説明

ホウ化物単結晶の製造方法および基板

【課題】FZ法によって、現状よりも結晶性に優れたホウ化物単結晶を製造することができる新規な製造方法と、前記製造方法によって製造された、特に、GaN系半導体層等の半導体層をエピタキシャル成長させるのに適した基板とを提供する。
【解決手段】製造方法は、ホウ化物のもとになるホウ素と金属元素とを含む原料粉末によって形成した原料棒6の、長さ方向の一端に、前記ホウ化物の化学量論比組成よりもホウ素過剰の初期溶融領域9を設け、前記初期溶融領域9を、加熱により溶融させて溶融帯を形成し、前記溶融帯を、原料棒6の、長さ方向の他端へ向けて移動させることで、前記原料棒6の、溶融帯が通過した後の領域に、FZ法によってホウ化物単結晶を成長させる。基板は、前記製造方法によって製造されたホウ化物単結晶からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホウ化物単結晶を製造するための製造方法と、前記製造方法によって製造されたホウ化物単結晶からなり、特に、GaN系半導体層等の半導体層をエピタキシャル成長させるために適した基板とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
GaNやAlxGa1-xN(xは0<x≦0.5)等の、GaN系の半導体は、特に、青色ないし紫外域の光を発光する半導体発光ダイオードや半導体レーザ等の、発光素子の形成材料として有用であることから、実用化に向けての研究が広く行われている。しかし、GaN系の半導体は、融点が高いことや、平衡蒸気圧の高い窒素が、加熱時に、組成中から失われやすいことから、引き上げ法等による、バルク単結晶の製造が困難である。
【0003】
そこで、前記基板の主面上に、低温堆積緩衝層を形成した上に、GaN系半導体層をエピタキシャル成長させたり、前記GaN系半導体層を、選択横成長法(ELO:Epitaxial Lateral Overgrowth)や、ファセット制御ELO法(Facet Controlled ELO)等の成長法によって、エピタキシャル成長させたりすることが試みられている(非特許文献1〜3参照)。これらの方法によれば、GaN系半導体層の転位密度を、ある程度は、低減することができる。しかし、GaN系半導体層を含む、発光素子等の半導体装置の製造コストが高くつく上、再現性が十分でない等の問題があり、未だ実用化に至っていないのが現状である。
【0004】
そこで、近時、格子定数の差が、従来の、サファイア等からなる基板に比べて小さい、ZrB2単結晶からなる基板を用いて、前記基板の主面上に、GaN系半導体層をエピタキシャル成長させることが検討されている(特許文献1、2参照)。ZrB2単結晶の、GaN系半導体層との格子ミスマッチは0.56%と小さいため、前記ZrB2単結晶からなる基板を用いれば、転位密度が著しく小さい、良好なGaN系半導体層を形成できるものと期待されている。
【0005】
ZrB2単結晶からなる基板は、フローティングゾーン法(FZ法)によって製造することができる。例えば、高周波誘導加熱を利用したFZ法(RF−FZ法)の詳細は、前記特許文献2や、あるいは特許文献3において説明されている。すなわち、RF−FZ法によって、ZrB2単結晶からなる、半導体層成長用の基板を製造するには、まず、前記ZrB2単結晶のもとになる、1種または2種以上の原料粉末を棒状に成形し、焼結して、原料棒を作製する。次に、前記原料棒の、長さ方向の一端に、結晶成長の起点となる種結晶を接続した状態で、前記原料棒のうち、前記一端側の、長さ方向の一定幅の領域を、高周波誘導加熱によって溶融させて溶融帯を形成する。
【0006】
次に、前記溶融帯を、原料棒の他端側へ向けて、徐々に移動させて行くと、溶融帯が通過した後の領域において、種結晶を起点として、結晶が成長して、棒状のZrB2単結晶が製造される。この後、製造された棒状のZrB2単結晶を、所定の結晶方位に切削すると、ZrB2単結晶からなる半導体層成長用の基板が得られる。
【非特許文献1】「AlGaN系紫外発光素子における転位密度と発光効率」〔天野浩他、日本結晶成長学会誌、第29巻第3号(2002)、第12頁〜第17頁〕
【非特許文献2】「III族窒化物半導体」(赤崎勇著、培風舘、1999年12月8日、初版発行、第122頁〜第124頁)
【非特許文献3】「白色LED照明システムの高輝度化・高効率化・長寿命化技術」(三宅秀人著、技術情報協会、2003年3月27日、第1版第1刷発行、第65頁〜第72頁)
【特許文献1】特開2002−043223号公報(請求項1、2、段落[0016]〜[0017])
【特許文献2】特開2002−348200号公報(請求項1〜4、段落[0009]〜[0010])
【特許文献3】特開平10−095699号公報(請求項1、段落[0003]、[0008]〜[0013]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来のFZ法で製造したZrB2単結晶は、その転位密度が107/cm2以上、結晶の(0002)面における、X線反射率法によるX線反射率曲線の半値幅が200秒以上と高いことから、結晶性が不十分であることが判っている。また、製造される単結晶の結晶性が不十分になる問題は、ZrB2単結晶以外の、他の、ホウ素と金属元素とからなるホウ化物単結晶を、FZ法で製造する場合にも、共通して発生している。
【0008】
FZ法によって製造される、ZrB2単結晶等の、ホウ化物単結晶の結晶性が低下する主な原因としては、ジルコニウム等の、ホウ素と共にホウ化物を形成する金属元素の融点が、前記ホウ素の融点よりも高いことから、溶融帯の溶融を維持して凝固を防止するために、前記溶融帯を、高温に加熱する必要がある上、ホウ素の飽和蒸気圧が、金属元素の飽和蒸気圧よりも高いため、ホウ素が、前記高温に加熱された溶融帯から、揮発して失われやすいことが挙げられる。
【0009】
すなわち、FZ法によってホウ化物単結晶を製造する際には、ホウ素と金属元素との比率を、ホウ化物の化学量論比組成に一致させた原料棒を用いるのが一般的である。しかし、前記原料棒を使用して、FZ法によってホウ化物単結晶を製造する操作を行う際には、溶融帯の溶融状態を維持するために、前記溶融帯を高温に加熱する必要がある。
そして、高温に加熱された溶融帯から、ホウ素が揮発してホウ素の欠乏が促進されやすいため、製造されるホウ化物単結晶に、ホウ素欠陥や金属元素の析出等の欠陥が、数多く発生する結果、ボイド状欠陥や転位、結晶粒界等の、巨視的な欠陥が多発して、結晶性が低下するのである。
【0010】
本発明の目的は、FZ法によって、現状よりも結晶性に優れたホウ化物単結晶を製造することができる新規な製造方法と、前記製造方法によって製造された、特に、GaN系半導体層等の半導体層をエピタキシャル成長させるのに適した基板とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ホウ化物のもとになるホウ素と金属元素とを含む原料粉末によって形成した原料棒から、フローティングゾーン法によって、ホウ化物単結晶を製造するためのホウ化物単結晶の製造方法であって、前記原料棒の、長さ方向の一端に、前記ホウ化物の化学量論比組成よりもホウ素過剰の原料粉末によって形成した初期溶融領域を設け、前記初期溶融領域を、加熱により溶融させて、前記長さ方向に一定の長さを有する溶融帯を形成する工程と、前記溶融帯を、前記初期溶融領域から、原料棒の、長さ方向の他端へ向けて、前記長さ方向に沿って移動させることで、前記原料棒の、溶融帯が通過した後の領域に、ホウ化物単結晶を成長させる工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
前記本発明の製造方法において、ホウ化物の化学量論比組成よりもホウ素過剰の原料粉末によって形成した初期溶融領域を、加熱により溶融させて形成される溶融帯は、ホウ素の融点が、前記ホウ素と共にホウ化物を形成する金属元素の融点よりも低いため、従来の、化学量論比組成に一致させた原料棒を溶融させて形成される溶融帯に比べて、より低温で、溶融状態を維持することができる。
【0013】
そのため、溶融帯の温度を、従来に比べて低めに設定して、溶融帯からホウ素が揮発するのを抑制することができ、先に説明したように、初期溶融領域において、本来的に、ホウ素が過剰の状態とされていることと相まって、前記溶融帯が通過した後の領域に成長するホウ化物単結晶において、ホウ素が欠乏するのを、抑制することができる。
したがって、本発明の製造方法によれば、前記ホウ素の欠乏によって発生する、ホウ素欠陥や金属元素の析出等の欠陥が少ないため、ボイド状欠陥や転位、結晶粒界等の、巨視的な欠陥が発生するのが抑制された、結晶性に優れたホウ化物単結晶を製造することが可能となる。
【0014】
なお、本発明においては、前記初期溶融領域だけでなく、原料棒自体をも、ホウ化物の化学量論比組成よりもホウ素過剰の原料粉末によって形成するのが好ましい。原料棒を、前記原料粉末によって形成した場合には、先に説明した、溶融帯の温度を、従来に比べて低めに設定して、溶融帯からホウ素が揮発するのを抑制する効果を向上できるため、初期溶融領域および原料棒が、共に、本来的に、ホウ素が過剰の状態とされていることと相まって、前記溶融帯が通過した後の領域に成長するホウ化物単結晶において、ホウ素が欠乏するのを、より一層、確実に、抑制することができる。したがって、より一層、結晶性に優れたホウ化物単結晶を製造することができる。
【0015】
本発明は、ホウ化物として、式(1):
MB2 (1)
〔式中、MはZr、Ti、Cr、Hf、およびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属元素を示す〕
で表されるホウ化物、特に、先に説明したように、GaN系半導体層の形成に適した基板を形成することができる、ZrB2を含むホウ化物単結晶を製造するために、好適に適用することができる。
【0016】
前記本発明の製造方法において、式(1)で表されるホウ化物を含むホウ化物単結晶を製造する際には、原料棒を、式(1)で表されるホウ化物を構成するホウ素と金属元素とを含み、かつ前記ホウ素と金属元素の総量中の、ホウ素の含有割合[B1]が、[B1]=67〜72モル%である原料粉末によって形成するのが好ましい。
含有割合[B1]が、前記範囲未満、つまり、化学量論比組成よりもホウ素が少ない場合には、溶融帯を、原料棒の他端方向に向けて移動させて行く間に、前記溶融帯が、徐々に、ホウ素欠乏状態に移行して行くことになるため、溶融帯の溶融を維持できる温度が徐々に上昇して、最終的に凝固してしまい、ホウ化物単結晶の製造を継続できなくなるおそれがある。
【0017】
また、溶融帯の溶融を維持するため、前記温度の上昇に合わせて、加熱の温度を上昇させた場合には、溶融帯から揮発するホウ素の量が増加するため、前記溶融帯が通過した後の領域に成長するホウ化物単結晶において、ホウ素が欠乏して、製造されるホウ化物単結晶の結晶性が悪化するおそれがある。
また、含有割合[B1]が、前記範囲を超える場合には、ホウ素過剰の状態となって、溶融帯が通過した後の領域に成長するホウ化物単結晶中に、ホウ素が析出しやすくなる。そのため、製造されるホウ化物単結晶の結晶性が、却って、悪化するおそれがある。また、溶融帯が軟らかくなりすぎて、途中で垂下してしまって、ホウ化物単結晶の製造を継続できなくなるおそれもある。これに対し、ホウ素の含有割合[B1]が、前記範囲内であれば、製造されるホウ化物単結晶の結晶性を、さらに向上することができる。
【0018】
また、本発明の製造方法において、先に説明した、式(1)で表されるホウ化物を含むホウ化物単結晶を製造する際には、初期溶融領域を、前記式(1)で表されるホウ化物を構成するホウ素と金属元素とを含み、かつ前記ホウ素と金属元素の総量中の、ホウ素の含有割合[B2]が、[B2]=72〜90モル%である原料粉末によって形成するのが好ましい。含有割合[B2]が、前記範囲未満では、初期溶融領域を設けると共に、前記初期溶融領域を、加熱により溶融させて、溶融帯を形成することによる、先に説明した本発明の効果が、十分に得られなくなるおそれがある。
【0019】
つまり、溶融帯の温度を、従来に比べて低めに設定して、溶融帯からホウ素が揮発するのを抑制すると共に、初期溶融領域を、本来的にホウ素が過剰の状態とすることによって、前記溶融帯が通過した後の領域に成長するホウ化物単結晶において、ホウ素が欠乏するのを抑制して、製造されるホウ化物単結晶の結晶性を向上する効果が、十分に得られなくなるおそれがある。
【0020】
また、含有割合[B2]が、前記範囲を超える場合には、ホウ素過剰の状態となって、溶融帯が通過した後の領域に成長するホウ化物単結晶中に、ホウ素が析出しやすくなるため、製造されるホウ化物単結晶の結晶性が、却って、悪化するおそれがある。これに対し、ホウ素の含有割合[B2]が、前記範囲内であれば、製造されるホウ化物単結晶の結晶性を、さらに向上することができる。
【0021】
本発明の製造方法によって製造される、式(1)で表されるホウ化物を含むホウ化物単結晶は、前記式(1)で表されるホウ化物を構成するホウ素と金属元素の総量中の、ホウ素の含有割合[B3]が、[B3]=66.4〜67モル%であるのが好ましい。含有割合[B3]が、前記範囲未満では、金属元素の析出量が多くなり、逆に、前記範囲を超える場合には、ホウ素の析出量が多くなるため、前記いずれの場合にも、ホウ化物単結晶は、ボイド状欠陥や転位、結晶粒界等の、巨視的な欠陥が多発した、結晶性の悪いものとなるおそれがある。これに対し、ホウ素の含有割合[B3]が、前記範囲内であれば、ホウ化物単結晶は、ボイド状欠陥や転位、結晶粒界等の、巨視的な欠陥が発生するのが抑制された、結晶性に優れたものとなる。
【0022】
また、ボイド状欠陥や転位、結晶粒界等の、巨視的な欠陥が発生するのが抑制された、結晶性に優れたホウ化物単結晶を製造することを考慮すると、先に説明した、原料棒を形成する原料粉末におけるホウ素の含有割合[B1]と、初期溶融領域を形成する原料粉末におけるホウ素の含有割合[B2]と、製造されるホウ化物単結晶におけるホウ素の含有割合[B3]とは、式(2):
[B2]≧[B1]≧[B3] (2)
を満足する範囲、中でも式(3):
[B2]≧[B1]>[B3] (3)
を満足する範囲、特に式(4):
[B2]>[B1]>[B3] (4)
を満足する範囲に調整するのが好ましい。
【0023】
本発明の製造方法において使用する原料棒と、初期溶融領域とは、それぞれのもとになる原料粉末を用いて、一体に成形して焼成することによって一体に形成して、ホウ化物単結晶の製造に使用しても良いし、両者を別体に形成すると共に、原料棒の一端に、初期溶融領域を接触させた状態で、ホウ化物単結晶の製造に使用してもよい。
本発明は、表面に半導体層を成長させるための基板であって、前記本発明の製造方法によって製造されたホウ化物単結晶からなることを特徴とする。前記本発明の基板は、本発明の製造方法によって製造された、ボイド状欠陥や転位、結晶粒界等の、巨視的な欠陥が発生するのが抑制された、結晶性に優れたホウ化物単結晶を、所定の結晶方位に切削する等して形成されているため、その表面に、転位密度の小さい、良好な、GaN系半導体層等の半導体層を成長させることが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、FZ法によって、現状よりも結晶性に優れたホウ化物単結晶を製造することができる新規な製造方法と、前記製造方法によって製造された、特に、GaN系半導体層等の半導体層をエピタキシャル成長させるのに適した基板とを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、フローティングゾーン法によって、ホウ化物単結晶を製造するに際し、ホウ化物のもとになるホウ素と金属元素とを含む原料粉末によって形成した原料棒の、長さ方向の一端に、前記ホウ化物の化学量論比組成よりもホウ素過剰の原料粉末によって形成した初期溶融領域を設け、前記初期溶融領域を、加熱により溶融させて溶融帯を形成すると共に、前記溶融帯を、原料棒の、長さ方向の他端へ向けて移動させることで、前記原料棒の、溶融帯が通過した後の領域に、ホウ化物単結晶を成長させることを特徴とする。
【0026】
原料棒としては、製造するホウ化物単結晶のもとになるホウ化物や、ホウ素、金属元素等を含む原料粉末を、圧縮成形等の任意の成形方法によって棒状に成形し、ホウ素の融点(約2300℃)未満の温度に加熱して焼結させたもの等を用いることができる。
また、原料棒としては、先に説明したように、ホウ化物の化学量論比組成よりもホウ素過剰の原料粉末によって形成したものを用いるのが好ましく、例えば、ホウ化物が、先に説明したように、GaN系半導体層をエピタキシャル成長させるのに適したZrB2等の、式(1):
MB2 (1)
〔式中、MはZr、Ti、Cr、Hf、およびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属元素を示す〕
で表されるホウ化物である場合には、前記ホウ素と金属元素の総量中の、ホウ素の含有割合[B1]が、[B1]=67〜72モル%である原料粉末によって形成するのが好ましい。
【0027】
また、初期溶融領域としては、前記ホウ化物の化学量論比組成よりもホウ素過剰の原料粉末を、同様に、圧縮成形等の任意の成形方法によって成形し、ホウ素の融点未満の温度に加熱して焼結させたもの等を用いることができる。特に、ホウ化物が、前記式(1)で表されるホウ化物である場合には、前記ホウ素と金属元素の総量中の、ホウ素の含有割合[B2]が、[B2]=72〜90モル%である原料粉末によって、初期溶融領域を形成するのが好ましい。
【0028】
また、本発明の製造方法で製造されるホウ化物単結晶は、ホウ化物が、式(1)で表されるホウ化物である場合、前記ホウ素と金属元素の総量中の、ホウ素の含有割合[B3]が、[B3]=66.4〜67モル%であるのが好ましい。さらに、前記各含有割合[B1]〜[B3]は、式(2):
[B2]≧[B1]≧[B3] (2)
を満足する範囲、中でも式(3):
[B2]≧[B1]>[B3] (3)
を満足する範囲、特に式(4):
[B2]>[B1]>[B3] (4)
を満足する範囲に調整するのが好ましい。これらの理由は、先に説明したとおりである。
【0029】
原料棒や初期溶融領域を形成する原料粉末における、ホウ素の含有割合を、前記範囲に調整するためには、例えば、原料粉末として、所定の化学量論比組成を有するホウ化物に、ホウ素を加えたものを使用したり、ホウ素と金属元素とを、前記含有割合となるように配合したものを使用したりすればよい。
また、製造されるホウ化物単結晶における、ホウ素の含有割合を、前記範囲に調整するためには、先に説明した、原料棒や初期溶融領域を形成する原料粉末における、ホウ素の含有割合を、前記範囲内で調整したり、フローティングゾーン法を実施する際の、雰囲気ガスの圧力や、溶融帯の温度、移動速度等を調整したりすればよい。
【0030】
本発明の、ホウ化物単結晶の製造方法は、前記初期溶融領域を設けて、ホウ素の含有割合を調整すること以外は、従来同様に実施することができる。図1は、本発明のホウ化物単結晶の製造方法を実施するための、単結晶育成装置の一例の、内部構造を示す断面図である。また、図2は、図1の単結晶育成装置を使用して、本発明のホウ化物単結晶の製造方法を実施している途中の状態を示す断面図である。
【0031】
図1を参照して、この例の単結晶育成装置1は、
耐圧容器2と、
軸方向を、鉛直方向(図1において上下方向)に向けた状態で、耐圧容器2の上方から内部へ貫通させて、その下端を、前記耐圧容器2内に突出させた駆動軸3と、
同じく軸方向を鉛直方向に向けると共に、軸線を、前記駆動軸3の軸線と一致させた状態で、耐圧容器2の下方から内部へ貫通させて、その上端を、前記耐圧容器2内に突出させた駆動軸4と、
略環状に形成され、耐圧容器2内に、両駆動軸3、4と同軸となるように配設された誘導コイル5と、
を備えている。
【0032】
前記各部のうち、駆動軸3、4は、それぞれ、耐圧容器2の気密を維持しながら、前記耐圧容器2外に配設された、図示しない駆動装置によって、個別に、図中に実線の矢印で示すように、それぞれの軸線を中心として回転しながら、軸方向に上下動できるように設けられている。なお、図1では、両駆動軸3、4を、軸線を中心として、同方向に回転させるように矢印の向きを記載しているが、互いに逆方向に回転させることも可能である。
【0033】
図1の単結晶育成装置1を用いて、本発明の製造方法を実施するためには、まず、駆動軸3の下端に、前記下端からさらに下方に向けて、ホウ化物を含む原料粉末によって棒状に形成した原料棒6を、前記駆動軸3と、軸方向および軸線を一致させた状態で保持させると共に、駆動軸4の上端に、スペーサ7を介して、結晶成長の開始点として機能する種結晶8を保持させる。
【0034】
なお、種結晶8は、必要最小限の厚みがあればよいことから、図1では、前記種結晶8を、駆動軸4の上端に保持させやすくすると共に、誘導加熱時の熱が、前記駆動軸4に直接に伝わるのを防止すために、種結晶8を、スペーサ7を介して、駆動軸4の上端に保持させているが、種結晶8は、スペーサ7を介さずに、直接に、駆動軸4の上端に保持させてもよい。スペーサ7としては、ホウ化物の溶融温度に耐えることができる、任意の耐熱材料からなるものが使用可能であるが、特に、製造されるホウ化物単結晶の組成に影響を及ぼさないことを考慮すると、ホウ化物の焼結体が好ましい。
【0035】
原料棒6の、長さ方向の一端(図1では下端)には、前記ホウ化物の化学量論比組成よりもホウ素過剰の原料粉末によって形成した初期溶融領域9を設ける。初期溶融領域9は、あらかじめ、原料棒6と一体に形成しても良いし、両駆動軸3、4の上下方向の位置を調整して、原料棒6の下端と、種結晶8との間で挟んで保持することで、前記原料棒6の下端に接触させた状態としてもよい。
【0036】
次に、耐圧容器2を密閉し、内部の空気を除去すると共に、数気圧の不活性ガス雰囲気とした状態で、図1に示すように、初期溶融領域9の、鉛直方向の高さが誘導コイル5と一致し、前記初期溶融領域9が、周囲を誘導コイル5によって囲まれる位置に配設されるように、両駆動軸3、4の、上下方向の位置を調整する。
次に、前記両駆動軸3、4を、例えば、図中に実線の矢印で示すように、同じ方向に回転させながら、誘導コイル5に、発振器から交流電圧を印加して、初期溶融領域9にジュール熱を発生させて、前記初期溶融領域9を、誘導加熱によって、原料粉末の融点以上の温度に加熱して溶融させる。誘導コイル5に印加する交流電圧の周波数は150kHz〜2.4MHz程度であるのが好ましい。
【0037】
次に、図2を参照して、両駆動軸3、4を、それぞれ、個別に回転させ続けながら、図中に一点鎖線の矢印で示すように、個別に、鉛直方向の下方に向けて移動させると、初期溶融領域9を溶融させて形成された、原料棒6の長さ方向に一定の長さを有する溶融帯10が、相対的に、前記原料棒6の他端(図1では上端)方向に移動すると共に、前記溶融帯10より下側に、溶融帯10が通過した後の温度降下による融液の凝固によって、種結晶8の結晶とマッチングしたホウ化物単結晶11が成長し、育成される。駆動軸3、4の回転数は30rpm以下程度、下方への移動速度(=結晶成長の速度)は1〜20mm/h程度であるのが好ましい。
【0038】
前記本発明の製造方法によれば、先に説明したように、溶融帯10の溶融温度を、従来の、化学量論比組成に一致させたホウ化物を溶融させて形成される溶融帯に比べて、より低温に維持した状態で、ホウ化物単結晶11を製造することができる。例えば、ZrB2の場合は、溶融帯10の溶融温度を、前記ZrB2の融点である約3000℃より低い、およそ2600〜2900℃に維持した状態で、単結晶を製造することができる。
【0039】
そのため、製造されるホウ化物単結晶11は、ホウ素の欠乏が抑制されており、前記ホウ素の欠乏によって発生する、ホウ素欠陥や金属元素の析出等の欠陥が少ないため、ボイド状欠陥や転位、結晶粒界等の、巨視的な欠陥が発生するのが抑制された、結晶性に優れたものとなる。例えば、ホウ化物が、先に説明した、式(1)で表されるホウ化物である場合には、ホウ素と金属元素の総量中の、ホウ素の含有割合[B3]が、[B3]=66.4〜67モル%とされることによって、前記結晶性に優れたものとなる。
【0040】
本発明の基板は、前記本発明の製造方法によって製造されたホウ化物単結晶からなることを特徴とする。具体的には、前記ホウ化物単結晶を、所定の結晶方位に切削する等して、本発明の基板が形成される。例えば、ホウ化物が、先に説明したZrB2である本発明の基板を用いれば、その表面に、従来は不可能であった、転位密度の小さい、良好な、GaN系半導体層を成長させることが可能となる。
【実施例】
【0041】
《実施例1》
平均粒径1μmのZrB2粉末に、ホウ素粉末を加えて、ホウ素の含有割合[B1]が64モル%、65モル%、67モル%、70モル%、72モル%、75モル%、および76モル%である、原料棒用の、7種の原料粉末を調製し、前記原料粉末を、プレス圧力約98MPaで、外径19mm、長さ150mmの円柱棒状にプレス成形した後、真空炉内で、約1900℃に加熱して焼結させて、7種の原料棒を作製した。
【0042】
また、平均粒径1μmのZrB2粉末に、ホウ素粉末を加えて、ホウ素の含有割合[B2]が65モル%、72モル%、80モル%、90モル%、および95モル%である、初期溶融領域用の、5種の原料粉末を調製し、前記原料粉末8gを、プレス圧力約98MPaで、外径19mm、長さ14mmの円柱棒状にプレス成形した後、真空炉内で、約1900℃に加熱して焼結させて、5種の初期溶融領域を作製した。
【0043】
図1を参照して、前記7種の原料棒6と、5種の初期溶融領域9とを、表1に示すように組み合わせて、種結晶8としての、外径15mmのZrB2単結晶、およびスペーサ7としてのZrB2焼結体と共に、図1の単結晶育成装置1の耐圧容器2内の、駆動軸3、4間にセットし、耐圧容器2を閉じて、前記耐圧容器2内の圧力が10Pa以下となるまで、内部の空気を除去した後、アルゴンガスを供給して0.5MPaの不活性ガス雰囲気とした。
【0044】
次に、図1に示すように、初期溶融領域9の、鉛直方向の高さが誘導コイル5と一致し、前記初期溶融領域9が、周囲を誘導コイル5によって囲まれる位置に配設されるように、両駆動軸3、4の、上下方向の位置を調整した状態で、両駆動軸3、4を、図中に実線の矢印で示すように、同じ方向に、回転数2rpmで回転させながら、誘導コイル5に交流電圧を印加することで、初期溶融領域9にジュール熱を発生させて、前記初期溶融領域9を、誘導加熱によって加熱して溶融させて、溶融帯10を発生させた。誘導コイル5に印加する交流電圧の周波数は430kHz、入力は35kWとした。
【0045】
次に、図2に一点鎖線の矢印で示すように、両駆動軸3、4を回転させ続けながら、鉛直方向の下方へ向けて、移動速度5.0mm/hで移動させることで、溶融帯10を、相対的に、原料棒6の、鉛直方向の上方へ向けて移動させて、前記溶融帯10が通過した後の温度降下による融液の凝固によって、種結晶8の結晶とマッチングしたZrB2単結晶を、長さが約50mmになるまで成長させる操作を続けた。
【0046】
そうしたところ、表1に示すように、原料棒を形成する原料粉末における、ホウ素の含有割合[B1]が67モル%未満では、途中で溶融帯10が凝固してしまい、また72モル%を超える場合には垂下してしまって、いずれの場合にも、前記長さになるまで結晶の成長を継続できないのに対し、前記[B1]が67〜72モル%であれば、前記長さになるまで、安定して、結晶を成長できることが確認された。そして、この結果から、本発明の製造方法によって、ZrB2単結晶を製造する場合は、原料棒を形成する原料粉末における、ホウ素の含有割合[B1]が67〜72モル%であるのが好ましいことが確認された。
【0047】
【表1】

【0048】
次に、前記表1の結果が良好であったものは、ZrB2単結晶の長さが約50mmまで成長した時点で、溶融帯10をネッキングさせた後、また、他のものは、凝固または垂下が発生した時点で、誘導コイル5に印加していた交流電圧を、徐々に降下させてゼロまで落とし、育成したZrB2単結晶の温度が室温(5〜35℃)になるまで自然冷却させた後、耐圧容器2から取り出した。
【0049】
そして、取り出したZrB2単結晶を、主面が(0002)面となるように切削して研磨した後、前記主面の、X線反射率法によるX線反射率曲線の半値幅を、X線回折装置〔スペクトリス株式会社(Spectris Co., Ltd.)PANalytical事業部製のX'Pert PRO MPD〕を用いて、回折面:(10−11)、回折角2θ=41.63°の条件で、X線の入射角と、回折角θとをスキャンさせることで得た、X線反射率曲線(回折強度分布)から求めた。前記半値幅と、初期溶融領域を形成する原料粉末における、ホウ素の含有割合[B2]との関係を、図3に示す。
【0050】
図3より、初期溶融領域を形成する原料粉末における、ホウ素の含有割合[B2]が72モル%未満、または90モル%を超える場合には、いずれも、前記半値幅が、転位密度約10-6cm-2に相当する100秒を大幅に上回っており、結晶性が不十分であるのに対し、前記[B2]が72〜90モル%であれば、半値幅が100秒を下回っており、良好な結晶性を有するZrB2単結晶を製造できることが確認された。また、前記[B2]が72モル%未満である場合には、化学分析の結果から、単結晶がホウ素欠乏状態となる傾向にあることや、主面の観察結果から、ジルコニウムの析出が見られることも判った。
【0051】
また、前記[B2]が90モル%を超える場合には、主面の観察結果から、ホウ素の析出が見られることが判った。また、X線回折の結果から、[B2]が高くなりすぎると、得られる結晶は、ZrB2とZrB12の混晶となって、ZrB2単結晶が得られないことも判った。そして、これらの結果から、本発明の製造方法によって、ZrB2単結晶を製造する場合は、初期溶融領域を形成する原料粉末における、ホウ素の含有割合[B2]が72〜90モル%であるのが好ましいことが確認された。
【0052】
また、ZrB2単結晶を育成中の、溶融帯の温度を、赤外線温度計を用いて測定した結果から、ホウ素の含有割合[B1]が67〜72モル%である原料棒と、ホウ素の含有割合[B2]が72〜90モル%である初期溶融領域とを組み合わせた系では、前記溶融帯の温度を、前記ZrB2の融点である約3000℃より低い、およそ2600〜2900℃に維持できることも確認された。
【0053】
図4は、製造したZrB2単結晶における、ホウ素の含有割合[B3]を、化学分析によって求めた結果と、前記ZrB2単結晶を切削し、研磨して形成した、先に説明した主面としての(0002)面の、単位面積中に占める、ジルコニウムやホウ素の析出による巨視的な欠陥の、面積占有率(%)との関係を示すグラフである。
図4より、製造したZrB2単結晶における、ホウ素の含有割合[B3]が66.4モル%未満では、ジルコニウムの析出が見られ、67モル%を超える場合には、ホウ素の析出が見られるのに対し、前記[B3]が66.4〜67モル%であれば、いずれの欠陥も見られないことが確認された。
【0054】
また、前記(0002)面と、(10−10)面について、先に説明した半値幅を求めたところ、前記[B3]が66.4〜67モル%の範囲を外れるものは、両面共に、半値幅が200〜600秒と大きくなるのに対し、[B3]が前記範囲内であれば、(0002)面の半値幅は30秒、(10−10)面の半値幅は35秒と小さくすることができ、製造されたZrB2単結晶は、良好な結晶性を有するものとなることが確認された。そして、これらの結果から、本発明の製造方法によって製造されるZrB2単結晶における、ホウ素の含有割合[B3]は66.4〜67モル%であるのが好ましいことが確認された。
【0055】
《実施例2》
ホウ素の含有割合[B1]が70モル%である原料粉末を、プレス圧力約98MPaで、直径19mm、長さ150mmの円柱棒状にプレス成形した原料棒の前駆体の一端に、ホウ素の含有割合[B2]が80モル%である原料粉末を、プレス圧力約98MPaで、直径15mm、長さ15mmの円柱状にプレス成形した初期溶融領域の前駆体を接触させた状態で、真空炉内で、約1900℃に加熱して焼結させて、図1に示す原料棒6と、その一端に設けられる初期溶融領域9とを一体に形成した。なお、原料棒6と初期溶融領域9とは、別々に焼結したものを、例えば高周波誘導加熱等によって加熱接着して一体化しても良い。
【0056】
次に、前記原料棒6と初期溶融領域9とを一体に形成したものを、実施例1で使用したのと同じ、種結晶8としての、外径15mmのZrB2単結晶、およびスペーサ7としてのZrB2焼結体と共に、図1の単結晶育成装置1の耐圧容器2内の、駆動軸3、4間にセットした。
そして、実施例1と同条件で、同じ操作を行って、ZrB2単結晶を成長させたところ、溶融帯の組成は、成長の開始と共にホウ素過剰に推移し、製造されたZrB2単結晶のホウ素濃度は、成長開始点から長さ方向に40mmの位置までが、66.7〜67.0モル%であり、ZrB2単結晶の成長の初期から終期まで、一貫して、ZrB2の化学量論比組成よりもホウ素過剰の状態が維持されていることが確認された。また、製造されたZrB2単結晶を、長さ方向の複数の位置でスライスして、先に説明した半値幅の変化を求めたところ、30〜100秒であり、良好な結晶性を維持していることが判った。
【0057】
これに対し、従来どおり、初期溶融領域を設けずに、原料棒のみで、前記と同様の操作を行って、ZrB2単結晶を製造し、長さ方向の複数の位置でスライスして、半値幅の変化を求めたところ、200〜800秒と大きくなっており、結晶性が悪化していることが確認された。また、スライス面を確認したところ、ジルコニウムの析出や、析出物のはく離によるボイド状の欠陥が、単位面積あたりの密度で表して5×106cm-2程度、観察された。
【0058】
なお、実施例1、2では、ZrB2単結晶についてのみ検証したが、Zrの一部または全部をTi、Cr、Hf、およびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属元素で置換したホウ化物等の、他のホウ化物でも、同様の効果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明のホウ化物単結晶の製造方法を実施するための、単結晶育成装置の一例の、内部構造を示す断面図である。
【図2】図1の単結晶育成装置を使用して、本発明のホウ化物単結晶の製造方法を実施している途中の状態を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例1において、初期溶融領域を形成するのに用いた原料粉末における、ホウ素の含有割合[B2]と、前記初期溶融領域を用いて製造されたZrB2単結晶を切削し、研磨して形成された、主面としての(0002)面における、X線反射率法によるX線反射率曲線の半値幅(秒)との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例1において製造されたZrB2単結晶における、ホウ素の含有割合[B3]と、前記主面の単位面積中に占める、巨視的欠陥の面積占有率(%)との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0060】
1 単結晶育成装置
2 耐圧容器
3 駆動軸
4 駆動軸
5 誘導コイル
6 原料棒
7 スペーサ
8 種結晶
9 初期溶融領域
10 溶融帯
11 ホウ化物単結晶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ化物のもとになるホウ素と金属元素とを含む原料粉末によって形成した原料棒から、フローティングゾーン法によって、ホウ化物単結晶を製造するためのホウ化物単結晶の製造方法であって、
前記原料棒の、長さ方向の一端に、前記ホウ化物の化学量論比組成よりもホウ素過剰の原料粉末によって形成した初期溶融領域を設け、前記初期溶融領域を、加熱により溶融させて、前記長さ方向に一定の長さを有する溶融帯を形成する工程と、
前記溶融帯を、前記初期溶融領域から、原料棒の、長さ方向の他端へ向けて、前記長さ方向に沿って移動させることで、前記原料棒の、溶融帯が通過した後の領域に、ホウ化物単結晶を成長させる工程と、
を含むことを特徴とするホウ化物単結晶の製造方法。
【請求項2】
原料棒を、ホウ化物の化学量論比組成よりもホウ素過剰の原料粉末によって形成することを特徴とする請求項1に記載のホウ化物単結晶の製造方法。
【請求項3】
ホウ化物が、式(1):
MB2 (1)
〔式中、MはZr、Ti、Cr、Hf、およびTaからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属元素を示す〕
で表されるホウ化物であることを特徴とする請求項1に記載のホウ化物単結晶の製造方法。
【請求項4】
原料棒を、式(1)で表されるホウ化物を構成するホウ素と金属元素とを含み、かつ前記ホウ素と金属元素の総量中の、ホウ素の含有割合[B1]が、[B1]=67〜72モル%である原料粉末によって形成することを特徴とする請求項3に記載のホウ化物単結晶の製造方法。
【請求項5】
初期溶融領域を、式(1)で表されるホウ化物を構成するホウ素と金属元素とを含み、かつ前記ホウ素と金属元素の総量中の、ホウ素の含有割合[B2]が、[B2]=72〜90モル%である原料粉末によって形成することを特徴とする請求項3に記載のホウ化物単結晶の製造方法。
【請求項6】
製造されるホウ化物単結晶における、式(1)で表されるホウ化物を構成するホウ素と金属元素の総量中の、ホウ素の含有割合[B3]を、[B3]=66.4〜67モル%とすることを特徴とする請求項3に記載のホウ化物単結晶の製造方法。
【請求項7】
原料棒を形成する原料粉末におけるホウ素の含有割合[B1]と、初期溶融領域を形成する原料粉末におけるホウ素の含有割合[B2]と、製造されるホウ化物単結晶におけるホウ素の含有割合[B3]とを、式(2):
[B2]≧[B1]≧[B3] (2)
を満足する範囲に調整することを特徴とする請求項3に記載のホウ化物単結晶の製造方法。
【請求項8】
ホウ化物がZrB2であることを特徴とする請求項3に記載のホウ化物単結晶の製造方法。
【請求項9】
原料棒と、初期溶融領域とを一体に形成することを特徴とする請求項1に記載のホウ化物単結晶の製造方法。
【請求項10】
原料棒と、初期溶融領域とを別体に形成すると共に、前記原料棒の一端に、初期溶融領域を接触させた状態で使用することを特徴とする請求項1に記載のホウ化物単結晶の製造方法。
【請求項11】
表面に半導体層を成長させるための基板であって、請求項1に記載のホウ化物単結晶の製造方法によって製造されたホウ化物単結晶からなることを特徴とする基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−55885(P2007−55885A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−188296(P2006−188296)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】