ボールジョイント、そのベアリングシート、及びそれらの製造方法
【課題】潤滑性を確保しつつソケットの成形時の材料の回り込みを防止したボールシートを提供する。
【解決手段】ボールスタッドのボール部を保持面36に回動可能に保持したボールシート13を、ソケットを成形するための中子として用いることで製造性を向上できる。ボールシート13をボール部と別個に形成したことで保持面36にグリース溜まり32を設けることができるので、グリース溜まり32に収容するグリースによりボール部の摺動性を確保できる。保持面36をソケット側から隔離することで、ソケットの成形時にソケット本体の材料が保持面36側に回り込むことを防止できる。
【解決手段】ボールスタッドのボール部を保持面36に回動可能に保持したボールシート13を、ソケットを成形するための中子として用いることで製造性を向上できる。ボールシート13をボール部と別個に形成したことで保持面36にグリース溜まり32を設けることができるので、グリース溜まり32に収容するグリースによりボール部の摺動性を確保できる。保持面36をソケット側から隔離することで、ソケットの成形時にソケット本体の材料が保持面36側に回り込むことを防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボール部を回動可能に保持しハウジングの成形の際の中子となるベアリングシート、これを備えたボールジョイント、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両用の操舵装置あるいは懸架装置などに用いられるボールジョイントは、一般に、鋼鉄などにより形成されたボールスタッドのボール部に、合成樹脂により筒状に成形したベアリングシートであるボールシートを組み付けて回動可能に保持し、これらボール部とボールシートとを、別途形成した金属製などのハウジングの内室に収容して製造される(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
近年、低コスト化への取り組みとして、製造工程を簡略化するために、ボール部を中子としてボールシートをその外周に成形した後、さらにこれらボール部とボールシートとを中子としてダイキャストなどでハウジングを鋳造する製造方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2001−276956号公報(第3−5頁、図1)
【特許文献2】特許第3862669号公報(第5−8頁、図1−6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のボールジョイントでは、ボール部を中子としてボールシートを成形するため、このボールシートの内周のボール部との摺動面となる保持面が、ボール部の外周面の形状に沿う形状にしか成形できず、例えば潤滑剤であるグリースなどを収容及び保持するためのグリース溜まりを設けることができないという問題点を有している。
【0005】
また、このようなグリース溜まりは、ボールシートを成形する際のアンダーカット形状となる一方で、ボールシートを成形する際の中子を抜きやすくするためにボールシートにスリットなどを設けると、ハウジングを成形する際にスリットを介してハウジングの材料などが保持面側に回り込んでしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、潤滑性を確保しつつハウジングの成形時の材料の回り込みを防止したベアリングシート、これを備えたボールジョイント、及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のベアリングシートは、ハウジングを成形する際にボールスタッドのボール部とともに中子となるベアリングシートであって、略筒状に形成され、前記ボール部を回動可能に保持し前記ハウジング側から隔離された保持面を内周側に有するベアリングシート本体と、このベアリングシート本体の前記保持面に設けられ、潤滑剤を収容可能な凹部とを備えているものである。
【0008】
請求項2記載のベアリングシートは、請求項1記載のベアリングシートにおいて、ベアリングシート本体は、複数の分割部に分割され、これら分割部を隙間なく組み合わせて形成されているものである。
【0009】
請求項3記載のベアリングシートは、請求項2記載のベアリングシートにおいて、ベアリングシート本体は、一の分割部と他の分割部とを連結する塑性変形可能なヒンジ部を有しているものである。
【0010】
請求項4記載のベアリングシートは、請求項2または3記載のベアリングシートにおいて、分割部は、互いに隙間なく溶着されているものである。
【0011】
請求項5記載のベアリングシートは、請求項1記載のベアリングシートにおいて、ベアリングシート本体は、軸方向に沿って少なくとも一端部に連通して切り欠き形成され、内縁部が隙間なく溶着されることで閉塞されて前記保持面をハウジング側から隔離するスリットを備えているものである。
【0012】
請求項6記載のボールジョイントは、ボール部を有するボールスタッドと、前記ボール部を回動可能に保持する請求項1ないし5いずれか一記載のベアリングシートと、前記ボール部と前記ベアリングシートとを中子として成形されたハウジングとを具備したものである。
【0013】
請求項7記載のベアリングシートの製造方法は、略筒状に形成され、ボールスタッドのボール部を回動可能に保持する保持面を内周側に有するとともに、この保持面に連通する開口を有するベアリングシート本体と、このベアリングシート本体の保持面に設けられ、潤滑剤を収容可能な凹部とを備え、ハウジングを成形する際に前記ボール部とともに中子となるベアリングシートの製造方法であって、前記開口の内径よりも大きい外径を有し前記保持面及び前記凹部を形成するための球状部を備えた中子の周囲に前記ベアリングシート本体を形成し、前記ベアリングシート本体を、前記開口を介して前記中子から抜くものである。
【0014】
請求項8記載のベアリングシートの製造方法は、略筒状に形成され、ボールスタッドのボール部を回動可能に保持する保持面を内周側に有するベアリングシート本体と、このベアリングシート本体の保持面に設けられ、潤滑剤を収容可能な凹部とを備え、ハウジングを成形する際に前記ボール部とともに中子となるベアリングシートの製造方法であって、前記保持面及び前記凹部を形成するための中子の周囲に、この中子の外径よりも大きい内径を有する開口を備えた筒状の中間体を形成し、前記開口を介して前記中間体を前記中子から抜き、前記開口から挿入した前記ボール部に沿って前記中間体を加熱変形させて前記開口を縮径することで、前記ベアリングシート本体とするものである。
【0015】
請求項9記載のベアリングシートの製造方法は、略筒状に形成され、ボールスタッドのボール部を回動可能に保持する保持面を内周側に有するベアリングシート本体と、このベアリングシート本体の保持面に設けられ、潤滑剤を収容可能な凹部とを備え、ハウジングを成形する際に前記ボール部とともに中子となるベアリングシートの製造方法であって、前記保持面及び前記凹部を形成するための球体を中子としてこの球体の周囲に、軸方向に沿うスリットを有する略筒状の中間体を形成し、前記中間体を前記球体から軸方向に抜き、前記ボール部を保持するように前記中間体の前記スリットを隙間なく溶着して閉塞することで前記ベアリングシート本体とするものである。
【0016】
請求項10記載のボールジョイントの製造方法は、ボールスタッドのボール部に請求項7ないし9いずれか一記載のベアリングシートの製造方法により製造したベアリングシートを取り付け、これらボール部及びベアリングシートを中子としてハウジングを成形するものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載のベアリングシートによれば、ハウジングを成形する際にボールスタッドのボール部とともに中子として用いることで製造性を向上できるとともに、ボール部と別個に形成したことで保持面に凹部を設けることができるので、この凹部に収容する潤滑剤によりボール部の摺動性を確保でき、かつ、保持面をハウジング側から隔離することでハウジングの成形時にこのハウジングの材料が保持面側に回り込むことを防止できる。
【0018】
請求項2記載のベアリングシートによれば、ベアリングシート本体を複数の分割部に分割することで、アンダーカットなどを生じることなく分割部をそれぞれ別個に製造することが可能になり、製造性を向上できるとともに、分割部を隙間なく組み合わせてベアリングシート本体を形成することで、保持面をソケット側から確実に隔離でき、ハウジングの成形時にこのハウジングの材料が保持面側に回り込むことを防止できる。
【0019】
請求項3記載のベアリングシートによれば、一の分割部と他の分割部とを連結する塑性変形可能なヒンジ部を有することで、ヒンジ部の変形によって分割部を容易に組み合わせることができ、製造性をより向上できる。
【0020】
請求項4記載のベアリングシートによれば、分割部を互いに隙間なく溶着することで、保持面側を、より確実にハウジング側から隔離できる。
【0021】
請求項5記載のベアリングシートによれば、スリットによりベアリングシート本体の製造性を向上できるとともに、スリットは閉塞されるので、保持面をハウジング側から確実に隔離できる。
【0022】
請求項6記載のボールジョイントによれば、請求項1ないし5いずれか一記載のベアリングシートを備えることで、ボール部の良好な回動性を得つつ製造コストを抑制できる。
【0023】
請求項7記載のベアリングシートの製造方法によれば、ベアリングシート本体を、開口の内径よりも大きい外径を有する球状部を備えた中子から抜くことで、ベアリングシート本体が無理抜きされ、ベアリングシート本体に中子から抜くためのスリットなどを形成せずに済むので、ベアリングシート本体の保持面側をハウジング側から確実に隔離でき、ハウジングの成形時にこのハウジングの材料が保持面側に回り込むことを防止できる。
【0024】
請求項8記載のベアリングシートの製造方法によれば、中間体に中子の外径よりも大きい内径の開口を形成することで、開口を介して中子から中間体を容易に抜くことができるとともに、開口を縮径してベアリングシート本体を形成することで、ベアリングシート本体の保持面側をハウジング側から確実に隔離でき、ハウジングの成形時にこのハウジングの材料が保持面側に回り込むことを防止できる。
【0025】
請求項9記載のベアリングシートの製造方法によれば、中間体にスリットを形成することで、球体から中間体を容易に抜くことができるとともに、スリットを隙間なく溶着して閉塞してベアリングシート本体を形成することで、ベアリングシート本体の保持面側をハウジング側から確実に隔離でき、ハウジングの成形時にこのハウジングの材料が保持面側に回り込むことを防止できる。
【0026】
請求項10記載のボールジョイントの製造方法によれば、請求項7ないし9いずれか一記載のベアリングシートの製造方法により製造したベアリングシート本体とこのベアリングシート本体の保持面に回動可能に保持したボール部とを中子としてソケットを成形することで、ボール部の良好な回動性を得つつ製造コストを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の第1の実施の形態を図1ないし図5を参照して説明する。
【0028】
図2において、11はボールジョイントを示し、このボールジョイント11は、例えばスタビライザリンクなどに用いられるもので、鋼鉄製などのボールスタッド12と、このボールスタッド12の一部を保持するベアリングシートであるボールシート13と、このボールスタッド12の一部を保持したボールシート13を収容する金属製などの略円筒状のハウジングであるソケット14と、ゴムあるいは軟質合成樹脂などにて略円筒状に形成されたダストカバー15とを備えている。
【0029】
なお、以下、便宜的に、上下方向は図1及び図2中の上下方向に対応するものとして説明する。
【0030】
ボールスタッド12は、球頭部であるボール部21と、このボール部21から上方に突出した軸部である略円柱状のスタッド部22とを有している。
【0031】
ボール部21は、スタッド部22よりも径大に形成され、ボールシート13内に摺動(回動)可能に保持された状態でボールシート13とともにソケット14内に保持されている。
【0032】
スタッド部22は、中心軸がボール部21の中心を通る一直線上に位置するようにボール部21に対して溶接されて一体的に形成され、ソケット14の上方に突出している。また、このスタッド部22には、ダストカバー15の上端側が下側に嵌着される鍔部23が外周面から突出して形成されている。
【0033】
ボールシート13は、剛性及び弾性を有する例えばポリアセタール、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、あるいはポリエーテルイミドなどの合成樹脂にて射出形成された略円筒状の本体部であるベアリングシート本体としてのボールシート本体31と、このボールシート本体31の内周側に設けられ潤滑剤であるグリースGを収容する凹部としてのグリース溜まり32とを備えている。
【0034】
ボールシート本体31は、ボールスタッド12のスタッド部22が挿通される開口としての第1開口34が上端に開口形成されているとともに、開口としての第2開口35が下端に開口形成され、内周側にはこれら開口34,35に連通しボール部21の外周面を摺動(回動)可能に保持する摺動面である保持面36が形成されている。
【0035】
保持面36は、図1、図3(a)及び図3(b)に示すように、ボールシート13を射出成形する際の中子としての球状部である球体Bの外周面に沿って球面状に形成されるもので、グリース溜まり32が周方向に略等間隔に離間されて複数形成されている。また、この保持面36の開口34,35との連続部は、ボール部21を保持した状態でこのボール部21の外周面に弾性的に圧接される隔離部37となっている。したがって、この保持面36は、ボールシート13の内周側に位置し、ソケット14側である外周側から隔離されて設けられている。すなわち、保持面36には、ボールシート本体31の内周側と外周側とを連通するような孔部やスリットなどの連通部が形成されていない。
【0036】
ここで、球体Bは、例えば金属などによりボール部21と略等しい外径寸法に形成されたものである。したがって、この球体Bの外径寸法は、ボールシート本体31の各開口34,35の内径寸法よりも大きく形成されている。また、この球体Bの外周面には、ボールシート本体31のグリース溜まり32を形成するための突起部Baが軸方向に沿って長手状に、かつ、周方向に略等間隔に離間されて複数箇所に設けられている。なお、本実施の形態では、ボールシート13の成形用の中子を球体Bそのものとしたが、保持面36及びグリース溜まり32を形成する球状部を備えた中子であれば、任意の形状のものを用いることが可能である。
【0037】
グリース溜まり32は、例えば上下方向に沿って長手状に形成され、両端部が各開口34,35に対して連通しないように構成されている。換言すれば、これらグリース溜まり32の上下両端部と、各開口34,35との間の保持面36には、隔離部37の一部を構成する非連通部38,39がそれぞれ形成されている。なお、このグリース溜まり32の形状は、少なくとも開口34,35に連通しない形状であれば、任意に設定できる。
【0038】
また、図2に示すように、ソケット14は、例えばアルミニウムなどの部材をダイキャスト成形した略筒状のハウジング本体であるソケット本体41と、このソケット本体41に取り付けられる金属製などの閉塞部材としてのキャップである略円形板状のプラグ42とを備えている。
【0039】
ソケット本体41は、ボール部21を保持したボールシート13が嵌着される内室としての断面円形状の空間であるシート嵌着部43が内周側に設けられている。また、ソケット14の軸方向の一端部である上側には、シート嵌着部43に連通しボールシート13の第1開口34と連通する開口部としての第1開口部45が開口形成され、軸方向の他端部には、シート嵌着部43に連通する開口部としての第2開口部46が開口形成されている。さらに、ソケット14の外部には、ダストカバー15を嵌着するためのカバー嵌着部47が全周に亘って段差状に形成されている。
【0040】
第1開口部45は、上側に向けて拡径されるように形成されている。
【0041】
また、第2開口部46は、下側に向けて拡径されるように形成され、プラグ42の外周縁部が係止される段部48が内縁部に形成されている。
【0042】
プラグ42は、円形平板状の閉塞部材本体であるプラグ本体42aと、このプラグ本体42aの外周縁部から上側へと傾斜状に延出され段部48に位置する係止部42bとを備え、この係止部42bが段部48に取り付けられた状態でソケット本体41の第2開口部46の周縁部を中心軸方向へとかしめ変形したかしめ部49により保持されることで、プラグ42がソケット本体41に対して抜け止め保持されている。この結果、プラグ42とソケット本体41の第2開口部46及びボール部21により囲まれた空間部が、グリースGを収容する潤滑剤収容部としてのグリース溜まり空間S1となっている。
【0043】
ダストカバー15は、ダストシールあるいはブーツなどとも呼ばれるもので、上端側がスタッド部22の鍔部23の下部に嵌着されているとともに、下端側がソケット本体41のカバー嵌着部47に嵌着され、この下端側が図示しない環状のクリップによりカバー嵌着部47に係止されている。そして、このダストカバー15とボールスタッド12及びソケット本体41の第1開口部45により囲まれた空間部が、グリースGを収容する潤滑剤収容部としてのグリース溜まり空間S2となっている。
【0044】
次に、上記第1の実施の形態の製造方法を説明する。
【0045】
まず、図3(a)に示すように、球体Bを中子としてボールシート13を射出成形する。このとき、球体Bの形状に応じて、ボールシート13の内周側に保持面36とグリース溜まり32とが形成される。このため、球体Bの赤道近傍、及び、突起部Baは、それぞれアンダーカット形状となっている。
【0046】
この状態で、図示しない押し出しピンなどによりボールシート13に軸方向の外力を加えると、図3(b)に示すように、球体Bの外径寸法よりも小さい第1開口34がその径方向に拡径するように弾性変形し、ボールシート13が球体Bからいわゆる無理抜きされる。
【0047】
さらに、このボールシート13をボール部21の周囲に取り付けた状態で、これらボールシート13とボール部21とを中子として図4に示すように鋳造金型D1,D2間に取り付ける。このとき、鋳造金型D1,D2を閉じた状態でボール部21の上部と下部とが、それぞれ鋳造金型D1,D2によりこれら鋳造金型D1,D2とボールシート13との間に隙間が形成されないように挟持されて保持され、ボールシート13の周囲にキャビティCが形成される。
【0048】
そして、このキャビティCに、ソケット本体41の成形用の鋳造金属の溶湯を圧入して、ソケット本体41をダイキャスト成形する。
【0049】
このとき、鋳造金属の溶湯は、ボールシート13を形成する合成樹脂の耐熱温度よりも高い鋳造温度を有しているものの、ボールシート13を形成する合成樹脂は、気化に潜熱を要し、また、その熱伝導率が著しく小さいため、気化の進行が極めて徐々であり、通常の鋳造工程で行われる冷却過程を若干早める程度で気化消耗の内部への進行を容易に食い止めることが可能である。したがって、ボールシート13を形成する合成樹脂の耐熱温度よりも高い温度の鋳造金属の溶湯をキャビティCに圧入することで、ボールシート13が実用レベルで気化消耗することはなく、この成形によってソケット14にボール部21を保持したボールシート13を組み付ける工程を別個に要することなく、ソケット本体41の成形と同時に組み立てを完了することが可能になる。
【0050】
この成形品は、図5に示すように、ソケット本体41の上下両端部に開口34,35が形成され、これら開口34,35からボール部21の上下部が外部に露出しているとともに、ボール部21を保持したボールシート13がソケット本体41の内部に埋め込まれて固定されている。
【0051】
この後、ソケット本体41に所定の切削加工などを施すとともに、ソケット本体41の第1開口部45から突出したボール部21の上部に、スタッド部22を例えばプロジェクション溶接などにより溶接してボールスタッド12を形成する。
【0052】
さらに、グリース溜まり空間S1にグリースGを塗布した状態からボールスタッド12を摺動させ、第2開口35とボール部21との隙間からグリース溜まり32へとグリースGを封入し、プラグ42を第2開口部46に取り付け、かしめ部49をかしめて第2開口部46を閉塞する。
【0053】
そして、ソケット14とボールスタッド12との間にダストカバー15を嵌着して図2に示すボールジョイント11を完成する。
【0054】
上述したように、上記第1の実施の形態によれば、ボールシート13を、ソケット14を成形する際にボールスタッド12のボール部21とともに中子として用いることで、製造工程を簡略化して製造性を向上でき低コスト化が可能になるとともに、ボールシート13をボール部21と別個に形成することで、保持面36に自由にグリース溜まり32を設けることができるので、このグリース溜まり32に収容したグリースGによりボール部21の摺動性を確保でき、かつ、保持面36をソケット14側(外周面側)から隔離部37により隔離することでソケット14の成形時にソケット本体41の溶湯が保持面36側に回り込むことを防止できる。
【0055】
また、ボールシート13の製造に際して、ボールシート本体31を、第1開口34の内径よりも大きい外径を有する球体Bから抜くことで、ボールシート本体31がいわゆる無理抜きされ、ボールシート本体31に球体Bから抜くためのスリットなどを形成せずに済むので、ボールシート本体31の保持面36側をソケット14側から確実に隔離できる。
【0056】
さらに、保持面36のグリース溜まり32を、開口34,35に連通しない形状としたことにより、ソケット本体41の切削加工などの際に生じる金属屑などの塵埃がグリースGに混入することを防止でき、このような異物の混入によるボール部21の回動性の低下を防止できる。
【0057】
そして、上記のように製造したボールシート13とこのボールシート13の保持面36に回動可能に保持したボール部21とを中子としてソケット14を成形することにより、グリース溜まり32によってボール部21の良好な摺動性を得つつ、製造コストを抑制できる。
【0058】
次に、第2の実施の形態を図6を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0059】
この第2の実施の形態は、上下両端部に開口51,52を有する略筒状の中間体53を、例えばホットプレスなどにより加熱変形することでボールシート13を形成するものである。
【0060】
図6(a)に示すように、中間体53は、ボールシート13と略同様の形状を有しているものの、開口51,52のいずれか一方が他方よりも、例えば本実施の形態では開口51が開口52よりも大きい内径寸法を有しており、この開口51の内径寸法が、中間体53の最大の内径寸法となっているとともに、上下方向の中心域よりも開口51側の内周面が、この開口51の内径と略等しい内径寸法に形成されている。
【0061】
開口51,52は、中間体53を加熱変形してボールシート本体31としたときに開口34,35となる部分である。
【0062】
そして、ボールシート13の製造の際には、図6(b)に示すように、突起部Iaを有し保持面36及びグリース溜まり32を形成するための所定の中子Iの周囲に中間体53を射出成形などにより形成した後、開口51側から中間体53を中子Iから抜き、開口51からボール部21を中間体53の内周側に挿入して、例えばホットプレスなどにより開口51側をボール部21の外形に沿って縮径するように中間体53を加熱変形して、内周側の保持面36にグリース溜まり32を有するボールシート13とする。
【0063】
そして、このボール部21を保持したボールシート13を中子としてソケット本体41を成形し、スタッド部22をボール部21に溶接するなど、上記第1の実施の形態と同様にしてボールジョイント11を完成する。
【0064】
この結果、ボールシート13の製造の際に、中子Iよりも内径寸法を大きくした開口51側により中子Iから中間体53を容易に抜くことができるので、ボールシート本体31に保持面36とソケット14側とを連通するスリットなどが形成されず、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0065】
次に、第3の実施の形態を図7を参照して説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0066】
この第3の実施の形態は、上記各実施の形態のボールシート本体31が、軸方向の中心域から、複数、例えば2つの分割部55,56に分割されているものである。換言すれば、ボールシート本体31は、その中心軸に略直交する平面により分割部55,56に分割されている。
【0067】
分割部55は、例えばボールシート本体31の図7中の上半分を構成するもので、略筒状に形成され、上端部に第1開口34を有し、内周側が保持面36の上半分の保持面部55aとなっており、下端部が当接面55bとなっているとともに、下端側の外周面に、分割部56との係合用の係合凹部55cが形成されている。
【0068】
当接面55bは、例えばボールシート本体31の中心軸に略直交する平面に沿う平面状に形成され、保持面36側と外周面側とに連続している。
【0069】
また、係合凹部55cは、分割部55の外周面全体に連続的に、あるいは一部などに、溝状に形成されている。
【0070】
一方、分割部56は、例えばボールシート本体31の図7中の下半分を構成するもので、略筒状に形成され、下端部に第2開口35を有し、内周側が保持面36の下半分の保持面部56aとなっており、上端部が平面状の当接面56bとなっているとともに、上端側の外周面に、分割部55の係合凹部55cと係合される係合爪部56cが形成されている。
【0071】
当接面56bは、当接面55bと隙間なく当接されることで分割部55,56を隙間なく組み立て可能となっている。
【0072】
係合爪部56cは、分割部55の係合凹部55cに対応する位置に設けられ、先端側が中心軸方向に向けて折り返されるように爪状に突出している。
【0073】
そして、図示しない金型によりそれぞれ別個に分割部55,56を射出成形し、これら分割部55,56によりボール部21を保持しつつ当接面55b,56bを隙間なく当接させるように押し付け、係合爪部56cを係合凹部55cに係合させて分割部55,56を一体化することで、保持面36によりボール部21を回動可能に保持する。
【0074】
そして、このボール部21を保持したボールシート13を中子としてソケット本体41を成形し、スタッド部22をボール部21に溶接するなど、上記各実施の形態と同様にしてボールジョイント11を完成する。
【0075】
このように、ボールシート本体31を複数の分割部55,56に分割することで、アンダーカットなどが生じないように分割部55,56をそれぞれ別個に製造することが可能になり、金型を簡略化でき、製造性を向上できるとともに、分割部55,56を隙間なく組み合わせてボールシート本体31を形成することで、ボールシート本体31の保持面36をソケット14側から確実に隔離でき、ソケット14の成形時にソケット本体41の溶湯が保持面36側に回り込むことを防止できる。
【0076】
次に、第4の実施の形態を図8を参照して説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0077】
この第4の実施の形態は、上記第3の実施の形態の分割部55,56を、例えば超音波溶着(振動溶着)などにより互いに溶着したものである。
【0078】
分割部55は、当接面55bに連続して径方向に突出した突出部55dを有している。同様に、分割部56は、当接面56bに連続して径方向に突出した突出部56dを有している。これら突出部55d,56dは、分割部55,56からフランジ状に突出し、周方向全体に連続的に、あるいは周方向の一部などに、互いに対向するように形成されている。
【0079】
そして、図示しない金型によりそれぞれ別個に分割部55,56を射出成形し、これら分割部55,56によりボール部21を保持しつつ当接面55b,56bを隙間なく当接させるように押し付け、係合爪部56cを係合凹部55cに係合させて分割部55,56を一体化することで、保持面36によりボール部21を回動可能に保持する。
【0080】
この後、このボール部21を保持したボールシート13を中子としてソケット本体41を成形し、スタッド部22をボール部21に溶接するなど、上記各実施の形態と同様にしてボールジョイント11を完成する。
【0081】
このように、ボールシート本体31を分割部55,56に分割するなど、上記第3の実施の形態と同様の構成を有することで、上記第3の実施の形態と同様の作用効果を奏することができるとともに、分割部55,56を互いに隙間なく溶着することで、保持面36側を、より確実にソケット14側から隔離できる。
【0082】
また、分割部55,56を超音波振動により溶着することで、これら分割部55,56を容易かつ確実に溶着できるとともに、例えば接着剤を当接面に塗布して溶着する場合などと比較して、製造コストを抑制できるとともに、接着剤を硬化させる時間なども必要なく、タクトタイムを短くできる。
【0083】
さらに、当接面55b,56bに連続した突出部55d,56dを設けることで、当接面55b,56bの面積をより大きくすることができ、分割部55,56を、より確実に溶着できる。
【0084】
次に、第5の実施の形態を図9を参照して説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0085】
この第5の実施の形態は、上記各実施の形態のボールシート本体31が、平面視の中心域から、複数、例えば2つの分割部58,59に分割されているものである。換言すれば、ボールシート本体31は、その中心軸を含む平面により分割部58,59に分割されている。
【0086】
分割部58は、例えばボールシート本体31の図9中の左半分を構成するもので、略半円筒状に形成され、内周側が保持面36の左半分の保持面部58aとなっており、右端部が当接面58bとなっているとともに、右端側の外周面に、分割部59との係合用の係合凹部58cと係合爪部58dとが形成されている。
【0087】
当接面58bは、例えばボールシート本体31の中心軸を含む平面に沿う平面状に形成され、保持面36側と外周面側とに連続している。
【0088】
また、係合凹部58cは、分割部58のいずれか一側、例えば図中上側の外周面に、上下方向に沿って連続的に、あるいはその一部に、溝状に形成されている。
【0089】
さらに、係合爪部58dは、分割部58のいずれか他側、例えば図中下側の外周面に、上下方向に沿って連続的に、あるいはその一部に、先端が中心軸方向に向けて折り返されるように爪状に突出している。
【0090】
一方、分割部59は、例えばボールシート本体31の図9中の右半分を構成するもので、略半円筒状に形成され、内周側が保持面36の右半分の保持面部59aとなっており、左端部が当接面59bとなっているとともに、左端側の外周面に、左端側の外周面に、分割部58の係合凹部58cに係合される係合爪部59cと分割部58の係合爪部58dが係合される係合凹部59dとが形成されている。
【0091】
当接面59bは、当接面58bと隙間なく当接されることで分割部58,59を隙間なく組み立て可能となっている。
【0092】
また、係合爪部59cは、分割部59のいずれか一側、例えば図中上側の外周面に、上下方向に沿って連続的に、あるいはその一部に、先端が中心軸方向に向けて折り返されるように爪状に突出している。
【0093】
さらに、係合凹部59dは、分割部59のいずれか他側、例えば図中下側の外周面に、上下方向に沿って連続的に、あるいはその一部に、溝状に形成されている。
【0094】
そして、図示しない金型によりそれぞれ別個に分割部58,59を射出成形し、これら分割部58,59によりボール部21を保持しつつ当接面58b,59bを隙間なく当接させるように押し付け、係合爪部58d,59cを係合凹部59d,58cに係合させて分割部58,59を一体化することで、保持面36によりボール部21を回動可能に保持する。
【0095】
この後、このボール部21を保持したボールシート13を中子としてソケット本体41を成形し、スタッド部22をボール部21に溶接するなど、上記各実施の形態と同様にしてボールジョイント11を完成する。
【0096】
このように、ボールシート本体31を複数の分割部58,59に分割するなど、上記第3の実施の形態と同様の構成を有することで、上記第3の実施の形態と同様の作用効果を奏することが可能になる。
【0097】
次に、第6の実施の形態を図10を参照して説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0098】
この第6の実施の形態は、上記第5の実施の形態の分割部58,59を、例えば超音波溶着(振動溶着)などにより互いに溶着したものである。
【0099】
分割部58は、当接面58bに連続して径方向に突出した突出部58eを有している。同様に、分割部59は、当接面59bに連続して径方向に突出した突出部59eを有している。これら突出部58e,59eは、分割部58,59からフランジ状に突出し、周方向全体に連続的に、あるいは周方向の一部などに、互いに対向するように形成されている。
【0100】
そして、図示しない金型によりそれぞれ別個に分割部58,59を射出成形し、これら分割部58,59によりボール部21を保持しつつ当接面58b,59bを隙間なく当接させるように押し付け、例えば超音波などにより当接面58b,59bを溶着して分割部58,59を一体化することで、保持面36によりボール部21を回動可能に保持する。
【0101】
この後、このボール部21を保持したボールシート13を中子としてソケット本体41を成形し、スタッド部22をボール部21に溶接するなど、上記各実施の形態と同様にしてボールジョイント11を完成する。
【0102】
このように、ボールシート本体31を分割部58,59に分割するなど、上記第5の実施の形態と同様の構成を有することで、上記第5の実施の形態と同様の作用効果を奏することができるとともに、分割部58,59を互いに隙間なく溶着することで、保持面36側を、より確実にソケット14側から隔離できる。
【0103】
なお、上記第3の実施の形態ないし第6の実施の形態において、当接面55b,56b、あるいは当接面58b,59bの少なくともいずれかにダボなどの突起部を設け、当接面55b,56b、あるいは当接面58b,59bの突起部に対応する位置に凹部を設けて、これら突起部と凹部との嵌合により分割部55,56あるいは分割部58,59を互いに隙間なく組み合わせるように構成してもよい。
【0104】
同様に、当接面55b,56b、あるいは当接面58b,59bにそれぞれ段差などの嵌合部を設けて、これら嵌合部を嵌合させることで、分割部55,56あるいは分割部58,59を互いに隙間なく組み合わせるように構成してもよい。
【0105】
次に、第7の実施の形態を図11を参照して説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0106】
この第7の実施の形態は、上記第6の実施の形態において、分割部58,59がヒンジ部61により連結されているものである。
【0107】
ヒンジ部61は、一方の突出部58e,59eに代えて分割部58,59と一体に設けられ、例えば分割部58,59と同じ材料により一体に形成されている。したがって、このヒンジ部61は、塑性変形可能で、かつ、弾性を有している。なお、本実施の形態では、ヒンジ部61をボールシート本体31の軸方向全体に連続させて形成したが、ボールシート本体31の分割部58,59の一部に形成されていれば充分であることは言うまでもない。
【0108】
そして、ボールシート13の製造に際しては、図示しない成形金型によりヒンジ部61を有する中間体63を成形するとともに、ボール部21を内周側に保持しつつヒンジ部61により中間体63を閉じ、当接面58b,59bを互いに当接させて超音波などにより溶着することで、ボール部21を保持面36にて回動可能に保持したボールシート本体31を形成する。
【0109】
この後、このボール部21を保持したボールシート13を中子としてソケット本体41を成形し、スタッド部22をボール部21に溶接するなど、上記各実施の形態と同様にしてボールジョイント11を完成する。
【0110】
この結果、上記第3ないし第6の実施の形態と同様の作用効果を奏することができるとともに、分割部58,59を連結する塑性変形可能なヒンジ部61を有することで、分割部58,59を個別に組み合わせる場合と比較して、ヒンジ部61の変形によって分割部58,59を容易に組み合わせることができ、製造性をより向上できる。
【0111】
なお、上記第7の実施の形態において、当接面58b,59bを溶着せずに、上記第5の実施の形態のように、係合凹部58cと係合爪部59cとにより隙間なく組み合わせるように構成してもよい。
【0112】
また、上記第3の実施の形態、あるいは第4の実施の形態の分割部55,56をヒンジ部61により連結しても同様の作用効果を奏することができる。
【0113】
さらに、上記第3の実施の形態ないし第7の実施の形態において、分割部の分割の仕方は、例えば球体Bを取り外しやすいなど成形性が良好で、かつ、ボールシート本体31を組み立てやすくなるようにするなど、任意に設定できる。
【0114】
そして、分割部55,56、あるいは分割部58,59は、例えば球体Bを中子とする金型により射出成形してもよい。この場合でも、球体Bから分割部55,56、あるいは分割部58,59を容易に抜くことができるなど、上記第3の実施の形態ないし第7の実施の形態と同様の作用効果を奏することが可能になる。
【0115】
次に、第8の実施の形態を図12を参照して説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0116】
この第8の実施の形態は、ボールシート13のボールシート本体31が、中間体65のスリット66を隙間なく閉塞して形成されたものである。
【0117】
中間体65は、上下端部に開口68,69を有する略筒状に形成されている。
【0118】
開口68,69は、スリット66を閉塞して中間体65をボールシート本体31としたときに開口34,35となる部分である。
【0119】
スリット66は、開口68,69の少なくとも一方、本実施の形態では開口68から上下方向の中心域まで軸方向に沿って切り欠き形成され、中間体65の内周側と外周側とを連通するものである。また、このスリット66には、内縁部に沿って薄肉状の溶着部66aが設けられている。さらに、このスリット66は、幅寸法、すなわち溶着部66a,66a間の寸法が、例えば0mm〜0.8mm程度に形成されている。
【0120】
そして、ボールシート13の製造の際には、球体Bを中子としてこの球体Bの周囲に中間体65を射出成形し、中間体65に軸方向に外力を加えることで、スリット66を介して中間体65が開き、球体Bから抜ける。
【0121】
この後、ボール部21を中間体65の内周側に保持しつつスリット66の内縁部の溶着部66a,66aを互いに接触させて、例えば超音波などにより溶着することでスリット66を閉塞し、ボール部21の外周面に沿いこのボール部21を回動可能に保持する保持面36を有するボールシート本体31を形成する。
【0122】
さらに、このボール部21を保持したボールシート13を中子としてソケット本体41を成形し、スタッド部22をボール部21に溶接するなど、上記各実施の形態と同様にしてボールジョイント11を完成する。
【0123】
このように、中間体65にスリット66を形成することで、球体Bから中間体65を容易に抜くことができるとともに、スリット66を隙間なく溶着して閉塞してボールシート本体31を形成することで、ボールシート本体31の保持面36側をソケット14側から確実に隔離でき、ソケット14の成形時にソケット本体41の溶湯が保持面36側に回り込むことを防止できる。
【0124】
また、スリット66は、上下方向の中心域、すなわち上下方向における球体Bの径寸法が最も大きい赤道位置に対応する位置を含む位置まで切り欠き形成されているので、射出成形した中間体65に過剰な外力を加えることなく球体Bから容易に抜くことができる。
【0125】
なお、上記各実施の形態において、ソケット本体41は、合成樹脂による射出成形により成形してもよい。この場合には、鋳造金型D1,D2を射出成形用金型に置き換えることで、上記各実施の形態と同様に製造でき、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の第1の実施の形態のベアリングシートを示す縦断面図である。
【図2】同上ベアリングシートを備えたボールジョイントを示す縦断面図である。
【図3】(a)は同上ベアリングシートの射出成形状態を示す縦断面図、(b)は同上ベアリングシートのベアリングシート本体を球体から無理抜きした状態を示す説明断面図である。
【図4】同上ハウジングの成形工程を示す説明断面図である。
【図5】同上ハウジングを成形した状態を示す説明断面図である。
【図6】(a)は本発明の第2の実施の形態のベアリングシートの中間体を示す縦断面図、(b)は同上中間体を加熱変形してベアリングシート本体を形成した状態を示す縦断面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態のベアリングシートを示す縦断面図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態のベアリングシートを示す縦断面図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態のベアリングシートを示す横断面図である。
【図10】本発明の第6の実施の形態のベアリングシートを示す横断面図である。
【図11】(a)は本発明の第7の実施の形態のベアリングシートを示す側面図、(b)は同上ベアリングシートを示す横断面図である。
【図12】(a)は本発明の第8の実施の形態のベアリングシートの中間体を示す正面図、(b)は同上ベアリングシートを示す正面図、(c)は同上ベアリングシートの一部を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0127】
11 ボールジョイント
12 ボールスタッド
13 ベアリングシートとしてのボールシート
14 ハウジングであるソケット
21 ボール部
31 ベアリングシート本体としてのボールシート本体
32 凹部としてのグリース溜まり
34 開口としての第1開口
36 保持面
51 開口
53,65 中間体
55,56,58,59 分割部
61 ヒンジ部
66 スリット
B 中子としての球状部である球体
G 潤滑剤であるグリース
I 中子
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボール部を回動可能に保持しハウジングの成形の際の中子となるベアリングシート、これを備えたボールジョイント、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両用の操舵装置あるいは懸架装置などに用いられるボールジョイントは、一般に、鋼鉄などにより形成されたボールスタッドのボール部に、合成樹脂により筒状に成形したベアリングシートであるボールシートを組み付けて回動可能に保持し、これらボール部とボールシートとを、別途形成した金属製などのハウジングの内室に収容して製造される(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
近年、低コスト化への取り組みとして、製造工程を簡略化するために、ボール部を中子としてボールシートをその外周に成形した後、さらにこれらボール部とボールシートとを中子としてダイキャストなどでハウジングを鋳造する製造方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2001−276956号公報(第3−5頁、図1)
【特許文献2】特許第3862669号公報(第5−8頁、図1−6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のボールジョイントでは、ボール部を中子としてボールシートを成形するため、このボールシートの内周のボール部との摺動面となる保持面が、ボール部の外周面の形状に沿う形状にしか成形できず、例えば潤滑剤であるグリースなどを収容及び保持するためのグリース溜まりを設けることができないという問題点を有している。
【0005】
また、このようなグリース溜まりは、ボールシートを成形する際のアンダーカット形状となる一方で、ボールシートを成形する際の中子を抜きやすくするためにボールシートにスリットなどを設けると、ハウジングを成形する際にスリットを介してハウジングの材料などが保持面側に回り込んでしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、潤滑性を確保しつつハウジングの成形時の材料の回り込みを防止したベアリングシート、これを備えたボールジョイント、及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のベアリングシートは、ハウジングを成形する際にボールスタッドのボール部とともに中子となるベアリングシートであって、略筒状に形成され、前記ボール部を回動可能に保持し前記ハウジング側から隔離された保持面を内周側に有するベアリングシート本体と、このベアリングシート本体の前記保持面に設けられ、潤滑剤を収容可能な凹部とを備えているものである。
【0008】
請求項2記載のベアリングシートは、請求項1記載のベアリングシートにおいて、ベアリングシート本体は、複数の分割部に分割され、これら分割部を隙間なく組み合わせて形成されているものである。
【0009】
請求項3記載のベアリングシートは、請求項2記載のベアリングシートにおいて、ベアリングシート本体は、一の分割部と他の分割部とを連結する塑性変形可能なヒンジ部を有しているものである。
【0010】
請求項4記載のベアリングシートは、請求項2または3記載のベアリングシートにおいて、分割部は、互いに隙間なく溶着されているものである。
【0011】
請求項5記載のベアリングシートは、請求項1記載のベアリングシートにおいて、ベアリングシート本体は、軸方向に沿って少なくとも一端部に連通して切り欠き形成され、内縁部が隙間なく溶着されることで閉塞されて前記保持面をハウジング側から隔離するスリットを備えているものである。
【0012】
請求項6記載のボールジョイントは、ボール部を有するボールスタッドと、前記ボール部を回動可能に保持する請求項1ないし5いずれか一記載のベアリングシートと、前記ボール部と前記ベアリングシートとを中子として成形されたハウジングとを具備したものである。
【0013】
請求項7記載のベアリングシートの製造方法は、略筒状に形成され、ボールスタッドのボール部を回動可能に保持する保持面を内周側に有するとともに、この保持面に連通する開口を有するベアリングシート本体と、このベアリングシート本体の保持面に設けられ、潤滑剤を収容可能な凹部とを備え、ハウジングを成形する際に前記ボール部とともに中子となるベアリングシートの製造方法であって、前記開口の内径よりも大きい外径を有し前記保持面及び前記凹部を形成するための球状部を備えた中子の周囲に前記ベアリングシート本体を形成し、前記ベアリングシート本体を、前記開口を介して前記中子から抜くものである。
【0014】
請求項8記載のベアリングシートの製造方法は、略筒状に形成され、ボールスタッドのボール部を回動可能に保持する保持面を内周側に有するベアリングシート本体と、このベアリングシート本体の保持面に設けられ、潤滑剤を収容可能な凹部とを備え、ハウジングを成形する際に前記ボール部とともに中子となるベアリングシートの製造方法であって、前記保持面及び前記凹部を形成するための中子の周囲に、この中子の外径よりも大きい内径を有する開口を備えた筒状の中間体を形成し、前記開口を介して前記中間体を前記中子から抜き、前記開口から挿入した前記ボール部に沿って前記中間体を加熱変形させて前記開口を縮径することで、前記ベアリングシート本体とするものである。
【0015】
請求項9記載のベアリングシートの製造方法は、略筒状に形成され、ボールスタッドのボール部を回動可能に保持する保持面を内周側に有するベアリングシート本体と、このベアリングシート本体の保持面に設けられ、潤滑剤を収容可能な凹部とを備え、ハウジングを成形する際に前記ボール部とともに中子となるベアリングシートの製造方法であって、前記保持面及び前記凹部を形成するための球体を中子としてこの球体の周囲に、軸方向に沿うスリットを有する略筒状の中間体を形成し、前記中間体を前記球体から軸方向に抜き、前記ボール部を保持するように前記中間体の前記スリットを隙間なく溶着して閉塞することで前記ベアリングシート本体とするものである。
【0016】
請求項10記載のボールジョイントの製造方法は、ボールスタッドのボール部に請求項7ないし9いずれか一記載のベアリングシートの製造方法により製造したベアリングシートを取り付け、これらボール部及びベアリングシートを中子としてハウジングを成形するものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載のベアリングシートによれば、ハウジングを成形する際にボールスタッドのボール部とともに中子として用いることで製造性を向上できるとともに、ボール部と別個に形成したことで保持面に凹部を設けることができるので、この凹部に収容する潤滑剤によりボール部の摺動性を確保でき、かつ、保持面をハウジング側から隔離することでハウジングの成形時にこのハウジングの材料が保持面側に回り込むことを防止できる。
【0018】
請求項2記載のベアリングシートによれば、ベアリングシート本体を複数の分割部に分割することで、アンダーカットなどを生じることなく分割部をそれぞれ別個に製造することが可能になり、製造性を向上できるとともに、分割部を隙間なく組み合わせてベアリングシート本体を形成することで、保持面をソケット側から確実に隔離でき、ハウジングの成形時にこのハウジングの材料が保持面側に回り込むことを防止できる。
【0019】
請求項3記載のベアリングシートによれば、一の分割部と他の分割部とを連結する塑性変形可能なヒンジ部を有することで、ヒンジ部の変形によって分割部を容易に組み合わせることができ、製造性をより向上できる。
【0020】
請求項4記載のベアリングシートによれば、分割部を互いに隙間なく溶着することで、保持面側を、より確実にハウジング側から隔離できる。
【0021】
請求項5記載のベアリングシートによれば、スリットによりベアリングシート本体の製造性を向上できるとともに、スリットは閉塞されるので、保持面をハウジング側から確実に隔離できる。
【0022】
請求項6記載のボールジョイントによれば、請求項1ないし5いずれか一記載のベアリングシートを備えることで、ボール部の良好な回動性を得つつ製造コストを抑制できる。
【0023】
請求項7記載のベアリングシートの製造方法によれば、ベアリングシート本体を、開口の内径よりも大きい外径を有する球状部を備えた中子から抜くことで、ベアリングシート本体が無理抜きされ、ベアリングシート本体に中子から抜くためのスリットなどを形成せずに済むので、ベアリングシート本体の保持面側をハウジング側から確実に隔離でき、ハウジングの成形時にこのハウジングの材料が保持面側に回り込むことを防止できる。
【0024】
請求項8記載のベアリングシートの製造方法によれば、中間体に中子の外径よりも大きい内径の開口を形成することで、開口を介して中子から中間体を容易に抜くことができるとともに、開口を縮径してベアリングシート本体を形成することで、ベアリングシート本体の保持面側をハウジング側から確実に隔離でき、ハウジングの成形時にこのハウジングの材料が保持面側に回り込むことを防止できる。
【0025】
請求項9記載のベアリングシートの製造方法によれば、中間体にスリットを形成することで、球体から中間体を容易に抜くことができるとともに、スリットを隙間なく溶着して閉塞してベアリングシート本体を形成することで、ベアリングシート本体の保持面側をハウジング側から確実に隔離でき、ハウジングの成形時にこのハウジングの材料が保持面側に回り込むことを防止できる。
【0026】
請求項10記載のボールジョイントの製造方法によれば、請求項7ないし9いずれか一記載のベアリングシートの製造方法により製造したベアリングシート本体とこのベアリングシート本体の保持面に回動可能に保持したボール部とを中子としてソケットを成形することで、ボール部の良好な回動性を得つつ製造コストを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の第1の実施の形態を図1ないし図5を参照して説明する。
【0028】
図2において、11はボールジョイントを示し、このボールジョイント11は、例えばスタビライザリンクなどに用いられるもので、鋼鉄製などのボールスタッド12と、このボールスタッド12の一部を保持するベアリングシートであるボールシート13と、このボールスタッド12の一部を保持したボールシート13を収容する金属製などの略円筒状のハウジングであるソケット14と、ゴムあるいは軟質合成樹脂などにて略円筒状に形成されたダストカバー15とを備えている。
【0029】
なお、以下、便宜的に、上下方向は図1及び図2中の上下方向に対応するものとして説明する。
【0030】
ボールスタッド12は、球頭部であるボール部21と、このボール部21から上方に突出した軸部である略円柱状のスタッド部22とを有している。
【0031】
ボール部21は、スタッド部22よりも径大に形成され、ボールシート13内に摺動(回動)可能に保持された状態でボールシート13とともにソケット14内に保持されている。
【0032】
スタッド部22は、中心軸がボール部21の中心を通る一直線上に位置するようにボール部21に対して溶接されて一体的に形成され、ソケット14の上方に突出している。また、このスタッド部22には、ダストカバー15の上端側が下側に嵌着される鍔部23が外周面から突出して形成されている。
【0033】
ボールシート13は、剛性及び弾性を有する例えばポリアセタール、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、あるいはポリエーテルイミドなどの合成樹脂にて射出形成された略円筒状の本体部であるベアリングシート本体としてのボールシート本体31と、このボールシート本体31の内周側に設けられ潤滑剤であるグリースGを収容する凹部としてのグリース溜まり32とを備えている。
【0034】
ボールシート本体31は、ボールスタッド12のスタッド部22が挿通される開口としての第1開口34が上端に開口形成されているとともに、開口としての第2開口35が下端に開口形成され、内周側にはこれら開口34,35に連通しボール部21の外周面を摺動(回動)可能に保持する摺動面である保持面36が形成されている。
【0035】
保持面36は、図1、図3(a)及び図3(b)に示すように、ボールシート13を射出成形する際の中子としての球状部である球体Bの外周面に沿って球面状に形成されるもので、グリース溜まり32が周方向に略等間隔に離間されて複数形成されている。また、この保持面36の開口34,35との連続部は、ボール部21を保持した状態でこのボール部21の外周面に弾性的に圧接される隔離部37となっている。したがって、この保持面36は、ボールシート13の内周側に位置し、ソケット14側である外周側から隔離されて設けられている。すなわち、保持面36には、ボールシート本体31の内周側と外周側とを連通するような孔部やスリットなどの連通部が形成されていない。
【0036】
ここで、球体Bは、例えば金属などによりボール部21と略等しい外径寸法に形成されたものである。したがって、この球体Bの外径寸法は、ボールシート本体31の各開口34,35の内径寸法よりも大きく形成されている。また、この球体Bの外周面には、ボールシート本体31のグリース溜まり32を形成するための突起部Baが軸方向に沿って長手状に、かつ、周方向に略等間隔に離間されて複数箇所に設けられている。なお、本実施の形態では、ボールシート13の成形用の中子を球体Bそのものとしたが、保持面36及びグリース溜まり32を形成する球状部を備えた中子であれば、任意の形状のものを用いることが可能である。
【0037】
グリース溜まり32は、例えば上下方向に沿って長手状に形成され、両端部が各開口34,35に対して連通しないように構成されている。換言すれば、これらグリース溜まり32の上下両端部と、各開口34,35との間の保持面36には、隔離部37の一部を構成する非連通部38,39がそれぞれ形成されている。なお、このグリース溜まり32の形状は、少なくとも開口34,35に連通しない形状であれば、任意に設定できる。
【0038】
また、図2に示すように、ソケット14は、例えばアルミニウムなどの部材をダイキャスト成形した略筒状のハウジング本体であるソケット本体41と、このソケット本体41に取り付けられる金属製などの閉塞部材としてのキャップである略円形板状のプラグ42とを備えている。
【0039】
ソケット本体41は、ボール部21を保持したボールシート13が嵌着される内室としての断面円形状の空間であるシート嵌着部43が内周側に設けられている。また、ソケット14の軸方向の一端部である上側には、シート嵌着部43に連通しボールシート13の第1開口34と連通する開口部としての第1開口部45が開口形成され、軸方向の他端部には、シート嵌着部43に連通する開口部としての第2開口部46が開口形成されている。さらに、ソケット14の外部には、ダストカバー15を嵌着するためのカバー嵌着部47が全周に亘って段差状に形成されている。
【0040】
第1開口部45は、上側に向けて拡径されるように形成されている。
【0041】
また、第2開口部46は、下側に向けて拡径されるように形成され、プラグ42の外周縁部が係止される段部48が内縁部に形成されている。
【0042】
プラグ42は、円形平板状の閉塞部材本体であるプラグ本体42aと、このプラグ本体42aの外周縁部から上側へと傾斜状に延出され段部48に位置する係止部42bとを備え、この係止部42bが段部48に取り付けられた状態でソケット本体41の第2開口部46の周縁部を中心軸方向へとかしめ変形したかしめ部49により保持されることで、プラグ42がソケット本体41に対して抜け止め保持されている。この結果、プラグ42とソケット本体41の第2開口部46及びボール部21により囲まれた空間部が、グリースGを収容する潤滑剤収容部としてのグリース溜まり空間S1となっている。
【0043】
ダストカバー15は、ダストシールあるいはブーツなどとも呼ばれるもので、上端側がスタッド部22の鍔部23の下部に嵌着されているとともに、下端側がソケット本体41のカバー嵌着部47に嵌着され、この下端側が図示しない環状のクリップによりカバー嵌着部47に係止されている。そして、このダストカバー15とボールスタッド12及びソケット本体41の第1開口部45により囲まれた空間部が、グリースGを収容する潤滑剤収容部としてのグリース溜まり空間S2となっている。
【0044】
次に、上記第1の実施の形態の製造方法を説明する。
【0045】
まず、図3(a)に示すように、球体Bを中子としてボールシート13を射出成形する。このとき、球体Bの形状に応じて、ボールシート13の内周側に保持面36とグリース溜まり32とが形成される。このため、球体Bの赤道近傍、及び、突起部Baは、それぞれアンダーカット形状となっている。
【0046】
この状態で、図示しない押し出しピンなどによりボールシート13に軸方向の外力を加えると、図3(b)に示すように、球体Bの外径寸法よりも小さい第1開口34がその径方向に拡径するように弾性変形し、ボールシート13が球体Bからいわゆる無理抜きされる。
【0047】
さらに、このボールシート13をボール部21の周囲に取り付けた状態で、これらボールシート13とボール部21とを中子として図4に示すように鋳造金型D1,D2間に取り付ける。このとき、鋳造金型D1,D2を閉じた状態でボール部21の上部と下部とが、それぞれ鋳造金型D1,D2によりこれら鋳造金型D1,D2とボールシート13との間に隙間が形成されないように挟持されて保持され、ボールシート13の周囲にキャビティCが形成される。
【0048】
そして、このキャビティCに、ソケット本体41の成形用の鋳造金属の溶湯を圧入して、ソケット本体41をダイキャスト成形する。
【0049】
このとき、鋳造金属の溶湯は、ボールシート13を形成する合成樹脂の耐熱温度よりも高い鋳造温度を有しているものの、ボールシート13を形成する合成樹脂は、気化に潜熱を要し、また、その熱伝導率が著しく小さいため、気化の進行が極めて徐々であり、通常の鋳造工程で行われる冷却過程を若干早める程度で気化消耗の内部への進行を容易に食い止めることが可能である。したがって、ボールシート13を形成する合成樹脂の耐熱温度よりも高い温度の鋳造金属の溶湯をキャビティCに圧入することで、ボールシート13が実用レベルで気化消耗することはなく、この成形によってソケット14にボール部21を保持したボールシート13を組み付ける工程を別個に要することなく、ソケット本体41の成形と同時に組み立てを完了することが可能になる。
【0050】
この成形品は、図5に示すように、ソケット本体41の上下両端部に開口34,35が形成され、これら開口34,35からボール部21の上下部が外部に露出しているとともに、ボール部21を保持したボールシート13がソケット本体41の内部に埋め込まれて固定されている。
【0051】
この後、ソケット本体41に所定の切削加工などを施すとともに、ソケット本体41の第1開口部45から突出したボール部21の上部に、スタッド部22を例えばプロジェクション溶接などにより溶接してボールスタッド12を形成する。
【0052】
さらに、グリース溜まり空間S1にグリースGを塗布した状態からボールスタッド12を摺動させ、第2開口35とボール部21との隙間からグリース溜まり32へとグリースGを封入し、プラグ42を第2開口部46に取り付け、かしめ部49をかしめて第2開口部46を閉塞する。
【0053】
そして、ソケット14とボールスタッド12との間にダストカバー15を嵌着して図2に示すボールジョイント11を完成する。
【0054】
上述したように、上記第1の実施の形態によれば、ボールシート13を、ソケット14を成形する際にボールスタッド12のボール部21とともに中子として用いることで、製造工程を簡略化して製造性を向上でき低コスト化が可能になるとともに、ボールシート13をボール部21と別個に形成することで、保持面36に自由にグリース溜まり32を設けることができるので、このグリース溜まり32に収容したグリースGによりボール部21の摺動性を確保でき、かつ、保持面36をソケット14側(外周面側)から隔離部37により隔離することでソケット14の成形時にソケット本体41の溶湯が保持面36側に回り込むことを防止できる。
【0055】
また、ボールシート13の製造に際して、ボールシート本体31を、第1開口34の内径よりも大きい外径を有する球体Bから抜くことで、ボールシート本体31がいわゆる無理抜きされ、ボールシート本体31に球体Bから抜くためのスリットなどを形成せずに済むので、ボールシート本体31の保持面36側をソケット14側から確実に隔離できる。
【0056】
さらに、保持面36のグリース溜まり32を、開口34,35に連通しない形状としたことにより、ソケット本体41の切削加工などの際に生じる金属屑などの塵埃がグリースGに混入することを防止でき、このような異物の混入によるボール部21の回動性の低下を防止できる。
【0057】
そして、上記のように製造したボールシート13とこのボールシート13の保持面36に回動可能に保持したボール部21とを中子としてソケット14を成形することにより、グリース溜まり32によってボール部21の良好な摺動性を得つつ、製造コストを抑制できる。
【0058】
次に、第2の実施の形態を図6を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0059】
この第2の実施の形態は、上下両端部に開口51,52を有する略筒状の中間体53を、例えばホットプレスなどにより加熱変形することでボールシート13を形成するものである。
【0060】
図6(a)に示すように、中間体53は、ボールシート13と略同様の形状を有しているものの、開口51,52のいずれか一方が他方よりも、例えば本実施の形態では開口51が開口52よりも大きい内径寸法を有しており、この開口51の内径寸法が、中間体53の最大の内径寸法となっているとともに、上下方向の中心域よりも開口51側の内周面が、この開口51の内径と略等しい内径寸法に形成されている。
【0061】
開口51,52は、中間体53を加熱変形してボールシート本体31としたときに開口34,35となる部分である。
【0062】
そして、ボールシート13の製造の際には、図6(b)に示すように、突起部Iaを有し保持面36及びグリース溜まり32を形成するための所定の中子Iの周囲に中間体53を射出成形などにより形成した後、開口51側から中間体53を中子Iから抜き、開口51からボール部21を中間体53の内周側に挿入して、例えばホットプレスなどにより開口51側をボール部21の外形に沿って縮径するように中間体53を加熱変形して、内周側の保持面36にグリース溜まり32を有するボールシート13とする。
【0063】
そして、このボール部21を保持したボールシート13を中子としてソケット本体41を成形し、スタッド部22をボール部21に溶接するなど、上記第1の実施の形態と同様にしてボールジョイント11を完成する。
【0064】
この結果、ボールシート13の製造の際に、中子Iよりも内径寸法を大きくした開口51側により中子Iから中間体53を容易に抜くことができるので、ボールシート本体31に保持面36とソケット14側とを連通するスリットなどが形成されず、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0065】
次に、第3の実施の形態を図7を参照して説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0066】
この第3の実施の形態は、上記各実施の形態のボールシート本体31が、軸方向の中心域から、複数、例えば2つの分割部55,56に分割されているものである。換言すれば、ボールシート本体31は、その中心軸に略直交する平面により分割部55,56に分割されている。
【0067】
分割部55は、例えばボールシート本体31の図7中の上半分を構成するもので、略筒状に形成され、上端部に第1開口34を有し、内周側が保持面36の上半分の保持面部55aとなっており、下端部が当接面55bとなっているとともに、下端側の外周面に、分割部56との係合用の係合凹部55cが形成されている。
【0068】
当接面55bは、例えばボールシート本体31の中心軸に略直交する平面に沿う平面状に形成され、保持面36側と外周面側とに連続している。
【0069】
また、係合凹部55cは、分割部55の外周面全体に連続的に、あるいは一部などに、溝状に形成されている。
【0070】
一方、分割部56は、例えばボールシート本体31の図7中の下半分を構成するもので、略筒状に形成され、下端部に第2開口35を有し、内周側が保持面36の下半分の保持面部56aとなっており、上端部が平面状の当接面56bとなっているとともに、上端側の外周面に、分割部55の係合凹部55cと係合される係合爪部56cが形成されている。
【0071】
当接面56bは、当接面55bと隙間なく当接されることで分割部55,56を隙間なく組み立て可能となっている。
【0072】
係合爪部56cは、分割部55の係合凹部55cに対応する位置に設けられ、先端側が中心軸方向に向けて折り返されるように爪状に突出している。
【0073】
そして、図示しない金型によりそれぞれ別個に分割部55,56を射出成形し、これら分割部55,56によりボール部21を保持しつつ当接面55b,56bを隙間なく当接させるように押し付け、係合爪部56cを係合凹部55cに係合させて分割部55,56を一体化することで、保持面36によりボール部21を回動可能に保持する。
【0074】
そして、このボール部21を保持したボールシート13を中子としてソケット本体41を成形し、スタッド部22をボール部21に溶接するなど、上記各実施の形態と同様にしてボールジョイント11を完成する。
【0075】
このように、ボールシート本体31を複数の分割部55,56に分割することで、アンダーカットなどが生じないように分割部55,56をそれぞれ別個に製造することが可能になり、金型を簡略化でき、製造性を向上できるとともに、分割部55,56を隙間なく組み合わせてボールシート本体31を形成することで、ボールシート本体31の保持面36をソケット14側から確実に隔離でき、ソケット14の成形時にソケット本体41の溶湯が保持面36側に回り込むことを防止できる。
【0076】
次に、第4の実施の形態を図8を参照して説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0077】
この第4の実施の形態は、上記第3の実施の形態の分割部55,56を、例えば超音波溶着(振動溶着)などにより互いに溶着したものである。
【0078】
分割部55は、当接面55bに連続して径方向に突出した突出部55dを有している。同様に、分割部56は、当接面56bに連続して径方向に突出した突出部56dを有している。これら突出部55d,56dは、分割部55,56からフランジ状に突出し、周方向全体に連続的に、あるいは周方向の一部などに、互いに対向するように形成されている。
【0079】
そして、図示しない金型によりそれぞれ別個に分割部55,56を射出成形し、これら分割部55,56によりボール部21を保持しつつ当接面55b,56bを隙間なく当接させるように押し付け、係合爪部56cを係合凹部55cに係合させて分割部55,56を一体化することで、保持面36によりボール部21を回動可能に保持する。
【0080】
この後、このボール部21を保持したボールシート13を中子としてソケット本体41を成形し、スタッド部22をボール部21に溶接するなど、上記各実施の形態と同様にしてボールジョイント11を完成する。
【0081】
このように、ボールシート本体31を分割部55,56に分割するなど、上記第3の実施の形態と同様の構成を有することで、上記第3の実施の形態と同様の作用効果を奏することができるとともに、分割部55,56を互いに隙間なく溶着することで、保持面36側を、より確実にソケット14側から隔離できる。
【0082】
また、分割部55,56を超音波振動により溶着することで、これら分割部55,56を容易かつ確実に溶着できるとともに、例えば接着剤を当接面に塗布して溶着する場合などと比較して、製造コストを抑制できるとともに、接着剤を硬化させる時間なども必要なく、タクトタイムを短くできる。
【0083】
さらに、当接面55b,56bに連続した突出部55d,56dを設けることで、当接面55b,56bの面積をより大きくすることができ、分割部55,56を、より確実に溶着できる。
【0084】
次に、第5の実施の形態を図9を参照して説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0085】
この第5の実施の形態は、上記各実施の形態のボールシート本体31が、平面視の中心域から、複数、例えば2つの分割部58,59に分割されているものである。換言すれば、ボールシート本体31は、その中心軸を含む平面により分割部58,59に分割されている。
【0086】
分割部58は、例えばボールシート本体31の図9中の左半分を構成するもので、略半円筒状に形成され、内周側が保持面36の左半分の保持面部58aとなっており、右端部が当接面58bとなっているとともに、右端側の外周面に、分割部59との係合用の係合凹部58cと係合爪部58dとが形成されている。
【0087】
当接面58bは、例えばボールシート本体31の中心軸を含む平面に沿う平面状に形成され、保持面36側と外周面側とに連続している。
【0088】
また、係合凹部58cは、分割部58のいずれか一側、例えば図中上側の外周面に、上下方向に沿って連続的に、あるいはその一部に、溝状に形成されている。
【0089】
さらに、係合爪部58dは、分割部58のいずれか他側、例えば図中下側の外周面に、上下方向に沿って連続的に、あるいはその一部に、先端が中心軸方向に向けて折り返されるように爪状に突出している。
【0090】
一方、分割部59は、例えばボールシート本体31の図9中の右半分を構成するもので、略半円筒状に形成され、内周側が保持面36の右半分の保持面部59aとなっており、左端部が当接面59bとなっているとともに、左端側の外周面に、左端側の外周面に、分割部58の係合凹部58cに係合される係合爪部59cと分割部58の係合爪部58dが係合される係合凹部59dとが形成されている。
【0091】
当接面59bは、当接面58bと隙間なく当接されることで分割部58,59を隙間なく組み立て可能となっている。
【0092】
また、係合爪部59cは、分割部59のいずれか一側、例えば図中上側の外周面に、上下方向に沿って連続的に、あるいはその一部に、先端が中心軸方向に向けて折り返されるように爪状に突出している。
【0093】
さらに、係合凹部59dは、分割部59のいずれか他側、例えば図中下側の外周面に、上下方向に沿って連続的に、あるいはその一部に、溝状に形成されている。
【0094】
そして、図示しない金型によりそれぞれ別個に分割部58,59を射出成形し、これら分割部58,59によりボール部21を保持しつつ当接面58b,59bを隙間なく当接させるように押し付け、係合爪部58d,59cを係合凹部59d,58cに係合させて分割部58,59を一体化することで、保持面36によりボール部21を回動可能に保持する。
【0095】
この後、このボール部21を保持したボールシート13を中子としてソケット本体41を成形し、スタッド部22をボール部21に溶接するなど、上記各実施の形態と同様にしてボールジョイント11を完成する。
【0096】
このように、ボールシート本体31を複数の分割部58,59に分割するなど、上記第3の実施の形態と同様の構成を有することで、上記第3の実施の形態と同様の作用効果を奏することが可能になる。
【0097】
次に、第6の実施の形態を図10を参照して説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0098】
この第6の実施の形態は、上記第5の実施の形態の分割部58,59を、例えば超音波溶着(振動溶着)などにより互いに溶着したものである。
【0099】
分割部58は、当接面58bに連続して径方向に突出した突出部58eを有している。同様に、分割部59は、当接面59bに連続して径方向に突出した突出部59eを有している。これら突出部58e,59eは、分割部58,59からフランジ状に突出し、周方向全体に連続的に、あるいは周方向の一部などに、互いに対向するように形成されている。
【0100】
そして、図示しない金型によりそれぞれ別個に分割部58,59を射出成形し、これら分割部58,59によりボール部21を保持しつつ当接面58b,59bを隙間なく当接させるように押し付け、例えば超音波などにより当接面58b,59bを溶着して分割部58,59を一体化することで、保持面36によりボール部21を回動可能に保持する。
【0101】
この後、このボール部21を保持したボールシート13を中子としてソケット本体41を成形し、スタッド部22をボール部21に溶接するなど、上記各実施の形態と同様にしてボールジョイント11を完成する。
【0102】
このように、ボールシート本体31を分割部58,59に分割するなど、上記第5の実施の形態と同様の構成を有することで、上記第5の実施の形態と同様の作用効果を奏することができるとともに、分割部58,59を互いに隙間なく溶着することで、保持面36側を、より確実にソケット14側から隔離できる。
【0103】
なお、上記第3の実施の形態ないし第6の実施の形態において、当接面55b,56b、あるいは当接面58b,59bの少なくともいずれかにダボなどの突起部を設け、当接面55b,56b、あるいは当接面58b,59bの突起部に対応する位置に凹部を設けて、これら突起部と凹部との嵌合により分割部55,56あるいは分割部58,59を互いに隙間なく組み合わせるように構成してもよい。
【0104】
同様に、当接面55b,56b、あるいは当接面58b,59bにそれぞれ段差などの嵌合部を設けて、これら嵌合部を嵌合させることで、分割部55,56あるいは分割部58,59を互いに隙間なく組み合わせるように構成してもよい。
【0105】
次に、第7の実施の形態を図11を参照して説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0106】
この第7の実施の形態は、上記第6の実施の形態において、分割部58,59がヒンジ部61により連結されているものである。
【0107】
ヒンジ部61は、一方の突出部58e,59eに代えて分割部58,59と一体に設けられ、例えば分割部58,59と同じ材料により一体に形成されている。したがって、このヒンジ部61は、塑性変形可能で、かつ、弾性を有している。なお、本実施の形態では、ヒンジ部61をボールシート本体31の軸方向全体に連続させて形成したが、ボールシート本体31の分割部58,59の一部に形成されていれば充分であることは言うまでもない。
【0108】
そして、ボールシート13の製造に際しては、図示しない成形金型によりヒンジ部61を有する中間体63を成形するとともに、ボール部21を内周側に保持しつつヒンジ部61により中間体63を閉じ、当接面58b,59bを互いに当接させて超音波などにより溶着することで、ボール部21を保持面36にて回動可能に保持したボールシート本体31を形成する。
【0109】
この後、このボール部21を保持したボールシート13を中子としてソケット本体41を成形し、スタッド部22をボール部21に溶接するなど、上記各実施の形態と同様にしてボールジョイント11を完成する。
【0110】
この結果、上記第3ないし第6の実施の形態と同様の作用効果を奏することができるとともに、分割部58,59を連結する塑性変形可能なヒンジ部61を有することで、分割部58,59を個別に組み合わせる場合と比較して、ヒンジ部61の変形によって分割部58,59を容易に組み合わせることができ、製造性をより向上できる。
【0111】
なお、上記第7の実施の形態において、当接面58b,59bを溶着せずに、上記第5の実施の形態のように、係合凹部58cと係合爪部59cとにより隙間なく組み合わせるように構成してもよい。
【0112】
また、上記第3の実施の形態、あるいは第4の実施の形態の分割部55,56をヒンジ部61により連結しても同様の作用効果を奏することができる。
【0113】
さらに、上記第3の実施の形態ないし第7の実施の形態において、分割部の分割の仕方は、例えば球体Bを取り外しやすいなど成形性が良好で、かつ、ボールシート本体31を組み立てやすくなるようにするなど、任意に設定できる。
【0114】
そして、分割部55,56、あるいは分割部58,59は、例えば球体Bを中子とする金型により射出成形してもよい。この場合でも、球体Bから分割部55,56、あるいは分割部58,59を容易に抜くことができるなど、上記第3の実施の形態ないし第7の実施の形態と同様の作用効果を奏することが可能になる。
【0115】
次に、第8の実施の形態を図12を参照して説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0116】
この第8の実施の形態は、ボールシート13のボールシート本体31が、中間体65のスリット66を隙間なく閉塞して形成されたものである。
【0117】
中間体65は、上下端部に開口68,69を有する略筒状に形成されている。
【0118】
開口68,69は、スリット66を閉塞して中間体65をボールシート本体31としたときに開口34,35となる部分である。
【0119】
スリット66は、開口68,69の少なくとも一方、本実施の形態では開口68から上下方向の中心域まで軸方向に沿って切り欠き形成され、中間体65の内周側と外周側とを連通するものである。また、このスリット66には、内縁部に沿って薄肉状の溶着部66aが設けられている。さらに、このスリット66は、幅寸法、すなわち溶着部66a,66a間の寸法が、例えば0mm〜0.8mm程度に形成されている。
【0120】
そして、ボールシート13の製造の際には、球体Bを中子としてこの球体Bの周囲に中間体65を射出成形し、中間体65に軸方向に外力を加えることで、スリット66を介して中間体65が開き、球体Bから抜ける。
【0121】
この後、ボール部21を中間体65の内周側に保持しつつスリット66の内縁部の溶着部66a,66aを互いに接触させて、例えば超音波などにより溶着することでスリット66を閉塞し、ボール部21の外周面に沿いこのボール部21を回動可能に保持する保持面36を有するボールシート本体31を形成する。
【0122】
さらに、このボール部21を保持したボールシート13を中子としてソケット本体41を成形し、スタッド部22をボール部21に溶接するなど、上記各実施の形態と同様にしてボールジョイント11を完成する。
【0123】
このように、中間体65にスリット66を形成することで、球体Bから中間体65を容易に抜くことができるとともに、スリット66を隙間なく溶着して閉塞してボールシート本体31を形成することで、ボールシート本体31の保持面36側をソケット14側から確実に隔離でき、ソケット14の成形時にソケット本体41の溶湯が保持面36側に回り込むことを防止できる。
【0124】
また、スリット66は、上下方向の中心域、すなわち上下方向における球体Bの径寸法が最も大きい赤道位置に対応する位置を含む位置まで切り欠き形成されているので、射出成形した中間体65に過剰な外力を加えることなく球体Bから容易に抜くことができる。
【0125】
なお、上記各実施の形態において、ソケット本体41は、合成樹脂による射出成形により成形してもよい。この場合には、鋳造金型D1,D2を射出成形用金型に置き換えることで、上記各実施の形態と同様に製造でき、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の第1の実施の形態のベアリングシートを示す縦断面図である。
【図2】同上ベアリングシートを備えたボールジョイントを示す縦断面図である。
【図3】(a)は同上ベアリングシートの射出成形状態を示す縦断面図、(b)は同上ベアリングシートのベアリングシート本体を球体から無理抜きした状態を示す説明断面図である。
【図4】同上ハウジングの成形工程を示す説明断面図である。
【図5】同上ハウジングを成形した状態を示す説明断面図である。
【図6】(a)は本発明の第2の実施の形態のベアリングシートの中間体を示す縦断面図、(b)は同上中間体を加熱変形してベアリングシート本体を形成した状態を示す縦断面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態のベアリングシートを示す縦断面図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態のベアリングシートを示す縦断面図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態のベアリングシートを示す横断面図である。
【図10】本発明の第6の実施の形態のベアリングシートを示す横断面図である。
【図11】(a)は本発明の第7の実施の形態のベアリングシートを示す側面図、(b)は同上ベアリングシートを示す横断面図である。
【図12】(a)は本発明の第8の実施の形態のベアリングシートの中間体を示す正面図、(b)は同上ベアリングシートを示す正面図、(c)は同上ベアリングシートの一部を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0127】
11 ボールジョイント
12 ボールスタッド
13 ベアリングシートとしてのボールシート
14 ハウジングであるソケット
21 ボール部
31 ベアリングシート本体としてのボールシート本体
32 凹部としてのグリース溜まり
34 開口としての第1開口
36 保持面
51 開口
53,65 中間体
55,56,58,59 分割部
61 ヒンジ部
66 スリット
B 中子としての球状部である球体
G 潤滑剤であるグリース
I 中子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングを成形する際にボールスタッドのボール部とともに中子となるベアリングシートであって、
略筒状に形成され、前記ボール部を回動可能に保持し前記ハウジング側から隔離された保持面を内周側に有するベアリングシート本体と、
このベアリングシート本体の前記保持面に設けられ、潤滑剤を収容可能な凹部とを備えている
ことを特徴とするベアリングシート。
【請求項2】
ベアリングシート本体は、複数の分割部に分割され、これら分割部を隙間なく組み合わせて形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のベアリングシート。
【請求項3】
ベアリングシート本体は、一の分割部と他の分割部とを連結する塑性変形可能なヒンジ部を有している
ことを特徴とする請求項2記載のベアリングシート。
【請求項4】
分割部は、互いに隙間なく溶着されている
ことを特徴とする請求項2または3記載のベアリングシート。
【請求項5】
ベアリングシート本体は、軸方向に沿って少なくとも一端部に連通して切り欠き形成され、内縁部が隙間なく溶着されることで閉塞されて前記保持面をハウジング側から隔離するスリットを備えている
ことを特徴とする請求項1記載のベアリングシート。
【請求項6】
ボール部を有するボールスタッドと、
前記ボール部を回動可能に保持する請求項1ないし5いずれか一記載のベアリングシートと、
前記ボール部と前記ベアリングシートとを中子として成形されたハウジングと
を具備したことを特徴とするボールジョイント。
【請求項7】
略筒状に形成され、ボールスタッドのボール部を回動可能に保持する保持面を内周側に有するとともに、この保持面に連通する開口を有するベアリングシート本体と、このベアリングシート本体の保持面に設けられ、潤滑剤を収容可能な凹部とを備え、ハウジングを成形する際に前記ボール部とともに中子となるベアリングシートの製造方法であって、
前記開口の内径よりも大きい外径を有し前記保持面及び前記凹部を形成するための球状部を備えた中子の周囲に前記ベアリングシート本体を形成し、
前記ベアリングシート本体を、前記開口を介して前記中子から抜く
ことを特徴とするベアリングシートの製造方法。
【請求項8】
略筒状に形成され、ボールスタッドのボール部を回動可能に保持する保持面を内周側に有するベアリングシート本体と、このベアリングシート本体の保持面に設けられ、潤滑剤を収容可能な凹部とを備え、ハウジングを成形する際に前記ボール部とともに中子となるベアリングシートの製造方法であって、
前記保持面及び前記凹部を形成するための中子の周囲に、この中子の外径よりも大きい内径を有する開口を備えた筒状の中間体を形成し、
前記開口を介して前記中間体を前記中子から抜き、
前記開口から挿入した前記ボール部に沿って前記中間体を加熱変形させて前記開口を縮径することで、前記ベアリングシート本体とする
ことを特徴とするベアリングシートの製造方法。
【請求項9】
略筒状に形成され、ボールスタッドのボール部を回動可能に保持する保持面を内周側に有するベアリングシート本体と、このベアリングシート本体の保持面に設けられ、潤滑剤を収容可能な凹部とを備え、ハウジングを成形する際に前記ボール部とともに中子となるベアリングシートの製造方法であって、
前記保持面及び前記凹部を形成するための球体を中子としてこの球体の周囲に、軸方向に沿うスリットを有する略筒状の中間体を形成し、
前記中間体を前記球体から軸方向に抜き、
前記ボール部を保持するように前記中間体の前記スリットを隙間なく溶着して閉塞することで前記ベアリングシート本体とする
ことを特徴とするベアリングシートの製造方法。
【請求項10】
ボールスタッドのボール部に請求項7ないし9いずれか一記載のベアリングシートの製造方法により製造したベアリングシートを取り付け、
これらボール部及びベアリングシートを中子としてハウジングを成形する
ことを特徴とするボールジョイントの製造方法。
【請求項1】
ハウジングを成形する際にボールスタッドのボール部とともに中子となるベアリングシートであって、
略筒状に形成され、前記ボール部を回動可能に保持し前記ハウジング側から隔離された保持面を内周側に有するベアリングシート本体と、
このベアリングシート本体の前記保持面に設けられ、潤滑剤を収容可能な凹部とを備えている
ことを特徴とするベアリングシート。
【請求項2】
ベアリングシート本体は、複数の分割部に分割され、これら分割部を隙間なく組み合わせて形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のベアリングシート。
【請求項3】
ベアリングシート本体は、一の分割部と他の分割部とを連結する塑性変形可能なヒンジ部を有している
ことを特徴とする請求項2記載のベアリングシート。
【請求項4】
分割部は、互いに隙間なく溶着されている
ことを特徴とする請求項2または3記載のベアリングシート。
【請求項5】
ベアリングシート本体は、軸方向に沿って少なくとも一端部に連通して切り欠き形成され、内縁部が隙間なく溶着されることで閉塞されて前記保持面をハウジング側から隔離するスリットを備えている
ことを特徴とする請求項1記載のベアリングシート。
【請求項6】
ボール部を有するボールスタッドと、
前記ボール部を回動可能に保持する請求項1ないし5いずれか一記載のベアリングシートと、
前記ボール部と前記ベアリングシートとを中子として成形されたハウジングと
を具備したことを特徴とするボールジョイント。
【請求項7】
略筒状に形成され、ボールスタッドのボール部を回動可能に保持する保持面を内周側に有するとともに、この保持面に連通する開口を有するベアリングシート本体と、このベアリングシート本体の保持面に設けられ、潤滑剤を収容可能な凹部とを備え、ハウジングを成形する際に前記ボール部とともに中子となるベアリングシートの製造方法であって、
前記開口の内径よりも大きい外径を有し前記保持面及び前記凹部を形成するための球状部を備えた中子の周囲に前記ベアリングシート本体を形成し、
前記ベアリングシート本体を、前記開口を介して前記中子から抜く
ことを特徴とするベアリングシートの製造方法。
【請求項8】
略筒状に形成され、ボールスタッドのボール部を回動可能に保持する保持面を内周側に有するベアリングシート本体と、このベアリングシート本体の保持面に設けられ、潤滑剤を収容可能な凹部とを備え、ハウジングを成形する際に前記ボール部とともに中子となるベアリングシートの製造方法であって、
前記保持面及び前記凹部を形成するための中子の周囲に、この中子の外径よりも大きい内径を有する開口を備えた筒状の中間体を形成し、
前記開口を介して前記中間体を前記中子から抜き、
前記開口から挿入した前記ボール部に沿って前記中間体を加熱変形させて前記開口を縮径することで、前記ベアリングシート本体とする
ことを特徴とするベアリングシートの製造方法。
【請求項9】
略筒状に形成され、ボールスタッドのボール部を回動可能に保持する保持面を内周側に有するベアリングシート本体と、このベアリングシート本体の保持面に設けられ、潤滑剤を収容可能な凹部とを備え、ハウジングを成形する際に前記ボール部とともに中子となるベアリングシートの製造方法であって、
前記保持面及び前記凹部を形成するための球体を中子としてこの球体の周囲に、軸方向に沿うスリットを有する略筒状の中間体を形成し、
前記中間体を前記球体から軸方向に抜き、
前記ボール部を保持するように前記中間体の前記スリットを隙間なく溶着して閉塞することで前記ベアリングシート本体とする
ことを特徴とするベアリングシートの製造方法。
【請求項10】
ボールスタッドのボール部に請求項7ないし9いずれか一記載のベアリングシートの製造方法により製造したベアリングシートを取り付け、
これらボール部及びベアリングシートを中子としてハウジングを成形する
ことを特徴とするボールジョイントの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−108962(P2009−108962A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283467(P2007−283467)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000198271)株式会社ソミック石川 (91)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000198271)株式会社ソミック石川 (91)
【Fターム(参考)】
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