説明

ホルムアルデヒドフリーバインダ

本発明は、少なくとも1つの高分子ポリカルボン酸の水分散液と、少なくとも1つのアミン化合物であって、前記アミン化合物の分子量が約20000g/モルを超えない少なくとも1つのアミン化合物と、少なくとも1つの活性化シランとを含有した組成物に関する。本発明に係る組成物は、結合さえ多鉱滓綿の製造用のホルムアルデヒドフリーバインダとして適している。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、鉱滓綿からなる絶縁製品の製造に使用するホルムアルデヒドフリー組成物、前記組成物を含んだ鉱滓綿用バインダ、ホルムアルデヒドフリーな手法で結合させた鉱滓綿の製造方法、及びこのようにして得られる結合(bound)鉱滓綿製品に関する。
【0002】
溶融ガラス又は鉱物材料からの結合鉱物製品の製造においては、溶融材料の繊維化後、それらが未だ熱いうちに、フェノールーホルムアルデヒド樹脂系のバインダを繊維に塗布する慣習が長きに亘って受け入れられている。これは、好ましくは、繊維化後に、例えば独国特許出願公開第3509426号に係るブラスト(blast)延伸プロセスに従ってシュート内で行われる。
【0003】
ここでは、従来技術の最もよく知られたバインダであるフェノール−ホルムアルデヒド樹脂が、好ましくは、水溶液又は分散液の形態で繊維上へと噴霧され、次いで、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂は、それら繊維の未だに比較的高い温度のせいで繊維表面上で重合を開始し、重合プロセスの結果、交点で相互に重なり合った繊維は固化した樹脂滴によってそこで多かれ少なかれ埋め込まれるので、特には繊維の交点で単繊維を相互に接続し、それゆえ、単繊維の相対的な可動性は、最初は遅延させられ、やがて、熱いガラスによる硬化時に、例えばトンネル炉の内側で完全に妨げられる。
【0004】
同様のバインダは、例えば米国特許第3231349号に記載されている。環境保護及び職場の安全の理由で、一方では、従来のフェノール樹脂バインダを代替のホルムアルデヒドフリーバインダで置換する試みが益々企てられている。というのは、それらのホルムアルデヒド含量及びホルムアルデヒド放出のためである。
【0005】
そのような訳で、例えば、欧州特許第0583086号は、少なくとも2つのカルボン酸基又は無水物基を含んだ高分子ポリ酸系ガラス繊維用の硬化性ホルムアルデヒドフリー水性バインダ組成物を記載しており、それは、少なくとも2つの水酸基を含んだポリオールと含燐触媒とを含有し、COOH基とOH基との当量数の比は0:0.01乃至1:3でなければならない。
【0006】
欧州特許第0583086号に記載されている高分子ポリ酸は、例えばポリアクリル酸である。
【0007】
好適に使用されるポリオールは、β−ヒドロキシアルキルアミド、例えば、[N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)]−アジパミドであるが、例えば、エチレングリコール、具リセロール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、スクロース、グルコース、レジルシノール、カテコール、ピロガロール、グリコール化ウレア、1,4−シクロヘキサンジオール、ジエタノールアミン、又はトリエタノールアミンを使用することも可能である。
【0008】
鉱物繊維用の類似のバインダ組成物は、例えば、米国特許第6331350号、欧州特許出願公開第0990728号、及び欧州特許出願公開第0990729号から知られている。ここに記載した従来技術に係る文献も、高分子ポリ酸としてポリアクリル酸を使用している。ポリオールの目的で、アルカノールアミン及びグリセロールもそこで使用されている。
【0009】
加えて、欧州特許第0882074号は、ポリアクリル酸とポリオールとしてのグリコールとに基づいた鉱物繊維用のバインダ組成物を記載している。
【0010】
欧州特許第1232211号は、0乃至50%(重量)の少なくとも1つのエチレン系不飽和ジカルボン酸、その無水物及び/又は塩、並びに、50乃至100%(重量)の少なくとも1つのエチレン系不飽和モノカルボン酸、その無水物及び/又は塩(そこでは、10%(重量)までの酸性のエチレン状に不飽和のモノマーが、その酸性のエチレン系不飽和モノマーと共重合可能な他の酸性のエチレン系不飽和のモノマーによって置換されてもよい)と、バインダのpH値が2乃至7の範囲内となるような量の少なくとも1つのアミン(2つ未満のOH基を含んでいてもよい)と、エポキシ又はアクリル樹脂を基準として0.5乃至30%(重量)の架橋剤との重合体(polymerizate)を用いた、天然又は合成の細粒又は繊維状材料からなる成形品の製造用のバインダ組成物を開示している。
【0011】
他の従来技術は国際公開第2005/087837号であり、それは、以下の組成:
(a)複数の酸性基又はその無水物若しくは塩を有しているポリ酸成分、及び
(b)複数の水酸基を有しているポリヒドロキシ成分
を有しており、バインダ組成物のpH値が約7を超える鉱物繊維用のホルムアルデヒドフリーバインダを開示している。
【0012】
「ポリ酸成分」という表現は、国際公開第2005/087837号においては、不飽和、飽和又は芳香族ポリカルボン酸、不飽和又は飽和環状ポリカルボン酸、それらのヒドロキシル置換誘導体、並びにそれらの塩及び無水物を示していると理解される。
【0013】
「ポリ酸成分」という表現によって、国際公開第2005/087837号は、幾つかのカルボキシル基を含んだ低分子量の酸のみを開示しているが、高分子ポリ酸は一切開示していない。好適であるとして挙げられたポリ酸は、特には、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、セバシン酸、アジピン酸、アコニット酸、ブタンテトラカルボン酸二水素化物、ブタントリカルボン酸、シトラコン酸、ジシクロペンタジエン−マレイン酸付加物、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ジテルペンとマレイン酸との付加物、エンドメチレンヘキサクロロフタル酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、完全マレイン化コロホニウム、マレイン化トール油脂肪酸、フマル酸、グルタール酸、イソフタル酸、イタコン酸、及び低分子量カルボン酸のハロゲン化誘導体である。
【0014】
使用可能なポリオールは、例えば、ポリビニル酢酸タイプの高分子ポリオールである。
【0015】
しかしながら、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂の代替物を構成している従来技術のバインダ組成物の全ては、現在、主にそれらの耐水性のせいで、或る条件のもとでしか鉱滓綿製品の製造に適しておらず、それゆえ、例えば、ポリアクリル樹脂系のバインダは、今日まで、一般に、鉱滓綿製品の製造のための実用から除外されている。
【0016】
従って、本発明の目的は、欧州特許第0882074号の従来技術から出発し、硬化後にフェノール−ホルムアルデヒドバインダに匹敵する特性を有していながらも、その排出の問題を有していないホルムアルデヒドフリーバインダ組成物を提供することであった。
【0017】
この目的の解決は、ホルムアルデヒドフリー組成物、前記組成物を含んだバインダ、ホルムアルデヒドフリー組成物、前記組成物を含んだバインダ、ホルムアルデヒドフリーな手法で結合させた鉱滓綿の製造方法、及びホルムアルデヒドフリーな手法で鉱滓綿を結合させるための前記組成物の使用によって達成される。
【0018】
特には、本発明は、
少なくとも1つの高分子ポリカルボン酸の水分散液と、
一般式(1)で表される少なくとも1つのアミン化合物であって、
【化4】

【0019】
R1、R2及びR3は、互いに独立し、等しいか又は等しくなく、H及び一般式(2)のR1に対応し、
【化5】

【0020】
nの値は2乃至10であり、
R2及びR3は、互いに独立し、Hに等しいか若しくは等しくなく又は一般式(3)に対応し、
【化6】

【0021】
mは1乃至50の値であるとみなしてもよく、
前記アミン化合物の分子量(molecular mass)は約20000g/モルを超えない少なくとも1つのアミン化合物と、
少なくとも1つの活性化シランであって、
1乃至C8アルコキシ基を有しており、少なくとも1つのC2乃至C10アミノアルキル基又はC2乃至C10 N−アミノアルキル基を含んだモノ、ジ及びトリアルコキシシラン;3(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン;(MeO)3−Si−(CH23−Si−(OMe)3;3−アミノプロピルシラントリオール;エトキシ化ノニルフェノラートを有しているアミノシラン;フェニル−CH2−NH−(CH23−NH−(CH23−Si−(OMe)3*HCl;及びそれらの混合物の群より選択されるシランの、少なくとも1つのカルボニル基を有しているエノール化可能なケトン又は少なくとも1つのOH基を有しているケトンであって、3乃至12個のC原子を含んでいるケトンを用いた転化によって得られてもよい少なくとも1つの活性化シランと
を含有した組成物に関する。
【0022】
本発明の高分子ポリカルボン酸において、ポリカルボン酸は、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、アクリル酸と少なくとも2つのカルボキシル基を有すると共に合わせて4乃至20個のC原子を有しているオレフィン系カルボン酸からなる群より選択される。
【0023】
本発明によると、高分子ポリカルボン酸は、約500乃至20,000の、特には約500乃至10,000の、好ましくは約500乃至5,000の分子量を有している。
【0024】
更に、高分子ポリカルボン酸がエンドキャップされていること、即ち、反応性基が
適当なキャッピング剤で非活性化されることは、本発明の好ましい態様である。
【0025】
鉱滓綿の製造におけるバインダとしての使用にとって、5乃至50%の通例の希釈において、組成物が約6時間乃至48時間の処理時間、特にはポットライフを有していることは非常に有利である。
【0026】
2乃至C10アルカノールアミン、特にはエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンからなる群よりアミンを選択することは、本発明の好ましい態様である。
【0027】
本発明に従う組成物の好適なシランは、3−アミノプロピルトリエトキシシランである。それは、低価格で市販されている。
【0028】
活性化シランの製造のためのケトンとしては、容易に入手可能であるためジヒドロキシアセトン又はアセチルアセトンが好適に使用されるが、活性化シランは、少なくとも1つのカルボニル基を有しているエノール化可能なケトン又は少なくとも1つのOH基を有しているケトンであって、3乃至12個のC原子を含んでいるケトンを用いて製造されてもよい。
【0029】
本発明に従う組成物は、勿論、少なくとも1つの表面改質剤、特にはヒドロキシメチルフェノール及びヒドロキシフェノール、好ましくはレゾルシノールを、好ましくは全固形分に対して約0.1乃至1%(質量)の量で更に含有していてもよい。
【0030】
更に、この組成物は少なくとも1つの架橋剤を更に含有していることがしばしば望ましく、それは、グリセロール、ポリオール、ネオペンチルグリコール、トリメチルアリルアミン、1,3,5−トリアリル−2−メトキシベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリアリルネオペンチルエーテル、ペンタエリトリト、糖、糖蜜(sugar molasse)、及びそれらの混合物からなる群より選ばれることが好ましい。
【0031】
本発明に従う組成物は約5.5乃至9.5の範囲内のpH値を有していることが好ましく、より好ましくは7.5乃至8.5である。これによって、一方では、導管及びノズル、特には噴霧ノズルは従来技術の酸性バインダ組成物を用いた場合よりも腐食され難いことが保証される。他方では、好適なpH範囲内の組成物は、明確により酸性である従来技術の組成物と同程度にまで鉱物又はガラス繊維を攻撃することはない。
【0032】
本発明に従う組成物は、鉱滓綿用のバインダとして特に適している。それゆえ、一方では、確実にホルムアルデヒドフリーな鉱滓綿製品を製造することが可能であり、他方では、本発明のバインダ、そして、勿論、鉱滓綿製品は、硬化後に耐水性である。
【0033】
ホルムアルデヒドフリーな手法で結合させた鉱滓綿を本発明のバインダを用いて製造するために、このバインダは、溶融した鉱物材料の繊維化後に、未だ熱い繊維上に塗布され、バインダを塗布した鉱滓綿製品は硬化プロセスに供される。ここでは、バインダは、特には、シュート内で、溶融した鉱物材料から繊維化(attenuate)した繊維に噴霧することによって繊維上に塗布される。
【0034】
本発明の方法に従って製造した、結合させた鉱滓綿製品は、古典的なフェノール−ホルムアルデヒド樹脂を用いることによって結合させた鉱滓綿製品と同様にどのような機械的及び化学的要求をも満足する。
【0035】
これに束縛される訳ではないが、カルボニル化合物を用いたシランの活性化は、おそらく、2つの異なるカルボニル化合物によって示されているように、以下の反応スキームに従って進展すると思われる。
【化7】

【0036】
少なくとも2つのカルボニル基を有しているエノール化可能なケトン又は少なくとも1つのOH基を有しているケトンであって、3乃至12個のC原子を含んだケトンを用いた反応によるシラン(上記反応スキームでは、一例として、3−アミノプロピルトリエトキシシランの加水分解に由来したγ−アミノプロピルシラントリオール)の活性化の結果、活性化した分子上に、N部によって形成された「樹脂側」が、Si部によって形成されたガラス側に加えて形成される。
【0037】
従来技術では、シランのアミノ基はホルムアルデヒドと反応してシッフ塩基を与え、それは、次いでフェノール−ホルムアルデヒド樹脂と反応する。
【0038】
それゆえ、従来技術において要求されるバインダのホルムアルデヒド含量は、最早必要ではない。というのは、活性化シランは、樹脂への、本発明に従うとポリアクリレートのアミン化合物、特にはアルカノールアミンとの反応生成物への、そして、C−アルキル化を実行することによる活性化芳香族系の環へのカップリングが可能なN含有分子部分を含んでおり、それは、このようにして、シランリンカーを介して熱い繊維のガラス面へと結合するからである。
【0039】
本発明に従って使用される活性化シランの、ここではシリカ四面体によって表されているガラス面における反応は、以下に、束縛されることなく概略的且つ例示的に示される。
【化8】

【0040】
これら加水分解結合は、未だ熱い繊維上で迅速に起こる。
【0041】
本発明の更なる利益及び特徴は、実施例の記載及び図面から明らかであろう。ここで、
図1は、活性化シランのSi部分を介してガラス繊維へとカップリングされたシランの概略図であり、
図2は、活性化シランを介して繊維上のガラス面へと結合した樹脂の概略図であり、
図3は、リング引き裂き強度(ring tearing strength)を測定するためのサンプル本体の寸法を示している。
【0042】
本発明に従う組成物及び鉱物又はガラス繊維の製造に関連したバインダの全般的な内容を、再度、図1及び図2に示している。
【0043】
ここでは、示されている分子の配置は、概略的であると理解されるべきである。勿論、架橋反応は、例えば、故意に、樹脂、例えばポリアクリレート内にある架橋剤とアルカノールアミンとを用いて行われてもよい。実際、どのような重合でもそうであるように、意図しない二次反応が起こる可能性がある。それゆえ、図1及び図2の内容は、単にモデル概念であると見なしてもよいが、それは、本発明の理解を助ける。
【0044】
実施例
中和した樹脂を、実験室で及び完成した製品について様々な試験法に従って試験した。それらの結果を、標準的なフェノール樹脂(バインダ1)及び市販のポリアクリレート系酸性バインダ(バインダ2)の結果と比較した。以下の例は、処理手順を説明しており、試験結果の僅かな抜粋のみを示している。ここに与えられている例において使用した物質は、それらの官能性について代表的なもののみである。それゆえ、例えば、使用されるジヒドロキシアセトンは、アセトン、アセチルアセトン又はアセト酢酸によって置換されてもよく、エタノールアミンは他の第一アルカノールアミンによって置換されてもよく、ヒドロキシメチルレゾルシンの混合物はほぼ任意にあらゆるヒドロキシメチル化フェノールによって置換されてもよい。使用されるポリオール又はシランは、同様に、非常に多様である。
【0045】
バインダにおいては、目標濃度として40%の全固形分が一般には望まれた。中和したポリアクリレートのpH値は8.1乃至8.4であり、市販のポリアクリレートに基づくバインダのpH値は2.5乃至3.0である。
【0046】
比較例
バインダ1−標準:
典型的な従来技術として、44%の全固形分含量を有しているアルカリ触媒フェノール樹脂を使用した。組成は、150kgのフェノール樹脂;35.5kgの尿素;1.0kgの硫酸アンモニウム;2.0kgのアンモニア水(25%);25.8kgの3−アミノプロピルトリエトキシシラン(2%);44.6kgの水であった。
【0047】
バインダ2−アクリレート1:
52%の全固形分含量を有しており、pH値が2.5乃至3.0の市販のポリアクリレート系バインダを使用した。このバインダの150kgを46.0kgの水及び0.4kgの3−アミノプロピルトリエトキシシランと混合した。
【0048】
以下の本発明の実施例では、代表的な活性化シランについての以下の一般的な処方が有効である。
【0049】
適当な寸法の機械式撹拌子を含んだバット内に、希釈水の一部を最初に供給する。次いで、これに対応した量のカルボニル化合物を添加し、完全に溶解するまで撹拌する。水への溶解性が低い化合物の場合には、慎重な加熱を実行するか、又は、激しく撹拌しながら分散剤を添加する。この溶液にシランを添加し、次いで、溶液の色がはっきりと変化するまで撹拌を継続する。より強い色合いは、活性化シランとしてのイミンの形成を示している。このようにして活性化したシランを、バインダバッチへと添加する。均質化を終えると、バインダは、約6時間の間、使用できる状態にあり、例1及び2のために処理されてもよい。
【0050】
例1
バインダ3−アクリレート2:
全固形分が46%の市販の非中和ポリアクリレート−マレイン酸共重合体を使用した。組成は、150kgの共重合体;60.3kgのエタノールアミン;0.9kgのヒドロキシメチルレゾルシノール;0.4kgの3−アミノプロピルトリエトキシシラン;0.3kgのジヒドロキシアセトン;9.2kgのペンタエリトリト;6.7kgのグリセロール;140.0kgの水であった。
【0051】
完成した配合物は、約8.2のpH値を有している。
【0052】
例2
バインダ4−アクリレート3:
全固形分が50%の市販の非中和ポリアクリレートを使用した。組成は、150kgのポリアクリレート;45.3kgのエタノールアミン;1.0kgのヒドロキシメチルレゾルシノール;0.4kgの3−アミノプロピルトリエトキシシラン;0.3kgのジヒドロキシアセトン;8.5kgのペンタエリトリト;6.2kgのグリセロール;129.0kgの水であった。
【0053】
完成した配合物は、約8.2のpH値を有している。
【0054】
品質試験の実施
1.実験室試験
1.1 バインダのガラスへの接着
直径が7cmの、即ち表面積が38.5cm2の円形のガラス片を使用した。表面積は、グリッドテンプレートを用いて数えることにより測定した。それら値は丸めた。
【0055】
欧州特許出願公開第1522532号に従う組成を有している円形の火仕上げ(fire-polished)ガラス片上に、5滴の20%バインダ溶液を均一に塗る。この膜は、不均質性を避けるために最初は50℃で乾燥させ、次いで、2時間に亘って150℃で硬化させる。被覆片は、70℃の水中で24時間に亘って貯蔵する。次に、剥がれた樹脂の表面積の割合を測定する。技術的に有意義な用途を有しているバインダは、表面積の少なくとも75%が試験後のガラスに接着したままであるべきである。結果を、表1に纏める。
【表1】

【0056】
2.本発明のバインダを用いて製造した鉱滓綿を使用した試験
例1乃至2に従う上記のバインダを用いて、鉱滓綿製品を製造した。ここでは、例えばブラスト延伸プロセスによる溶融材料の繊維化後に、シュート内で、通例の方法により未だ熱い繊維上にバインダを噴霧した。
次いで、得られた製品を、以下に記載する一連の試験に供した。
【0057】
2.1 オートクレービング前後における絶縁材料のリング引き裂き強度
オートクレービング前後における絶縁材料のリング引き裂き強度
11kg/m3の目標嵩密度と燃焼による4.5%の目標損失とを有しているクランピングフェルトを試験した。標準フェノール樹脂に対する硬化温度又は硬化時間の変化は、実行しなかった。
【0058】
方法
管状の長円形のサンプルを完成した製品から打ち抜いた。このようにして得られた試験サンプルの半分を、適当な装置を用いて引き裂いた。残りは、水蒸気で飽和させた空気中、105℃で15分間に亘ってエージングし、次いで、同様に引き裂いた。測定した引き裂き力は、製造後のガラス繊維樹脂全体の強度と、通常の使用条件下でのその耐性との示唆を提供する。この試験方法は、小さな比重を有している絶縁材料について、好ましくはクランピングフェルトを用いて通常に使用されている。疎水剤(hydrophobizing agent)を用いない標準的な製品において、オートクレービングによる強度の損失は20乃至30パーセントであるのが通常である。結果を、表2に纏める。なお、比較の役割を果たす非中和ポリアクリレート(バインダ2)は、製造後でさえ、エージング後の他のバインダの強度には到達しなかった。
【表2】

【0059】
バインダ2、3、4は、この試験では、純粋なバインダ−ガラスシステムの挙動を調べることを目的としていたので、ダストバインダオイルなしで使用した。
【0060】
絶縁材料のリング引き裂き強度は、以下の詳細な説明にあるように、出願人のもとで(at the applicant's)試験する。
【0061】
この試験方法は、長円形鉱滓綿リングの最大引き裂き力の測定に利用する。測定するのは、サンプル本体の引き裂きを達成するのに必要な力であり、これは、引き裂き強度としてN/gで表される。
【0062】
使用するサンプル本体は、図3に示す形状に従った長円形の鉱滓綿リングであり、それらは、対応したツールを備えた打抜機を用いて打ち抜く。これらリングは、鉱滓綿製品(ボード、フェルトなど)から打ち抜く。サンプル本体を幅全体に亘って傾斜なしに打ち抜くのに注意を払わなければならない。被覆は除去されねばならない。サンプル本体は、試験前に、(23±5)℃で及び(50±5)%の相対湿度で少なくとも24時間に亘って貯蔵する。
【0063】
試験に先立ち、各々のサンプルについて、0.01gの精度で重量をグラムで測定しなければならない。これらサンプル本体は、引き裂きが起こるまで300mm/分の試験速度で引張り応力に供し、最大顕在力(manifesting force)をN(引き裂き力)で記録する。サンプル本体の第2のセットは、それらをオートクレーブ中、105℃で15分間に亘ってインキュベートする仮想の気候条件に供する。
【0064】
この気候コンディショニングの後、湿潤したサンプル本体を、105℃の乾燥キャビネット内で少なくとも1時間に亘って乾燥させる。50kg/m3以上の嵩密度[RD]では、乾燥時間を対応して延長しなければならない。その後、周囲温度まで冷却する。
【0065】
更なる処理手順は、気候コンディショニングなしのサンプルの試験に対応している。
【0066】
オートクレーブ処理前後でのリング引き裂き強度σRは、以下のように計算する。
【数1】

【0067】
6つのサンプル本体から各々の平均値を、縦方向と横方向とで計算しなければならない。これら平均値は、単位の10分の1の精度で示さなければならない。
【数2】

【0068】
ここで、
R=気候コンディショニング前のリング引き裂き強度の平均値、
RA=気候コンディショニング後のリング引き裂き強度の平均値
である。
【0069】
公称嵩密度に対して補正したリング引き裂き強度は、
【数3】

【0070】
のように計算し、ここで、
R,N=リング引き裂き強度の公称平均値、
R,l=ライン方向に対して縦方向のリング引き裂き強度の平均値、
R,q=ライン方向に対して横方向のリング引き裂き強度の平均値、
RDN=公称嵩密度、
RDl=ライン方向に対して縦方向の嵩密度、
RDN=ライン方向に対して横方向の嵩密度
である。
【0071】
2.2 Nordtestに由来する厚さの変化
50kg/m3の目標嵩密度と燃焼による3.7%の目標損失とを有する製品について調べた。初期厚さは50mmであり、アニールした材料の厚さは平均で160mmであった。アクリル酸に基づくバインダを、ここでは、標準的なフェノール樹脂よりも20℃高い温度で硬化させた。
【0072】
これら試験を実行するために、縁の長さが20×20cmのサンプル本体を、完成した製品から切り出す。それらサンプル本体の一部を、結合なしに各々の材料の厚さを測定するために、450℃でアニールする。他の部分は、70℃で及び95%の相対湿度で7日間に亘って貯蔵する。この試験は、「Nordtest」の名称で知られ始めている。
【0073】
厚さの変化は、初期厚さに対する割合で測定する。アニールした材料の厚さは、最大到達値を表している。この方法は、通常、中程度の比重を有する製品を用いて使用する。技術的に有意義な用途を有しているバインダは、初期値の20%又は最大値の10%未満の厚さの変化を維持する。不十分な強度を有しているバインダの場合、厚さの変化は、Nordtestなしでも観察される。結果を、表3に纏める。
【表3】

【0074】
このように、実行した調査は、本発明に従う組成物は、鉱滓綿製造用のホルムアルデヒドフリーバインダとして基本的に適しているだけでなく、確立された品質、処理能力及び経済性に従って実用可能であることを立証している。既存の機器は変更する必要がなく、pH値は>7に調節してもよいので、伝統的なバインダを用いた場合と比較してより激しい腐食をおそれる必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】活性化シランのSi部分を介してガラス繊維へとカップリングされたシランの概略図。
【図2】活性化シランを介して繊維上のガラス面へと結合した樹脂の概略図。
【図3】リング引き裂き強度を測定するためのサンプル本体の寸法を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの高分子ポリカルボン酸の水分散液と、
一般式(1)で表される少なくとも1つのアミン化合物であって、
【化1】

R1、R2及びR3は、互いに独立し、等しいか又は等しくなく、H及び一般式(2)のR1に対応し、
【化2】

nの値は2乃至10であり、
R2及びR3は、互いに独立し、Hに等しいか若しくは等しくなく又は一般式(3)に対応し、
【化3】

mは1乃至50の値であるとみなしてもよく、
前記アミン化合物の分子量は約20000g/モルを超えない少なくとも1つのアミン化合物と、
少なくとも1つの活性化シランであって、
1乃至C8アルコキシ基を有しており、少なくとも1つのC2乃至C10アミノアルキル基又はC2乃至C10 N−アミノアルキル基を含んだモノ、ジ及びトリアルコキシシラン;3(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン;(MeO)3−Si−(CH23−Si−(OMe)3;3−アミノプロピルシラントリオール;エトキシ化ノニルフェノラートを有しているアミノシラン;フェニル−CH2−NH−(CH23−NH−(CH23−Si−(OMe)3*HCl;及びそれらの混合物の群より選択されるシランの、少なくとも1つのカルボニル基を有しているエノール化可能なケトン又は少なくとも1つのOH基を有しているケトンであって、3乃至12個のC原子を含んでいるケトンを用いた転化によって得られてもよい少なくとも1つの活性化シランと
を含有した組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、前記ポリカルボン酸は、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、アクリル酸と少なくとも2つのカルボキシル基を有すると共に合わせて4乃至20個のC原子を有しているオレフィン系カルボン酸からなる群より選択されることを特徴とする組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の組成物であって、前記高分子ポリカルボン酸は、約500乃至20,000の、特には約500乃至10,000の、好ましくは約500乃至5,000の分子量を有していることを特徴とする組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の組成物であって、前記高分子ポリカルボン酸がエンドキャップされていることを特徴とする組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の組成物であって、前記アミン化合物は、C2乃至C10アルカノールアミン、特にはエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンからなる群より選択されることを特徴とする組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の組成物であって、前記シランは3−アミノプロピルトリエトキシシランであることを特徴とする組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の組成物であって、前記ケトンはジヒドロキシアセトン又はアセチルアセトンであることを特徴とする組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の組成物であって、少なくとも1つの表面改質剤、特にはヒドロキシメチルフェノール及びヒドロキシフェノール、好ましくはレゾルシノールを、好ましくは全固形分に対して約0.1乃至1%(質量)の量で更に含有していることを特徴とする組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の組成物であって、少なくとも1つの架橋剤を更に含有していることを特徴とする組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の組成物であって、前記架橋剤は、グリセロール、ポリオール、ネオペンチルグリコール、トリメチルアリルアミン、1,3,5−トリアリル−2−メトキシベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリアリルネオペンチルエーテル、ペンタエリトリト、糖、糖蜜、及びそれらの混合物からなる群より選ばれることを特徴とする組成物。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の組成物であって、約5.5乃至9.5の範囲内の、好ましくは7.5乃至8.5pH値を有していることを特徴とする組成物。
【請求項12】
請求項1乃至11の少なくとも1項に記載の組成物を含有した鉱滓綿用バインダ。
【請求項13】
請求項12に記載のバインダを用いてホルムアルデヒドフリーな手法で結合させた鉱滓綿の製造方法であって、溶融した鉱物材料の繊維化後に、前記バインダを未だ熱い前記繊維上に塗布し、前記塗布したバインダを備えた前記鉱滓綿製品を硬化プロセスに供する方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記バインダは、シュート内で、前記溶融した鉱物材料から繊維化した前記繊維に噴霧することによって前記繊維上に塗布することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13乃至14の何れか1項に記載の方法により得ることが可能な、結合させた鉱滓綿製品。
【請求項16】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の組成物の、ホルムアルデヒドフリーな手法で結合させた鉱滓綿の製造のための使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−517513(P2009−517513A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542740(P2008−542740)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【国際出願番号】PCT/EP2006/068933
【国際公開番号】WO2007/060236
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(501085706)サン−ゴバン・イソベール (46)
【Fターム(参考)】