説明

ポジティブロック機構を有するコネクタ

【課題】ハウジングにランス機構を設け、外部から不測の衝撃が加わった場合でも、オス端子部材がメス端子部材から不用意に抜けてしまうことを防止する。
【解決手段】筒状をしたハウジング3内に位置せしめられた舌片状をしたオス端子部材1を、前記ハウジングの内側に入れ子式に挿入される別のハウジング7内に収容され、メス端子部材2の挿入用隙間に挿入し摺接片に弾性的に接触させるコネクタにおいて、オス端子部材1にその表裏を抜くロック用透孔5を、メス端子部材2の摺接片の対応する位置に、前記ロック用透孔5に係合するロック用突起をそれぞれ形成し、前記突起と透孔でポジティブロック機構を形成すると共に、メス端子部材2が収容されているハウジング7内に、ランス用舌片6を設け、該ランス用舌片6とメス端子部材のインスレーションバレル21の端面とでロックさせる様にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種電気機器の接続に用いるコネクタ、詳しくは、外部からの衝撃に強く、不用意に抜けてしまうおそれのない、ポジティブロック機構を有するコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種電気機器の接続に用いるコネクタにおいては、オス端子とメス端子同士をロックさせる所謂ポジティブロックと呼ばれる機構を有するものが多く存在している。これは、図1乃至図3に示す様に、オス端子28にロック用透孔5を設けると共に、メス端子29にロック用突起15を設け、オス端子28のロック用透孔5にメス端子29のロック用突起15を係合させ、ハウジングを介さずに、オス端子28とメス端子29とを直接ロック状態にするものであり、高抜去力、省スペースと言った特徴があり、端子を収容するハウジングにロック機構を設けられない場合には、非常に有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】なし
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このポジティブロック機構を有するコネクタにおいては、オス/メス両端子28,29がロック状態にあるときには、圧着されている電線をどんなに引っ張っても端子同士が離れることはなく、ロック状態の解除にはメス端子29のロック用突起15の位置を変位させることによって行われる。しかしながら、この種のコネクタにおいては、端子が収容されているハウジングにはロック機構は設けられておらず、ハウジングは基本的にフリーな状態にあるので、何らかの原因でハウジングに大きな衝撃が加わると、ハウジングをスライドさせたのと同じ状態が再現され、端子同士のロックが不用意に解除されてしまうことがあった。この際、端子同士が完全に抜けてしまえば、再嵌合することも可能であるが、衝撃によって中途半端に抜けている場合には接触不良となり、そのままの状態でユニットに組み込まれた場合には、不良品の発生源をなってしまうこともあった。
【0006】
本発明者は、ポジティブロック機構を持ったコネクタに関する上記問題点を解決すべく研究を行った結果、端子が収容されているハウジングに外部から衝撃が加わっても、コネクタ同士が不用意に抜けてしまうおそれのない、信頼性の高いコネクタを開発することに成功し、本発明として、ここに提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
筒状をしたハウジング内に位置せしめられた舌片状をしたオス端子部材を、前記ハウジングの内側に入れ子式に挿入される別のハウジング内に収容され、インスレーションバレルによって電線に接続されているメス端子部材の挿入用隙間に挿入し、挿入用隙間に沿って位置している摺接片に弾性的に接触させるコネクタにおいて、前記オス端子部材にその表裏を抜くロック用透孔を、メス端子部材の摺接片の対応する位置に、前記ロック用透孔に係合するロック用突起をそれぞれ形成し、前記突起と透孔とでポジティブロック機構を形成すると共に、メス端子部材が収容されているハウジング内に、メス端子部材と平行にランス用舌片を位置させ、該ランス用舌片とメス端子部材のインスレーションバレルの端面とでロックさせる様にして、上記課題を解決した。
【0008】
ハウジング内に位置せしめられているオス端子部材を別のハウジング内に収容されているメス端子部材の挿入用隙間に挿入し、オス端子部材が位置せしめられているハウジングにメス端子部材が収容されている別のハウジングを入れ子式に挿入し、両ハウジングを一体化させ、オス端子部材の裏面をメス端子部材の摺接片上をスライドさせ、オス端子部材のロック用透孔にメス端子部材のロック用突起を落とし込ませることにより、メス端子部材とオス端子部材とをロック状態にして、両者を電気的に係合させる。又、その際、ハウジングのランス用舌片の係合用突起の垂直面をメス端子部材のインスレーションバレルの垂直面に当接させて、両者でランス機構を構成し、メス端子部材とこれを収容しているハウジングとの位置関係の保持を図る。
【0009】
この状態においては、オス端子部材のロック用透孔にメス端子部材の係合用突起が係合しているので、両者はロック状態にある。一方、メス端子部材のインスレーションバレルの垂直面は、メス端子部材が収容されているハウジングのランス用舌片の係合用突起の垂直面と当接しているので、ハウジングは後方にスライドする事が出来ず、メス端子部材とこれを収容しているハウジングの位置関係は変化しない。
【発明の効果】
【0010】
この様に、ハウジングにランス機構を設けているので、両端子部材が収容されているハウジングに外部から不測の衝撃が加わった場合でも、オス端子部材がメス端子部材から不用意に抜けてしまうおそれがなく、両者の係合は安定的に保持される。
【0011】
又、ランス機構を構成しているランス用舌片を操作することにより、オス端子部材とメス端子部材のロック状態を簡単に解除することが出来、操作性も良好で、高い実用性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来のポジティブロック機構を有するメス端子29とオス端子28の代表例の斜視図。
【図2】同じく、係合状態の斜視図。
【図3】同じく、その要部の縦断面図。
【図4】この発明に係るコネクタを構成するオス端子部材1とそれを収容するハウジング3の一部を切欠いて描いた斜視図。
【図5】同じく、この発明に係るコネクタを構成するメス端子部材2とそれを収容するハウジング7の縦断面図。
【図6】この発明に係るコネクタを構成するメス端子部材2の斜視図。
【図7】同じく、その平面図。
【図8】一対のハウジング3,7が組合された状態の縦断面図。
【図9】同じく、オス端子部材1とメス端子部材2とを係合した状態をハウジング7を除いて描いた斜視図。
【図10】同じく、係合した状態のハウジング3,7の一部を切欠いて描いた斜視図。
【図11】同じく、ハウジング3を除き、ハウジング7の一部を切欠いて描いた結合した状態の斜視図。
【図12】同じく、係合した状態の縦断面図。
【図13】同じく、ランス機構を解除した状態の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
オス端子部材とメス端子部材とでポジティブロック機構を構成するコネクタにおいて、メス端子部材を収容したハウジングにランス用舌片を設け、メス端子部材のインスレーションバレルをこのランス用舌片に係合させる様にした点に最大の特徴がある。
【実施例1】
【0014】
図4は、この発明に係るポジティブロック機構を有するコネクタを構成するオス端子部材1及びこれを収容したハウジング3の一部を切欠いて描いた斜視図、図5は同じく、メス端子部材2とこれを収容したハウジング7の縦断面図、図6はハウジング7を除いて描いたメス端子部材2の斜視図である。オス端子部材1は図4に示す様に舌片状をなし、その表裏を貫いてロック用透孔5が設けられており、一端が閉塞され、他端が開口した筒形をなした合成樹脂製のハウジング3の内部空間内に、その先端部4がハウジング3の開口部側を向く様に位置せしめられている。
【0015】
一方、メス端子部材2は、図8に示す様に、前記ハウジング3の内側に、入れ子式に挿入される筒形をなしたハウジング7内に位置せしめられており、その本体は図6に示す様な構造となっている。即ち、略四角形をなした金属製の底板12の前縁からこの底板12の斜め上方に向かって略V字形に折り返された弾性を有する帯状の摺接片11が底板12と一体的に形成されており、この摺接片11の上面は前記したオス端子部材1と接触する摺接面10となっている。そして、図7に示す様に、摺接片11の開放端側には横方向へ底板12の幅W1より大きい幅W2を有するガイド片14が一体的に形成されており、摺接片11はこのガイド片14に従動して上下に変位する様になっている。又、このガイド片14が形成されている方のメス端子部材2の摺接片11には、前記したオス端子部材1のロック用透孔5に係合するロック用突起15が形成されている。
【0016】
更に、図6に示す様に、底板12の一対の側縁からは、上方に向かって側板16が一体的に形成されており、底板12の上面と平行なこの側板16の上縁は、内側に向って折り曲げられ、押え辺17が一体的に形成され、前記摺接面10及び一対の押え辺17,17によって囲われた空間が、オス端子部材1を挿入させる挿入用隙間27となっている。なお、この押え辺17の高さは、摺接片11のガイド片14寄りの端部の高さとほぼ一致する様に設定されている。
【0017】
又、底板12の後部は、テーパ状にその幅が漸減しており、その端部には被覆電線18の芯線19に圧着されるワイヤーバレル22及び絶縁被覆20に圧着されるインスレーションバレル21からなる圧着バレル部31が一体的に形成されており、インスレーションバレル21は、その上部が上方に立上っており、垂直面26が形成されている。
【0018】
そして、メス端子部材2は図5に示す様に、ハウジング7内に位置せしめられている。ハウジング7はハウジング3の内側に、その閉塞部まで入れ子式に挿入される筒状をなした部材であり、このハウジング7の内部空間内のメス端子部材2の固定位置により上部には、メス端子部材2と平行に、バネ性を有するランス用舌片6が、その基端部をハウジング7の前方側に固定し、開放端側を上下方向に弾性的に変位出来る状態で取り付けられている。そして、このランス用舌片6の開放端側の下面には、開放端側を向いた垂直面8を有する係合用突起9が形成されており、前記したメス端子部材2のインスレーションバレル21の垂直面26とによってランス機構を構成する様になっている。
【0019】
又、ハウジング7の左右の側壁24の内面側には、図8及び図11に示す様に、収容されているメス端子部材2との相対的位置関係の変化に応じて、後記する摺接片11のガイド片14を案内して摺接片11を上下に変位される案内用スロープ25が形成されている。なお、この案内用スロープ25の傾斜は、ハウジング7をメス端子部材2の後方側、つまりインスレーションバレル21の方向にスライドさせると、摺接片11が押し下げられる方向に向って形成されている。
【0020】
なお、この実施例1においては、ハウジング3に収容されているオス端子部材1は1個、ハウジング7に収容されているメス端子部材2も1個の単極のコネクタであるが、ハウジング3に2個以上のオス端子部材1を収容し、これに対応するメス端子部材2も2個以上とした多極のコネクタであっても良く、その場合にも、ロック用透孔5、ロック用突起15及びランス用舌片6は、すべてのオス端子部材1及びメス端子部材2に設ける必要はなく、一番端部に位置する一組のオス端子部材1及びメス端子部材2に設けるだけで足りる。
【0021】
この実施例1は上記の通りの構成を有するものであり、図10乃び図13に示す様に、ハウジング3にハウジング7を入れ子式に挿入し、ハウジング内3に位置せしめられているオス端子部材1の側縁がハウジング7内に位置せしめられているメス端子部材2のガイド片14,14の間に位置する様にして、オス端子部材1をメス端子部材2の挿入用隙間27に挿入し、オス端子部材1の裏面をメス端子部材2の摺接片11上をスライドさせ、オス端子部材1のロック用透孔5にメス端子部材2のロック用突起15を落し込ませることにより、メス端子部材2とオス端子部材1とをロック状態にして、両者を電気的に係合させる。又、その際、ハウジング7のランス用舌片6の係合用突起9の垂直面8は図12に示す様に、インスレーションバレル21の垂直面26と係合して、ランス機構を構成し、メス端子部材2とこれを収容しているハウジング7との位置関係の保持を図る。
【0022】
この状態においては、図9及び図12に示す様に、オス端子部材1のロック用透孔5にメス端子部材2のロック用突起15が係合しているので、両者はロック状態にある。しかも、ハウジング7が収容されているメス端子部材2のインスレーションバレル21の垂直面26は、メス端子部材2が収容されているハウジング7のランス用舌片6の係合用突起9の垂直面8と当接しているので、ハウジング7は後方にスライドする事が出来ず、メス端子部材2とハウジング7の位置関係は変化しない。
【0023】
又、ハウジング7とメス端子部材2の位置が変化しないので、ガイド片14もスロープ25を上ることが出来ず、メス端子29及びロック用突起15は変位せず、オス端子部材1のロック用透孔5とのロックは解除されず、電気的結合を強固かつ安定的に保持する。
【0024】
一方、オス端子部材1とメス端子部材2の係合状態を解除しようとするときは、図13に示す様に、ハウジング7に設けられているランス用舌片6の開放端側を上方に変位させて、係合用突起9の垂直面8とインスレーションバレル21の垂直面26の当接状態を解除させ、ハウジング7を後方に引抜く事により、メス端子部材2のガイド片14をハウジング7のスロープ25に案内させてメス端子部材2の摺接片11を変位させると、ロック用突起15は下方に沈み込み、それに伴い、メス端子部材2はオス端子部材1から離れ、ロック用透孔5とロック用突起15のロック状態は解除される。
【0025】
この様に、このポジティブロック機構を有するこのコネクタにおいては、ハウジング7にランス機構を設けているので、メス端子部材2が収容されているハウジング7に外部から不測の衝撃が加わった場合でも、オス端子部材1からメス端子部材2が不用意に抜けてしまうおそれがなく、両者の係合は安定的に保持される。
【0026】
又、ランス機構を構成しているランス用舌片6を操作することにより、オス端子部材1とメス端子部材2のロック状態を簡単に解除することが出来、操作性も良好で、高い実用性を有する。
【産業上の利用可能性】
【0027】
自動車や各種産業機器の電装品、情報機器など、あらゆる電気機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 オス端子部材
2 メス端子部材
3 ハウジング
4 先端部
5 ロック用透孔
6 ランス用舌片
7 ハウジング
8 垂直面
9 係合用突起
10 摺接面
11 摺接片
12 底板
13 押え片
14 ガイド片
15 ロック用突起
16 側板
17 押え辺
18 被覆電線
19 芯線
20 絶縁被覆
21 インスレーションバレル
22 ワイヤーバレル
24 側壁
25 案内用スロープ
26 垂直面
27 挿入用隙間
28 オス端子
29 メス端子
31 圧着バレル部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状をしたハウジング内に位置せしめられた舌片状をしたオス端子部材を、前記ハウジングの内側に入れ子式に挿入される別のハウジング内に収容され、インスレーションバレルによって電線に接続されているメス端子部材の挿入用隙間に挿入し、挿入用隙間に沿って位置している摺接片に弾性的に接触させるコネクタにおいて、前記オス端子部材にその表裏を抜くロック用透孔を、メス端子部材の摺接片の対応する位置に、前記ロック用透孔に係合するロック用突起をそれぞれ形成し、前記突起と透孔でポジティブロック機構を形成すると共に、メス端子部材が収容されているハウジング内に、メス端子部材と平行にランス用舌片を設け、該ランス用舌片とメス端子部材のインスレーションバレルの端面とでロックさせる様にしたことを特徴とするポジティブロック機構を有するコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−243539(P2011−243539A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117272(P2010−117272)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000115142)ユニオンマシナリ株式会社 (38)
【Fターム(参考)】