説明

ホースクリップ送り出し装置

【課題】ホースクリップを円滑に送り出すことができるホースクリップ送り出し装置を提供することを課題とする。
【解決手段】ホースクリップ送り出し装置10は、回転ドラム50の内周面61に、径内方へ突出して設けられ回転ドラム50と共に上昇する過程でリング部81に挿通してホースクリップ79を掬い上げる丸棒状のピックアップ部材62を備え、振動レール70の上端71に、掬い上げたホースクリップ79の指掛け部82に当たってホースクリップ79を反転させる反転部72及び反転されたホースクリップ79を振動レール70で滑落させる斜面部73を有している傾斜部材74を備えている。
【効果】リング部81の幅寸法W1は指掛け部82の幅寸法W2に比べて小さく、リング部81を搬送溝75に簡単に入れることができるので、振動レール70でホースクリップ79を円滑に送り出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のホースクリップを整列した状態で送り出すホースクリップ送り出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や機械の組立作業では、大量の締結部品が使用される。これらの締結部品を工具で対象物に素早く取り付けるには、締結部品を工具に簡単に装着できるようにすることが求められる。具体的には、複数個の締結部品を同一の姿勢で並べておく必要がある。
【0003】
従来、複数個の締結部品を整列した状態で送り出すことができる装置として部品送り出し装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平7−81731号公報(図1)
【0004】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図7は従来の技術の基本原理を説明する図であり、(a)に示すように、部品送り出し装置100は、回転体である回転ドラム101と、静止体である搬送レール102とを主要素とする装置である。回転ドラム101と、搬送レール102とは、次のように支持されている。ベース103に立てられた支持部材104に傾斜軸105が回転自在に支持され、この傾斜軸105の両端にローラ106、106が設けられ、これらのローラ106、106で回転ドラム101は支持されており、傾斜軸105の回転により、回転ドラム101は回される。また、ベース103の中央に振動発生機107が設けられ、この振動発生機107に搬送レール102が設けられており、振動発生機107を動作させることで搬送レール102は振動する。
【0005】
回転ドラム101に複数本の釘を投入し、回転ドラム101を回転させると、(b)に示すように、かきあげ羽根で掬い上げられた釘108は、搬送レール102の振分部109に載る。次に搬送レール102を振動させると、釘108は矢印(1)のように分離部111を通り、矢印(2)のように姿勢変更部112に向かい、姿勢変更部112で矢印(3)のように姿勢を変え、矢印(4)のように移行部113に入り、移行部113から矢印(5)のように搬送部114に入り、矢印(6)のように搬送部114の先端に向かう。作業者は搬送部114の先端に送り出された釘108を取って作業に使用する。
【0006】
図8は従来の部品送り出し装置でホースクリップを送り出す場合の作用説明図であり、回転ドラム(図7符号101)に複数個のホースクリップを投入し、回転ドラムを回転させると、(a)に示すように、かきあげ羽根に掬い上げられたホースクリップ115は、搬送レール102の振分部109に載る。次に搬送レール102を振動させると、ホースクリップ115は矢印(7)のように分離部111を通り、矢印(8)のように姿勢変更部112に向かう。
【0007】
(b)は(a)のb−b線断面図に相当し、姿勢変更部112に向かったホースクリップ115は、図に示すように姿勢変更部112の丸棒116と丸棒116の隙間Lに入る場合と、丸棒116、116の外周面に当たって矢印(9)のように丸棒116の上に倒れて隙間Lに入らない場合とがある。隙間Lに入らなかったホースクリップ115は、回転ドラム内に落下する。
【0008】
すなわち、特許文献1の部品送り出し装置(図7符号100)では、搬送対象がホースクリップ115である場合、ホースクリップ115は姿勢変更部112で回転ドラム内に落下し、搬送部114に送り出されないことがある。回転ドラム内に落下したホースクリップ115は、姿勢変更部112に入るまで繰り返し振分部109へ戻されるので、ホースクリップ115が搬送部114に送り出されるまでの時間は膨大になる虞がある。これでは、送り出し能力の低下を招く。
【0009】
そのため、ホースクリップを円滑に送り出すことができる部品送り出し装置の開発が求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ホースクリップを円滑に送り出すことができるホースクリップ送り出し装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、1本の針金を曲げて、ホースの外周に対応した形状のリング部及びこのリング部の両端から交差するように延ばした一対の指掛け部を形成してなるホースクリップを、複数個回転ドラムへ投入し、この回転ドラムから順次振動レールへ移し、この振動レールで複数個のホースクリップを整列した状態で送り出すホースクリップ送り出し装置において、前記回転ドラムの内周面に、径内方へ突出して設けられ回転ドラムと共に上昇する過程で前記リング部に挿通してホースクリップを掬い上げる棒状のピックアップ部材を備え、前記振動レールの上端に、前記ピックアップ部材で掬い上げたホースクリップの指掛け部に当たって前記ホースクリップを反転させる反転部及びこの反転部で反転されたホースクリップを前記振動レールで滑落させる斜面部を有している傾斜部材を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、棒状のピックアップ部材をホースクリップのリング部に挿通させることでホースクリップを掬い上げ、このホースクリップの指掛け部を傾斜部材の反転部に当ててホースクリップを反転させ、この反転したホースクリップを傾斜部材の斜面部にて滑落させるようにしたので、ホースクリップは滑落時にリング部が下側になる。ホースクリップのリング部の幅寸法は、指掛け部の幅寸法に比べて小さいので、ホースクリップのリング部を振動レールの搬送溝に簡単に入れることができる。そのため、振動レールでホースクリップを円滑に送り出すことができる。
【0013】
請求項1によれば、ホースクリップを円滑に送り出すことができるホースクリップ送り出し装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係るホースクリップ送り出し装置の斜視図であり、図右下方向を前、左上方向を後、左下方向を左、右上方向を右として説明する。
【0015】
ホースクリップ送り出し装置10は、ベース11上面の左後部に支持部12を介して回転自在に取り付けられている左ローラ部20(詳細後述)と、ベース11上面の右後部に支持部12を介して回転自在に取り付けられている右ローラ部30と、左ローラ部20及び右ローラ部30に駆動力を与え支持部12で支持されている駆動部40(詳細後述)と、この駆動部40によって回転させる左ローラ部20及び右ローラ部30に支持されている回転ドラム50(詳細後述)と、この回転ドラム50に後端部が挿入されていると共に前部にベース11に取り付けられる振動発生機51を備えている振動レール70(詳細後述)とからなる。
【0016】
図2は図1の2矢視図であり、左ローラ部20は、支持部12の上端に後側から前側に向けて上り勾配になるように取り付けられ軸受を内蔵している左軸受支持ケース21と、この左軸受支持ケース21の両端から突出している左ローラ軸22と、この左ローラ軸22の前端部に取り付けられている左前鍔付きローラ23と、左ローラ軸22の後端部に取り付けられている左後鍔付きローラ24とで構成される。
【0017】
なお、右ローラ部(図1符号30)の構造は、左ローラ部20と同様であるため、説明を省略する。
【0018】
駆動部40は、支持部12に取付部材41を介して取り付けられている電動モータ42と、この電動モータ42の出力軸43に取り付けられている右ローラ駆動プーリ44及び左ローラ駆動プーリ45と、左ローラ軸22の前端に取り付けられている左ローラ従動プーリ46と、この左ローラ従動プーリ46と左ローラ駆動プーリ45とを繋いでいる左ローラベルト47と、右ローラ部30に設けた右ローラ軸31の前端に取り付けられている右ローラ従動プーリ48と、この右ローラ従動プーリ48と右ローラ駆動プーリ44とを繋いでいる右ローラベルト49とで構成される。
【0019】
振動発生機51は、例えば2枚の板ばね52、52とコイル53と固定コア54と可動コア55とで振動レール70に前後方向(図左右方向)の振動を与える電磁石式の振動発生機である。
56は支持部取付ボルト、57は電動モータ取付ボルト、58はローラ取付ボルト、59は振動発生機取付ボルトである。
【0020】
図3は図2の3−3矢視図であり、ホースクリップ送り出し装置10は、前述の構成に加えて、回転ドラム50の内周面61に、径内方へ突出して設けられ回転ドラム50と共に上昇する過程でリング部(詳細後述)に挿通してホースクリップ(詳細後述)を掬い上げる例えば丸棒状のピックアップ部材62を備えている。
【0021】
また、ホースクリップ送り出し装置10は、振動レール70の上端71に、丸棒状のピックアップ部材62で掬い上げたホースクリップの指掛け部(詳細後述)に当たってホースクリップを反転させる反転部72及びこの反転部72で反転されたホースクリップを振動レール70で滑落させる斜面部73を有している傾斜部材74を備えている。
【0022】
加えて、振動レール70は、ホースクリップのリング部が入るように横断面視にて搬送溝75を備えている。
76はピックアップ部材支持板、77は支持板取付ボルト、78は補強板である。
【0023】
電動モータ42を起動させ、左ローラ駆動プーリ(図2符号45)と右ローラ駆動プーリ44を矢印のように時計回りに回転させると、左ローラ従動プーリ46と右ローラ従動プーリ48が左ローラベルト47と右ローラベルト49を介して時計回りに回転し、同時に左前鍔付きローラ23と右前鍔付きローラ32も時計回りに回転する。これらの左前鍔付きローラ23と右前鍔付きローラ32の回転によって回転ドラム50は矢印のように反時計回りに回転するので、丸棒状のピックアップ部材62も矢印のように反時計回りに移動する。
以上の構成からなるホースクリップ送り出し装置10の作用を次に述べる。
【0024】
図4はホースクリップの投入からホースクリップの掬い上げまでの作用説明図であり、(a)に示すように、回転ドラム50に投入されるホースクリップ79は、1本の針金を曲げて、ホースの外周に対応した形状のリング部81及びこのリング部81の両端から交差するように延ばした一対の指掛け部82を形成してなる部品である。図4以降の図5及び図6においても上記のホースクリップ79を用いて説明する。
【0025】
複数個のホースクリップ79を回転ドラム50に投入した状態で、電動モータ(図3符号42)を起動させることで、左前鍔付きローラ23と右前鍔付きローラ32が矢印(10)、(11)のように回転する。これにより、回転ドラム50が矢印(12)のように回転すると同時に、ピックアップ部材62が矢印(13)のように複数個のホースクリップ79に向かう。このとき、振動レール70には振動発生機(図2符号51)で図表裏方向に振動を与えておく。
【0026】
(b)にて、回転ドラム50と左前鍔付きローラ23と右前鍔付きローラ32が矢印方向に回転を続けると同時に、ピックアップ部材62は、例えば1個のホースクリップ79のリング部81に挿通し、ホースクリップ79を矢印(14)のように掬い上げる。
【0027】
図5はホースクリップの上昇からホースクリップと傾斜部材の接触までの作用説明図であり、(a)に示すように、回転ドラム50と左前鍔付きローラ23と右前鍔付きローラ32が矢印方向に回転を続けると同時に、ホースクリップ79を保持しているピックアップ部材62は、矢印(15)のように傾斜部材74に向かう。
【0028】
(b)にて、ピックアップ部材62に挿通しているホースクリップ79の一対の指掛け部82が、傾斜部材74の反転部72に当たっている。回転ドラム50とピックアップ部材62は矢印方向に回転を続ける。
【0029】
図6はホースクリップの反転からホースクリップを振動レールで送り出すまでの作用説明図であり、(a)に示すように、二点鎖線で示したホースクリップ79がピックアップ部材62から抜けることで、ホースクリップ79は、傾斜部材74の反転部72の角83上のある点Pを支点として矢印(16)のように反転する。この反転により落下したホースクリップ79は、振動レール70の振動で傾斜部材74の斜面部73を滑落し、矢印(17)のように振動レール70の搬送溝75に向かう。回転ドラム50とピックアップ部材62は矢印方向に回転を続ける。
【0030】
(b)にて、振動レール70の搬送溝75内に入ったホースクリップ79は、振動レール70の振動で搬送溝75内を矢印(18)のように下る。二点鎖線で示したホースクリップ79は、矢印(19)のように更に下り、振動レール70の前端部(図1符号84)に送り出される。回転ドラム50とピックアップ部材62は矢印方向に回転を続け、ピックアップ部材62が再び複数個のホースクリップ79(図4参照)に向かう。
【0031】
ホースクリップ送り出し装置(図1符号10)では、丸棒状のピックアップ部材62をホースクリップ79のリング部81に挿通させることでホースクリップ79を掬い上げ、このホースクリップ79の指掛け部82を傾斜部材74の反転部72の角83に当ててホースクリップ79を反転させ、この反転したホースクリップ79を傾斜部材74の斜面部73にて滑落させるようにしたので、ホースクリップ79は滑落時にリング部81が下側になる。ホースクリップ79のリング部81の幅寸法W1は、指掛け部82の幅寸法W2に比べて小さいので、ホースクリップ79のリング部81を振動レール70の搬送溝75に簡単に入れることができる。そのため、振動レール70でホースクリップ79を円滑に送り出すことができる。
【0032】
したがって、ホースクリップ79を円滑に送り出すことができるホースクリップ送り出し装置10を提供することができる。
【0033】
尚、本発明の振動レールは、実施の形態では電磁石振動式で説明したが、電動モータ振動式を採用することができるため、他の形式に変更することは差し支えない。
また、本発明の棒状のピックアップ部材は、実施の形態では丸棒で説明したが、角棒を採用することができるため、他の断面形状の棒に変更することは差し支えない。
さらには、本発明の棒状のピックアップ部材の数量は、複数であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のホースクリップ送り出し装置は、ホースクリップを整列状態で供給する装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るホースクリップ送り出し装置の斜視図である。
【図2】図1の2矢視図である。
【図3】図2の3−3矢視図である。
【図4】ホースクリップの投入からホースクリップの掬い上げまでの作用説明図である。
【図5】ホースクリップの上昇からホースクリップと傾斜部材の接触までの作用説明図である。
【図6】ホースクリップの反転からホースクリップを振動レールで送り出すまでの作用説明図である。
【図7】従来の技術の基本原理を説明する図である。
【図8】従来の部品送り出し装置でホースクリップを送り出す場合の作用説明図である。
【符号の説明】
【0036】
10…ホースクリップ送り出し装置、20…左ローラ部、30…右ローラ部、40…駆動部、50…回転ドラム、51…振動発生機、61…内周面、62…丸棒状のピックアップ部材(棒状のピックアップ部材)、70…振動レール、71…上端、72…反転部、73…斜面部、74…傾斜部材、75…搬送溝、79…ホースクリップ、81…リング部、82…一対の指掛け部、83…角。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本の針金を曲げて、ホースの外周に対応した形状のリング部及びこのリング部の両端から交差するように延ばした一対の指掛け部を形成してなるホースクリップを、
複数個回転ドラムへ投入し、この回転ドラムから順次振動レールへ移し、この振動レールで複数個のホースクリップを整列した状態で送り出すホースクリップ送り出し装置において、
前記回転ドラムの内周面に、径内方へ突出して設けられ回転ドラムと共に上昇する過程で前記リング部に挿通してホースクリップを掬い上げる棒状のピックアップ部材を備え、 前記振動レールの上端に、前記ピックアップ部材で掬い上げたホースクリップの指掛け部に当たって前記ホースクリップを反転させる反転部及びこの反転部で反転されたホースクリップを前記振動レールで滑落させる斜面部を有している傾斜部材を備えていることを特徴とするホースクリップ送り出し装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−143693(P2009−143693A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323464(P2007−323464)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【特許番号】特許第4105757号(P4105757)
【特許公報発行日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(507369936)ホンダ太陽株式会社 (17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】