説明

ボルト用クリップ

【課題】廃車時等にハンマーで軽く叩くだけで、ボルトからの取り外しが簡単にできるボルト用クリップを提供する。
【解決手段】クリップベース10にボルト挿入孔14を形成し、ボルト挿入孔14に連続させてクリップベース10上に円筒部13を立設し、その円筒部13の周壁の一部に切欠部15を設けて、その切欠部15内に、クリップベース10上に基端を連結した可撓性のロックアーム16を配置し、ロックアーム16の先端に、ボルト挿入孔14に挿入されたボルト20のネジ溝に係合する係止部16aを設け、更に、クリップベース10上のロックアーム16の近傍、具体的には切欠部15の根元に、ロックアーム16に所定以上の破壊力が加わった際にロックアーム16の破断を容易にするスリット18を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネス等の被取付部材を車体等に固定するクリップに係り、特に、車体等に固定したスタッドボルトのネジ部に嵌挿させるだけで、スタッドボルトに固定することのできるボルト用クリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のボルト用クリップは、ワイヤーハーネスを車体に固定する場合などに広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は従来のこの種のボルト用クリップの一例を示す斜視図、図5はボルトにクリップを係合した状態を示す断面図である。
【0004】
このボルト用クリップ100は、クリップベース10にボルト挿入孔14を形成し、ボルト挿入孔14に連続させてクリップベース10上に円筒部13を立設し、その円筒部13の周壁の一部に切欠部15を設けて、その切欠部15内に、クリップベース10上に基端を連結した可撓性のロックアーム16を配置し、ロックアーム16の先端に、ボルト挿入孔14に挿入されたボルト20のネジ溝に係合する係止部16aを設けたものである。
【0005】
クリップベース10は板状体であり、ワイヤーハーネスWと共にテープTで巻き付けられる横バー部11と、横バー部11の中間に設けた縦バー部12とを有し、縦バー部12の中央に、ボルト挿入孔14や円筒部13が配置されている。
【特許文献1】実開平5−50275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、最近では、例えば車両用部品等のリサイクルの徹底化が要求されるようになってきており、ワイヤーハーネスについても、車体から簡単に取りはずせるようにする必要性が出てきた。
【0007】
この点、上記従来のボルト用クリップ100をワイヤーハーネスWと共にボルト20から取り外そうとする場合、ロックアーム16とボルト20の係止を解除するか、図5に示すように、円筒部13の上端をハンマーHで叩いて、ロックアーム16や円筒部13を破壊した上で、ワイヤーハーネスWと共にクリップ100を取り外すことになるが、前者はドライバー等の先の尖った専用の工具が必要となるので作業が面倒であり、後者は大きな力を加えないと破壊できないため作業負担が大きく、いずれの場合もワイヤーハーネスを車体から簡単に取り外せないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記事情を考慮し、廃車時等にハンマーで軽く叩くだけで、ボルトからの取り外しが簡単にできるボルト用クリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、クリップベースにボルト挿入孔を形成し、該ボルト挿入孔の周壁の一部に可撓性のロックアームを設け、該ロックアームの先端に、前記ボルト挿入孔に挿入されたボルトのネジ溝に係合する係止部を設けたボルト用クリップにおいて、前記クリップベース上の前記ロックアームの近傍に、前記ロックアームに所定以上の破壊力が加わった際に該ロックアームの破断を容易にするスリットを形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載のボルト用クリップであって、前記ボルト挿入孔に連続させて、前記クリップベース上に円筒部を立設し、その円筒部の周壁の一部に切欠部を設けて、その切欠部に、前記クリップベース上に基端を連結した前記ロックアームを配置し、その切欠部の根元に前記スリットを形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2に記載のボルト用クリップであって、前記円筒部の高さを、ボルトとの係合状態において、その上端がボルトの先端よりも上に突出する寸法に設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、ワイヤーハーネス等に固定するクリップベース上に、ロックアームに隣接させてスリットを形成したので、一定以上の外力を加えることにより、ロックアームを容易に破壊することができて、簡単にボルトからクリップを取り外すことができる。従って、廃車時などに、ワイヤーハーネス等を車体から容易に取り外すことができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、ボルト挿入孔に連続させてクリップベース上に円筒部を立設し、その円筒部の周壁の一部に設けた切欠部内に、基端をクリップベース上に連結したロックアームを配置したので、円筒部の中にボルトを収容することになり、ボルトに対する係止を安定確実に行うことができる。また、円筒部の周壁の一部に設けた切欠部の根元に前記スリットを形成しているので、破壊するときには、例えば、切欠部のある位置をめがけてハンマーを叩き付けることにより、ロックアームを簡単に破断させることができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、円筒部の高さをボルトより高くしたので、ハンマーで叩くときに、ボルトを叩くことなく、円筒部の上端だけを叩くことができ、それにより有効にロックアームに破壊力を伝えることができて、ロックアームを簡単に破断させることができる。従って、クリップの取り外しが簡単にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は実施形態のボルト用クリップの一例を示す斜視図、図2はボルトにクリップを係合した状態を示す断面図、図3はロックアームを破壊した状態を示す断面図である。
【0017】
本実施形態のボルト用クリップ1は、クリップベース10にボルト挿入孔14を形成し、ボルト挿入孔14に連続させてクリップベース10上に円筒部13を立設し、その円筒部13の周壁の一部に切欠部15を設けて、その切欠部15内に、クリップベース10上に基端を連結した可撓性のロックアーム16を配置し、ロックアーム16の先端に、ボルト挿入孔14に挿入されたボルト20のネジ溝に係合する係止部16aを設け、更に、クリップベース10上のロックアーム16の近傍、具体的には、切欠部15の根元に、ロックアーム16に所定以上の破壊力が加わった際にロックアーム16の破断を容易にするスリット18を形成したものである。
【0018】
ここで、クリップベース10は板状体であり、ワイヤーハーネスWと共にテープTで巻き付けられる横バー部11と、横バー部11の中間に設けた縦バー部12とを有し、縦バー部12の中央に、ボルト挿入孔14や円筒部13が配置されている。
【0019】
また、円筒部13の高さは、図2に示すように、ボルト20との係合状態において、その上端がボルト20の先端よりも上に突出する寸法に設定されている。
【0020】
次に作用を説明する。
【0021】
このクリップ1を用いてワイヤーハーネスWを車体に固定する場合は、まずワイヤーハーネスWに沿ってクリップベース10の横バー部11を配置し、その状態でワイヤーハーネスWと横バー部11をテープTで巻き付け固定する。次にボルト20のネジ部に、ボルト挿入孔14に連続する円筒部13を嵌挿させる。そうすると、ロックアーム16の可撓性により、係止部16aが適正な位置のネジ溝に嵌まり、クリップ1が係止されて、ワイヤーハーネスWが車体に固定される。この場合、円筒部13の中にボルト20を収容することになるから、ボルト20に対する係止を安定確実に行うことができる。
【0022】
次にクリップ1を解体してワイヤーハーネスWを車体から取り外す場合は、例えば、円筒部13の上端を切欠部15の位置をめがけてハンマーHで叩く。そうすると、クリップベース10上にロックアーム16に隣接させてスリット18を形成してあるので、一定以上の軽い外力を加えるだけで、図3に示すように、ロックアーム16を根元から容易に破壊することができる。従って、ロックアーム16を破断した後は、簡単にボルト20からクリップ1を取り外すことができ、ワイヤーハーネスを車体から取り外すことができる。
【0023】
この場合、円筒部13の高さは、ボルト20の高さよりも大きくしてあるので、ハンマーHで叩くときに、ボルト20を叩くことなく、円筒部13の上端だけを叩くことができる。従って、より有効にロックアーム16に破壊力を伝えることができて、ロックアーム16を簡単に破断させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態のボルト用クリップの一例を示す斜視図である。
【図2】ボルトに前記クリップを係合した状態を示す断面図である。
【図3】解体時にロックアームを破壊した状態を示す断面図である。
【図4】従来のボルト用クリップの一例を示す斜視図である。
【図5】ボルトにクリップを係合した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 クリップ
10 クリップベース
13 円筒部
14 ボルト挿入孔
15 切欠部
16 ロックアーム
16a 係止部
18 スリット
20 ボルト
W ワイヤーハーネス
T テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリップベースにボルト挿入孔を形成し、該ボルト挿入孔の周壁の一部に可撓性のロックアームを設け、該ロックアームの先端に、前記ボルト挿入孔に挿入されたボルトのネジ溝に係合する係止部を設けたボルト用クリップにおいて、
前記クリップベース上の前記ロックアームの近傍に、前記ロックアームに所定以上の破壊力が加わった際に該ロックアームの破断を容易にするスリットを形成したことを特徴とするボルト用クリップ。
【請求項2】
請求項1に記載のボルト用クリップであって、
前記ボルト挿入孔に連続させて、前記クリップベース上に円筒部を立設し、その円筒部の周壁の一部に切欠部を設けて、その切欠部に、前記クリップベース上に基端を連結した前記ロックアームを配置し、その切欠部の根元に前記スリットを形成したことを特徴とするボルト用クリップ。
【請求項3】
請求項2に記載のボルト用クリップであって、
前記円筒部の高さを、ボルトとの係合状態において、その上端がボルトの先端よりも上に突出する寸法に設定したことを特徴とするボルト用クリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−182193(P2007−182193A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2903(P2006−2903)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】