説明

ボール外部循環式ボールねじ

【課題】転がり子が循環経路の進出口の曲がり箇所に直接衝突しなくなり、ボールねじの寿命が従来のものよりも更に長く延びるボール外部循環式ボールねじを提供する。
【解決手段】ねじ軸と、ナットと、循環子40と、循環経路50と、複数の転がり子と、を含み、ねじ軸は、周面には転がり溝が開設され、ナットは、その中心にはねじ軸を挿通するための貫通孔が開設され、貫通孔の周面には転がり溝が開設され、循環子は、両端がそれぞれ第一脚部43と第二脚部44であり、第一脚部43と第二脚部44は、ナットに設けられ、その間には連接部45が設けられ、循環経路50は、循環子の内部に設けられ、第一脚部43と連接部45と第二脚部44とを貫通すると共に、負荷経路と連通しており、進出段51と、第一曲がり段52と、第二曲がり段53と、連接段54と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじに係り、特にボール外部循環式ボールねじに関するものである。
【背景技術】
【0002】
目下、ボールねじは各種類の工作機械(例えば、フライス盤の工作テーブル、研磨盤の工作テーブル、旋盤の工作テーブルやボール盤の工作テーブルなど)に使用されており、上下左右に移動可能であることが必要であるため、工作機械の工作テーブルはボールねじを利用する。転がり子の流動方向により、ボールねじは、ボール内部循環式ボールねじと、ボール外部循環式ボールねじと、に分けられ、なお、本発明はボール外部循環式ボールねじに関するものである。ボール外部循環式ボールねじは、転がり子の回流がボールねじの外部で完成するものである。
【0003】
例えば米国特許第3,143,896号公報は、図1に示すように、循環子11が二つの脚部111を介してナット12内に組み付けられており、その循環経路112が負荷経路121と連通しており、転がり子13が前記循環経路112と負荷経路121とを通過可能であり、しかし、循環経路112がねじ軸14の軸方向と垂直するので、循環経路112の進出口の曲がり箇所113では、転がり子13が衝突し易く、そうすると、騒音が発生し、循環子11の寿命が短くなるという欠点があった。
【0004】
また、例えば米国特許第7,040,189号公報は、図2に示すように、循環経路151がねじ軸(図示せず)の軸方向と垂直するので、循環経路151の進出口の曲がり箇所152では、転がり子13に衝突されて欠陥が発生し、また、循環子15は、左右のピースを結合してナット(図示せず)に組付けられ、循環子15の循環経路151の進出口の曲がり箇所152では衝撃点があるので、循環子15が衝撃されて離間することを防止するために、補強構造を別に設けることが必要であるが、生産コストが増加する欠点があった。
【特許文献1】米国特許第3,143,896号公報
【特許文献2】米国特許第7,040,189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の主な目的は、組み付けられた循環経路がねじ軸の軸方向と垂直しないようにすることにより、転がり子が循環経路の進出口の曲がり箇所に直接衝突しなくなるボール外部循環式ボールねじを提供することにある。
【0006】
本発明の次の目的は、合せラインが循環経路の輪郭ラインに沿い、上下に設けられた、内蓋と、外蓋と、によって循環子を構成することにより、転がり子が循環経路の曲がり箇所に直接衝突しなくなるボール外部循環式ボールねじを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載のボール外部循環式ボールねじによると、ねじ軸と、ナットと、循環子と、循環経路と、複数の転がり子と、を含むボール外部循環式ボールねじにおいて、前記ねじ軸は、周面には転がり溝が開設されており、前記ナットは、その中心には前記ねじ軸を挿通するための貫通孔が開設されており、前記貫通孔の周面には転がり溝が開設されており、前記ねじ軸の転がり溝と前記ナットの転がり溝とから負荷経路が形成され、前記循環子は、両端がそれぞれ第一脚部と第二脚部とであり、前記第一脚部と前記第二脚部とは、前記ナットに設けられており、その間には連接部が設けられており、前記循環経路は、前記循環子の内部に設けられており、前記第一脚部と前記連接部と前記第二脚部とを貫通しており、前記負荷経路と連通しており、前記循環経路の両端は、進出段と、前記進出段と連続している第一曲がり段と、前記第一曲がり段と連続している第二曲がり段と、前記第二曲がり段の間に設けられた連接段と、を有し、前記ねじ軸の軸方向から見れば、前記第一曲がり段が直線を呈し、前記ねじ軸の径方向から見れば、前記第二曲がり段が半円曲線を呈し、前記複数の転がり子は、前記負荷経路と前記循環経路とを転がり可能であることを特徴とするボール外部循環式ボールねじである。
【0008】
本発明の請求項2に記載のボール外部循環式ボールねじによると、前記ねじ軸の軸方向から見れば、前記第一曲がり段が曲線を呈し、前記ねじ軸の径方向から見れば、前記第二曲がり段が半円曲線を呈する。
【0009】
本発明の請求項3に記載のボール外部循環式ボールねじによると、前記ナットの外周面には切り面が設けられており、前記ナットに前記循環子を組合せた後、前記連接部は、大部分が前記切り面の一側に位置しており、一部が前記切り面の他側に位置している。
【0010】
本発明の請求項4に記載のボール外部循環式ボールねじによると、前記循環子は、内蓋と、外蓋と、から構成され、前記ねじ軸の軸方向から見れば、前記内蓋と前記外蓋とはそれぞれ上下に位置している。
【0011】
本発明の請求項5に記載のボール外部循環式ボールねじによると、前記循環子の前記内蓋と前記外蓋とは樹脂で作製されたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のボール外部循環式ボールねじによれば、次のような効果がある。
(1)循環経路の曲がり箇所を第一曲がり段と第二曲がり段とに設計され、ねじ軸の軸方向から見れば、第一曲がり段が曲線を呈し、ねじ軸の径方向から見れば、第二曲がり段が半円曲線を呈するようにすることにより、組み付けられた循環子の循環経路の進行方向がねじ軸の軸方向と垂直しないので、進行している転がり子が循環経路の進出口の曲がり箇所に直接衝突しなくなり、騒音が低減され、循環子の寿命が従来のものよりも更に長く延びる。
【0013】
(2)合せラインが循環経路の輪郭ラインに沿い、上下に設けられた、内蓋と、外蓋と、によって循環子を構成することにより、転がり子が循環経路の曲がり箇所に直接衝突しなくなり、循環子が衝撃されて離間することがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
まず、図3乃至図6を参照する。本発明の実施例に係るボール外部循環式ボールねじは、ねじ軸20と、ナット30と、三つの循環子40と、三つの循環経路50と、複数の転がり子と、から構成される。
【0015】
ねじ軸20は、周面には転がり溝21が開設されている。
【0016】
ナット30は、その中心にはねじ軸20を挿通するための貫通孔31が開設されており、貫通孔31の周面には転がり溝(図示せず)が開設されており、ねじ軸の転がり溝21とナットの前記転がり溝とから負荷経路(図示せず)が形成される。また、ナット30の外周面には切り面32が設けられている。
【0017】
三つの循環子40は、構造が同様であり、内蓋41と、外蓋42と、から構成され、内蓋42と外蓋41とは樹脂で作製されたものであり、外蓋41の両側の側面には互いに対応するラグ411が設けられており、ラグ411がねじCを介してナット30に固定されている。各循環子40は、両端がそれぞれ第一脚部43と第二脚部44とであり、第一脚部43と第二脚部44とは、ナット30の切り面32に設けられており、その間には連接部45が設けられており、連接部45は、大部分が切り面32の一側に位置しており、一部が切り面32の他側に位置しており、ねじ軸20の軸方向Aから見れば、内蓋42と外蓋41とはそれぞれ上下に位置されている。
【0018】
三つの循環経路50は、図7乃至図9に示すように、それぞれ三つの循環子40の内部に設けられており、第一脚部43と連接部45と第二脚部44とを貫通しており、前記負荷経路と連通しており、循環経路50の両端は、進出段51と、進出段51と連続している第一曲がり段52と、第一曲がり段52と連続している第二曲がり段53と、第二曲がり段53の間に設けられた連接段54と、を有し、ねじ軸20の軸方向Aから見れば、直線を呈する進出段51が第一曲がり段52と同じ平面に位置しており、なお、ねじ軸20の軸方向Aから見れば、第一曲がり段52が直線を呈し、なお、ねじ軸20の径方向Bから見れば、第一曲がり段52が曲線を呈し、ねじ軸20の径方向Bから見れば、第二曲がり段53が半円曲線を呈し、なお、ねじ軸20の軸方向Aから見れば、第二曲がり段53も半円曲線を呈する。
【0019】
複数の転がり子(図示せず)は、前記負荷経路と循環経路50とを転がり可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来の循環子付きボールねじ(米国特許第3,143,896号のうちの一つ)の使用状態を示す模式図である。
【図2】従来の循環子付きボールねじ(米国特許第7,040,189号のうちの一つ)の使用状態を示す模式図である。
【図3】本発明に係るボール外部循環式ボールねじの組合状態の斜視図である。
【図4】本発明に係るボール外部循環式ボールねじの組合状態の平面図である。
【図5】本発明に係る循環子の分解斜視図である。
【図6】本発明に係る循環子の組合状態の斜視図である。
【図7】ねじ軸の軸方向から見た本発明に係る循環経路の模式図である。
【図8】ねじ軸の径方向から見た本発明に係る循環経路の模式図である。
【図9】図7の上から見た本発明に係る循環経路の模式図である。
【符号の説明】
【0021】
11 循環子
12 ナット
13 転がり子
14 ねじ軸
15 循環子
20 ねじ軸
21 転がり溝
30 ナット
31 貫通孔
32 切り面
40 循環子
41 外蓋
42 内蓋
43 第一脚部
44 第二脚部
45 連接部
50 循環経路
51 進出段
52 第一曲がり段
53 第二曲がり段
54 連続段
111 脚部
112 循環経路
113 曲がり箇所
121 負荷経路
151 循環経路
152 曲がり箇所
A 軸方向
B 径方向
C ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ軸と、ナットと、循環子と、循環経路と、複数の転がり子と、を含むボール外部循環式ボールねじにおいて、
前記ねじ軸は、周面には転がり溝が開設されており、
前記ナットは、その中心には前記ねじ軸を挿通するための貫通孔が開設されており、前記貫通孔の周面には転がり溝が開設されており、前記ねじ軸の転がり溝と前記ナットの転がり溝とから負荷経路が形成され、
前記循環子は、両端がそれぞれ第一脚部と第二脚部とであり、前記第一脚部と前記第二脚部とは、前記ナットに設けられており、その間には連接部が設けられており、
前記循環経路は、前記循環子の内部に設けられており、前記第一脚部と前記連接部と前記第二脚部とを貫通しており、前記負荷経路と連通しており、前記循環経路の両端は、進出段と、前記進出段と連続している第一曲がり段と、前記第一曲がり段と連続している第二曲がり段と、前記第二曲がり段の間に設けられた連接段と、を有し、前記ねじ軸の軸方向から見れば、前記第一曲がり段が直線を呈し、前記ねじ軸の径方向から見れば、前記第二曲がり段が半円曲線を呈し、
前記複数の転がり子は、前記負荷経路と前記循環経路とを転がり可能であることを特徴とする、ボール外部循環式ボールねじ。
【請求項2】
前記ねじ軸の軸方向から見れば、前記第一曲がり段が曲線を呈し、前記ねじ軸の径方向から見れば、前記第二曲がり段が半円曲線を呈することを特徴とする、請求項1に記載のボール外部循環式ボールねじ。
【請求項3】
前記ナットの外周面には切り面が設けられており、前記ナットに前記循環子を組合せた後、前記連接部は、大部分が前記切り面の一側に位置しており、一部が前記切り面の他側に位置していることを特徴とする、請求項1に記載のボール外部循環式ボールねじ。
【請求項4】
前記循環子は、内蓋と、外蓋と、から構成され、前記ねじ軸の軸方向から見れば、前記内蓋と前記外蓋とはそれぞれ上下に位置していることを特徴とする、請求項1に記載のボール外部循環式ボールねじ。
【請求項5】
前記循環子の前記内蓋と前記外蓋とは樹脂で作製されたことを特徴とする、請求項4に記載のボール外部循環式ボールねじ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−151168(P2010−151168A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327546(P2008−327546)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(395011229)上銀科技股▲分▼有限公司 (110)
【Fターム(参考)】