説明

ホスホン酸ジエステルおよびジホスホン酸ジエステルならびにホスホン酸ジエステルおよびジホスホン酸ジエステル含有熱硬化性混合物の使用

本発明は、エステル交換、アミノ基転移、N−ヒドロキシアルキルアミン基および/またはN−アルコキシアルキルアミン基の自己縮合、N−アルコキシアルキルアミン基のアセタール交換、および/またはN−ヒドロキシアルキルアミン基のアセタール化によって反応し得る化合物(B)のための反応相手および/または触媒としてのホスホン酸ジエステルおよびジホスホン酸ジエステル(A)の使用に関する。また、本発明は、ホスホン酸ジエステルおよびジホスホン酸ジエステル(A)含有熱硬化性混合物、およびその製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応相手および/または触媒としてのホスホン酸ジエステルおよびジホスホン酸ジエステル(A)の新規の使用に関する。また、本発明は、反応相手および/または触媒としてのホスホン酸ジエステルおよびジホスホン酸ジエステルを含む新規の硬化性混合物に関する。
【0002】
背景技術
ホスホン酸ジエステルは、亜リン酸[P(OH)3]と互変異性であるホスホン酸[HP(O)(OH)2]のエステルである。また、全く正しくはないが、ホスホン酸ジエステルはしばしば2級亜リン酸塩とも呼ばれる。しかし、亜リン酸の真の誘導体はトリエステルのみである。
【0003】
ジホスホン酸ジエステルは、ジホスホン酸:
(HO)(O)PH−O−PH(O)(OH)−のジエステルであり、
以前は二亜リン酸とも呼ばれていた。
(これに関連して、Roempp Lexikon der Chemie,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,New York,1990,"Phosphites", "Phosphonates","Phosphonic acid", "Diethyl phosphite",および"Dimethyl phosphite"を参照のこと。)
ポリオール、アミノ樹脂、およびポリイソシアネートを含む熱硬化性混合物、特にコーティング剤は、欧州特許第1171356号または国際特許出願第01/09261号、同第01/09260号、同第01/09259号、または同第01/09231号により公知である。熱架橋に使用される触媒は、アルコール溶液中の酸性リン酸フェニル(フェニル酸リン酸)のアルコール溶液である。熱硬化性混合物は、使用される直前に多成分系、特に二成分系から製造され、1つの成分がポリオールおよびアミノ樹脂を含み、別の成分がポリイソシアネートを含んでいる。
【0004】
既知の熱硬化性混合物、特にコーティング剤は、硬く、耐摩耗性、耐擦過性、および耐エッチング性を有し、またクリアコートとして高光沢かつ透明な塗膜を提供する。
【0005】
しかしながら、既知の熱硬化性混合物には欠点がある。
【0006】
ポリイソシアネートは、アルコールに対する反応性が高いため、酸性リン酸フェニルのアルコール溶液を当該成分に加えることができず、製造方法の自由度が制限される。言い換えれば、触媒を常にポリオール成分およびアミノ樹脂成分に加えなければならないが、それによって、成分の反応性が上がり過ぎて、保存安定性に有害となる場合がある。
【0007】
その上、既知の熱硬化性混合物は、ポットライフを有するが、しばしばそれが短すぎるために、塗装作業における技術的および運搬上の問題の原因となる。そして特に、このことは、容認できない塗装結果の原因となり得る。
【0008】
したがって、ポリオール、アミノ樹脂、およびポリイソシアネートを含む熱硬化性混合物の架橋に対するさらなる改善が必要とされている。
【0009】
しかし、これらの混合物における熱架橋のメカニズムは複雑であり、そのことが目標とする開発現況の妨げとなっている。例えば、熱架橋の場合、そのような混合物中において、特にポリイソシアネートとアミノ樹脂から放出されるメタノールとの反応は起こるが、ポリオールとの反応は起こらない。
【0010】
したがって、3つの構成要素すべてから構成され、ポリオールおよびポリイソシアネートから構成される網目構造の利点とポリオールおよびアミノ樹脂から構成される網目構造の利点とを併せ持つ三次元網目構造を得るためには、ブロックポリイソシアネートを使用する必要がある(E.S.NtsihleleおよびA.Pizziによる論文「Crosslinked Coatings by Co−Reaction of Isocyanate−Methoxymethyl Melamine Systems」Journal of Applied Polymer Science,Vol.55,pages.153 to 161,1995)を参照)。しかしながら、ブロックポリイソシアネートによる架橋は、比較的高い温度、通常は100℃を超える温度でのみ進行する。その結果、対応する熱硬化性混合物は、もはや室温で架橋を始める再仕上げ剤としては使用できない。
【0011】
3つの構成要素すべてから構成された三次元網目構造を得るさらなる方法は、特に高い反応性を有する「高イミノ」メラミン樹脂と呼ばれるものを使用することである。しかしながら、これらの樹脂は比較的大きい分子量を有しており、そのため、当該硬化性混合物の粘度が高くなるという問題が生じる。その上、使用する触媒によっては、それ自身と架橋する傾向が比較的高く、このことは、特に保存安定性において非常に有害である。
【0012】
欧州特許出願第0976723号により、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチルまたは亜リン酸ジフェニルが、ポリウレタンを生成するポリオールと脂環式ポリイソシアネートの反応に触媒作用を及ぼすことは公知である。そして、これらに加えて、他の多様な触媒が考慮される。
【0013】
欧州特許出願第1134266号では、カルボキシル含有結合剤、ヒドロキシアルキルアミド基含有する化合物、芳香族アミン(光安定剤)、および亜リン酸ジフェニルまたは亜リン酸ジイソオクチル、を含む硬化性粉体コーティング剤について開示されている。これらの2つの亜リン酸塩以外に、多様な亜リン酸のトリエステルが考えられる。それらは酸化防止剤として使用される。
【0014】
課題
本発明の目的は、当該技術を強化するために、ホスホン酸ジエステルおよびジホスホン酸ジエステルの新規の使用を見い出し、その有用性を拡大することにある。
【0015】
また、本発明の目的は、ホスホン酸ジエステルおよび/またはジホスホン酸ジエステルを含む新規の熱硬化性混合物を見い出すことでもある。
【0016】
さらに、本発明の目的は、エステル交換、アミノ基転移、N−ヒドロキシアルキルアミノ基および/またはN−アルコキシアルキルアミノ基の自己縮合、N−アルコキシアルキルアミノ基のアセタール交換、および/またはN−ヒドロキシアルキルアミノ基のアセタール化によって反応し得る化合物(B)のための新規の反応相手および/または触媒を見い出すことでもある。
【0017】
加えて、本発明の目的は、エステル交換、アミノ基転移、N−ヒドロキシアルキルアミノ基および/またはN−アルコキシアルキルアミノ基の自己縮合、N−アルコキシアルキルアミノ機のアセタール交換、および/またはN−ヒドロキシアルキルアミノ基のアセタール化によって硬化可能な新規の熱硬化性混合物を見い出すことでもある。
【0018】
新規の熱硬化性混合物は、保存において安定であるべきであり、しかし熱硬化においては高い反応性を示すべきである。
【0019】
熱硬化の過程において、エステル交換、アミノ基転移、N−ヒドロキシアルキルアミノ基および/またはN−アルコキシアルキルアミノ基の自己縮合、N−アルコキシアルキルアミノ基のアセタール交換、および/またはN−ヒドロキシアルキルアミノ基のアセタール化は、問題なく確実に進行すべきであり、ならびにポリイソシアネートの存在下でも非常に良好な再現性を有するべきである。
【0020】
同時に、ポリイソシアネートを含む熱硬化性混合物は、実用的なポットライフまたは処理期間を有するべきである。さらに、少なくとも化合物(B)、特にアミノ樹脂(B)、およびポリイソシアネートの両方が、硬化過程に形成される三次元網目構造に組み込まれるべきである。
【0021】
本発明のさらなる目的は、少なくとも1種の化合物(B)を含む成分(I)と、ポリイソシアネートを含む成分(II)とを含む二成分または多成分系、特に二成分系から製造される熱硬化性混合物、特に熱硬化性コーティング剤のための新規の反応相手および/または触媒を提供することにある。触媒および/または反応相手は、保存安定性、特に成分(II)の保存安定性を損なうことなく、成分(I)中および成分(II)中の両方に存在できるべきである。それにより意図するところは、熱硬化性混合物の製造方法および使用方法における自由度を大幅に増加させることにある。
【0022】
本発明の目的は、特に硬く、耐摩耗性、耐擦過性、耐エッチング性を有し、クリアコートとして特に高光沢および透明性に優れる熱硬化材料、特に塗膜を得るための新規の熱硬化性混合物、特に熱硬化性コーティング剤を提供することにある。
【0023】
解決手段
しがたって、エステル交換、アミノ基転移、N−ヒドロキシアルキルアミノ基および/またはN−アルコキシアルキルアミノ基の自己縮合、N−アルコキシアルキルアミノ基のアセタール交換、および/またはN−ヒドロキシアルキルアミノ基のアセタール化によって反応し得る化合物(B)のための反応相手および/または触媒としてのホスホン酸ジエステルおよびジホスホン酸ジエステル(A)の新規の使用(以下において「本発明の使用」と呼ぶ)を見い出した。
【0024】
また、エステル交換、アミノ基転移、N−ヒドロキシアルキルアミノ基および/またはN−アルコキシアルキルアミノ基の自己縮合、N−アルコキシアルキルアミノ基のアセタール交換、および/またはN−ヒドロキシアルキルアミノ基のアセタール化によって硬化可能な、少なくとも1種のホスホン酸ジエステルおよび/またはジホスホン酸ジエステル(A)を含む新規の熱硬化性混合物(以下において「本発明の混合物」と呼ぶ)も見い出された。
【0025】
特に、少なくとも1種の化合物(B)と、少なくとも1種のホスホン酸ジエステルおよび/または少なくとも1種のジホスホン酸ジエステル(A)とを混合する工程ならびに得られた混合物を均質化する工程を含む、本発明の混合物の製造のための新規の方法(以下において「本発明の方法」と呼ぶ)を見い出した。
【0026】
本発明のさらなる内容については、説明により明らかにする。
【0027】
本発明の利点
本発明の目的が、本発明の使用、本発明の混合物、および本発明の方法によって達成され得ることは、従来技術に照らして驚くべきことであり、当業者であっても予測できなかったことであった。
【0028】
特に、驚くべきことに、本発明の使用により、ホスホン酸ジエステルおよびジホスホン酸ジエステル(A)の適用可能性が格段に拡大し、その結果、当該技術が格段に強化されることとなった。
【0029】
さらに、驚くべきことに、ホスホン酸ジエステルおよび/またはジホスホン酸ジエステル(A)は、エステル交換、アミノ基転移、N−ヒドロキシアルキルアミノ基および/またはN−アルコキシアルキルアミノ基の自己縮合、N−アルコキシアルキルアミノ基のアセタール交換、および/またはN−ヒドロキシアルキルアミノ基のアセタール化によって反応し得る化合物(B)のための優れた反応相手および/または触媒であった。
【0030】
また、驚くべきことに、本発明の使用により、エステル交換、アミノ基転移、N−ヒドロキシアルキルアミノ基および/またはN−アルコキシアルキルアミノ基の自己縮合、N−アルコキシアルキルアミノ基のアセタール交換、および/またはN−ヒドロキシアルキルアミノ基のアセタール化によって硬化可能な、際だった性能特性を示す本発明の混合物の提供が可能であった。
【0031】
特に本発明の混合物は、保存において安定であり、それでいて、熱硬化において高い反応性を示した。
【0032】
本発明の混合物の熱硬化過程において、エステル交換、アミノ基転移、N−ヒドロキシアルキルアミノ基および/またはN−アルコキシアルキルアミノ基の自己縮合、N−アルコキシアルキルアミノ基のアセタール交換、および/またはN−ヒドロキシアルキルアミノ基のアセタール化は、問題なく良好に進行し、ポリイソシアネートの存在下でも非常に良好な再現性を有していた。
【0033】
同時に、ポリイソシアネートを含む本発明の混合物は、実用的なポットライフまたは処理期間を有していた。さらに、少なくとも、化合物(B)、特にアミノ樹脂(B)、およびポリイソシアネート(C)の両方が、硬化過程で形成された三次元網目構造に組み入れられた。
【0034】
特に、少なくとも1種の化合物(B)を含む成分(I)と、ポリイソシアネートを含む成分(II)とを含む二成分系または多成分系、特に二成分系から、本発明の混合物、特に本発明のコーティング剤を製造することが可能であった。触媒および/または反応相手は、保存安定性、特に成分(II)の保存安定性を損なうことなく、成分(I)中および成分(II)中に両方存在することが可能であった。その結果、本発明の混合物の製造方法および使用方法における自由度を大幅に拡大することが可能であった。
【0035】
特に驚いたことに、本発明の混合物により、特に、硬く、耐摩耗性、耐擦過性、および耐エッチング性を有し、さらにクリアコートとして高い光沢および透明性を有する新規の熱硬化混合物、特に新規の塗膜、が得られた。
【0036】
本発明の詳細な説明
本発明に従って、エステル交換、アミノ基転移、N−ヒドロキシアルキルアミノ基および/またはN−アルコキシアルキルアミノ基の自己縮合、N−アルコキシアルキルアミノ基のアセタール交換、および/またはN−ヒドロキシアルキルアミノ基のアセタール化によって反応し得る化合物(B)のための反応相手および/または触媒として、ホスホン酸ジエステルおよび/またはジホスホン酸ジエステル(A)を使用した。
【0037】
本発明の使用に対し、ホスホン酸ジエステルおよびジホスホン酸ジエステル(A)は、非環状ホスホン酸ジエステル、環状ホスホン酸ジエステル、非環状ジホスホン酸ジエステル、および環状ジホスホン酸ジエステルから成る群から選択される。
【0038】
非環状ホスホン酸ジエステル(A)は、好ましくは一般式(I):
【化1】

で表される非環状ホスホン酸ジエステル(A)から成る群から選択される。
【0039】
一般式(I)において、基R1および基R2は、互いに同一かまたは異なっており、好ましくは、それらは同一である。
【0040】
基R1および基R2は:
− 置換および非置換の、1〜20個、好ましくは2〜16個、特に2〜10個の炭素原子を有するアルキル−、3〜20個、好ましくは3〜16個、特に3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル−、および5〜20個、好ましくは6〜14個、特に6〜10個の炭素原子を有するアリール−(ハイフンは、各場合において、基R1または基R2の炭素原子とO−P基の酸素原子との間の共有結合を意味する);
− 置換および非置換の、アルキルアリール−、アリールアルキル−、アルキルシクロアルキル−、シクロアルキルアルキル−、アリールシクロアルキル−、シクロアルキルアリール−、アルキルシクロアルキルアリール−、アルキルアリールシクロアルキル−、アリールシクロアルキルアルキル−、アリールアルキルシクロアルキル−、シクロアルキルアルキルアリール−、およびシクロアルキルアリールアルキル−(そのアルキル基、シクロアルキル基、およびアリール基がそれぞれ上述の数の炭素原子を含み、ハイフンは、各場合において、基R1または基R2の炭素原子とO−P基の酸素原子との間の共有結合を意味する);および、
− 酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、およびケイ素原子から成る群、特に酸素原子、イオウ原子、および窒素原子から成る群から選択される少なくとも1個、特に1個、のヘテロ原子を含む置換および非置換の上記の種類の基−(ハイフンは、基の炭素原子とO−P基の酸素原子との間の共有結合を意味する);
から成る群から選択される。
【0041】
環状ホスホン酸ジエステル(A)は、好ましくは一般式II:
【化2】

【0042】
一般式IIにおいて、基R3および基R4は互いに同一かまたは異なっており、好ましくは、それらは同一である。
【0043】
基R3および基R4は:
− 置換および非置換の、2価の、1〜20個の、好ましくは1〜10個の、特に1〜6個の炭素原子を有するアルキル−、3〜20個の、好ましくは3〜10個の、特に3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキル−、および5〜20個の、好ましくは6〜14個の、特に6〜10個の炭素原子を有するアリール−(ハイフンは、各場合において、基R1または基R2の炭素原子とO−P基の酸素原子との間の共有結合を意味する);
− 置換および非置換の、2価の、アルキルアリール−、アリールアルキル−、アルキルシクロアルキル−、シクロアルキルアルキル−、アリールシクロアルキル−、シクロアルキルアリール−、アルキルシクロアルキルアリール−、アルキルアリールシクロアルキル−、アリールシクロアルキルアルキル−、アリールアルキルシクロアルキル−、シクロアルキルアルキルアリール−、およびシクロアルキルアリールアルキル−(該アルキル基、該シクロアルキル基、および該アリール基がそれぞれ上記の数の炭素原子を含み、ハイフンは、各場合において、基R3または基R4の炭素原子とO−P基の酸素原子との間の共有結合を意味する);ならびに、
− 酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、およびケイ素原子から成る群から選択される少なくとも1個の、特に1個のヘテロ原子を含む置換および非置換の上記の種類の2価の基−(ハイフンは、基の炭素原子とO−P基の酸素原子との間の共有結合を意味する);
から成る群から選択される。
【0044】
一般式IIにおいて、変数Zは、
− 基R3の原子と基R4の原子の間の共有結合;
− 酸素原子、置換、特に酸素置換、および非置換の硫黄原子、置換、特にアルキル置換の窒素原子、置換、特に酸素置換のリン原子、および置換、特にアルキル置換およびアルコキシ置換のケイ素原子、特に酸素原子から成る群から選択された2価の結合基(特には酸素原子);または、
− 置換および非置換の、1〜10個の、特に1〜6個の、特に1〜4個の炭素原子を有するアルキル、3〜10個の、特に3〜6個の、特に6個の炭素原子を有するシクロアルキル、および5〜10個の、特に6個の炭素原子を有するアリール(前記アルキル、シクロアルキル、およびアリールは、ヘテロ原子非含有か、もしくは、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、およびケイ素原子から成る群、特に酸素原子、硫黄原子、および窒素原子から成る群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有する)から成る群から選択された2価の結合基;
である。
【0045】
好ましくは、非環状ジホスホン酸ジエステル(A)が、一般式III:
(R1−O)(O)PH−O−PH(O)(O−R2) (III);
[式中、変数は上記と同義である]。
で表される非環状ジホスホン酸ジエステル(A)から成る群から選択される。
【0046】
好ましくは環状ジホスホン酸ジエステル(A)が、一般式IV:
【化3】

[式中、変数は上記と同義である]
で表される環状ジホスホン酸ジエステル(A)から成る群から選択される。
【0047】
基R1、R2、R3、およびR4の好適な置換基は、ホスホン酸ジエステルおよびジホスホン酸ジエステル(A)の活性に悪影響を及ぼさず、本発明の混合物の硬化反応を阻害せず、望ましくない副反応の原因とならず、毒性作用を引き起こさない全ての基および原子を含む。好適な置換基の例は、ハロゲン原子、ニトリル基、またはニトロ基であり、好ましくはハロゲン原子であり、特にフッ素原子、塩素原子、および臭素原子である。
【0048】
好ましくは基R1、R2、R3、およびR4は非置換である。
【0049】
好ましくは基R1およびR2が、フェニル、メチル、およびエチルから成る群から選択される。より好ましくは、フェニルが用いられる。
【0050】
好ましくは、一般式(I)の非環状ホスホン酸ジエステル(A)が用いられる。
【0051】
より好ましくは、一般式(I)の非環状ホスホン酸ジエステル(A)の基R1およびR2が、フェニル、メチル、およびエチルから成る群から選択される。特にフェニルが用いられる。
【0052】
一般式(I)の特に好適なホスホン酸ジエステル(A)の例としては、ホスホン酸ジフェニル(しばしば、当業者により(完全には正しくないものの)亜リン酸ジフェニルと呼ばれる)が挙げられる。
【0053】
本発明の使用の目的おいて、化合物(B)は単独で、ホスホン酸ジエステルおよび/またはジホスホン酸ジエステル(A)と一緒に存在する。好ましくは、それらはさらなる成分と一緒に本発明の混合物中に存在する。
【0054】
化合物(B)は、低分子量の、オリゴマー化合物、およびポリマー化合物から成る群から選択される。
【0055】
周知のように、オリゴマー化合物は、3〜12個の低分子量構造単位で構成された化合物として理解される。
【0056】
周知のように、ポリマー化合物は、8個以上の低分子量構造単位で構成された化合物として理解される。
【0057】
8〜12個の低分子量構造単位で構成された化合物が、当業者によってオリゴマーと見なされるか、またはポリマーと見なされるかは、主に当該化合物の分子量に依存する。
【0058】
また、本発明の混合物の目的において、低分子量のオリゴマー化合物(B)は、当業者によって架橋剤と見なされており、ポリマー化合物(B)は結合剤と見なされている。
【0059】
化合物(B)は、エステル交換、アミノ基転移、N−ヒドロキシアルキルアミノ基および/またはN−アルコキシアルキルアミノ基の自己縮合、N−アルコキシアルキルアミノ基のアセタール交換、および/またはN−ヒドロキシアルキルアミノ基のアセタール化に対して本発明の使用に関して使用され得る、少なくとも2つの、好ましくは少なくとも3つの、特に少なくとも4つの反応性官能基を含む。
【0060】
化合物(B)の反応性官能基は、好ましくは、ヒドロキシ基、チオール基、1級アミノ基、2級アミノ基、N−ヒドロキシアルキルアミノ基、およびN−アルコキシアルキルアミノ基から成る群、特にヒドロキシ基、N−ヒドロキシアルキルアミノ基、およびN−アルコキシアルキルアミノ基から成る群から選択される。
【0061】
化合物(B)のN−ヒドロキシアルキルアミノ基は、好ましくはN−ヒドロキシメチルアミノ基である。
【0062】
化合物(B)のN−アルコキシアルキルアミノ基は、好ましくはN−メトキシメチルアミノ基である。
【0063】
上記のN−ヒドロキシアルキルアミノ基、特にN−ヒドロキシメチルアミノ基、および/またはN−アルコキシアルキルアミノ基、特にN−メトキシメチルアミノ基を含む化合物(B)は、好ましくはアミノ樹脂(B)であり、例えば、
− Bodo Mueller/Ulrich Poth,「Lackformulierung und Lackrezeptur−Das Lehrbuch fuer Ausbildung und Praxis」,ed.Dr.Ulrich Zorll,Vincentz Verlag,Hannover,2003,「2.2 Einbrennlacke auf Basis von Aminoharzen」,pages.124 to 143、および「4.2 Waessrige Einbrennlacke auf Basis von Aminoharzen」p.206〜215、
− Z.W.Wicks Jr.,F.Jones and S.P.Pappas,「Organic Coatings−Science and Technology」,2nd edition,1999,Wiley−Interscience,New York,Weinheim,「Chapter 9−Amino Resins」,pages.162〜179、または、
− Johan Bieleman,「Lackadditive」,Wiley−VCH,Weinheim,New York,1998、「7.2.2 Melaminharz−vernetzende Systeme」,p.242〜250
により詳細に公知である。
【0064】
また、ヒドロキシル基、チオール基、1級アミノ基および/または2級アミノ基、特にヒドロキシル基、を含む化合物(B)は、好ましくは、付加樹脂および縮合樹脂、ならびにオレフィン性不飽和モノマーの(コ)ポリマー、から成る群から選択される。好ましくは、それらは、例えば熱硬化性混合物において一般的に使用されるような結合剤(B)である。
【0065】
以下に記載の、アミノ樹脂(B)および/またはポリイソシアネート(C)と組み合わせて一般的に熱硬化性混合物で使用されるようなヒドロキシル基含有結合剤(B)が特に使用される。
【0066】
アミノ樹脂(B)および/またはポリイソシアネート(C)と組み合わせて使用する好適な結合剤(B)の例としては、例えば、
− Bodo Mueller/Ulrich Poth,「Lackformulierung und Lackrezeptur−Das Lehrbuch fuer Ausbildung und Praxis」,ed.Dr.Ulrich Zorll,Vincentz Verlag,Hannover,2003、「2.2.3 Kombinationspartner fuer Aminoharze」,pages.130 to 133,「4.2 Waessrige Einbrennlacke auf Basis von Aminoharzen」,pages.206 to 215、および「1.3.1.3 OH−Gruppen−haltige Bindemittel fuer 2K−PUR−Lacke」,pages.104 to 106
により公知である。
【0067】
驚くべきことに、所定の本発明の混合物中において、ホスホン酸ジエステルおよびジホスホン酸ジエステル(A)と化合物(B)との反応、および化合物(B)のエステル交換、アミノ基転移、N−ヒドロキシアルキルアミノ基および/またはN−アルコキシアルキルアミノ基の自己縮合、N−アルコキシアルキルアミノ基のアセタール交換、および/またはN−ヒドロキシアルキルアミノ基のアセタール化は、それ自身で進行することが可能である。また、驚くべきことに、当該反応および触媒作用は、同時にお互い一緒に進行することも、または一方に続いて順次進行することも可能である。
【0068】
さらに驚くべきことに、反応および/または触媒作用は、少なくとも1つの遊離イソシアネート基、好ましくは少なくとも2つの遊離イソシアネート基、および特に少なくとも3つの遊離イソシアネート基を含む化合物(C)の存在下でさえも問題なく進行した。
【0069】
好適な化合物(C)の例としては、
− モノイソシアネー卜(C)、例えば、エチルイソシアネー卜、プロピルイソシアネー卜、ブチルイソシアネー卜、ペンチルイソシアネー卜、ヘキシルイソシアネー卜、ヘプチルイソシアネー卜、オクチルイソシアネー卜、ノニルイソシアネー卜、デシルイソシアネー卜、ウンデシルイソシアネー卜、ラウリルイソシアネー卜、シクロヘキシルイソシアネー卜またはフェニルイソシアネー卜;
− ジイソシアネート(C)、例えば、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、ω、ω’−ジプロピルエーテルジイソシアネート、シクロヘキシル−1,4−ジイソシアネート、シクロヘキシル−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキシル−1,2−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,5−ジメチル−2,4−ジ(イソシアナートメチル)ベンゼン、1,5−ジメチル−2,4−ジ(イソシアナートエチル)ベンゼン、1,3,5−トリメチル−2,4−ジ(イソシアナートメチル)ベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,4−ジ(イソシアナートメチル)ベンゼン、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、およびジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート;および
− 特許および特許出願、カナダ特許出願公開第2163591号、米国特許第4419513号、米国特許第4454317号、欧州特許出願公開第0646608号、米国特許第4801675号、欧州特許出願公開第0183976号、ドイツ特許出願公開第4015155号、欧州特許出願公開第0303150号、欧州特許出願公開第0496208号、欧州特許出願公開第0524500号、欧州特許出願公開第0566037号、米国特許第5258482号、米国特許第5290902号、欧州特許出願公開第0649806号、ドイツ特許出願公開第4229183号、欧州特許出願公開第0531820号から公知であり、有利には2.0〜5.0、好ましくは2.2〜4.0、特に2.5〜3.8のNCO官能基を有するポリイソシアネート(C)、例えば、ノナントリイソシアネート(NTI)のようなトリイソシアネート、そして上記ジイソシアネートおよびトリイソシアネート(C)をベースとするポリイソシアネート(C)、特にイソシアヌレート、ビウレット、アロファネート、イミノオキサダイアジンジオン、ウレタン、カルボジイミド、尿素、および/またはウレトジオン基を含むオリゴマー;
− ドイツ特許出願公開第19828935号に記載された種類の高粘性ポリイソシアネート(C);ならびに
− ドイツ特許出願公開第19924170第2欄6〜34行目、第4欄16行目〜第6欄62行目より公知のポリイソシアネート(C)、国際出願第00/31194号第11頁30行〜第12頁26行および国際出願第00/37520号第5頁4行目〜第6頁27行目より公知のポリイソシアネート(C)、および欧州特許出願公開第0976723号第12頁0128段落〜第22頁0284段落より公知のポリイソシアネート(C)
が挙げられる。
【0070】
化合物(C)に対する化合物(B)、特にアミノ樹脂(B)、の比率は広い範囲で変えることが可能であり、それにより、本発明の混合物の物理的組成も広い範囲で変えてそれぞれの最終用途の用件に適合させることが可能であることは、特に本発明の使用の利点である。(B):(C)の比率は、好ましくは0.01〜100の範囲であり、より好ましくは0.1〜50の範囲であり、特に1〜10の範囲である。
【0071】
本発明の使用のさらなる特定の利点は、ホスホン酸ジエステルおよび/またはジホスホン酸ジエステル(A)が、比較的少量においても高い活性を示すことにある。それらは、本発明の特定の混合物が存在する各場合において、好ましくは0.1〜20重量%の範囲の量、さらに好ましくは0.5〜15重量%の範囲の量、特に1〜10重量%の範囲の量で使用される。
【0072】
本発明の混合物は、上記の少なくとも1種、特に1種のホスホン酸ジエステルおよび/またはジホスホン酸ジエステル(A)、ならびに上記の少なくとも1種の化合物(B)を必ず含む。
【0073】
本発明の混合物は、さらに、少なくとも1種のポリイソシアネート(C)を含んでもよい。
【0074】
本発明の混合物は、特に、さらに少なくとも1種の添加剤(D)を有効量において含んでもよい。添加剤(D)は、好ましくは、化合物(B)および(C)とは異なる架橋剤、化学線、特に紫外線で活性化され得る化合物、反応性および不活性有機溶媒、有機および無機の、有色および無色の、視覚的効果を付与するための、電気伝導性、磁気遮蔽性、および蛍光顔料、透明および不透明の、有機および無機のフィラー、ナノ粒子、UV吸収剤、光安定剤、フリーラジカル捕捉剤、光開始剤、フリーラジカル重合開始剤、乾燥剤、揮発分除去剤、スリップ剤、重合防止剤、消泡剤、乳化剤、湿潤剤、接着促進剤、流れ調整剤、被膜形成補助剤、レオロジー制御剤、および難燃剤、から成る群から選択される。
【0075】
本発明の混合物は、上記の成分(B)〜乃至(D)を、例えば、欧州特許第1171356号、または国際特許出願第01/09261号、同第01/09260号、同第01/09259号または同第01/09231号、あるいはBodo MullerおよびUlrich Pothによるテキスト「Lackformulierung und Lackrezeptur−Das Lehrbuch fuer Ausbildung und Praxis」,ed.Dr.Ulrich Zorll,Vincentz Verlag,Hanover,2003,「2.2 Einbrennlacke auf Basis von Aminoharzen」,pages.124 to 143、「4.2 Waessrige Einbrennlacke auf Basis von Aminoharzen」,pages.206 to 215、「1.3.1 Zwei−Komponenten−Systeme(2 K)」,pages.98 to 111、「3.2 Waessrige Zwei−Komponenten−Systeme(2K)」,pages.192 to 197、および「Teil IV Loesemittelfreie Lacke −1.1 2K−Polyurethan−Beschichtungen」,pages.231 to 233、により公知であるような、一般的な既知の量において含む。
【0076】
本発明の混合物は、非常に多様な物理的状態および三次元的形態のいずれかを取り得る。
【0077】
したがって、本発明の混合物は、室温で固体または液体または流体であってもよい。
あるいはまた、それらは、室温では固体で、高温では流体であってもよく、熱可塑性挙動を示すのが好ましい。そして、特にそれらは、有機溶媒溶液、水性混合溶媒、実質的または完全に溶剤および水非含有液体混合物(100%系)、実質的または完全に溶剤および水を非含有固体粉末、または実質的または完全に溶剤および水非含有粉体懸濁物(粉体スラリー)であってもよい。
【0078】
また、それらは、すべての構成成分が1つの成分中に一緒に存在している一成分系であってもよい。
【0079】
それらは、好ましくは二成分系または多成分系、特に二成分系であって、その場合、ポリイソシアネート(C)は、本発明の当該混合物の製造および適用の直前まで、他の構成成分、特に構成成分(B)と分離された別の成分(II)中に存在する。その他の構成成分は、好ましくは少なくとも1つの、特に1つの成分(I)中に存在する。
【0080】
この文脈において、ホスホン酸ジエステルおよび/またはジホスホン酸ジエステル(A)も、本発明の二成分系または多成分系の、ポリイソシアネート(C)を含む成分(II)中に存在してもよいことは、本発明の使用、本発明の混合物、および本発明の方法において特に有利な点である。
【0081】
方法に関しては、本発明の混合物の製造に特異性はないが、本発明の方法に従って、一般的な既知の混合方法および装置、例えば、撹拌槽、撹拌ミル、押出機、配合機、ウルトラタラックス装置、インライン溶解機、静的ミキサー、マイクロミキサー、歯車分散機、圧力放出ノズル、および/またはマイクロ流動化装置などを用いた上記成分の混合および均質化によって、適切であれば化学線の不存在下で、実施される。特に、本発明の混合物の取るべき物理的状態および三次元的形態に従って、任意の所定の個別の場合に応じた最適な方法が選択される。例えば、本発明の熱可塑性混合物がシートまたは積層の形態を取る場合、本発明の混合物の製造とその成形には、スロットダイによる押出成形が特に適切である。
【0082】
結果として得られる本発明の混合物は、好ましくは、非常に幅広い多様な最終用途のいずれに対しても役立つ、以下において「本発明の材料」と呼ぶ新規の硬化材料、特に新規の熱硬化性材料、を製造するために使用される。
【0083】
本発明の混合物は、好ましくは、成形品およびシートの出発生成物であり、あるいはコーティング剤、接着剤、または封止剤でもあり、特にはコーティング剤である。
【0084】
本発明の材料は、好ましくは、新規の成型品、シート、塗膜、接着層、および封止剤であり、特には新規の塗膜である。
【0085】
特に、本発明のコーティング剤は、新規の下塗り材料、電着材料、サーフェイサー、ストーンチップ保護プライマー、無色のトップコート剤、ベースコート、特に水性塗料、材料および/またはクリアコート剤として、下塗り塗装、電着塗装、サーフェイサー、下塗り塗膜、ベースコート、無色のトップコートおよび/またはクリアコートを製造するために使用される。
特に、それらは、クリアコート剤として、新規の、色および/または効果を付与するための、電気伝導性、磁気遮蔽性、または蛍光コーティング剤系、特に色および/または効果を付与する多層塗装系を製造するために使用される。本発明の多層塗装系の製造のために、一般的な既知のウェットオンウェット技術および/または押出技術を使用することが可能であり、そして一般的な既知の塗装構成またはシート構成を使用することも可能である。
【0086】
本発明の材料は、本発明の混合物を、一般的な既知の一時的または恒久的基質に適用することによって製造される。
【0087】
本発明のシートおよび成形品は、好ましくは、本発明の混合物によって製作された本発明のシートおよび成型品に損傷を与えずに簡単に除去可能な一般的な既知の一時的な基質、例えば金属およびプラスチックベルトおよびシート、あるいは金属、ガラス、プラスチック、木材、またはセラミックの中空体などを使用して製造される。
【0088】
本発明の混合物は、本発明のコーティング剤、接着層、および封止剤を製造するために使用される場合、永久的な基質、例えば輸送手段の本体、特に自動車本体、およびその部品、建築物の内装および外装ならびにその部品、ドア、窓、家具、中空のガラス器具、コイル、容器、包装、小部品、光学的、機械的、および電気的部品、および大型家電製品の部品などに使われる。本発明のシートおよび成形品は、永久的な基質と同様の役割を果たしてもよい。
【0089】
方法に関して、本発明の混合物の適用に特異性はなく、本発明の当該混合物に好適な一般的な既知の適用方法、例えば、押出機、電気塗装、注入、噴霧(粉体噴霧など)、ナイフコーティング、拡散、鋳造、浸漬、浸透、または圧延など、により実施してもよい。押出適用法および噴霧適用法の使用が有利であり、特に噴霧適用法が有利である。
【0090】
そのような適用に続いて、本発明の混合物に対し、一般的な既知の熱硬化処理を行う。
【0091】
熱硬化は、一般的に、特定の休止時間後またはフラッシュオフタイム後に実施される。この時間は、30秒〜2時間、好ましくは1分〜1時間、特には1〜45分であってもよい。例えば、休止時間は、本発明の混合物の膜の流動および揮発分除去、ならびに、任意の存在する溶媒および/または水分などの揮発性成分の蒸発のために役立つ。フラッシュオフは、高温(ただし硬化に十分な温度より低い温度)、および/または大気中の湿気を除去することによって促進され得る。
【0092】
また、この処理方法は、適用された本発明の混合物、特に本発明のコーティング剤の膜、特に硬化されていない、または部分的に硬化された本発明の塗料の膜を乾燥するためにも使用される。
【0093】
熱硬化は、例えば、ガス、液体、および/または固体の熱媒体(例えば、熱気、加熱オイル、または加熱されたロールなど)、またはマイクロ波放射、赤外線および/または近赤外(NIR)線によって行なわれる。加熱は、好ましくは強制空気オーブン内において、あるいはIRおよび/またはNIRランプへ曝露することによって行なわれる。熱硬化は段階的に行ってもよい。熱硬化は、好ましくは室温〜200℃の範囲の温度で、より好ましくは室温〜180℃の範囲の温度で、特に室温〜160℃の範囲の温度で実施される。
【0094】
さらに、熱硬化は、物理的硬化によって促進されてもよく、その場合、結果として得られる本発明の材料内において、結合剤のポリマー分子のループ形成を介した結合形成を伴って、本発明の混合物からの溶媒の放出によって膜化が生じる(概念については、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,New York,1998,「Binders」,pages.73 and p.74を参照)。もしくは、膜化が結合粒子の癒着を介して生じる(Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,New York,1998,「Curing」,pages.274 and 275を参照)。
【0095】
本発明の結果として得られる材料、特に、本発明の結果として得られるシート、成形品、塗膜、接着層、および封止剤は、輸送手段の本体、特に自動車の車体、およびその部品、建築物の内装および外装ならびにその一部、ドア、窓、家具、中空のガラス器具、コイル、容器、包装、小部品、例えば、ナット、ボルト、ホイールリムまたはハブキャップなど、光学部品、機械部品、電気部品、例えば巻線(コイル、固定子、ローター)、およびまた、大型家電製品の部品、例えばラジエータ、家庭用機器、冷蔵庫ケーシングまたは洗濯機ケーシングなどの塗膜、接着剤接着、封止剤、包装、およびパッケージングに対して非常に好適である。
【0096】
本発明の混合物は、本発明のクリアコート剤として新規のクリアコートを製造するために使用される場合、特に、非常に有利である。
【0097】
本発明のクリアコートは、通常、多層塗装系の最外側の塗膜、あるはシートまたは積層であり、それらは実質的に全体の外観を決定し、基質、および/または多層塗装系の色および/または効果を付与する塗膜、あるいはシートまたは積層を機械的および化学的損傷、ならびに放射線誘発の損傷から保護するものである。そのため、クリアコートにおける硬さ、耐擦過性、化学安定性、および黄変の安定性の欠如は、特に明白に現れる。しかしながら、製造された本発明のクリアコートは、ほとんど黄変を示さない。それらは、耐擦過性に優れ、擦過後の光沢の低下が非常に少ない。特にAmtec/Kistlerの洗車シミュレーション試験における光沢の損失は、非常に低い。同時に、それらは、高い硬度と特に高い耐薬品性を有する。特にそれらは、顕著な基質接着および被膜間接着を示す。
【0098】
実施例および比較例
実施例1
二成分系1およびクリアコート剤1の製造
まず、成分(I)および(II)のそれぞれの構成成分を所定の量で混合し、得られた混合物を均質化して二成分系1を製造した。
【0099】
成分(I):
− ヒドロキシル含有ポリエステル(Bayer AG社製Desmophen(登録商標)A870、酢酸ブチル中70%)41.15重量部、
− アミノ樹脂(Cytec社製Cymel(登録商標)202)11.21重量部、
− 第一光安定剤(Ciba Specialty Chemicals社製Tinuvin(登録商標)292、酢酸ブチル中10%)5.33重量部、
− 第二光安定剤(Ciba Specialty Chemicals社製Tinuvin(登録商標)1130、酢酸ブチル中10%)10.67重量部、
− 酢酸メトキシプロピル(MPA)/Solvesso(登録商標)100(1:1)10.02重量部、および
− 酢酸ブチルグリコール2.13重量部
成分(II):
− ポリイソシアネート(BASF Aktiengesellschaft社製Basonat(登録商標)H1100、Solventnaphtha(登録商標)中90%)19.49重量部、および
− ホスホン酸ジフェニル3重量部
成分(I)および(II)を混合し、得られた混合物を均質化して、クリアコート剤1を製造した。そのクリアコート剤のポットライフは、6時間以上であった。
【0100】
実施例2
クリアコート1の製造
クリアコート1は、陰極析出させた熱硬化電着塗装および熱硬化サーフェイサーコートによって被覆したスチールパネル(Bonder(登録商標)26S60)を使用して製造した。
【0101】
サーフェイサーコート上に、市販の黒色水性ベースコート剤であるBASF Coatings AG社製Brillantschwarzfromを塗布した。結果として得られた水性ベースコート膜を10分間80℃で乾燥した。次に、実施例1からのクリアコート剤1を塗布し、その後、水性ベースコート膜およびクリアコート膜1を一緒に140℃で22分間硬化させた。この下地塗装の膜厚は10μm、クリアコート1の膜厚は40μmであった。
【0102】
クリアコート剤1は、完全に透明で、ブリスター、ビットまたはクレーターなどの塗装不良がなく、明るい高光沢であり、黄変がなく、硬く、フレキシブルで、耐擦過性、化学的安定性、耐エッチング性、および耐摩耗性を有していた。そのため、最高級の自動車のための、色および硬化を付与する多層塗装系の一部であるクリアコートとして極めて好適である。
【0103】
これと平行して、クリアコート剤1の架橋の過程を、メラミン幅(1500〜1550cm−1)におけるシフトおよびイソシアネートバンド(2250〜2300cm−1)の減少に基づいて、ATR結晶上にてIR分光分析によって25分間監視した。IRスペクトルにより、ホスホン酸ジフェニルの存在下でアミノ樹脂およびポリイソシアネートの両方が三次元網目構造中に組み込まれたことが強調された。その上、ホスホン酸ジフェニルのエステル交換によって形成されたO−PH−O構造単位も、三次元網目構造に組み入れられたことが明らかとなった。
【0104】
実施例V1(比較例)
二成分系V1の製造
ホスホン酸ジフェニル3重量部の代わりに、市販の酸性リン酸エステル(Cytec Industries社製のCycat(登録商標)296−9、50%ブタノール溶液)を用いて、実施例1と同じように実施した。
【0105】
酸性リン酸エステルは、成分(II)と相溶性ではなく、その代わりに、望ましくない反応を伴う発熱により、成分(II)の有用性が著しく損なわれた。
【0106】
実施例V2(比較例)
二成分系V2、クリアコート剤V2、およびクリアコートV2の製造
二成分系V2を製造するため、成分Iに酸性リン酸エステルの溶液を加えて比較例V1と同様に行った。
【0107】
当該成分Iの保存安定性は、実施例1または比較例V1の成分Iよりも著しく低下した。
【0108】
クリアコート剤V2の作製の過程において、早期の望ましくない反応を伴う発熱により、濁りおよびビットが生じた。
【0109】
クリアコート剤V2の架橋の過程を、メラミン幅(1500〜1550cm−1)におけるシフトおよびイソシアネートバンド(2250〜2300cm−1)の減少に基づいて、ATR結晶上にてIR分光分析によって25分間監視した。IRスペクトルにより、アミノ樹脂は架橋されたが、ポリイソシアネートの架橋は著しく悪影響を受けたことが強調された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル交換、アミノ基転移、N−ヒドロキシアルキルアミノ基および/またはN−アルコキシアルキルアミノ基の自己縮合、N−アルコキシアルキルアミノ基のアセタール交換、および/またはN−ヒドロキシアルキルアミノ基のアセタール化によって反応し得る化合物(B)のための反応相手および/または触媒としてのホスホン酸ジエステルおよびジホスホン酸ジエステル(A)の使用。
【請求項2】
前記化合物(B)が熱硬化性混合物中に存在する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記化合物(B)が、低分子量の、オリゴマー性化合物、およびポリマー性化合物から成る群から選択される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記化合物(B)が、ヒドロキシル基、チオール基、1級アミノ基、2級アミノ基、N−ヒドロキシアルキルアミノ基、およびN−アルコキシアルキルアミノ基から成る群から選択される少なくとも2つの反応性官能基を有する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
N−ヒドロキシアルキルアミノ基および/またはN−アルコキシアルキルアミノ基を有する前記化合物(B)がアミノ樹脂であり、かつ
ヒドロキシル基、チオール基、1級アミノ基、および2級アミノ基を有する前記化合物(B)が、付加樹脂、縮合樹脂、およびオレフィン性不飽和モノマーの(コ)ポリマーから成る群から選択される、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記熱硬化性混合物がポリイソシアネート(C)を含む、請求項2乃至5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記ホスホン酸ジエステルおよびジホスホン酸ジエステル(A)が、非環状ホスホン酸ジエステル、環状ホスホン酸ジエステル、非環状ジホスホン酸ジエステル、および環状ジホスホン酸ジエステルから成る群から選択される、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記非環状ホスホン酸ジエステル(A)が、一般式I:
【化1】

[式中、変数は以下によって定義付けられる:
1およびR2は、互いに同一または異なっており、かつ
置換および非置換の、1〜20個の炭素原子を有するアルキル−、3〜20個の炭素原子を有するシクロアルキル−、および5〜20個の炭素原子を有するアリール−(ハイフンは、各場合において、基R1または基R2の炭素原子と前記O−P基の前記酸素原子との間の共有結合を意味する);
置換および非置換の、アルキルアリール−、アリールアルキル−、アルキルシクロアルキル−、シクロアルキルアルキル−、アリールシクロアルキル−、シクロアルキルアリール−、アルキルシクロアルキルアリール−、アルキルアリールシクロアルキル−、アリールシクロアルキルアルキル−、アリールアルキルシクロアルキル−、シクロアルキルアルキルアリール−、およびシクロアルキルアリールアルキル−(該アルキル基、該シクロアルキル基、および該アリール基がそれぞれ上記の数の炭素原子を含み、ハイフンは、各場合において、基R1または基R2の炭素原子と前記O−P基の前記酸素原子との間の共有結合を意味する);および
酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、およびケイ素原子から成る群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む置換および非置換の上記の種類の基−(ハイフンは、前記基の炭素原子と前記O−P基の前記酸素原子との間の共有結合を意味する)
から成る群から選択される]
で表される、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
非環状ホスホン酸ジエステル(A)が、一般式II:
【化2】

[式中、変数は以下によって定義付けられる:
3およびR4は、互いに同一または異なっており、かつ
置換および非置換の、2価の、1〜20個この炭素原子を有するアルキル−、3〜20個の炭素原子を有するシクロアルキル−、および5〜20個の炭素原子を有するアリール−(ハイフンは、各場合において、基R3または基R4の炭素原子と前記O−P基の前記酸素原子との間の共有結合を意味する);
置換および非置換の、2価の、アルキルアリール−、アリールアルキル−、アルキルシクロアルキル−、シクロアルキルアルキル−、アリールシクロアルキル−、シクロアルキルアリール−、アルキルシクロアルキルアリール−、アルキルアリールシクロアルキル−、アリールシクロアルキルアルキル−、アリールアルキルシクロアルキル−、シクロアルキルアルキルアリール−、およびシクロアルキルアリールアルキル−(該アルキル基、該シクロアルキル基、および該アリール基がそれぞれ上記の数の炭素原子を含み、ハイフンは、各場合において、基R3または基R4の炭素原子と前記O−P基の前記酸素原子との間の共有結合を意味する);ならびに、
酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、およびケイ素原子から成る群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む置換および非置換の上記の種類の2価の基−(ハイフンは、基の炭素原子と前記O−P基の前記酸素原子との間の共有結合を意味する);
から成る群から選択され、
Zは、基R3の原子と基R4の原子の間の共有結合であるか、または
酸素原子、置換および非置換の硫黄原子、置換窒素原子、置換リン原子、置換ケイ素原子、置換および非置換の、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、およびケイ素原子から成る群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を有する、およびヘテロ原子を有さない、1〜10個の炭素原子を有するアルキル、3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル、および5〜10個の炭素原子を有するアリールから成る群から選択される2価の結合基
である]
で表される、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
前記非環状ジホスホン酸ジエステル(A)が、一般式III:
(R1−O)(O)PH−O−PH(O)(O−R2)(III)
[式中、変数は上記と同義である]
で表される、請求項7に記載の使用。
【請求項11】
前記環状ジホスホン酸ジエステル(A)が、一般式IV:
【化3】

[式中、変数は上記と同義である]
で表される、請求項7に記載の使用。
【請求項12】
変数R1およびR2が、フェニル、メチル、およびエチルから成る群から選択される、請求項8または10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
1およびR2がフェニルである、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
少なくとも1種のホスホン酸ジエステルおよび/または少なくとも1種のジホスホン酸ジエステル(A)を含む、エステル交換、アミノ基転移、N−ヒドロキシアルキルアミノ基および/またはN−アルコキシアルキルアミノ基の自己縮合、N−アルコキシアルキルアミノ基のアセタール交換、および/またはN−ヒドロキシアルキルアミノ基のアセタール化によって硬化可能な熱硬化性混合物。
【請求項15】
エステル交換、アミノ基転移、N−ヒドロキシアルキルアミノ基および/またはN−アルコキシアルキルアミノ基の自己縮合、N−アルコキシアルキルアミノ基のアセタール交換、および/またはN−ヒドロキシアルキルアミノ基のアセタール化によって反応し得る少なくとも1種の化合物(B)を含む、請求項14に記載の熱硬化性混合物。
【請求項16】
前記化合物(B)が、ヒドロキシル基、チオール基、1級アミノ基、2級アミノ基、N−ヒドロキシルアルキルアミノ基、およびN−アルコキシアルキルアミノ基から成る群から選択された少なくとも2つの反応性官能基を含有する、請求項14または15に記載の熱硬化性混合物。
【請求項17】
N−ヒドロキシアルキルアミノ基および/またはN−アルコキシアルキルアミノ基を含有する前記化合物(B)がアミノ樹脂であり、かつ
ヒドロキシル基、チオール基、1級アミノ基、および2級アミノ基を含有する化合物(B)が、付加樹脂および縮合樹脂、あるいはオレフィン性不飽和モノマーの(コ)ポリマーから成る群から選択される、
請求項16に記載の熱硬化性混合物。
【請求項18】
請求項7乃至14のいずれか1項に記載の少なくとも1種のホスホン酸ジエステルおよび/または少なくとも1種のジホスホン酸ジエステル(A)を含む、請求項14乃至17のいずれか1項に記載の熱硬化性混合物。
【請求項19】
少なくとも1種のポリイソシアネート(C)を含む、請求項14乃至18のいずれか1項に記載の熱硬化性混合物。
【請求項20】
二成分系または多成分系から製造可能な、請求項19に記載の熱硬化性混合物。
【請求項21】
コーティング剤である、請求項14乃至20のいずれか1項に記載の熱硬化性混合物。
【請求項22】
前記コーティング剤が、下塗り材料、電着材料、ストーンチップ保護プライマー、サーフェイサー、色および/または効果を付与するベースコート、色および/または効果を付与するトップコート、またはクリアコート剤である、請求項21に記載の熱硬化性混合物。
【請求項23】
前記コーティング剤が、色および/または効果を付与する多層塗装系を製造するためのクリアコートである、請求項22に記載の熱硬化性混合物。
【請求項24】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の少なくとも1種の化合物(B)と、請求項7乃至13のいずれか1項に記載の少なくとも1種のホスホン酸ジエステルおよび/または少なくとも1種のジホスホン酸ジエステル(A)とを一緒に混合し、得られた該混合物を均質化する工程を含む、請求項14乃至23のいずれか1項に記載の熱硬化性混合物を製造する方法。
【請求項25】
少なくとも1種のポリイソシアネート(C)および/または少なくとも1種の添加剤(D)を、さらに加える、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリイソシアネート(C)を、別の成分(II)として、または別の成分(II)中に添加する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記成分(II)が、請求項7乃至13のいずれか1項に記載の少なくとも1種のホスホン酸ジエステルおよび/または少なくとも1種のジホスホン酸ジエステル(A)を含む、請求項26に記載の方法。

【公表番号】特表2009−511646(P2009−511646A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531612(P2008−531612)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009177
【国際公開番号】WO2007/033826
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス アクチェンゲゼルシャフト (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings AG
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】