説明

ボールジョイントを備えた空気バネ

本発明は、ロールダウンチューブ(7)に固定され、且つ、それと共にバネ空間(9)を形成するローリングベローズ(3)を備えて成る空気バネ(1)に関する。ロールダウンチューブ(7)は、軸受胴に含まれる球状軸受要素(15)を備えて成るボールジョイント(13)を用いて、基部(11)に接続される。軸受胴(17)を球状軸受要素(15)に関してクランプ要素(25)を用いて調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前置き部分に記載の空気バネに関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】DE 199 59 839 A1
【0003】
特許文献1の図6は、ロールダウンチューブ(roll-down tube)に取り付けられるローリングベローズ(rolling bellows)を備えた空気バネを示す。基部(この場合、振動ダンパ)とロールダウンチューブとの間にボールジョイントが設置される。ボールジョイントは、球状軸受要素から成り、当該球状軸受要素は、二つ割の軸受胴に配置される。空気バネのバネ空間を密封するシールが、軸受胴の二つの半体間に存在する。
【0004】
このボールジョイントにおいて、寸法のふれ乃至偏差は、内部摩擦の増加につながり、あるいは、シールが軸受胴の間で適切にプレテンションされない別の極端な場合には、大量のリーク及びノイズにつながる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、摩擦とリークに関して従来技術から良く知られた問題点を解消するように、特に空気バネのために意図されるボールジョイントを改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にしたがい、本課題は、軸受胴がクランプ要素を用いて球状軸受要素上へ締めつけられることが可能な点で解決される。
【0007】
軸受胴と球状軸受要素との間の軸受遊びを所望の値に正確に調整することができるので、摩擦の問題点は解決される。
【0008】
本発明の具体的な実施形態において、軸受胴は、外側に円錐状の把持面を有し、当該把持面に対してクランプ要素が作用する。クランプ要素は、軸受胴の直径を縮める軸方向のテンション動作(tensioning movement)を及ぼす。
【0009】
クランプ要素がテンションリングによって形成されるので、軸受胴は、半径方向に均一にプレテンションされる。クランプ要素は、支持スリーブに対して支えられ、したがって、それ自身申し分なく中心にあわせられる。
【0010】
球状軸受要素、軸受胴、テンションリング及び支持スリーブは、支持スリーブが、球状軸受要素の赤道に対して第一把持面と反対側にある、軸受胴上のさらなる把持面と協働するので、閉じた構造ユニットを形成する。
【0011】
ねじ継手がクランプ要素と支持スリーブとの間に存在するので、軸受胴を連続的に可変で調整することができる。
【0012】
テンションリングに及ぼされなければならない調整力が、限度乃至範囲にとどまるように、軸受胴は弾性である。例えば、摩擦がボールジョイントの加熱のために増加する場合、テンションリングをわずかに緩めることができる。軸受胴は、その固有の弾性のために、適切に修正された外形を取るであろう。
【0013】
さらに、軸受胴は、一体部品として構成される。一体で胴を作ることは、製造に関して著しい長所を提供する。軸受胴は、球状軸受要素上を越えて押込まれ、この後でそれらを分解することができない。
【0014】
軸受胴はスロットを入れられるので、基本的に非弾性の材料も軸受胴ために用いることができる。軸受胴の一方の端部から球状軸受要素の赤道を過ぎた地点まで続くいくつかのスロット、又は、縦方向に延在する一つのスロットのどちらかを設けることができる。
【0015】
別の有利な実施形態において、シールはバネ空間を軸受胴から切り離す。軸受胴のプレテンション(pretension)は、したがって、シールのプレテンションから独立しているので、所望の軸受遊びを得るための目的と空気バネを効果的にシールする目的との間に、相反乃至対立は全く存在することができない。
【0016】
シールはリップシールとして構成され、当該リップシールはバネ空間内側の圧力に応じて球状軸受要素上でプレテンションされる。シールは、ロールダウンチューブ及び支持スリーブの間で軸方向に適所に保持されるので、シールのためにロールダウンチューブに分離シール溝を機械加工する必要はない。
【0017】
支持スリーブは、ロールダウンチューブによって半径方向に適所に保持され、且つ、ロールダウンチューブ上のリテーナリングによって軸方向に適所に保持される。組立の間に、ボールジョイントユニットはロールダウンチューブに簡単に押込まれ、前述のリテーナリングを用いて取り付けられる。
【0018】
有利な適用によれば、基部は振動ダンパによって形成され、当該振動ダンパは、球状軸受要素を貫通する。
【0019】
ボールジョイントは、単に基部の上に降ろされる。リークを防止するために、シールが基部と球状軸受要素との間に配置される。
【0020】
ボールジョイント内部ですばやく且つ容易に軸受遊びを調整することが可能であるべきであるが、それで、いかなるダメージをも生じさせるべきではない。このために、クランプ要素にはレンチのための平坦部乃至フラット(flats)が設けられる。
【0021】
空気バネを備えたボールジョイントの特定の適用において、車両からの汚染粒子がボールジョイントに侵入することも可能である。これを本発明のボールジョイントで発生させないために、ボールジョイントは保護ベローズによって覆われる。
【0022】
修理を可能にするために、ボールジョイントを取り外すことが必要になる場合、ボールジョイントへの自由アクセスを提供するために、テンションリングに取り付けられた保護ベローズの一方の端部を非常に容易に取り外すことができる。単純なバネクランプが、保護ベローズの端部をテンションリング上の適所にしっかりと保持する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明が、以下の図の記述に基づいてより詳細に説明される。
【0024】
図1は、ローリングベローズ3を備えた空気バネ1を示し、当該ローリングベローズの上端部は、接続プレート5に支持される。ローリングベローズのもう一方の端部は、ロールダウンチューブ7に取り付けられている。ローリングベローズとロールダウンチューブとは、バネ空間9の境界を形成し、当該バネ空間は、圧縮空気供給(図示せず)に連結される。公知の振動ダンパ11の形態において、ロールダウンチューブ7と基部との間にボールジョイント13が設けられ、当該ボールジョイントは、図2において単離した組立体として示されている。
【0025】
ボールジョイントが球状軸受要素15を有しているのが図2において見て取ることができ、当該ボールジョイントは、軸受胴17内で周方向における周動を可能にさせ、且つ、球状軸受要素が縦軸19に対する旋回動作を実行することも可能にする。軸受胴17は、図3及び4で見て取ることができるように、一体部品として構成される。さらに、軸受胴は、特に半径方向に弾性なので、当該軸受胴を取り付けの間に球状軸受要素15上を越えて押込むができる。軸受胴は、スロット21を有し、当該スロットは、上端部から赤道23を越える地点まで延在する(図2参照)。代わりに、破線で示されるように、単一の連続するスロットを設けることも可能である。
【0026】
クランプ要素25を用いて、軸受胴17を球状軸受要素15に関して調整することができる。クランプ要素25は、部分的にはテンションリング27により形成され、当該テンションリングは、支持スリーブ29に支えられる。クランプ要素、すなわちテンションリング27と支持スリーブ29との間に、テンションリングを支持スリーブに関して軸方向に連続して可変に動かせるようにするねじ継手31が存在する。外側では、軸受胴は円錐状の第一把持面33を有し(図4も参照)、そこにテンションリング27が作用する。支持スリーブ29は、軸受胴17上の別の把持面であって、球状軸受要素15の赤道23に対して、第一把持面33と反対側にある把持面35と協働する。
【0027】
球状軸受要素15、軸受胴17、テンションリング27、及び、支持スリーブ29は、閉じたボールジョイント組立体を形成し、当該ボールジョイント組立体を設備後に調整することができる。このために、テンションリングは、支持スリーブに関してテンションリングを回動することを容易にさせるレンチのための平坦部37を有する。テンションリングと支持スリーブとの二つの把持面33、35は、球状軸受要素15の方に変形させられ、その結果として、ボールジョイントをその軸受遊びに関して正確に調整することができる。
【0028】
球状軸受要素は、振動ダンパ11(図1)を保持するための貫通開口39を有する。振動ダンパに面する方向に、ボールジョイントは、保護ベローズ41によって覆われ、当該保護ベローズは、ロッキングリング43を用いて、テンションリング27に一方の端部で取り付けられる。
【0029】
空気バネの組立の間、既述のユニットは、振動ダンパ11の上に通される。アングルリング乃至山形リング(angle ring)45が振動ダンパ11に取り付けられ、且つ、振動ダンパに取り付けられるシール47が、ボールジョイント13と振動ダンパとの間のリークを防止するために、球状軸受要素15と基部11、すなわち、アングルリングとの間に設けられる。組立プロセスのさらなるステップで、シール49が支持スリーブ29の端面上に取り付けられる。このシールは、軸受胴17からバネ空間9を分離する。シール49は、リップシールとして構成され、当該リップシールは、バネ空間9の内側の圧力に応じて球状軸受要素15にプリテンションされる。
【0030】
その後、ロールダウンチューブ7は、振動ダンパ11のピストンロッド51の方向から支持スリーブ29上へ押されるので、シール49は、ロールダウンチューブ7と支持スリーブ29との間で軸方向に適所に保持される。支持スリーブは、今度は、ロールダウンチューブによって半径方向で適所に保持され、リテーナリング53によって軸方向に固定される。
【0031】
振動ダンパ11がボールジョイント13から抜け落ちることができないように、リテーナリング55が、アングルリング45と球状軸受要素15との間の溝57(図2)に収容される。リテーナリング55を取り外すために、軸方向スロット59が溝57に設けられる。この溝は、溝57の外からリテーナリングを押圧することができるツールのためのアクセスを提供する。その後、保護ベローズ41がロッキングリングによって適所に取り付けられ、保持される。
【0032】
最適な軸受遊びを備えたボールジョイントのために、現在存在する振動ダンパと空気バネとから成るモジュールを、例えば、低い摩擦によってだけでなく、リークがないことによっても特徴付けられる方法で、車の車軸と車体との間のカルダン動作(cardanic movements)を補償乃至相殺するために用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】振動ダンパを備えた空気バネの全体図を示す。
【図2】ボールジョイント組立体の横断面を示す。
【図3】ボールジョイントの軸受胴の図を示す。
【図4】ボールジョイントの軸受胴の図を示す。
【符号の説明】
【0034】
7 ロールダウンチューブ
9 バネ空間
11 振動ダンパ
13 ボールジョイント
15 球状軸受要素
17 軸受胴
23 赤道
25 クランプ要素
27 テンションリング
29 支持スリーブ
31 ねじ継手
33 把持面
35 把持面
37 平坦部
41 保護ベローズ
47 シール
49 シール
53 リテーナリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールダウンチューブに取り付けられ、かくしてバネ空間を形成するローリングベローズを備えて成る空気バネにして、当該ロールダウンチューブが、軸受胴内に球状軸受要素を有するボールジョイントによって基部に接続される空気バネにおいて、軸受胴(17)を、クランプ要素(25)を用いて球状軸受要素(15)上に締めつけることができることを特徴とする空気バネ。
【請求項2】
軸受胴(17)が、外側では円錐把持面(33)を有し、そこにクランプ要素(25)が作用することを特徴とする請求項1に記載の空気バネ。
【請求項3】
クランプ要素(25)が、テンションリング(27)によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の空気バネ。
【請求項4】
クランプ要素(25)が、支持スリーブに対して支えられることを特徴とする請求項1に記載の空気バネ。
【請求項5】
支持スリーブ(29)が、球状軸受要素(15)の赤道(23)に対して第一把持面(33)と反対側にある、軸受胴(17)の別の把持面(35)と協働することを特徴とする請求項4に記載の空気バネ。
【請求項6】
ねじ継手(31)が、クランプ要素(27)と支持スリーブ(29)との間に存在することを特徴とする請求項4に記載の空気バネ。
【請求項7】
軸受胴(17)が、弾性であることを特徴とする請求項1に記載の空気バネ。
【請求項8】
軸受胴(17)が、一体部品として構成されることを特徴とする請求項7に記載の空気バネ。
【請求項9】
軸受胴(17)が、スロットを入れられることを特徴とする請求項7に記載の空気バネ。
【請求項10】
シール(49)が、バネ空間(9)を軸受胴(17)から切り離すことを特徴とする請求項1に記載の空気バネ。
【請求項11】
シール(49)が、リップシールとして構成され、当該リップシールが、バネ空間(9)の内側の圧力に応じて球状軸受要素(15)上にプリテンションすることを特徴とする請求項10に記載の空気バネ。
【請求項12】
シール(49)が、ロールダウンチューブ(7)と支持スリーブ(29)との間で軸方向に適所に保持されることを特徴とする請求項10に記載の空気バネ。
【請求項13】
支持スリーブ(29)が、ロールダウンチューブ(7)によって半径方向で適所に保持されることを特徴とする請求項4に記載の空気バネ。
【請求項14】
支持スリーブ(29)が、リテーナリング(53)によってロールダウンチューブ(7)上で軸方向に適所に保持されることを特徴とする請求項13に記載の空気バネ。
【請求項15】
基部が振動ダンパ(11)によって形成され、当該振動ダンパは、球状軸受要素(15)を貫通することを特徴とする請求項1に記載の空気バネ。
【請求項16】
シール(47)が、基部(11)と球状軸受要素(15)との間に設けられることを特徴とする請求項1に記載の空気バネ。
【請求項17】
クランプ要素(27)が、レンチのための平坦部(37)を備えて構成されることを特徴とする請求項6に記載の空気バネ。
【請求項18】
ボールジョイント(13)が、保護ベローズ(41)によって覆われることを特徴とする請求項1に記載の空気バネ。
【請求項19】
保護ベローズの一端が、テンションリング(27)に取り付けられることを特徴とする請求項18に記載の空気バネ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2008−516161(P2008−516161A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535059(P2007−535059)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010463
【国際公開番号】WO2006/040011
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(504115002)ツェットエフ フリードリッヒスハーフェン アーゲー (23)
【Fターム(参考)】