説明

ボール弁

【課題】ボール弁におけるシートリングとボールとの間への粉体の噛み込みを防止し、シートリングの交換間隔を長くする。
【解決手段】粉体の流入口13と流出口14を有し、それらを結ぶ流路15を形成する弁体1と、この弁体1内にシートリング3a,3bを介して摺接回転可能に設けられ、且つ流入口13と流出口14とに連通可能な貫通孔21を有するボール2とを設ける。そして、弁体1のボール2との対向面の、シートリング3a,3bとの当接位置よりも流路側に気体吹出口16を設け、この気体吹出口16から、弁体1とボール2との隙間に気体を吹き出させ、シートリング3a,3bとボール2との間への粉体の噛み込みを防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボール弁に関し、より詳細には粉体を移送する流路に取り付けられるボール弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3に示すように、従来のボール弁は、流入口13と流出口14とを有し、それらを結ぶ流路15を形成する弁体1と、シートリング3a,3bを介して弁体1内に回転自在に設けられたボール2とを備える。ボール2には貫通孔21が形成されている。ステム4を介してボール2に取り付けられたレバーハンドル5を回動させることにより、ボール2の貫通孔21が、流入口13と流出口14とを直線状に連通する開状態と、流入口13と流出口14との間を遮断する閉状態とに回動変位する。
【0003】
このような構成の従来のボール弁では、開閉動作によってシートリング3a,3bとボール2との間に、ボール弁内を流動している微小な粉体が噛み込み、シートリング3a,3bが傷つけられることがある。シートリング3a,3bが傷つくと、ボール弁の気密性が低下し、ボール弁の内外で圧力差がある場合には、内容物の外部への洩れや外気の内部への混入等の不具合が生じる。このため、実使用ではシートリング3a,3bの定期的な交換が必要となっていた。
【0004】
そこで、シートリング3a,3bとボール2との間への粉体の噛み込みを防止するために、例えばボール弁を開状態時にシートリング3a,3bとボール2とを離反させる一方、閉状態時はシートリング3a,3bとボール2とを当接させる技術や(例えば、特許文献1を参照)、弁体1の内周面とボール2の外周面とで形成される空間に高圧空気を吹き込む技術が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-190211
【特許文献2】特開平7-208622
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、生産性の向上等の観点から、ボール弁のシートリング3a,3bの交換間隔をより長くすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成する本発明に係るボール弁は、粉体の流入口と流出口とを有し、それらを結ぶ流路を形成する弁体と、
この弁体内にシートリングを介して摺接回転可能に設けられ、且つ前記流入口及び前記流出口に連通可能な貫通孔を有するボールとを備えたボール弁であり、
前記ボールと対向する位置にある弁体の面上のうち、前記シートリングの当接位置よりも前記流路側の面上に気体吹出口が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のボール弁では、ボールと対向する位置にある弁体の面上のうち、シートリングの当接位置よりも流路側の面上に設けられた気体吹出口から、弁体とボールとの隙間に気体を吹き出させ、シートリングとボールとの間への粉体の進入を防ぐので、シートリングが粉体によって傷つくことが抑制され、シートリングの交換間隔をより長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るボール弁の一実施形態を示す概説図である。
【図2】本発明に係るボール弁の他の実施形態を示す概説図である。
【図3】従来のボール弁を示す概説図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るボール弁について図面に基づきさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0011】
図1に、本発明に係るボール弁の一実施形態を示す概説図を示す。図1のボール弁は、流入口13と流出口14とを有し、それらを結ぶ流路15を形成する弁体1と、弁体1内に回転自在に設けられた、貫通孔21を有するボール2とを備える。弁体1は、流入口13を有するボデー11と、流出口14を有するボデーキャップ12とに分割形成され、ボデー11とボデーキャップ12とをボルトBで締着することにより分解可能に組み立てられている。
【0012】
ボール2は、ボデー11内に嵌め込まれたシートリング3aと、ボデーキャップ12内に嵌め込まれたシートリング3bとによって弁体1内に摺接回転可能に組み込まれている。ボール2にはステム4が、不図示のシール部材を介してボデー11を貫通して着脱可能に取り付けられている。ステム4の外方端部にはレバーハンドル5が取り付けられており、このレバーハンドル5を回動させることにより、弁体1内のボール2が回動し、ボール2の貫通孔21が、流入口13と流出口14とを直線状に連通する開状態と、流入口13と流出口14との間を遮断する閉状態とに回動変位する。
【0013】
図1の部分拡大図に示されているように、弁体1のボール2との対向面の、シートリング3a,3bとの当接位置よりも流路側に気体吹出口16が形成されている。この気体吹出口16から弁体1とボール2との隙間に、空気や不活性ガスなどの高圧気体を吹出させる。これによって、シートリング3a,3bとボール2との当接部への粉体の進入が効果的に抑制される。
【0014】
気体吹出口16は、シートリング3a,3bに沿って周方向に所定間隔で複数個設けるのが好ましい。気体吹出口16からの気体の吹出しは、常時行っていてもよいし、粉体が流通している間、あるいはボール2が回動する間に行うようにしてもよい。また、気体吹出口16から気体の吹出しは、連続的及び間欠的に行ってもよい。気体の吹出し圧力としては、例えば、0.1〜1kg/cm(ゲージ圧)の範囲等を挙げることができる。
【0015】
本発明のボール弁は、例えば、粉体移送管路等に設けられる。粉体の移送形態としては、粉体の自由落下や気流による移送、懸濁液として移送などいずれの移送形態であってもよい。
【0016】
本発明で使用するシートリング3a,3bとしては、ポリテトラフルオロエチレン樹脂やニトリルゴム、あるいは金属などを使用できる。
【0017】
図2に、本発明に係るボール弁の他の実施形態を示す。図2のボール弁が、図1に示すボール弁と大きく異なる点は、弁体1が、ボデー11とボデーキャップ12の他に、2つの挿入管6a,6bを備える点にある。
【0018】
挿入管6a,6bはフランジ部61と管状部62とを有する。挿入管6a,6bのフランジ部61は、ボデー11及びボデーキャップ12のフランジ部と略同一の外径を有する。挿入管6a,6bの管状部62は、ボデー11及びボデーキャップ12の流路よりも小さい外径を有し、その先端部には外方に広がるテーパ部63が形成されている。そして管状部62の長さは、挿入管6a,6bをボデー11及びボデーキャップ12に装着したときに、テーパ部63がボール2と所定隙間を有して対向する長さとされている。
【0019】
このような形状の挿入管6a,6bの管状部62を、ボデー11及びボデーキャップ12の開口部から挿入し、フランジ部同士をシール部材Sを介して接合させ不図示の締結部材で固定する。これによって、挿入管6a、6bの開口部が弁体1の流入口13及び流出口14となる。図2の拡大図に示すように、挿入管6a,6bの管状部62の外径は、ボデー11及びボデーキャップ12の流路の内径よりも小さいので、挿入管6a,6bの外周面と、ボデー11及びボデーキャップ12の流路の内周面とによって空間部64が形成され、この空間部64のボール側の側面には、挿入管6a,6bのテーパ部63と、ボデー11又はボデーキャップ12との間に隙間が形成され、この隙間が気体吹出口16となる。
【0020】
ボデー11及びボデーキャップ12には、空間部64に連通する貫通孔17が周方向に複数形成されており、ここから気体が空間部64に供給される。貫通孔17を通って供給された気体は、空間部64を満たした後、気体吹出口16から吹き出す。これによって、ボール弁内を流動している粉体がシートリング3a,3bとボール2との当接部に進入するのが抑制される。
【0021】
前記実施形態と同様に、気体の供給は、常時行っていてもよいし、粉体が流通している間、あるいはボールが回動している間であってもよい。また、気体吹出口16から気体の吹出しは、連続的及び間欠的に行ってもよい。気体の吹出し圧力としては、例えば、0.1〜1kg/cm(ゲージ圧)の範囲等を挙げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明のボール弁では、ボールと対向する位置にある弁体の面上のうち、シートリングの当接位置よりも流路側の面上に設けられた気体吹出口から、弁体とボールとの隙間に気体を吹き出させ、シートリングとボールとの間への粉体の進入を防ぐので、シートリングが粉体によって傷つくことが抑制され、シートリングの交換間隔をより長くすることができる。
【符号の説明】
【0023】
1 弁体
2 ボール
13 流入口
14 流出口
15 流路
3a,3b シートリング
21 貫通孔
16 気体吹出口
6a,6b 挿入管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体の流入口と流出口とを有し、それらを結ぶ流路を形成する弁体と、
この弁体内にシートリングを介して摺接回転可能に設けられ、且つ前記流入口及び前記流出口に連通可能な貫通孔を有するボールと
を備えたボール弁であり、
前記ボールと対向する位置にある弁体の面上のうち、前記シートリングの当接位置よりも前記流路側の面上に気体吹出口が設けられていることを特徴とするボール弁。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−261512(P2010−261512A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113101(P2009−113101)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】