説明

ホログラフィック画像表示システム

発明は、ホログラフィック光学システム、特に、ホログラフィック表示画像システムにおけるスペックル低減の技術に関する。画像を表示面にホログラフ的に表示するホログラフィック画像表示システムであって、ホログラムを表示する空間光変調器(SLM)と、上記表示されたホログラムを照明する光源と、ホログラフ的に生成された2次元画像を形成するために、上記表示され照明されたホログラムからの光を上記表示面に投影し、上記ホログラフ的に生成された画像に対応する中間2次元画像を中間画像面に形成するように構成されている投影オプティクスと、上記中間画像面に配置されている拡散板と、上記拡散板に機械的に接続され、システムによって表示される画像の中のスペックルを除去するために、上記中間画像の画素にわたって位相をランダム化するため動作中に上記拡散板を移動させるアクチュエータと、を備えるシステムが記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィック光学システム、特に、ホログラフィック画像表示システムにおけるスペックル除去技術に関する。
【背景技術】
【0002】
スペックル(speckle)は、ホログラフィック画像表示システム、特に、画像を2次元(必ずしも平面的でなくてもよい)スクリーンに表示するホログラフィック画像表示システムにおいて問題である。その理由は、画像がコヒーレント光を使用して生成され、コヒーレント光が表面に当たるとき、波長スケール以上での不均一性が観察者の視覚に干渉を引き起こし、それゆえ、表示画像にスペックルを引き起こすからである。画素間干渉は、スペックルに類似した視覚的見え方を有する効果をさらに生じるが、この場合、この効果は表面の特性または観察者の視覚の特性とは独立に現れる。
【0003】
ホログラフィック画像を再生するときに、スペックルを除去するため用いられることがある一つの技術は特許文献1に記載されている。特許文献1は、拡散板を使用して生成された異なるスペックル場をもつ別個の露光を使用する複合ホログラムの製作について記載している。非ホログラフィック画像表示システムにおけるスペックル除去の技術は特許文献2に見つけることができる。他の類似した背景技術は、特許文献3、特許文献4、特許文献5、および特許文献6に見つけることができる。2次元画像を生成するため走査される1次元空間光変調器を使用するシステムは、非特許文献1および非特許文献2と、特許文献7、特許文献8および関連した特許とに記載されている。
【0004】
発明者らは画像をホログラフ的に表示する技術について既に記載している(たとえば、参照によって本明細書に全体がそのまま組み入れられる特許文献9、特許文献10および特許文献11を参照のこと)。単一の画像フレームに対し複数の時間サブフレームを表示するこれらの技術は、無相関化された位相値を有する隣接する画素によって引き起こされた画素間干渉を除去する利点と、時間的に連続したサブフレームが実質的に独立した空間位相構造をもつ画像を生成し、観察者の視覚において平均化する独立したスペックルパターンをもたらすので、スペックルを除去するさらなる利点とがある。しかし、さらなるスペックル除去が望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0292209号明細書
【特許文献2】国際公開第2006/104704号公報
【特許文献3】欧州特許出願公開第1292134号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0012842号明細書
【特許文献5】国際公開第98/24240号公報
【特許文献6】米国特許第6747781号明細書
【特許文献7】米国特許第7214946号明細書
【特許文献8】米国特許第7046446号明細書
【特許文献9】国際公開第2005/059660号公報
【特許文献10】国際公開第2006/134398号公報
【特許文献11】国際公開第2006/134404号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J. I. Trisnadi, “Hadamard speckle contrast reduction”, Optics Letters 29, 11−13(2004)
【非特許文献2】Trisnadi, Jahja I., “Speckle contrast reduction in laser projection displays”, Silicon Light Machines, Sunnyvale, California 94089
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明によれば、画像を表示面にホログラフ的に表示するホログラフィック画像表示システムであって、ホログラムを表示する空間光変調器(SLM)と、上記表示されたホログラムを照明する光源と、ホログラフ的に生成された2次元画像を形成するために、上記表示され照明されたホログラムからの光を上記表示面に投影し、上記ホログラフ的に生成された画像に対応する中間2次元画像を中間画像面に形成するように構成されている投影オプティクスと、上記中間画像面に配置されている拡散板と、上記拡散板に機械的に接続され、システムによって表示される画像の中のスペックルを除去するために、上記中間画像の画素にわたって位相をランダム化するため動作中に上記拡散板を移動させるアクチュエータと、を備えるシステムが提供される。
【0008】
一般的には、システムの実施形態は、表示されたホログラムの中間画像にわたってランダム位相パターンを提供し、実施形態では独立している、複数の異なるスペックルパターンが生成されることを可能にさせ、ホログラムが十分に素早く表示される場合、スペックルを除去するため視覚内で平均化する。
【0009】
実施形態では、中間画像面は、SLMの位相インプリントのフーリエ変換面を含む。表示版の画像がSLMの画素数によって(部分的に)決定された分解能でこの面に形成される。
【0010】
多くの場合、中間画像面は平面を含むが、実施形態では、中間画像面は、投影オプティクス内での面の場所と表示面が湾曲しているかどうかに依存して曲面でもよい。(発明者らは、たとえば、ヘッド・アップ・ディスプレイのための湾曲表示面に投影する技術について同時係属中の出願であり、参照によって本明細書に組み入れられる英国特許出願第0706264.9号および米国特許出願第60/909394号に既に記載している。)
実施形態では、投影オプティクスは、ビームエクスパンダまたはケプラー式望遠鏡のような縮小オプティクスを含むことがあり、オプティクスの1枚以上のレンズがホログラム・ディスプレイの中でSLMにコーディングされる。いくつかの好ましい実施形態では、SLMは反射型SLMを構成する。
【0011】
好ましい実施形態では、ホログラフィック画像表示システムは、複数の時間サブフレームが表示画像(フレーム)毎に表示されるOSPR型システム(詳細に後述される)を備える。この技術の実施形態では、連続フレームの中の画素の位相は、いくつかの好ましい実施では、1個のサブフレームによって生成された雑音が1個以上の後続サブフレームによって補償されるとしても(発明者らはこの技術を適応(AD)OSPRシステムと呼ぶ)、擬似ランダムである。
【0012】
一般的には、OSPRは、中間画像平面内での画素ピッチ逆数に依存する周波数までの空間周波数でスペックル雑音電力を除去する。拡散板の画素ピッチの最小特徴形状サイズが中間画像平面内の画像の画素ピッチより小さくない場合、OSPR手順は各連続サブフレームの画素位相を効率的にランダム化するので、拡散板はより多くの時間サブフレームを加算する効果がある。
【0013】
非OSPRホログラフィック画像表示システムでは、この効果はOSPRによって本質的に獲得される効果とやや類似している。しかし、OSPRを用いると、好ましくは、拡散板の画素ピッチまたは特徴形状サイズは、中間的なホログラフ的に生成された画像の画素ピッチまたは特徴形状サイズより小さく、この場合、スペックルは、そうではない場合より増大した、拡散板画素ピッチまたは特徴サイズの逆数によって決定される空間周波数までの空間周波数で除去される。中間画像および拡散板は両方共に2次元であるので、好ましくは、拡散板画素ピッチは、中間画像平面内の2つの対応する直交方向(x方向およびy方向)のそれぞれにおいて中間画像画素ピッチより小さい。いくつかの好ましい実施形態では、拡散板は画像の中の「縞」を除去するため2次元(x方向およびy方向)に移動させられる。
【0014】
発明者らは、カラー画像をホログラフ的に表示する技術について国際出願PCT/GB2007/050291(参照によって本明細書中に組み入れられる)に記載している。よって、実施形態では、光源は、2つ以上の波長で照明を行うことがあり、ビーム拡大/合成オプティクス、または、他のオプティクスを含むことがある。カラー表示システムのいくつかの実施では、異なるカラー(波長)の画素が表示画像平面内で実質的に同じサイズをもつことがある。他の実施では、画素サイズは入射光の波長にほぼ比例する。この後者のタイプのシステムでは、拡散板の画素は最小中間画像画素サイズ、たとえば、青色波長中間画像画素サイズより小さくすることが可能である。
【0015】
実際には、OSPR型位相ランダム化から得られる雑音除去、および、中間画像の画素より小さい画素をもつ拡散板からのスペックル除去は、掛け合わさって実質的に知覚されるスペックルを実質的に減少させ、スペックルコントラストを除去することがわかった。
【0016】
拡散板は、中間画像の画素ピッチより小さい特徴形状サイズ(たとえば、少なくとも、この距離の間にπ/4の位相変化)をもつすりガラスを含むことがある。しかし、すりガラスは、典型的に、長さスケールの範囲にわたって粗いので、このスケールでの特徴形状サイズが存在する場合、一般により小さい特徴形状がさらに存在することになる。このことは、広範囲の角度にわたって光を散乱させる傾向があるということになり、ある割合の光は投影オプティクスの最終レンズの受光角を越えて散乱され、よって、表示画像の強度が低下することになる。したがって、たとえば、中間画像平面内の画素ピッチの10分の1(これは、最終レンズの集光角に依存する)という最小特徴形状サイズ制約をもつ拡散板を利用することが役立つ。
【0017】
中間画像画素ピッチより小さい拡散板特徴形状を設けると共に、特徴形状サイズを最小限に抑えるため、量子化され画素化された位相拡散板が利用されることがある。この位相拡散板は、たとえば、0とπという位相をもつバイナリ型位相拡散板でもよく、または、3個以上の位相レベルが利用されてもよい。実施形態では、拡散板の画素は、5μm、4μm、3μm、2μmまたは1μmより小さい画素ピッチを有することがある。拡散板の画素は、複数の量子化位相レベルのうちの1つを無作為的にとることがある。よって、実施形態では、拡散板は、各画素について2個の位相のうちの一方が50%の確率で選ばれた、画素化されたアレイを含む。
【0018】
アクチュエータは、モータを含むことがあるが、好ましい実施形態では、圧電アクチュエータが利用される。好ましくは、アクチュエータのストロークは、少なくとも2個、5個または10個の異なる位相パターン(拡散板画素)を中間画像画素に加えるために十分である。よって、画素サイズに依存して、いくつかの好ましい実施形態では、圧電アクチュエータは、少なくとも5μm、より好ましくは、少なくとも10μmのストロークを有する。加えられた異なる位相パターンによって引き起こされた異なるスペックルパターンを人の視覚内で積分するため、異なる位相パターンがスペックルパターンを観察者の視覚内で平均化するために十分に素早く、たとえば、1秒の30分の1未満、好ましくは、60分の1未満に加えられるべきである。定期的な実験がストローク長と移動の速度との間のトレードオフを考慮するため利用可能であり、アクチュエータは励起状態と非励起状態のいずれで作動されてもよい(さらにアクチュエータからの低音響雑音の望ましさも考慮する)。たとえば、アクチュエータは10Hz〜10kHzの周波数で動作することがある。
【0019】
上述されているように、上記技術は、表示面上の対応する時間サブフレーム画像が表示画像の印象を与えるため観察者の視覚内で平均化するように、SLMに急速に連続して表示するための複数の時間的なホログラフィック・サブフレームを生成するホログラフィック画像表示システムにおいて特に有利である。この技術は、SLMのフーリエ変換平面内での中間画像画素ピッチ(の逆数)に依存した空間周波数まで投影画像の中でスペックルを除去可能であり、そして、拡散板画素ピッチがこの中間画像画素ピッチより小さい場合、増大した空間周波数のスペックルは除去可能である。拡散板画素ピッチが中間の、ホログラフ的に生成された画像の画素ピッチより小さくない場合、効果的に「OSPR効果」が高められる。
【0020】
したがって、関連した態様では、発明は、複数の画素を含む画像を表示面にホログラフ的に表示するホログラフィック画像表示システムにおいてスペックルを除去する方法であって、システムが、ホログラムを表示する空間光変調器(SLM)と、上記表示されたホログラムを照明する光源と、ホログラフ的に生成された2次元画像を形成するために、上記表示され照明されたホログラムからの光を上記表示面に投影し、上記ホログラフ的に生成された画像に対応する中間2次元画像を中間画像面に形成するように構成されている投影オプティクスと、上記中間画像面に配置されている拡散板と、を備え、上記表示面上の対応する時間サブフレーム画像が観察者の視覚内で平均化し、上記表示画像の印象を与えるように、システムが上記SLMに急速に連続して表示するための複数の時間的なホログラフィック・サブフレームを生成するように構成され、スペックルの知覚レベルを低下させるため、結果として得られる変化するスペックルパターンがヒト観察者の視覚内で積分されるように、複数の異なる位相を1つずつの上記画素のエリア内に十分に急速に設けるため、上記拡散板を移動させるステップを含む方法を提供する。
【0021】
好ましくは、拡散板は、スペックルが表示画像の最大空間周波数より高い空間周波数で除去されるように、システムの中で中間的なホログラフ的に生成された画像のピッチより小さいピッチの画素を有する。好ましくは、拡散板は、少なくとも画像フレームの時間間隔の範囲内で、場合によっては、1個以上の時間サブフレームの間隔の範囲内で、2、5または10個の拡散板画素より多くの画素によって移動させられる。
【0022】
上記技術は、表示画像をホログラフ的に生成するように構成されたシステムを用いると特に有利であるが、上記技術は、ホログラムを表示するのではなく表示面へ投影するための画像を表示する透過型または反射型SLM(たとえば、デジタル光プロセッサ、DLP)を照明するために、コヒーレント光、または、少なくとも部分的にコヒーレントな光を利用する画像投影システムと共に使用されることもある。
【0023】
このように、発明は、少なくとも部分的にコヒーレントな光を使用して画像を表示面へ投影する画像表示システムであって、2次元を表示する空間光変調器(SLM)と、上記SLM上の上記表示画像を照明する少なくとも部分的にコヒーレントな光源と、2次元画像を形成するために上記照明された表示画像から上記表示面へ光を投影し、上記表示画像に対応する中間2次元画像を形成するように構成されている投影オプティクスと、上記中間2次元画像の位置にある、量子化され画素化された位相拡散板と、上記拡散板に機械的に接続され、上記投影された2次元画像のスペックルパターンを変化させるため動作中に上記拡散板を移動させる圧電アクチュエータと、を備え、それによって、動作中に、上記拡散板の移動によって生じる上記投影された2次元画像の上記変化するスペックルパターンがスペックルの知覚レベルを低減するためヒト観察者の視覚内で平均化する、システムをさらに提供する。
【0024】
いくつかの好ましい実施形態では、好ましい拡散板は、中間画像画素ピッチより小さい画素ピッチを有する。実施形態では、拡散板は、5μm、4μm、3μm、2μmまたは1μmより小さい画素ピッチを有する。好ましくは、アクチュエータ(好ましくは、圧電アクチュエータ)は拡散板を2次元で移動させるように構成されている。
【0025】
発明の上記態様および他の態様は、今度は添付図面を参照して、単なる一実施例としてさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ホログラフィック投影モジュールを組み込む消費者電子装置の実施例を示す図である。
【図2】図1のホログラフィック投影モジュールのための光学系の実施例を示す図である。
【図3】図1および2のホログラフィック画像表示システムのためのハードウェア・アクセラレータの実施形態のブロック図である。
【図4】図3に示されているようなハードウェア・ブロックの実施形態の範囲内で実行される動作を示す図である。
【図5】ランダム位相マトリクスによる乗算の前後のサンプル画像のエネルギースペクトルを示す図である。
【図6】複素ホログラフィック・サブフレーム・データの実数成分および虚数成分のそれぞれからの2個のサブフレームの同時生成のための並列量子化器を備えたハードウェア・ブロックの実施形態を示す図である。
【図7】Gxyを生成するために、擬似ランダム・バイナリ位相データを生成し、入力画像データIxyに位相値を乗算するハードウェアの実施形態を示す図である。
【図8】位相変調画像データGxyを生成するために、入力画像フレームデータIxyにルックアップテーブルからランダムに選択された複素位相値を乗算するハードウェアの実施形態を示す図である。
【図9】ホログラフィックデータguvを生成するために、フィードバックを含む1次元変換ブロックを用いて、入力位相変調画像データGxyに2次元変換を実行するハードウェアの実施形態を示す図である。
【図10】発明の実施形態と共に使用するため適したカラーホログラフィック画像投影システムを示す図である。
【図11】1辺Lの正方形開口を通る均一のターゲットを画像化するときに無変調スペックルパターンの電力スペクトル密度を示す図である。
【図12】(a)粗いスクリーンに投影された位相ランダム化ターゲット画像の画像と、(b)スクリーンによって生成され、解剖学的瞳によって開口された遠距離場と、(c)(ボックスによって示された)中央領域が電力スペクトル密度((d)に示されている)を計算するため使用される網膜に作成されたスクリーンの強度画像とを示すスペックルモデルの概要を示す図である。
【図13】5.3mm解剖学的瞳領域の(a)25%、(b)50%、(c)75%、および、(d)100%まで遠距離場に開口するときのスペックル場の構造への影響を示す図である。
【図14】開口サイズのみから計算された理論値(破線)に比べて、4個の異なる開口サイズに対する電力スペクトル密度(実線)のモデル化された変動を示す図である。
【図15】画素値に関する周波数での指数関数的減衰を表しているプロットは赤線を使用して示され、再生フィールドエリアの4個の開口サイズ(a)25%、(b)50%、(c)75%、および、(d)100%に対する画素値ヒストグラムを示す図であり、スペックル定数値がそれぞれ0.92、0.90、0.87、および0.68である。
【図16】開口サイズ(a)25%、(b)50%、(c)75%、および、(d)100%の開口PSFによって覆われるスクリーンの領域を表す画像を示す図である。
【図17】図15を作成するため使用されたシミュレーションと同じ分解能を維持した状態で、再生フィールドサイズの(a)6.25%、(b)12.5%、(c)18.75%、および、(d)25%への再生フィールドの開口化を示す図であり、スペックル定数値がそれぞれ0.69、0.85、0.86および0.89である。
【図18】シミュレーションの分解能を4倍に増加した状態で、再生フィールドサイズの(a)6.25%、(b)12.5%、(c)18.75%、および、(d)25%への再生フィールドの開口化の効果を示す図であり、スペックル定数値がそれぞれ0.92、0.98、0.97、および0.98である。
【図19】開口サイズ5%、10%、15%および20%に対して高分解能シミュレーションを使用して計算されたスペクトル電力分布(実線)を示し、4個の異なる開口サイズのスペクトル電力分布の理論的予測が破線で示されている図である。
【図20】(a)5%、(b)10%、(c)15%、および、(d)20%の開口サイズに対して収差付き画像化システムによって形成された強度パターンのヒストグラムを示す図である。
【図21】収差付き画像化システムを使用して測定された強度パターンのスペクトル電力分布を示す図である。
【図22】50、100、150および200rpsの速度での拡散板の回転が最低空間周波数で認められる電力を著しく削減し、より滑らかな画像を生成する、Luminit社製75°×45°拡散板のスペックル場のスペクトル特性への影響を示す図である。
【図23】拡散板無し(青色)、中間画像平面内の静止拡散板使用(緑色)、および、画素化されたバイナリ位相マスクを振動させる圧電アクチュエータ使用(赤色)によるスペクトル電力密度の変化を示す図である。
【図24a】発明の実施形態のホログラフィック画像表示システムの第1の実施例の略ブロック図である。
【図24b】発明の実施形態のホログラフィック画像表示システムの第2の実施例の略ブロック図である。
【図25a】発明を具現化するカラーホログラフィック画像表示システムの概略図である。
【図25b】拡散板およびアクチュエータの細部を示す図25aのシステムの機械的構成の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明者らは、参照により組み入れられる2005年6月15日に出願された英国特許出願第0512179.3号において、レーザダイオードのような実質的に単色である光源と、表示画像を生成するホログラムを提供するために光を(位相)変調する空間光変調器(SLM)と、表示画像を形成するために変調光の発散を増大させる縮小光学系とを備えるホログラフィック投影モジュールを既に説明している。縮小オプティクスがなければ、表示画像のサイズ(およびSLMからの距離)はSLMの画素サイズに依存し、小さい画素ほどより多くの光を回折してより大きい画像を生成する。典型的に、画像は数メートル以上の距離で観察されるべきことになる。縮小オプティクスは回折を増加させ、よって、有用なサイズの画像が実際的な距離で表示されることを可能にする。さらに、表示画像は実質的に焦点自由であり、すなわち、画像は実質的に投影モジュールから広範囲またはすべての距離にわたって焦点が合っている。
【0028】
広範囲の異なる光学配置がこの効果を実現するため使用可能であるが、一つの特に有利な組み合わせは、第1の焦点距離をもつ第1のレンズと、第1の焦点距離より短い第2の焦点距離をもつ第2のレンズとを含み、第1のレンズが第2のレンズより(光路に沿って)空間光変調器に接近している。好ましくは、レンズ間の距離は、レンズの焦点距離の合計に実質的に等しく、事実上、(縮小)望遠鏡を形成する。いくつかの実施形態では、2枚の収斂(すなわち、収束)単レンズが利用されるが、他の実施形態では、1枚以上の拡散または発散レンズが利用されることがある。フィルタが表示画像の望ましくない部分、たとえば、明るい(零次)非回折スポットまたは(上下逆の表示画像として現れることがある)繰り返し1次画像を除外するため組み込まれてもよい。
【0029】
この光学系(および後述される光学系)は、表示画像を生成するためにSLMに表示されるホログラムを計算するどのようなタイプのシステムまたは手順と共に利用されてもよい。しかし、表示画像が表示のため望ましい画像の印象を(ヒト観察者に)与えるため視覚的に結合する複数のホログラフィック・サブ画像から形成されるいくつかの特に好ましい手順がある。このように、たとえば、これらのホログラフィック・サブフレームは、好ましくは、人間の視覚内で積分されるように急速に連続して時間的に表示される。連続ホログラフィック・サブフレームのデータは、たとえば、不揮発性メモリに記憶されたプログラムに関連してソフトウェアで制御される汎用DSP、または、専用ハードウェア、または、専用ハードウェア・アクセラレータ付きのソフトウェアのような汎用DSPおよび専用ハードウェアの組み合わせのいずれかを含むことがあるデジタル信号プロセッサによって生成されることがある。好ましくは、SLMは、(小型化のため)反射型SLMを含むが、一般には、光を位相変調することができるならば、どのようなタイプの画素化された超小型ディスプレイが、場合によっては、必要に応じて、適切なドライバチップに関連して利用されてもよい。
【0030】
ここで図1を再び参照すると、同図は、表示画像14を投影するためにハードウェア投影モジュール12を組み込む消費者電子装置10の実施例を示している。表示画像14は複数のホログラフ的に生成されたサブ画像を含み、各サブ画像が表示画像14と同じ空間的広がりをもち、表示画像の外観を与えるために急速に連続して表示される。各ホログラフィック・サブフレームは後述される線に沿って生成される。さらなる詳細事項のため、英国特許出願第0329012.9号(同上)を参照のこと。
【0031】
図2は、図1のホログラフィック投影モジュール用の光学系の実施例を示している。図2を参照すると、レーザダイオード20(たとえば、532nm)は、実質的にコリメートされた光22を画素化された液晶変調器のような空間光変調器24に供給する。SLM 24はホログラムを使って光22を位相変調し、位相変調光は縮小光学系26に供給される。図示された実施形態では、光学系26は、1対のレンズ28、30を含み、図示されているように、表示画像を形成する光を発散することにより投影ホログラフィック画像のサイズを増大させる。
【0032】
さらに図2を参照すると、より詳細には、レンズLおよびL(それぞれの焦点距離はfおよびf)はビーム拡大ペアを形成する。このペアは、ビーム22とSLM 24との相対的なサイズに依存して、変調器の表面全体を覆うように光源からのビームを拡大するが、これらは省略されてもよい。
【0033】
レンズペアLおよびL(それぞれの焦点距離はfおよびf)は縮小レンズペアを形成する。このペアは変調器の画素サイズを効果的に縮小し、よって、回折角を増大させる。その結果、画像サイズが増加する。画像サイズの増加は、レンズLおよびLのそれぞれの焦点距離であるf対fの比に等しい。空間フィルタは、表示画像の望ましくない部分、たとえば、画像を表示するホログラムがどのように生成されるかに依存して、零次非回折スポット、または、上下逆の表示画像として現れることがある繰り返し1次(共役)画像を除去するため組み込まれることがある。
【0034】
引き続き図2を参照すると、デジタル信号プロセッサ100は、表示されるべき画像を定義する消費者電子装置から画像データを受信する入力102を有する。DSP 100は、場合によっては、必要に応じて、ドライバ集積回路を介して、DSP 100の出力104からSLM 24へ供給される複数のホログラフィック・サブフレームのための位相ホログラムデータを生成するため(後述される)手順を実施する。DSP 100は、再生フィールド(RPF)の中に表示画像14の印象を与えるため結合する複数の位相ホログラム・サブフレームを投影するためSLM 24を駆動する。
【0035】
DSP 100は、ホログラム生成手順を実施するために、好ましい実施形態では、SLM 24への出力のためのサブフレーム位相ホログラムデータを生成するために、専用ハードウェア、および/または、プロセッサ制御コードを記憶するフラッシュメモリもしくは他の読み出し専用メモリを含むことがある。
【0036】
OSPR
今度は、SLM 24への表示用のホログラムデータを計算する好ましい手順について説明する。この手順は、大まかに言うと、ワン・ステップ・フェーズ・リトリーバル(OSPR)と呼ばれるが、厳密に言うと、いくつかの実施では、2ステップ以上が利用されると考えることができる(あるサブフレームの中の「雑音」が後続のサブフレームの中で補償され、たとえば、参照によって組み入れられる英国特許出願第0518912.1号、および、英国特許出願第0601481.5号に記載されている)。
【0037】
本発明者らは、複数のビデオフレームを含むホログラフ的に生成されたビデオ画像を表示する方法であって、各フレーム期間にそれぞれの連続した複数のホログラムを供給するステップと、複数のビデオフレームの中の再生フィールドを見るため、複数のビデオフレームのホログラムを表示するステップとを含み、各フレームの雑音分散が複数のホログラムにわたって平均化することにより減衰されるように知覚される方法について、2003年12月15日に出願された英国特許出願第0329012.9号に既に説明している。
【0038】
大まかに言うと、本発明者らの好ましい方法では、SLMは表示されるべき画像のホログラムを近似するホログラフィックデータを用いて変調される。しかし、このホログラフィックデータは特殊な方法で選択され、表示画像は複数の時間サブフレームで構築され、各時間サブフレームがそれぞれのサブフレーム・ホログラムを用いてSLMを変調することにより生成される。これらのサブフレームは、連続的に、かつ、十分に素早く表示されるので、(ヒト)観察者の視覚内で、サブフレーム(それぞれのサブフレームは表示画像の空間的広がりを有する)が表示のため望ましい画像を作成するために一体的に統合される。
【0039】
各サブフレーム・ホログラムは、それ自体が、たとえば、ホログラフィックデータを2個以上の(バイナリ)位相に量子化する結果として、比較的雑音を多く含むことがあるが、サブフレーム間の時間平均化は雑音の知覚レベルを下げる。このようなシステムの実施形態は、各サブフレームが、たとえ、個別に観察されるべき場合に、比較的雑音を多く含むように見えることになるとしても、視覚的に高品質の表示を提供可能である。
【0040】
このような仕組みは、単一ホログラムを使用して表示画像を正確に再現しようとする仕組みと比べて計算要件を低下させる利点があり、さらに比較的安価なSLMの使用を実現し易くする。
【0041】
ここで、SLMは、一般に、振幅変調ではなく位相変調を提供すること、たとえば、バイナリ装置は零およびπ(正規化された振幅1の場合、+1および−1)の相対的な位相シフトを提供することが理解されるであろう。しかし、好ましい実施形態では、バイナリ変調のみを用いると、ホログラムは、一方がもう一方に関して空間的に反転されている1対の画像を生じ、利用可能な光の半分を失うが、位相レベルの個数が3以上であるマルチレベル位相変調を用いると、この2番目の画像を除去可能であるので、3個以上の位相レベル、たとえば、4個の位相変調(零、π/2、π、3π/2)が利用される。さらなる詳細事項は、本発明者らの先行出願であり、参照によって全体がそのまま本明細書に組み込まれる英国特許出願第0329012.9号(同上)で見つけられる。
【0042】
この方法の実施形態は、以前のホログラフィック表示方法より計算集約性が低いが、それにもかかわらず、コストおよび/または電力消費が削減され、および/または、性能が向上されたシステムを提供することが一般的に望ましい。限定されたフレーム期間の範囲内に一連の画像フレームのうちの各画像フレームを表示するためにデータを処理する要件を一般に有するビデオ使用に関してシステムの性能を改良することが特に望ましい。
【0043】
本発明者らは、ホログラフィック画像表示システムのためのハードウェア・アクセラレータであって、画像表示システムが複数のホログラフ的に生成された時間サブフレームを使用して表示画像を生成するように構成され、時間サブフレームが単一の雑音除去画像として知覚されるように時間的に連続して表示され、上記ホログラフィックデータによって定義されたホログラムの再生が上記サブフレームを定義するように各サブフレームがホログラフィックデータを用いる空間光変調器の変調によってホログラフ的に生成され、ハードウェア・アクセラレータが、上記表示画像を定義する画像を記憶する入力バッファと、上記サブフレームのためのホログラフィックデータを記憶する出力バッファと、上記入力データバッファおよび上記出力データバッファに接続され、上記サブフレームのための上記ホログラフィックデータを生成するため上記画像データを処理する少なくとも1個のハードウェアデータ処理モジュールと、上記少なくとも1個のハードウェアデータ処理モジュールに接続され、単一の上記表示画像に対する画像データに対応する上記サブフレームのホログラフィックデータを上記出力データバッファに供給するために上記少なくとも1個のハードウェアデータ処理モジュールを制御するコントローラと、を備える、ハードウェア・アクセラレータについて、2005年6月14日に出願された英国特許出願第0511962.3号にさらに記載している。
【0044】
このハードウェア・アクセラレータには、好ましくは、複数のハードウェアデータ処理モジュールが複数のサブフレームのデータを並列に処理するため含まれる。好ましい実施形態では、ハードウェアデータ処理モジュールは、入力データバッファに接続され、位相変調データ入力を有し、好ましくは少なくとも部分的にランダムな位相データを含む入力に応答して画像の画素の位相を変調する位相変調器を備える。このデータは、進行中に生成されてもよく、または、不揮発性データ記憶装置から供給されてもよい。位相変調器は、好ましくは、入力データバッファからの画素データに入力位相変調データを乗算するため少なくとも1個の乗算器を含む。簡単な実施形態では、乗算器は単に入力データの符号を変えるだけである。
【0045】
位相変調器の出力は、フーリエ変換モジュールまたはフーリエ逆変換モジュールのような空間・周波数変換モジュールに供給される。後述されるホログラフィック・サブフレーム生成手順との関連では、これらの2つの演算は実質的に等価であり、事実上、違いはスケール倍率のみである。他の実施形態では、他の空間・周波数変換が利用されることがある(一般に、周波数は、空間位置または画素画像データから導出された空間周波数を指している)。いくつかの好ましい実施形態では、空間・周波数変換モジュールは、ホログラフィック・サブフレーム・データを出力するために位相変調画像データ(の空間分布)の2次元フーリエ変換を実行するフィードバック付きの1次元フーリエ変換モジュールを含む。これはハードウェアを簡略化し、たとえば、最初に行を処理し、次に列を処理することを可能にする(または、逆もまた同様である)。
【0046】
好ましい実施形態では、ハードウェアは、変換モジュールの出力に接続され、出力バッファのためのサブフレームのホログラフィックデータを供給するためにホログラフィック・サブフレーム・データを量子化する量子化器をさらに含む。量子化器は、2、4またはより多くの(位相)レベルに量子化することがある。好ましい実施形態では、量子化器は、出力バッファのためのサブフレームのペアを生成するために、ホログラフィック・サブフレーム・データの実数成分および虚数成分を量子化するように構成されている。このように、一般に、空間・周波数変換モジュールの出力は複素平面にわたる複数のデータ点を含み、このデータ点は、複素平面を半分ずつに分割し、よって、バイナリ量子化データの第1の集合を生成するために実数軸上の点(すなわち、零)で閾値化(量子化)され、次に、複素平面をさらなる2個の領域(0より大きい複素成分、0より小さい複素成分)に分割するために虚数軸上の点、すなわち、0jで量子化されることがある。サブフレームの個数が多いほど、全体的な雑音が小さいので、これはさらなる利点をもたらす。
【0047】
好ましくは、入力バッファおよび出力バッファの一方または両方は、デュアルポート・メモリを含む。いくつかの特に好ましい実施形態では、ホログラフィック画像表示システムはビデオ画像表示システムを含み、表示画像はビデオフレームを含む。
【0048】
実施形態では、ハードウェア・アクセラレータの様々な段が、後述されるように、以下に記載されたアルゴリズムの変形を実施する。アルゴリズムは、静止フレームまたはビデオフレームI=Ixyに対し、N個のバイナリ位相ホログラムh(1)...h(N)の集合を生成する方法である。アルゴリズムの統計的分析は、このようなホログラムの集合が相互に独立した加法的雑音を示す再生フィールドを形成することを明らかにした。
【0049】
1.
【数1】

とする。ここで、φxy(n)は、1≦n≦N/2、かつ、1≦x,y≦mに対して、0と2πとの間に一様分布する。
2.
【数2】

とする。ここで、F−1は、1≦n≦N/2に対して、2次元フーリエ逆変換演算子を表す。
3. 1≦n≦N/2に対して、
【数3】

とする。
4. 1≦n≦N/2に対して、
【数4】

とする。
5.
【数5】

とする。ここで、
【数6】

かつ、1≦n≦Nである。
【0050】
ステップ1は、供給された強度ターゲットIxyの振幅に等しい振幅と、独立同一分布(i.i.t)に従う一様乱数位相とをもつN個のターゲットGxy(n)を形成する。ステップ2は、N個の対応する完全な複素フーリエ変換ホログラムguv(n)を計算する。ステップ3および4は、それぞれ、ホログラムの実数部分および虚数部分を計算する。ホログラムの実数部分および虚数部分のそれぞれのバイナリ化は、次に、ステップ5において実行され、muv(n)の中央値の付近の閾値化は、同数の−1点および1点がホログラムに存在することを確実にし、DCバランス(定義上)と、さらに再構成誤差最小化とを実現する。実施形態では、muv(n)中央値は零であるとされている。この仮定が正当であることは明らかにされ、この仮定を立てることの影響は知覚される画質に関して最小限である。さらなる詳細事項は、参照されることがある本出願人の先行出願(同上)において見つけられる。
【0051】
図3は、図1のモジュール12のホログラフィック画像表示システムのためのハードウェア・アクセラレータの実施形態のブロック図を示している。システムへの入力は、好ましくは、コンピュータのようなソースからの画像データであるが、他のソースも同様に応用できる。入力データは、システム内の1台以上のコントローラユニットから供給されるこの目的のための制御信号と共に、1個以上の入力バッファに一時的に記憶される。各入力バッファは、好ましくは、データが入力バッファに書き込まれ、同時に入力バッファから読み出されるように、デュアルポート・メモリを含む。図1に示された入力バッファからの出力は、Iと呼ばれる画像フレームであり、この画像フレームがハードウェア・ブロックへの入力になる。図2を使用してより詳細に説明されているハードウェア・ブロックは、上記画像フレームのうちの各画像フレームIに一連の手順を実行し、1個以上の出力バッファへ送信される1個以上のホログラフィック・サブフレームhを各画像フレームに対して生成する。各出力バッファは、好ましくは、デュアルポート・メモリを含む。このようなサブフレームは、上記出力バッファから出力され、場合によってはドライバチップを介して、SLMのような表示装置へ供給される。この過程を制御する制御信号は1台以上のコントローラユニットから供給される。制御信号は、好ましくは、1個以上のホログラフィック・サブフレームが生成され、ビデオフレーム周期毎にSLMへ送信されることを確実にする。実施形態では、コントローラから入力バッファおよび出力バッファの両方へ送信される制御信号は、読み出し/書き込み選択信号であり、コントローラとハードウェア・ブロックとの間の信号は様々のタイミング情報、初期化情報およびフロー制御情報を含む。
【0052】
図4は、ブロックに供給される画像フレーム毎に1個以上のホログラフィック・サブフレームを生成するため設計されたハードウェア要素の集合を含む、図3に説明されているようなハードウェア・ブロックの実施形態を示している。このような実施形態では、好ましくは、1個の画像フレームIxyがビデオフレーム周期毎にハードウェア・ブロックへの入力として1回以上供給される。このような画像フレームのソースは図3に示されているように1個以上の入力バッファでもよい。各画像フレームIxyは、その後に、位相変調段と、空間・周波数変換段と、量子化段とのうちの1つ以上を含む演算の集合を用いて、1個以上のホログラフィック・サブフレームを生成するため使用される。実施形態では、N個のサブフレームの組は、Nが1以上である場合に、上記演算の順序集合、異なるサブフレームに並列に作用するこのような演算の数個の集合、または、これらの2つのアプローチの組み合わせのうちのいずれか1つを使用することによって1フレーム周期毎に生成される。
【0053】
図4の実施形態に示された位相変調ブロックの目的は、最終的な画質の改良が以降の演算を実行した後に実現されるように、入力フレームのエネルギーを空間・周波数領域の中で再分配することである。
【0054】
図5は、ランダムな位相分布が使用される位相変調段の前後にサンプル画像のエネルギーが分配される方法の実施例を示している。このような位相分布によって画像を変調することは、エネルギーを空間・周波数領域の全体を通じてより均一に再分配する効果があることがわかる。
【0055】
図4の実施形態に示されている量子化ハードウェアは、先行する空間・周波数変換ブロックの出力として生成された複素ホログラムデータを取得し、複素ホログラムデータをターゲットSLM上で達成可能である実際の位相変調レベルに対応する値の制限された集合に写像することを目的としている。実施形態では、量子化レベルの個数は2に設定され、このような仕組みの実施例は各画素で位相遅延0またはπを生じる位相変調器である。他の実施形態では、異なる位相遅延に対応する量子化レベルの個数は、2またはそれ以上でもよい。異なる位相遅延レベルがどのように分布するかについての制限はなく、規則的な分布、不規則的な分布、または、両方の分布の混合が使用されてもよい。好ましい実施形態では、量子化器は、出力バッファに対して、それぞれが2個の位相遅延レベルをもつ1対のサブフレームを生成するため、ホログラフィック・サブフレーム・データの実数部および虚数部を量子化するように構成されている。離散的に画素化されたフィールドに関して複素ホログラフィック・サブフレーム・データの実数成分および虚数成分は無相関であり、このことが、実数成分と虚数成分とを独立に取り扱い、2個の無相関ホログラフィック・サブフレームを生成することが妥当であることの理由であるとわかる。
【0056】
図6は、複素ホログラフィック・サブフレーム・データの実数成分および虚数成分から1対の量子化要素を生成するようにシステム内に並列に配置されている、図3に記載されたハードウェア・ブロックの実施形態を示している。
【0057】
図4に示されているように、位相変調データが生成されることがある多数の異なる手法が存在する。実施形態では、擬似ランダム・バイナリ位相変調データは、フィードバック付きのシフトレジスタと、XOR論理ゲートとを含むハードウェアによって生成される。図7は入力画像データにバイナリ位相データを乗算するハードウェアをさらに含むこのような実施形態を示している。このハードウェアは、入力データの2個のコピーを生成し、一方に−1が乗じられる手段と、その後に続き、2個のデータコピーのうちの一方を選択するマルチプレクサとを含む。本実施形態では、マルチプレクサへの制御信号は、上述されているように、シフトレジスタと関連した回路とによって生成される擬似ランダム・バイナリ位相変調データである。
【0058】
別の実施形態では、予め計算された位相変調データがルックアップテーブルに記憶され、ルックアップテーブルから読み出された位相データがランダムであるように、ルックアップテーブルのためのアドレス値の系列が生成される。本実施形態では、ランダム性を確保するために十分な条件は、ルックアップテーブルの中のエントリの個数Nが、アドレス値が1回当たりに増加する値mより大きいこと、mがNの整数因数ではないこと、および、アドレス値がNを越えるとき、アドレス範囲の先頭に「ラップアラウンド」することであることがわかる。好ましい実施形態において、Nは、アドレスのラップアラウンドが付加的な回路を用いることなく実現されるように、2のべき乗、たとえば、256であり、mは、Nの因数でないように、奇数である。
【0059】
図8は、実数成分および虚数成分からなるN個のデータ語の集合を格納しているルックアップテーブルのためのアドレス値の系列を生成するフィードバック付きの3入力加算器を備える、このような実施形態のための適当なハードウェアを示している。入力画像データIxyは、ルックアップテーブルから選択された値の実数成分と虚数成分とが乗じられる2個の同一信号を形成するため複製される。この演算は、その結果、位相変調入力画像データGxyの実数成分および虚数成分をそれぞれ生成する。実施形態では、nで表された加算器への第3の入力は、現在のホログラフィック・サブフレームを表現する値である。別の実施形態では、第3の入力nは省略される。さらなる実施形態では、mおよびNは両方共に素数の集合の中の別個の素数であるように選択され、これはアドレス値の系列が真にランダムであることを保証する強力な条件である。
【0060】
図9は、図4に示されているように、入力する位相変調画像データGxyに2次元FFTを実行するハードウェアの実施形態を示している。本実施形態では、2次元FFT演算を実行するハードウェアは、1次元FFTブロックと、中間行または中間列の結果を記憶するメモリ要素と、メモリの出力からマルチプレクサの一方の入力へのフィードバック経路とを備える。このマルチプレクサのもう一方の入力は、位相変調入力画像データGxyであり、マルチプレクサへの制御入力は、図4に示されているようなコントローラブロックから供給される。このような実施形態は、2次元FFT演算を実行する面積効率的な方法を表している。
【0061】
他の実施では、図4および/または6に示された演算は、たとえば、汎用デジタル信号プロセッサ上で部分的または完全にソフトウェアで実施されてもよい。
【0062】
OSPRアプローチにおいて、サブフレーム・ホログラムが独立に生成され、よって、独立した雑音を示すことが説明された。しかし、各サブフレームの生成過程は、前のサブフレームによって生成された雑音を打ち消し、後で形成される知覚画像、すなわち、n個のOSPRシステムフレームを手順のn+1段へ効果的に「フィードバック」し、閉ループシステムを形成するため、前のサブフレームによって生成された雑音を考慮することが可能である。このような適応(AD)OSPR手順は、以下のとおりフィードバックを使用し、すなわち、アルゴリズムの各段nが前に生成されたホログラムH〜Hn−1から生じる雑音を計算し、この雑音を打ち消すために、ホログラムHの生成中にこの雑音を考慮に入れる。その結果、雑音分散は1/Nのように減少する(ここで、ターゲット画像TはN個のホログラムの集合を出力する)。より詳細な事項は国際公開第2007/031797号公報および国際公開第2007/085874号公報において見つけられる。
【0063】
レンズエンコーディング
OSPRアルゴリズムは、フーリエ変換ステップを離散フレネル変換によって置き換えることによりフレネルホログラムを計算する場合に一般化可能である。バイナリ・フレネルホログラムに関連した1つの重要な利点は、回折近距離場が共役画像を含んでいないことである。
【0064】
再び図2を参照すると、同図はホログラフィック・プロジェクタのための簡単な光学アーキテクチャを示している。レンズペアLおよびLは、再生フィールドのローパスフィルタリングが起こらないように、ホログラム表面全体を捕捉するためレーザビームを拡大するケプラー式望遠鏡またはビームエクスパンダを形成する。逆の配置がレンズペアLおよびLのため使用され、ホログラムを効果的に縮小し、その結果、回折角を増大する。結果として起こる再生フィールドのサイズRの増加はシステムの縮小化であり、焦点距離の比f対fによって設定される。
【0065】
等価的なレンズ出力を符号化するフレネルホログラムを利用することにより、光学系からレンズLを除くことが可能である。プロジェクタからの出力画像は、出力レンズLからのすべての距離において依然として焦点が合っていることになるが、近距離場伝搬が原因となって、共役画像アーティファクトがない。Lは、より長い焦点距離を有するので、レンズペアのうちの大きい方であり、光路からLを取り除くことはシステムのサイズおよび重量を著しく低減する。
【0066】
同じ技術は、ペアLおよびLの逆機能を実行するビーム拡大レンズペアLおよびLにも適用可能である。したがって、フレネルホログラムにコーディングされたレンズ機能として表現可能であるビーム拡大組立体と縮小組立体との間でレンズを共用することが可能である。この結果、2個の小型の、焦点距離が短いレンズのみを必要とするホログラフィック・プロジェクタが得られる。残りのレンズは、反射型構成で使用されるホログラムにコーディングされる。
【0067】
上記OSPR手順のステップ1〜5を再び参照すると、ステップ2はこれまでは2次元フーリエ逆変換であった。フレネルホログラムを実施し、さらにレンズをコーディングするため、上述されているように、上記フーリエ逆変換の代わりに逆フレネル変換が利用される。
【0068】
離散フレネル変換はフーリエ変換の項で表現可能である。
【数7】

逆フレネル変換は、
【数8】

の形をとることがあり、式中、
【数9】

かつ
【数10】

である。
【0069】
実際のところ、倍率F(1)およびF(2)はフーリエ変換をホログラムhのフレネル変換に変化させる。各ホログラム画素のサイズはΔ×Δであり、そして、ホログラムの全サイズは、(画素単位で)N×Mである。上記において、zはホログラムレンズの焦点距離を定める。最後に、再生フィールドにおけるサンプル間隔は、
【数11】

であり、その結果、再生フィールドの寸法は、
【数12】

であり、フラウンホーファー回折法における再生フィールドのサイズと一致している。
【0070】
図4に示された変換は、(2次元FFTではなく)2次元逆フレネル変換でもよく、そして、同様に、図6における変換は、(フーリエではなく)フレネル変換でもよい。図9のハードウェアでは、1次元FFTブロックは、FRT(フレネル変換)ブロックによって置き換えてもよく、その結果、図9のハードウェアが2次元FFTではなく2次元FRTを実行する。さらに、上記スケール倍率FxyおよびFuvのため、一方のスケール倍率は好ましくは図9に示されたループの内部に組み込まれ、もう一方がその結果を拡大させる。
【0071】
より詳細な事項のため、2007年3月27日に出願され、参照によって全体がそのまま本明細書に組み入れられる本出願人の同時係属中の国際特許出願PCT/GB2007/050157が参照されてもよい。
【0072】
カラー・ディスプレイ
図10を参照すると、同図は発明の実施形態によるカラーホログラフィック画像投影システム1000を示している。
【0073】
システム1000は、たとえば、それぞれの波長が638nm、532nm、および、445nmである赤色コリメート・レーザダイオード光源1002、緑色コリメート・レーザダイオード光源1006、および、青色コリメート・レーザダイオード光源1004を備える。各光源は、レーザダイオード1002と、必要に応じて、コリメート・レンズおよび/またはビームエクスパンダを備える。場合によっては、ビームのそれぞれのサイズは、後述されるように、ホログラムのそれぞれのサイズに拡大縮小される。赤色、緑色および青色光ビームは、図示されているように、2個のダイクロイック・ビームスプリッタ1010a、1010bの中で結合され、結合されたビームが反射型空間光変調器1012に供給される(他の実施形態では、透過型SLMが利用されることがある)。
【0074】
結合された光ビームは、ホログラフ的に生成された画像をスクリーン1016に投影する縮小オプティクス1014に供給される。図示されているように、(一定)SLM画素ピッチと照明光のそれぞれの波長とによって決定される赤色フィールドの広がりは青色フィールドの広がりより大きい。動作中に、赤色フィールド、緑色フィールドおよび青色フィールドは、フルカラー・ディスプレイを作成するため、たとえば、時間多重化方式でレーザダイオードを駆動することにより、時間多重化される。
【0075】
理論的に、縮小オプティクス1014は、事実上、制御された「色」収差を導入することにより、異なる波長のための異なる倍率で縮小化するように構成できる。代替的に、レンズ出力は、SLMの異なる色と同時に異なる縮小率を選択するため、SLMを照明する光の色に従って調節されることがある。しかし、参照によって本明細書に組み入れられる国際特許出願PCT/GB2007/050291に記載されているように、SLMによる光の異なる色の回折の異なる程度の調節は、好ましくは、SLMに表示されるべきホログラムを計算するときに補償される。
【0076】
破線1018は、SLMのフーリエ変換平面であり、スペックル除去拡散板(後述される)が配置されていることがある中間画像平面を表している。
【0077】
スペックル低減−理論、モデリングおよび実験
静止した観察者位置に対し、スペックル場の見かけの構造サイズは使用される画像化システムの分解能限界(したがって、瞳サイズ)に依存することになる。“Statistical Optics”(J.W.Goodman, Wiley Classics Library Edition, 2000)に記載された理論的分析に従って、散乱スクリーンは、波長を近似するスケールに関して理想的(すなわち、均一の[−π,π]位相分布)であると仮定する。したがって、スペックルパターンのスペクトル分布は、開口の自己相関関数によって与えられる。正方形の瞳の場合、この関数は図11に示された関数のように見える。円形開口の場合、関数はより一層徐々に減少する。このことは、さらに、観察者の瞳サイズが減少するとき(Lが減少するとき)、電力スペクトル密度が最低空間周波数の周りにより多く構築されるようになり、スペックルサイズを明らかに増加させ、観察者の注意をより散漫にさせることを示している。
【0078】
スペックル場への瞳サイズの影響はモデルの中で決定可能である。ここで、スクリーンは、256×256画素のシーンの中で100×100画素のエリア全体に20μmの画素サイズをもつ理想的な散乱体としてモデル化される(図12(a))。スクリーンを零に埋め込むことにより、画像内のスペックルの統計値を背景雑音から区別することが可能であろう。このスクリーンはプロジェクタからの光によって位相変調される。分解能400×200と投射角20°とを仮定すると、距離20cmで画素分解能約140μmが与えられる。ヒト視覚に対して角度分解能1分角(arcmin)を仮定すると、スクリーン上の最小分解可能特徴形状は60μm未満である。
【0079】
スクリーンに対して構造サイズ20μmを選択することにより、再生フィールドの物理サイズは、f(=20cm)*λ(=532nm)/Δ(=20μm)≒5.3mmであり、ほぼこのあたりに薄暗い観察条件における解剖学的瞳のサイズ(典型的に、5〜8mm)がある。したがって、この再生フィールドは、視覚を通過する光を近似するため円形瞳によって開口化可能である(図12(b))。現実の視覚では、画像化システムは理想からかけ離れている。シミュレーションをより現実的にするため、測定された眼の収差のデータ集合から取得された収差がこの場合に解剖学的瞳のエリア全体に適用できる。理論的には、収差は観察されるスペックルパターンの統計値を変化させることはないが、収差は網膜に形成された像の中の光の正確な分布を変化させることになる。
【0080】
スクリーンサイズ2mm×2mmと、眼の焦点距離約17mmとに対し、画像の倍率は、およそ17mm/200mm≒1/12であり、全画像サイズ167μm×167μmを導く。視覚の中の錐体光受容器の典型的なサイズが中心窩の付近で約2.5μmであり、間隔が約3μmであると仮定すると、網膜像の中の200×200画素が約50×50画素までコヒーレント的にダウンサンプリングされるべきであろう。すなわち、再生フィールドの中の4×4画素のグループが視覚の各錐体に入射した光の強度および位相を決定するためコヒーレント加算されるべきであろう。この効果は、画像が視覚より長い焦点距離および細かい画素分解能をもつカメラで撮影されることを仮定した最初のシミュレーションの組では考慮されていなかった(図12(c))。
【0081】
瞳平面内での収差によって生じるエッジ歪みを避けるため、スクリーンの網膜像は、観察される強度パターンの統計値を決定する前に、x次元およびy次元において80%までクロップされた(図12(d))。
【0082】
モデルの試験:モデルによって予測された強度パターンが実際にスペックル効果によって生じたかどうかを決定するための主要な試験のうちの1つは、強度分布のスペクトル特性を理論によって予測された強度分布のスペクトル特性と比較することであった。このことを試験するため、再生フィールドエリアの幅の25%、50%、75%および100%を占める4個の異なる開口サイズが使用された。実験および理論における観察によれば、開口サイズが小さい程、より粗い強度パターンをもつ網膜像を生成した(図13)。これらの強度パターンの電力スペクトル密度は、その後に、開口化された網膜(強度)像にFFTを使用して計算された。繰り返しFFTの対称性のため、この演算は、開口関数を近似する分布スペクトル電力を導くはずである。円形2次元スペクトル分布から電力スペクトルプロットを作るため、2次元行列が半径毎に全局座標にわたって測定された平均電力を用いて極座標系に写像された。この写像は不十分な写像であるため、結果として得られる曲線はかなり雑音を含むと思われる。これらの曲線は図14にシミュレーション後の電力スペクトルと一緒に示されている。最良あてはめは最小開口サイズに対して得られることがわかり、この理由は後述される。
【0083】
観察された強度パターンが本当にコヒーレント雑音に起因した強度パターンであるかどうかを決定するためのさらなる試験は、スペックルコントラストと、強度パターンの母集団統計値とを測定することを含む。理論的に、平均強度に対する標準偏差の比率は、真のスペックルパターンに対して1であるに違いない。上記シミュレーションでは、異なる開口サイズに対するスペックルコントラスト値は、(25%)0.92、(50%)0.90、75%)0.87、および、(100%)0.68であった。画素値ヒストグラムの中の変動は図15に示されているとおりである。この場合も、これらの試験は、モデルとの適合が最小アパーチャサイズの場合に最も正確であることを示している。
【0084】
開口サイズに伴って理想的なスペックル特性からシミュレーションの逸脱が増加する理由は開口PSFの観点から説明できる。スペックルを本当にシミュレーションするため、画像平面内の各画素は対象物平面内の複数の画素からの寄与の結果であることが要求される。画像平面は画像と開口のPSFとのコンボリューションとして記述できるので、PSFはPSFエリア内の複数の画素を収容するために十分に幅が広くなければならない。図16から、これは、現実には開口サイズが25%以下の場合に限られることがわかる。
【0085】
このことから、スペックルの現実的なシミュレーションを実現するため、開口は再生フィールドエリアの25%未満を占めることが必要であるが、このエリアが径5.3mmと一致するためには、スクリーンの構造サイズは、少なくとも4分の1の倍率で約5μmmまで減少すること、すなわち、シミュレーションの分解能を4倍にすることが必要である、と結論付けることができる。代替案は、シミュレーション分解能を同一に保ち、スクリーンの物理サイズを各次元において4分の1ずつ縮小することである(0.25mm)。しかし、この場合、開口を適用した後、シミュレーション中に画像平面を構築するために依拠するデータ点が徐々に少なくなり、誤差をもたらす。このことは、開口サイズを4分の1に縮小し、同じ分解能を維持するときにわかる(図17)。開口が縮小される倍率と同じ倍率でシミュレーションの分解能を増加させることにより(画像平面を構築するために使用される画素の個数を一定に維持すると)、強度マップをスペックル統計値に戻す(図18)。これらの値は、より高い分解能で、シミュレーションは、開口が再生フィールドエリアの約10%を占めるとき、コントラスト値約0.9〜1.1をもつ指数関数的に減衰する収差を生じることを示す。
【0086】
これらのシミュレーションパラメータを使用して強度場のためのスペクトル電力分布を計算すると、モデルが理論予測に密接に適合する程度がわかる(図19)。
【0087】
今度は、眼の収差を用いる不変性を考慮する。レーザ・スペックルパターンの統計的特性は、収差を画像化システムに導入することによって変化しない。モデルによって予測される強度パターンがコヒーレント雑音によって引き起こされる場合、上記グラフは、瞳平面に収差を導入した場合と一致するはずである。変化する出力の収差は、画像平面内に形成された強度パターンの統計的特性に影響を与えないことが示された。これらの収差から取得されたサンプル統計値は図20に示されている。
【0088】
今度は、いくつかの実験結果について説明する。図22は、静止した拡散板と比べると、モータで回転する(ホログラフィック)拡散板が低い空間周波数でのスペックルパターンのスペクトル電力の減少時に非常に効果的であることを示している。しかし、このレベルのスペックル除去を達成するための輝度ペナルティは望ましくないほど高い。類似した効果は、図23に示されているように、圧電アクチュエータおよびバイナリ位相拡散板を使用して、このような輝度の大きな減少を伴うことなく実現可能である。
【0089】
要約すると、スペックルは、対象物の複数の点が画像平面内の各点に寄与するとき(すなわち、画像化システムのPSFが十分に広いとき)、正確にシミュレーション可能である。画像化システムの開口を通過する点の個数は、スペックル統計値に従う強度パターンを生成するために、同様に十分に多数(≧256点)でなければならない。モデル化された開口サイズの範囲から、映像化システムの開口のサイズが増加するとき、スペックル構造サイズの分布が増加し、より一様なフィールドを生じることが図21からわかる。
【0090】
さらに、拡散板の移動は、低い空間周波数で実験的に測定されたスペックル場のスペクトル電力スペクトルを著しく削減することがわかる。しかし、非常に粗い拡散板の使用は、最終レンズの集光角の外側の光を散乱し、輝度を著しく減少させる。
【0091】
画素化されたバイナリ位相拡散板の使用は、最終投影レンズの集光錐体の内側の光を散乱する。拡散板の画素サイズは、距離10μmの範囲内に約10個のスペックルパターンを生成するために十分に小さい。したがって、この範囲は、圧電作動を可能にするため十分に小さい。したがって、最終画像中のスペックルの出現は、観察者が許容できる程度まで低減される。
【0092】
スペックル低減−実施
今度は図24aを参照すると、同図は、画像を表示面14に投影するホログラフィック光学画像表示システム1600の実施形態を示し、図2の要素と同様の要素は同様の参照番号によって示されている。ホログラフ的に生成された中間画像は、圧電駆動型画素化拡散板2402が配置されているフーリエ変換平面に形成される。拡散板2402は、アーム(概略的に示されている)によって、ドライバ2406に接続された圧電アクチュエータ2404に連結されている。
【0093】
図24bは、上述されているように、レンズL2およびL3の機能が、本実施形態では、SLM 24に表示されるホログラムにコーディングされることがある単一のレンズ28の中で共有されている反射型SLMを使用する代替的な光学構成を示している。本実施例のシステムでは、波長板34は、ビームスプリッタのため入射ビームの偏光を回転させるため利用される。
【0094】
ホログラフ的に生成される中間画像は、圧電駆動型画素化拡散板2402が配置されている縮小オプティクスのフーリエ変換平面に形成される。この場合も、拡散板2402は、アーム(概略的に示されている)によって、ドライバ2406に接続された圧電アクチュエータ2404に連結されている。場合によっては、本配置および上記配置において、開口は、1つ以上の零次(非回折光)、共役画像、および、より高次の回折次数を遮断するため、この平面内にさらに含まれることがある。
【0095】
今度は図25aを参照すると、同図は、発明を具現化するカラーホログラフィック画像表示システムの概略図を示し、上記要素と同様の要素は同様の参照番号によって示されている。反射板2500は、青色および赤色波長のためのダイクロイックフィルタを使用して実施される。拡散板2402はアーム2408によって圧電アクチュエータ2404に連結されている。図25bは、拡散板およびアクチュエータの細部を示す図25aのシステムのための機械的構成の細部を示し、この場合も上記要素と同様の要素は同様の番号によって示されている。
【0096】
システムの実施形態は以下の事項を可能にする。
【0097】
1. スペックルの時間的な低減は、有限空間周波数帯域幅内のスペックル・スペクトルの電力を除去する。
【0098】
上述されているとおり、OSPRは投影されたサブフレーム画像内の各画素の位相をランダム化することによってスペックルの出現を低減する。サブフレームが投影されるレートが高くなるにつれて、(ホログラフィック画像の画素ピッチによって決定された空間周波数帯域幅の範囲内で)スペックル・スペクトルの電力は低くなる。換言すると、スペックルコントラストは、Nが視覚の積分時間の範囲内のサブフレームの個数である場合に、倍率1/sqrt(N)で低減される。中間画像平面内で拡散板を使用すると、位相が拡散器画素のスケールにわたって変化するレートを超小型ディスプレイのみによって実現可能なレートより増加させることが可能である。この効果は超小型ディスプレイのサブフレーム・レートを増加させることによって実現可能であるが、これは付加的な処理電力を使用することになる。
【0099】
2.スペックルの空間的な低減は、スペックル・スペクトル内の電力を低減できる帯域幅を増加させる。
【0100】
拡散板がホログラフィック画像の平面(すなわち、中間画像平面)に置かれるとき、拡散板の画像が壁に投影される。好ましくは、拡散板は実質的に透過性であるので、実質的に投影された画像の位相のみが拡散板による影響を受ける。拡散板を用いない場合、(OPSRを使用して生成された)投影画像の画素の範囲内の位相は所定の時点で均一である(しかし、長時間にわたってランダムに変化する)。拡散板の画素ピッチをホログラフィック画像の画素ピッチより減少させることは、位相が所定の時点で一定である投影画像の面積を縮小するために作用する。視覚の積分時間にわたって、互いに関してランダムに変化する位相を有する投影画像の中の領域は、平均化する複数のスペックルパターンを生成することになる。したがって、視覚にとっては、これらの領域は互いにインコヒーレントであるように見える。拡散板の急速移動は、投影された画像画素より小さいスケールでランダムな位相を生成する。この効果は、超小型ディスプレイの画素の個数(すなわち、投影画像の空間分解能)を増加させることにより、付加的に、または、代替的に達成可能であるが、この場合も、付加的な処理電力を使用することになる。
【0101】
技術の実施形態は、2次元画像をホログラフ的に生成するシステムにおいて実施される。これは、特に、拡散板の時間的制約を緩和する。拡散板は、今度は、画像の行毎に1回ずつ、または、画像の画素毎に1回ずつではなく、ビデオフレーム毎に1回ずつ、スペックルを低減/除去するために使用されるサイクル数を完了可能である。これは、圧電作動型拡散板の使用を実質的に実現し易くする。
【0102】
いくつかの好ましい実施では、実施形態において、拡散板を保持するアームに接続された曲げ圧電アクチュエータが利用される。小型ホログラフィック・プロジェクタ・システムの実施形態では、拡散板のストローク距離(約10μm)は、曲げ圧電アクチュエータを使用できるようにするために十分に小さい。さらに、2個の圧電ベンダを直角に取り付けることにより、2次元、好ましくは、実質的に直交する2方向における拡散板の運動を実現することが可能である。このことは、画像の中の「縞」の出現を回避するために役立つ。拡散板運動の周波数は、好ましくは、周期が1/60秒未満であるような周波数である。実施形態では、拡散板運動の周波数は、周期が1サブフレーム間隔未満であるような周波数でもよい。しかし、効果は高速に飽和するように思われる。よって、実施形態では、好ましいアクチュエータ周波数は、(可聴雑音を生じる可能性がある)約2kHzまでのようなより高い周波数の間で、3〜400Hzであった。
【0103】
今度は、拡散板を設計し構築する工程について説明する。本実施例では、1.5μmピッチで画素化されたアレイに描かれたランダムなバイナリ([0,π])位相パターンが使用される。これは3μm中間画像画素ピッチを用いるホログラフィック画像表示システムに使われたが、拡散板画素ピッチに対するホログラフィック画像の画素ピッチの一つの好ましい比率は約2:1であるように思われる。拡散板は、フォトリソグラフィ工程(ガラス上のフォトレジストパターンの露光、現像、および、エッチング)を使用して作られた。この工程はその位相範囲[0,π]を覆う平らな拡散板面プロファイルを与える。これは、光が最終投影レンズの外側に散乱されることを回避し、表示画像強度を増加させ、より大きい特徴形状サイズによって引き起こされた他のアーティファクトを除去するために役立つ。すりガラス拡散板と比べると、バイナリ位相の画素化された拡散板は、予測可能な空間周波数構造を有し、したがって、光が散乱された角度をもつ予測可能な錐体を有する。バイナリ位相拡散板の画素ピッチを調節することにより、光が散乱される角度の範囲は厳密に制御可能である。これは、低減されたスペックルコントラストと、画像輝度およびプロジェクタ投射角の両方の最大化との間の良好なバランスを見つけるため役立つ。
【0104】
当業者は、ここで説明された技術の用途が画像を平面的または湾曲した2次元スクリーンに画像を表示するホログラフィック画像表示システムに限定されることなく、コヒーレント光を使用して、特に、ホログラフ的に画像またはパターンをどのような表面に表示または投影するときに利用されてもよいことを認めるであろう。
【0105】
ここで説明された上記技術の用途は、特に(しかし限定されることなく)、携帯電話機と、PDAと、ラップトップと、デジタルカメラと、デジタル・ビデオ・カメラと、ゲーム機と、車内映画館と、ナビゲーションシステム(車内または個人向け、たとえば、腕時計型GPS)と、自動車および航空機用のヘッドアップおよびヘルメット搭載型ディスプレイと、腕時計と、パーソナル・メディア・プレーヤ(たとえば、MP3プレーヤ、パーソナル・ビデオ・プレーヤ)と、ダッシュボード搭載型ディスプレイと、レーザ光ショー用ボックスと、パーソナル・ビデオ・プロジェクタ(「ビデオiPod(RTM)」概念)と、広告および標識システムと、(デスクトップを含む)コンピュータと、リモート・コントロール・ユニットと、ホログラフィック画像表示システムを組み込む建築備品と、より一般的にピクチャを共有するため、および/または、2人以上の人が同時に画像を見るために望ましいあらゆる装置とを含む。
【0106】
おそらく、当業者は多数の効果的な代替案に想到し、発明が記載された実施形態に限定されず特許請求の範囲の精神および意図の範囲内にある当業者に明白な変更を包含することが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示面にホログラフ的に表示するホログラフィック画像表示システムであって、
ホログラムを表示する空間光変調器(SLM)と、
前記表示されたホログラムを照明する光源と、
ホログラフ的に生成された2次元画像を形成するために、前記表示され照明されたホログラムからの光を前記表示面に投影し、前記ホログラフ的に生成された画像に対応する中間2次元画像を中間画像面に形成するように構成されている投影オプティクスと、
前記中間画像面に配置されている拡散板と、
前記拡散板に機械的に接続され、システムによって表示される画像の中のスペックルを低減するために前記中間画像の画素にわたって位相をランダム化するため動作中に前記拡散板を移動させるアクチュエータと、
を備えるホログラフィック画像表示システム。
【請求項2】
前記拡散板が量子化され画素化された位相拡散板を含む、請求項1に記載のホログラフィック画像表示システム。
【請求項3】
前記拡散板の画素が5μmより小さい画素ピッチを有する、請求項2に記載のホログラフィック画像表示システム。
【請求項4】
前記拡散板の前記画素が、ランダムに、複数の量子化された位相レベルのうちの1つを有する、請求項2または3に記載のホログラフィック画像表示システム。
【請求項5】
前記アクティベータが圧電アクティベータを備え、
前記圧電アクティベータのためのドライバをさらに備え、
動作中に、前記ドライバが前記拡散板を前記拡散板の画素ピッチの少なくとも2倍、好ましくは、前記拡散板の画素ピッチの少なくとも5倍の距離だけ移動させるように構成されている、請求項2、3または4に記載のホログラフィック画像表示システム。
【請求項6】
システムによって表示された画像の中のスペックルの知覚レベルを低下させるために、前記移動する拡散板によって前記中間画像の前記画素に加えられた変化するランダム位相パターンから生じた、システムによって表示された画像の中の変化するスペックルパターンがヒト観察者の視覚内で積分されるように、前記拡散板を十分に素早く移動させるように構成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のホログラフィック画像表示システム。
【請求項7】
表示される画像データを受信する入力を有し、前記SLMを駆動する出力を有し、前記SLMに表示されるホログラムのためのホログラムデータを生成するために前記画像データを処理するように構成されているプロセッサをさらに備え、
前記表示されたホログラムによって形成される前記中間画像の前記画素が中間画像画素ピッチを有し、
前記拡散板が前記中間画像画素ピッチより小さい拡散板画素ピッチをもつ画素を有する、
請求項1〜7のいずれか一項に記載のホログラフィック画像表示システム。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記表示面上の対応する時間的サブフレーム画像が前記表示画像の印象を与えるため観察者の視覚の中で平均化するように、急速に連続して前記SLMに表示される複数の時間的ホログラフィック・サブフレームを生成するように構成されている、請求項7に記載のホログラフィック画像表示システム。
【請求項9】
前記アクチュエータが前記拡散板を2次元で移動させるように構成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載のホログラフィック画像表示システム。
【請求項10】
複数の画素を含む画像を表示面にホログラフ的に表示するホログラフィック画像表示システムにおいてスペックルを低減する方法であって、
システムが、
ホログラムを表示する空間光変調器(SLM)と、
前記表示されたホログラムを照明する光源と、
ホログラフ的に生成された2次元画像を形成するために、前記表示され照明されたホログラムからの光を前記表示面に投影し、前記ホログラフ的に生成された画像に対応する中間2次元画像を中間画像面に形成するように構成されている投影オプティクスと、
前記中間画像面に配置されている拡散板と、
を備え、
システムが、前記表示面上の対応する時間サブフレーム画像が前記表示画像の印象を与えるため観察者の視覚内で平均化するように、前記SLMに急速に連続して表示するための複数の時間的なホログラフィック・サブフレームを生成するように構成され、
スペックルの知覚レベルを低下させるため、結果として得られる変化するスペックルパターンがヒト観察者の視覚内で積分されるように、複数の異なる位相を1つずつの前記画素のエリア内に十分に急速に設けるため、前記拡散板を移動させるステップを含む方法。
【請求項11】
前記拡散板が、前記スペックルが前記表示画像の最大空間周波数より高い空間周波数で除去されるように、前記中間画像面で前記表示画像の画素のピッチより小さいピッチを有する画素をもつ量子化され画素化された位相拡散板を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記移動させるステップが前記拡散板を2次元で移動させるステップを含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも部分的にコヒーレントな光を使用して画像を表示面へ投影する画像表示システムであって、
2次元を表示する空間光変調器(SLM)と、
前記SLM上の前記表示画像を照明する少なくとも部分的にコヒーレントな光源と、
2次元画像を形成するために前記照明された表示画像から前記表示面へ光を投影し、前記表示画像に対応する中間2次元画像を形成するように構成されている投影オプティクスと、
前記中間2次元画像の位置にある量子化され画素化された位相拡散板と、
前記拡散板に機械的に接続され、前記投影された2次元画像のスペックルパターンを変化させるために動作中に前記拡散板を移動させる圧電アクチュエータと、
を備え、それによって、動作中に、前記拡散板の移動によって生じる前記投影された2次元画像の前記変化するスペックルパターンがスペックルの知覚レベルを低減するためヒト観察者の視覚内で平均化する画像表示システム。
【請求項14】
前記中間画像が中間画像画素ピッチを有し、前記拡散板が前記中間画像画素ピッチより小さい画素ピッチを有する、請求項13に記載の画像表示システム。
【請求項15】
前記アクチュエータが前記拡散板を2次元で移動させるように構成されている、請求項13または14に記載の画像表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図12c】
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【図12d】
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【図13a】
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【図13b】
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【図13c】
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【図13d】
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【図14】
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【図15(a)】
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【図15(b)】
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【図15(c)】
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【図15(d)】
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【図16a】
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【図16b】
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【図16c】
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【図16d】
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【図17(a)】
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【図17(b)】
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【図17(c)】
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【図17(d)】
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【図18(a)】
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【図18(b)】
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【図18(c)】
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【図18(d)】
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【図19】
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【図20(a)】
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【図20(b)】
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【図20(c)】
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【図20(d)】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24a】
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【図24b】
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【図25a】
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【図25b】
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【公表番号】特表2011−508911(P2011−508911A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541096(P2010−541096)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/GB2008/051211
【国際公開番号】WO2009/087358
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(507409977)ライト、ブルー、オプティクス、リミテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】LIGHT BLUE OPTICS LTD
【Fターム(参考)】