説明

ポジ型感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物及びプリント配線板

【課題】従来のポジ型樹脂組成物とは組成が異なったポジ型樹脂組成物、これを用いたドライフィルム、及びこれらの硬化物と、これらの硬化物を用いたプリント配線板を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂と、フェノール樹脂と、光カチオン重合開始剤と、を含有する感光性樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂が3級アミン構造を有するエポキシ樹脂であるか、または、さらに複素環式化合物を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物、これを用いたドライフィルム、及びこれらの硬化物と、これらの硬化物を用いたプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、民生用プリント配線板や、産業用プリント配線板のソルダーレジストにおいて、高精度、高密度の観点から、紫外線照射後、現像することにより画像形成し、熱及び/又は光照射で仕上げ硬化(本硬化)する液状現像型ソルダーレジストが使用されている。また、エレクトロニクス機器の軽薄短小化に伴うプリント配線板の高密度化に対応して、ソルダーレジストの作業性の向上や高性能化が要求されている。
【0003】
液状現像型ソルダーレジストに用いられる感光性樹脂組成物には、露光した部分が、現像液に溶けにくくなるネガ型の他に、溶けやすくなるポジ型がある。
【0004】
ポジ型の感光性樹脂組成物は、通常構成要件の一つとしてフォトセンシタイザーと呼ばれるキノンジアジド基を含有する感光性化合物を有し、300〜500nmの波長の光照射により感光性化合物中のキノンジアジド基が分解してカルボキシル基が生じることにより、フォトレジスト材料がアルカリ不溶性からアルカリ可溶性に変化し、現像することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−052568号公報
【特許文献2】特開2000−250211号公報
【特許文献3】特開2000−147757号公報
【特許文献4】特開平10−153868号公報
【特許文献5】特開平7−64284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来のポジ型樹脂組成物とは組成が異なった新規のポジ型の感光性樹脂組成物、これを用いたドライフィルム、及びこれらの硬化物と、これらの硬化物を用いたプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的実現に向け鋭意検討した結果、従来ではポジ型の感光性樹脂組成物が得られるとは考えられなかった特定の組成の樹脂組成物が、ポジ型の感光性樹脂組成物になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、3級アミン構造を有するエポキシ樹脂と、フェノール樹脂と、光カチオン重合開始剤と、を含有することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の他のポジ型感光性樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂と、光カチオン重合開始剤と、複素環式化合物と、を含有することを特徴とするものである。
【0010】
上記複素環式化合物は、含窒素複素環式化合物であることが好ましく、イミダゾール系化合物であることがより好ましい。
【0011】
本発明の感光性ドライフィルムは、上記のいずれかのポジ型感光性樹脂組成物を、フィルム上に塗布乾燥して得られることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の硬化物は、上記のいずれかのポジ型感光性樹脂組成物、または、感光性ドライフィルムを、活性エネルギー線照射によりパターニングを行い加熱により硬化して得られることを特徴とするものである。
【0013】
本発明のプリント配線板は、上記の硬化物を具備することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、従来のポジ型感光性樹脂組成物とは組成が異なるポジ型感光性樹脂組成物、これを用いたドライフィルム、これらの硬化物、及び、これらを用いたプリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0016】
[エポキシ樹脂]
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、エポキシ樹脂として3級アミン構造を有するエポキシ樹脂を用いるか、または、複素環式化合物を含有する場合には、特にエポキシ樹脂の種類は限定されず、広く公知慣用のエポキシ樹脂を用いることができる。
【0017】
上記3級アミン構造を有するエポキシ樹脂としては、公知の3級アミン構造を有するエポキシ樹脂を使用することができる。具体的には、N,N−ジメチルアミノエチルグリシジルエーテル、N,N−ジメチルアミノトリルグリシジルエーテル、N,N−ジメチルアミノフェニルグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、1,3,5−トリグリシジルイソシアヌレート、N,N−ジグリシジルアニリン、4,4’−メチレンビス[N,N−ジグリシジルアニリン、イソシアネート変性エポキシ樹脂等が挙げられる。市販品としては、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリンであるjER630(三菱化学社製)、1,3,5−トリグリシジルイソシアヌレートであるアラルダイドPT810(BASF社製)やTEPIC(日産化学工業社製)、イソシアネート変性エポキシ樹脂としてXAC4151、AER4152(旭化成イーマテリアルズ社製)等が挙げられる。更に、上記3級アミン構造を有するエポキシ樹脂が、含窒素複素環式エポキシ樹脂、アニリン型エポキシ樹脂、イソシアネート変性エポキシ樹脂であることが好ましい。上記3級アミン構造を有するエポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本発明において、上記3級アミン構造を有するエポキシ樹脂の3級アミン構造のアミンが、炭素数3〜10の直鎖又は分岐鎖のエポキシアルキル基を有することがより好ましく、特に、炭素数3〜6の直鎖又は分岐鎖のエポキシアルキル基を有することが好ましい。
【0019】
上記3級アミン構造を有するエポキシ樹脂の好ましい化合物の具体例として、下記の化合物が挙げられるが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0020】
【化1】

N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン
【0021】
【化2】

1,3,5−トリグリシジルイソシアヌレート
【0022】
上記複素環式化合物を含有する場合の、本発明のポジ型感光性樹脂組成物において、エポキシ樹脂としては、公知のいずれのものも用いることができ、前記3級アミン構造を有するエポキシ樹脂であってもよい。前記エポキシ樹脂の例として、三菱化学社製のjER828、jER834、jER1001、jER1004、DIC社製のエピクロン840、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、東都化成社製のエポトートYD−011、YD−013、YD−127、YD−128、ダウケミカル社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、住友化学工業社製のスミ−エポキシESA−011、ESA−014、ELA−115、ELA−128、旭化成工業社製のA.E.R.330、A.E.R.331、A.E.R.661、A.E.R.664等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjERYL903、DIC社製のエピクロン152、エピクロン165、東都化成社製のエポトートYDB−400、YDB−500、ダウケミカル社製のD.E.R.542、住友化学工業社製のスミ−エポキシESB−400、ESB−700、ADEKA社製のA.E.R.711、A.E.R.714等(何れも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER152、jER154、ダウケミカル社製のD.E.N.431、D.E.N.438、DIC社製のエピクロンN−730、エピクロンN−770、エピクロンN−865、東都化成社製のエポトートYDCN−701、YDCN−704、日本化薬社製のEPPN−201、EOCN−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306、NC−3000、住友化学工業社製のスミ−エポキシESCN−195X、ESCN−220、旭化成工業社製のA.E.R.ECN−235、ECN−299等(何れも商品名)のノボラック型エポキシ樹脂;DIC社製のエピクロン830、三菱化学社製jER807、東都化成社製のエポトートYDF−170、YDF−175、YDF−2004等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成社製のエポトートST−2004、ST−2007、ST−3000(商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER604、東都化成社製のエポトートYH−434、住友化学工業社製のスミ−エポキシELM−120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ヒダントイン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業社製のセロキサイド2021等(何れも商品名)の脂環式エポキシ樹脂;三菱化学社製のYL−933、ダウケミカル社製のT.E.N.、EPPN−501、EPPN−502等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;三菱化学社製のYL−6056、YX−4000、YL−6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物;日本化薬社製EBPS−200、ADEKA社製EPX−30、DIC社製のEXA−1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjER157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;三菱化学社製のjERYL−931等(何れも商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;日産化学工業社製のTEPIC等(何れも商品名)の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂社製ブレンマーDGT等のジグリシジルフタレート樹脂;東都化成社製ZX−1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鐵化学社製ESN−190、ESN−360、DIC社製HP−4032、EXA−4750、EXA−4700等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;DIC社製HP−7200、HP−7200H等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂社製CP−50S、CP−50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;CTBN変性エポキシ樹脂(例えば東都化成社製のYR−102、YR−450等)等の多官能エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限られるものではない。中でも、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0023】
[フェノール樹脂]
フェノール樹脂としては、公知のフェノール樹脂を使用することができる。例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、ビスフェノールF型ノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂などが挙げられる。中でも、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂が好ましく、特にフェノールノボラック樹脂が好ましい。このようなフェノール樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0024】
このフェノール樹脂の配合量は、固形分として、エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは20〜150質量部、より好ましくは35〜130質量部、更に好ましくは50〜100質量部である。20質量部未満であると現像ができず目的とする解像性が得られない。一方、150質量部を超えると、耐アルカリ性が低下し目的とする解像性が得られない。
【0025】
[光カチオン重合開始剤]
光カチオン重合開始剤としては、公知のいずれのものも用いることができる。本発明において、光カチオン重合開始剤とは、活性エネルギー線の照射を受けてカチオンを発生する化合物であればよく、本発明の効果であるポジ型パターンの発現が得られる限り、実際に光カチオン重合開始剤として機能するか否かによって、限定されるものではない。光カチオン重合開始剤として、例えば、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボロエート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、2,4,6−トリフェニルチオピリリウムヘキサフルオロホスフェートや、市販品として、(株)ADEKA製オプトマ−SP−170やSP−152、サンアプロ社製CPI−100P、CPI−101A、CPI−200K、CPI−210S等のスルホニウム塩系光カチオン重合開始剤や、BASF社製イルガキュアー(登録商標)261等が挙げられる。中でも、SP−152、CPI−100P、CPI−200Kが好ましく、特に対アニオンとしてヘキサフルオロホスフェートを有するスルホニウム塩系光カチオン重合開始剤が好ましい。このような光カチオン重合開始剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0026】
この光カチオン重合開始剤の配合量は、固形分として、エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜25質量部、より好ましくは5〜20質量部、更に好ましくは10〜20質量部である。1質量部未満であると未露光部に耐現像性が得られずパターンが得られない。一方、25質量部を超えると、露光部に耐現像性が発現し解像性が得られない。
【0027】
[複素環式化合物]
複素環式化合物としては、公知のいずれのものも用いることができる。例えば、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、ピロール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアゾール、ピラゾール、イミダゾール、インドール、オキサゾール、チアゾール系化合物等の含窒素複素環式化合物、フラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン系化合物等の含酸素複素環式化合物、チオフェン、テトラヒドロチオフェン系化合物等の含硫黄複素環式化合物が挙げられる。中でも、含窒素複素環式化合物が好ましく、イミダゾール系化合物がより好ましい。イミダゾール系化合物としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等が挙げられる。このような複素環式化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0028】
上記複素環式化合物を配合する場合の配合量は、固形分として、エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。1質量部未満であると未露光部に耐現像性がなくパターンが得られない。一方、10質量部を超えると、露光部に耐現像性が発現し解像性が得られない。
【0029】
[バインダーポリマー]
さらに本発明のポジ型感光性樹脂組成物には、指触乾燥性の改善、ハンドリング性の改善などを目的にバインダーポリマーを使用することができる。バインダーポリマーとして用いることができるものとしては、例えば、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリエステルウレタン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリエステルアミド系ポリマー、アクリル系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリ乳酸系ポリマー、フェノキシ系ポリマーなどが挙げられる。これらのバインダーポリマーは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上の混合物として用いてもよい。
【0030】
上記バインダーポリマーを配合する場合の配合量は、固形分として、エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは5〜50質量部、より好ましくは10〜40質量部である。5質量部未満であるとハンドリングクラックが発生する。一方、50質量部を超えると、現像性が低下し満足した解像性が得られない。
【0031】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物には、必要に応じて、さらに各種の添加剤や成分、例えば、酸化防止剤、充填剤(フィラー)、シランカップリング剤、熱硬化性成分、熱硬化触媒、光硬化性成分、光開始助剤または増感剤、イソシアネート基又ブロックイソシアネート基を有する化合物、ウレタン化触媒、エチレン性不飽和基を有する化合物等の感光性モノマー、エラストマー、有機溶剤、着色剤、紫外線吸収剤、連鎖移動剤、密着促進剤、チキソ化剤、熱重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、防錆剤、銅害防止剤等を配合することができる。
【0032】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、例えば前記有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布し、約60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることにより、タックフリーの塗膜を形成できる。その後、接触式(又は非接触方式)により、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、もしくはレーザーダイレクト露光機により直接パターン露光し、露光部をアルカリ水溶液(例えば0.3〜3%炭酸ソーダ水溶液)や有機溶剤により現像して樹脂絶縁層パターンが形成される。さらに、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、エポキシ樹脂とフェノール樹脂を含有しているため、例えば約100〜200℃の温度に加熱して熱硬化させることにより耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、密着性、電気特性などの諸特性に優れた硬化塗膜を形成することができる。尚、エチレン性不飽和結合を有する光硬化性成分を含有しているのであれば、熱処理することにより、露光時に未反応の状態で残った光硬化性成分のエチレン性不飽和結合が熱ラジカル重合し、塗膜特性が向上するため、目的・用途により、熱処理(熱硬化)してもよい。
【0033】
上記基材としては、予め回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙−フェノール樹脂、紙−エポキシ樹脂、ガラス布−エポキシ樹脂、ガラス−ポリイミド、ガラス布/不繊布−エポキシ樹脂、ガラス布/紙−エポキシ樹脂、合成繊維−エポキシ樹脂、フッ素樹脂・ポリエチレン・PPO・シアネートエステル等の複合材を用いた全てのグレード(FR−4等)の銅張積層板、ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を用いることができる。
【0034】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブンなどを用いて行うことができる。
【0035】
上記活性エネルギー線照射による露光に用いられる露光機としては、直接描画装置(例えばコンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)、メタルハライドランプを搭載した露光機、(超)高圧水銀ランプを搭載した露光機、水銀ショートアークランプを搭載した露光機、もしくは(超)高圧水銀ランプなどの紫外線ランプを使用した直接描画装置を用いることができる。活性エネルギー線としてレーザー光を用いる場合、最大波長が350〜410nmの範囲にあればガスレーザー、固体レーザーどちらでもよい。上記直接描画装置としては、例えば最大波長が350〜410nmのレーザー光を発振する装置である日本オルボテック社製、ペンタックス社製等のものを使用することができ、高圧水銀ランプを有する装置であればオーク製作所社製、大日本スクリーン社製等のものであればいずれの装置を用いてもよい。
【0036】
前記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。また、有機溶剤による現像に際しては、アセトン、トルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤を用いることができる。
【0037】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、上述のように、液状で直接基材に塗布する方法以外にも、予めポリエチレンテレフタレート等のフィルムに感光性樹脂組成物を塗布・乾燥して形成したポジ型の感光性樹脂組成物層を有するドライフィルムの形態で使用することもできる。
本発明のポジ型感光性樹脂組成物をドライフィルムとして使用する場合を以下に示す。
【0038】
ドライフィルムは、キャリアフィルムと、感光性樹脂組成物層と、必要に応じて用いられる剥離可能なカバーフィルムとが、この順序に積層された構造を有するものである。感光性樹脂組成物層は、感光性樹脂組成物をキャリアフィルム又はカバーフィルムに塗布・乾燥して得られる層であり、目的に応じて二以上の層であってもよい。キャリアフィルムに感光性樹脂組成物層を形成した後に、カバーフィルムをその上に積層するか、カバーフィルムに感光性樹脂組成物層を形成し、この積層体をキャリアフィルムに積層すればドライフィルムが得られる。
【0039】
キャリアフィルムとしては、2〜150μm厚みのポリエステルフィルム等の熱可塑性フィルムが用いられる。
感光性樹脂組成物層は、本発明のポジ型感光性樹脂組成物をブレードコーター、リップコーター、コンマコーター、フィルムコーター等でキャリアフィルム又はカバーフィルムに10〜150μmの厚さで均一に塗布し乾燥して形成される。感光性樹脂組成物層が二層以上の場合は、別の感光性樹脂組成物層の上に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を塗布してもよい。
カバーフィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を使用することができるが、感光性樹脂組成物層との接着力が、キャリアフィルムよりも小さいものが好ましい。
【0040】
ドライフィルムを用いてプリント配線板上に樹脂絶縁層を作成するには、カバーフィルムを剥がし、感光性樹脂組成物層と回路形成された基材を重ね、ラミネーター等を用いて貼り合わせ、回路形成された基材上に感光性樹脂組成物層を形成する。形成された感光性樹脂組成物層に対し、前記と同様に露光、現像、加熱硬化すれば、硬化塗膜を形成することができる。キャリアフィルムは、露光前又は露光後のいずれかに剥離すればよい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例を示して、本発明について具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」及び「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0042】
<樹脂組成物の調製>
下記表1に示す種々の成分と共に表1に示す割合(質量部)にて配合し、撹拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練し、実施例1〜6及び比較例1、2の樹脂組成物を調製した。
【0043】
<ドライフィルムの作製>
実施例1〜6及び比較例1、2の樹脂組成物をそれぞれメチルエチルケトンにて希釈し、PETフィルム(38μm)上に塗布した。これを90℃で15分乾燥し、厚さ20μmの乾燥塗膜を形成し、さらにその上にカバーフィルムを貼り合わせて、ドライフィルムを作製した。
【0044】
<評価基板の作成>
銅ベタ(ラミネート銅箔)をメックエッチボンドCZ−8100B(メック社製)に30℃で浸漬させて、粗化処理(Ra値:1μm)を行った。上記で作製したドライフィルムからカバーフィルムを剥がし、前処理した銅箔基板に、ラミネートした(70℃、真空引き60秒、スラップダウン0.10MPa、8秒)。次いで、この基板にメタルハライドランプを搭載した露光装置を用いて、最適露光量でパターン露光を行った(レジスト上3J/cm)。露光後、キャリアフィルムを剥がし、90℃×15分で加熱した。その後、5.0wt%の2−アミノエタノール水溶液で撹拌浸漬して現像し(35℃、3分)、パターンの形成された評価基板を得た。
【0045】
<ポジ型パターンの評価>
得られた評価基板について、実施例1〜7および比較例1、2の樹脂組成物を用いたポジ型パターンの発現性を目視にて評価した。結果を下記表1に示す。
【0046】
【表1】

*1 フェノールノボラック樹脂(HF−1CA75(固形分:75wt%)、明和化成社製)
*2 クレゾールノボラック樹脂(MER−7959CA75(固形分:75wt%)、明和化成社製)
*3 スルホニウム塩系光カチオン重合開始剤(CPI−100P、サンアプロ社製)
*4 スルホニウム塩系光カチオン重合開始剤(アデカオプトマーSP−152、ADEKA社製)
*5 アニリン型エポキシ樹脂(N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン:JER630、ジャパンエポキシレジン社製)
*6 クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(EOCN−104SH70(固形分:70wt%)、日本化薬製)
*7 含窒素複素環式エポキシ樹脂(1,3,5−トリグリシジルイソシアヌレート:TEPIC−HP、日産化学工業社製)
*8 2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製)
*9 2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(2PHZ、四国化成工業社製)
*10 フェノキシ樹脂(YX8000BH30(固形分:30wt%)、三菱化学社製)
*11 3元ブロック共重合体:ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリメチルメタクリレート(SBM−E41(固形分:30wt%)、アルケマ(株)製)
【0047】
実施例1〜7に示す結果より、本実施形態の樹脂組成物がポジ型パターンを発現することを明らかとした。また、比較例1に示すように、3級アミン構造を有しないエポキシ樹脂を使用した場合には、ポジ型パターンは得られないが、実施例6、7の結果より、そのような3級アミン構造を有しないエポキシ樹脂を使用した場合でも、複素環式化合物を用いればポジ型パターンが得られることを明らかとした。比較例2に示すように、フェノール樹脂を含有しない場合は、ポジ型パターンが発現しないことを明らかとした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3級アミン構造を有するエポキシ樹脂と、
フェノール樹脂と、
光カチオン重合開始剤と、を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項2】
エポキシ樹脂と、
フェノール樹脂と、
光カチオン重合開始剤と、
複素環式化合物と、を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記複素環式化合物が、含窒素複素環式化合物である請求項2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記複素環式化合物が、イミダゾール系化合物である請求項2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物を、フィルム上に塗布乾燥して得られる感光性ドライフィルム。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物、または、請求項5に記載の感光性ドライフィルムを、活性エネルギー線照射によりパターニングを行い加熱により硬化して得られることを特徴とする硬化物。
【請求項7】
請求項6に記載の硬化物を具備することを特徴とするプリント配線板。

【公開番号】特開2012−215719(P2012−215719A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81297(P2011−81297)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(310024066)太陽インキ製造株式会社 (16)
【Fターム(参考)】