説明

ボロン酸−リン酸錯化に基づく自己ドープ型ポリアニリンナノ粒子分散液

ポリ(アニリンボロン酸)/リン酸ナノ粒子分散液が、フッ化物の存在下におけるボロン酸部分のリン酸との反応性を使用して高収率で生成される。ポリ(アニリンボロン酸)/リン酸分散液を、分光学的、顕微鏡的及び電気化学的技術を使用して特性決定した。11B NMR調査によれば、フッ化物の存在下のリン酸中における陰イオン性四面体ボロネート基の形成は、自己ドープされ、安定化されたPABAナノ粒子分散液の基礎を形成する。透過型電子顕微鏡画像によって、25−50nmの直径のPABAナノ粒子が、これらの条件下で形成されることが示されている。紫外−可視、FT−IR−ATR分光法及びサイクリックボルタンメトリーの結果によって、PABAの導電形態の形成が確認されている。これらの粒子から生成されたフィルムは、ポリマーの自己ドープ形態をもたらす、フッ化物を含むホウ素−リン酸錯体の形成による、中性及び塩基性pH条件下の高められた酸化還元安定性及び電位に依存する伝導性を示している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2008年、11月25日に出願された「ボロン酸−リン酸錯化に基づく自己ドープ型ポリアニリンナノ粒子分散液(SELF−DOPED POLYANILINE NANOPARTICLE DISPERSIONS BASED ON BORONIC ACID−PHOSPHATE COMPLEXATION)」と題する米国特許仮出願第61/117,841号の利益を主張し、その全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、リン酸部分と錯体を形成したボロン酸部分を有する自己ドープ型導電ポリマーを生成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
導電性ポリマーは、半導体又は金属に似た電気的性質及び光学的性質を示すが、同時に、軽量、柔軟、安価であり、合成が容易である。1−3しかし、導電性ポリマーの不十分な加工性及び安定性は、商業用途における導電性ポリマーの使用に対する障害となっている。合成後の加工性における制限は、主鎖の剛直性及びこれらの材料を一般的な溶媒に不溶性にする化学架橋又はイオン架橋などの鎖間相互作用に起因している。これらの問題を克服するために、ポリマーの非導電状態への還元、アルキル置換、対イオン誘導加工性、酵素合成、準安定モノマー−酸化剤混合物の現場(in situ)重合、自己ドーピング及びコロイド分散を含めて、いくつかの合成前及び合成後手法が開発されている。最近、環境への懸念による有機溶媒の使用への制限によって、水性媒体から加工可能である導電性ポリマーの生成が奨励されている。特に、ポリアニリン(PANI)のコロイド分散及び自己ドープ形態は、化学センサー及び生物学的センサー、帯電防止コーティング、防蝕・防錆(corrosion protection)、エレクトロクロミック素子及びエネルギー貯蔵を含む実際用途のための、コーティング、5−7分子レベル加工、8−11リソグラフィー、12、13電気泳動パターン、14及びインクジェット印刷15、16に直接使用することができるので水性媒体中で広く合成されている。PANIコロイド粒子の安定な分散液は、界面活性剤及びポリマー立体安定剤の存在下の化学的方法及び電気化学的方法によって一般的に得られる。17、18重合の間、立体安定剤は、成長しているPANI粒子の表面に吸着し、凝集及びさらなる肉眼で見える沈殿を防ぐ。例えば、PANIは、ポリ(スチレンスルホネート)、ポリ(メチルメタクリレート)及びp−トルエンスルホネートなどの対イオンを使用することによって水及び様々な有機溶媒中に分散させることができることが報告されている。19、20長鎖及び短鎖親水性エチレングリコールセグメントを含むリン酸ドーパントを使用するPANIの安定な水性分散液の調製が報告されている。21−22
【0004】
芳香族ボロン酸は、可逆的エステル形成による高い親和力で、炭水化物、ビタミン、補酵素及びリボ核酸23などのジオール部分を含む化合物、並びにフッ化物24、25と結合することが知られている。これらの相互作用は、フッ化ナトリウム及び過剰なD−フルクトース26の存在下の重合条件下における水溶性PABAの化学合成を促進するために使用されている。この方法で生成される自己ドープ型PABAは、水溶性、良好な伝導性、及びより高い分子量を含めたいくつかの利点を有する。27さらに、フッ化物を含有するPABA中のボロン酸基及びイミンの間の分子間反応は、増強された機械的性質を有する自己ドープ型、自己架橋型PABAをもたらす。脂肪族アルコールとのボロン酸錯化、並びにPABAのモルフォロジー、即ち、内部及び外部ドーパントの交換による様々な形状及び形態を有するナノ構造の調節による自己ドープ型、アルコール溶性PABAの合成が報告されている。28ボラン、ホウ酸及びそのエステルなどのホウ素化合物のリン酸などの陰イオンとの強い相互作用が報告されている。29、30ボラノリン酸化合物におけるホウ素のリンとの結合は、報告によると空気安定性であり、酸及び塩基の両方において加水分解安定性を有する。29
【0005】
亜鉛層の塗布及びクロム酸塩皮膜剤によるすすぎなどの表面処理による鋼基板の防蝕・防錆は一般的な方法である。しかし、クロム酸塩の六価形態は、非常に毒性が強く、発癌作用と関連がある。亜鉛及びクロムの両方とも重金属であるため、環境へのこれらの導入を低減することには強い関心がある。最近、導電性ポリマーが、防蝕剤としての又は保護コーティングにおける有望な候補として研究されている。52電子的導電性ポリマーは、鋼を不動態化し防蝕する、ステンレス鋼表面及び周囲の水性環境の間の遷移電子の伝達体の機能を果たす。導電性ポリマーコーティングによって提供される防蝕の程度は、主としてその構造特性及び電子特性の両方によって決まる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によれば、ポリマーを生成する方法が提供され、該方法は、溶媒の存在下で、任意の順序で、ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩、リン酸部分を有する化合物、フッ化物部分を有する化合物、及び酸化剤を混合するステップを含み得る。
【0007】
別の実施形態によれば、本明細書のいずれかの箇所に記載された方法により生成されるポリマーが提供される。
【0008】
さらなる一実施形態によれば、本明細書のいずれかの箇所に記載されたポリマー及び溶媒を含む分散液が提供される。
【0009】
別の実施形態によれば、水性酸又は脂肪族アルコールの存在下で、任意の順序で、ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩、フッ化物部分を有する化合物及び酸化剤を混合するステップを含む防蝕ポリマーを調製する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
例示的な一実施形態を示す添付図面において、
【図1】(a)0.1Mのリン酸中の10mMの3−APBA、(b)0.1Mのリン酸中の10mMの3−APBA+50mMのNaF及び(c)0.1Mのリン酸中の10mMの3−APBA+50mMのNaF+5mMの過硫酸アンモニウムを使用して調製し、0.1Mのリン酸を使用して精製したポリマー分散液の11B NMRスペクトルを示す図である。
【図2】PABA/リン酸粒子のTEM顕微鏡写真を示した図である。
【図3】PABA/リン酸乾燥粉末(実線)及びフッ化物の存在下で0.5MのHClを使用して化学的に調製されたPABA(破線)のFTIR−ATRスペクトルを示した図である。
【図4】pHの関数としてのPABA/リン酸分散液の紫外−可視スペクトルを示した図である。
【図5】時間の関数としてのpH7.4における(A)リン酸緩衝生理食塩水(NaClを含む)及び(B)リン酸溶液(NaClを含まない)中のPABA/リン酸の紫外−可視スペクトルを示した図である。
【図6】溶液のpHの関数としてのPABA/リン酸コートIDAの100mV/s(A)におけるサイクリックボルタンモグラム及び5mV/s(B)におけるI−V特性を示した図である。1−8の範囲における電解質pH溶液は、0.5Mのリン酸及びリン酸二水素ナトリウムを使用して調製する。
【図7】溶液又はコロイド懸濁液からのPABAの電気泳動堆積のために使用される構成の略図を示した図である。鋼板を、フィルムを堆積する作用電極及び対電極として使用した。電極のサイズは、2.6cm×1.3cmであり、電極間隔は4mmである。
【図8】PABAコートした鋼板の写真を示した図である。300秒間、異なる電位において、メタノール中のPABA溶液(1mg/ml)から電気泳動堆積されたフィルム。
【図9】300秒間、異なる電位においてメタノール溶液(1mg/ml)から鋼板上に電気泳動堆積されたPABAフィルムの電荷を示した図である。
【図10】3%のNaCl中のPABAコート鋼板のTafelプロットを示した図である。(a)ブランク鋼板、並びに300秒間、(b)0.25V(c)0.50V、(d)0.75V及び(e)1.0Vにおけるメタノール中のPABA(1mg/ml)。
【図11】3%のNaCl中のPABAコート鋼板のTafelプロットを示した図である。(a)ブランク鋼板、並びに(b)300秒、(c)900秒及び(d)1800秒間、0.25Vにおいてメタノール中のPABA(1mg/ml)から調製されたフィルム。
【図12】3%のNaCl中のPABAコート鋼板のTafelプロットを示した図である。(a)ブランク鋼板、並びに(b)エタノール(2V)、(c)1−プロパノール(4V)、及び(d)アセトニトリル(0.25V)中の1mg/mlのPABAから調製されたフィルム。
【図13】3%のNaCl中のPABAコート磨き鋼板のTafelプロットを示した図である。(a)ブランク鋼板、並びに900秒間、(b)2V、(c)4V及び(d)8Vにおいて1−プロパノール(1mg/ml)中のPABAから調製されたフィルム。
【図14】3%のNaCl中に20時間浸漬したブランク鋼板(左)及びPABAコート鋼板(右)の写真を示した図である。4Vにおいて900秒間、1プロパノール(1mg/ml)中のPABA溶液から電気泳動堆積されたフィルム。
【図15】3%のNaCl中のPABAコート鋼板のTafelプロットを示した図である。(a)ブランク鋼板、(b)メタノール(1mg/ml)+0.12Mのリン酸中のPABAから調製されたフィルム、(c−e)異なる量のリン酸を含むメタノール(1mg/ml)中のPABAから調製され、真空下で120℃において加熱されたフィルム。(c)0.04M、(d)0.08M及び(e)0.12Mのリン酸。
【図16】3%のNaCl中のPABAコート鋼板の開路電位を示した図である。(a)ブランク鋼板、並びに真空下で120℃において(b)加熱しないで及び(c)加熱して、メタノール(1mg/ml)+0.12Mのリン酸中のPABAから調製されたフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、部分的に、PANI主鎖上の置換基ボロン酸部分及びリン酸の間の錯化を使用するリン酸中の安定なポリ(アニリンボロン酸)(PABA)分散液を合成するための一手法に関する。
【0012】
一実施形態において、ポリマーを生成する方法が提供され、該方法は、任意の順序で、ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩、リン酸部分を有する化合物、フッ化物部分を有する化合物、及び酸化剤を混合するステップを含む。
【0013】
一実施形態において、ボロン酸部分を有するモノマーは、例えば、限定せずに、酸化重合を行い得るモノマーであってよい。一実施形態において、ボロン酸部分を有するモノマーは、例えば、限定せずに、導電性ポリマーを形成し得るモノマーであってよい。一実施形態において、ボロン酸部分を有するモノマーは、例えば、限定せずに、陰イオンである又はリガンドとの錯化によって陰イオン(例えば、sp3型)に変換され得るホウ素を含有するモノマーであってよい。一実施形態において、ボロン酸部分を有するモノマーは、例えば、限定せずに、陰イオンである又はフッ化物部分との錯化によって陰イオン(例えば、sp3型)に変換され得るホウ素を含有するモノマーであってよい。一実施形態において、モノマーは、例えば、限定せずに、芳香族ボロン酸又はその塩であってよい。一実施形態において、モノマーは、例えば、限定せずに、ボロン酸で置換されたアニリン若しくはその塩、ボロン酸で置換されたピロール若しくはその塩、又はボロン酸で置換されたチオフェン若しくはその塩であってよい。一実施形態において、モノマーは、例えば、限定せずに、3−アミノフェニルボロン酸又はその塩であってよい。一実施形態において、モノマーは、例えば、限定せずに、3−アミノフェニルボロン酸塩酸塩であってよい。
【0014】
リン酸部分を有する好適な化合物は、当業者によって理解され、当業者によって決定され得る。一実施形態において、リン酸部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、ホウ素との相互作用に使用可能であるリン酸部分を有する化合物であってよい。一実施形態において、リン酸部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、ボロン酸部分を有するモノマーのホウ素との相互作用に使用可能であるリン酸部分を有する化合物であってよい。一実施形態において、リン酸部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、ボロン酸部分を有するモノマーのホウ素との錯化に使用可能であるリン酸部分を有する化合物であってよい。一実施形態において、リン酸部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、ボロン酸部分を有するモノマーのホウ素と自由に相互作用又は錯化できるリン酸部分を有する酸、塩、オリゴマー、樹脂又はポリマーであってよい。一実施形態において、リン酸部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、生成されたポリマーのポリマー鎖間で架橋を提供し得る。一実施形態において、リン酸部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、リン酸塩であってよい。一実施形態において、リン酸部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ルビジウム、リン酸セシウム又はリン酸アンモニウムであってよい。一実施形態において、リン酸部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、リン酸ナトリウム又はリン酸カリウムであってよい。一実施形態において、リン酸部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、ポリ(ビニルホスホン酸)(PVPA)であってよい。一実施形態において、リン酸部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、リン酸であってよい。
【0015】
フッ化物部分を有する好適な化合物は、当業者によって理解され、当業者によって決定され得る。一実施形態において、フッ化物部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、ボロン酸部分を有するモノマーのホウ素との錯化に使用可能であるフッ化物部分を有する化合物であってよい。一実施形態において、フッ化物部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、フッ化物部分を含有する可溶性塩であってよい。一実施形態において、フッ化物部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、遊離Fを放出し得るフッ化物部分を含有する可溶性塩であってよい。一実施形態において、可溶性塩は、例えば、限定せずに、水溶性塩であってよい。一実施形態において、フッ化物部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、フッ化ナトリウム、フッ化リチウム又はフッ化カリウムであってよい。一実施形態において、フッ化物部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、フッ化ナトリウムであってよい。
【0016】
好適な酸化剤は、当業者によって理解され、当業者によって決定され得る。一実施形態において、酸化剤は、例えば、限定せずに、重合を可能にするのに十分な濃度のポリマーの酸化形態を形成し得る酸化剤であってよい。一実施形態において、酸化剤は、例えば、限定せずに、過硫酸アンモニウム、塩化第二鉄、重クロム酸カリウム、過マンガン酸カリウム又はヨウ素であってよい。一実施形態において、酸化剤は、例えば、限定せずに、過酸化物であってよい。一実施形態において、酸化剤は、例えば、限定せずに、過硫酸アンモニウムであってよい。
【0017】
一実施形態において、例えば、限定せずに、ポリマーを生成する方法は、溶媒の存在下で、任意の順序で、ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩、リン酸部分を有する化合物、フッ化物部分を有する化合物、及び酸化剤を混合するステップを含み得る。
【0018】
好適な溶媒は、当業者によって理解され、当業者によって決定され得る。一実施形態において、溶媒は、例えば、限定せずに、配位性溶媒(即ち、OHを含有する溶媒)であってよい。一実施形態において、溶媒は、例えば、限定せずに、水又は脂肪族アルコールであってよい。一実施形態において、溶媒は、例えば、限定せずに、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール又はオクタノールであってよい。一実施形態において、溶媒は、例えば、限定せずに、水であってよい。
【0019】
一実施形態において、ポリマーを生成する方法が提供され、該方法は、リン酸部分を有する化合物の存在下で、ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩、及びフッ化物部分を有する化合物を混合するステップ、並びに酸化剤を使用して重合するステップを含む。
【0020】
一実施形態において、ポリマーを生成する方法が提供され、該方法は、リン酸部分を有する化合物及び溶媒の存在下でボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩、及びフッ化物部分を有する化合物を混合するステップ、並びに酸化剤を使用して重合するステップを含む。
【0021】
一実施形態において、ポリマーを生成する方法が提供され、該方法は、水性リン酸の存在下でボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩、及びフッ化物部分を有する化合物を混合するステップ、並びに酸化剤を使用して重合するステップを含む。
【0022】
一実施形態において、例えば、限定せずに、上記方法は、ポリマーを単離するステップ及び/又は精製するステップをさらに含み得る。好適な単離方法及び/又は精製方法は、当業者によって理解され、当業者によって決定され得る。例えば、限定せずに、当業者は、ポリマーは、遠心分離によって単離及び/又は精製され得ることを理解されよう。例えば、限定せずに、当業者は、ポリマーは、遠心分離及び/又は溶媒中にポリマーを分散させることによって単離及び/又は精製され得ることを理解されよう。一実施形態において、ポリマーは、例えば、限定せずに、陰イオンで単離され得る。一実施形態において、陰イオンは、例えば、限定せずに、ギ酸、酢酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシル硫酸ナトリウム又はドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムに由来し得る。例えば、限定せずに、当業者は、ポリマーは、遠心分離及び/又は溶媒及びリン酸部分を有する化合物中に分散させることによって単離及び/又は精製され得ることを理解されよう。例えば、限定せずに、当業者は、ポリマーは、遠心分離によって単離し、続いて水性リン酸を使用することによって精製され得ることを理解されよう。
【0023】
一実施形態において、例えば、限定せずに、上記方法は、ポリマーを溶媒中に分散させるステップをさらに含み得る。一実施形態において、ポリマーが分散される溶媒は、重合ステップ中に使用されるものと同じ溶媒であってもなくてもよい。一実施形態において、溶媒は、例えば、限定せずに、酸を含み得る。一実施形態において、例えば、限定せずに、上記方法は、溶媒及びリン酸部分を有する化合物中にポリマーを分散させるステップをさらに含み得る。一実施形態において、溶媒は、例えば、限定せずに、配位性溶媒(即ち、OHを含有する溶媒)であってよい。一実施形態において、溶媒は、例えば、限定せずに、水又は脂肪族アルコールであってよい。一実施形態において、溶媒は、例えば、限定せずに、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール又はオクタノールであってよい。一実施形態において、溶媒は、例えば、限定せずに、水であってよい。一実施形態において、例えば、限定せずに、分散液は、溶媒及びリン酸を含み得る。一実施形態において、分散液は、例えば、限定せずに、水性リン酸を含み得る。
【0024】
一実施形態において、本明細書のいずれかの箇所に記載された方法によって生成されたポリマーも提供される。
【0025】
一実施形態において、上記方法によって生成されたポリマーは、例えば、限定せずに、自己ドープ型ポリマーであってよい。一実施形態において、ポリマーは、例えば、限定せずに、導電性ポリマーであってよい。一実施形態において、ポリマーは、例えば、限定せずに、水溶性であってよい。一実施形態において、ポリマーは、例えば、限定せずに、架橋ポリマーであってよい。一実施形態において、ポリマーは、例えば、限定せずに、ポリ(アニリンボロン酸)/リン酸ポリマーであってよい。一実施形態において、ポリマーは、例えば、限定せずに、フッ化物を含有するホウ素−リン酸錯体を有するポリマーであってよい。一実施形態において、ポリマーは、例えば、限定せずに、フッ化物を含有するホウ素−リン酸錯体を有する自己ドープ型導電性ポリマーであってよい。
【0026】
一実施形態において、ポリマーは、例えば、限定せずに、ナノ構造の形態であってよい。一実施形態において、ポリマーは、例えば、限定せずに、ナノ粒子の形態であってよい。一実施形態において、ポリマーは、例えば、限定せずに、球形又は異形を有し得る。一実施形態において、ポリマーは、例えば、限定せずに、異形を有し得る。
【0027】
一実施形態において、ポリマーの粒径は、例えば、限定せずに、約1〜約10nm、約2〜約100nm、約5〜約100nm、約10〜約100nm、約15〜約100nm、約20〜約100nm、約25〜約100nm、約30〜約100nm、約35〜約100nm、約45〜約100nm、約50〜約100nm、約55〜約100nm、約60〜約100nm、約65〜約100nm、約70〜約100nm、約75〜約100nm、約80〜約100nm、約85〜約100nm、約90〜約100nm、約95〜100nm、約20〜約55nm、約25〜約55nm、約30〜約55nm、約35〜約55nm、約40〜約55nm、約45〜約55nm、約50〜約55nm、約25〜約50nm、約30〜50nm、約35〜50nm、約40〜50nm、約45〜50nm、約25〜45nm、約30〜45nm、約35〜45nm、約40〜45nm、約25〜40nm、約30〜40nm、約35〜40nm、約25〜35nm、約30〜約35nm、約25〜約30nmであってよく、任意の特定の範囲又はこれらの範囲内の任意の特定の値を含む。
【0028】
一実施形態において、例えば、限定せずに、ポリマーは、フィルム又はコーティングの形態であってよい。
【0029】
本発明は、部分的に、基板を保護するためのポリ(アニリンボロン酸)ベースのポリマーの防蝕特性にも関する。
【0030】
一実施形態において、任意の順序で、ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩、リン酸部分を有する化合物、フッ化物部分を有する化合物、及び酸化剤を混合するステップを含む防蝕組成物を調製する方法が提供される。
【0031】
一実施形態において、例えば、限定せずに、防蝕組成物を生成する方法は、溶媒の存在下で、任意の順序で、ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩、リン酸部分を有する化合物、フッ化物部分を有する化合物、及び酸化剤を混合するステップを含み得る。
【0032】
一実施形態において、防蝕組成物を生成する方法が提供され、該方法は、リン酸部分を有する化合物の存在下で、ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩、及びフッ化物部分を有する化合物を混合するステップ、並びに酸化剤を使用して重合するステップを含む。
【0033】
一実施形態において、防蝕組成物を生成する方法が提供され、該方法は、リン酸部分を有する化合物及び溶媒の存在下で、ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩、及びフッ化物部分を有する化合物を混合するステップ、並びに酸化剤を使用して重合するステップを含む。
【0034】
一実施形態において、防蝕組成物を生成する方法が提供され、該方法は、水性リン酸の存在下で、ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩、及びフッ化物部分を有する化合物を混合するステップ、並びに酸化剤を使用して重合するステップを含む。
【0035】
一実施形態において、水性酸又は脂肪族アルコールの存在下で、任意の順序で、ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩、及びフッ化物部分を有する化合物及び酸化剤を混合するステップを含む防蝕組成物を調製する方法が提供される。
【0036】
一実施形態において、水性酸又は脂肪族アルコールの存在下で、ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩、及びフッ化物部分を有する化合物を混合するステップ、並びに酸化剤を使用して重合するステップを含む防蝕組成物を調製する方法が提供される。
【0037】
一実施形態において、上記方法は、例えば、限定せずに、防蝕組成物を基板に塗布するステップをさらに含み得る。
【0038】
一実施形態において、任意の順序で、ボロン酸部分を有するモノマー、及びその塩、リン酸部分を有する化合物、フッ化物部分を有する化合物、及び酸化剤を混合するステップを含む防蝕ポリマーを調製する方法が提供される。
【0039】
一実施形態において、例えば、限定せずに、防蝕ポリマーを生成する方法は、溶媒の存在下で、任意の順序で、ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩、リン酸部分を有する化合物、フッ化物部分を有する化合物、及び酸化剤を混合するステップを含み得る。
【0040】
一実施形態において、防蝕ポリマーを生成する方法が提供され、該方法は、リン酸部分を有する化合物の存在下で、ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩、及びフッ化物部分を有する化合物を混合するステップ、並びに酸化剤を使用して重合するステップを含む。
【0041】
一実施形態において、防蝕ポリマーを生成する方法が提供され、該方法は、リン酸部分を有する化合物及び溶媒の存在下で、ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩、及びフッ化物部分を有する化合物を混合するステップ、並びに酸化剤を使用して重合するステップを含む。
【0042】
一実施形態において、防蝕ポリマーを生成する方法が提供され、該方法は、水性リン酸の存在下で、ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩、及びフッ化物部分を有する化合物を混合するステップ、並びに酸化剤を使用して重合するステップを含む。
【0043】
一実施形態において、水性酸又は脂肪族アルコールの存在下で、任意の順序で、ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩、フッ化物部分を有する化合物及び酸化剤を混合するステップ含む防蝕ポリマーを調製する方法が提供される。
【0044】
一実施形態において、水性酸又は脂肪族アルコールの存在下で、ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩、及びフッ化物部分を有する化合物を混合するステップ、並びに酸化剤を使用して重合するステップを含む防蝕ポリマーを調製する方法が提供される。
【0045】
一実施形態において、上記方法は、例えば、限定せずに、防蝕ポリマーを基板に塗布するステップをさらに含み得る。
【0046】
一実施形態において、ボロン酸部分を有するモノマーは、例えば、限定せずに、酸化重合を行い得るモノマーであってよい。一実施形態において、ボロン酸部分を有するモノマーは、例えば、限定せずに、導電性ポリマーを形成し得るモノマーであってよい。一実施形態において、ボロン酸部分を有するモノマーは、例えば、限定せずに、陰イオンである又はリガンドとの錯化によって陰イオン(例えば、sp3型)に変換され得るホウ素を含有するモノマーであってよい。一実施形態において、ボロン酸部分を有するモノマーは、例えば、限定せずに、陰イオンである又はフッ化物部分との錯化によって陰イオン(例えば、sp3型)に変換され得るホウ素を含有するモノマーであってよい。一実施形態において、上記モノマーは、例えば、限定せずに、芳香族ボロン酸又はその塩であってよい。一実施形態において、上記モノマーは、例えば、限定せずに、ボロン酸で置換されたアニリン若しくはその塩、ボロン酸で置換されたピロール若しくはその塩、又はボロン酸で置換されたチオフェン若しくはその塩であってよい。一実施形態において、上記モノマーは、例えば、限定せずに、3−アミノフェニルボロン酸又はその塩であってよい。一実施形態において、上記モノマーは、例えば、限定せずに、3−アミノフェニルボロン酸塩酸塩であってよい。
【0047】
フッ化物部分を有する好適な化合物は、当業者によって理解され、当業者によって決定され得る。一実施形態において、フッ化物部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、ボロン酸部分を有するモノマーのホウ素との錯化に使用可能であるフッ化物部分を有する化合物であってよい。一実施形態において、フッ化物部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、フッ化物部分を含有する可溶性塩であってよい。一実施形態において、フッ化物部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、遊離Fを放出し得るフッ化物部分を含有する可溶性塩であってよい。一実施形態において、可溶性塩は、例えば、限定せずに、水溶性塩であってよい。一実施形態において、フッ化物部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、フッ化ナトリウム、フッ化リチウム又はフッ化カリウムであってよい。一実施形態において、フッ化物部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、フッ化ナトリウムであってよい。
【0048】
好適な酸化剤は、当業者によって理解され、当業者によって決定され得る。一実施形態において、酸化剤は、例えば、限定せずに、重合を可能にするために十分な濃度のポリマーの酸化形態を形成し得る酸化剤であってよい。一実施形態において、酸化剤は、例えば、限定せずに、過硫酸アンモニウム、塩化第二鉄、重クロム酸カリウム、過マンガン酸カリウム又はヨウ素であってよい。一実施形態において、酸化剤は、例えば、限定せずに、過酸化物であってよい。一実施形態において、酸化剤は、例えば、限定せずに、過硫酸アンモニウムであってよい。
【0049】
リン酸部分を有する好適な化合物は、当業者によって理解され、当業者によって決定され得る。一実施形態において、リン酸部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、ホウ素との相互作用に使用可能であるリン酸部分を有する化合物であってよい。一実施形態において、リン酸部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、ボロン酸部分を有するモノマーのホウ素との相互作用に使用可能であるリン酸部分を有する化合物であってよい。一実施形態において、リン酸部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、ボロン酸部分を有するモノマーのホウ素との錯化に使用可能であるリン酸部分を有する化合物であってよい。一実施形態において、リン酸部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、ボロン酸部分を有するモノマーのホウ素と自由に相互作用又は錯化することができるリン酸部分を有する酸、塩、オリゴマー、樹脂又はポリマーであってよい。一実施形態において、リン酸部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、生成された防蝕ポリマーのポリマー鎖の間に架橋を提供し得る。一実施形態において、リン酸部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、リン酸塩であってよい。一実施形態において、リン酸部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ルビジウム、リン酸セシウム又はリン酸アンモニウムであってよい。一実施形態において、リン酸部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、リン酸ナトリウム又はリン酸カリウムであってよい。一実施形態において、リン酸部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、ポリ(ビニルホスホン酸)(PVPA)であってよい。一実施形態において、リン酸部分を有する化合物は、例えば、限定せずに、リン酸であってよい。
【0050】
好適な脂肪族アルコールは、当業者によって理解され、当業者によって決定され得る。一実施形態において、脂肪族アルコールは、例えば、限定せずに、無水アルコールであってよい。一実施形態において、脂肪族アルコールは、例えば、限定せずに、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール又はオクタノールであってよい。
【0051】
一実施形態において、水性酸は、例えば、限定せずに、水性塩酸又はリン酸であってよい。一実施形態において、水性酸は、例えば、限定せずに、水性塩酸であってよい。一実施形態において、水性酸は、例えば、限定せずに、水性リン酸であってよい。
【0052】
一実施形態において、上記方法は、例えば、限定せずに、基板への塗布前に、ポリマーを単離するステップ及び/又は精製するステップをさらに含み得る。一実施形態において、ポリマーは、例えば、限定せずに、遠心分離による沈殿によって単離され得る。一実施形態において、ポリマーは、例えば、限定せずに、HClを用いる遠心分離によって単離され得る。一実施形態において、ポリマーは、例えば、限定せずに、HClを使用して精製して過剰な反応物及び副生成物を除去し得る。一実施形態において、ポリマーは、例えば、限定せずに、リン酸を用いる遠心分離によって単離され得る。一実施形態において、ポリマーは、例えば、限定せずに、リン酸を使用して精製して過剰な反応物及び副生成物を除去し得る。一実施形態において、ポリマーは、例えば、限定せずに、陰イオンを用いて単離し得る。一実施形態において、陰イオンは、例えば、限定せずに、ギ酸、酢酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシル硫酸ナトリウム又はドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムに由来し得る。一実施形態において、上記方法は、例えば、限定せずに、溶媒中にポリマーを分散するステップをさらに含み得る。一実施形態において、ポリマーが分散される溶媒は、重合ステップ中に使用されるものと同じ溶媒であってもなくてもよい。一実施形態において、溶媒は、例えば、限定せずに、酸を含み得る。一実施形態において、溶媒は、例えば、限定せずに、リン酸部分を有する化合物を含み得る。一実施形態において、溶媒は、例えば、限定せずに、水性リン酸を含み得る。一実施形態において、リン酸は、例えば、限定せずに、0.04M、0.08M又は0.12Mのリン酸であってよい。一実施形態において、溶媒は、例えば、限定せずに、配位性溶媒(即ち、OHを含有する溶媒)であってよい。一実施形態において、溶媒は、例えば、限定せずに、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、アセトニトリル、THF又はトルエンであってよい。一実施形態において、溶媒は、例えば、限定せずに、メタノール及びリン酸を含み得る。
【0053】
好適な塗布方法は、当業者によって理解され、当業者によって決定され得る。一実施形態において、防蝕組成物又はポリマーは、例えば、限定せずに、直接塗布、スプレーコーティング又は電着コーティングによって塗布され得る。一実施形態において、防蝕組成物又はポリマーは、例えば、限定せずに、可溶性形態のポリマー又は溶液からのポリマーのナノ粒子の電着コーティングによって塗布され得る。一実施形態において、防蝕組成物又はポリマーは、例えば、限定せずに、可溶性形態のポリ(アニリンボロン酸)(PABA)又は溶液からのポリ(アニリンボロン酸)のナノ粒子の電着コーティングによって塗布され得る。一実施形態において、防蝕組成物又はポリマーは、例えば、限定せずに、ポリマーのナノ構造の分散液を使用する電気泳動堆積によって基板に塗布され得る。一実施形態において、防蝕組成物又はポリマーは、例えば、限定せずに、コーティング又はフィルムの形態で塗布され得る。
【0054】
一実施形態において、上記方法は、例えば、限定せずに、塗布された防蝕組成物又はポリマーを加熱処理するステップをさらに含み得る。一実施形態において、塗布された防蝕組成物又はポリマーは、例えば、限定せずに、120℃の温度で加熱処理され得る。一実施形態において、塗布された防蝕組成物又はポリマーは、例えば、限定せずに、真空下で加熱処理され得る。
【0055】
基板は、特に限定されず、好適な基板は、当業者によって理解され、当業者によって決定され得る。一実施形態において、基板は、例えば、限定せずに、鋼基板であってよい。
【0056】
一実施形態において、本明細書のいずれかの箇所に記載された方法によって生成された防蝕組成物が提供される。一実施形態において、防蝕組成物は、例えば、限定せずに、本明細書のいずれかの箇所に記載されたポリマーを含み得る。一実施形態において、防蝕組成物は、例えば、限定せずに、基板用であってよい。一実施形態において、本明細書のいずれかの箇所に記載された方法によって生成された防蝕組成物で保護された基板が提供される。一実施形態において、基板は、例えば、限定せずに、本明細書のいずれかの箇所に記載された基板であってよい。
【0057】
一実施形態において、本明細書のいずれかの箇所に記載された方法によって生成された防蝕ポリマーが提供される。一実施形態において、防蝕ポリマーは、例えば、限定せずに、基板用であってよい。一実施形態において、本明細書のいずれかの箇所に記載された方法によって生成された防蝕ポリマーで保護された基板が提供される。一実施形態において、基板は、例えば、限定せずに、本明細書のいずれかの箇所に記載された基板であってよい。
【0058】
一実施形態において、防蝕ポリマーは、例えば、限定せずに、本明細書のいずれかの箇所に記載されたフッ化物を含有するホウ素−リン酸錯体を有するポリマーであってよい。一実施形態において、防蝕ポリマーは、例えば、限定せずに、ボロン酸で置換されたポリアニリン、即ち、ポリ(アニリンボロン酸)(PABA)であってよい。
【0059】
一実施形態において、防蝕ポリマーは、例えば、限定せずに、自己ドープ型ポリマーであってよい。一実施形態において、防蝕ポリマーは、例えば、限定せずに、導電性ポリマーであってよい。一実施形態において、防蝕ポリマーは、例えば、限定せずに、水溶性であり得る。一実施形態において、防蝕ポリマーは、例えば、限定せずに、架橋ポリマーであってよい。
【0060】
本発明の様々な代替的な実施形態及び実施例が本明細書に記載されている。これらの実施形態及び実施例は実例となるものであり、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0061】
実施例1 PABA/リン酸分散液
原料。3−アミノフェニルボロン酸塩酸塩(3−APBA)及び過硫酸アンモニウムを、Aldrich Chemical Inc.から購入した。フッ化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸ナトリウム及びリン酸(85%)を、Fisher Scientificから購入した。バルク蒸留水を濾過し、次いで、Milli−Q−Academic A10(Millipore Corporation)を使用してイオン交換して18.2MΩcmの品質の水を得た。インジウムドープ酸化錫コートガラススライド(ITO、6±2Ω/スクエア)をDelta Technologies Ltd.から購入した。金の櫛形アレイ微小電極(IDA)を、North Carolina State UniversityにおけるBiomedical Microsensors Laboratoryから入手した。これらのアレイの各々は、0.069mmの総露出部を有する20μmの空隙幅を有する2.8mm×0.075mmの金電極を含んだ。TEM formvar−炭素被覆銅格子(400メッシュ)を、CANEMCO−MARIVACから購入した。
【0062】
PABA/リン酸分散液の合成。PABA分散液を、5mMの過硫酸アンモニウム(酸化剤)を添加することによって、0.1Mリン酸(20mL)中の10mMの(3−APBA)(モノマー)及び50mMのフッ化ナトリウムを使用して合成した。3−APBAの重合は、フッ化物の不存在下では観察されなかった。モノマーに対する最低1モル当量のフッ化物が、>50%の収率で導電性PABAを得るために必要であった。この混合物を室温で撹拌し、反応を16時間続けた。リン酸中に、PABAを重合条件下で十分に懸濁した。結果的に、PABAを遠心分離によって単離し、次いで、0.1Mリン酸を使用して(過剰な反応物及び副生成物を除去するために)精製した。最後に、ポリマーを、フッ化物を含まない0.1Mリン酸中に再分散した。0.1Mリン酸中に調製されたPABAナノ構造の分散液は、5mg/mLの最高濃度で無限に安定である(2カ月間にわたり沈殿は観察されなかった)。PABA分散液は、最高20mg/mlの濃度で調製することができるが、無限に懸濁した状態に留まることはない。ナノ構造の分散液は、電気化学的及び分光学的特性決定のために金IDA及びITO電極にコートされた。
【0063】
特性決定。PABA分散液のモルフォロジーを、透過電子顕微鏡(TEM、JEOL JEM−2000FX)によって調べた。TEMサンプルを、精製した生成物を希釈し、この分散液を銅格子に流し込むことによって調製した。Agilent 8453分光光度計を使用して、PABA分散液の紫外−可視吸収スペクトルが得られた。減衰全反射(ATR)装備品を備えるネクサス(Nexus)(商標)870分光計(Thermo Nicolet Corporation)を使用して、フーリエ変換赤外(FT−IR)スペクトルが得られた。半球状ゲルマニウム光学結晶及び重水素化硫酸トリグリシン及び熱電気冷却(DTGS TEC)検出器を使用して、乾燥PABA粉末のFTIR−ATRスペクトルを収集した。8cm−1のスペクトル分解能で各FTIR−ATRスペクトルを得るために、32のインターフェログラムを蓄積した。CH Instrument CHI 760 electrochemicalワークステーションを使用して、サイクリックボルタンメトリー及び電位依存性ドレイン電流(I−V特性)測定を実施した。両方の測定のために、Pt線対電極、参照電極としてのAg/AgCl、及び作用電極としての金IDAを含む3つの電極の配置を使用した。電位をマイナス方向からプラス方向に走査した。それらの間に50mVの電位差を維持する2つの隣接するPABAをコートした微小電極(二重定電位電解装置のW1及びW2作用電極端子に接続されている)の電位を循環させることによって、I−V特性が得られた。Bruker AMX 500 NMR分光計を使用して、11B NMR調査を行った。サンプルは、0.1Mリン酸中のモノマー及びポリマー溶液に10%のDOを添加することによって調製した。化学シフトを、参照としての三フッ化ホウ素エーテルに対して決定した。2×10−10mbar(UHV)のベース圧を用いるKratos Axis Ultra分光計を使用して、X線光電子分光法(XPS)分析を行った。単色化Al Kα放射線源(hv=1486.70eV)を使用した。X線電子銃を15kV及び20mAで操作した。マルチチャネル遅延線検知器(DLD)で、光電子の運動エネルギーを分析した。31それぞれ160及び40eVパスエネルギーを使用して、サーベイスペクトル及び高分解能スペクトルを収集した。サンプルの分析された面積は、700×300μmであった。スペクトルは、サンプルの帯電を回避するために実施される電子電荷補償を用いて取得された。結合エネルギー基準は、284.6eVに設定されたPABAのC1sピークを参照した。コアピークは、非線形Shirley型バックグラウンドを使用して分析し、ピーク位置及び面積は、実験データへのモデル曲線(70% Gaussian、30% Lorentzian)の重みつき最小二乗法による当てはめ(weighted least−squares fitting)によって得られた。PABAについてのデータ当てはめの最良事例に基づき、FWHMの最大値を全ての単一の元素に割り当て、これらは、成分の当てはめの間、等しく保たれた。成分のピークの位置は、実験スペクトルに最も良く当てはまるように最適化された。Axis Ultraアナライザー用にKratosによって提供された感度により補正されたピーク面積の比によって、表面の元素組成を求めた。32
【0064】
結果及び考察
フッ化物及びリン酸の存在下の3−APBAの重合は、安定なPABA分散液をもたらす。0.1MのHCl及びフッ化物を使用して2−15nmの粒径からなるPABA分散液を得ることは、報告されているが、わずか1日間しか懸濁された状態に留まらない。28対照的に、リン酸及びフッ化物の存在下で調製されたより大きなサイズのPABA粒子分散液は、無限に安定であり、5mg/mLの濃度で2カ月間にわたり沈殿は観察されなかった。これらの結果は、塩酸に対するリン酸中の分散液の安定性は、リン酸のボロン酸置換基との相互作用に起因することを示唆している。
【0065】
この化学的性質をより詳しく探求するために、分散液から調製されたPABAフィルムに、XPS調査を実施し、水ですすいだ。PABA分散液を、0.1Mのリン酸及びフッ化物中に調製し、次いで精製し、フッ化物を含まない0.1Mのリン酸中に再分散した。PABAフィルム中の中性窒素、プラスに帯電した窒素、B:F及びB:Pの比の百分率が表1に示されている。
【表1】

【0066】
中性窒素は、N1sエンベロープ中の2つの最低の結合エネルギー成分の合計であり、キノイドイミン(−N=、約398.1eV)及びベンゼノイドアミン(−NH−、約399.5eV)に起因する。ポリマーのドーピングレベルは、N1sコアレベルスペクトルをデコンヴォルーションすることによって、ドーパント及びプラスに帯電した窒素(N、>400eV)の量に基づいて定量的に求められ得る。33、34一般的に、HCl、HSOなどで外部からドープされたPANIにおいて、ドーパント及びプラスに帯電した窒素の百分率は、ほぼ同じである。33、34PABAにおいて、フッ化物ドーパントの百分率は、プラスに帯電した窒素とほぼ同じであるが、リン酸の百分率は、過剰である(表1参照)。理論に束縛されることなく、これらの結果は、リン酸及びフッ化物の存在下で調製されたPABAは、ホウ素のリン酸及びフッ化物への錯化を伴うことを示唆していると考えられる。B:P比に基づき、ポリマー中の全てのホウ素は、2つのリン酸基に結合している。しかし、フッ化物は、全ポリマーの約40%と結合している。
【0067】
【化1】

【0068】
PABAの化学構造を、表1に示されたようにリン酸中のモノマー及びポリマー溶液の両方の調査によって11B NMRでさらに研究した。ボロン酸の11B NMR信号の化学シフトは、ホウ素原子の混成状態(三方晶系対四面体)に依存する。リン酸中のモノマーの11B NMRスペクトル(図1a)は、28.8ppmの化学シフトを有する単一共鳴を示しており、ホウ素が主として中性の三方晶形態で存在することを示している(スキーム1、II)。35しかし、フッ化ナトリウムの存在下で(図1b)、共鳴信号は、約25ppm高磁場に観察され、四面体陰イオンボロネートの形成を示している(スキーム1、III)。24、25酸化剤の添加、重合反応の完了、精製及びフッ化物を含まない0.1Mリン酸中の再分散の後に、11B NMRスペクトルを再び行った(図1c)。スペクトルは、ホウ素は、三方晶系ボロン酸及び四面体陰イオンボロネート形態の両方で存在していることを示している(スキーム1、IV)。四面体ボロネートの量は、約35%である。これらの結果は、モノマー溶液において、フッ化物は、四面体ホウ素を安定化し(スキーム1、III)、これは、同様にモノマーの酸化を可能にすることを示唆している。ポリマーが、形成され酸化されると、酸化された主鎖は、ホウ素−リン酸錯化を安定化する。PABAナノ粒子分散液における複数ピークの存在は、それぞれ3.68及び28.40におけるピークによって示される、NMRタイムスケール上で相互転換しないホウ素の四面体及び三方晶形態の両方36、37、並びに19.40ppmの平均ピーク位置36、37をもたらす速い相互転換を経験するホウ素基の特定の部分があることを示唆している。四面体ボロネートの百分率は、XPS調査から得られたプラスに帯電した窒素の百分率と一致しており、PABAは、フッ化物の存在下においてリン酸中で自己ドープされており、おそらくホウ素−リン酸錯体の形成によって自己安定化されていることを示唆している。XPS結果及び11B NMR結果の両方に基づいて、自己ドープ型PABAの構造は、スキーム1のIVに示されているように約40%のn及び60%のmの繰り返し単位から構成されている。PABA/リン酸分散液は、1:0.25〜1:2に酸化剤に対するモノマーの比を変化させることによって調製された。PABA粒子分散液の時間に関する安定性、並びにpHの関数としての酸化還元伝導性は、最適な重合速度における自己ドーピングのより高い程度のために、1:0.5のモノマーの酸化剤に対する比において、より高いことが見出された。
【0069】
図2は、0.1Mのリン酸及びフッ化物中に調製されたPABA分散液のTEM画像を示している。PABA分散液は、精製し、フッ化物を含まない0.1Mのリン酸中に再分散した。0.1Mのリン酸及びフッ化物中に調製されたPABAのモルフォロジーは、0.1MのHCl及びフッ化物中で得られたものといくらか似ている。0.1MのHCl溶液及びフッ化物中において、2〜15nmの範囲の直径を有する球状ナノ粒子が得られる。28しかし、リン酸でドープされ錯化されたPABAは、25−50nmのサイズ範囲の異形粒子を生成する(図2)。リン酸中で調製されたPABAのサイズ及び形状に観察される差異は、ホウ素−リン酸錯化に起因し得る。
【0070】
PABA/リン酸ナノ構造のFTIR−ATRスペクトルは、図3の実線に示されたPANI及びホウ素−リン酸相互作用の特徴的な帯域の全てを示している。PANIに特徴的なIR帯域は、キノイド、ベンゼノイド及び芳香族C−N伸縮環モードに対応する1609、1488、及び1140cm−1において観察される。38B−F伸縮モードの特徴的な帯域は、810、850及び882cm−1において観察される。39しかし、図3の破線に示されたボロン酸中で1340cm−1において一般的に観察される非対称B−O伸縮モードは、PABA/リン酸中に存在しない。リン酸に特徴的な帯域は、920、980、1077、1232、1308cm−1において観察される。391572cm−1における鋭いピークの出現は、B−N供与結合に起因する。40,41しかし、このピークは、リン酸を用いずに化学的に合成されたPABAについて観察されない(図3破線)。27、42したがって、1572cm−1におけるピークの存在及びB−O伸縮モードの不存在は、ホウ素−リン酸などの他の相互作用が、スキーム1のIVに示されたこのピークに寄与しているらしいことをさらに支持している。
【0071】
上記分光結果は、ホウ素−リン酸相互作用及び自己ドープ型PABAの形成を確認している。リン酸の役割をさらに探求するために、pHの関数としてのPABAの光学的、電気化学的及び現場伝導性特性が研究されている。図4は、pHの関数としてのPABA分散液の紫外−可視スペクトルを示している。0.1Mのリン酸中に分散されたPABAは、1のpHをもたらし、分散液のpHは、次いで、1MのNaOHで滴定することによって増加した。π−π*に割り当てられた特徴的な吸収帯域の約320及び800nm、並びにバイポーラロンバンド遷移は、それぞれ、最大pH7まで観察される。43、44PABA分散液中のこれらの帯域の存在は、ポリマーは、最大pH7まで導電エメラルジン塩の状態にあることを示している。pH値8及び9において、バイポーラロンバンドは、700−800nmに留まるが、広がってかすかな青色シフトを示す。11のpH値において、620nmにおける幅広いピークの存在は、ポリマーのPABAからエメラルジン塩基形態への完全な脱ドーピングを示唆している。PABA分散液は、安定で、最大pH9まで緑色に留まった。pH9を上回って、ナノ粒子は、脱ドーピングに一致する緑色から青色への色変化、及びフロキュレーションを受ける。ナノ粒子のフロキュレーションは、散乱によるpH11における吸収の減少をもたらす。アルカリ性pHへの曝露により得られるポリマーの脱ドーピングは、おそらく、リン酸及びフッ化物の除去、並びにエメラルジン塩から塩基形態への変換によるものである。26これらの結果を確かめるために、NaCl含有及び非含有のpH7.4のリン酸緩衝液中のPABA分散液の安定性を、時間の関数として調査した(図5)。エメラルジン塩からPABAの塩基形態への分散液の変換が、図5Aに示されたようにリン酸緩衝生理食塩(NaCl含有)溶液の存在下でpH7.4において観察される。対照的に、PABA分散液は、時間の関数として(NaClの不存在下の)pH7.4のリン酸緩衝溶液中で極めて安定である(図5B)。これらの結果は、ホウ素は、リン酸及びフッ化物の存在下で陰イオン性四面体ボロネート基を形成し、自己ドーピングをもたらし、pHの関数としてのPABA分散液の伝導性安定性を付与することを示唆している。リン酸の塩化物又は水酸化物などの他の陰イオンとの交換は、PABA分散液の脱ドーピングをもたらす。
【0072】
図6は、IDAにコートされたPABA分散液のpH依存性酸化還元及び現場伝導性挙動を示している。図6Aに示されている1−8の範囲のpHにおけるPABAのサイクリックボルタンモグラムは、PABAは、中性及び中性pH超において酸化還元活性であることを示唆している。酸化及び還元ピークは、電解質溶液のpHに依存性である。pH1−3において、2組の酸化還元ピークの存在は、非置換PANI45に類似の酸化状態、並びに先に報告されたフッ化物の存在下において酸性条件下で化学的及び電気化学的に調製されたPABAの間の容易な変換に起因する。26、46、47しかし、pH3超で、1組だけの酸化還元ピークが観察され、エメラルジン形態は、このpH範囲では安定ではないこと、及びPABAは、完全に還元されたロイコエメラルジンから著しく酸化されたペルニグラニリン形態に直接変換されることが示唆される。このpH依存性酸化還元挙動は、D−フルクトース48の存在下の自己ドープ型PABA、スルホン化された自己ドープ型PANI49及び長鎖及び短鎖親水性エチレングリコールセグメントを含むリン酸でドープされたPANIと一致する。22これらの報告に類似して、ピーク電流の大きさは、溶液のpHの関数として減少する。しかし、1−8の範囲のpHにおけるPABAについて観察された電流の減少は、スルホン化された自己ドープ型PANI49について報告された1桁の減少、並びに長鎖及び短鎖親水性エチレングリコールセグメントを含むリン酸でドープされたPANIについての2桁の減少に比べてはるかに少ない。22PABAのサイクリックボルタンモグラムは、1−8の範囲のpHにおいて再生可能及び可逆性である。これらの結果は、自己ドープ型PABAは、リン酸及びフッ化物の存在下で陰イオン性四面体ボロネートを含み、電解質溶液中でフッ化物の不存在下であっても、またサイクル中に安定であり、従って、PABAの電気活性(electroactivity)を中性及び中性pHを超えて広げることを示唆している。
【0073】
図6Bは、溶液のpHの関数としての0.0〜0.8Vの電位範囲におけるPABAのI−V特性を示している。全体のpH範囲を通して、PABAのI−V特性は、走査から走査まで再生可能である。I−V特性は、高導電率の電位窓は、酸化還元挙動に類似してpH依存性であることを示している。同様に、導電領域の幅は、pH1〜8について0.6〜0.4Vに狭められる。導電率は、式σ=iΩ/EA S/cm(ここで、iΩは、抵抗電流であり、Eは、電極間の距離で割った電極間の電圧オフセットであり、Aは、2つの電極アレイ間の全有効断面積である)を使用して2つの作用電極を介してフィルムを通して流れている抵抗電流から計算した。50断面積は、フィルムの厚さ(0.3μm)及びその全長(7.84cm)によって求めてA=2.35×10−4cmが導かれる。フィルムの厚さを、PABAの質量、密度及び電極面積を使用して計算した。電極間の測定された間隔は、20μmであり、50mVの電極間のオフセット電圧であった。PABAの導電率は、絶縁の完全に還元されたロイコエメラルジン及び完全に酸化されたペルニグラニリン形態の2つの状態の間の中間電位において最大に達する。pH1において、PABAの最大導電率は、0.4Vで0.14S/cmである。導電率の値は、pH5及び8それぞれについて、0.25Vで0.07S/cmに、0.1Vで0.03S/cmに減少した。しかし、PANIの場合、報告された最大導電率は、pH0〜4に殆ど2桁の大きさで減少する。51
【0074】
フッ化物の存在下においてリン酸中で調製されたPABA分散液は、ホウ素−リン酸相互作用及び自己ドープ型PABAの基礎を形成する陰イオン性四面体ボロネート基の形成を伴う。ポリ(アニリンボロン酸)/リン酸ナノ粒子分散液は、フッ化物の存在下のボロン酸部分のリン酸との反応性を使用して高収率で生成される。11B NMR調査によれば、フッ化物の存在下におけるリン酸中の陰イオン性四面体ボロネート基の形成は、自己ドープされた、安定化されたPABAナノ粒子分散液の基礎を形成する。本明細書に記載されたポリ(アニリンボロン酸)/リン酸ナノ粒子分散液は、高い安定性の実質的な利点を提供する。25〜50nmの粒径を有する高導電PABA分散液は、テンプレートとして界面活性剤又は安定剤を使用せずに調製することができる。紫外−可視、FT−IR−ATR分光法及びサイクリックボルタンメトリーの結果によってPABAの導電形態の形成が確認された。自己ドーピングによって、PABA分散液は、中性及び中性を超えるpH条件において高い電気活性及び導電安定性を有する。これらの粒子から生成されたフィルムは、ポリマーの自己ドープ形態をもたらすフッ化物を含有するホウ素−リン酸錯体の形成によって中性及び塩基性pH条件下で高められた酸化還元安定性及び電位に依存する伝導性を示す。結果として、この材料は、pH、CO及びバイオセンサー、並びにコーティング及びインクジェット印刷用の調合物の優れた候補である。例えば、この材料は、防蝕コーティング又はフィルムとしての優れた候補である。
【0075】
実施例2:ポリ(アニリンボロン酸)ベースの防蝕剤
材料。3−アミノフェニルボロン酸塩酸塩(3−APBA)、シュア/シール(Sure/Seal)(商標)無水メタノール及び1−プロパノール、及び過硫酸アンモニウムをAldrich Chemical Inc.から購入した。フッ化ナトリウムをFisher Scientificから購入した。無水エタノールをCommercial Alcohols Inc.から購入した。バルク蒸留水を濾過し、次いで、Milli−Q−Academic A10(Millipore Corporation)を使用してイオン交換して18.2MΩ.cmの品質の水を得た。
【0076】
重合。10mMの過硫酸アンモニウム(酸化剤)を添加することによって、無水アルコール(メタノール、エタノール及び1−プロパノール)中の10mMの(3−APBA)(モノマー)及び50mMのフッ化ナトリウムを使用して、PABAナノ構造を合成した。フッ化ナトリウムを含むモノマー及び酸化剤は、乳鉢及び乳棒を使用して別々に粉砕し、モノマー及びフッ化ナトリウムを含有する溶液中に、次いで酸化剤(粉砕粉末)を一度に添加した。3−APBAの重合は、フッ化物の不存在下で観察されなかった。モノマーに対して最低1当量のフッ化物がPABAを得るために必要であった。この混合物を室温で撹拌し、反応を、様々な溶媒中で様々な時間間隔で実施した。無水アルコール中で、PABAは、重合条件下で可溶性であった。したがって、得られたPABAは、0.5MのHClを添加することによる沈殿及び遠心分離によって単離し、次いで0.5MのHClを使用して(過剰な反応物及び副生成物を除去するために)精製した。最後に、重合中に使用された対応する溶媒で、ナノ構造をすすいで、微量の水を除去し、次いで、同じ溶媒に再分散した。微量の水の除去後、ナノ構造は溶媒中に容易に再分散される。アルコール中で調製されたPABAナノ構造の分散液は、5mg/mLの最大濃度で無限に安定である(沈殿は6カ月の期間にわたり観察されなかった)。ナノ構造の分散液を使用して、タイプ304ステンレス鋼サンプル上への電気泳動堆積を実施した。電気泳動堆積に使用された構成の略図が図7に示されている。
【0077】
特性決定。電気泳動堆積、動電位分極及び開路電位測定を、CH Instrument CHI 660ワークステーションを使用して実施した。動電位分極実験において、Pt線対電極、参照電極としてのAg/AgCl、及び作用電極としてのPABAコート鋼鉄サンプルを含む3つの電極の配置を使用した。参照電極としてのAg/AgCl及び作用電極としてのPABAコート鋼サンプルからなる2つの電極の配置を使用して、開路電位測定を実施した。顕微鏡の測定も行った。
【0078】
結果及び考察
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
鋼サンプルにコートされたPABAフィルムへの温度の影響:
熱処理された及び熱処理されていないPABAフィルムコート鋼サンプルの動電位分極及び開路電位測定が、それぞれ図15及び16に示されている。リン酸を含むメタノール中の分散液で調製されたフィルムを真空下で一晩中120℃に維持した。熱処理され架橋されたフィルムは、腐蝕へのより高い抵抗性を示した。
【0081】
【表4】

【0082】
タイプ304ステンレス鋼の腐食の防止のために、メタノールバルク溶液からの物理的塗布によって生成されたボロン酸置換ポリアニリン、即ち、ポリ(アニリンボロン酸)(PABA)の有効性を観察した。鋼サンプル上のPABAフィルムの防蝕特性を、動電位分極曲線、開路電位及び顕微鏡測定によって調査した。
【0083】
本発明は、幾何異性体、不斉炭素に基づく光学異性体、立体異性体及び互変異性体などの異性体を含み、便宜のために例示された式の記載に限定されない。
【0084】
明瞭な理解のために、実例及び実施例によって、1つ又は複数の実施形態に関して、前述の発明を少し詳しく記載してきたが、本発明の教示に照らして、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の精神又は範囲を逸脱することなく、特定の変更、変化及び変形がなされ得ることは当業者には容易に明らかである。
【0085】
明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」の単数形態は、文脈によって明らかに別に示されない限り、複数の参照を含むことは留意される必要がある。
【0086】
別に定義されない限り、本明細書に使用される全ての技術的及び化学的用語は、本発明が属する分野の技術者に一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0087】
本明細書に引用された全ての刊行物、特許及び特許出願は、あたかも、各々の個別の刊行物、特許又は特許出願が、参照により援用されるよう特に個別に指示されているかのように、参照によって本明細書に援用されている。本明細書における任意の刊行物、特許又は特許出願の引用は、該刊行物、特許又は特許出願が先行技術であることを承認するものではない。
【0088】
参考文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒の存在下において、任意の順序で、ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩、リン酸部分を有する化合物、フッ化物部分を有する化合物、及び酸化剤を混合するステップを含む、ポリマーを生成する方法。
【請求項2】
前記ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩が、導電性ポリマーのモノマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩が、ボロン酸部分を有するアニリン、ピロール若しくはチオフェン、又はその塩である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩が、3−アミノフェニルボロン酸若しくはその塩である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩が、3−アミノフェニルボロン酸塩酸塩である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記リン酸部分を有する化合物が、リン酸である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記フッ化物部分を有する化合物が、フッ化ナトリウムである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記酸化剤が、過硫酸アンモニウム、塩化第二鉄、ヨウ化カリウム、重クロム酸カリウム又は過マンガン酸カリウムである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化剤が、過硫酸アンモニウムである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒が水である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法によって生成されるポリマー。
【請求項12】
ナノ粒子の形態である、請求項11に記載のポリマー。
【請求項13】
前記ナノ粒子が、約25〜約50nmの範囲の粒径を有する、請求項12に記載のポリマー。
【請求項14】
水溶性である、請求項11〜13のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか一項に記載のポリマー及び溶媒を含む分散液。
【請求項16】
前記溶媒が水性リン酸を含む、請求項15に記載の分散液。
【請求項17】
水性酸又は脂肪族アルコールの存在下において、任意の順序で、ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩、フッ化物部分を有する化合物及び酸化剤を混合するステップを含む、防蝕ポリマーを調製する方法。
【請求項18】
前記防蝕ポリマーを基板に塗布するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩が、導電性ポリマーのモノマーである、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩が、ボロン酸部分を有するアニリン、ピロール若しくはチオフェン、又はその塩である、請求項17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩が、3−アミノフェニルボロン酸若しくはその塩である、請求項17〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ボロン酸部分を有するモノマー若しくはその塩が、3−アミノフェニルボロン酸塩酸塩である、請求項17〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記フッ化物部分を有する化合物が、フッ化ナトリウムである、請求項17〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記酸化剤が、過硫酸アンモニウムである、請求項17〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記水性酸が、リン酸である、請求項17〜24のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2012−509944(P2012−509944A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536713(P2011−536713)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【国際出願番号】PCT/CA2009/001679
【国際公開番号】WO2010/060195
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(507390251)ユニヴァーシティー オブ マニトバ (2)
【Fターム(参考)】