説明

ホログラフィック記録方法、ホログラフィック記録装置およびホログラフィック記録媒体

【課題】ビット記録型のホログラフィック記録方法において、光の利用効率を高めて光束かつ高密度な記録を可能にする。
【解決手段】反射層72と記録層73とを有するホログラフィック記録媒体70に対し、情報光IBおよび参照光RBを照射して干渉縞Sを形成し、情報を記録するホログラフィック記録方法である。この記録の際には情報光IBの明滅により情報光IBに情報を入力し、情報光IBおよび参照光RBを反射層72よりも記録層73側から照射し、情報光IBおよび参照光RBの一方を反射層72により反射させ、情報光IBと参照光RBを記録層73の同じ深さ位置で対向させつつ集束させて干渉縞Sを形成し、情報を記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィック記録方法、ホログラフィック記録装置およびホログラフィック記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報を高密度に記録する技術として、ホログラフィを利用した光情報記録装置(ホログラフィック記録装置)が開発されている。ホログラフィック記録は、情報が入力された情報光と、この情報光と同じ波長の参照光とを記録媒体中の記録層で重ね合わせ、そのときにできる干渉縞を記録することによって行われる。記録された情報を再生するときには、記録時の参照光と同じ波長の光を同じ角度で干渉縞に照射することで、干渉縞において情報光と同等の光を反射させる。
【0003】
ホログラフィック記録を行う際に情報光に情報を入力する方法としては、情報を平面上に画像として配置した2次元空間変調素子(SLM)を使い、情報光をこのSLMを通過させることで、情報光の断面に画像として情報を入力する方法がある(例えば非特許文献1参照)。この方法によれば、一度の記録で大量の情報を記録できるというメリットがあるが、SLMの応答が遅いことから、データ転送が低速になるという問題がある。
【0004】
また、SLMを用いずに、CD−Rなどと同様に、光源を明滅させて情報光に情報を入力し、画像としてまとめた情報ではなく1ビットずつ記録する方法(以下、「ビット記録」という)がある(例えば、非特許文献2参照)。このビット記録の方法によれば、SLMを用いる方法に比べ、情報光に情報を高速に入力できる。
【0005】
【非特許文献1】コリニア記録技術,「日経エレクトロニクス」,日経BP,2005年1月17日号
【非特許文献2】Kimihiro Saito and Seiji Kobayashi, Analysis of Micro-Reflector 3-Doptical disk recording, ODS2006-WA4
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、非特許文献2においては、ビット記録を行う際に、情報光と参照光を僅かにずらすとともに、双方を反射層の反射面に集束させている。そのため、情報光または参照光が集束する反射面付近からは、所定距離離れた位置で干渉縞が形成される。
【0007】
しかしながら、このような方法によると、情報光および参照光が最も集束する部分で干渉縞を形成していないので、記録媒体や光の利用効率が悪いという問題がある。
例えば、情報光および参照光が最も集束する反射層付近では、干渉縞が形成されないにもかかわらず、光が集まることから、記録層の反応が多少進んでしまうおそれがある。また、干渉縞は、光が集束していない部分で形成されるので、干渉縞が明確に形成されないおそれがある。このように、干渉縞を小さく明確に記録できないことは、ホログラフィック記録媒体の高記録密度化の阻害要因となる。
【0008】
本発明は、以上のような背景に鑑みてなされたものであり、ビット記録型のホログラフィック記録方法または記録装置において、光の利用効率を高めて高速かつ高密度な記録を可能にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決するための本発明は、少なくとも反射層と記録層とを有するホログラフィック記録媒体に対し、情報光および参照光を照射して干渉縞を形成し、情報を記録するホログラフィック記録方法であって、少なくとも前記情報光の明滅により前記情報光に情報を入力し、前記情報光および前記参照光を前記反射層よりも前記記録層側から照射し、前記情報光および前記参照光のうち一方を前記反射層により反射させ、前記情報光と前記参照光を前記記録層の同じ深さ位置で対向させつつ集束させて干渉縞を形成し、情報を記録することを特徴とする。
【0010】
このようなホログラフィック記録方法によれば、情報光と参照光がともに最も集束した位置で両者が重なり合い、干渉縞が記録される。干渉縞が絞られた強い光で記録されることにより、干渉縞のスポット径を小さくでき、また、高速で記録できる。さらに、干渉縞のスポット径を小さくできることで、高密度に情報を記録することができる。
【0011】
前記した記録方法においては、前記記録層における複数の異なる深さ位置で、情報を記録するのが望ましい。
【0012】
このように、記録層における複数の異なる深さ位置で情報を記録することで、媒体に記録できる情報の量を増やすことができる。
【0013】
前記した記録方法においては、前記情報光および前記参照光を複数組同時に照射し、各組の情報光および参照光の前記記録層における集束位置の深さを異ならせることで、情報の記録を多層に同時に行うこともできる。
【0014】
すなわち、多層記録を同時に行うことで、高速記録、高速でのデータ転送が可能となる。
【0015】
前記した記録方法においては、前記参照光を常時点灯させ、前記情報光のみを明滅させることができ、また、前記参照光および前記情報光の双方を同時に明滅させることもできる。
【0016】
また、前記した記録方法においては、前記参照光および前記情報光の前記記録層における集束位置までの光路長に応じ、前記参照光および前記情報光の露光量を調整することができる。
【0017】
前記した課題を解決した本発明の装置は、反射層と記録層とを有するホログラフィック記録媒体に対し、情報光および参照光を照射して干渉縞を形成し、情報を記録するホログラフィック記録装置であって、前記情報光および前記参照光を出射するレーザ装置と、少なくとも前記情報光を明滅させて前記情報光に情報を入力する光情報入力手段と、前記情報光および前記参照光を前記反射層よりも前記記録層側から入射させ、前記記録層中で集束させる光学系と、前記光学系を制御して、前記情報光および参照光の集束位置を調整する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記情報光および前記参照光の一方を前記反射層により反射させ、前記情報光と前記参照光を前記記録層の同じ深さ位置で対向させつつ集束させることを特徴とする。
【0018】
このようなホログラフィック記録装置によれば、情報光と参照光がともに最も集束した位置で両者が重なり合い、干渉縞が記録される。干渉縞が絞られた強い光で記録されることにより、干渉縞のスポット径を小さくでき、また、高速で記録できる。さらに、干渉縞のスポット径を小さくできることで、高密度に情報を記録することができる。
【0019】
前記したホログラフィック記録装置においては、前記制御装置は、前記記録層における複数の異なる深さ位置で前記情報光と前記参照光を対向させつつ集束させ、情報を記録することが望ましい。
【0020】
このようなホログラフィック記録装置によれば、多層に情報を記録することで、媒体に記憶できる情報の量を増やすことができる。
【0021】
前記したホログラフィック記録装置においては、前記情報光および前記参照光を複数組同時に照射し、各組の情報光および参照光の前記記録層における集束位置の深さを変えるため、前記光学系は、前記情報光および前記参照光の各組に対応して複数設けられているのが望ましい。
【0022】
このように、情報光および参照光を複数組同時に照射することで、媒体に対し高速に情報を記録することができる。
【0023】
前記したホログラフィック記録装置においては、前記参照光および前記情報光の少なくとも一方の光量を調整する光量調整フィルタを備え、前記制御装置は、前記光量調整フィルタを制御して、前記記録層における集束位置までの光路長に応じ、前記参照光および前記情報光の露光量を調整してもよい。
【0024】
また、本発明の他の観点からは、本発明は、前記したホログラフィック記録方法により記録された記録媒体である。
【発明の効果】
【0025】
本発明のホログラフィック記録方法、記録装置および記録媒体によれば、ホログラフィック記録において、情報光と参照光を効率よく利用して、高速かつ高密度な記録を可能にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
[第1実施形態]
次に、本発明のホログラフィック記録装置および記録方法について図面を参照しながら説明する。参照する図において、図1は、本発明の第1実施形態に係るホログラフィック記録装置の構成を示す図であり、図2は、ホログラフィック記録装置の記録部分の拡大図であり、(a)は第1実施形態での記録時、(b)は第1実施形態での再生時、(c)は従来例での記録時を示す。
【0027】
図1に示すように、第1実施形態に係るホログラフィック記録装置1は、ホログラフィック記録媒体70(以下、単に「記録媒体70」とする)にホログラフィック記録により情報を記録する装置である。
まず、記録媒体70の構成について簡単に説明する。
記録媒体70は、樹脂製の基板71上に反射層72が設けられ、反射層72の上に、厚さ0.1〜1mm程度の記録層73が設けられている。記録層73の更に上には、記録または再生などに用いるレーザ光を実質的に透過可能な保護層74が設けられている。記録媒体70の構成は、反射層72および記録層73が設けられていれば、この構成に限られるものではなく、これらの層の他に、トラッキングサーボのためのサーボ層や、レーザ光の波長により選択的に透過する選択反射層などを任意に設けてもよい。
記録層73は、例えば、(1)光照射で重合反応が起こり高分子化するフォトポリマー、(2)フォトリフラクティブ効果(光照射で空間電荷分布が生じて屈折率が変調する)を示すフォトリフラクティブ材料、(3)光照射で分子の異性化が起こり屈折率が変調するフォトクロミック材料、(4)ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム等の無機材料、(5)カルコゲン材料、などからなり、照射されたレーザ光の強度や、干渉縞による光の干渉に応じて、屈折率などの光学特性が変化するようになっている。
【0028】
ホログラフィック記録装置1は、レーザ装置11から出射されたレーザ光LBをハーフミラー13aにより情報光IBと参照光RBとに分け、これらを記録媒体70に集束させて、記録層73に干渉縞Sを形成して情報を記録するものである。
【0029】
具体的にホログラフィック記録装置1の構成を説明すると、レーザ装置11の光路上には、コリメートレンズ12、ハーフミラー13aが順に配置されている。
レーザ装置11は、公知のレーザを出射する装置を用いることができ、高記録密度で記録媒体70に情報を記録するためには、短波長のレーザ、例えば波長405nmの青紫色レーザを用いるとよい。レーザ装置11は、光の明滅により情報を出力するようにパルス信号を出力する情報変換装置(情報入力手段)に接続され、入力された情報に応じて明滅するようになっている。すなわち、本実施形態のホログラフィック記録装置1は、一つの干渉縞Sにより、一つの0、1の情報を記録するビット記録型の記録装置である。
【0030】
コリメートレンズ12は、レーザ光LBを平行光に収束するレンズである。
【0031】
ハーフミラー13aは、例えば、2つのプリズムを僅かな隙間を介して向かい合わせて構成したもので、レーザ光LBを直進する情報光IBと、直角に反射されて曲げられた参照光RBとに分けるものである。なお、本実施形態では、情報光IBと参照光RBとを双方同時に明滅させるので、情報光IBと参照光RBの区別はなく、ハーフミラー13aで分けられたレーザ光LBのどちらを情報光IBと呼んでも良いが、ここでは、図1に示したように、直進したレーザ光LBを情報光IBとする。
【0032】
直進した情報光IBの光路上には、もう一つのハーフミラー13bが配置され、参照光RBを情報光IBの光路上に戻している。
分岐した参照光RBの光路上には、ミラー14a、14bが設けられて、参照光RBをハーフミラー13bに戻すように構成されているとともに、ミラー14bの後(本明細書において、前後は光の進んで行く方向を後とする)に、参照光RBの収束位置を調整する調整レンズ15が配置されている。調整レンズ15により、参照光RBは、僅かに集束され、情報光IBよりも手前側に焦点が結ばれるようになっている。
【0033】
ハーフミラー13bの後には、情報光IBおよび参照光RBを集束する対物レンズ16が配置されている。対物レンズ16により、情報光IBおよび参照光RBは、記録層73内で焦点を結んで干渉縞Sを形成するようになっている。
もっとも、参照光RBは、調整レンズ15により僅かに集束させられているので、反射層72に至る前に記録層73内で焦点を結ぶ。一方、情報光IBは、調整レンズ15を通ことなく対物レンズ16により集束されているので、焦点を結ぶ前に反射層72により反射され、反射された情報光IBが参照光RBと同じ位置で焦点を結んでいる。
【0034】
なお、当然のことであるが情報光IBと参照光RBは、完全に同じ位置で焦点を結ばなければならないものではなく、干渉縞の形成のされ方を調整してS/N比を上げるためなどのため、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で焦点の位置を若干ずらしても構わない。
【0035】
調整レンズ15および対物レンズ16は、図示はしないが、アクチュエータにより光軸方向に移動可能に構成されている。図示しない制御装置は、各アクチュエータを駆動して、情報光IBおよび参照光RBの焦点の位置を調整するようになっている。
【0036】
このようなホログラフィック記録装置1によれば、レーザ装置11から出射されたレーザ光LBは、ハーフミラー13aにより情報光IBと参照光RBとに分けられ、参照光RBは、ミラー14a,14bで反射された後、調整レンズ15により僅かに集束される。参照光RBは、さらにハーフミラー13bにより情報光IBの光軸上に戻され、情報光IBおよび参照光RBは、対物レンズ16により集束されて記録層73の中で焦点を結ぶ。このとき、図2(a)に示すように、情報光IBは、反射層72により反射された後、焦点を結び、参照光RBは、反射層72に至る前に同じ位置で情報光IBに対向しつつ焦点を結ぶ。
このように、情報光IBと参照光RBとがともに焦点を結んだ位置で出会い、干渉縞Sを形成するので、情報光IBと参照光RBの利用効率がよい。そのため、迅速に記録層の反応が進み、迅速に記録が終了できるとともに、干渉縞Sのスポット径も小さくできるので、記録媒体70に高密度で情報を記録することができる。
【0037】
そして、記録媒体70から情報を読み出すときには、図2(b)に示すように、読出光OBを参照光RBと同じ波長、同じ焦点位置になるように干渉縞Sに対し照射する。これにより、干渉縞Sにおいて、あたかも情報光IBが出射されるかのように読出光OBが回折して反射される。この反射により生じた情報光IBを図示しない光センサで検知することにより、情報を読み出すことができる。
【0038】
参考までに、従来の記録方法を図2(c)で示して、本実施形態と比較すると、従来の記録方法では、情報光IBと参照光RBを記録層73の平面方向にずらして照射し、同じ深さ、例えば反射層72上に焦点を結ぶようにしていたので、情報光IBおよび参照光RBの焦点FI,FRから深さ方向にずれた位置で干渉縞Sが形成されていた。そのため、情報光IBと参照光RBの双方ともエネルギー密度が低い位置で干渉縞Sを形成していたことになり、これらの光の利用効率が低かった。
これに対し、本実施形態では情報光IBと参照光RBの焦点同士で干渉縞Sを形成するため、高効率な記録が可能であり、結果として高速かつ高密度な記録が可能となっている。
【0039】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。参照する図において、図3は、本発明の第2実施形態に係るホログラフィック記録装置の構成を示す図であり、図4は、第2実施形態に係る装置により多層記録をした場合の説明図である。なお、以下の説明において、説明を分かりやすくするため、第1実施形態と同じ機能の要素には、配置が異なっていても同じ符号で示し、説明を適宜省略する。
【0040】
図3に示すホログラフィック記録装置2は、情報光IBの焦点位置を参照光RBとは独立に変えることができるとともに、対物レンズ16のフォーカシング用のサーボ光SBを利用した形態の装置である。
ホログラフィック記録装置2は、レーザ装置11の後にコリメートレンズ12が配置され、コリメートレンズ12の後にハーフミラー13aが配置され、ハーフミラー13aで分けられた情報光IBと参照光RBのうち、情報光IBは直進し、参照光RBは反射により90度進行方向を変えられる。この点は、第1実施形態と同様である。参照光RBは、ミラー14aによりレーザ光LBの進行方向に90度向きを変えられるとともに、情報光IBも、ミラー14bにより参照光RBの方へ向きを変えられる。そして参照光RBと情報光IBが出会う位置にハーフミラー13bが配置され、情報光IBの光軸が、参照光RBの光軸に合わされるようになっている。このような光路の配置になっていることにより、情報光IBと参照光RBの光路長が同じになり、可干渉長さが短いレーザでも干渉効果を得やすくなる。
光軸が合わされた情報光IBと参照光RBは、第1実施形態と同様にして、記録媒体70の記録層73中の同じ位置で対向しつつ焦点を結ぶようになっている。
【0041】
参照光RBの光路上には、第1実施形態と同様に、参照光RBの焦点の位置を調整する調整レンズ15が設けられている。本実施形態では、さらに、情報光IBの光路上に情報光IBの焦点の位置を調整する調整レンズ17が設けられている。すなわち、調整レンズ15と調整レンズ17を別々に制御することで、情報光IBと参照光RBを任意の位置に集束させることができるようになっている。
図示しない制御装置は、調整レンズ15,17を制御することで、情報光IBと参照光RBの焦点の位置を変え、複数の異なる深さ位置で情報光IBと参照光RBを対向させつつ集束させることを繰り返すことで、異なる深さ位置で干渉縞Sを形成するように構成されている。
【0042】
参照光RBの光路上には、ハーフミラー23aが配置され、このハーフミラー23aには、レーザ装置11とは別の波長のレーザ光(「サーボ光SB」とする)を出射するサーボ用レーザ装置21によりサーボ光SBが入射される。サーボ光SBは、コリメートレンズ22により平行光束に変換された後、ハーフミラー23aに入射される。サーボ光SBは、ハーフミラー23aにより参照光RBの光路上に入ったあとは、参照光RBと同じ経路により記録媒体70に入り、反射層72により反射される。そして、同じ経路を戻ってコリメートレンズ22の手前まで戻るようになっている。コリメートレンズ22の後(サーボ用レーザ装置21から見て)には、ハーフミラー23bが設けられ、反射層72で反射して戻ってきたサーボ光SBを分離している。分離されたサーボ光SBは、シリンドリカルレンズ24により集束された上で光検出器25に入射される。
光検出器25に入射された光は、非点収差法により演算され、サーボ光SBのフォーカスの位置が検出される。図示しない制御装置は、このフォーカスの位置に応じて、対物レンズ16を駆動し、必要に応じ調整レンズ15,17を駆動する。
【0043】
記録されるべき情報、つまり入力される信号は、第1実施形態と同様に、レーザ光LBの明滅として情報変換装置によりレーザ装置11にパルス信号として入力される。
【0044】
このような構成のホログラフィック記録装置2によれば、サーボ光SBを光検出器25で検出しながら対物レンズ16を動かすことで情報光IBおよび参照光RBの焦点を合わせ、かつ、記録層73中の記録しようとする深さに応じて調整レンズ15および調整レンズ17を別々に駆動する。これにより、図4に示すように最も反射層72に近い位置で記録しようとする場合には、参照光RBの焦点を記録層73のうち、反射層72に近い位置に集束させ、情報光IBも、反射層72で反射させ、参照光RBと同じ深さ位置で参照光RBに対向させつつ集束させる。これにより、反射層72に近い位置で干渉縞S1が形成され、記録層73に記録される。
【0045】
また、記録層73の中で、反射層72から多少離れた位置で干渉縞S2を形成させるときには、参照光RBを、干渉縞S1を形成したときよりも浅い、つまり反射層72から離れた位置で集束させ、これに合わせて情報光IBを反射層72で反射させ、参照光RBと同じ深さ位置で対向させつつ、集束させる。これにより、情報光IBと参照光RBとが反射層72から多少離れた位置で出会い、干渉縞S2が形成され、記録される。
同様にして、干渉縞S2よりも反射層72からさらに離れた位置で干渉縞S3を記録することもできる。
なお、図4においては、便宜上、情報光IBの位置と参照光RBの位置をずらして示しているが、干渉縞S1〜S3を同時に記録する場合には、各情報光IBと各参照光RBを、同じ位置で、焦点の深さのみ異ならせて集束させる。
【0046】
このようにして、本実施形態によれば、記録層73中の異なる複数の深さ位置で情報光IBと参照光RBを出会わせることで、記録層73中に多層に干渉縞S1〜S3を形成することができる。そのため、単層で干渉縞Sを作る場合よりも多くの情報を記録媒体70に記録することができる。
【0047】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。参照する図面において、図5は、第3実施形態に係るホログラフィック記録装置の構成を説明する図である。なお、以下の説明において、説明を分かりやすくするため、第2実施形態と同じ機能の要素には、配置が異なっていても同じ符号で示し、説明を適宜省略する。
【0048】
図5に示すように、ホログラフィック記録装置3は、第2実施形態のホログラフィック記録装置2に対してミラー14aをハーフミラー13cに変えており、このハーフミラー13cに、図における左側から第2の記録装置部132からの情報光IB2および参照光RB2が入射されている。また、調整レンズ17の前には、高速で情報光IBの透過率を変更可能な情報入力手段としての光量フィルタ18が配置されている。光量フィルタ18は、例えば、液晶フィルタを利用することができる。
第2の記録装置部132には、記録媒体70における多層記録を一時に行うために、上半分の第1の記録装置部131(第2実施形態と同等の部分)と同様の光学系が設けられている。
【0049】
すなわち、第2の記録装置部132には、レーザ装置11と同様のレーザ装置211、コリメートレンズ12と同様のコリメートレンズ212、レーザ装置211からのレーザ光LB2を情報光IB2と参照光RB2とに分けるハーフミラー213a、情報光IB2と参照光RB2とを同じ光軸上に戻すハーフミラー213b、情報光IB2および参照光RB2の光路の向きをそれぞれ変更するミラー214a,214b、参照光RB2の焦点の位置を調整する調整レンズ215、情報光IB2の焦点の位置を調整する調整レンズ217、情報光IB2の透過率を高速で変更可能な情報入力手段としての光量フィルタ218が設けられている。
【0050】
そして、各調整レンズ15,17,215,217は、図示しないアクチュエータおよびこれを制御する制御装置により光軸方向に移動が可能である。このような調整レンズ15,17,215,217の制御により、第1の記録装置部131は、記録層73中における反射層72に比較的近い層で情報光IBと参照光RBを出会わせて干渉縞S1を記録し、第2の記録装置部132は、記録層73中における反射層72から多少離れた層で情報光IB2と参照光RB2を出会わせて干渉縞S2を記録するようになっている。また、制御装置は、記録すべき情報が入力され、この情報を光量フィルタ18,218にパルス信号として送ることで、光量フィルタ18,218の透過率を高速で変更し、情報光IB,IB2を明滅させるようになっている。
【0051】
このようなホログラフィック記録装置3によれば、第1の記録装置部131と第2の記録装置部132を同時に動作させることで、多層記録を一時に行うことができる。すなわち、第1の記録装置部131からの情報光IBと参照光RBを比較的反射層72に近い層で干渉させつつ、第2の記録装置部132からの情報光IB2と参照光RBとを反射層72から多少離れた層で干渉させることで、2層の記録を同時に行うことができる。
このような構成を応用して、第3、第4の記録装置部を設け、これらから光を対物レンズ16に入射することで、より多くの層の記録を同時に行い、記録媒体70への高速な情報の記録を行うことが可能となる。
【0052】
また、ホログラフィック記録装置3を若干変更することで、情報光IBと参照光RBの光量および情報光IB2と参照光RB2の光量を調整してホログラフィック記録を行うことも可能である。
たとえば、制御装置による記録すべき情報の入力を、光量フィルタ18,218に対して行うのではなく、レーザ装置11,211に対して行い、レーザ光LB,LB2の明滅として入力する。そして、情報光IB,IB2を、前記した図5の例とは異なり反射層72より手前で集束させ、参照光RB,RB2を反射層72で反射させた上で、それぞれ情報光IB,IB2に出会わせるように各調整レンズ15,17,215,217を制御する。このようにすると、参照光RB,RB2は、記録層73中で焦点を結ぶまでに情報光IB,IB2よりも光学的に長い距離を進むことになるので、焦点における光量が情報光IB,IB2よりも少なくなる。そこで、その光量を合わせるために、光量フィルタ18,218の透過率を制御装置で制御することで、情報光IBと参照光RBの光量および情報光IB2と参照光RB2の光量を同じにすることが可能となる。
【0053】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されることなく適宜変更して実施することが可能である
たとえば、前記実施形態においては、情報光IBと参照光RBとをハーフミラー13aで分離していたが、必ずしもハーフミラー13aで分離する必要はない。
図6(a)および(b)は、ハーフミラーを使用しない場合の光学系の例である。
図6(a)に示すように、対物レンズ16の前に、情報光IBと参照光RBとを分離する凸レンズ31を設け、この凸レンズ31の内周部31aと外周部31bとの焦点距離を変えるように構成する。たとえば、内周部31aの焦点距離を短くして反射層72より手前側に焦点を結ばせ、外周部31bの焦点距離を長くして反射層72で反射させた上で焦点を結ばせるようにすることができる。
【0054】
また、図6(b)に示すように、対物レンズ16の前に、情報光IBと参照光RBとを分離する凸レンズ32を設け、この凸レンズ32の図における上半分32aと下半分32bとの焦点距離を変えるように構成する。たとえば、下半分32bの焦点距離を短くして反射層72より手前側に焦点を結ばせ、上半分32aの焦点距離を長くして反射層72で反射させた上で焦点を結ばせるようにすることができる。
【0055】
前記した実施形態における情報光の明滅は、必ずしも明るさが1と0の明滅である必要はなく、読取時に識別が可能で有れば完全に暗くせずに1と0.2の明るさで明滅させることもできる。さらに、多階調の明るさ、例えば一つの干渉縞のスポットで4段階の明るさで情報を入力してもよい。
【0056】
前記した実施形態においては、調整レンズ15,17,215,217は、光を集束するレンズを例示したが、調整レンズ15,17,215,217は、焦点の位置を調節できればよいので、焦点を遠くにするように光束を広げるレンズであっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施形態に係るホログラフィック記録装置の構成を示す図である。
【図2】ホログラフィック記録装置の記録部分の拡大図であり、(a)は第1実施形態での記録時、(b)は第1実施形態での再生時、(c)は従来例での記録時を示す。
【図3】本発明の第2実施形態に係るホログラフィック記録装置の構成を示す図である。
【図4】第2実施形態に係る装置により多層記録をした場合の説明図である。
【図5】第3実施形態に係るホログラフィック記録装置の構成を説明する図である。
【図6】(a),(b)は、ハーフミラーを使用しない光学系の例である。
【符号の説明】
【0058】
1 ホログラフィック記録装置
11 レーザ装置
15 調整レンズ
16 対物レンズ
17 調整レンズ
18 光量フィルタ
21 サーボ用レーザ装置
70 ホログラフィック記録媒体
71 基板
72 反射層
73 記録層
74 保護層
IB 情報光
LB レーザ光
OB 読出光
RB 参照光
S 干渉縞
SB サーボ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも反射層と記録層とを有するホログラフィック記録媒体に対し、情報光および参照光を照射して干渉縞を形成し、情報を記録するホログラフィック記録方法であって、
少なくとも前記情報光の明滅により前記情報光に情報を入力し、
前記情報光および前記参照光を前記反射層よりも前記記録層側から照射し、
前記情報光および前記参照光のうち一方を前記反射層により反射させ、
前記情報光と前記参照光を前記記録層の同じ深さ位置で対向させつつ集束させて干渉縞を形成し、情報を記録することを特徴とするホログラフィック記録方法。
【請求項2】
前記記録層における複数の異なる深さ位置で、情報を記録することを特徴とする請求項1に記載のホログラフィック記録方法。
【請求項3】
前記情報光および前記参照光を複数組同時に照射し、各組の情報光および参照光の前記記録層における集束位置の深さを異ならせることで、情報の記録を多層に同時に行うことを特徴とする請求項2に記載のホログラフィック記録方法。
【請求項4】
前記参照光を常時点灯させ、前記情報光のみを明滅させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のホログラフィック記録方法。
【請求項5】
前記参照光および前記情報光の双方を同時に明滅させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のホログラフィック記録方法。
【請求項6】
前記参照光および前記情報光の前記記録層における集束位置までの光路長に応じ、前記参照光および前記情報光の露光量を調整することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のホログラフィック記録方法。
【請求項7】
反射層と記録層とを有するホログラフィック記録媒体に対し、情報光および参照光を照射して干渉縞を形成し、情報を記録するホログラフィック記録装置であって、
前記情報光および前記参照光を出射するレーザ装置と、
少なくとも前記情報光を明滅させて前記情報光に情報を入力する光情報入力手段と、
前記情報光および前記参照光を前記反射層よりも前記記録層側から入射させ、前記記録層中で集束させる光学系と、
前記光学系を制御して、前記情報光および参照光の集束位置を調整する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記情報光および前記参照光の一方を前記反射層により反射させ、前記情報光と前記参照光を前記記録層の同じ深さ位置で対向させつつ集束させることを特徴とするホログラフィック記録装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記記録層における複数の異なる深さ位置で前記情報光と前記参照光を対向させつつ集束させ、情報を記録することを特徴とすることを特徴とする請求項7に記載のホログラフィック記録装置。
【請求項9】
前記情報光および前記参照光を複数組同時に照射し、各組の情報光および参照光の前記記録層における集束位置の深さを変えるため、前記光学系は、前記情報光および前記参照光の各組に対応して複数設けられていることを特徴とする請求項8に記載のホログラフィック記録装置。
【請求項10】
前記参照光および前記情報光の少なくとも一方の光量を調整する光量調整フィルタを備え、
前記制御装置は、前記光量調整フィルタを制御して、前記記録層における集束位置までの光路長に応じ、前記参照光および前記情報光の露光量を調整することを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか1項に記載のホログラフィック記録装置。
【請求項11】
請求項1から請求項6のいずれか1項のホログラフィック記録方法により、情報が記録されたホログラフィック記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−171474(P2008−171474A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1313(P2007−1313)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】