説明

ボス型円筒ブラシ及びその製造方法と製造装置

【課題】本発明は、強度・耐久性・精度に優れた、小径・極薄の樹脂単体及び研磨砥粒・静電気除去砥粒を練り込んだ糸材群で溶着・製造したボス型円筒ブラシを提供する。
【解決手段】樹脂単体及び研磨砥粒・静電気除去砥粒を練り込んだ糸材群でディスク型ボス付ブラシ単体を製造、その工程と連動して積層・挿通孔内溶着固定を自動化して進め、品質・精度の向上、製造コストの低減を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は研磨・静電気除去・バリ取り用ボス型円筒ブラシ及び、その製造方法と製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシの汎用的な製造方法としては、1、歯ブラシ等で衆知の植込みブラシ 2、ディスク板に設けた小穴にブラシ素材を挿入し、二つ折りに曲げ、線材で結束するホイールブラシ 3、歯間ブラシ等で衆知のねじりブラシが代表的なものであった。
【0003】
近年、溶着技術が進歩を遂げ工業用ブラシとしては特開2002−300921や歯ブラシとしては特開2000−83736・特開2002−336054等の円筒形状の溶着ブラシの文献がある。
【0004】
特開2002−300921ではブラシ製造にあたり、あらかじめ半径寸法に切断された糸材群を治具内に均等に配置し内側面を溶着固定し、円筒ブラシを製造するものである。
【0005】
又、特開2000−83736ではブラシ材の一端にエナメル線を巻き付けて加熱融着し略弧状に成形した後に、1枚ないし複数枚を合わせ、接着剤により接着しロール状の回転ブラシを製造するものである。
【0006】
又、特開2002−336054等の回転ブラシの製造方法は、突出保持されたブラシ材の先端面の中央に円錐ピンを差し込んでブラシ材を四方に開き固定、切断、中心部分を溶着するものであった。
【0007】
しかしながら特開2002−300921のブラシにおいては、小径・極薄のブラシ製造が困難でありブラシ材を半径寸法に切断し、均等に配置する等、手作業が必要となる。
【0008】
特開2000−83736では、卓越した技術を要し、大量生産ができないばかりか、精度のバラつきも大きい。又、略弧状に成形した後、1枚ないし複数枚を合わせ、接着剤により接着する構造で、強度に不安がある。
【0009】
特開2000−336054の回転ブラシにおいても、ボスがないため、溶着表面積が少なく、ブラシ引張試験テスト結果(後記載)を見ても分かるように、強度に不安がある。又、ブラシ密度が非常に高く、ブラシ本来の性能にも疑問がある。
【発明者が解決しようとする課題】
【0010】
工業用途として使用する目的から高速回転に十分適応できる強度と耐久力に優れているブラシであり、尚かつ小径・極薄形状の製品の製造。
【0011】
ナイロン樹脂材のように表面が滑らかで吸水性が低く、研磨ペーストの付着率が悪い製品の研磨ブラシとしての用途拡大。
【0012】
送りローラー機能と静電気除去作用を同時に兼ね備えた、円筒ブラシの製造。
【0013】
肉厚誤差±0.01と高精度なディスク型ボス付ブラシの大量生産と価格ダウン。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従来の溶着回転ブラシ(特開2002−336054)単体の引張試験結果は平均3.57ニュートンに対しディスク型ボス付ブラシ(特願2004−52452)単体の引張試験結果は平均14.62ニュートンと高く(下記引張試験結果表参照)ブラシ単体での使用も可能であるが、より一層の強度・耐久力のアップを考え挿通孔内を溶着固定しボス型円筒ブラシ形状とし平均20ニュートン以上の強度を実現した。
ブラシ引張試験テスト結果

テスト条件は 引張速度=約7.5mm/see
最大測定値=20N
1.(※)は20Nでもテストピースがせん断しなかった。
2.単位は全ニュートン(N)で表示
3.植込み歯ブラシの引張試験下限はJIS・ISO両規格から8N以上と定義されている。(参考)
【0015】
糸材群に研磨砥粒材を練り込み、ボス型円筒ブラシを製造することで研磨ペーストなしで高い研磨性能を有するブラシができあがった。
【0016】
従来型の静電気除去ブラシはアクリル繊維表面に銅イオンを塗布したもので、溶着固定は困難であった。そのため、糸材を縫い合わせ、植込み・織込む等平面的な静電気除去ブラシの形状であり、他機能として送りブラシが必要とされた。
【0017】
上記の問題点を糸材群に静電気除去作用のある砥粒材を練り込んだ糸材を使用してボス型円筒ブラシを製造することで送り機能も兼ね備えた静電気除去ブラシとなるばかりか、銅イオンの塗布が剥がれ落ちる心配もなくなりブラシ寿命も向上した。
【0018】
ディスク型ボス付ブラシ単体製造と積層・挿通孔内溶着固定を連動し自動化することで高精度・大量生産・衛生面で進展した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実地形態を図面に基づいて説明する。図1は、ディスク型片ボスブラシ単体、図2は、ディスク型両ボスブラシ単体を表した図である。
【0020】
図3は、ディスク型ボス付ブラシ単体を積層ユニットで積み重ね挿通孔内を溶着固定ユニットで溶着固定したボス型円筒ブラシである。
【0021】
図4は、ボス型円筒ブラシにシャフト材を圧入したシャフト付ボス型円筒ブラシである。
【0022】
図5は、糸上げチャック7で糸材群6をチャッキングし、ベット8上に一定量押し上げる。次に糸材群6の中心部分に位置する超音波溶着ホーン5の挿通孔よりエアーを吹き出し、糸材群6を放射状に開かせ、超音波溶着ホーン5が下降し溶着、ボス成形、挿通孔切断を同時に行いディスク型ボス付ブラシを完成させる。(特願2004−52452 記述)
【0023】
ディスク型ボス付ブラシ製造完了と連動して糸下げ位置7Aまで糸材群6が下降、次に回転テーブル9がブラケット10に取り付けられた回転装置11により一定量回転し、積層シャフト14と同軸上で停止する。
【0024】
積層シャフト14は、積層シリンダー12、積層アーム13の先端部分に取り付けられており、カウンター装置の入力回数だけ上下運動を繰り返し、ディスク型ボス付ブラシを積層する(図6)。
【0025】
積層が完了すると、溶着テーブル15上にある溶着台17に送られ、積層シャフト14、溶着シャフト16同軸上で積層シリンダー12が下降、積層アーム13に押さえつけられた、一定量のディスク型ボス付ブラシ単体が溶着シャフト16に押し込まれ、挿通孔の溶着が行われる。点線部13Aが積層アーム13の下降完了位置を示す。
【0026】
溶着シャフト16中央孔内には、熱電対が挿入されており、その発熱作用によりディスク型ボス付ブラシ挿通孔内を溶解し溶着固定する。温度管理は温度センサーにより自動的に行われ、樹脂成分・砥粒成分により適温が選択される。
【0027】
シャフト付ボス型円筒ブラシの場合は、溶着テーブル15が一定量回転し、ブラシ押え18同軸上で停止(図7)、同軸下方向より溶着シャフト16を掴んだ圧入シリンダー19により圧入される。図3がボス型円筒ブラシ・図4がシャフト付ボス型円筒ブラシ完成図である。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明によれば、ディスク型ボス付ブラシ単体の強度をさらにアップさせることができ、工業ブラシとして高速回転に十分対応できるだけでなく、耐久力にも優れた小径・極薄のブラシを安価に製造できる。
【0029】
又、研磨砥粒材を練り込んだ糸材を使用してボス型円筒ブラシを製造すれば、研磨ペーストが必要なくなり、ナイロン樹脂等研磨ペースト付着率の悪い素材でも、優れた研磨力をもつブラシとなる。
【0030】
静電気除去ブラシとしても、静電気除去作用のある砥粒材を練り込んだ糸材を使用してボス型円筒ブラシを製造すれば、静電気除去だけでなく、送り機能も同時に備えたブラシとなり、コピー機・プリンター・両替機等用途は多い。
【0031】
ワイヤーブラシと比べると、製品に傷をつけることが少なく、ガラス製品・液晶画面等の磨き、バリ取りにも優れている。一枚のディスク型ボス付ブラシの厚みが0.5m/m±0.01と高精度であり、強度も単体で平均14.62ニュートンと優れているため、極少の溝の側面、底面のバリ取りにも活用が考えられる。
【0032】
シャフトは、圧入又は溶着により取り付けられるため、ボス型円筒ブラシ廃棄の際は取り外しも可能でシャフトの再利用、分別ゴミとしてもブラシ単体となるため、環境に配慮したブラシといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ディスク型片ボスブラシ正面・側面図
【図2】ディスク型両ボスブラシ正面・側面図
【図3】ボス型円筒ブラシ斜射図
【図4】シャフト付ボス型円筒ブラシ斜射図
【図5】回転テーブルユニット正面略図
【図6】挿通孔溶着ユニット正面略図
【図7】シャフト圧入ユニット正面略図
【符号の説明】
1、 ディスク型ボス付ブラシ
2、 ボス部
3、 挿通孔
4、 圧入シャフト
5、 超音波溶着ホーン
6、 糸材群
7、 糸上げチャック
7A、 糸下げ位置
8、 ベット
9、 回転テーブル
10、 ブラケット
11、 回転装置
12、 積層シリンダー
13、 積層アーム
13A、 積層アーム下降点
14、 積層シャフト
15、 溶着テーブル
16、 溶着シャフト
17、 溶着台
18、 ブラシ押え
19、 圧入シリンダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸材群が放射方向に開き、その先端部分が長短に分かれ中央部分が超音波等により環状に溶解され、溶解素材により片側又は両側に任意の突起を成形溶着し、溶着部の内周が円形に切断され挿通孔が形成されてなるディスク型ボス付ブラシ単体を多数枚積層し、挿通孔内を溶着固定したボス型円筒ブラシ。
【請求項2】
研磨砥粒材を練り込んだ糸材群で製造した請求項1のディスク型ボス付ブラシ単体とボス型円筒ブラシ。
【請求項3】
静電気除去作用のある砥粒材を練り込んだ糸材群で製造した請求項1のディスク型ボス付ブラシ単体とボス型円筒ブラシ。
【請求項4】
請求項1・2・3のボス型円筒ブラシ挿通孔内にシャフト材を圧入したシャフト付ボス型円筒ブラシ。
【請求項5】
ボス型円筒ブラシの製造方法であって、ディスク型ボス付ブラシ単体製造完了と連動してテーブルが回転し定点で停止。積層アームが上下運動を繰り返し適量のディスク型ボス付ブラシ単体の積層を行い完了と同時に反転し、挿通孔内を溶着固定するボス型円筒ブラシの製造方法。
【請求項6】
ボス型円筒ブラシの製造装置であって、ディスク型ボス付ブラシ単体製造完了と連動する回転テーブルユニットと積層アーム上下・反転ユニットと挿通孔内溶着固定ユニットからなるボス型円筒ブラシの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−21308(P2006−21308A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227340(P2004−227340)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(504217144)株式会社樋口製作所 (9)
【Fターム(参考)】