説明

ボイラおよび低NOx燃焼方法

【課題】 低O、低NOxおよび低COを実現可能なボイラを提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、予混合ガスバーナ10と、前記予混合ガスバーナ10に近接した水管21,22,23とを備えたボイラであって、前記予混合ガスバーナ10からの予混合ガスが前記水管21,22,23に対して所定角度をなして噴出され、前記予混合ガスの燃焼反応領域へ排ガスを供給する排ガス供給手段41が設けられ、前記予混合ガスバーナ10にて空気比1〜1.3での燃焼が行われることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラおよび低NOx燃焼方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、環境汚染問題は社会的に大きく取り上げられており、ボイラにおいても、有害物質(NOx、CO、煤等)の低減が求められている。ボイラにおける有害物質低減化技術は種々提案されており、その低減化技術の一例として、バーナ下流側の直近に冷物体を設置等する技術が知られている(特許文献1参照)。また、他の従来技術としては、ボイラから排出される排ガスを再循環させてNOxの低減を図る技術が知られている。
【0003】
さらに、近年においては、環境汚染問題に加えて省エネルギ等の要請もあって、より一層の有害物質の低減が求められている。つまり、環境汚染問題の解決と省エネルギ化とを実現するために、より高いレベルでの有害物質低減化技術が求められている。
【0004】
具体的には、省エネルギ化のために、低O、すなわち排気ガス中の残存酸素量低減(例えば、排気ガス中の残存酸素量3%)、低NOx(例えば、20ppm以下)、低CO(例えば、50ppm以下)を実現可能なボイラが求められている。しかしながら、上記従来技術を採用しても、このような環境汚染と省エネルギ化とに対応したボイラを実現することは困難である。
【0005】
【特許文献1】特開平6−159612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決するためになされたものであって、低O、低NOxおよび低COを実現可能なボイラを提供することを課題とする。また、本発明は、低O、低NOxおよび低COを実現可能な低NOx燃焼方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、予混合ガスバーナと、前記予混合ガスバーナに近接した水管とを備えたボイラであって、前記予混合ガスバーナからの予混合ガスが前記水管に対して所定角度をなして噴出され、前記予混合ガスの燃焼反応領域へ排ガスを供給する排ガス供給手段が設けられ、前記予混合ガスバーナにて空気比1〜1.3での燃焼が行われることを特徴としている。
【0008】
また、本発明は、予混合ガスバーナと、前記予混合ガスバーナに近接した水管とを備えたボイラであって、排気ガス中の残存酸素量を3%以下にすると共にNOx値を20ppm以下とすべく、予混合ガスが前記予混合ガスバーナから前記水管に対して所定角度をなして噴出され、前記予混合ガスの燃焼反応領域へ排ガスを供給する排ガス供給手段が設けられ、前記予混合ガスバーナにて所定範囲内の空気比での燃焼が行われることを特徴としている。ここで、所定値範囲内の空気比としては、例えば1〜1.3の範囲内であることが好ましい。また、所定値範囲内の空気比としては、1〜1.2の範囲内であることがより好ましい。
【0009】
また、本発明にかかるボイラにおいては、前記排ガス供給手段にて供給される前記排ガス量が5〜20%である構成が好ましい。
【0010】
また、本発明にかかるボイラにおいては、前記予混合ガスバーナにおける前記予混合ガス噴出方向下流側に、前記予混合ガスバーナからのガス中のCOを酸化するCO酸化手段が設けられている構成が好ましい。
【0011】
また、本発明にかかるボイラにおいては、前記CO酸化手段が、前記水管を用いて構成されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明にかかるボイラにおいては、前記CO酸化手段が、前記水管表面にてガスを保炎するために設けられた突起物であることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、バーナからのガスの温度を制御することにより低NOx化を実現する低NOx燃焼方法であって、冷却体に近接した位置で前記バーナから予混合ガスを供給して、空気比1〜1.3での燃焼を行う燃焼工程と、排ガスを前記予混合ガスの燃焼反応領域へ供給する排ガス供給工程とを備えたことを特徴としている。
【0014】
また、本発明は、バーナからのガスの温度を制御することにより低NOx化を実現する低NOx燃焼方法であって、排気ガス中の残存酸素量を3%以下にすると共にNOx値を20ppm以下とすべく、冷却体に近接した位置で前記バーナから予混合ガスを供給する燃料供給工程と、排ガスを前記予混合ガスの燃焼反応領域へ供給する排ガス供給工程とを備え、前記バーナにて所定範囲内の空気比での燃焼が行われることを特徴としている。ここで、所定値範囲内の空気比としては、例えば1〜1.3の範囲内であることが好ましい。また、所定値範囲内の空気比としては、1〜1.2の範囲内であることがより好ましい。
【0015】
また、本発明にかかる低NOx燃焼方法においては、前記排ガス供給工程において、前記排ガスが5〜20%供給される構成が好ましい。
【0016】
また、本発明にかかる低NOx燃焼方法においては、前記バーナからのガス中のCOを酸化するCO酸化工程が行われる構成が好ましい。より具体的には、前記燃料供給工程後(前記燃焼工程開始後)に、前記CO酸化工程が行われる構成が好ましい。
【0017】
また、本発明にかかる低NOx燃焼方法においては、前記CO酸化工程として、前記冷却体表面にてガスを保炎する構成が好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低O、低NOxおよび低COを実現可能なボイラを得ることができる。また、本発明によれば、低O、低NOxおよび低COを実現可能な低NOx燃焼方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施形態を説明する前に、本明細書において使用する用語について説明する。
【0020】
本明細書において、単に「ガス」と称する場合、ガスとは、燃焼反応中のガスおよび燃焼反応が完了したガスの少なくとも一方を含む概念であり、燃焼ガスと称することもできる。つまり、ガスとは、燃焼反応中のガスおよび燃焼反応が完了したガスの両方を有する場合、燃焼反応中のガスのみを有する場合、あるいは燃焼反応が完了したガスのみを有する場合の、いずれをも含む概念である。以下、特に説明しない場合は同様の概念である。
【0021】
また、排ガスとは、燃焼反応が完了または殆ど完了したガスを意味する。さらに、特に説明しない場合は、ボイラの缶体内を通過して煙突部に達したガスを排ガスという。
【0022】
また、ガス温度は、特に説明しない限り、燃焼反応中のガスの温度を意味し、燃焼温度あるいは燃焼火炎温度と同義である。さらに、ガス温度の抑制とは、ガス(燃焼火炎)温度の最高値を低く抑えることを意味する。なお、通常、燃焼反応は、上述した「燃焼反応が完了したガス」中においても極微量であるが継続しているので、「燃焼反応の完了」とは、燃焼反応の100%完結を意味するものではない。
【0023】
次に、本発明創出の過程について説明する。これまで、予混合燃焼による低NOx化は種々提案されているが、いずれも高空気比予混合燃焼によるものであった。それは、低空気比予混合燃焼を行うと、NOx値が増加することが知られていたからである。このため、当業者間においては、低空気比予混合燃焼における低NOx化については、具体的な実験も殆ど行われていないのが現状である。
本願の発明者らは、上記のような従来の既成概念にとらわれることなく、低O、低NOxおよび低COの目標値、すなわち排気ガス中の残存酸素量0%〜3%の範囲内(低O)で、NOx値(排ガスO0%換算値)1ppm〜20ppm(低NOx)、CO値(読取値)1ppm〜50ppm(低CO)を達成可能な低NOx燃焼技術について鋭意研究を行い、その結果、本願発明を創出するに至ったのである。
【0024】
これについて、以下に説明する。本願の発明者らは、研究の結果、これまで当業者に知られていなかった新たな知見を獲得するに至った。すなわち、新たな知見とは、低空気比予混合燃焼と水管群冷却による低NOx化においては、比較的少ない排ガス循環率であっても排ガス再循環によるNOx低減効果が大きいこと、排ガス循環量を増加しても低O側ではCOの増加が殆どないことである。
【0025】
ここで、その一例として、図4および図5を示す。図4は、排ガス供給量(EGR循環率)の違いによるNOx値(排ガスO0%換算値)の変化(排気ガス中の残存酸素量を横軸にとった場合の変化)を示すグラフであり、図5は、排ガス供給量(EGR循環率)の違いによるCO値(読取値)の変化(排気ガス中の残存酸素量を横軸にとった場合の変化)を示すグラフである。図4において、グラフL41(●)はEGR循環率0%のときのNOx値(排ガスO0%換算値)の変化を示し、グラフL42(◆)はEGR循環率5%のときのNOx値(排ガスO0%換算値)の変化を示し、グラフL43(▲)はEGR循環率10%のときのNOx値(排ガスO0%換算値)の変化を示し、グラフL44(■)はEGR循環率15%のときのNOx値(排ガスO0%換算値)の変化を示している。また、図5において、グラフL51(●)はEGR循環率0%のときのCO値(読取値)の変化を示し、グラフL52(◆)はEGR循環率5%のときのCO値(読取値)の変化を示し、グラフL53(▲)はEGR循環率10%のときのCO値(読取値)の変化を示している。
これらの図4および図5から明らかなように、本願の発明者らは、比較的少ない排ガス循環率であっても排ガス再循環によるNOx低減効果は大きく(図4参照)、排ガス循環量を増加しても低O側でCOの増加は殆どない(図5参照)という新たな知見を得るに至った。例えば、この図4および図5によれば、排ガス循環率が0%の場合に、排気ガス中の残存酸素量3%,NOx値(排ガスO0%換算値)約90ppm,CO値(読取値)約150ppmの値を示しているが(L41,L51参照)、排気ガス中の残存酸素量3%を維持しつつ、排ガス循環率を10%にすることによって、NOx値(排ガスO0%換算値)約18ppm,CO値(読取値)約150ppmの値を示すことが明らかとなった(L43,L53参照)。つまり、低O側ではCOの増加が殆どない状態で、大きなNOx低減効果を得ることができることが明らかとなった。そして、排ガス循環率を15%とすることによって、NOx値(排ガスO0%換算値)を約10ppmとすることができる(L44参照)。
【0026】
また、本願の発明者らは、さらなる低NOx化を求めて、低O側(例えば、排気ガス中の残存酸素量3%程度)で排ガス循環率を15%を超えて高めた実験も行っている(図示省略)。このように排ガス循環率を高めてより低いNOx値を実現しようとすると、どうしてもCOが増加してしまう。そこで、本願の発明者らは、バーナに近接した位置に、CO酸化手段(燃焼促進手段)を設けて、低O、低NOxおよび低COの目標値、すなわち排気ガス中の残存酸素量0%〜3%の範囲内(低O)で、NOx値(排ガスO0%換算値)1ppm〜20ppm(低NOx)、CO値(読取値)1ppm〜50ppm(低CO)を達成可能な低NOx燃焼技術を想到するに至った。
具体的には、バーナに近接した水管にスタッド等の突起物を設けて、水管表面にてガスを保炎することによって、COを酸化すべく構成すれば、低NOx値を維持しつつ、COを低減させることが可能であることに想到した。つまり、低Oにて予混合燃焼に排ガス再循環を加えた構成において、排ガス循環率を高めてより低いNOx値(例えば、排ガスO0%換算値にて10ppm以下)を実現するためには、CO酸化手段(燃焼促進手段)が必須となる。本願の発明者らは、排ガス再循環に加えて、予混合バーナ近傍にこのCO酸化手段を設けることにより、低O、低NOx(極超低NOx)および低COを実現可能であることに想到した。
【0027】
これらの知見に基づき、本願の発明者らは、低空気比予混合燃焼と水管群による燃焼反応中のガス冷却と排ガス再循環とを組み合わせるこという本願発明を生みだした。また、さらなる低NOx化を実現するために(低NOxと低COとを両立するために)、低空気比予混合燃焼と水管群による燃焼反応中のガス冷却と排ガス再循環とに加え、予混合バーナ近傍における燃焼促進(CO酸化)を組み合わせるという本願発明を生み出した。これらの本願発明により、前記目標値をクリアすることが可能である。
本願発明について原理的な考察を加えると、次のようになる。低NOx化は、ガス温度を抑制し、且つガス流速を速くすることが重要である。本来、低空気比予混合燃焼においては、高空気比予混合燃焼と比較して、予混合ガスの体積が少ないために、ガス温度の抑制およびガス流速の増大において劣る。そこで、本願発明においては、予混合ガスに排ガスを混合させることで体積を増加させて、ガス温度抑制およびガス流速増大において、高空気比予混合燃焼と比較して見劣りのないものとした。また、バーナから水管群に流入するガス量は高空気比予混合燃焼の場合と比較して減少させることができ、同じ水管冷却伝熱面積であっても冷却効果が大きくなる。つまり、低空気比予混合燃焼における排ガス混合の効果は、高空気比と同程度の短い反応時間でガス温度(火炎温度)抑制を達成できる。さらに、単に排ガス再循環率を増加させると、ガス温度は抑制されNOxは低減するが、その反面COが増加する。そこで、本願発明においては、NOx値が低減されたガスを、NOx生成温度未満の範囲内で燃焼促進させて(CO酸化手段にて燃焼促進させて)、低NOx(極超低NOx)と低COとを両立させている。
【0028】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0029】
まず、本実施形態の第一態様にかかるボイラは、予混合ガスバーナと、前記予混合ガスバーナに近接した水管(あるいは水管群)とを備えたボイラであって、予混合ガスバーナからの予混合ガスが前記水管に対して所定角度をなして噴出され、予混合ガスの燃焼反応領域へ排ガスを供給する排ガス供給手段が設けられ、前記予混合ガスバーナにて空気比1〜1.3での燃焼が行われるべく構成されている。
【0030】
ここで、「所定角度」とは、予混合ガスの噴出方向と水管(水管群)の軸方向(長手方向)とが垂直である場合に加え、垂直から若干傾いている状態をも含む概念である(以下、特に説明しない場合は同様の概念である。)。例えば、予混合ガスの噴出方向と水管(水管群)の軸方向とが、垂直から30°程度傾いている場合を含んでいる。また、この第一態様においては、予混合ガスの噴出方向と水管(水管群)の軸方向とが、垂直から15°以下の範囲で傾いている構成が好ましい。より好ましくは、予混合ガスバーナから水管(水管群)に対して垂直に、予混合ガスが噴出されることである。
【0031】
このような構成によれば、予混合ガスバーナに近接した水管(水管群)に対して、予混合ガスバーナからガスが噴出されることとなるため、水管(水管群)によってガス温度が抑制されて、低NOx化を図ることができる。
【0032】
また、このような構成によれば、予混合ガスの燃焼反応領域へ排ガスが供給されるので(例えば、予混合ガスバーナから噴出される予混合ガスに排ガスを混入させるので)、ガス温度が抑制され、NOx値を低減することができる。
【0033】
さらに、このような構成によれば、予混合ガスバーナにて空気比1〜1.3での燃焼が行われて、ガスが形成されるため、ボイラから排出される排気ガス中の残存酸素量を3%以下にすることができる。
【0034】
この第一態様にかかるボイラの構成を換言すれば、予混合ガスバーナと、前記予混合ガスバーナに近接した水管とを備えたボイラであって、排気ガス中の残存酸素量を3%以下にすると共にNOx値を20ppm以下とすべく、予混合ガスが前記予混合ガスバーナから前記水管に対して所定角度をなして噴出され、前記予混合ガスの燃焼反応領域へ排ガスを供給する排ガス供給手段が設けられ、前記予混合ガスバーナにて所定範囲内の空気比での燃焼が行われるべく構成されている。ここで、所定値範囲内の空気比としては、例えば1〜1.3の範囲内であることが好ましい。また、所定値範囲内の空気比としては、1〜1.2の範囲内であることがより好ましい。
【0035】
この第一態様にかかるボイラを構成する予混合ガスバーナとしては、例えば、平板状であって、予混合ガス噴出孔が略同一平面状に形成されたバーナが用いられる。その一例としては、波板と平板とを交互に積層して、多数の予混合ガス噴出孔を有すべく構成された予混合ガスバーナがあげられる。ただし、本実施形態にかかる予混合ガスバーナは、この構成に限定されず、好ましくは、予混合ガス噴出孔が略同一平面状に形成されたバーナとするが、どのような構成であってもよい。したがって、例えば、本実施形態にかかる予混合ガスバーナは、予混合ガスを噴出する多数の噴出孔を有するセラミックプレートを用いて構成してもよい。
【0036】
また、この第一態様にかかるボイラは、多数の熱吸収用の水管(伝熱管)を用いて構成された缶体を備え、上記の通り、この缶体を構成する水管(水管群)に近接して、予混合ガスバーナが設けられている。この缶体は、上部管寄せおよび下部管寄せを備えており、この上下の管寄せ間に複数の水管を立脚して配設することによって構成されている。この第一態様にかかるボイラを構成する缶体は、上下の管寄せ間に設けられた多数の水管を、略矩形のガス流動空間内に、所定間隔を隔てて配設された、いわゆる「角型缶体」として構成されている。そして、この角型缶体の一方側面に近接されて、予混合ガスバーナが設けられている。
【0037】
この第一態様にかかるボイラは、以上のように構成されており、近接した水管によるガス温度抑制および排ガス供給によって、より効果的にガス温度を抑制して、低NOx化を図ることができる。また、このボイラは、低空気比燃焼を実現可能であるため、排ガス中の残存酸素量を3%以下に維持することができる。したがって、このように構成されたボイラによれば、環境汚染問題の解決と省エネルギ化とを実現し、より高いレベルでの有害物質低減化を実現することができる。
【0038】
また、上記第一態様にかかるボイラにおいては、前記排ガス供給手段にて供給される前記排ガス量が5〜20%である構成が好ましい。ここでいう「排ガス量」の割合は、必要空気量に対するものであって、上記第一態様にかかるボイラにおいては、供給される排ガス量は、必要空気量に対して5〜20%程度であることが好ましい。このような範囲としているのは、排ガス供給量が5%を下回ると、効果的な低NOx効果(ガス温度の低減効果)を得ることができず、20%を上回ると、良好な燃焼状態を維持することが困難となる(消炎限界速度に達する)からである。
【0039】
次に、本実施形態の第二態様にかかるボイラは、第一態様にかかるボイラの構成に加えて、予混合ガスバーナにおける予混合ガス噴出方向下流側に、予混合ガスバーナからのガス中のCOを酸化するCO酸化手段が設けられている。すなわち、この第二態様にかかるボイラは、燃焼反応を促進するための燃焼反応促進手段が設けられている。
【0040】
このような構成によれば、CO酸化手段(燃焼反応促進手段)を設けることによって、ガス温度の低減によって完全に酸化しきれていないガス中のCOを積極的に酸化することができる。したがって、この第二態様にかかるボイラによれば、NO生成温度に達しない燃焼状態を持続させると共に、未燃物およびCOの酸化燃焼を促進して、低NOx化に加えて、低CO化も実現することができる。
【0041】
次に、本実施形態の第三態様にかかるボイラは、CO酸化手段(燃焼反応促進手段)が、水管を用いて構成されていることを特徴としている。より具体的には、水管自身に何等かの加工を施して燃焼反応促進手段として機能させたり、水管と水管との間に構成された領域(燃焼反応促進領域)を燃焼反応促進手段として機能させたりしている。また、あるいは、水管に特に何等かの加工を施すことなく、水管間隔および水管配置等を適宜調整することによって、水管表面あるいは水管間にてガスを保炎可能な状態に構成してもよい。
【0042】
次に、本実施形態の第四態様にかかるボイラは、CO酸化手段が、水管表面にてガスを保炎するために設けられた突起物であることを特徴としている。
【0043】
このように、燃料供給部近傍に位置する水管に突起物を設ければ、その突起物が保炎箇所となって、安定した燃焼状態が形成可能になると共に、伝熱が促進され、ガス冷却も促進される。この突起物としては、例えば、スタッドピンやフィン等があげられる。このように、燃料供給部の下流側に位置する水管にスタッドピンやフィン等を設ければ、伝熱およびガス冷却が促進される。
【0044】
また、上述した突起物は、バーナに近接してガス温度を抑制する水管群において、各水管の高速流動ガスに接触する冷却面からガス流動方向に直交させて設けることが好ましい。この突起物は、好ましくは、上記の通りスタッド状であって、高速流の流動抵抗が大きくなように投影面積が小さく、かつ冷却面基部で十分な接触面を有し、先端までの高さが約50mm以内の円柱,楕円柱,円錐などの形状とし、先端温度が材料耐熱温度を超えない材質とする。このような突起物を有するボイラによれば、水管の速度零の極薄い境界層に形成される最高ガス(火炎)温度帯を有効に冷却することができ、排出NOx値を大幅に低減することができる。
【0045】
また、本実施形態の第五態様にかかる低NOx燃焼方法は、バーナからのガスの温度を制御することにより低NOx化を実現する低NOx燃焼方法であって、冷却体に近接した位置でバーナから予混合ガスを供給して、空気比1〜1.3での燃焼を行う燃焼工程と、排ガスを前記予混合ガスの燃焼反応領域へ供給する排ガス供給工程とを備えたことを特徴としている。換言すれば、バーナからのガスの温度を制御することにより低NOx化を実現する低NOx燃焼方法であって、排気ガス中の残存酸素量を3%以下にすると共にNOx値を20ppm以下とすべく、冷却体に近接した位置でバーナから予混合ガスを供給する燃料供給工程と、排ガスを予混合ガスの燃焼反応領域へ供給する排ガス供給工程とを備え、バーナにて所定範囲内の空気比での燃焼が行われることを特徴としている。ここで、所定値範囲内の空気比としては、例えば1〜1.3の範囲内であることが好ましい。また、所定値範囲内の空気比としては、1〜1.2の範囲内であることがより好ましい。
【0046】
このような構成によれば、冷却体に近接した位置にて燃焼工程を開始するため、ガス温度を効果的に低減可能となり、低NOx化を図ることができる。また、排ガス供給工程を有することによって、予混合ガスの燃焼反応領域へ排ガスが供給されるので(例えば、予混合ガスバーナから噴出される予混合ガスに排ガスを混入させるので)、ガス温度が抑制され、NOx値を低減することができる。さらに、上述したように、このような構成によれば、低空気比燃焼を実現可能であるため、排ガス中の残存酸素量を3%以下に維持することができる。したがって、このような燃焼方法によれば、環境汚染問題の解決と省エネルギ化とを実現し、より高いレベルでの有害物質低減化を実現することができる。
【0047】
また、上記第五態様にかかる低NOx燃焼方法においては、排ガス供給工程において、排ガスが5〜20%供給される構成が好ましい。ここで供給される排ガスの量は、NOxの低減効果と良好な燃焼状態が維持できるか否かという二点を条件として定められる。そこで、上記第五態様においては、これらの条件に基づき、供給される排ガスの量は、必要空気量に対して5〜20%程度であることが好ましい。このような範囲としているのは、先にも述べた通り、排ガス供給量が5%を下回ると、効果的な低NOx効果(ガス温度の低減効果)を得ることができず、20%を上回ると、良好な燃焼状態を維持することが困難となる(消炎限界速度に達する)からである。この消炎限界速度は、燃料種類によって異なり、本実施態様は、燃料としてプロパン・ブタンを主成分とするLPGとメタンを主成分とする都市ガス(13Aなど)とを採用するため、この燃料種類との関係で上記のような好ましい排ガス供給量が定められる。
【0048】
また、本実施形態の第六態様にかかる低NOx燃焼方法は、バーナからのガス中のCOを酸化するCO酸化工程を行うべく構成されている。より具体的には、燃料供給工程後(燃焼工程開始後)に、CO酸化工程が行われる構成が好ましい。
【0049】
このような構成によれば、CO酸化工程を有するため、ガスの冷却促進(水管による冷却、排ガス供給による冷却)によって完全に酸化しきれていないガス中のCOを積極的に酸化することができる。つまり、このような構成によれば、NO生成温度に達しない燃焼状態を持続させると共に、未燃物およびCOの酸化燃焼を促進して、低NOx化に加えて、低CO化も実現することができる。
【0050】
また、本実施形態の第七態様にかかる低NOx燃焼方法は、CO酸化工程として、冷却体表面にてガスを保炎すべく構成されている。
【0051】
このような構成によれば、冷却体表面におけるガス冷却が行われると共に、ガスを保炎することによるガスの酸化促進(CO酸化促進)が行われるため、低NOx化に加えて、低CO化も実現することができる。
【0052】
以下、本発明にかかるボイラおよび低NOx燃焼方法を適用した実施例について、図面を用いて説明する。
【0053】
図1は、本発明の一実施例を適用した蒸気ボイラの縦断面の説明図である。また、図2は、図1のII−II線に沿う横断面の説明図である。
【0054】
これらの図1および図2に示すように、本実施例にかかるボイラ1は、平面状の予混合ガス噴出面(平板状で、予混合ガス噴出孔が略同一平面状に形成された燃焼面)を有する完全予混合式のバーナ10(本発明の「予混合ガスバーナ」に相当)、多数の熱吸収用の水管(伝熱管)21,22,23(本発明の「冷却体」に相当)を用いて構成された缶体20、バーナ10に対して燃焼用空気を送るために設けられた送風機30、および缶体20内の排ガスをボイラ1外部に排出するために設けられた煙突部40等を用いて構成されている。また、本実施例においては、煙突部40から排出される排ガスを予混合ガスの燃焼反応領域へ供給するために、送風機30に設けられた吸気配管35と煙突部40との間に排ガス供給配管41(本発明の「排ガス供給手段」に相当)が設けられている。
【0055】
本実施例にかかるボイラ1を構成するバーナ10は、予混合ガス噴出孔が略同一平面状に形成された予混合ガス噴出面を有する予混合ガスバーナであって、波板と平板とを交互に積層して構成されている。このような構成に基づき、バーナ10の予混合ガス噴出面(燃焼面)10aには、多数の予混合ガス噴出孔が形成されることとなる。そして、このバーナ10は、後述する缶体20を構成する水管(水管群)に近接して設けられている。なお、詳細な構造等はここでは省略するが、本実施例にかかるバーナ10は、例えば、特許第3221582号公報に記載された「燃焼バーナ」と同様な構成を有している。
【0056】
また、本実施例にかかるボイラ1を構成する缶体20は、上部管寄せ24、下部管寄せ25、およびこれらの上下部管寄せ24,25間に立脚して配設された複数の水管(外側水管21,内側水管22,中央水管23)等を用いて構成されている。この缶体20内においては、外側水管21、内側水管22、および中央水管23が、ガス流動方向(缶体20の長手方向)に配置されており、中央水管群(中央水管23を用いて構成された水管群)を中心として、二列ずつの内側水管群(内側水管22を用いて構成された水管群)および外側水管群(外側水管群21を用いて構成された水管群)が構成されている。また、隣り合う水管同士は、千鳥状に配設されている。
【0057】
さらに、図2に示すように、本実施例にかかる缶体20においては、長手方向の両側部に設けられた外側水管21と、各外側水管21間を連結した連結部26とを用いて、一対の水管壁27が構成されている。缶体20は、この一対の水管壁27と、上下部管寄せ24,25とを用いて、略矩形のガス流動空間29が形成されることとなり、このガス流動空間29内に、所定間隔を隔てて、内側水管22および中央水管23が配設されている。
【0058】
また、本実施例にかかる缶体20を構成する水管21,22,23においては、バーナ10に近接した最前列水管(最前列外側水管21A,最前列内側水管22A,最前列中央水管23A)に、スタッドピン(本発明の「CO酸化手段」「突起物」に相当)が設けられている。
【0059】
ここで、図3は、図2の部分拡大図を示したものである。この図3に示すように、最前列外側水管21Aについては、水管21A表面から缶体20の中心部方向に向けて略垂直にスタッドピン51が設けられている。また、最前列内側水管22Aについては、水管22A表面から四方(ガス流動方向の上流方向および下流方向、ならびに缶体20の中心部方向および外側方向)に向けて略垂直にスタッドピン52〜55が設けられている。より具体的には、最前列内側水管22Aの表面からガス流動方向の上流方向に向けてスタッドピン52が設けられ、最前列内側水管22Aの表面から缶体20の中心部方向に向けてスタッドピン53が設けられ、最前列内側水管22Aの表面からガス流動方向の下流方向に向けてスタッドピン54が設けられ、最前列内側水管22Aの表面から缶体20の外側方向に向けてスタッドピン55が設けられている。さらに、最前列中央水管23Aについては、最前列内側水管23Aの表面からガス流動方向の上流方向に向けてスタッドピン56が設けられ、最前列内側水管23Aの表面から缶体20の外側方向に向けてそれぞれスタッドピン57,59が設けられ、最前列内側水管22Aの表面からガス流動方向の下流方向に向けてスタッドピン58が設けられている。
【0060】
また、本実施例において、各方向に設けられたスタッドピンは、管軸長手方向に二本ずつ設けられている。したがって、各最前列外側水管21Aについては、それぞれ二本のスタッドピン51が設けられ、各最前列内側水管22Aについては、それぞれ八本のスタッドピン(ガス流動方向の上流方向に二本のスタッドピン52、缶体20の中心部方向に向けて二本のスタッドピン53、ガス流動方向の下流方向に二本のスタッドピン54、缶体20の外側方向に向けて二本のスタッドピン55)が設けられ、各最前列中央水管23Aについては、それぞれ八本のスタッドピン(ガス流動方向の上流方向に二本のスタッドピン56、缶体20の外側方向に向けて四本のスタッドピン57,59、ガス流動方向の下流方向に二本のスタッドピン58)が設けられている。
【0061】
なお、本実施例においては、以上のようにスタッドピンが設けられているが、本発明は、このような構成に限定されず、必要に応じて、スタッドピンの数、設ける間隔、設ける位置等、適宜変更可能である。また、エロフィン、セレートフィン、台形ネジ付管(比較的ピッチが長いもの)、コルゲート管等を用いても、スタッドピンを設けた場合と同様の効果を得ることができる。
【0062】
本実施例にかかるボイラ1を構成する送風機30は、バーナ10に対して燃焼用空気を送るために設けられたものである。送風機30には、燃焼用空気の吸気口34を備えた吸気配管35が設けられている。また、この送風機30とバーナ10とは、空気供給経路部31を用いて接続されている。つまり、本実施例においては、送風機30を駆動させることによって、吸気口34および吸気配管35から吸気される燃焼用空気が、空気供給経路部31を介してバーナ10へ供給される。
【0063】
この空気供給経路部31中には、ガス燃料供給管32が設けられており、ガス燃料供給管32には、高燃焼時と低燃焼時とで燃料流量を調整する燃料調整弁33が設けられている。なお、この空気供給経路部31には、必要に応じて、燃料と空気との混合性を向上させるために絞り部を設けることも可能である。
【0064】
また、本実施例にかかるボイラ1を構成する煙突部40は、その入口がバーナ10と対向すべく、缶体20の最下流側に設けられている。したがって、本実施例にかかるボイラ1においては、バーナ10にて生成されたガスは、缶体20を構成する水管21,22,23と接触した後(接触して熱交換を行った後)、排ガスとして煙突部40を介してボイラ1外部に排出される。
【0065】
ただし、先にも説明した通り、本実施例にかかるボイラ1には、煙突部40と吸気配管35との間に排ガス供給配管41が設けられている。したがって、缶体20から排出される排ガスの一部は、この排ガス供給配管41および吸気配管35を介して、バーナ10に供給されることとなる。つまり、排ガスは、空気供給経路部31中の予混合ガスと共に、予混合ガスの燃焼反応領域に供給されることとなる。なお、ここでは特に示していないが、必要に応じて、この排ガス供給配管41内には、排ガスの供給量(流量)を調整するために、排ガス供給量調整手段(例えば、ダンパ等)を設けてもよい。供給される排ガス量は、ガス温度の低減に寄与することと、良好な燃焼状態を維持することとを条件として、必要空気量に対して5〜20%程度であることが好ましい。
【0066】
なお、供給される排ガス温度が100℃〜120℃程度の場合には、排ガス中の水分が霧状に結露したものが吸引されて、バーナ10までの配管系に付着し、腐食等が発生する可能性がある。したがって、本実施例においては、排ガス温度検知手段を設け、その排ガス中の水分量(排ガス温度)に応じて、適宜、排ガスの供給状態を制御することが好ましい。具体的には、冷態起動時には排ガスの供給量を「零」として、燃焼状態がある程度継続されてから(排ガス温度が上昇してから)排ガスをバーナ10に供給するように構成することが好ましい。また、供給される排ガス温度が200℃〜350℃程度と比較的高温である場合には、水分による影響はないが、吸気口34から吸引される燃焼用空気との混合温度が急激に上昇し、O濃度変化が起こってガスのCO値が適正範囲を超えて高い値を示すおそれがある。したがって、このような場合にも、排ガス温度検知手段を設け、その排ガス温度に応じて、適宜、排ガスの供給状態を制御することが好ましい。
【0067】
本実施例にかかるボイラ1は、以上のように構成されており、この構成に基づき、そのボイラ1内部では、次のような燃焼状態が形成される。
【0068】
まず、ガス燃料供給管32から供給されたガス燃料と、送風機30から供給された空気および排ガスとが、空気供給経路部31中で混合され、ここで混合された予混合ガス(以下、排ガスを含んだ予混合ガスも単に「予混合ガス」という。)がバーナ10に供給される。ここで、ガス燃料供給管32からは、ボイラ1にて必要とされる燃焼量のガス燃料が供給される。このガス燃料の供給量の調整は、燃料調整弁33によって行われる。送風機30からは、予混合ガスの空気比が1〜1.3程度となるように、空気が供給される。
【0069】
バーナ10の予混合ガス噴出面10aから噴出された予混合ガス等は、着火手段(図示省略)により着火され、バーナ10にて火炎を伴う燃焼反応中のガスFが形成される。予混合ガス等は、バーナ10から、缶体20内の水管21,22,23に対して、略垂直となるように(直交するように)噴出されているため、燃焼反応中のガスFは、缶体20内の水管21,22,23と交差するように接触を繰り返して(水管と熱交換を行った後)、排ガスとなる。そして、この排ガスは、その大部分が缶体20の最下流側に設けられた煙突部40を介してボイラ1外部に排出され、その一部は、排ガス供給配管41を介してバーナ10に供給される。
【0070】
また、本実施例においては、缶体20を構成する最前列水管(最前列外側水管21A,最前列内側水管22A,最前列中央水管23A)に、スタッドピン51〜59が設けられているため、このスタッドピン51〜59近傍で乱流が発生し、火炎Fが保炎される。つまり、このスタッドピン51〜59近傍にてCOの酸化が促進されることとなる。
【0071】
さらに、中央水管群と外側水管群との間に設けられた第一領域61は、本発明にかかるCO酸化手段(燃焼反応促進領域)としても機能する。つまり、第一領域61を設けることによって、ガス中のCOの酸化が促進される。さらに、缶体20の最下流側の第二領域71も、本発明にかかるCO酸化手段(燃焼反応促進領域)として機能し得る。なお、ここでは、特に示していないが、この第一領域61および第二領域71の少なくとも一方には、より燃焼反応を促進するために、CO酸化触媒物質を設けてもよい。
【0072】
各水管21,22,23中の水は、バーナ10から噴出のガスとの熱交換によって加熱されて蒸気化される。この蒸気は、上部管寄せ24に接続された蒸気取出手段(図示省略)を介して、蒸気使用設備(図示省略)に供給される。
【0073】
本実施例にかかるボイラ1は、その内部において以上のような燃焼状態が形成されているため、次のような効果を得ることができる。
【0074】
まず、本実施例においては、燃料および燃焼用空気と共に排ガスがバーナ10に供給され、排ガスを含んだ予混合ガスがバーナ10から噴出されることとなる。このように予混合ガス中に排ガスを混入させると、バーナ10あるいは水管群中を流動する間の燃焼反応によって生成されるガス温度が抑制される。したがって、本実施例にかかる構成によれば、NOx値の低減を図ることができる。
【0075】
また、本実施例においては、バーナ10の近傍に水管21,22,23が設けられているため、バーナ10にて生成されたガスがこの水管21,22,23にて冷却されて、ガス温度がNOx発生限界以下に抑制される。つまり、ガス温度がNOx発生限界以下に抑制されるため、効果的にNOx値の低減を図ることができる。
【0076】
また、本実施例においては、上述したように燃焼反応後あるいは途中に水管を設けて冷却することに加え、ガス通過速度を速くすることで(例えば、10m/s以上に設定することで)、ガスが高温度になることを抑えてNOx生成を抑制している。さらに、本実施例にかかるボイラを構成する水管の配置、ガスと水管群との接触状態、ガスの通過速度は、燃料種類による燃焼反応にも影響される。本実施例は、プロパン・ブタンを主成分とするLPGとメタンを主成分とする都市ガス(13Aなど)に合わせて設計されている。具体的には、これらの燃料を燃焼させた際に、ガス通過速度が10m/s以上となるような水管配列構成が採用されている。
【0077】
以上のように、本実施例にかかるボイラの低NOx化は、ガス温度を抑制し、且つガス流速を速くすることで達成されるが、本来、低空気比においては両方の効果が減少する。そこで、本実施例においては、予混合ガスに排ガスを混合させることで体積増加させて、これらの効果を相殺させている。また、バーナ面から水管群に流入するガス量は高空気比の場合と比較して減少するので、同じ水管冷却伝熱面積であっても冷却効果が大きくなる。つまり、低空気比における排ガス混合の効果は、高空気比と同程度の短い反応時間でガス温度(火炎温度)抑制を達成できることである。したがって、上述した本実施例においては、著しいNOx低減効果を得ることができる。
【0078】
また、本実施例においては、バーナ10の近傍に位置する最前列水管(最前列外側水管21A,最前列内側水管22A,最前列中央水管23A)に、スタッドピン51〜59が設けられているため、このスタッドピン51〜59近傍で乱流が発生し、ガス(火炎F)が保炎される。つまり、このような構成によれば、バーナ10の近傍の水管にてガス温度を抑制すると共に、このスタッドピン51〜59によってガスを保炎し、ガスの酸化を促進することができる。したがって、この実施例によれば、NOx値の低減を図ると共に、ガス中のCOの酸化促進を行い、低NOx化と低CO化とを両立することができる。なお、本実施例においては、このスタッドピン51〜59の他に、第一領域61および第二領域71もCO酸化手段(CO酸化領域)として機能し得る。
【0079】
さらに、本実施例においては、低空気比(空気比=1〜1.3)燃焼を実現可能であるため、排ガス中の残存酸素量を3%以下に維持することができる。したがって、このような燃焼方法によれば、環境汚染問題の解決と省エネルギ化とを実現し、より高いレベルでの有害物質低減化を実現することができる。
【0080】
また、本実施例によれば、以上のような構成および燃焼状態を形成することによって、煙突部40での排気ガス中の残存酸素量を低く抑えた状態で、低NOx化および低CO化を実現可能となる。具体的には、排気ガス中の残存酸素量0%〜3%の範囲内(低O)で、NOx値(排ガスO0%換算値)を1ppm〜20ppm(低NOx)、CO値(読取値)を1ppm〜50ppm(低CO)にすることが可能となる。つまり、本実施例によれば、低O、低NOxおよび低COを実現可能なボイラを得ることができる。
【0081】
このような低O燃焼は、省エネルギになると共に、低風量・低缶体圧損ともなる。したがって、送風機動力の低減および缶体効率の向上にも寄与し、ボイラの小型化(1割程度)を図ることも可能となる。
【0082】
なお、本発明は、上述した実施形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で必要に応じて種々の変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0083】
上記実施例においては、ボイラ1が蒸気ボイラである場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されず、温水ボイラでもよい。
【0084】
また、上記実施形態および実施例においては、本発明にかかる低NOx燃焼方法をボイラに適用する場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。したがって、本発明にかかる低NOx燃焼方法を他の装置、例えば、給湯器、吸収式冷凍機の再生器等の熱機器に適用してもよい。
【0085】
さらに、上記実施例においては、缶体20を構成する水管の内、バーナ10に最も近い位置に設けられた最前列水管(最前列外側水管21A,最前列内側水管22A,最前列中央水管23A)に、スタッドピン51〜59を設ける構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。したがって、例えば、上記実施例のように全ての最前列水管についてスタッドピンを設けるのではなく、いずれか(例えば、最前列内側水管22Aと最前列中央水管23Aと)に対して、スタッドピンを設ける構成としてもよい。さらに、最前列水管のみではなく、そのさらに下流側(ガス流動方向下流側)に位置する水管に対してもスタッドピンを設けるような構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の一実施例を適用した蒸気ボイラの縦断面の説明図である。
【図2】図1のII−II線に沿う横断面の説明図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】本実施形態にかかる排ガス供給量の違いによるNOx値の変化を示すグラフである。
【図5】本実施形態にかかる排ガス供給量の違いによるCO値の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0087】
1…ボイラ
10…バーナ
10a…予混合ガス噴出面
20…缶体
21…外側水管(水管)
21A…最前列外側水管(水管)
22…内側水管(水管)
22A…最前列内側水管(水管)
23…中央水管(水管)
23A…最前列中央水管(水管)
24…上部管寄せ
25…下部管寄せ
26…連結部
27…水管壁
29…ガス流動空間
30…送風機
31…空気供給経路部
32…ガス燃料供給管
33…燃料調整弁
34…吸気口
35…吸気配管
40…煙突部
41…排ガス供給配管
51〜59…スタッドピン
61…第一領域
71…第二領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予混合ガスバーナと、前記予混合ガスバーナに近接した水管とを備えたボイラであって、 前記予混合ガスバーナからの予混合ガスが前記水管に対して所定角度をなして噴出され、
前記予混合ガスの燃焼反応領域へ排ガスを供給する排ガス供給手段が設けられ、
前記予混合ガスバーナにて空気比1〜1.3での燃焼が行われる
ことを特徴とするボイラ。
【請求項2】
前記排ガス供給手段にて供給される前記排ガス量が5〜20%である
請求項1に記載のボイラ。
【請求項3】
前記予混合ガスバーナにおける前記予混合ガス噴出方向下流側に、前記予混合ガスバーナからのガス中のCOを酸化するCO酸化手段が設けられている請求項1または2に記載のボイラ。
【請求項4】
前記CO酸化手段が、前記水管を用いて構成されている請求項3に記載のボイラ。
【請求項5】
前記CO酸化手段が、前記水管表面にてガスを保炎するために設けられた突起物である請求項3または4に記載のボイラ。
【請求項6】
バーナからのガスの温度を制御することにより低NOx化を実現する低NOx燃焼方法であって、
冷却体に近接した位置で前記バーナから予混合ガスを供給して、空気比1〜1.3での燃焼を行う燃焼工程と、
排ガスを前記予混合ガスの燃焼反応領域へ供給する排ガス供給工程と、
を備えたことを特徴とする低NOx燃焼方法。
【請求項7】
前記排ガス供給工程において、前記排ガスが5〜20%供給される
請求項6に記載の低NOx燃焼方法。
【請求項8】
前記バーナからのガス中のCOを酸化するCO酸化工程が行われる
請求項6または7に記載の低NOx燃焼方法。
【請求項9】
前記CO酸化工程として、前記冷却体表面にてガスを保炎する
請求項8に記載の低NOx燃焼方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−292317(P2006−292317A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116333(P2005−116333)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】