、3または4に記載の多層構造体を製造することを特徴とする方法。

【公表番号】特表2007−510558(P2007−510558A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535403(P2006−535403)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/034347
【国際公開番号】WO2005/037539
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】