説明

ボルト・ナット締付装置

【課題】機動性に優れ、使い易く、又、締付トルク表示部が見易いボルト・ナット締付機の提供。
【解決手段】遊星歯車減速装置2に連繋して同芯に位置し互いに逆向きに回転可能な外軸4と内軸3の内、外軸4には側方へ反力受け5を突設し、内軸3には相手ボルト・ナットに係合する係合部6を設けた締付補助ユニット1と、入力手段9との組合せであって、外軸4上に締付トルク測定ユニット7が設けられ、該締付トルク測定ユニット7は、外軸4上に設けた歪みゲージ71と、反力受け5に隠れる様に、外軸4から側方へ突設したケース75に収容された、歪みゲージ71の歪み量を締付トルク量に変換する回路基板72、締付トルク量を表示する表示部73及びバッテリー74とによって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト・ナットに係合する係合部、反力受け及び締付トルク測定ユニットを具えた締付補助ユニットと、該締付補助ユニットに連繋する入力手段との組合せによるボルト・ナット締付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
出願人は以前に、2出力軸を具えた動力締付機の該出力軸に、締付トルク測定ユニットを接続し、該締付トルク測定ユニットの出力側に、反力受け付きのソケットを接続したボルト・ナット締付装置を提案した(特許文献1)。
上記ボルト・ナット締付装置は、入力手段である動力締付機は、既存のものが使用でき、締付トルク測定ユニットにより実締付けトルクを表示させることができた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記締付トルク測定ユニットは、動力締付機の外側出力軸に、該外側出力軸と同芯に接続する筒体上に歪みゲージを設け、該筒体の外側に該歪みゲージの歪み量に対応する締付トルク量に変換する回路基板、締付トルク量を表示する表示部及びバッテリーを配備し、それらを筒体と同芯の筒状ケーシングで覆っている。
筒状ケーシングは、内側の筒体との間に形成される環状空間に、回路基板、表示部及びバッテリーを収容するには、それらに対して余裕のある内径及び長さとせねばならない。又、筒状ケーシングは、締付トルク測定ユニットの構成品を保護する役割をなし、工事現場等、工作物に衝突したり、落としたりする危険の多い作業環境では、筒状ケーシングは高い剛性が要求される。
従って、締付トルク測定ユニットの外径が大きくなり、且つ長さも大きくなって、重量も嵩む。
【0004】
又、締付トルク測定ユニット自体は、減速機構を内蔵しておらず、締付トルクの管理が必要な大型のボルト・ナットの締付けを実施するには、入力手段は、大減速の減速機構具えた、高価な大型の動力締付機が必要となる。
大型の動力締付機に大型の締付トルク測定ユニットを接続して締付機を構成すると、締付機の機動性や使い易さに難点がある。
又、締付トルク測定ユニットのトルク表示部は、筒状ケースの軸方向に沿って数値が並ぶ様に構成されており、動力締付機を操作する作業者からは見難いという問題があった。
【0005】
本発明は、既存の安価な小型の動力締付機や、手動レンチを入力手段として使用でき、遊星歯車装置を含みながら、外径や長さの大型化を抑え、機動性に優れ、使い易く、又、締付トルク表示部が見易いボルト・ナット締付装置を明らかにするものである。
【0006】
【特許文献1】特開2006−21272号
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1は、遊星歯車減速装置(2)に連繋して同芯に位置し互いに逆向きに回転可能な外軸(4)と内軸(3)の内、外軸(4)には側方へ反力受け(5)を突設し、内軸(3)に相手締付部材に係合する係合部(6)を設けた締付補助ユニット(1)と、遊星歯車減速装置(2)に連繋する入力手段(9)との組合せからなるボルト・ナット締付装置であって、
外軸(4)上に締付トルク測定ユニット(7)が設けられ、該締付トルク測定ユニット(7)は、外軸(4)上に設けた歪みゲージ(71)等の歪みセンサー(71a)と、何れもケース(75)に収容された、該歪みセンサー(71a)が検出した外軸(4)の歪み量を締付トルク量に変換する回路基板(72)、締付トルク量を表示する表示部(73)及びバッテリー(74)とによって構成され、ケース(75)は外軸(4)に取り付けられて反力受け(5)と同方向に突出し、ケース(75)は、反力受け(5)の外輪郭に隠れる大きさに形成され、係合部(6)の先端側から見て、反力受け(5)に隠れる位置にある。
【0008】
請求項2は、請求項1のボルト・ナット締付装置において、表示部(73)は、ケース(75)の突出方向に数値が並ぶ様に構成されている。
【0009】
請求項3は、請求項1又は2のボルト・ナット締付装置において、ケース(75)は、外軸(4)の軸心と直交する軸(76)を中心に回転可能に設けられている。
【0010】
請求項4は、請求項1乃至3のボルト・ナット締付装置において、入力手段(9)は、同芯に内出力軸(98)と外出力軸(99)を具えた2出力軸動力締付機(97)であって、締付補助ユニット(1)に設けた入力受部(8)は、締付補助ユニット(1)の外軸(4)と該動力締付機(97)の外出力軸(99)を一体回転可能、且つ着脱可能に連結する第1連結部材(86)と、締付補助ユニット(1)の係合部(6)を回転駆動する系統の入力軸(88)と動力締付機(97)の内出力軸(98)を一体回転可能、且つ着脱可能に連結する第2連結部材(87)を有している。
【0011】
請求項5は、請求項1乃至3のボルト・ナット締付装置において、入力手段(9)は1出力軸の動力締付機(94)であり、締付補助ユニット(1)に設けた入力受部(8)は、締付補助ユニット(1)の係合部(6)を回転駆動する系統の入力軸(88)と動力締付機の出力軸(96)を一体回転可能、且つ着脱可能に連結する連結部材(87)を有している。
【0012】
請求項6は、請求項1乃至3のボルト・ナット締付装置において、入力手段(9)は手動レンチ(91)であり、締付補助ユニット(1)に設けた入力受部(8)は、締付補助ユニット(1)の係合部(6)を回転駆動する系統の入力軸(88)と手動レンチの出力軸(93)を一体回転可能、且つ着脱可能に連結する連結部材(87)を有している。
【0013】
請求項7は、請求項1乃至3のボルト・ナット締付装置において、入力手段(9)は手動レンチ(91)であり、締付補助ユニット(1)に設けた入力受部(8)は、締付補助ユニット(1)の係合部(6)を回転駆動する系統の入力軸(88)と手動レンチの出力軸(93)を一体回転可能、且つ着脱可能に連結する連結部材(87)と、締付補助ユニット(1)に取り付けられ、手動レンチの所望方向の回転は許すが、反対方向の回転は阻止するワンウェイクラッチ(80)を具えている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1のボルト・ナット締付機における締付トルク測定ユニット(7)は、該ユニットの構成品の内、嵩ばむ回路基板(72)、表示部(73)及びバッテリー(74)をケース(75)に収容し、該ケース(75)を外軸(4)上から反力受け(5)と同方向に突設したから、ケース(75)によって部分的には外側への突出長さは大きくなるが、従来の特許文献1の締付トルク測定ユニットの様に、構成品を保護するための外殻となる剛性の高い、大型の筒状ケーシングは不要であり、締付トルク測定ユニット(7)全体として小型、軽量化が図れる。
【0015】
ケース(75)は、外軸(4)の側方へ突出しているから、ケース(75)へ工作物等が当たったときの衝撃に弱い様に思われる。しかし、ケース(75)よりもナット係合部(6)側には剛性の大きい反力受け(5)が位置し、ケース(75)は該反力受け(5)の輪郭に収まる大きさであるから、該反力受け(5)を当てる突出物等がケースを直撃することは防止され、締付トルク測定ユニット(7)の破壊は免れる。
又、締付補助ユニット(1)を床面に倒して置いたとき、反力受け(5)が床面に接地して、ケース(75)は床面から浮いた状態となるから、ケース(75)に締付補助ユニット(1)の荷重が掛かることはなく、この点でもケース(75)は反力受け(5)に保護されることになる。
【0016】
上記の様に、締付補助ユニット(1)が小型、軽量化できるから、入力手段(9)を含むボルト・ナット締付機全体も小型、軽量化できるので、機動性に優れ使い易くなる。
【0017】
請求項2では、表示部(73)は、ケース(75)の突出方向に締付トルク数値を並べて表示するため、作業者が入力手段(9)を操作しながらでも該数値が見易くなる。
【0018】
請求項3では、ケース(75)を外軸(4)の軸心と直交する軸を中心に回転できるから、表示部(73)の数値をより見易い様に、ケースを回転させて傾けることができる。
【0019】
請求項4では、締付補助ユニット(1)に2出力軸を具えた動力締付機(97)で入力できる。
2出力軸動力締付機(97)は、構成上、遊星歯車機構を内蔵して大きなトルクで締付けできるので、締付補助ユニット(1)に内蔵した遊星歯車減速装置(2)の減速増力作用を加えて、大トルクでの締め付けができる。
【0020】
請求項5では、締付補助ユニット(1)に1出力軸の動力締付機(94)で入力できる。1出力軸動力締付機(94)は、トルクは大きくはないが、締付機としては安価であり、軽量で使い易いので一般向きである。
1出力軸動力締付機(94)によるトルクの不足は、締付補助ユニット(1)に内蔵した遊星歯車減速装置(2)の減速増力作用で補うことができる。
【0021】
請求項6では、手動レンチ(91)では大きな出力は出せないが、締付補助ユニット(1)に内蔵した遊星歯車減速装置(2)の減速増力作用で補うことができる。
【0022】
請求項7では、請求項6にはない以下の効果を有す。
締付けの際に、締付補助ユニット(1)には捻り力が作用して、締付補助ユニット(1)は全体的に捻り方向に弾性変形している。前記請求項6の場合、締付け方向へハンドルを回転させてから、ハンドルを反対側へ戻す瞬間に、締付補助ユニット(1)の捻れが弾性復帰して、該弾性復帰分に対応してハンドルが反締付方向に回転する現象が生じる。従って、ハンドルを往復回転操作しても、締付補助ユニット(1)の捻り弾性変形分は、締付けに作用しない問題がある。しかし、請求項7の場合、ワンウェイクラッチ(80)が、締付補助ユニット(1)の捻り弾性復帰によるハンドルの逆回転を防止するから、ハンドルの回転角度を実際の締付け角度に対応させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[第1実施例](図1乃至図4)
ボルト・ナット締付装置は、ボルト・ナットに係合する係合部(6)を具えた締付補助ユニット(1)と、該締付補助ユニット(1)に連繋する入力手段(9)とからなる。
締付補助ユニット(1)は、筒状ケーシング(20)内に配備された2出力軸、1入力軸の遊星歯車減速装置(2)と、該遊星歯車減速装置(2)に連繋されケーシング(20)の前方に同芯に突出した外軸(4)及び内軸(3)と、内軸(3)の先端に突設され相手ボルト又はナット(以下、代表して「ナット」とする)に係合する係合部(6)と、遊星歯車減速装置(2)に入力手段(9)を着脱可能に連繋するための入力受部(8)と、外軸(4)上に取り付けられ締付トルクを表示する締付トルク測定ユニット(7)と、外軸(4)に取り付けられた反力受け(5)とによって構成される。
【0024】
図2に示す如く、遊星歯車減速装置(2)は、入力側の第1遊星歯車機構(21)と出力側の第2遊星歯車機構(22)の組合せからなる。
第1遊星歯車機構(21)は、第1太陽歯車(21a)、第1遊星歯車(21c)、ケーシング(20)内面に形成された第1内歯(21b)、第1遊星歯車(21c)を回転可能に支持する第1遊星歯車支持枠(21d)とからなる。
第2遊星歯車機構(22)も、第2太陽歯車(22a)、第2遊星歯車(22c)、ケーシング(20)内面に形成された第2内歯(22b)、第2遊星歯車(22c)を回転可能に支持する第2遊星歯車支持枠(22d)とからなる。
第1太陽歯車(21a)、第2太陽歯車(22a)及び内軸(3)は同芯に位置し、第1遊星歯車支持枠(21d)と第2太陽歯車(22a)が噛合し、第2遊星歯車支持枠(22d)と内軸(3)が噛合している。
第1太陽歯車(21a)は軸芯に外向きに角軸(21a´)を突設しており、該角軸(21a´)が入力手段(9)を連繋する入力軸(88)となる。
入力軸(88)が時計方向(右ネジナットの締付方向)に回転すると、内軸(3)即ち、ナット係合部(6)も時計方向に回転する。
【0025】
図1に示す如く、内軸(3)は先端に角軸(31)を突設して、該角軸(31)に係合部(6)を着脱可能に取り付けている。係合部(6)は、相手ナットに嵌まる係合穴(62)を有するソケット(61)である。
【0026】
図2、図3に示す如く、外軸(4)は、内軸(3)に回転可能に嵌まる筒体であり、ケーシング(20)側端部に周壁(43)を突設している。該周壁(43)の外周部には、周方向に等間隔に複数の切欠(44)が開設されており、前記ケーシング(20)の端面に突設した複数の凸部(23)を該切欠(44)に嵌合して、外軸(4)とケーシング(20)は一体回転可能に接続される。
外軸(4)の外面中央部には外軸(4)を一周して凹み部(42)が形成され、先端部に角軸部(41)が形成されている。
【0027】
反力受け(5)は剛性の大きな金属厚板を、長さ約25cm程度の厚板片に型切りして形成されている。反力受け(5)は基端側から先端側へ徐々に幅狭となっており、基端側の幅長さは約9cm、先端側の幅長さは約5cmであり、両端は円弧状を呈している。
反力受け(5)の基端側には角孔(51)が開設され、該角孔(51)に前記外軸(4)の角軸部(41)を緊密に嵌合している。従って、反力受け(5)は内、外軸(3)(4)の軸心に対して直交する方向に向いている。
【0028】
締付トルク測定ユニット(7)は、ナット締付時の外軸(4)の歪みを検出する歪みセンサー(71a)と、歪みセンサー(71a)の歪み量を締付トルク量に変換する回路基板(72)と、締付トルク量を表示する表示部(73)と、バッテリー(74)と、歪みセンサー(71a)を除くこれら構成品を収容するケース(75)と、前記外軸(4)に嵌まって取り付けられケース(75)を支持する取付け筒体(70)とによって構成される。
【0029】
取付け筒体(70)は、外軸(4)に該外軸(4)の凹み部(42)を覆う様に嵌合し、外軸(4)の係合部(6)側に装着した抜止めリング(79)と外軸(4)の周壁(43)に挟まって外軸(4)と一体回転可能に取り付けられている。
取付け筒体(70)は前記反力受け(5)の突出方向に隆起した台座(70a)を有し、該台座(70a)にケース(75)を回転可能に取り付けている。
台座(70a)にはケース取付け穴(70b)が前記の内、外軸(3)(4)と直交する方向に開設されている。
【0030】
ケース(75)は上記台座(70a)上から反力受け(5)と同方向に突出している。
ケース(75)は、反力受け(5)の外輪郭に隠れる大きさに直方体に形成され、係合部(6)の先端側から見て、反力受け(5)に隠れる位置にある。
ケース(75)の正面に表示部(73)が見える窓部(75a)が形成され、窓部(75a)の一端側に通電スイッチ(78)が配備されている。
ケース(75)の一端中央には前記ケース取付け穴(70b)に回転可能に嵌まる筒状の軸(76)が突設している。軸(76)には周溝(76a)及び周方向に等間隔に凹部(76c)が形成されている。
抜止めリング(79)上に設けたピン(76b)が上記周溝(76a)に嵌まって軸部(76)の抜け止め、即ち、取付け筒体(70)からのケース(75)の脱落を防止している。
抜止めリング(79)上にバネ付勢して設けたクリックボール(76d)が上記凹部(76c)に嵌まって軸部(76)を軟係止する。
実施例では、ケース(75)がその窓部(75a)を反力受け(5)に対して反対向きの位置を中心に、180°回転可能な様に、軸(76)を1/2周して開設されている。
又、ケース(75)が45°つづ回転可能に、凹部(76c)は軸(75)上に45°毎に5箇所に開設されている。
ケース(75)は、軸(76)を中心に台座(70a)上で回転可能に反力受け(5)に可及的に接近している。
【0031】
図3に示す如く、実施例の歪みセンサー(71a)は、外軸(4)の凹み部(42)に貼り付けられた歪みゲージ(71)である。歪みゲージ(71)はX字状を呈し、外軸(4)の周方向に等間隔に4箇所に貼り付けられる。
歪みゲージ(71)とケース(75)内の回路基板(72)は、上記筒状の軸(76)を通る導電線(図示せず)によって電気的に接続される。
【0032】
回路基板(72)は、ケース(75)の窓部(75a)側に位置し、窓部(75a)と回路基板(72)との間に表示部(73)が配備される。
前記外軸(4)上の4箇所の歪みゲージ(71)は、回路基板(72)上でブリッジ回路(図示せず)を構成し、歪みゲージ(71)が貼り付けられた外軸(4)の4箇所の平均的な歪み量に対応する締付トルク値が表示部(73)に表示される。
【0033】
実施例の表示部(73)はLEDによる4桁表示であり、ケース(75)の長手方向に数値が並ぶ様に構成されている。
【0034】
ケース(75)の背面と回路基板(72)との間にバッテリー(74)が収容される。前記ケース(75)の正面に設けたスイッチ(78)を押すと回路基板(72)に通電がなされ、所定の時間内に回路基板(72)の動作がない場合、回路基板(72)への通電は自動的に遮断され、バッテリーの無駄な消費を防止できる。
【0035】
入力手段(9)は手動レンチ(91)であり、ハンドル(92)のヘッド部(90)にハンドル(92)と直交して角軸状の出力軸(93)を突設している。
出力軸(93)は、ヘッド部(90)に内蔵したラチェット機構(図示せず)によりハンドルの一方向の回転は伝達するが逆方向には空滑り可能である。
【0036】
上記入力手段(9)を着脱可能に接続する締付補助ユニット(1)の入力受部(8)は、図1に示す如く、ケーシング(20)の入力側開口を塞ぐ蓋部(81)と、ワンウェイクラッチ(80)とによって構成される。
蓋部(81)は蓋本体(82)と該蓋本体(82)の中心に軸受スリーブ(83)を介して回転可能に設けた継手(84)とによって構成される。
蓋本体(82)の外周部には、周方向に等間隔に凸部(82a)が形成され、前記ケーシング(20)の端面に開設された切欠(20a)に該凸部(82a)を嵌めて蓋本体(82)をケーシング(20)に取り付けている。
継手(84)は、締付補助ユニット(1)の角軸状入力軸(88)側に該入力軸(88)が嵌合する角穴(84a)が開設され、該角穴(84a)の反対側に角軸(84b)が突設されている。
【0037】
ワンウェイクラッチ(80)は、ボルト(80c)によって蓋部(81)に固定され、軸芯に設けたソケット部材(80d)をラチェット機構(80e)によって、一方向の回転のみ許容する。ラチェット機構(80e)は切替レバー(80a)の操作によってソケット部材(80d)の回転許容方向を切替できる。
ソケット部材(80d)の軸芯には、蓋部(81)の角軸(84b)に嵌合する角穴(80f)と手動レンチ(91)の出力軸(93)に係合する角穴(80b)が開設されている。
ソケット部材(80d)と継手(84)が、締付補助ユニット(1)の係合部(6)を回転駆動する系統の入力軸(88)と手動レンチの出力軸(93)を一体回転可能、且つ着脱可能に連結する連結部材(87)となる。
【0038】
然して、図1に示す様に、ワンウェイクラッチ(80)のソケット部材(80d)及び蓋部(81)の継手(84)を介して、手動レンチ(91)の出力軸(93)を遊星歯車減速装置(2)の入力軸(88)に連繋して、締付装置を構成する。
締付トルク測定ユニット(7)のスイッチ(78)を押して、回路基板(72)に通電する。
ソケット(61)にナットを係合し、反力受け(5)を該ナット近傍の突出物に当てる。
手動レンチ(91)をナット締付け方向に回転させ、次に逆方向に回転させる。この往復動作を繰り返す。手動レンチ(91)の出力軸(93)は、自身のラチェット機構とワンウェイクラッチ(80)によって、ナット締付方向へのみ回転し、締付補助ユニット(1)の入力軸(88)を同じ方向に回転させる。入力軸(88)の回転は、遊星歯車減速装置(2)によって減速、増力されてソケット(61)を回転させ、ナットを締め付ける。
このときの締付反力を、反力受け(5)を介してナット近傍の突出物が受けるので、遊星歯車減速装置(2)のケーシング(20)及び外軸(4)は回転しない。
外軸(4)が締付反力で歪む量を、外軸(4)の周方向に等間隔に配備した4箇所の歪みゲージ(71)が検出し、歪みの平均値が締付トルクとして表示部(5)に表示される。
【0039】
締付トルク測定ユニット(7)は、該ユニットの構成品の内、嵩ばむ回路基板(72)、表示部(73)及びバッテリー(74)をケース(75)に収容し、該ケース(75)を外軸(4)上から反力受け(5)と同方向に突設したから、ケース(75)によって部分的には外側への突出長さは大きくなるが、従来の特許文献1の締付トルク測定ユニットの様に、構成品を保護するための外殻となる剛性の高い、大型の筒状ケーシングは不要であり、締付トルク測定ユニット(7)全体として小型、軽量化が図れる。
【0040】
ケース(75)は、外軸(4)の側方へ突出しているから、反力受け(5)を当てるための突出部や、他の工作物等がケース(75)へ当たったときの衝撃に弱い様に思われる。しかし、ケース(75)は、締付反力を受ける剛性の大きい反力受け(5)に隠れる大きさ及び位置にあるから、工作物等がケースを直撃することは防止され、締付トルク測定ユニット(7)の破壊は免れる。
又、締付補助ユニット(1)を床面に置いたとき、反力受け(5)が床面に接地して、ケース(75)は床面から浮いた状態となるから、ケース(75)に締付補助ユニット(1)の荷重が掛かることはなく、この点でもケース(75)は反力受け(5)に保護されることになる。
【0041】
反力受け(5)を介してナット近傍の突出物からの締付け反力により、4つの歪みゲージ(71)において、歪み量に少しではあるが差が生じる。上記の如く、4箇所に配備した歪みゲージ(47)で歪み量を測定し、測定した歪みの平均値を表示することにより、測定の信頼性が高まる。
【0042】
表示部(73)は、外軸(4)から該外軸(4)の軸芯と直交する方向に突出したケース(75)上に、該ケースの突出方向に沿って数値を表示するから、手動レンチ(91)を回転操作する作業者から、表示部(73)は見易い。
しかも、ケース(75)は軸部(76)を中心に外軸(4)の軸芯と直交する面内で回転可能であるから、作業者のより見易い角度に切替えできる。
【0043】
手動レンチ(91)による入力トルクの不足は、締付補助ユニット(1)に内蔵した遊星歯車減速装置(2)の減速増力作用で補うことができる。
入力受部(8)にワンウェイクラッチ(80)を設けたため、締付けの際に、締付補助ユニット(1)には捻り力が作用して、締付補助ユニット(1)が全体的に捻り方向に弾性変形しても、該弾性復帰分に対応してハンドル(92)が反締付方向に回転する現象は生じない。
【0044】
尚、上記締付補助ユニット(1)の捻り弾性復帰によってハンドルが少し逆回転する不利を承知であれば、蓋部(81)の継手(84)を、締付補助ユニット(1)の入力軸(88)と、手動レンチ(91)の出力軸(93)を連結できる様に設計変更すれば、ワンウェイクラッチ(80)を省略することもできる。
【0045】
[第2実施例](図6、図7)
前記第1実施例に較べて、入力手段(9)及び締付補助ユニット(1)の入力受部(8)が異なる。他の構成は、第1実施例と共通するので説明は省略する。
入力手段(9)は、1出力軸動力締付機(94)であって、出力トルクは大きくはないが、回転駆動軸(95)にビット、ソケット等の出力軸(96)を取り付けて、種々の作業に使用できる、安価で汎用性の高い締付機である。
実施例では、1出力軸動力締付機(94)の出力軸(96)は、先端に角軸(96a)を具えている。
【0046】
締付補助ユニット(1)の入力受部(8)は、ケーシング(20)の入力側開口に嵌まる蓋部(81)であって、蓋部(81)は、蓋本体(82)の軸芯に、軸受スリーブ(83)を介して継手(84)を回転自由に具えている。
継手(84)は、締付補助ユニット(1)の入力軸(88)側に該入力軸(88)が係合する角穴(84a)、他端側に1出力軸動力締付機(94)上の角軸(96a)が係合する角穴(84a)を有している。
上記継手(84)が、締付補助ユニット(1)の係合部(6)を回転駆動する系統の入力軸(88)と動力締付機の出力軸(96)を一体回転可能、且つ着脱可能に連結する第2連結部材(87)となる。
【0047】
実施例2において、締付補助ユニット(1)の効果については、実施例1で述べた通りである。
実施例2では、締付補助ユニット(1)に1出力軸動力締付機(94)で入力できる。
1出力軸動力締付機(94)は、トルクは大きくはないが、締付機としては安価であり、軽量で使い易いので一般向きである。
1出力軸動力締付機(94)による入力トルクの不足は、締付補助ユニット(1)に内蔵した遊星歯車減速装置(2)の減速増力作用で補うことができる。
【0048】
[第3実施例](図8、図9)
前記第1実施例と較べて、入力手段(9)及び締付補助ユニット(1)の入力受部(8)が異なる点である。
第1実施例と共通する構成の説明は省略する。
入力手段(9)は、ナットランナーとも呼ばれる公知の、2出力軸の動力締付機(97)であり、電動モータ(97b)で駆動する。入力手段(9)は遊星歯車による減速、動力機構(97a)を具え、内出力軸(98)と外出力軸(99)を同心に突設している。
【0049】
締付補助ユニット(1)の入力受部(8)は、ケーシング(20)の入力側開口に嵌まる蓋部(81)であって、蓋部(81)は、筒状の蓋本体(82)の軸芯上に、前記入力軸(88)側に継手(84)を設け、反対側に2出力軸動力締付機(97)の外出力軸(99)が係合する角穴(82b)を設けている。
継手(84)は軸受スリーブ(83)を介して蓋本体(82)に回転自由に取り付けられ、入力軸(88)側に該入力軸(88)が係合する角穴(84a)、他端側に2出力軸動力締付機(97)の内出力軸(98)が係合する角穴(84c)が開設されている。
蓋部(81)は、前記ケーシング(20)の切欠(20a)に係合する凸部(82a)が形成されており、蓋本体(82)とケーシング(20)が、2出力軸動力締付機(97)の外出力軸(99)と締付補助ユニット(1)の外軸(4)を一体回転可能、且つ着脱可能に連結する第1連結部材(86)となる。
蓋本体(82)には、角穴(82b)に嵌まった2出力軸動力締付機(97)の外出力軸(99)を固定するためのクランプボルト(85)が設けられている。
又、前記継手(84)が2出力軸動力締付機(97)の内出力軸(98)と締付補助ユニット(1)の係合部(6)を回転駆動する系統の入力軸(88)を一体回転可能且つ着脱可能に連結する第2連結部材(87)となる。
【0050】
実施例3において、締付補助ユニット(1)の効果については、実施例1で述べた通りである。
実施例3では、締付補助ユニット(1)に2出力軸を具えた動力締付機(97)で入力できる。
2出力軸動力締付機(97)は、実施例2の1出力軸動力締付機(94)に較べて大きなトルクで締付けできるので、締付補助ユニット(1)に内蔵した遊星歯車減速装置(2)の減速増力作用を加えて、大トルクでの締め付けができる。
【0051】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0052】
例えば、ナット締付時の外軸(4)の歪み量を検出する歪みセンサー(71a)は、磁歪式歪みセンサー等、締付トルク測定ユニット(7)をそれほど大型化せずに外軸(4)上に配備できるものであれば、センサーの種類は問わない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第1実施例の締付装置の断面図である。
【図2】同上の締付装置の入力受部と入力手段を切り離した断面図である。
【図3】締付補助ユニットの分解斜視図である。
【図4】図1A−A線に沿う断面図である。
【図5】図1B−B線に沿う断面図である。
【図6】第2実施例の締付装置の断面図である。
【図7】同上の締付装置の入力受部と入力手段を切り離した断面図である。
【図8】第3実施例の締付装置の断面図である。
【図9】同上の締付装置の入力受部と入力手段を切り離した断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 締付補助ユニット
2 遊星歯車減速装置
3 内軸
4 外軸
5 反力受け
6 係合部
7 締付トルク測定ユニット
71 歪みゲージ
72 回路基板
73 表示部
74 バッテリー
8 入力受部
80 ワンウェイクラッチ
81 蓋部
86 第1連結部材
87 第2連結部材
9 入力手段
91 手動レンチ
94 1出力軸動力締付機
97 2出力軸動力締付機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊星歯車減速装置(2)に連繋して同芯に位置し互いに逆向きに回転可能な外軸(4)と内軸(3)の内、外軸(4)には側方へ反力受け(5)を突設し、内軸(3)に相手ボルト・ナットに係合する係合部(6)を設けた締付補助ユニット(1)と、遊星歯車減速装置(2)に連繋する入力手段(9)との組合せからなるボルト・ナット締付装置であって、
外軸(4)上に締付トルク測定ユニット(7)が設けられ、該締付トルク測定ユニット(7)は、外軸(4)上に設けた歪みゲージ(71)等の歪みセンサー(71a)と、何れもケース(75)に収容された、該歪みセンサー(71a)が検出した外軸(4)の歪み量を締付トルク量に変換する回路基板(72)、締付トルク量を表示する表示部(73)及びバッテリー(74)とによって構成され、ケース(75)は外軸(4)に取り付けられて反力受け(5)と同方向に突出し、ケース(75)は、反力受け(5)の外輪郭に隠れる大きさに形成され、係合部(6)の先端側から見て、反力受け(5)に隠れる位置にある、ボルト・ナット締付装置。
【請求項2】
表示部(73)は、ケース(75)の突出方向に数値が並ぶ様に構成されている、請求項1に記載のボルト・ナット締付装置。
【請求項3】
ケース(75)は、外軸(4)の軸心と直交する軸(76)を中心に回転可能である、請求項1又は2に記載のボルト・ナット締付装置。
【請求項4】
入力手段(9)は、同芯に内出力軸(98)と外出力軸(99)を具えた2出力軸動力締付機(97)であって、締付補助ユニット(1)に設けた入力受部(8)は、締付補助ユニット(1)の外軸(4)と該動力締付機(97)の外出力軸(99)を一体回転可能、且つ着脱可能に連結する第1連結部材(86)と、締付補助ユニット(1)の係合部(6)を回転駆動する系統の入力軸(88)と動力締付機(97)の内出力軸(98)を一体回転可能、且つ着脱可能に連結する第2連結部材(87)を有している、請求項1乃至3の何れかに記載のボルト・ナット締付装置。
【請求項5】
入力手段(9)は1出力軸の動力締付機(94)であり、締付補助ユニット(1)に設けた入力受部(8)は、締付補助ユニット(1)の係合部(6)を回転駆動する系統の入力軸(88)と動力締付機の出力軸(96)を一体回転可能、且つ着脱可能に連結する連結部材(87)を有している請求項1乃至3の何れかに記載のボルト・ナット締付装置。
【請求項6】
入力手段(9)は手動レンチ(91)であり、締付補助ユニット(1)に設けた入力受部(8)は、締付補助ユニット(1)の係合部(6)を回転駆動する系統の入力軸(88)と手動レンチの出力軸(93)を一体回転可能、且つ着脱可能に連結する連結部材(87)を有している請求項1乃至3の何れかに記載のボルト・ナット締付装置。
【請求項7】
入力手段(9)は手動レンチ(91)であり、締付補助ユニット(1)に設けた入力受部(8)は、締付補助ユニット(1)の係合部(6)を回転駆動する系統の入力軸(88)と手動レンチの出力軸(93)を一体回転可能、且つ着脱可能に連結する連結部材(87)と、締付補助ユニット(1)に取り付けられ、手動レンチの所望方向の回転は許すが、反対方向の回転は阻止するワンウェイクラッチ(80)を具えている請求項1乃至3の何れかに記載のボルト・ナット締付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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