説明

ホース及びその製造方法

【課題】優れた柔軟性を備えるとともに、十分な強度と耐久性を備えた、例えば、流し台、洗面台等の水栓金具に取り付けられ、他端に吐出口を有するヘッドが取り付けられるシャワーホースなどとして好適なホースを提供すること。
【解決手段】少なくとも内側層と、内側層に隣接する外側層とからなるホースにおいて、上記内側層は架橋されたポリオレフィン系樹脂からなり、上記外側層は架橋ゴムからなり、上記ホースの物性として、100℃における引張破断強度が1.5MPa以上で、かつ、R=75mmに曲げるときに必要な力が1.2N以下であるホース。少なくとも内側層と、内側層に隣接する外側層とからなるホースにおいて、上記内側層は架橋されたポリオレフィン系樹脂からなり、上記外側層は架橋ゴムからなり、上記外側層の架橋ゴムが、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体を主成分とするホース。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、洗面台、流し台等に取り付けられる引出式水栓等に用いられるシャワーホースなどとして使用されるホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
流し台、洗面台等の水栓金具に取り付けられ、他端に吐出口を有するヘッドが取り付けられるシャワーホースとして、例えば、樹脂や金属帯を蛇腹状に成形し可撓性を持たせた構造の補強管と、その内側に挿入されたホースから構成されたものが知られている。このようなホースは、例えば流し台のシャワーのように、シャワーヘッドを水栓金具より引き出して操作することとなるため、操作し易いように柔軟性に特に優れている必要がある。そのため、内側のホースとして、可塑剤により柔軟性を向上させた軟質塩化ビニル樹脂が使用されていた。
【0003】
しかしながら、上記のように、流し台、洗面台等の水栓金具に取り付けられる場合において、内側のホースとして軟質塩化ビニル樹脂を使用すると、塩化ビニル樹脂に柔軟性を付与する目的で可塑剤を使用しており、通水によって可塑剤が溶出して内側のホースが硬化してしまうという問題点があった。
【0004】
そのため、軟質塩化ビニル樹脂の代替となる材料について種々検討がなされているが、その一つとして内側のホースとしてポリエチレンを代表とするオレフィン系樹脂を使用したホースが考えられている。
【0005】
尚、本発明に関連する当該特許出願人による特許出願として、特許文献1が挙げられる。
【0006】
【特許文献1】特開2006−52772公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、内側のチューブとして従来公知のエチレン系樹脂を使用した場合には、望まれているだけの柔軟性が得られないとともに、ホースの曲げによって、内側のホースがキンクしてしまい、必要な流量が得られなくなるという問題があった。内側ホースがキンクしてしまうという問題は、ホースに温水を流すなど、高温状態での使用において特に顕著に現れていた。これらのような問題があると、シャワーヘッドを手に持って吐出方向や吐出位置を操作することが非常に困難となってしまうことが考えられる。また、柔軟性を重視しすぎると、強度、耐久性について満足する性能を得ることができなくなってしまうことが考えられる。また、冷熱サイクルが加わった際にクセが付いてしまい、特に、ホースを曲げた状態で冷却すると、その形状で固定されてしまい、ホースの操作性が低下するという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の欠点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、優れた柔軟性を備えるとともに、十分な強度と耐久性を備えた、例えば、流し台、洗面台等の水栓金具に取り付けられ、他端に吐出口を有するヘッドが取り付けられるシャワーホースなどとして好適なホースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するべく、本発明の請求項1によるホースは、少なくとも内側層と、内側層に隣接する外側層とからなるホースにおいて、上記内側層は架橋されたポリオレフィン系樹脂からなり、上記外側層は架橋ゴムからなり、上記ホースの物性として、100℃における引張破断強度が1.5MPa以上で、かつ、R=75mmに曲げるときに必要な力が1.2N以下であることを特徴とするものである。
また、請求項2によるホースは、少なくとも内側層と、内側層に隣接する外側層とからなるホースにおいて、上記内側層は架橋されたポリオレフィン系樹脂からなり、上記外側層は架橋ゴムからなり、上記外側層の架橋ゴムが、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体を主成分とすることを特徴とするものである。
また、請求項3によるホースは、上記外側層の架橋ゴムは、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体100重量部に対して、少なくとも補強剤として、10〜40重量部のシリカが添加されていることを特徴とするものである。
また、請求項4によるホースは、請求項1乃至請求項3記載のホースについて、上記内側層と上記外側層とを、電子線照射によって同時に架橋することを特徴とするホースの製造方法である。
また、請求項5によるホースは、請求項1乃至請求項3記載のホースについて、上記内側層と上記外側層とを、共押出成形により成形することを特徴とするホースの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた柔軟性を備えるとともに、十分な強度と耐久性を備えた、例えば、流し台、洗面台等の水栓金具に取り付けられ、他端に吐出口を有するヘッドが取り付けられるシャワーホースなどとして好適に使用できるホースを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係るホースについて説明をする。実施の形態において用いられるホースは、ポリオレフィン系樹脂を管状に成形し架橋した内側層と、該内側層ホースに隣接する外周に形成された架橋ゴムからなる外側層とから構成されている。
【0012】
本発明における内側層に使用されるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレンや各種のエチレン系共重合体が挙げられる。ポリエチレン樹脂は、従来種々のものが公知であるが、本発明では、密度が0.942g/cm以下となるものを適宜に選択または組合せて使用、及び架橋することが好ましい。ポリエチレンの密度が0.942g/cmを超えてしまうと、ホースの柔軟性が低下しまう傾向がある。また、ポリエチレン樹脂は、元来耐塩素性に優れた性質を有しているため、移送する水に殺菌のための次亜塩素酸が注入されていたとしても、塩素によるホースの劣化を防止することができる。エチレン系共重合体は、エチレンと他のコポリマー成分を共重合させたものであり、ポリエチレン樹脂に対して、柔軟性に優れていることは良く知られている。エチレン系共重合体に使用されるコモノマー成分としては、例えば、α−オレフィン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、などが挙げられる。また、このエチレン系共重合体は、上記コモノマー成分のほかに第3成分としてジエン成分を共重合したものも考えられる。これらの中でも、エチレンとα−オレフィンを共重合させたエチレン−α−オレフィン共重合体は、特に柔軟性に優れた共重合体が得られ、無味無臭であることから移送させる水に味や臭いを移さないため、飲料水用のホースの組成物としても特に好適に使用することができる。α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、ドデセン−1などが挙げられる。本発明における組成物には、これらの中でも、エチレンとオクテン−1が共重合された、エチレン−オクテン共重合体が含有されることが好ましい。このエチレン−オクテン共重合体は、特に柔軟性に優れる材料である。尚、エチレン−α−オレフィン共重合体は各種市販されているので、それらを適宜に選択して使用しても良い。これらポリオレフィン系樹脂は、単独で用いても良く、複数を組合せて配合させても良いが、柔軟性、機械的強度、耐塩素性を優れたものとするため、ポリオレフィン樹脂とエチレン系重合体を適宜配合することが好ましい。
【0013】
本発明における外側層に使用される架橋ゴムは、従来公知の様々なゴム材料、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム、ニトリルブタジエンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムを適宜に組合せて使用、及び架橋することが好ましい。これらの中でも、エチレンプロピレンゴム、特に、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体を主成分とすることが好ましい。ここで、「主成分」とは、当該材料を重量換算で50%以上使用していることを示す。エチレン−プロピレン−ジエン共重合体を使用することで、内側層ポリエチレン樹脂との良好な接着性が期待できる上に、含有するジエン成分によって架橋効率を高めることができるので、架橋剤、架橋助剤の配合量を必要最低限に抑えることができる。
【0014】
また、上記のようにエチレン−プロピレン−ジエン共重合体を主成分としているのは以下の点も期待できるためである。即ち、本発明によるホースは、優れた柔軟性を必要とするものである。ポリオレフィン系樹脂は上記したように耐塩素性に優れるとともに、成形性にも優れているため、ホース内側層の材料として好適なものであるが、柔軟性については十分なものではない。一方、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体は柔軟性に優れているものであるが、成形性に劣り、管状の成形、特に、薄肉のものを成形するためには、マンドレルの上に被覆し、架橋を行った後にマンドレルを引き抜くという工法を必要とするため、効率的な成形方法とは言い難い。本実施の形態によるホースは、このようなポリエチレン樹脂とエチレン−プロピレン−ジエン共重合体を積層させて成形するため、成形性を満足した上で優れた柔軟性を得ることができる。
【0015】
また、外側層として架橋ゴムからなる材料を使用するのは、以下の点も期待できるためである。すなわち、ポリオレフィン系樹脂は、弾性が低い材料である為、熱変形を受けた場合、クリープ現象等によって変形を維持してしまう傾向がある。一方、架橋ゴムからなる材料は、弾性に優れた材料であり、クリープ変形を受けにくいことから、内側層に使用しているポリオレフィン系樹脂が受ける熱変形を吸収、ホースの断面形状を保持することで、冷熱サイクルが加わった際のホース全体のクセ付き、及びキンクを防ぐことができる。
【0016】
また、上記した内側層あるいは外側層を構成する材料に、他の配合材料を加えて所望の特性を得ることも可能である。例えば、老化防止剤等を適宜に添加することによって、更に耐塩素性を向上させても良い。また、外側層のゴム架橋物に対しては、老化防止剤のほかに、シリカなどの補強剤を添加することで、特に高温(100℃近傍)での強度向上等、所望の材料強度に調整することができる。このとき、シリカとして、疎水性シリカを使用すると、効果的に材料強度を向上させることが可能である為、好適である。前記疎水性シリカは、シリカの表面を有機珪素化合物で化学的に変性したもので、各種市販されているものを適宜試用すれば。上記疎水性微粒子シリカの配合量は、ゴム成分に対して、10〜40重量部であることが好ましい。10重量部未満の場合、十分な補強効果を得ることができず、また、40重量部より多くなると、材料の硬さが増加して曲げにくくなる恐れがあることと、上記疎水性シリカの見かけの比重が高いために、添加が困難となる恐れがある。
【0017】
さらに、外側層のゴム架橋物に対しては、液状ジエン系ゴムを添加することも、ジエン成分が架橋率を高めることで材料強度を高めるために有効である。液状ジエン系ゴムとして、液状ポリブタジエンゴム、液状ポリイソプレンゴム、液状スチレン−ブタジエンゴム、液状ニトリル−ブタジエンゴム等が挙げられる。上記液状ジエン系ゴムの配合量は、ゴム材料に対して、2〜10重量部であることが好ましい。2重量部未満の場合、十分な架橋率向上の効果を得ることができず、また、10重量部より多くなると、ブリードアウトの恐れがある
【0018】
本実施の形態では、上記の構成材料を押出成形等の公知の成形手段で管状に成形することができる。内側層と外側層の成形は、別個に行っても良いし、共押出成形によって同時に行っても良いが、共押出成形による同時成形を行うことが好ましい。共押出成形を行うことによって、内側層と外側層の材料が相互に溶融状態で接触するため、それぞれの材料が強固に接着されるからである。
【0019】
内側層の肉厚は、0.05〜2.0mmで、特に0.1〜1.0mmの範囲で成形するのが好ましい。肉厚が薄いと、実使用に耐え得る十分な耐熱性と耐塩素性を得ることが困難となったりする可能性がある。また、肉厚が厚いと、ホースの柔軟性が低下して曲げ難くなってしまい、本発明によって得られるホースの取扱性や施工性が悪くなってしまう可能性がある。また、ポリオレフィン系樹脂の肉厚が厚い場合、温度変化によるクセつきの度合いも大きくなるため、上記範囲の肉厚にすることが好ましい。また、ホース全体の肉厚は、0.6〜3mmでの範囲とすることが好ましい。肉厚が0.6mm未満では、ホースを曲げた時にキンクし易くなったり、実使用に耐え得る十分な耐圧性を得ることが困難となったりする可能性がある。一方、肉厚が3mmを超えると、柔軟性が低下して曲げ難くなってしまい、本発明によって得られるホースの取扱性や施工性が悪くなってしまう可能性がある。
【0020】
本実施の形態では、上記のように成形したホースに、架橋を施す必要がある。架橋を施すことによって、高温での耐圧性、及び、ホースの断面形状の保持性能を高める必要があるからである。架橋手段としては、例えば、硫黄架橋、過酸化物架橋、シラン架橋、電子線架橋などが挙げられるが、これらの中でも電子線架橋を採用することが好ましい。この理由としては、過酸化物架橋やシラン架橋のように架橋剤等の他の材料を配合する必要がなく、自由度の高い材料の選択が可能であるためであり、本発明のように、過酸化物架橋では架橋温度が著しく異なる内側層と外側層であっても、共押出成形や、内側層と外側層との同時架橋が可能となる。更には、電子線架橋は、過酸化物架橋よりも処理速度が速く、シラン架橋と違い連続的な架橋が可能であることから、製造にかかるコストを低く抑えることが可能である。
【0021】
本発明によるホースは、物性として、100℃における引張破断強度が1.5MPa以上で、かつ、R=75mmに曲げるときに必要な力が1.0N以下であることが好ましい。このようなホースであれば、高温時においても十分な強度や耐久性が得られ、柔軟性にも優れることからシャワーホース等として好適に使用することができる。
【0022】
このようにして得られたホースの外周には、耐圧性を付与する目的や、押圧、磨耗などによる損傷を防止する目的で、補強層を形成しても良い。補強層としては、例えば、樹脂や金属帯を蛇腹状に成形し可撓性を持たせた構造のもの、軟質ステンレス線や硬質ステンレス線などの金属細線を引き揃え、編組または横巻きすることにより形成したもの、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維等の合成繊維を用い、これを編組または横巻きすることにより形成したもの、高分子材料などを押出成形等の公知の成形手段によって形成したものなどが挙げられる。これらは、一種類を単独で用いても良いし、複数種類を組合せて用いても良い。要は、ホースの使用形態に応じて適宜に形成すれば良い。例えば、ホースの外周にナイロン繊維を編組し、その外周に高分子材料を押出成形によって被覆し、更にその外周に金属帯を蛇腹状に成形したものを形成して補強層とすることも考えられる。
【0023】
上記の補強層に用いられる高分子材料としては、例えば、オレフィン系樹脂、ナイロン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ナイロン系エラストマー、スチレン系エラストマーなど、特に限定はなく、柔軟性に優れる材料を適宜選定すれば良い。補強層はそのまま露出した状態であっても良いが、その上に更にシースを形成しても良い。シースを形成することにより、ホースの表面にゴミや汚れが付きにくくなるとともに、表面を簡単に清掃することができる。シースの構成材料としては、例えば、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂及びそれらの熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0024】
このようにして得られたホースの多くは、その両端に相手部材に接続するための接続継手が取り付けられて実使用に供される。接続継手としては、金属や樹脂などにより加工されたものが公知である。このとき、従来のポリエチレン樹脂からなるホースを加工する場合は、樹脂のクリープによる接続部分の信頼性低下を防止するために、継手部分にOリングを装着する必要があるが、本発明によるホースの場合、外側層である架橋ゴム層がゴム弾性を有するために、Oリングを使用しなくても十分な接続部分の信頼性を有することができる。
【0025】
このようにして得られたホースは、優れた柔軟性を備えると共に、十分な強度と耐久性を備えたものであり、例えば、流し台、洗面台等の水栓金具に取り付けられ、他端に吐出口を有するヘッドが取り付けられるシャワーホースなどの内側のホースなどとして好適に使用することができる。
【実施例】
【0026】
まず、外側層の配合検討として、表1に示す配合について、材料物性、生産性の検討を行った。
【0027】
【表1】

【0028】
補強剤として使用した疎水性シリカの添加量として10重量部未満の参考例1は、特に高温での強度に劣っており、100℃における引張強度の好ましい値(1.5MPa以上)を満たしていないことが確認された。また、参考例4において、100%モジュラスの値が参考例1〜3と比較すると大きくなっていることから、添加部数を40重量部以上にすると、材料の引張弾性が強くなりすぎると考えられる。このことは、ホースとしての曲げ剛性力が大きくなることを示している。なお、疎水性シリカは見かけの比重が非常に小さく、40重量部以上を添加するためには、ゴム配合の際に数回に分けて添加しなければならなくなることが予想されるため、生産性はあまり良くないと言える。生産性から考慮しても、40重量部以上の添加は現実的と言えない。また、参考例5に示すように、液状ジエン系ゴムとして液状ポリブタジエンゴムを添加することで、高温時の引張強度が増加することが確認された。
【0029】
以下、本発明の実施の形態に対応した実施例1〜3と比較例1〜3を説明する。説明に際しては、適宜図1,2を参照する。
【0030】
(実施例1)
内側層1aとして、ポリエチレンとエチレン系共重合体からなる配合物を0.1mmの厚さで、外側層1bとして、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体配合物を0.9mmの厚さで、内径8.0mmの管状に共押出成形した後、内側層1a、外側層1b同時に100kGyの線量の電子線を照射して架橋を施し、試料となるホース1とした。
【0031】
(実施例2)
内側層1aとして、ポリエチレンとエチレン系共重合体からなる配合物を0.2mmの厚さで、外側層1bとして、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体配合物を0.8mmの厚さで、内径8.0mmの管状に共押出成形した後、内側層1a、外側層1b同時に100kGyの線量の電子線を照射して架橋を施し、試料となるホース1とした。
【0032】
(実施例3)
内側層1aとして、ポリエチレンとエチレン系共重合体からなる配合物を0.5mmの厚さで、外側層1bとして、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体配合物を0.5mmの厚さで、内径8.0mmの管状に共押出成形した後、内側層1a、外側層1b同時に100kGyの線量の電子線を照射して架橋を施し、試料となるホース1とした。
【0033】
(比較例1)
ポリエチレンとエチレン系共重合体からなる配合物のみを0.7mmの厚さで、内径8.0mmの管状に押出成形した後、100kGyの線量の電子線を照射して架橋を施し、試料となるホースとした。尚、比較例1のポリエチレンとエチレン系共重合体の配合物は、内側ホースとして十分な柔軟性を持たせるべく、エチレン系共重合体の含有率を高くしたものとしてある。
【0034】
(比較例2)
各実施例において外側層としたエチレン−プロピレン−ジエン共重合体配合物のみを1.0mmの厚さで、内径8.0mmの管状に押出成形した後、100kGyの線量の電子線を照射して架橋を施し、試料となるホースとした。
【0035】
(比較例3)
内側層として、ポリエチレンとエチレン系共重合体からなる配合物を0.5mmの厚さで、内径8.0mmの管状に共押出成形した後、100kGyの線量の電子線を照射して架橋を施し、その後、外側層として、オレフィン系熱可塑性エラストマーを0.5mmの厚さで押出成形したものを、試料となるホースとした。外側層のオレフィン系エラストマーには、架橋を施していない。
【0036】
尚、上記実施例1〜3、及び比較例2〜3のエチレン−プロピレン−ジエン共重合体配合物として、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体100重量部に対して、疎水性微粉状シリカを20重量部、液状ポリブタジエンゴムを5重量部、その他、老化防止剤を適宜配合したものを使用した。
【0037】
このようにして得られた各ホース1を試料として、柔軟性の評価としてのホース1のキンク半径測定、及び、R=75mmに曲げるときに必要な力(曲げ剛性力)の測定と、クセの付き難さの評価としての温水クセ付き評価、強度の評価としての高温雰囲気下におけるホース引張破断強度、ホース破壊圧力の測定を行った。試験結果については表2に併せて示す。
【0038】
【表2】

【0039】
まず、実施例1〜3及び比較例1〜3によって得られた6種類のホースを試料として、キンク半径の測定を行った。キンク半径の測定は、図3に示すように、ホース1について、円形状を保ちながら円の半径を縮めていき、ホース1がキンク(坐屈)した直前のホース曲げ半径rを測定した。
【0040】
本発明によるホース1は、図1に示すように、シャワーホース用途として、補強層2としての金属製蛇腹管の内部に挿入され、補強層付ホース3として使用されることも想定している。そのため、キンク半径測定後に、補強層2としてのステンレス製蛇腹管にホース1を挿入して補強層付ホース3とし、この補強層付ホース3をR=30mmに曲げた後、ホース1を取り出して、ホース1へのキンク発生の有無を確認した。ホース1にキンクが発生しないものを○、ホース1にキンクが発生したものを×とした。
【0041】
ホース1のキンク半径が小さいと、組立て加工のときや使用中の曲げによって、ホース1がキンクしてしまい、流量の低下し、更にはキンク部分におけるホース1が劣化や破損してしまうことが考えられる。そのため、キンク半径は小さい方が好ましい。実施例1〜3のホース1は十分にキンク半径が小さく、キンクの発生し難いものであることが確認された。同時に実施した、補強層2への挿入状態でのキンク確認においては、実施例1〜3についてはキンクが発生しなかったものの、比較例1についてホース1にキンクが発生したことが確認された。
【0042】
次に、実施例1〜3及び比較例1〜3によって得られた6種類のホース1を試料として、R=75mmに曲げるときに必要な力(曲げ剛性力)の測定を行った。曲げ剛性力の測定は、図4に示すように、R=75mmになるまでホース1をU字形に曲げ、そのときに必要な力Fを測定した。
【0043】
ホース1の端部に吐出口を有するヘッドが取り付けられ、このヘッド部を手に持って吐出方向や吐出位置を操作する場合、軽微な力でホース1を曲げられることが必要である。そのため、本試験による曲げ剛性力が小さい方が良く、特に、曲げ剛性力が1.2N以下となるような可撓性を有することが好ましい。実施例1〜3及び比較例1によるホース1は、曲げ剛性力が1.2N以下となっており、優れた柔軟性を有していることが確認された。
【0044】
次に、実施例1〜3及び比較例1〜3によって得られた6種類のホース1を試料として、温水クセ付き評価を行った。温水クセ付き評価は、次のようにして行った。まず、図5(A)に示すように、ホース1を補強層2としてのステンレス製蛇腹管(重量:116g/m)に挿入し固定して補強層付ホース3とした後、長さ1000mmとして直径50mmの円筒に巻付け、その形状を維持したまま固定する。次いで、固定した状態で90℃の温水に1分間浸漬し、その後、すぐに20℃の水にて冷却する。この試料を図5(B)に示すようにして吊り下げ、補強層2の自重で補強層付ホース3が直線状に伸びるかどうかを判定した。補強層付ホース3を吊り下げた時に、補強層付ホース3が直線状に伸びて図3中に示すLが直線状態の長さとほぼ同一となったものを○、円周1周分のクセが残ったものを×、クセがつくが、円周1周分未満だったものを△とした。また、評価後に、ホース1を補強層2から取り出し、ホース1へのキンク発生の有無を確認した。ホース1にキンクが発生しないものを○、ホース1にキンクが発生したものを×とした。
【0045】
ホース1の端部に吐出口を有するヘッドが取り付けられ、このヘッド部を手に持って使用するような場合では、使用後に所定の位置にヘッドを収納する必要があるのだが、ホース1にクセが付いている場合、ホース1の動きが制限されてしまうことから、ヘッドの操作性が損なわれてしまう。そのため、冷熱サイクルによってもホース1にクセが付いて形状が保持されることがない方が好ましい。実施例1〜2、比較例2による補強層付ホース3は、温水クセ付き評価の結果、補強層付ホース3が直線状態になり、クセが付き難いものであることが確認された。これに対して、比較例1、3については、円筒に巻きつけた形状がクセとして残り、ヘッドの操作性を損ねてしまう結果となった。また、実施例3については、温水クセ付き評価の結果、補強層付ホース3は直線状にならず、曲線状のクセが残っていたが、ヘッドの操作性を損ねるまでではなかった。
【0046】
また、温水クセ付き評価後のホース1のキンク確認について、比較例1、3によるホース1には、キンクが発生していた。比較例1については、高温雰囲気下におけるホース引張破断強度が1.1MPaと、全層が架橋されているホース1のなかで最も低い強度であった。このことから、高温雰囲気下におけるホース引張強度は、好ましくは1.2MPa、更に好ましくは1.5MPa以上必要と考えられる。比較例3については、室温でのキンク試験は良好だったのだが、高温状態でのキンク性が劣ることになってしまった。高温化でのホース引張強度は、4.8MPaと高い数値を示しているが、ホース1の外側層1bを構成する材料が架橋されていないために、高温状態において、十分なホース断面形状保持性能を有していないためであると考えられる。
【0047】
尚、比較例2については、押出成形に当たって成形品の寸法を安定させるために、マンドレルの上に被覆し、架橋を行った後にマンドレルを引き抜くという工法を必要としたため、非常に生産性が劣るものであった。
【0048】
次に、実施例1〜3及び比較例1〜3によって得られた6種類のホース1を試料として、ホース破壊圧力の試験を行った。実施例1〜3何れの試料においても、端部が吐出口となるようなホース1に必要十分な破壊圧力を有していることが確認された。比較例1,2についてはやや低い値となっており、補強層2を形成しないで使用する場合には、ホース1の耐圧性能について不安が残るものであった。
【0049】
また、上記試験と併せて、上記実施例1〜3によって得られた3種類のホース1について、耐塩素性についての評価試験を行った。試験は、両端に接続継手を取り付けた各試料内に、次亜塩素酸ソーダで塩素濃度を3ppmに調整した80℃の温水を循環させ、1000時間移送後のホースの内面状態を目視により観察した。実施例1〜3の試料に関しては、何の変化も認められず、十分な耐塩素性を有していることが認められた。
【0050】
このように、本発明の実施の形態に対応した実施例1〜3によるホース1は、キンクし難く曲げ剛性力も小さいことから柔軟性に優れ、ホース破断強度とホース破壊圧力が高い値であることから強度に優れ、十分な耐塩素性を有すことから耐久性に優れ、更に生産性にも優れていることが示された。特に実施例1,2については、非常にクセが付き難いと効果も確認することができた。よって、これら実施例は、種々の特性において優れたものであり、実用上十分に機能するものであることが実証された。
【0051】
また、図1に示すように、上記によって得られた実施例1〜3のホース1を、ステンレス帯を蛇腹状に成形し可撓性を持たせた構造の補強層2の内側に挿入し、実使用に供した。何れの実施例によるホースも柔軟性に優れていたため、ホースの端部に吐出口を有するヘッドを取り付け、このヘッド部を手に持って吐出方向や吐出位置を操作した場合において、何の支障も生じなかった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によるホースは、優れた柔軟性を備えるとともに、十分な強度と耐久性を備えたものである。従って、例えば、水道用配管や給水・給湯用配管、特に、浴室、洗面台、流し台等の水栓に取り付けられるシャワーホースなどとして好適に使用することができる。このようなシャワーホースは、具体的に示すと、端部に吐出口を有するヘッドが取り付けられ、樹脂や金属帯を蛇腹状に成形し可撓性を持たせた構造の補強管と、その内側に挿入されたホースからなる構成であり、この内側に挿入されたホースとして、本発明のホースが好適に使用することができる。また、本発明によるホースが有する優れた柔軟性を生かして、上記シャワーホースに使用されるホースとしてだけでなく、本発明によるホースの外側に、金属細線を引き揃えたものや、合成繊維を編組または横巻きすることにより形成した補強層を設けたホースや、更に上記補強層の上に保護層を設けた構成の柔軟ホースとして好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施例を示した図であり、補強層にホースを挿入して補強層付ホースとした構成を示す一部切欠斜視図である。
【図2】本発明の実施例を示した図であり、ホースの構成を示す一部切欠斜視図である。
【図3】キンク半径測定の方法を示した概略図である。
【図4】r=75mm曲げ剛性力測定の方法を示した概略図である。
【図5】温水クセ付き評価の方法を示した概略図である。
【符号の説明】
【0054】
1 ホース
1a 内側層
1b 外側層
2 補強層
3 補強層付ホース
r キンク半径
F 曲げ剛性力


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも内側層と、内側層に隣接する外側層とからなるホースにおいて、上記内側層は架橋されたポリオレフィン系樹脂からなり、上記外側層は架橋ゴムからなり、上記ホースの物性として、100℃における引張破断強度が1.5MPa以上で、かつ、R=75mmに曲げるときに必要な力が1.0N以下であることを特徴とするホース。
【請求項2】
少なくとも内側層と、内側層に隣接する外側層とからなるホースにおいて、上記内側層は架橋されたポリオレフィン系樹脂からなり、上記外側層は架橋ゴムからなり、上記外側層の架橋ゴムが、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体を主成分とすることを特徴とするホース。
【請求項3】
請求項2記載のホースにおいて、上記外側層の架橋ゴムは、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体100重量部に対して、少なくとも補強剤として、10〜40重量部のシリカが添加されていることを特徴とするホース。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3記載のホースについて、上記内側層と上記外側層とを、電子線照射によって同時に架橋することを特徴とするホースの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3記載のホースについて、上記内側層と上記外側層とを、共押出成形により成形することを特徴とするホースの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−156357(P2009−156357A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335657(P2007−335657)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000129529)株式会社クラベ (125)
【Fターム(参考)】