説明

ホログラム作成装置、ホログラム作成方法、及び、ホログラム作成システム

【課題】媒体にホログラムを高速で作成することが可能であり、かつ、消去や再形成が可能なホログラムを作成するホログラム作成装置、ホログラム作成方法、及び、ホログラム作成システムを提供する。
【解決手段】ベースシート101に、外部から入射した光のファブリ・ペロー干渉によって所定波長の光を反射する誘電体ミラー142と、ベースシート101の一面にマトリクス状に並べて配置され、周囲の電界に応じて変形することにより誘電体ミラー142の反射率を変化させる複数の駆動用ピエゾ素子140と、各々の駆動用ピエゾ素子140に重なるようにマトリクス状に並ぶ複数の分極用ピエゾ素子120と、分極用ピエゾ素子120に電圧を印加する配線部110、を設けた表示用シート1に、反射率の差によって干渉縞を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラムを作成するホログラム作成装置、ホログラム作成方法、及び、ホログラム作成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂製のシート等からなる媒体に立体画像を記録および再生するものとして、ホログラムが知られている。ホログラムを作成する際には、例えば、媒体表面にレーザー光を走査して干渉縞を形成する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−317963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の方法では、原理的にホログラムを空間生成するためには、光波の干渉現象を正確に発生させる必要があった。また、通常の映像画像表示のように逐次的に画素単位で表示を変更する方法では、干渉波動の振る舞い自体が所望の空間映像を成立させ得るものではなかった。このため、ホログラムを作成したい範囲の全域にレーザー光を走査する必要があり、干渉縞を形成する面積が大きいと、ホログラムの作成に多大な時間とエネルギーが必要であった。また、媒体の表面に、干渉縞を構成する凹凸を物理的に形成するので、いったんホログラムを作成した媒体表面において、ホログラムを消去したり、新たに別のホログラムを形成したりすることは不可能であり、使い捨てを前提とした媒体を消費していた。
そこで本発明は、媒体にホログラムを高速で作成することが可能であり、かつ、消去や再形成が可能なホログラムを作成するホログラム作成装置、ホログラム作成方法、及び、ホログラム作成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、可撓性を有するシートに、外部から入射した光のファブリ・ペロー干渉による光干渉効果によって、入射光のうち所定波長の光を反射する反射層と、前記シートの一面にマトリクス状に並べて配置され、周囲の電界に応じて変形することにより前記反射層の反射率を変化させる反射用圧電体と、各々の前記反射用圧電体に重なるようにマトリクス状に並ぶ複数の電荷蓄積部と、各々の前記電荷蓄積部に電圧を印加するための電圧印加部と、を設けて構成される媒体に対し、前記電圧印加部によって一部の前記電荷蓄積部に電圧を印加させて前記反射用圧電体に電界を加え、前記媒体に、前記反射層における反射率の差によって干渉縞を形成するホログラム作成手段を備えること、を特徴とする。
この構成によれば、光波の干渉現象を正確に発生させるための物理的な構造体の特質を有する原理と同一の原理であるファブリ・ペロー干渉による光干渉効果によって所定波長の光を反射する機能を備えた媒体を用い、この媒体が反射用圧電体の位置毎に反射率を変化させることが可能なことを利用して、反射率の差によって干渉縞を形成するので、干渉縞の消去や再形成が可能なホログラムを作成することができる。この媒体では電荷蓄積部の電荷により反射用圧電体の変形を保ち、反射率を保持できるので、干渉縞の保持に要する電力量が小さくて済み、給電しなくても長時間にわたって干渉縞を保持できる。また、一般に電界による圧電体の変形は迅速であるため、電荷蓄積部に電圧を印加してから反射用圧電体が変形するまでの応答時間が非常に短く、干渉縞を短時間で形成できる。従って、高速で作成可能で、かつ、消去や再形成が可能なホログラムを作成できる。
【0006】
上記構成において、前記媒体が備える電圧印加部は、複数の前記電荷蓄積部の中から特定の前記電荷蓄積部を選択可能に構成され、選択された前記電荷蓄積部に電圧を印加するための配線部と、前記配線部に電圧を印加する制御装置と、を備えて構成され、前記ホログラム作成手段は、前記制御装置を制御して前記配線部を介して前記電荷蓄積部に電圧を印加させてもよい。
この場合、個々の電荷蓄積部に対して、制御装置を介して速やかに電圧を印加することができ、反射用圧電体毎に変形を制御できるので、容易に、かつ短時間で、反射率の差による干渉縞を形成し、ホログラムを作成できる。
【0007】
本発明は、可撓性を有するシートに、外部から入射した光のファブリ・ペロー干渉による光干渉効果によって、入射光のうち所定波長の光を反射する反射層と、前記シートの一面にマトリクス状に並べて配置され、周囲の電界に応じて変形することにより前記反射層の反射率を変化させる反射用圧電体と、各々の前記反射用圧電体に重なるようにマトリクス状に並ぶ複数の電荷蓄積部と、各々の前記電荷蓄積部に電圧を印加するための電圧印加部と、を設けて構成される媒体に、前記反射層における反射率の差によって干渉縞を形成すること、を特徴とする。
この方法によれば、ファブリ・ペロー干渉による光干渉効果によって所定波長の光を反射する機能を備えた媒体を用い、この媒体が反射用圧電体の位置毎に反射率を変化させることが可能なことを利用して、反射率の差によって干渉縞を形成するので、干渉縞の消去や再形成が可能なホログラムを作成することができる。この媒体では電荷蓄積部の電荷により反射用圧電体の変形を保ち、反射率を保持できるので、干渉縞の保持に要する電力量が小さくて済み、給電しなくても長時間にわたって干渉縞を保持できる。また、一般に電界による圧電体の変形は迅速であるため、電荷蓄積部に電圧を印加してから反射用圧電体が変形するまでの応答時間が非常に短く、干渉縞を短時間で形成できる。従って、高速で作成可能で、かつ、消去や再形成が可能なホログラムを作成できる。
【0008】
また、本発明は、ホログラムを作成するための立体画像データを生成する立体画像データ生成装置と、前記立体画像データ生成装置により生成された立体画像データに基づいて、ホログラムを作成するホログラム作成装置と、を備え、前記ホログラム作成装置は、可撓性を有するシートに、外部から入射した光のファブリ・ペロー干渉による光干渉効果によって、入射光のうち所定波長の光を反射する反射層と、前記シートの一面にマトリクス状に並べて配置され、周囲の電界に応じて変形することにより前記反射層の反射率を変化させる反射用圧電体と、各々の前記反射用圧電体に重なるようにマトリクス状に並ぶ複数の電荷蓄積部と、各々の前記電荷蓄積部に電圧を印加するための電圧印加部と、を設けて構成される媒体に対し、前記電圧印加部によって一部の前記電荷蓄積部に電圧を印加させて前記反射用圧電体に電界を加え、前記媒体に、前記反射層における反射率の差によって干渉縞を形成するホログラム作成手段を備えること、を特徴とする。
この構成によれば、立体画像データ生成装置により立体画像データを生成すると、この立体画像データに基づいて、ホログラム作成装置によってホログラムを作成することが可能になり、迅速にホログラムを作成できる。このホログラムは、ファブリ・ペロー干渉による光干渉効果によって所定波長の光を反射する機能を備えた媒体を用い、この媒体が反射用圧電体の位置毎に反射率を変化させることが可能なことを利用して、反射率の差によって干渉縞を形成することで作成される。このため、干渉縞の消去や再形成が可能なホログラムを作成できる。従って、高速で作成可能で、かつ、消去や再形成が可能なホログラムを速やかに作成できる。
【0009】
上記構成において、前記立体画像データ生成装置により生成された立体画像データを格納する立体画像データベースをさらに備え、前記ホログラム作成装置は、前記立体画像データベースに格納された立体画像データに基づいてホログラムを作成するものであり、前記立体画像データ生成装置により生成された立体画像データを前記立体画像データベースに送信する際、及び、前記立体画像データベースから前記ホログラム作成装置へ立体画像データを送信する際には、立体画像データを暗号化して送信してもよい。
この場合、ホログラムを作成するための立体画像データを複数の装置間で送信する際に立体画像データを確実に秘匿することができ、立体画像データの不正な使用等を防止でき、セキュリティー面における信頼性を確保できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高速で作成可能で、かつ、消去や再形成が可能なホログラムを作成できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ホログラム作成システムの構成を示すブロック図である。
【図2】ホログラム作成システムの動作を示すシーケンス図である。
【図3】ホログラム作成システムの動作を示すシーケンス図である。
【図4】表示用シートの構成を示す外観斜視図である。
【図5】表示用シートの構成を示す要部断面図である。
【図6】各部の配置状態を示す要部斜視図である。
【図7】分極用ピエゾ素子と選択回路との接続状態を示す要部平面図である。
【図8】駆動用ピエゾ素子の駆動状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、ホログラム作成システム100の構成を示すブロック図である。
この図1に示すように、ホログラム作成システム100は、無線通信ネットワークを介して相互に通信可能に構成された測色装置5、ホログラム作成装置7、及びデータ管理装置9を備えている。
測色装置5(立体画像データ作成装置)は、ホログラムを作成するもととなる立体画像データを生成する装置である。測色装置5はホログラム測色機57を備え、このホログラム測色機57によって実物を撮影して視差のある画像を生成し、これら視差を有する複数の画像を組み合わせることで立体画像データを生成する。
【0013】
ホログラム作成装置7は、測色装置5により生成された立体画像データに基づいて、ホログラムを作成する装置である。ホログラム作成装置7は表示デバイス処理装置77(ホログラム作成手段)を備え、この表示デバイス処理装置77によって、後述する表示用シート1に干渉縞を形成することで、ホログラムを作成する。
また、データ管理装置9は、測色装置5により生成された立体画像データを格納する立体画像データベース99を備えている。データ管理装置9は、測色装置5との間で無線通信を実行し、測色装置5が生成した立体画像データを受信して立体画像データベース99に格納する。また、データ管理装置9は、ホログラム作成装置7との間で無線通信を実行し、ホログラム作成装置7からの要求に応じて立体画像データベース99の立体画像データを読み出して、ホログラム作成装置7に送信する。
これにより、ホログラム作成システム100においては、測色装置5で生成した立体画像データを立体画像データベース99に格納し、この格納した立体画像データに基づいて、ホログラム作成装置7によりホログラムを作成できる。
また、ホログラム作成システム100では、測色装置5とデータ管理装置9との間、及びホログラム作成装置7とデータ管理装置9との間で立体画像データを送受信する際に、暗号化を施す処理を行う。以下、この暗号化の処理を含めたホログラム作成システム100の動作及び各部の構成について説明する。
【0014】
測色装置5は、ホログラム測色機57を含む測色装置5の各部を制御する制御部51と、押しボタンスイッチなどの操作子を有する操作部52と、液晶ディスプレイパネル、有機ELディスプレイパネル、電子ペーパー等で構成された表示部53と、表示部53を駆動制御して各種画面を表示させる表示制御部54と、アンテナ55を介してデータ管理装置9との間で無線通信を行うRF部56と、ホログラム測色を行うホログラム測色機57と、を備えている。また、測色装置5は、制御部51により実行される制御プログラム等を不揮発的に記憶するROM61と、制御部51により処理される各種データ等を一時的に記憶するRAM62と、データの暗号化に用いる暗号化用データを破壊読み出し型で記憶する強誘電体メモリー(FeRAM)63と、を備えたメモリー部60を有する。
【0015】
FeRAM63は、強誘電体材料によりメモリーセルが構成されており、強誘電体膜により構成される強誘電体キャパシターをデータ保持用の容量として用いたメモリーである。強誘電体膜は自発分極特性を有し、印加される電界方向に応じて分極方向が反転するので、この分極反転を記憶保持に利用している。強誘電体メモリーは、DRAMと同等の高速書き換えが可能であり、高い書き換え耐性を有している。
強誘電体メモリーは、データ保持のための電源を必要としない一方、DRAMと同様の破壊読み出し型の特徴を有する。強誘電体メモリーのメモリーセルに書き込まれているデータは、読み出しに伴って破壊されるので、再書き込みを行わなければ、読み出された時点でデータが消失する。本実施形態では、FeRAM63からデータを読み出す際に再書き込みを行わないことで、セキュリティー確保に利用している。すなわち、ホログラム作成システム100は、FeRAM63から暗号化用データを読み出して新たな暗号化用データを生成する処理を一定時間毎に行うので、FeRAM63内の暗号化用データは一定時間経過する毎に破壊され、更新される。このため、悪意ある第三者が無線通信を傍受して暗号化用データを取得したとしても、当該暗号化用データは読み出された時点で既に有効でなくなっているため、不正アクセスや、個人情報の不正取得を防止できる。
【0016】
ホログラム作成装置7は、表示デバイス処理装置77を含むホログラム作成装置7の各部を制御する制御部71と、押しボタンスイッチなどの操作子を有する操作部72と、液晶ディスプレイパネル、有機ELディスプレイパネル、電子ペーパー等で構成された表示部73と、表示部73を駆動制御して各種画面を表示させる表示制御部74と、アンテナ75を介してデータ管理装置9との間で無線通信を行うRF部76と、立体画像データに基づいて表示用シート1の表示状態を調整することにより、ホログラムを作成する表示デバイス処理装置77と、を備えている。また、ホログラム作成装置7は、制御部71により実行される制御プログラム等を不揮発的に記憶するROM81と、制御部71により処理される各種データ等を一時的に記憶するRAM82と、データの暗号化に用いる暗号化用データを破壊読み出し型で記憶する強誘電体メモリー(FeRAM)83と、を備えたメモリー部80を有する。FeRAM83は、FeRAM63と同様に構成される破壊読み出し型のメモリーである。本実施形態では、FeRAM63と同様に、FeRAM83に暗号化用データを記憶するとともに、このFeRAM83からデータを読み出す際に再書き込みを行わないことで、セキュリティー確保に利用している。
【0017】
また、データ管理装置9は、データ管理装置9の各部を制御する制御部91と、アンテナ97を介して測色装置5及びホログラム作成装置7との間で無線通信を行うRF部96と、立体画像データを格納する立体画像データベース99と、を備えている。さらに、データ管理装置9は、制御部91により実行される制御プログラム等を不揮発的に記憶するROM93と、制御部91により処理される各種データ等を一時的に記憶するRAM94と、データの暗号化に用いる暗号化用データを破壊読み出し型で記憶する強誘電体メモリー(FeRAM)95と、を備えたメモリー部92、及び、測色装置5またはホログラム作成装置7との通信に用いる暗号化用データを所定周期で更新するRF部96を有する。FeRAM95は、FeRAM63、83と同様に構成される破壊読み出し型のメモリーである。本実施形態では、FeRAM63、83と同様に、FeRAM95に暗号化用データを記憶するとともに、セキュリティー確保のため、FeRAM95からデータを読み出す際に再書き込みを行わない。
【0018】
このホログラム作成システム100が備える暗号化方式は、概略、次の通りである。
ホログラム作成システム100を構成する測色装置5、ホログラム作成装置7、及びデータ管理装置9は、各々同一の暗号化用データ生成プログラムを有している。この暗号化用データ生成プログラムは、ROM61、81、93に記憶されている。
測色装置5とデータ管理装置9との間で通信を行う場合、データ管理装置9は、最初に暗号化用データを生成して測色装置5へ送信するとともにFeRAM95に記憶し、測色装置5は暗号化用データをFeRAM63に記憶する。これにより、測色装置5とデータ管理装置9とが同一の暗号化用データを記憶した状態となる。
ここで、測色装置5からデータ管理装置9へ、FeRAM63内の暗号化用データを読み出し、この暗号化用データを用いて立体画像データを暗号化してデータ管理装置9へ送信する。データ管理装置9は、FeRAM95に記憶した暗号化用データを用いて立体画像データを復号する。この処理において、測色装置5では、立体画像データを暗号化する処理で暗号化用データが読み出されるので、立体画像データの暗号化が完了した後は、FeRAM63の暗号化用データは破壊されている。また、データ管理装置9において立体画像データを復号する場合にFeRAM95から暗号化用データが読み出されるので、復号が完了した時点で暗号化用データは破壊されている。このため、無線通信回線を介して送受信されるデータに基づき、暗号化用データが悪意の第三者等により傍受されても、この暗号化用データは既に無効となっているため、セキュリティー面の信頼性を保つことができるという利点がある。
【0019】
図2は、ホログラム作成システム100の動作を示すシーケンス図であり、詳細には、測色装置5によって立体画像データを生成する際の動作を示す。
データ管理装置9の制御部91は、暗号化用データ(図中、IDと記載)の更新タイミングであるか否かを判別する(ステップS21)。更新タイミングとしては、悪意の第三者による解析を抑制するのに十分な時間、すなわち、当該暗号通信の耐タンパ性(リバースエンジニアリングや改変に対する防護力)に対して十分に短い周期が設定され、例えば、更新インターバルを100msecとして1秒間に10回の更新を行う。この結果、解析処理に要する時間が100msecよりも十分に短い時間とならない限り、実効的に解析ができず、セキュリティーが確保される。
ステップS21の判別において、暗号化用データの更新タイミングではない場合には(ステップS21;No)、制御部91は待機状態となる。
【0020】
ステップS21で暗号化用データの更新タイミングであると判別した場合(ステップS21;Yes)、制御部91は、FeRAM95の所定の暗号化用データ記憶領域から、前回生成された暗号化用データを読み出して、この前回の暗号化用データをパラメーターとして、所定の暗号化用データ処理プログラム(例えば、巡回符号生成プログラム)を適用し、新たな暗号化用データを生成して、FeRAM95の所定の暗号化用データ記憶領域に書き込む(ステップS22)。
次いで、制御部91は、前回の暗号化用データに基づいて生成した新たな暗号化用データを、暗号通信部98と協働して暗号化し、RF部96およびアンテナ97を介して暗号化用データ更新情報として測色装置5に送信する(ステップS23)。
【0021】
測色装置5においては、アンテナ55及びRF部56により、データ管理装置9から送信された情報を受信する。測色装置5の制御部51は、データ管理装置9から送信された暗号化用データをアンテナ55及びRF部56により受信した場合に発生するデータ受信割込があったか否かを判別する(ステップS11)。
ステップS11でデータ受信割込がない場合(ステップS11;No)、制御部51は待機状態となる。ステップS11でデータ受信割込があったと判別した場合(ステップS11;Yes)、制御部51は、暗号化用データを更新する(ステップS12)。このステップS12で、制御部51は、データ管理装置9より受信した暗号化された状態の暗号化用データを、データ管理装置9と同一の暗号化用データ処理プログラムに従って復号し、新たな暗号化用データとしてFeRAM63の暗号化用データ記憶領域に書き込む。
【0022】
続いて、制御部51は、ホログラム測色機57によって既に生成した立体画像データの送信タイミングであるか否かを判別する(ステップS13)。立体画像データの送信タイミングは、暗号化用データの更新タイミングとは非同期であり、例えば、立体画像データの送信インターバルは1分に設定され、制御部51は1分間に1回の送信を行う。
ステップS13で立体画像データの送信タイミングでないと判別した場合(ステップS13;No)、制御部51はステップS11に戻って待機状態となる。
一方、ステップS13で立体画像データの送信タイミングであると判別した場合(ステップS13;Yes)、制御部51は、FeRAM63の所定の暗号化用データ記憶領域から暗号化用データを読み出し、この暗号化用データおよび立体画像データをパラメーターとして所定の暗号化用データ処理プログラムを適用して、暗号化立体画像データを生成し、RF部26およびアンテナ25を介して測色装置5に送信する(ステップS14)。
【0023】
データ管理装置9の制御部91は、測色装置5から送信された立体画像データを受信するまで待機し(ステップS24)、RF部96及びアンテナ97を介して立体画像データを受信した場合(ステップS24;Yes)、受信した立体画像データを、FeRAM95内の暗号化用データを用いて復号し、立体画像データベース99に格納する(ステップS25)。その後、制御部91は、必要な動作が完了したか否かを判別し(ステップS26)、継続して測色装置5との間の通信を行う場合はステップS21に戻り、動作が完了した場合は本処理を終了する。
【0024】
一方、測色装置5の制御部51は、ホログラム測色機57を制御して対象物(被写体)の撮影を行って、一つの対象物について視差を有する複数の画像を生成し、これらの画像に基づいて立体画像データを生成する(ステップS15)。その後、制御部51は、必要な動作が完了したか否かを判別し(ステップS16)、継続して測色装置5との間の通信を行う場合はステップS11に戻り、動作が完了した場合は本処理を終了する。
【0025】
以上の動作により、ホログラム作成システム100においては、測色装置5によって立体画像データを生成して、この立体画像データを立体画像データベース99に格納することができる。この動作中、測色装置5とデータ管理装置9との間で送受信される立体画像データは暗号化されるため、外部の悪意の第三者等に立体画像データが漏洩することはない。また、立体画像データの暗号化に使用される暗号化用データはFeRAM63、95に記憶され、このFeRAM63、95から読み出された場合に再書き込みされないので、暗号化及び復号の処理後は既に破壊されており、用をなさない。このため、暗号化用データが漏洩した場合にもセキュリティーが脅かされることがなく、立体画像データの秘匿性に関し、高い信頼性を確保できる。
【0026】
図3は、ホログラム作成システム100の動作を示すシーケンス図であり、詳細には、ホログラム作成装置7によってホログラムを作成する際の動作を示す。
データ管理装置9の制御部91は、暗号化用データの更新タイミングであるか否かを判別し(ステップS41)、暗号化用データの更新タイミングではない場合には(ステップS41;No)、待機状態となり、暗号化用データの更新タイミングであると判別した場合には(ステップS41;Yes)、新たな暗号化用データを生成する(ステップS42)。すなわち、制御部91は、FeRAM95の所定の暗号化用データ記憶領域から、前回生成された暗号化用データを読み出して、この前回の暗号化用データをパラメーターとして、所定の暗号化用データ処理プログラムを適用し、新たな暗号化用データを生成して、FeRAM95の所定の暗号化用データ記憶領域に書き込む。
次いで、制御部91は、前回の暗号化用データに基づいて生成した新たな暗号化用データを、暗号通信部98と協働して暗号化し、RF部96およびアンテナ97を介して暗号化用データ更新情報としてホログラム作成装置7に送信する(ステップS43)。
【0027】
ホログラム作成装置7においては、アンテナ75及びRF部76により、データ管理装置9から送信された情報を受信する。ホログラム作成装置7の制御部71は、データ管理装置9から送信された暗号化用データをアンテナ75及びRF部76により受信した場合に発生するデータ受信割込があったか否かを判別する(ステップS31)。
ステップS31でデータ受信割込がない場合(ステップS31;No)、制御部71は待機状態となる。ステップS31でデータ受信割込があったと判別した場合(ステップS31;Yes)、制御部71は、暗号化用データを更新する(ステップS32)。すなわち、制御部71は、データ管理装置9より受信した暗号化された状態の暗号化用データを、データ管理装置9と同一の暗号化用データ処理プログラムに従って復号し、新たな暗号化用データとしてFeRAM83の暗号化用データ記憶領域に書き込む。
【0028】
続いて、制御部71は、ホログラムを作成するための立体画像データを要求するタイミングであるか否かを判別する(ステップS33)。立体画像データの要求は、ホログラムを作成する処理に要する時間を考慮して、予め設定されたインターバルで送信される。このインターバルは暗号化用データの更新タイミングとは非同期であり、例えば、立体画像データの要求インターバルは5分に設定され、制御部71は5分間に1回の送信を行う。
ステップS33で立体画像データの要求を行うタイミングでないと判別した場合(ステップS33;No)、制御部71はステップS31に戻って待機状態となる。
一方、ステップS33で立体画像データを要求するタイミングであると判別した場合(ステップS33;Yes)、制御部71は、アンテナ75及びRF部76を介して、立体画像データの要求をデータ管理装置9へ送信する(ステップS34)。
【0029】
データ管理装置9の制御部91は、ホログラム作成装置7から送信された要求を受信すると(ステップS44)、受信した要求により指定された立体画像データを立体画像データベース99から読み出す(ステップS45)。次いで、制御部91は、FeRAM95内の暗号化用データを読み出して、この暗号化用データおよび立体画像データをパラメーターとして所定の暗号化用データ処理プログラムを適用して、暗号化立体画像データを生成し、RF部86およびアンテナ97を介してホログラム作成装置7に送信する(ステップS46)。その後、制御部91は、必要な動作が完了したか否かを判別し(ステップS46)、継続してホログラム作成装置7との間の通信を行う場合はステップS41に戻り、動作が完了した場合は本処理を終了する。
【0030】
一方、ホログラム作成装置7の制御部71は、データ管理装置9から送信された立体画像データを、アンテナ75及びRF部76を介して受信すると(ステップS35)、FeRAM83に記憶した暗号化用データを読み出し、読み出した暗号化用データを用いて、受信した立体画像データを復号する。さらに、制御部71は、復号した立体画像データを用いて、表示デバイス処理装置77によって表示用シート1にホログラムを作成する処理を行う(ステップS36)。その後、制御部71は、必要な動作が完了したか否かを判別し(ステップS37)、継続してホログラム作成装置7との間の通信を行う場合はステップS31に戻り、動作が完了した場合は本処理を終了する。
【0031】
以上の動作により、ホログラム作成システム100においては、ホログラム作成装置7によって作成され、立体画像データベース99に格納された立体画像データを用いてホログラムを作成できる。この動作中、ホログラム作成装置7とデータ管理装置9との間で送受信される立体画像データは暗号化されるため、外部の悪意の第三者等に立体画像データが漏洩することはない。また、立体画像データの暗号化に使用される暗号化用データはFeRAM83、95に記憶され、このFeRAM83、95から読み出された場合に再書き込みされないので、暗号化及び復号の処理後は既に破壊されており、用をなさない。このため、暗号化用データが漏洩した場合にもセキュリティーが脅かされることがなく、立体画像データの秘匿性に関し、高い信頼性を確保できる。
【0032】
続いて、ホログラム作成システム100によってホログラム作成用の媒体として使用される表示用シート1について説明する。
図4は表示用シート1の外観斜視図であり、図5は要部断面図である。
表示用シート1は、可撓性を有するシートとして構成され、例えば図1に示すように屈曲させることも可能であり、折り曲げることもできる。表示用シート1の縁には選択回路11が設けられ、この選択回路11に、表示用シート1の表示状態を制御する表示制御装置10が接続されている。
この表示用シート1の表面は、透光性を有する表面層150により覆われ、表示用シート1の裏面側は可撓性を有するベースシート101(シート)で構成され、これらベースシート101と表面層150との間に各部を収めた構成となっている。
【0033】
表面層150は、透明または半透明の、有色(白色を含む)または無色透明の層であり、例えば合成樹脂により構成される。表面層150の下側、すなわちベースシート101側の面は平滑で高い反射率を有するハーフミラーとして機能し、下方から入射した光を反射する。
ベースシート101は、可撓性を有するとともに、後述する各部を支持可能な所定の引っ張り強度を有するシートである。ベースシート101の透明度は任意であるが、表示用シート1の表面(表面層150側)の表示を妨げないように、不透明または半透明であることが好ましい。
なお、以下の説明においては、便宜上、ベースシート101側を下、表面層150側を上として説明する。勿論、表示用シート1の使用状態においては、上下左右の方向は何ら制限されない。
【0034】
ベースシート101の上側には、分極用ピエゾ素子120(電荷蓄積部)がマトリクス状に並べて配置される。分極用ピエゾ素子120は、圧電体として知られるチタン酸ジルコン酸鉛、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等の無機圧電体材料、或いは、ポリフッ化ビニリデン等の有機圧電体材料を薄層(薄膜)状に形成したものである。本実施形態の分極用ピエゾ素子120は、正方形に形成され、表示用シート1の縦方向及び横方向に所定間隔をあけて並んでいる。
分極用ピエゾ素子120の下側には、表示用シート1の幅方向に延びるX方向配線111が配置されている。X方向配線111は金属やカーボン等の導体材料からなる薄膜であり、分極用ピエゾ素子120に電気的に接続されている。X方向配線111は、所定間隔を開けて並ぶ分極用ピエゾ素子120に対応して、表示用シート1の長手方向に平行に並べて複数設けられ、1本のX方向配線111に複数の分極用ピエゾ素子120が接続されている。
【0035】
また、分極用ピエゾ素子120の上側には、表示用シート1の長手方向に延びるY方向配線112が、表示用シート1の幅方向に並べて配置されている。Y方向配線112はX方向配線111と同様、金属やカーボン等の導体材料からなる薄膜であり、分極用ピエゾ素子120に電気的に接続されている。Y方向配線112は、所定間隔を開けて並ぶ分極用ピエゾ素子120に対応して、表示用シート1の幅方向に平行に並べて複数設けられ、1本のY方向配線112に複数の分極用ピエゾ素子120が接続されている。
これらX方向配線111とY方向配線112とを合わせて配線部110と呼ぶ。
分極用ピエゾ素子120の下側に位置するX方向配線111と表面層150との間は、絶縁層131が配されている。絶縁層131は、絶縁性を有する合成樹脂等であり、X方向配線111とX方向配線111との間、及び、X方向配線111と表面層150との間の空間を満たしており、X方向配線111や分極用ピエゾ素子120と表面層150とを絶縁及び保護する役目がある。
【0036】
配線部110及び分極用ピエゾ素子120の上には、駆動用ピエゾ素子140(反射用圧電体)が並べて配置されている。駆動用ピエゾ素子140は、圧電体として知られるチタン酸ジルコン酸鉛、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等の無機圧電体材料、或いは、ポリフッ化ビニリデン等の有機圧電体材料を薄層(薄膜)状に形成したものである。本実施形態の駆動用ピエゾ素子140は、正方形に形成され、表示用シート1の縦方向及び横方向に所定間隔をあけて並んでいる。
隣接する駆動用ピエゾ素子140と駆動用ピエゾ素子140との間には、スペーサー141が配設されている。スペーサー141は、合成樹脂や二酸化ケイ素等の絶縁材料で構成され、上述した分極用ピエゾ素子120が分極していないときの駆動用ピエゾ素子140と同じ厚みを有し、駆動用ピエゾ素子140とスペーサー141とが一つの層を形成している。この層とY方向配線112との間、及び、Y方向配線112とY方向配線112との間に形成される空間は、絶縁層132により満たされている。絶縁層132は、絶縁層131と同様に構成される絶縁体の層である。
【0037】
駆動用ピエゾ素子140の上面には、誘電体ミラー142が設けられている。誘電体ミラー142は、1層または多層の誘電体の膜で構成され、ハーフミラーとして機能する。すなわち、誘電体ミラー142は、表面層150を通して表示用シート1内部に入射した外光を表面層150へ反射する。本実施形態の誘電体ミラー142はアルミニウムで構成されており、酸化防止のため、誘電体ミラー142の表面は酸化膜143により覆われている。
【0038】
誘電体ミラー142の表面と表面層150の下面は、いずれもハーフミラーであるため、これらの2つの面のファブリ・ペロー干渉の光干渉効果により、外部の光源12(図4)が発した外光が表面層150を透過して入射すると、この入射光のうち、特定の波長の光が誘電体ミラー142と表面層150との間で反射され、反射光として外部に放射される。つまり、誘電体ミラー142は表面層150と組み合わされて反射層を構成し、光干渉効果によって入射光に含まれる所定波長の光を反射する。ここで、反射される光の波長は、誘電体ミラー142と表面層150との間の空間144の厚み(ギャップ)によって決定される。このギャップは、予め設定された大きさとなっているが、後述するように駆動用ピエゾ素子140が変形すると、この表面層150と誘電体ミラー142とのギャップが拡大する。以下、この一連の動作について説明する。
【0039】
図6は、配線部110、分極用ピエゾ素子120及び駆動用ピエゾ素子140の配置状態を示す要部斜視図であり、図7は、分極用ピエゾ素子120と配線部110との接続状態を示す要部平面図である。
図6及び図7に示すように、一つの分極用ピエゾ素子120には、下側で1本のX方向配線111が接続され、上側で1本のY方向配線112が接続されている。つまり、表示用シート1の全ての分極用ピエゾ素子120に対し、X方向配線111とY方向配線112とが1本ずつ接続されている。このため、複数のX方向配線111及びY方向配線112から、1本のX方向配線111及び1本のY方向配線112を選択することで、一つの分極用ピエゾ素子120のみに対して電圧を印加することができる。例えば、X方向配線111を低電圧側とし、Y方向配線112を高電圧側として、分極用ピエゾ素子120に対して電圧を印加することで、分極用ピエゾ素子120を分極させ、分極用ピエゾ素子120の上面に負電荷が局在し、分極用ピエゾ素子120の下面に正電荷が局在した状態にすることができる。
【0040】
また、各々の駆動用ピエゾ素子140は、一つの分極用ピエゾ素子120の真上に位置している。このため、駆動用ピエゾ素子140は、真下の分極用ピエゾ素子120が生じる電界の影響を受ける。また、隣接する駆動用ピエゾ素子140どうしはスペーサー141によって絶縁及び離隔されているので、駆動用ピエゾ素子140が斜め下方に位置する分極用ピエゾ素子120から受ける影響は無視してよい。さらに、スペーサー141は、一つの駆動用ピエゾ素子140が変形した場合に、この変形によって当該駆動用ピエゾ素子140に生じる起電力が、隣接する駆動用ピエゾ素子140にリークするのを防止する効果がある。
すなわち、上述したように、配線部110から選択された1組のX方向配線111、Y方向配線112に電圧が印加されることで、表示用シート1上の一つの分極用ピエゾ素子120が分極した状態になると、分極用ピエゾ素子120の上面に正電荷或いは負電荷が局在する。この局在した電荷の影響により、駆動用ピエゾ素子140を上下に貫く電界が発生し、この電界の影響により、圧電体で構成される駆動用ピエゾ素子140は、厚み方向に変形する。
なお、分極用ピエゾ素子120が分極した場合に駆動用ピエゾ素子140を貫く電界を確実に発生させるため、駆動用ピエゾ素子140の上に導体を配置してもよい。
【0041】
図8は、駆動用ピエゾ素子140の駆動状態を説明する図であり、駆動用ピエゾ素子140近傍の要部断面図である。図8(A)は駆動用ピエゾ素子140の非駆動時、図8(B)は駆動時を示す。
駆動用ピエゾ素子140の直下の分極用ピエゾ素子120が分極していない状態では、図8(A)に示すように、駆動用ピエゾ素子140はスペーサー141と同じ厚みを保持している。この場合の、表面層150の下面と誘電体ミラー142とのギャップは予め設定された値d1である。
ここで、分極用ピエゾ素子120が分極し、駆動用ピエゾ素子140に電界が与えられると、図8(B)に示すように、駆動用ピエゾ素子140が厚み方向に変形し、誘電体ミラー142を下方に押し下げる。この状態における表面層150の下面と誘電体ミラー142とのギャップは、最も大きい場所で、値d1より拡大し、d2となる。
【0042】
図8(B)に示すように誘電体ミラー142が変位してギャップが拡大した場合、誘電体ミラー142における反射率が低下し、外光が吸収されるため、表面層150から放射される反射光が低減する。このため、駆動用ピエゾ素子140が変形した部分と他の部分とで反射光の光量が大きく異なるので、表示用シート1を表面側から見ると、駆動用ピエゾ素子140が変形した部分が暗く見える。このように、表示用シート1は、ファブリ・ペロー干渉による光干渉効果により、入射光に含まれる所定波長の光を反射する機能を備え、一部の分極用ピエゾ素子120に電圧が印加されることで、駆動用ピエゾ素子140の位置毎に反射光を変化させて、反射光の強弱或いは有無による表示を行える。この場合、各々の駆動用ピエゾ素子140は表示単位(いわゆる画素)として機能し、外光(参照光)を利用して、表示用シート1に文字や画像等を自在に表示できる。
【0043】
図4に示すように表示用シート1の縁に設けられた選択回路11は、表示用シート1に配設された複数のX方向配線111及びY方向配線112に結線されている。選択回路11は、表示制御装置10の制御に従って、複数のX方向配線111及びY方向配線112の中から、一組のX方向配線111とY方向配線112(1本のX方向配線111と1本のY方向配線112)を選択する。そして、表示制御装置10は、選択回路11により選択されたX方向配線111及びY方向配線112に所定の電圧を印加することで、一つの分極用ピエゾ素子120を分極させ、この分極用ピエゾ素子120に対応する駆動用ピエゾ素子140を変形させることで、表示用シート1に画像を表示させる。ここで、選択回路11は、表示制御装置10の制御に従って、複数のX方向配線111と複数のY方向配線112とを同時に選択することも可能である。
【0044】
また、駆動用ピエゾ素子140の変形量は、駆動用ピエゾ素子140に加わる電界の強度によって変化する。このため、配線部110を介して分極用ピエゾ素子120に印加する電圧を変化させることで、その分極用ピエゾ素子120の真上に位置する駆動用ピエゾ素子140の変形量を制御できる。このようにして、駆動用ピエゾ素子140の変形量を制御することで、表面層150と誘電体ミラー142との間のギャップの大きさを所望の値に調整することにより、該誘電体ミラー142により反射される光の反射率、或いは、誘電体ミラー142による反射と吸収を任意に変化させることができる。つまり、選択回路11により選択された配線部110に表示制御装置10が印加する電圧を調整することで、各々の駆動用ピエゾ素子140の変形量を制御し、1枚の表示用シート1上で、各駆動用ピエゾ素子140に対応する各画素の反射率を複数段階に異ならせて、階調表現を実現できる。
【0045】
上述したホログラム作成システム100を構成するホログラム作成装置7(図1)は、表示デバイス処理装置77の機能により、表示用シート1を媒体として用い、この媒体としての表示用シート1にホログラムを形成する。このホログラムは、表示用シート1において分極用ピエゾ素子120、駆動用ピエゾ素子140により構成される各表示要素の反射率の差によって、表示面から離れた空間に光干渉現象に基づく干渉縞を形成させることで、実現できる。表示デバイス処理装置77は、制御部71の制御に従って、立体画像データに基づいて表示制御装置10を制御することにより、表示用シート1の各表示要素の反射率を個々に調整し、干渉縞を形成する。
この表示用シート1に形成された干渉縞に対し、光源12(図4)により参照光を照射することで、立体像を投影することができる。
【0046】
表示用シート1は、分極用ピエゾ素子120に蓄積された電荷により駆動用ピエゾ素子140の変形を保持できるので、表示状態の保持に要する電力量が小さくて済み、給電しなくても長時間にわたって表示状態を保持できる。このため、ホログラム作成装置7によって形成された干渉縞を、外部から給電せずに長時間保持できるので、長期保存が可能なホログラムを実現できる。そして、この表示用シート1に形成されたホログラムは、表示制御装置10の制御によって消去し、更新が可能なため、何度でも繰り返し更新して使用可能なホログラムを実現できる。
また、一般に圧電体の変形は極めて迅速であるため、分極用ピエゾ素子120に電圧を印加してから駆動用ピエゾ素子140が変形するまでの応答時間が非常に短い。このため、表示用シート1に干渉縞を形成する処理も短時間で実行できる。
この表示用シート1は、例えば、インクジェットプリンターと同様に構成される装置を用い、ベースシート101に対して、配線部110や分極用ピエゾ素子120、駆動用ピエゾ素子140等を構成する流体材料を噴射することにより、容易に低コストで製造可能である。
【0047】
以上のように、本発明を適用した実施の形態によれば、ファブリ・ペロー干渉による光干渉効果によって所定波長の光を反射する機能を備えた媒体として表示用シート1を用い、表示用シート1が駆動用ピエゾ素子140の位置毎に反射率を変化させることが可能なことを利用して、反射率の差によって干渉縞を形成するので、干渉縞の消去や再形成が可能なホログラムを作成できる。表示用シート1では分極用ピエゾ素子120の電荷により駆動用ピエゾ素子140の変形を保ち、誘電体ミラー142の反射率を保持できるので、干渉縞の保持に要する電力量が小さくて済み、給電しなくても長時間にわたって干渉縞を保持できる。また、一般に電界による圧電体の変形は迅速であるため、分極用ピエゾ素子120に電圧を印加してから駆動用ピエゾ素子140が変形するまでの応答時間は非常に短く、干渉縞を短時間で形成できる。従って、高速で作成可能で、かつ、消去や再形成が可能なホログラムを作成できる。
ここで、各々の分極用ピエゾ素子120に対しては、表示制御装置10及び選択回路11を介して配線部110に電圧を印加することで、容易に、選択的に電圧を印加できるので、短時間で容易に干渉縞を形成し、ホログラムを作成できる。
【0048】
なお、上述した実施形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施形態に限定されない。
例えば、上記実施形態では、測色装置5、ホログラム作成装置7、及びデータ管理装置9が、RF部とアンテナを介した無線通信によって立体画像データ等を送受信する構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、測色装置5、ホログラム作成装置7及びデータ管理装置9がいずれも赤外線発光部と受光部とを備え、赤外線通信により、立体画像データ等を無線伝送してもよい。この場合、赤外光が届く範囲においてのみ立体画像データを送受信可能であるため、外部から立体画像データや暗号化用データを傍受しにくいというセキュリティー面の利点がある。また、表示用シート1に形成される干渉縞は、光源12が発する参照光の波長に合わせて最適化されていてもよく、この場合、測色装置5が有するホログラム測色機57において測色時の参照光の波長を、光源12の照射光の波長と適合させればよい。
また、表示用シート1において分極用ピエゾ素子120に電圧を印加する構成として配線部110を設けた場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、所定波長の光を受光して直流電圧を出力する受光回路を、個々の分極用ピエゾ素子120に接続し、この受光回路を介して分極用ピエゾ素子120に電圧を印加してもよい。この場合、例えば各受光回路にレーザー光を当てるなどして、各受光回路の受光状態を制御することで、反射率の差を生じさせ、干渉縞を形成できる。
【0049】
また、上記実施形態では、分極用ピエゾ素子120を分極させることにより電荷を蓄積する構成としたが、分極用ピエゾ素子120に代えて、圧電体以外の材料を用いた電荷蓄積素子を形成し、この電荷蓄積素子に蓄積した電荷により駆動用ピエゾ素子140の周囲に電界を生成させてもよい。また、表示用シート1は、表面層150と誘電体ミラー142との間のファブリ・ペロー干渉により特定波長の光を反射するものであればよいので、誘電体ミラー142に代えて、誘電体に該当しない材料によりハーフミラーを設けてもよい。さらに、表示用シート1における分極用ピエゾ素子120、駆動用ピエゾ素子140の数や配置方向は任意であり、六角形の分極用ピエゾ素子120及び駆動用ピエゾ素子140をハニカム状に配置してもよいし、円形の分極用ピエゾ素子120、駆動用ピエゾ素子140を用いてもよい。隣接する駆動用ピエゾ素子140の間にスペーサー141を設けたように、分極用ピエゾ素子120どうしの間に絶縁体のスペーサーを設けてもよい。そして、表示用シート1における表示色も任意であり、表示制御装置10から表示用シート1へ通電しておらず、全ての分極用ピエゾ素子120が分極していない状態における表示用シート1の色は、白色であってもよいが、他の色であってもよく、その他の細部構成についても任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…表示用シート(媒体)、5…測色装置(立体画像データ生成装置)、7…ホログラム作成装置、9…データ管理装置、10…表示制御装置(制御装置)、77…表示デバイス処理装置(ホログラム作成手段)、99…立体画像データベース、100…ホログラム作成システム、101…ベースシート(シート)、110…配線部、120…分極用ピエゾ素子(電荷蓄積部)、140…駆動用ピエゾ素子(反射用圧電体)、142…誘電体ミラー(反射層)、150…表面層(反射層)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するシートに、
外部から入射した光のファブリ・ペロー干渉による光干渉効果によって、入射光のうち所定波長の光を反射する反射層と、
前記シートの一面にマトリクス状に並べて配置され、周囲の電界に応じて変形することにより前記反射層の反射率を変化させる反射用圧電体と、
各々の前記反射用圧電体に重なるようにマトリクス状に並ぶ複数の電荷蓄積部と、
各々の前記電荷蓄積部に電圧を印加するための電圧印加部と、を設けて構成される媒体に対し、
前記電圧印加部によって一部の前記電荷蓄積部に電圧を印加させて前記反射用圧電体に電界を加え、前記媒体に、前記反射層における反射率の差によって干渉縞を形成するホログラム作成手段を備えること、
を特徴とするホログラム作成装置。
【請求項2】
前記媒体が備える電圧印加部は、複数の前記電荷蓄積部の中から特定の前記電荷蓄積部を選択可能に構成され、選択された前記電荷蓄積部に電圧を印加するための配線部と、前記配線部に電圧を印加する制御装置と、を備えて構成され、
前記ホログラム作成手段は、前記制御装置を制御して前記配線部を介して前記電荷蓄積部に電圧を印加させること、
を特徴とする請求項1記載のホログラム作成装置。
【請求項3】
可撓性を有するシートに、外部から入射した光のファブリ・ペロー干渉による光干渉効果によって、入射光のうち所定波長の光を反射する反射層と、前記シートの一面にマトリクス状に並べて配置され、周囲の電界に応じて変形することにより前記反射層の反射率を変化させる反射用圧電体と、各々の前記反射用圧電体に重なるようにマトリクス状に並ぶ複数の電荷蓄積部と、各々の前記電荷蓄積部に電圧を印加するための電圧印加部と、を設けて構成される媒体に、前記反射層における反射率の差によって干渉縞を形成すること、
を特徴とするホログラム作成方法。
【請求項4】
ホログラムを作成するための立体画像データを生成する立体画像データ生成装置と、
前記立体画像データ生成装置により生成された立体画像データに基づいて、ホログラムを作成するホログラム作成装置と、を備え、
前記ホログラム作成装置は、
可撓性を有するシートに、
外部から入射した光のファブリ・ペロー干渉による光干渉効果によって、入射光のうち所定波長の光を反射する反射層と、
前記シートの一面にマトリクス状に並べて配置され、周囲の電界に応じて変形することにより前記反射層の反射率を変化させる反射用圧電体と、
各々の前記反射用圧電体に重なるようにマトリクス状に並ぶ複数の電荷蓄積部と、
各々の前記電荷蓄積部に電圧を印加するための電圧印加部と、を設けて構成される媒体に対し、
前記電圧印加部によって一部の前記電荷蓄積部に電圧を印加させて前記反射用圧電体に電界を加え、前記媒体に、前記反射層における反射率の差によって干渉縞を形成するホログラム作成手段を備えること、
を特徴とするホログラム作成システム。
【請求項5】
前記立体画像データ生成装置により生成された立体画像データを格納する立体画像データベースをさらに備え、前記ホログラム作成装置は、前記立体画像データベースに格納された立体画像データに基づいてホログラムを作成するものであり、
前記立体画像データ生成装置により生成された立体画像データを前記立体画像データベースに送信する際、及び、前記立体画像データベースから前記ホログラム作成装置へ立体画像データを送信する際には、立体画像データを暗号化して送信すること、
を特徴とする請求項4記載のホログラム作成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−256396(P2010−256396A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102750(P2009−102750)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】