説明

ホスファチジルイノシトール−3−キナーゼ(PI3K)阻害剤とmTOR阻害剤との併用剤

本発明は、(a)式(I)のホスホイノシチド3−キナーゼ阻害化合物と、(b)mTOR阻害剤とを含む、ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)キナーゼ依存性疾患、特に、癌疾患の治療のための医薬併用剤;当該併用剤を含む医薬組成物;増殖性疾患の治療用薬物の調製のための、当該併用剤の使用;同時、個別または順次使用のための、組み合わせ調製物として当該併用剤を含む市販パッケージまたは製品;および温血動物、特にヒトの治療方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピリミジン誘導体であるホスファチジルイノシトール−3−キナーゼ(PI3K)阻害化合物とmTOR阻害剤とを含む医薬併用剤(pharmaceutical combination)ならびに増殖性疾患、より詳細には哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR:mammalian target of rapamycin)キナーゼ依存性疾患の増殖性疾患の治療における当該併用剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
mTOR阻害は、癌細胞においてAKTの活性化をもたらす、上流のインスリン様成長因子1受容体(IGF−1R)シグナル伝達を誘導する可能性があることが示されている。この現象は、mTOR阻害に対する細胞応答を弱める役割を果たすことが示唆されており、mTOR阻害剤の臨床活性を弱める可能性がある。例えば、進行固体腫瘍を有する患者の第I相試験においてすべての患者の腫瘍で、およそ50%のpAKTの増加が見いだされている(Tabernoら、Journal of Clinical Oncology、26(2008)、1603〜1610ページ)。増殖性疾患患者に対して治療の選択肢が数多くあるにもかかわらず、有効で安全な治療薬剤を求める需要および併用療法におけるそうした薬剤の優先的な使用を求める需要が依然としてある。
【発明の概要】
【0003】
いまや、本発明により、mTOR阻害剤によるAKTのリン酸化および活性化をPI3K阻害剤が低減または阻止することが見いだされている。したがって、本発明は、mTOR阻害剤によるAKTのリン酸化および活性化を低減または阻止する方法であって、PI3K阻害剤をそれを必要とする温血動物に投与するステップを含む前記方法を提供する。
【0004】
別の実施形態において、本発明は、mTOR阻害剤による治療中において、AKTのリン酸化および活性化の獲得による増殖性疾患の治療方法であって、治療有効量のPI3K阻害剤をそれを必要とする温血動物に投与するステップを含む前記方法を提供する。
【0005】
別の実施形態において、本発明は、mTOR阻害剤による治療に抵抗性になっているか、または感受性が低下している増殖性疾患の治療方法であって、治療有効量のPI3K阻害剤をそれを必要とする温血動物に投与するステップを含む前記方法に関する。抵抗性は、例えば、AKTのリン酸化(posphorylation)および活性化によるものである。
【0006】
別の態様において、本発明は、増殖性疾患のmTOR阻害剤による治療の効力を向上させるための方法であって、PI3K阻害剤とmTOR阻害剤とを含む併用剤を、それを必要とする温血動物に投与するステップを含む前記方法を提供する。
【0007】
一態様において、本発明は、PI3K阻害化合物と、少なくとも1つのmTOR阻害剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0008】
別の態様において、本発明は、増殖性疾患の治療用または予防用薬物を製造するための、PI3K阻害化合物と、少なくとも1つのmTOR阻害剤との使用を提供する。
【0009】
別の態様において、本発明は、PI3K阻害化合物と、少なくとも1つのmTOR阻害剤とを投与することによって、増殖性を治療または予防する方法を提供する。
【0010】
別の態様において、本発明は、PI3K阻害化合物と、少なくとも1つのmTOR阻害剤とを含む、増殖性疾患の治療または予防に使用するための医薬併用剤を提供する。
【0011】
別の態様において、本発明は、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)キナーゼ依存性疾患の治療のために同時(simultaneous)、個別(separate)または順次(sequential)に使用する、PI3K阻害化合物と、RADラパマイシン(rapamycin)(シロリムス(sirolimus))およびその誘導体(derivative)/アナログ(analog)、例えば、エベロリムス(everolimus)またはRAD001;CCI−779、ABT578、SAR543、アスコマイシン(ascomycin)(FK506のエチルアナログ)、AP23573、AP23841、KU−0063794、INK−128、EX2044、EX3855、EX7518、AZD08055およびOSI027からなる群から選択されるmTOR阻害剤と(ここで当該活性成分は、それぞれの場合において遊離型または薬学的に許容可能な塩の形で存在する)、任意で少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体との併用剤を提供する。
【0012】
別の態様において、PI3K阻害剤は、5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−4−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルアミン(化合物I)である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】エベロリムス(RAD001)の存在下および化合物Iと組み合わせたエベロリムス(RAD001)の存在下におけるBT474乳腺腫瘍細胞のAKTのリン酸化レベルを示す図である。
【図2】エベロリムス(RAD001)の存在下および化合物Iと組み合わせたエベロリムス(RAD001)の存在下におけるMDA−MB−231乳腺腫瘍細胞のAKTのリン酸化レベルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
WO07/084786には、ピリミジン誘導体について記載されており、これは、PI3−キナーゼなどの脂質キナーゼの活性が見いだされている。本発明に適切な特定のピリミジン誘導体、その調製物および当該調製物を含有する適切な医薬製剤については、WO07/084786に記載されており、式(I)の化合物
【0015】
【化1】

またはその立体異性体、互変異性体(tautomer)または薬学的に許容可能な塩が挙げられ、式中、Wは、CRwまたはNであり、Rwは、
(1)水素、
(2)シアノ、
(3)ハロゲン、
(4)メチル、
(5)トリフルオロメチル、
(6)スルホンアミド
からなる群から選択され、
は、
(1)水素、
(2)シアノ、
(3)ニトロ、
(4)ハロゲン、
(5)置換および非置換アルキル、
(6)置換および非置換アルケニル、
(7)置換および非置換アルキニル、
(8)置換および非置換アリール、
(9)置換および非置換ヘテロアリール、
(10)置換および非置換ヘテロシクリル、
(11)置換および非置換シクロアルキル、
(12)−COR1a
(13)−CO1a
(14)−CONR1a1b
(15)−NR1a1b
(16)−NR1aCOR1b
(17)−NR1aSO1b
(18)−OCOR1a
(19)−OR1a
(20)−SR1a
(21)−SOR1a
(22)−SO1aならびに
(23)−SONR1a1b
からなる群から選択され、R1aおよびR1bは、
(a)水素、
(b)置換または非置換アルキル、
(c)置換および非置換アリール、
(d)置換および非置換ヘテロアリール、
(e)置換および非置換ヘテロシクリルならびに
(f)置換および非置換シクロアルキル
からなる群から独立して選択され、
は、
(1)水素、
(2)シアノ、
(3)ニトロ、
(4)ハロゲン、
(5)ヒドロキシ、
(6)アミノ、
(7)置換および非置換アルキル、
(8)−COR2aならびに
(9)−NR2aCOR2b
からなる群から選択され、R2aおよびR2bは、
(a)水素および
(b)置換または非置換アルキル
からなる群から独立して選択され、
は、
(1)水素、
(2)シアノ、
(3)ニトロ、
(4)ハロゲン、
(5)置換および非置換アルキル、
(6)置換および非置換アルケニル、
(7)置換および非置換アルキニル、
(8)置換および非置換アリール、
(9)置換および非置換ヘテロアリール、
(10)置換および非置換ヘテロシクリル、
(11)置換および非置換シクロアルキル、
(12)−COR3a
(13)−NR3a3b
(14)−NR3aCOR3b
(15)−NR3aSO3b
(16)−OR3a
(17)−SR3a
(18)−SOR3a
(19)−SO3aならびに
(20)−SONR3a3b
からなる群から選択され、R3aおよびR3bは、
(a)水素、
(b)置換または非置換アルキル、
(c)置換および非置換アリール、
(d)置換および非置換ヘテロアリール、
(e)置換および非置換ヘテロシクリルならびに
(f)置換および非置換シクロアルキル
からなる群から独立して選択され、
は、
(1)水素および
(2)ハロゲン
からなる群から選択される。
【0016】
式(I)の化合物の定義に用いられる場合、基(radicals)および記号は、WO07/084786に開示されるとおりの意味を持つ。この公報を参照により本出願に組み込む。
【0017】
本発明の好適な化合物は、特に、WO07/084786に記載されている化合物である。本発明の非常に好適な化合物は、5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−4−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルアミン(化合物I)である。5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−4−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルアミンの合成については、実施例10としてWO07/084786に記載されている。
【0018】
本発明の併用剤としては、セリン/セロニン(theronine)mTORキナーゼの活性/機能をターゲッティング、低減または抑制する化合物が挙げられる。そのような化合物は、「mTOR阻害剤」と称され、以下に限定されるものではないが、mTORキナーゼファミリーメンバーをターゲッティング/抑制する化合物、タンパク質または抗体、例えば、RAD、ラパマイシン(シロリムス)および、その誘導体/アナログ、例えば、エベロリムスもしくはRAD001または酵素のATP−結合溝(ATP-binding cleft)に直接結合することよってmTORのキナーゼ活性を抑制する化合物が挙げられる。シロリムスは、RAPAMUNEの名称でも知られており、エベロリムスまたはRAD001は、CERTICANの名称でも知られている。mTORキナーゼファミリーメンバーをターゲッティング/抑制する、他の化合物、タンパク質または抗体としては、CCI−779、ABT578、SAR543、およびFK506のエチルアナログであるアスコマイシンが挙げられる。さらに、AP23573、AP23841、KU−0063794、INK−128、EX2044、EX3855、EX7518、AZD08055およびOSI027も挙げられる。本発明による特に好適な化合物は、RAD001である。
【0019】
適切なmTOR阻害剤としては、例えば、以下のものが挙げられる:
I.ラパマイシン。これは、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)によって生成される免疫抑制性ラクタム系マクロライド(lactam macrolide)である。
【0020】
II.以下のラパマイシン誘導体:
a.置換ラパマイシン。US5,258,389、WO94/09010、WO92/05179、US5,118,677、US5,118,678、US5,100,883、US5,151,413、US5,120,842、WO93/11130、WO94/02136、WO94/02485およびWO95/14023などに記載されているような、例えば、40−O−置換ラパマイシン。これらの公報のすべてを参照により本明細書に組み込むものとする;
b.16−O−置換ラパマイシン。例えば、WO94/02136、WO95/16691およびWO96/41807で開示されているようなもの。これらの公報の内容を参照により本明細書に組み込むものとする;
c.32−水素化ラパマイシン。例えば、参照により本明細書に組み込まれたWO96/41807およびUS5256790に記載されているようなもの。
d.好適なラパマイシン誘導体は、式(II)の化合物
【0021】
【化2】

(式中、
は、CHもしくはC3〜6アルキニル、
は、Hもしくは−CH−CH−OH、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチル−プロパノイルもしくはテトラゾリルであり、Xは、=O、(H,H)もしくは(H,OH)であり、
ただし、Xが=OかつRがCHの場合、Rは、H以外である)、
またはRが−CH−CH−OH、例えば生理学的に加水分解可能なそれらのエーテルの場合、式(II)の化合物のプロドラッグである。
【0022】
式(II)の化合物は、例えば、参照によって本明細書に引用されたものとするWO94/09010、WO95/16691またはWO96/41807に開示されている。これらの化合物は、これらの文献に開示のとおりまたはそれらに記載されている類似の手順によって調製することができる。
【0023】
好適な化合物は、32−デオキソラパマイシン、16−ペント−2−イニルオキシ−32−デオキソラパマイシン、16−ペント−2−イニルオキシ−32(S)−ジヒドロ−ラパマイシン、16−ペント−2−イニルオキシ−32(S)−ジヒドロ−40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、より好ましくは、WO94/09010に実施例8として開示されている40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンである。
【0024】
式(II)の特に好適なラパマイシン誘導体は、40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、40−[3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロパノエート]−ラパマイシン(CCI779とも呼ばれる)、40−エピ−(テトラゾリル)−ラパマイシン(ABT578とも呼ばれる)、32−デオキソラパマイシン、16−ペント−2−イニルオキシ−32(S)−ジヒドロラパマイシンまたはTAFA−93である。
【0025】
e.ラパマイシン誘導体には、WO98/02441およびWO01/14387などに開示されているような、いわゆるラパログ(rapalogs)、例えば、AP23573、AP23464またはAP23841も含まれる。
【0026】
ラパマイシンおよびその誘導体は、観察される活性、例えば、WO94/09010、WO95/16691またはWO96/41807に記載されているようなマクロフィリン−12(FK−506結合タンパク質またはFKBP−12としても知られている)に対する結合に基づいて、例えば、免疫抑制剤として急性同種移植片拒絶反応の治療などに有用であることが見いだされている。
【0027】
III.アスコマイシン。これは、FK506のエチルアナログである。
【0028】
IV.AZD08055およびOSI127。これは、当該酵素のATP−結合溝に直接結合することによってmTORのキナーゼ活性を阻害する化合物である
【0029】
上記のものの薬学的に許容可能な塩と、存在する場合、上記の化合物の、対応するラセミ体、ジアステレオ異性体、鏡像異性体、互変異性体および対応する結晶変態、例えば、溶媒和物、水和物および多形体とが同様に含まれ、これらも上記文献に開示されている。本発明の併用剤に活性成分として使用される化合物は、それぞれ引用文献に記載されているように調製および投与することができる。さらに、本発明の範囲内には、上記の3つ以上の個別の活性成分の併用剤があり、すなわち、本発明の範囲内の医薬併用剤には、3つ以上の活性成分が含まれると考えられる。
【0030】
一態様において、本発明は、上記のとおりの式(I)のPI3K阻害化合物または5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−4−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルアミンと、少なくとも1つのmTOR阻害剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0031】
別の態様において、本発明は、増殖性疾患の治療または予防用薬物を製造するための、式(I)のPI3K阻害化合物または5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−4−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルアミンと、少なくとも1つのmTOR阻害剤との使用を提供する。
【0032】
別の態様において、本発明は、増殖性疾患の治療または予防に使用するための式(I)の化合物または5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−4−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルアミンと、少なくとも1つのmTOR阻害剤とを提供する。
【0033】
別の態様において、本発明は、式(I)の化合物または5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−4−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルアミンと、少なくとも1つのmTOR阻害剤とを投与することによって増殖性を治療または予防する方法を提供する。
【0034】
別の態様において、本発明は、式(I)の化合物または5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−4−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルアミンと、少なくとも1つのmTOR阻害剤とを含む、増殖性疾患の治療または予防に使用するための医薬併用剤を提供する。
【0035】
別の態様において、本発明は、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)キナーゼ依存性疾患の治療のために同時、個別または順次に使用する、式(I)の化合物である5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−4−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルアミン(化合物I)と、RADラパマイシン(シロリムス)およびその誘導体/アナログ、例えば、エベロリムスまたはRAD001;CCI−779、ABT578、SAR543、アスコマイシン(FK506のエチルアナログ)、AP23573、AP23841、KU−0063794、INK−128、EX2044、EX3855、EX7518、AZD08055およびOSI027からなる群から選択されるmTOR阻害剤と、任意で少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体との併用剤であって、当該活性成分は、それぞれの場合において遊離型または薬学的に許容可能な塩の形で存在する、前記併用剤を提供する。
【0036】
本発明は、mTOR阻害剤によるAKTのリン酸化および活性化を低減または阻止する方法であって、式(II)の化合物をそれを必要とする温血動物に投与するステップを含む前記方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、mTOR阻害剤による治療中に、AKTがリン酸化および活性化されることによる増殖性疾患の治療方法であって、治療有効量の式(I)の化合物をそれを必要とする温血動物に投与するステップを含む前記方法を提供する。
【0037】
別の実施形態において、本発明は、mTOR阻害剤による治療に抵抗性になっているか、または感受性が低下している増殖性疾患の治療方法であって、治療有効量の式(I)の化合物をそれを必要とする温血動物に投与するステップを含む前記方法に関する。抵抗性は、例えば、AKTのリン酸化(posphorylation)および活性化によるものである。
【0038】
別の態様において、本発明は、mTOR阻害剤による増殖性疾患の治療の効力を向上させるための方法であって、式(I)の化合物または5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−4−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルアミンと、mTOR阻害剤とを含む併用剤を、それを必要とする温血動物に投与するステップを含む前記方法を提供する。
【0039】
本発明に従って使用されるmTOR阻害剤は、RADラパマイシン(シロリムス)およびその誘導体/アナログ、例えば、エベロリムスまたはRAD001;CCI−779、ABT578、SAR543、アスコマイシン(FK506のエチルアナログ)、AP23573、AP23841、KU−0063794、INK−128、EX2044、EX3855、EX7518、AZD08055およびOSI027から選択することができる。本発明による特に好適なmTOR阻害剤は、シロリムスおよび/またはエベロリムスである。
【0040】
用語「mTORキナーゼ依存性疾患」には、以下の症状が含まれるが、これらに限定されるものではない。
・例えば、心臓、肺、心臓−肺同時(combined heart-lung)、肝臓、腎臓、膵臓、皮膚または角膜移植などのレシピエントの処置に対する臓器移植または組織移植拒絶反応;骨髄移植後などの移植片対宿主病;
・再狭窄(Restenosis)
・結節硬化症(tuberous sclerosis)またはカウデン(Ccowden)病などの過誤腫症候群(Hamartoma syndromes)
・リンパ脈管筋腫症(Lymphangioleiomyomatosis)
・色素性網膜炎(Retinitis pigmentosis)
・脳脊髄炎、インスリン依存性糖尿病、ループス、皮膚筋炎、関節炎およびリウマチ性疾患などの自己免疫疾患
・ステロイド抵抗性急性リンパ芽球性白血病
・強皮症、肺線維症、腎線維症、嚢胞性線維症などの線維症(Fibrotic disease)
・肺高血圧症
・免疫修飾
・多発性硬化症
・VHL症候群
・カーニー複合
・家族性大腸ポリポーシス(Familial adenonamtous polyposis)
・若年性ポリポーシス症候群
・バート・ホッグ・デューク症候群
・家族性肥大型心筋症
・ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群
・タウ変異によって生じるパーキンソン病、ハンチンチン病、アルツハイマー病および認知症、SOD1変異によって生じる脊髄小脳失調症3型、運動ニューロン疾患、神経セロイドリポフスチン症(neuronal ceroid lipofucinoses)/バッテン病(小児神経変性)などの神経変性障害(Neurodegenarative disorder)
・滲出型(wet)および乾燥型(dry)黄斑変性
・筋消耗(muscle wasting)(萎縮(atrophy)、悪液質(cachexia))およびダノン病などのミオパチー
・結核菌、A群連鎖球菌、HSV1型、HIV感染などの細菌感染症およびウイルス感染症
・神経線維腫症1型などの神経線維腫症、
・ポイツ・ジェガース症候群
【0041】
さらに、「mTORキナーゼ依存性疾患」には、癌および他の関連する悪性腫瘍が含まれる。病理学上mTORシグナルカスケードに関連する癌の非限定的なリストには、乳癌、腎細胞癌、胃腫瘍、神経内分泌腫瘍、リンパ腫および前立腺癌が含まれる。
【0042】
増殖性疾患についての例は、例えば、脳、腎臓、肝臓、副腎、膀胱、乳房、胃、胃腫瘍、卵巣、結腸、直腸、前立腺、膵臓、肺、膣または甲状腺の良性もしくは悪性腫瘍(tumor)、癌腫(carcinoma)、肉腫、膠芽腫、多発性骨髄腫または胃腸癌、特に、結腸癌腫もしくは結腸直腸腺腫または頭頸部腫瘍、上皮異常増殖(epidermal hyperproliferation)、乾癬、前立腺肥大症、新生物、上皮内新生物(neoplasia of epithelial character)、リンパ腫、乳癌腫あるいは白血病である。
【0043】
本発明による医薬組成物または併用剤は、臨床試験において試験することができる。適切な臨床試験としては、例えば、増殖性疾患を有する患者における、非盲検、用量漸増試験が可能である。そのような試験により、特に本発明の併用剤の活性成分についての相乗作用が立証される。増殖性疾患に対する有効な効果は、当業者に既知の上記の試験の結果から直接判定できる。そのような試験は、活性成分を用いた単剤療法の効果と本発明の併用剤の効果とを比較することが特に適切であり得る。好ましくは、薬剤(a)の用量を最大許容用量に達するまで漸増させ、薬剤(b)を固定用量で投与する。あるいは、薬剤(a)を固定用量で投与し、薬剤(b)の用量を漸増させてもよい。患者それぞれには、各用量の薬剤(a)を毎日または間欠的のいずれかで投与してもよい。そのような試験における治療の効力は、例えば、12、18または24週間後などの6週毎に症状スコアを評価することによって判定することができる。
【0044】
本発明の医薬併用剤の投与は、本発明の併用剤に用いられる医薬活性成分を1つのみ適用する単剤療法と比較して、例えば、症状の軽減、進行遅延または抑制に関する、相乗的な治療効果などの有効な効果だけでなく、例えば、副作用の減少、クオリティオブライフの改善または罹患率の低減などのさらに驚くべき有効な効果をもたらす可能性もある。
【0045】
別の利点は、本発明の併用剤の活性成分の使用をより低用量にできる可能性もあることである。例えば、これは、投与量を少なくする必要がある場合が多いが、頻度を減らして適用するのでもよく、これにより、副作用の発生または重症度が低減される可能性がある。これは、治療される患者の希望および要件によって決まる。
【0046】
増殖性疾患をターゲッティングまたは予防する点において、両方で治療的に有効であり得る量の本発明の併用剤を含む医薬組成物を提供することが本発明の目的の1つである。この組成物では、薬剤(a)および薬剤(b)は、一緒に、順々にまたは個別に、1つの組み合わせ単位剤形または個別の2つの単位剤形で投与されてもよい。単位剤形は、固定併用剤(fixed combination)でもよい。
【0047】
薬剤(a)および薬剤(b)の個別投与のための、または固定併用剤、すなわち、少なくとも2つの併用剤パートナー(a)および(b)を含む単一の生薬(galenical)組成物としての投与のための、本発明による医薬組成物は、それ自体が周知である方法で調製することができ、ヒトを含む哺乳動物(温血動物)への、経口または直腸内などの経腸および非経口投与に適切なものであり、治療有効量の、例えば、上記のような少なくとも1つの薬理的活性併用剤パートナーを単独で、または特に経腸または非経口用途に適切な1つまたは複数の薬学的に許容可能な担体または希釈剤と組み合わせて含む。
【0048】
適切な医薬組成物は、例えば、約0.1%から約99.9%、好ましくは約1%から約60%の(1つまたは複数の)活性成分を含有してもよい。経腸または非経口投与用の併用療法のための医薬調製物は、例えば、糖衣錠、錠剤、カプセル剤もしくは座剤、またはアンプルなどの単位剤形のものである。別に指示がない場合は、これらは、例えば、従来の混合、造粒、糖衣、溶解または凍結乾燥プロセス手段によってなど、それ自体が周知である方法で調製される。当然のことながら、複数の投与量単位の投与によって必要な有効量に到達させることができるため、各剤形の個々の用量に含有される併用剤パートナーの単位含量は、それ自体で有効量である必要はない。
【0049】
特に、治療有効量の、本発明の併用剤の各併用剤パートナーが、同時にまたは順次任意の順序で投与されてもよく、各構成成分は、個別にまたは固定併用剤として投与されてもよい。例えば、本発明による増殖性疾患の予防または治療方法は、同時にまたは順次任意の順序で、両方で治療有効量、好ましくは相乗的に有効な量、例えば、毎日または間欠的に本明細書に記載の量に対応した投与量での、(i)遊離型または薬学的に許容可能な塩の形の第1の薬剤(a)の投与および(ii)遊離型または薬学的に許容可能な塩の形の薬剤(b)の投与を含んでもよい。本発明の併用剤の個々の併用剤パートナーは、分割された、または単一の併用剤の形で治療過程の異なる時点で個別にまたは同時に投与されてもよい。さらに、用語、投与するとは、in vivoで併用剤パートナーそれ自体に変化する、併用剤パートナーのプロドラッグの使用も包含する。したがって、本発明は、同時または交互の治療のそのようなすべてのレジメンを包含するものとして理解されるべきであり、用語「投与する」とは、それに応じて解釈されるべきである。
【0050】
本発明の併用剤に使用される各併用剤パートナーの有効な投与量は、使用される特定の化合物または医薬組成物、投与方法、治療される状態、治療される状態の重症度に応じて変えてもよい。したがって、本発明の併用剤の投与レジメンは、投与経路ならびに患者の腎機能および肝機能を含むさまざまな要因に従って選択される。通常の臨床医または医師は、状態の進行を軽減、逆行または停止するのに必要とされる個々の活性成分の有効量を容易に決定および処方することができる。毒性がなく効力を得られる範囲内の活性成分の濃度を達成する際に最適な精度にするためには、標的部位に対する活性成分の有効性の動態学に基づくレジメンを必要とする。
【0051】
以下の実施例は、例示に過ぎず、限定することを意図したものではない。
【実施例1】
【0052】
BT474およびMDA−MB−231乳腺腫瘍細胞におけるRAD001(エベロリムス)の化合物Iとの併用の効果
材料および方法
1.化合物の調製
化合物RAD001は、Novartis Pharma AGによって合成されている。20mMの原液を、DMSOで調製し−20℃で保存する。化合物Iの10mMの原液をDMSOで調製し−20℃で保存する。
【0053】
2.細胞および細胞培養条件
ヒト乳癌腫であるBT474(ATCC HTB−26)およびMDA−MB−231(ATCC HTB−20)は、American Type Culture Collection(ATCC、ロックビル、メリーランド州、米国)から入手する。BT474細胞を、10%v/vのウシ胎仔血清および2mMのL−グルタミンを添加したHybri−Care培地(ATCC)に維持する。MDA−MB−231細胞を、10%v/vのウシ胎仔血清および2mMのL−グルタミンを添加したRPMI1640培地(Amimed、アシュビル(Allschwil)、スイス)で増殖させる。すべての培地に100μg/mLのペニシリン/ストレプトマイシンを添加し、細胞を5%のCO2中で37℃に維持する。
【0054】
3.細胞処理および細胞抽出
DMSOビヒクル、20nMのRAD001および/またはさまざまな濃度の化合物Iでの24hの処理に先立って、BT474およびMDA−MB−231細胞をそれぞれ、3.3×10細胞/cmおよび1.6×10細胞/cmの密度で播種し、37℃および5%のCOで48hインキュベーションする。細胞ライセートを次のように調製する。培養皿を、1mMのPMSFを含有する氷冷のPBSで一度洗浄し、氷冷の抽出バッファー[50mMのHepes(pH7.4)、150mMのNaCl、25mMのβ−グリセロリン酸塩、25mMのNaF、5mMのEGTA、1mMのEDTA、15mMのPPi、2mMのオルトバナジウム酸ナトリウム、10mMのモリブデン酸ナトリウム、ロイペプチン(10μg/mL)、アプロチニン(10μg/mL)、1mMのDTTおよび1mMのPMSF]で一度洗浄する。プロテアーゼ阻害剤を、ミズーリ州セントルイスのSIGMA Chemicalから購入する。細胞を、1%のNP−40(SIGMA Chemicals)を含有する同じバッファーに抽出する。抽出物を、ホモジナイズし、遠心分離により清澄化し、等分にし、−80℃で凍結する。タンパク質の濃度を、BCA Protein Assay(Pierce、ロックフォード、イリノイ州、米国)を用いて決定する。
【0055】
4.イムノブロッティング
20マイクログラムの細胞抽出物を、12%の変性ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミドゲル(SDS−PAGE)上に電気泳動的に分離し、湿式ブロッティング(wet-blotting)(1h、250mA)によって二フッ化ポリビニリデンフィルター(PVDF;Millipore Corporation、ベッドフォード、マサチューセッツ州、米国)に転写し、4℃で一晩、以下の一次抗体でプローブする:
DAKO(グロストラップ(Glostrup)、デンマーク)から入手し、PBS(0.5%v/vのTween)で希釈したanti−phospho−Akt(Ser473)(clone 14−05;1:2000)。
Cell Signaling Technology(ベバリー、マサチューセッツ州、米国)から入手し、PBS(0.1%v/vのTween)で希釈したanti−phospho−Akt(T308)(カタログ番号9275;1:1000)。
Epitomics(バーリンゲーム、カリフォルニア州、米国)から入手し、PBS(0.5%v/vのTween)で希釈したanti−Akt(カタログ番号1085−1;1:5000)。
Chemicon(ビルリカ、マサチューセッツ州、米国)から入手し、PBS(0.1%v/vのTween)で希釈したAnti−Actin(カタログ番号MAB1501;1:20,000)。
【0056】
適切な一次抗体(上記)とインキュベーションした後、修飾されたタンパク質を、ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合抗マウスまたは抗ウサギ免疫グロブリン、次いで増強化学発光(ECL Plus kit;Amersham Pharmacia Biotech、バッキンガムシア、英国)を用いて明らかにし、Quantity One Software(Bio−Rad、ミュンヘン、ドイツ)を用いて定量する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)式(I)の化合物
【化3】

またはその立体異性体、互変異性体または薬学的に許容可能な塩と、
b)少なくとも1つのmTOR阻害剤とを含む医薬組成物であって、
式中、Wは、CRまたはNであり、Rは、
(1)水素、
(2)シアノ、
(3)ハロゲン、
(4)メチル、
(5)トリフルオロメチル、
(6)スルホンアミド
からなる群から選択され、
は、
(1)水素、
(2)シアノ、
(3)ニトロ、
(4)ハロゲン、
(5)置換および非置換アルキル、
(6)置換および非置換アルケニル、
(7)置換および非置換アルキニル、
(8)置換および非置換アリール、
(9)置換および非置換ヘテロアリール、
(10)置換および非置換ヘテロシクリル、
(11)置換および非置換シクロアルキル、
(12)−COR1a
(13)−CO1a
(14)−CONR1a1b
(15)−NR1a1b
(16)−NR1aCOR1b
(17)−NR1aSO1b
(18)−OCOR1a
(19)−OR1a
(20)−SR1a
(21)−SOR1a
(22)−SO1aならびに
(23)−SONR1a1b
からなる群から選択され、R1aおよびR1bは、
(a)水素、
(b)置換または非置換アルキル、
(c)置換および非置換アリール、
(d)置換および非置換ヘテロアリール、
(e)置換および非置換ヘテロシクリルならびに
(f)置換および非置換シクロアルキル
からなる群から独立して選択され、
は、
(1)水素、
(2)シアノ、
(3)ニトロ、
(4)ハロゲン、
(5)ヒドロキシ、
(6)アミノ、
(7)置換および非置換アルキル、
(8)−COR2aならびに
(9)−NR2aCOR2b
からなる群から選択され、R2aおよびR2bは、
(a)水素および
(b)置換または非置換アルキル
からなる群から独立して選択され、
は、
(1)水素、
(2)シアノ、
(3)ニトロ、
(4)ハロゲン、
(5)置換および非置換アルキル、
(6)置換および非置換アルケニル、
(7)置換および非置換アルキニル、
(8)置換および非置換アリール、
(9)置換および非置換ヘテロアリール、
(10)置換および非置換ヘテロシクリル、
(11)置換および非置換シクロアルキル、
(12)−COR3a
(13)−NR3a3b
(14)−NR3aCOR3b
(15)−NR3aSO3b
(16)−OR3a
(17)−SR3a
(18)−SOR3a
(19)−SO3aならびに
(20)−SONR3a3b
からなる群から選択され、R3aおよびR3bは、
(a)水素、
(b)置換または非置換アルキル、
(c)置換および非置換アリール、
(d)置換および非置換ヘテロアリール、
(e)置換および非置換ヘテロシクリルならびに
(f)置換および非置換シクロアルキル
からなる群から独立して選択され、
は、
(1)水素および
(2)ハロゲン
からなる群から選択される、前記医薬組成物。
【請求項2】
式(I)の化合物が5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−4−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルアミンである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記mTOR阻害剤が、RADラパマイシン(シロリムス)およびその誘導体/アナログ、例えば、エベロリムスもしくはRAD001;CCI−779、ABT578、SAR543、アスコマイシン(FK506のエチルアナログ)、AP23573、AP23841、KU−0063794、INK−128、EX2044、EX3855、EX7518、またはmTORのATP−結合溝に結合する化合物、例えば、AZD08055およびOSI027から選択される、請求項1から2に記載の医薬併用剤。
【請求項4】
ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)キナーゼ依存性疾患の治療および予防用薬物を製造するための、式(I)の化合物
【化4】

またはその立体異性体、互変異性体または薬学的に許容可能な塩およびmTOR阻害剤の使用であって、
式中、Wは、CRまたはNであり、Rは、
(1)水素、
(2)シアノ、
(3)ハロゲン、
(4)メチル、
(5)トリフルオロメチル、
(6)スルホンアミド
からなる群から選択され、
は、
(1)水素、
(2)シアノ、
(3)ニトロ、
(4)ハロゲン、
(5)置換および非置換アルキル、
(6)置換および非置換アルケニル、
(7)置換および非置換アルキニル、
(8)置換および非置換アリール、
(9)置換および非置換ヘテロアリール、
(10)置換および非置換ヘテロシクリル、
(11)置換および非置換シクロアルキル、
(12)−COR1a
(13)−CO1a
(14)−CONR1a1b
(15)−NR1a1b
(16)−NR1aCOR1b
(17)−NR1aSO1b
(18)−OCOR1a
(19)−OR1a
(20)−SR1a
(21)−SOR1a
(22)−SO1aならびに
(23)−SONR1a1b
からなる群から選択され、R1aおよびR1bは、
(a)水素、
(b)置換または非置換アルキル、
(c)置換および非置換アリール、
(d)置換および非置換ヘテロアリール、
(e)置換および非置換ヘテロシクリルならびに
(f)置換および非置換シクロアルキル
からなる群から独立して選択され、
は、
(1)水素、
(2)シアノ、
(3)ニトロ、
(4)ハロゲン、
(5)ヒドロキシ、
(6)アミノ、
(7)置換および非置換アルキル、
(8)−COR2aならびに
(9)−NR2aCOR2b
からなる群から選択され、R2aおよびR2bは、
(a)水素および
(b)置換または非置換アルキル
からなる群から独立して選択され、
は、
(1)水素、
(2)シアノ、
(3)ニトロ、
(4)ハロゲン、
(5)置換および非置換アルキル、
(6)置換および非置換アルケニル、
(7)置換および非置換アルキニル、
(8)置換および非置換アリール、
(9)置換および非置換ヘテロアリール、
(10)置換および非置換ヘテロシクリル、
(11)置換および非置換シクロアルキル、
(12)−COR3a
(13)−NR3a3b
(14)−NR3aCOR3b
(15)−NR3aSO3b
(16)−OR3a
(17)−SR3a
(18)−SOR3a
(19)−SO3aならびに
(20)−SONR3a3b
からなる群から選択され、R3aおよびR3bは、
(a)水素、
(b)置換または非置換アルキル、
(c)置換および非置換アリール、
(d)置換および非置換ヘテロアリール、
(e)置換および非置換ヘテロシクリルならびに
(f)置換および非置換シクロアルキル
からなる群から独立して選択され、
は、
(1)水素および
(2)ハロゲン
からなる群から選択される、前記使用。
【請求項5】
式(I)の化合物が5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−4−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルアミンである、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記mTOR阻害剤が、RADラパマイシン(シロリムス)およびその誘導体/アナログ、例えば、エベロリムスもしくはRAD001;CCI−779、ABT578、SAR543、アスコマイシン(FK506のエチルアナログ)、AP23573、AP23841、またはmTORのATP−結合溝に結合する化合物、例えば、AZD08055およびOSI027から選択される、請求項4または5に記載の使用。
【請求項7】
ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)キナーゼ依存性疾患の治療または予防に使用するための、請求項1または2に記載の医薬併用剤。
【請求項8】
請求項1または2の化合物を投与することによる、ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)キナーゼ依存性疾患の治療または予防方法。
【請求項9】
乳癌、腎細胞癌、胃腫瘍、神経内分泌腫瘍、リンパ腫および前立腺癌の治療のために同時、個別または順次に使用する、式(I)の化合物である5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−4−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルアミン(化合物I)と、RADラパマイシン(シロリムス)およびその誘導体/アナログ、例えば、エベロリムスもしくはRAD001;CCI−779、ABT578、SAR543、アスコマイシン(FK506のエチルアナログ)、AP23573、AP23841、KU−0063794、INK−128、EX2044、EX3855、EX7518、またはmTORのATP−結合溝に結合する化合物、例えば、AZD08055およびOSI027からなる群から選択されるmTOR阻害剤と、任意で少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体との併用剤であって、活性成分は、それぞれの場合において遊離型または薬学的に許容可能な塩の形で存在する、前記併用剤。
【請求項10】
臓器移植または組織移植拒絶反応;再狭窄、結節硬化症、カウデン病(Cowden Disease)、リンパ脈管筋腫症、色素性網膜炎、自己免疫疾患、ステロイド抵抗性急性リンパ芽球性白血病、線維症、肺高血圧症、免疫修飾;多発性硬化症;VHL症候群;カーニー複合;家族性大腸ポリポーシス(familial adenonamtous polyposis);若年性ポリポーシス症候群;バート・ホッグ・デューク(Birt-Hogg-Duke)症候群;家族性肥大型心筋症;ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群;神経変性障害(Neurodegenarative disorder);滲出型および乾燥型黄斑変性;筋消耗(萎縮、悪液質)もしくはミオパチー;細菌感染症もしくはウイルス感染症;神経線維腫症またはポイツ・ジェガース症候群の治療のために同時、個別または順次に使用する、式(I)の化合物である5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−4−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルアミン(化合物I)と、RADラパマイシン(シロリムス)およびその誘導体/アナログ、例えば、エベロリムスもしくはRAD001;CCI−779、ABT578、SAR543、アスコマイシン(FK506のエチルアナログ)、AP23573、AP23841、KU−0063794、INK−128、EX2044、EX3855、EX7518、またはmTORのATP−結合溝に結合する化合物、例えば、AZD08055およびOSI027からなる群から選択されるmTOR阻害剤と、任意で少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体との併用剤であって、活性成分は、それぞれの場合において遊離型または薬学的に許容可能な塩の形で存在する、前記併用剤。
【請求項11】
治療有効量の式(I)の化合物をそれを必要とする温血動物に投与するステップを含む、mTOR阻害剤による治療においてAKTのリン酸化および活性化の獲得による増殖性疾患の治療方法。
【請求項12】
治療される疾患が、乳癌、腎細胞癌、胃腫瘍、神経内分泌腫瘍、リンパ腫および前立腺癌である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
治療される疾患が、臓器移植または組織移植拒絶反応;再狭窄、結節硬化症、カウデン病、リンパ脈管筋腫症、色素性網膜炎、自己免疫疾患、ステロイド抵抗性急性リンパ芽球性白血病、線維症、肺高血圧症、免疫修飾;多発性硬化症;VHL症候群;カーニー複合;家族性大腸ポリポーシス;若年性ポリポーシス症候群;バート・ホッグ・デューク症候群;家族性肥大型心筋症;ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群;神経変性障害;滲出型および乾燥型黄斑変性;筋消耗(萎縮、悪液質)もしくはミオパチー;細菌感染症もしくはウイルス感染症;神経線維腫症またはポイツ・ジェガース症候群である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
治療有効量の式(I)の化合物をそれを必要とする温血動物に投与するステップを含む、mTOR阻害剤による治療に抵抗性になっているか、または感受性が低下している増殖性疾患の治療方法。
【請求項15】
5−(2,6−ジ−モルホリン−4−イル−ピリミジン−4−イル)−4−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イルアミンと、mTOR阻害剤とを含む併用剤を、それを必要とする温血動物に投与するステップを含む、mTOR阻害剤によるラパマイシン標的タンパク質(mTOR)キナーゼ依存性疾患の治療の効力を向上させるための方法。

【公表番号】特表2012−506898(P2012−506898A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533721(P2011−533721)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064274
【国際公開番号】WO2010/049481
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】