説明

ホットメルトコーティング用誘電体塗料組成物およびその製造方法

【課題】高強度なバインダを使用することにより、薄層シートとして実用に耐え得る高い強度の誘電体シートが得られる様に改良されたホットメルトコーティング用誘電体塗料組成物を提供する。
【解決手段】誘電体粉末、ポリオレフィン樹脂、分散剤としてのHLB4〜12の界面活性剤、沸点150〜230℃の炭化水素溶剤を含有して成り、誘電体粉末100重量部に対する各成分の割合が、ポリオレフィン樹脂6〜12重量部、界面活性剤0.5〜1.5重量部、炭化水素溶剤200〜300重量部であり、B型回転粘度計を使用し且つ130℃で測定した粘度が50〜150cpである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルトコーティング用誘電体塗料組成物およびその製造方法に関し、詳しくは、積層部品の製造工程におけるセラミックグリーンシート(誘電体シート)の製造に使用されるホットメルトコーティング用誘電体塗料組成物およびその製造方法に関する。なお、誘電体シートは、セラミックグリーンシートから支持体が剥離されたものである。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサ、積層インダクタ、多層基板などの積層部品の製造方法の代表としてシート工法が挙げられる。シート工法は、ドクターブレード法などにより、支持体の上に、誘電体粉末、バインダ(アクリル樹脂、ブチラール樹脂など)、溶剤(トルエン、アルコール、メチルエチルケトン等)等から調製された誘電体塗料組成物を塗布した後に乾燥してセラミックグリーンシートを形成し、その後、内部電極が印刷されたグリーンシートをカード式に積層していく工法である。
【特許文献1】特開2004−134808号公報
【0003】
ところで、例えば、積層セラミックコンデンサの静電容量は、材料の誘電率、誘電体層間厚さ、積層数によって決定される。近年の電子部品の軽薄短小化により、積層セラミックコンデンサでは、誘電体厚さが1〜2μm程度のものが存在する。このため、誘電体層間厚さを決定するグリーンシート厚さは2μm以下の薄層シートに成形する必要がある。
【0004】
誘電体塗料組成物の設計が薄層シート用として不適切であるとシート強度が弱くなり、グリーンシート成形後に支持体から誘電体シートを剥離する工程において剥離が困難になり、剥離が出来ても、誘電体シートの強度が弱くてシートに穴(欠陥)等が生じ、製品としての特性が取れない等の不具合が発生する。
【0005】
一般的に、誘電体シートの強度を増加するには、バインダ添加量を増加する、塗料の分散性を改善させる等の手段が採用される。ところが、前者の場合は、バインダ添加量増加によって、シートの表面性が悪くなり製品特性に影響があり、しかも、焼成時の脱バインダー量が多くなるため、焼成時にクラックやワレが発生し易くなり製造歩留まりが低下する問題がある。一方、後者の場合は誘電体シートの強度の向上に限界がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、高強度なバインダを使用することにより、薄層シートとして実用に耐え得る高い強度の誘電体シートが得られる様に改良されたホットメルトコーティング用誘電体塗料組成物およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の第1の要旨は、誘電体粉末、ポリオレフィン樹脂、分散剤としてのHLB4〜12の界面活性剤、沸点150〜230℃の炭化水素溶剤を含有して成り、誘電体粉末100重量部に対する各成分の割合が、ポリオレフィン樹脂6〜12重量部、界面活性剤0.5〜1.5重量部、炭化水素溶剤200〜300重量部であり、B型回転粘度計を使用し且つ130℃で測定した粘度が50〜150cpであること特徴とする、ホットメルトコーティング用誘電体塗料組成物に存する。
【0008】
そして、本発明の第2の要旨は、請求項1に記載のホットメルトコーティング用誘電体塗料組成物の製造方法であって、原料成分の加熱混練工程(I)と、得られた混練物の破砕工程(II)及び加熱混合希釈工程(III)とを包含し、加熱混練工程(I)においては、誘電体粉末100重量部と、ポリオレフィン樹脂3〜5重量部と、界面活性剤0.5〜1.5重量部と、これらの3成分と炭化水素溶剤との合計量に対する当該3成分の合計量の割合が93〜97重量%相当量の炭化水素溶剤とを使用し、以下の式(1)に規定する温度(T)の範囲で加熱混練処理し、加熱混合希釈工程(III)においては、残余のポリオレフィン樹脂と炭化水素溶剤とから予め調製された溶液を使用して破砕工程(II)で得られた混練物を以下の式(1)に規定する温度(T)の範囲で加熱混合希釈することを特徴とするホットメルトコーティング用誘電体塗料組成物の製造方法に存する。
【0009】
【数1】

【発明の効果】
【0010】
本発明の誘電体塗料組成物によれば、薄層シートとして実用に耐え得る高い強度(6MPa以上の強度)の誘電体シートが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
先ず、本発明のホットメルトコーティング用誘電体塗料組成物(以下、単に「組成物」と略記する)について説明する。本発明の組成物は、必須成分として、誘電体粉末、ポリオレフィン樹脂、分散剤としての界面活性剤、炭化水素溶剤を含有して成る。
【0012】
誘電体粉末としては、例えば、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複合酸化物の粉末(平均粒子径0.1〜3.0μmの粉末)が使用される。誘電体粉末には、イットリウム、マグネシウム、マンガン、バナジウム等の酸化物から成る公知の助剤を配合することが出来る。
【0013】
ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、樹脂の強度の観点から、通常10万以上、好ましくは50万以上、更に好ましくは200万以上であり、その上限は通常500万である。ポリオレフィン樹脂の種類としては、樹脂の強度の観点から、炭素数2以上の大きな分岐基(側鎖基)が存在せず、単結合のみで主鎖が構成されているポリオレフィン樹脂が好ましい。従って、例えば、ポリメチルペンテンやポリブタジエンより、ポリエチレンやポリプロピレンが好ましく、特にポリエチレンが好ましい。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等が挙げられる。なお、ポリオレフィン樹脂の代わりに、エチレン−酢酸ビニルエステル、ポリアミドを使用した場合は、これらの強度が十分ではなく高強度の誘電体シートが得られない。
【0014】
分散剤として使用する界面活性剤はHLB4〜12(好ましくは4〜9、更に好ましくは4〜6)のものでり、好ましくは熱分解温度が150℃以上のものである。HLBが高すぎる界面活性剤は炭化水素溶剤との相溶性が乏しくて分散剤としての効果が発現し難く、HLBが低すぎる界面活性剤は分子量が大きすぎるために分散剤としての効果が乏しい。熱分解温度が低すぎる界面活性剤は、本発明の組成物の製造の際に熱分解して分散効果が低下する恐れがある。上記の条件を満足する界面活性剤は、好適には各種のノニオン界面活性剤から選択される。本発明においては、脂肪酸エステル変性ポリエチレングリコールが推奨され、中でも、脂肪酸エステルから誘導される単位のブロックとエチレングリコールから誘導される単位のブロックから成るブロック型共重合体が好適である。斯かるブロック型分散剤の市販品としては、ユニケマ(株)社製「JP4」(HLB:5.5、熱分解温度:200℃)が挙げられる。
【0015】
炭化水素溶剤としては、沸点150〜230℃のものを使用する。沸点が低すぎる溶剤は、本発明の組成物の製造の際に蒸発し、沸点が高すぎる溶媒は、セラミックグリーンシートの製作の際の乾燥に長時間要し、しかも、炭化水素溶剤が残留し易いために高強度の誘電体シートが得られ難い。
【0016】
上記の炭化水素溶剤は、通常、パラフィン炭化水素から選択され、その具体例としては、n−ノナン(151℃)、n−デカン(174℃)、n−ウンデカン(196℃)、n−ドデカン(216℃)、n−トリデカン(230℃)等が挙げられる。炭化水素溶剤としては、溶解度パラメータ(SP)が12〜18のものが好ましく、特にn−ドデカン(SP:15.5)が好ましい。SPが低すぎるの炭化水素溶剤は沸点が高すぎる場合が多く、SPが高すぎる炭化水素溶剤はポリオレフィン樹脂の溶解性が乏しい。なお、アルコール、ケトン、エステル、脂肪酸などの他の溶剤ではポリオレフィン樹脂の溶解は極めて困難である。
【0017】
本発明の組成物において、上記の各成分の割合は、誘電体粉末100重量部当りの重量部として、次の通りである。すなわち、ポリオレフィン樹脂は6〜12重量部、好ましくは8〜12重量部、更に好ましくは10〜12重量部、分散剤は0.5〜1.5重量部、炭化水素溶剤は200〜300重量部である。
【0018】
ポリオレフィン樹脂の割合が少なすぎる場合は誘電体シートの保形性が不十分であり、多すぎる場合は誘電体シートの成形時にクラックが発生する。分散剤の割合が少なすぎる場合は分散効果が不十分であり、多すぎる場合は、分散剤が過剰となって分散剤同士が凝集するため却って分散状態が悪化する。炭化水素溶剤の割合が少なすぎる場合は樹脂の全量溶解が困難であり、多すぎる場合は、セラミックグリーンシートの製作の際の乾燥に長時間要し、しかも、炭化水素溶剤が残留し易いために高強度の誘電体シートが得られ難い。
【0019】
本発明の組成物は、例えば、後述の製造方法に従って均一な組成物として得られる。そして、本発明の組成物は、その均一性により、B型回転粘度計を使用し且つ130℃で測定した粘度が50〜150cpである特徴を有する。
【0020】
次に、本発明に係る組成物の製造方法について説明する。本発明の製造方法は、原料成分の加熱混練工程(I)と、得られた混練物の破砕工程(II)及び加熱混合希釈工程(III)とを包含する。
【0021】
本発明の製造方法は上記の3つの工程を包含するが、各工程の意義は次の通りである。すなわち、加熱混練工程(I)においては、後述の条件を採用することにより、誘電体粉末とポリオレフィン樹脂とを十分に分散させることが出来る。しかしながら、加熱混練工程(I)で得られた混錬物では塗料としての流動性が無い固形状であるため、加熱混合希釈工程(III)において上記の混錬物の二次分散を図って塗料化する。従って、加熱混練工程(I)及び加熱混合希釈工程(III)により、成分の分散・塗料化が達成される。また、破砕工程(II)は、加熱混練工程(I)で得られた固形状の混錬物を適当な大きさに破砕し、加熱混合希釈工程(III)での処理の効率化に寄与する。
【0022】
加熱混練工程(I)においては、誘電体粉末100重量部と、ポリオレフィン樹脂3〜5重量部と、ブロック型分散剤0.5〜1.5重量部と、これらの3成分と炭化水素溶剤との合計量に対する当該3成分の合計量の割合が93〜97重量%相当量の炭化水素溶剤とを使用して加熱混練処理する。
【0023】
加熱混練工程(I)におけるポリオレフィン樹脂の使用割合が少なすぎる場合は、加熱混練の際に十分なシェア(剪断力)が被混練物に掛からずに十分な分散状態が得られず、多すぎる場合は、得られる混練物が硬くなりすぎで破砕工程(II)での処理が困難となる。炭化水素溶剤の割合が上記で規定する範囲より多すぎる場合は、粘度が低下し十分なシェアが被混練物に掛からず、少な過ぎる場合は、被混練物が空回り状態となり十分なシェアが被混練物に掛からない。
【0024】
加熱混練工程(I)においては以下の式(1)に規定する温度(T)の範囲で加熱混練処理する必要がある。
【0025】
【数2】

【0026】
加熱混練処理の温度が上記の範囲より低すぎる場合は、ポリオレフィン樹脂が炭化水素溶剤に溶解せず、誘電体粉末に対するシェアも不十分となり、上記の範囲より高過ぎる場合は、ポリオレフィン樹脂が融液状態になり、被混練物の粘度が低下し十分なシェアが被混練物に掛からない。
【0027】
被混練物に掛かるトルクは、良好な分散状態を得る観点から、平均値として2〜5kg・mの範囲が好ましい。トルクの値が高すぎる場合は、ポリオレフィン樹脂の構造が分断されてバインダとしての強度が低下することがある。上記のトルクは、混練設備に具備されたトルクメーターにより容易に測定することが出来る。
【0028】
加熱混練工程(I)で使用する設備は、混練処理が可能である限り、その種類は制限されず、所謂ニーダーと称せられる各種の設備を使用することが出来る。例えば、(株)東洋精機製作所製のラボプラストミルは、駆動部の解体が容易であり、トルクメーターを備えており、加熱可能なニーダーとして、好適である。
【0029】
破砕工程(II)においては加熱混練工程(I)で得られた混錬物を破砕する。本発明において、破砕とはブレードを使用し切断も含む概念である。加熱混練工程(I)で使用する設備としては、回転軸、回転スクリュー、回転刃、回転ロータ等によって破砕・切断機構が構成された各種の設備を使用することが出来る。混錬物の破砕の程度は、次工程の加熱混合希釈工程(III)での処理効率を考慮して適宜選択される。
【0030】
加熱混合希釈工程(III)においては残余のポリオレフィン樹脂と炭化水素溶剤とから予め調製された溶液を使用して破砕工程(II)で得られた混練物を混合希釈する。
【0031】
加熱混合希釈工程(III)においては前記の式(1)に規定する温度(T)の範囲で加熱混合処理する必要がある。加熱混合処理の温度が上記の範囲より低すぎる場合は、ポリオレフィン樹脂が炭化水素溶剤に溶解せず、上記の範囲より高過ぎる場合は、ポリオレフィン樹脂が分解して誘電体シートの強度が低下する。
【0032】
加熱混合希釈工程(III)で使用する設備は、混合・分散処理が可能である限り、その種類は制限されないが、ホモジナイザー、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサーの何れかを使用するのが好ましく、中でもプラネタリーミキサーが好ましい。プラネタリーミキサーは、2本の枠型ブレードが自転・公転(プラネタリー運動)することにより、ブレード相互間およびブレードとタンク内面に強力な剪断力を有し、中・高粘度向きのニーディング効果を持つミキサーである。
【0033】
本発明の組成物は、積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品の製造工程で必要なセラミックグリーンシートの製造の際の誘電体塗料組成物として好適に使用される。具体的には、支持体表面に誘電体塗料組成物をホットメルトコーティングした後に乾燥することによりセラミックグリーンシートを製造することが出来る。ホットメルトコーティングは、例えば、溶融押出機を使用し、本発明の組成物を加熱し、Tダイより支持体上に所定厚さに流延させて固化させることによって行なうことが出来る。この際、本発明の組成物の加熱温度としては、通常、前記の式(1)に規定する温度(T)の範囲が選択される。ホットメルトコーティングの際の組成物の加熱温度が低すぎる場合はポリオレフィン樹脂が析出して均一な誘電体層が得られず、高すぎる場合は、ポリオレフィン樹脂が熱分解して劣化する。本発明の組成物の使用により、薄層シートとして実用に耐え得る高い強度(6MPa以上の強度)の誘電体シートが得られる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の諸例においては、次の材料、設備、評価方法を使用した。
【0035】
<材料>
【0036】
(1)誘電体粉末:
次の方法で調製した誘電体粉末を使用した。すなわち、誘電体原料の主成分としてBaTiO(平均粒径0.2μm/堺化学工業社製「BT02粉」)を使用し、副成分として、主成分100モルに対し、Y:2モル、MgO:2モル、MnO:0.4モル、V:0.1モル、(Ba0.6Ca0.4)SiO:3モルを使用した。先ず、上記の誘電体原料100重量部と高分子分散剤(サンノプコ社製「SN5468」)1重量部とエタノール100重量部をジルコニアボール(2mmφ)と共にポリエチレン容器に投入し、16時間混合して誘電体混合溶液を得た。次いで、誘電体混合溶液を乾燥温度120℃で12時間乾燥して誘電体粉末を得た。
【0037】
(2)ポリエチレン樹脂(PE):
以下の表1に記載の樹脂を使用した(表1中の「樹脂融点」は後述の測定方法による実測値である)。
【0038】
【表1】

【0039】
(3)ブロック型分散剤:
脂肪酸エステル変性ポリエチレングリコール(ユニケマ(株)社製「JP4」、HLB:5.5、熱分解温度:200℃)
【0040】
<使用設備>
【0041】
(1)加熱ニーダー:
(株)東洋精機製作所製ラボプラストミル「ローラミキサR60型」を使用した。仕様は表2に示す通りである。
【0042】
【表2】

【0043】
(2)カッタ:
底部に回転切断刃を備えた家庭用ミキサーを使用した。
【0044】
(3)プラネタリーミキサー:
(株)三英製作所製プラネタリーミキサー「DALTON」(型番:5DMV−01−R)を使用した。
【0045】
<物性測定方法>
【0046】
(1)樹脂の融点:
TG−DTA測定(MAC-SCIENCE製「TG−DTA2000」)を使用し、次の要領で樹脂の融点を測定した。Pt容器に樹脂30mgを測り採り、基準物質として酸化アルミニウムを使用し、大気中、200℃/時間の速度で昇温し、室温ないし400℃の測定温度範囲の吸熱反応のピークを読み取り、樹脂の融点を算出する。
【0047】
(2)誘電体組成物の粘度:
東京計器社製のB型回転粘度計(ロータ番号:S21)を使用し130℃で測定した。
【0048】
(3)誘電体シートの強度:
引張試験器(インストロン社製「INSTRON製5543」)を使用し、引張速度8mm/min、治具ギャップ5mmの条件で測定し、破断応力が最大の値を誘電体シートの強度とした。そして、強度の評価判定は次の様に行なった。すなわち、従来の誘電体シートの強度(バインダとしてブチラール樹脂を使用した製品)は通常4MPaであるが、薄層シートとして実用上に絶え得るかという観点からシートの強度を判定し、シート強度が6MPa未満のものは使用が困難と判断し、シート強度が6MPa以上のものは使用が可能と判断した。6MPa未満のものは(×)、6MPa以上のものは(○)として表した。
【0049】
実施例1〜6:
先ず、加熱ニーダーに、誘電体粉末100重量部と、表3に記載のポリオレフィン樹脂4重量部と、界面活性剤(ブロック型分散剤)1重量部とを入れて15分間予備混練した後、n−ドデカン7.5重量部を添加し、130℃で1時間加熱混練した。この際、誘電体粉末とポリオレフィン樹脂と界面活性剤と、これらの3成分とn−ドデカンとの合計量に対する当該3成分の合計量の割合は、93重量%であった。また、被混練物に掛かるトルクは4kg・mであった。加熱混練後、ブレードを取り外し、混練物の実質的全量を回収した。但し、低密度ポリエチレンを使用した場合は加熱温度は110℃とした。
【0050】
次いで、カッタを使用し、上記の混練物を切断した。切断された混練物(A)は、平均的には、断面が略1mm角で長さが5〜10mmの塊状物であった。
【0051】
一方、プラネタリーミキサーにn−ドデカン200重量部にポリオレフィン樹脂2重量部を入れて130℃に加熱混合して溶液(B)を調製した。次いで、引き続き、130℃の温度で溶液(B)中に上記の混合物(A)を少量ずつ全量添加して加熱混合し、混合物(A)を希釈し、誘電体塗料組成物を得た。但し、低密度ポリエチレンを使用した場合は加熱温度は110℃とした。得られた誘電体塗料組成物の130℃における粘度は、表3に示す通りであった。
【0052】
次いで、二軸溶融押出成形機(東洋精機社製「2D20S」)を使用し、Tダイ(東洋精機社製「T60F」)から、130℃の温度で誘電体塗料組成物を支持体(厚さ75μmの二軸延伸ポリエステルフィルム)上に流延して誘電体層を形成し、更に、自家製炉を使用し、130℃で20分乾燥してセラミックグリーンシートを得た。誘電体層の厚さは、燥後の厚さが8μmとなる様にTダイのギャップを調節した。但し、低密度ポリエチレンを使用した場合は、上記の流延温度および乾燥温度は共に110℃とした。次いで、支持体から剥離した誘電体シートについて強度測定を行なった。結果を表3に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
比較例1〜4(溶剤の種類による影響):
加熱ニーダーに、誘電体粉末100重量部と、超高分子量PE(3)4重量部と、界面活性剤(ブロック型分散剤)1重量部とを入れて15分間予備混練した後、表4に記載の溶剤7.5重量部を添加し、130℃で1時間加熱混練した。何れの場合も、超高分子量PE(3)の分散が不可能であり、次工程以降の処理は中断せざるを得なかった。また、粘度の測定も出来なかった。
【0055】
【表4】

【0056】
比較例5(加熱混練工程の有無による影響):
プラネタリーミキサーに、n−ドデカン207.5重量部を入れ、誘電体粉末100重量部と、超高分子量PE(3)6重量部と、界面活性剤(ブロック型分散剤)1重量部とを順次に少量づつ加えた後、130℃で1時間混合し、実施例6と同一組成の誘電体塗料組成物を得た(誘電体塗料組成物の130℃における粘度は200cpであった)。次いで、実施例1と同一条件でセラミックグリーンシートを得た後、支持体から剥離して回収した誘電体シートの強度を測定した。シートの強度は5.0MPaであり、薄層シートとして実用上に絶え得るレベルではなかった。
【0057】
比較例6(加熱混錬工程における組成の影響):
先ず、加熱ニーダーに、誘電体粉末100重量部と、超高分子量PE(3)4重量部と、界面活性剤(ブロック型分散剤)1重量部とを入れて15分間予備混練した後、n−ドデカン3.0重量部を添加し、130℃で1時間加熱混練した。この際、誘電体粉末、ポリオレフィン樹脂、界面活性剤の3成分とn−ドデカンとの合計量に対する当該3成分の合計量の割合は97重量%であった。また、被混練物に掛かるトルクは1.5kg・mであった。加熱混練後、ブレードを取り外し、混練物の実質的全量を回収した。
【0058】
次いで、カッタを使用し、上記の混練物を切断した。切断された混練物(A)は、平均的には、断面が略1mm角で長さが5〜10mmの塊状物であった。
【0059】
一方、プラネタリーミキサーにn−ドデカン204.5重量部にポリオレフィン樹脂2重量部を入れて130℃に加熱混合して溶液(B)を調製した。次いで、引き続き、130℃の温度で溶液(B)中に上記の混合物(A)を少量ずつ全量添加して加熱混合し、混合物(A)を希釈し、実施例6と同一組成の誘電体塗料組成物を得た。得られた誘電体塗料組成物の130℃における粘度は180cpであった)。
【0060】
次いで、実施例1と同一条件でセラミックグリーンシートを得た後、支持体から剥離して回収した誘電体シートの強度を測定した。シートの強度は3.2MPaであり、薄層シートとして実用上に絶え得るレベルではなかった。
【0061】
比較例7及び8(加熱混練工程における温度の影響):
実施例6において、加熱ニーダにおける加熱混練処理の際の温度を100℃(比較例7)又は160℃(比較例8)に変更した以外は、実施例6と同様に操作し、誘電体塗料組成物の調製、セラミックグリーンシートの作成、誘電体シートの強度の測定を行なった。比較例7の場合の強度は3.8MPa、比較例8の場合の強度は3.1MPaであり、薄層シートとして実用上に絶え得るレベルではなかった。因みに、誘電体塗料組成物の130℃における粘度は、比較例7の場合200cp、比較例8の場合40cpであった。
【0062】
比較例9(加熱希釈混合工程有無の影響):
加熱ニーダーに、誘電体粉末100重量部と、超高分子量PE(3)4重量部と、界面活性剤(ブロック型分散剤)1重量部とを入れて15分間予備混練した後、n−ドデカン7.5重量部を添加し、130℃で1時間加熱混練した。得られた混練物をそのまま誘電体塗料組成物として使用し、実施例1と同一条件でセラミックグリーンシートの製作を試みた。その結果、誘電体塗料組成物の流動性が乏し過ぎ、Tダイから均一に流延させることが出来なかった。因みに、誘電体塗料組成物の130℃における粘度は測定不能であった。
【0063】
比較例10及び11(加熱混合希釈工程における温度の影響):
実施例6において、プラネタリーミキサーにおける加熱混合希釈処理の際の温度を100℃(比較例10)又は160℃(比較例11)に変更した以外は、実施例6と同様に操作し、誘電体塗料組成物の調製、セラミックグリーンシートの作成、誘電体シートの強度の測定を行なった。比較例10の場合の強度は3.2MPa、比較例11の場合の強度は2.7MPaであり、薄層シートとして実用上に絶え得るレベルではなかった。因みに、誘電体塗料組成物の130℃における粘度は、比較例10の場合200cp、比較例11の場合40cpであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体粉末、ポリオレフィン樹脂、分散剤としてのHLB4〜12の界面活性剤、沸点150〜230℃の炭化水素溶剤を含有して成り、誘電体粉末100重量部に対する各成分の割合が、ポリオレフィン樹脂6〜12重量部、界面活性剤0.5〜1.5重量部、炭化水素溶剤200〜300重量部であり、B型回転粘度計を使用し且つ130℃で測定した粘度が50〜150cpであること特徴とする、ホットメルトコーティング用誘電体塗料組成物。
【請求項2】
ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が10万以上500万以下である請求項1に記載の誘電体塗料組成物。
【請求項3】
ポリオレフィン樹脂がポリエチレンである請求項1又は2に記載の誘電体塗料組成物。
【請求項4】
物界面活性剤の熱分解温度が150℃以上である請求項1〜3の何れかに記載の誘電体塗料組成物。
【請求項5】
物界面活性剤がノニオン界面活性剤である請求項1〜4の何れかに記載の誘電体塗料組成物。
【請求項6】
ノニオン界面活性剤が脂肪酸エステル変性ポリエチレングリコールである請求項5に記載の誘電体塗料組成物。
【請求項7】
脂肪酸エステル変性ポリエチレングリコールが脂肪酸エステルから誘導される単位のブロックとエチレングリコールから誘導される単位のブロックから成るブロック型共重合体である請求項6に記載の誘電体塗料組成物。
【請求項8】
炭化水素溶剤の溶解度パラメーター(SP)が12〜18である請求項1〜7の何れかに記載の誘電体塗料組成物。
【請求項9】
請求項1に記載のホットメルトコーティング用誘電体塗料組成物の製造方法であって、原料成分の加熱混練工程(I)と、得られた混練物の破砕工程(II)及び加熱混合希釈工程(III)とを包含し、加熱混練工程(I)においては、誘電体粉末100重量部と、ポリオレフィン樹脂3〜5重量部と、界面活性剤0.5〜1.5重量部と、これらの3成分と炭化水素溶剤との合計量に対する当該3成分の合計量の割合が93〜97重量%相当量の炭化水素溶剤とを使用し、以下の式(1)に規定する温度(T)の範囲で加熱混練処理し、加熱混合希釈工程(III)においては、残余のポリオレフィン樹脂と炭化水素溶剤とから予め調製された溶液を使用して破砕工程(II)で得られた混練物を以下の式(1)に規定する温度(T)の範囲で加熱混合希釈することを特徴とするホットメルトコーティング用誘電体塗料組成物の製造方法。
【数1】

【請求項10】
加熱混練工程(I)における被混練物に掛かる平均トルクが2〜5kg・mである請求項9又は10に記載の製造方法。
【請求項11】
加熱混合希釈工程(III)において、ホモジナイザー、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサーの何れかを使用する請求項9〜12の何れかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2006−1961(P2006−1961A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176568(P2004−176568)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】