説明

ポジ型感光性樹脂組成物、パターンの製造方法及び電子部品

【課題】酸条件下で脱離可能な保護基にてアルカリ可溶性基を保護した溶解性変換剤を用いることにより、感度、解像度に優れ、さらに分子末端を有機基で封止したポリオキサゾール前駆体を用いることにより、樹脂自体がアルカリ水溶液へ対する適度な溶解性を有したポジ型感光性樹脂組成物を提供する。また、該ポジ型感光性樹脂組成物は、放射線の照射により前記溶解性変換剤中の保護基の脱離反応を誘発できる化合物を配合することによって、従来からのフォトレジストが有する前記問題を解決し、しかも接着性、耐熱性に富んだポジ型感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)カルボン酸残基より誘導される有機基をその分子末端に有するポリオキサゾール前駆体と、(B)活性光線照射により酸を発生する化合物と、(C)酸触媒作用で分解し、水素原子に変換し得る有機基を有する化合物とを含有してなるポジ型感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物、パターンの製造方法及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜には優れた耐熱性と電気特性、機械特性等を併せ持つポリイミド樹脂が用いられている。しかし、近年半導体素子の高集積化、大型化が進む中、封止樹脂パッケージの薄型化小型化の要求があり、LOC(リード・オン・チップ)や半田リフローによる表面実装などの方式が取られてきているため、これまで以上に半導体回路の最表面に保護膜として形成されるのに適した特性、すなわち、機械特性、耐熱性等に優れたポリイミド樹脂が必要とされるようになっている。
【0003】
一方、パターン作成工程が簡略化でき、煩雑な製造工程の短縮が行えるという特徴を有することからポリイミド樹脂自身に感光特性を付与した感光性ポリイミドも従来から用いられている。
【0004】
このような従来の感光性ポリイミドおよびその前駆体を用いてなる耐熱性フォトレジストについては良く知られている。例えば、ネガ型の感光性樹脂では、ポリイミド前駆体にエステル結合またはイオン結合を介してメタクリロイル基を導入する方法(例えば、特許文献1〜4参照)により得られるポリイミド、光重合性オレフィンを有する可溶性ポリイミド(例えば、特許文献5〜10参照)、ベンゾフェノン骨格を有し、かつ窒素原子が結合する芳香環のオルソ位にアルキル基を有する自己増感型ポリイミド(例えば、特許文献11、12参照)などが挙げられる。また、これらの用途についても良く知られている。
【0005】
しかしながら、上記のネガ型の感光性樹脂では、感光剤の吸収波長から生じる解像度の問題や、用途によっては製造時の歩留まり低下を招くなどの問題がある。また、上記のポリイミド樹脂では、用いるポリマーの構造が限定されるために、最終的に得られる被膜の物性が限定されてしまい、多目的用途には不向きなものもある。
【0006】
さらに、上記のネガ型の感光性樹脂では、現像の際にN−メチルピロリドン等の有機溶剤を必要とする。現像液の使用量は、感光性ポリイミド前駆体組成物の使用量の数倍になるために、廃現像液の処理の際に環境に大きい負荷を与えるという問題がある。また、有機溶剤現像液やリンス液はしばしば高価であり、デバイス作成コストに大きな影響を与えるため、安価な現像液やリンス液の使用が望まれている。そこで、廃現像液の処理が容易であり、かつ、安価である水性現像液(アルカリ水溶液)で現像可能な感光性ポリイミド組成物が望まれている。
【0007】
水性現像液(アルカリ水溶液)で現像可能なポジ型の感光性樹脂としては、例えば、ポリイミド前駆体にエステル結合を介してo−ニトロベンジル基を導入する方法(例えば、非特許文献1参照)、可溶性ヒドロキシルイミドまたはポリオキサゾール前駆体にナフトキノンジアジド化合物を混合する方法(例えば、特許文献13、14参照)、可溶性ポリイミドにエステル結合を介してナフトキノンジアジドを導入する方法(例えば、非特許文献2参照)等により得られるポジ型の感光性樹脂やポリイミド前駆体樹脂とナフトキノンジアジド系感光剤を含む組成物(例えば、特許文献15参照)などが知られている。
【0008】
しかしながら、この水性現像液(アルカリ水溶液)で現像可能なポジ型の感光性樹脂においてもネガ型の感光性樹脂と同様に感光剤の吸収波長に伴う問題から感度や解像度が低かった。また、上述のように用いられるポリマーの構造が限定されるために、ネガ型の感光性樹脂と同様の問題を生ずる。
【0009】
また、ポリベンゾオキサゾール前駆体にジアゾナフトキノン化合物を混合した材料(例えば、特許文献16参照)や、ポリアミド酸にエステル結合を介してフェノール部位を導入した材料(例えば、特許文献17参照)などカルボン酸の代わりにフェノール性水酸基を導入した材料も提案されているが、これらの材料は現像性が不十分である。また、未露光部の膜減りや基材から樹脂が剥離するという問題点がある。このような現像性や接着の改良を目的に、シロキサン部位をポリマー骨格中に有するポリアミド酸を混合した材料(例えば、特許文献18、19参照)が提案されているが、上述のようにポリアミド酸を用いるため保存安定性が悪化する。そこで、保存安定性や接着の改良を目的に、アミン末端基を重合性基で封止した材料(例えば、特許文献20〜22参照)も提案されている。しかしながら、これらの材料は、酸発生剤として芳香環を多数含むジアゾキノン化合物を用いるため、熱硬化後の機械物性を著しく低下させるうえに、感度が低いという問題があり、実用レベルの材料とは言い難い。
【0010】
前記ジアゾキノン化合物の問題点の改良を目的に種々の化学増幅システムを適用した材料も提案されている。この化学増幅システムを適用した材料としては、例えば、化学増幅型のポリイミド(例えば、特許文献23参照)、化学増幅型のポリイミド、ポリベンゾオキサゾール前駆体(例えば、特許文献24〜30参照)などが挙げられる。しかしながら、これらのうち、高感度のものは低分子量であるため、膜特性の低下が認められる。一方、膜特性に優れるものは高分子量であるため、溶解性が不十分となり、感度の低下が認められる。また、これらのポジ型感光性ポリイミド前駆体組成物あるいはポジ型感光性ポリベンゾオキサゾール前駆体組成物は、ポリイミド前駆体あるいはポリベンゾオキサゾール前駆体とキノンジアジド系感光剤からなるポジ型感光性樹脂組成物より高感度であるが、十分なコントラストが得られない。従って、いずれも実用レベルの材料とは言い難く、未だ実用化レベルで充分な材料はないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭49−115541号公報
【特許文献2】特開昭51−40922号公報
【特許文献3】特開昭54−145794号公報
【特許文献4】特開昭56−38038号公報等
【特許文献5】特開昭59−108031号公報
【特許文献6】特開昭59−220730号公報
【特許文献7】特開昭59−232122号公報
【特許文献8】特開昭60−6729号公報
【特許文献9】特開昭60−72925号公報
【特許文献10】特開昭61−57620号公報
【特許文献11】特開昭59−219330号公報
【特許文献12】特開昭59−231533号公報
【特許文献13】特開昭64−60630号公報
【特許文献14】米国特許第4395482号明細書
【特許文献15】特開昭52−13315号公報
【特許文献16】特開昭64−46862号公報
【特許文献17】特開平10−307393号公報
【特許文献18】特開平4−31861号公報
【特許文献19】特開平4−46345号公報
【特許文献20】特開平5−197153号公報
【特許文献21】特開平9−183846号公報
【特許文献22】特開2001−183835号公報
【特許文献23】特開平3−763号公報
【特許文献24】特開平7−219228号公報
【特許文献25】特開平10−186664号公報
【特許文献26】特開平11−202489号公報
【特許文献27】特開2001−56559号公報
【特許文献28】特開2001−194791号公報
【特許文献29】特表2002−526793号公報
【特許文献30】米国特許第6143467号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】J.Macromol.Sci.Chem.,A24,12,1407,1987
【非特許文献2】Macromolecules,23,1990
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、酸条件下で脱離可能な保護基にてアルカリ可溶性基を保護した溶解性変換剤を用いることにより、感度、解像度に優れる。さらに、分子末端を有機基で封止したポリオキサゾール前駆体を用いることにより、樹脂自体がアルカリ水溶液へ対する適度な溶解性を有したポジ型感光性樹脂組成物を提供する。また、該ポジ型感光性樹脂組成物は、放射線の照射により前記溶解性変換剤中の保護基の脱離反応を誘発できる化合物を配合することによって、従来からのフォトレジストが有する前記問題を解決し、しかも接着性、耐熱性に富んだポジ型感光性樹脂組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記組成物の使用により、アルカリ水溶液で現像可能であり、感度、解像度および耐熱性に優れ、良好な形状のパターンが得られるパターンの製造法を提供するものである。また、本発明は、良好な形状と特性のパターンを有することにより、信頼性の高い電子部品(半導体装置)を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1] (A)カルボン酸残基より誘導される有機基をその分子末端に有し、下記一般式(1)
【0016】
【化1】

[式中、R1は二価の有機基(但し、両末端のR1はアルケニル基又はアルキニル基を少なくとも1個を有する脂肪族基又は環式化合物基である場合を除く)、R2は四価の有機基であって、いずれも複数ある場合は同一でも異なっていてもよく、R3は末端カルボン酸基に対してエステル化により導入された、アルキル基、アリール基、アセタールまたはケタールを構成する基、シリル基、シリルエーテル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシアルキル基、アルキルシリル基、テトラヒドロピラニル基からなる群より選ばれる少なくとも一種であり、そのまま末端カルボン酸基として残存しているものがあってもよく、nは整数であり、繰り返し単位数を示す]で表されるポリオキサゾール前駆体(但し、一般式(1)で示される構造中の繰り返し単位以外の繰り返し単位を、全繰り返し単位中50%以下で有していてもよい)と、
(B)活性光線照射により酸を発生する化合物と、
(C)酸触媒作用で分解して水素原子に変換し得る有機基を有する化合物と、
を含有してなるポジ型感光性樹脂組成物。
[2] 一般式(1)において、R3が、炭素数2以上10以下のアルコキシカルボニル基、アルコキシアルキル基又はテトラヒドロピラニル基である(但し、そのまま末端カルボン酸基として残存しているものがあってもよい)ポリオキサゾール前駆体である上記[1]に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[3] 前記(C)成分が、分子中に芳香環を有し、かつ−OR(但し、Rは酸の作用で分解し、水素原子に変換し得る一価の有機基を示す)で示される基、及び/又は−COOR(但し、Rは酸の作用で分解し、水素原子に変換し得る一価の有機基を示す)で示される基を有する化合物であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[4] 前記(C)成分が、下記一般式(2)
【0017】
【化2】

(式中、Xは有機基、Rは酸の作用で分解し、水素原子に変換し得る一価の有機基を示し、いずれも複数ある場合は同一でも異なっていてもよく、a、bはそれぞれ0以上の整数であり、a+bは1以上の整数を示す)で表される化合物であることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[5] 前記(C)成分が、下記一般式(3)
【0018】
【化3】

(式中、X’は有機基、Rは酸の作用で分解し、水素原子に変換し得る一価の有機基を示し、いずれも複数ある場合は同一でも異なっていてもよく、a、bはそれぞれ0以上の整数を示す)で表される繰り返し単位を有する化合物であることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[6] 前記有機基Rが、アルキル基、アリール基、アセタールまたはケタールを構成する基、シリル基、シリルエーテル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシアルキル基、アルキルシリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記[4]または[5]に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
[7] 上記[1]〜[6]のいずれか1つに記載のポジ型感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し、乾燥してポジ型感光性樹脂膜を得る工程と、前記ポジ型感光性樹脂膜を露光する工程と、前記露光後のポジ型感光性樹脂膜を加熱する工程と、前記加熱後のポジ型感光性樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像する工程と、及び前記現像後のポジ型感光性樹脂膜を加熱処理する工程とを含むことを特徴とするパターンの製造方法。
[8] 上記[7]に記載の製造方法により得られるパターンの層を有してなる電子デバイスを有する電子部品であって、前記電子デバイス中に前記パターンの層が層間絶縁膜層及び/又は表面保護膜層として設けられたものであることを特徴とする電子部品。
【発明の効果】
【0019】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、機械特性、感度、解像度および耐熱性に優れる。また、本発明のパターンの形成法によれば、前記組成物の使用により、機械特性、感度、解像度および耐熱性に優れ、良好な形状のパターンが得られる。また、本発明の電子部品(半導体装置)は、良好な形状と特性のパターンを有することにより、信頼性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、多層配線構造の電子部品(半導体装置)の製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態について説明するが、これらに限定されるものではない。
まず、前記ポリオキサゾール前駆体について詳述する。ポリオキサゾール前駆体において、前記一般式(1)にて示される構造中のR1は、具体的にはベンゼン、ナフタレン、ペリレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン、ジフェニルプロパン、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ベンゾフェノンなどの骨格を有する二価の芳香族炭化水素残基、又は、エタン、プロパン、ヘキサン、ブタン、シクロブタン、シクロヘキサン、アダマンタンなどの骨格を有する二価の脂肪族炭化水素残基が典型的な例として例示されるが、これらに限定されない。
【0022】
前記R1で示される有機基の炭素原子数としては、4〜30が好ましい。好ましい基としてはフェニル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、シクロヘキサン、アダマンタンである。なお、必要に応じて、ポリアミド誘導体の分子中に、R1として上記にて例示した基の二種類以上を含有させることもできる。
【0023】
前記一般式(1)にて示される構造中のR2は、具体的にはジフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ベンゾフェノン、ジフェニルメタン、ジフェニルプロパン、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ジフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホン、ビフェニル、ベンゼンなどの骨格を有する四価の芳香族炭化水素残基が典型的な例として例示されるが、これらに限定されない。炭素原子数としては、6〜30が好ましい。好ましい基としては、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ジフェニルイソプロパン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホキシド、ビフェニルである。なお、必要に応じてR2として上記に例示した基の二種類以上を含有させることもできる。
【0024】
また本発明で使用される前記ポリオキサゾール前駆体は、下記一般式(4)で示されるジカルボン酸、下記一般式(5)で示されるジアミノ化合物を原料の一部として用いることにより製造できる。
【0025】
【化4】

(式中、R1は前記一般式(1)におけるR1と同じ有機基を示す)
【0026】
【化5】

(式中、R2は前記一般式(1)におけるR2と同じ有機基を示す)
【0027】
前記ジカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸、2、2−ビス(4−カルボキシフェニル)へキサフルオロプロパン、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジカルボキシテトラフェニルシラン、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(p−カルボキシフェニル)プロパン、5−tert−ブチルイソフタル酸、5−ブロモイソフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、5−クロロイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族系ジカルボン酸、1,2−シクロブタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸などの脂肪族系ジカルボン酸などが挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。これらの中で耐熱性の点で芳香族系ジカルボン酸が好ましい。
【0028】
前記ジヒドロキシアミンとしては、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,6−ジアミノレゾルシノール、4,5−ジアミノレゾルシノール、ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェニル)メタンなどの芳香族系ジアミンが好ましいものとして挙げられる。芳香族系ジアミンを使用することにより、耐熱性の良好な、ポリベンゾオキサゾール前駆体が得られる。
【0029】
前記ジアミン化合物と前記ジカルボン酸化合物の好ましい割合(モル比)は、前者/後者で0.6/1〜1/1の範囲である。この範囲内に設定することにより合成されるポリベンゾオキサゾールにおいて、その分子末端にカルボン酸残基を配することができ、それにより後述のように分子末端に有機基を導入できることになる。この場合、好ましい反応温度は−30〜40℃、好ましい反応時間は5分間〜10時間である。
【0030】
前記ポリオキサゾール前駆体は、例えば以下の方法で得ることができる。前記一般式(4)にて示されるジカルボン酸をN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチレンスルホン、γ−ブチロラクトンなどの有機溶媒(非プロトン性極性溶剤)中にて塩化チオニルなどのハロゲン化剤を用いてハロゲン化した後に、前記一般式(5)にて示されるジアミノ化合物とピリジンなどの適当な触媒の存在下で、前記と同様の有機溶媒中で反応させる。上記有機溶媒は、単独で又は2種以上併用して用いられる。
【0031】
上述した反応を行なった反応溶液を、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、アセトンなどの貧溶媒中に注ぎ、結晶化させ、ろ別、乾燥する。このようにして得られたヒドロキシポリアミドを再度、上記有機溶媒中に溶解させ、適当なエステル化剤を必要に応じて酸あるいは塩基性触媒下で作用させることにより、末端カルボン酸基に対して前記一般式(1)にてR3で示される有機基を導入することができる。
【0032】
エステル化剤としては、各種アルコール類、各種ビニルエーテル類、ハロゲン化アルキル、トリメチルシリルクロライド、ハロゲン化メチルアルキルエーテル、ハロゲン化エチルアルキルエーテル等を挙げることができる。この反応溶液を、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、アセトンなどの貧溶媒中に注ぎ、結晶化させ、ろ別、乾燥することで、前記一般式(1)で示される構造単位を有するポリオキサゾール前駆体を得ることができる。
【0033】
また、本発明において、前記ポリベンゾオキサゾール前駆体は、例えば、特開平9−183846号公報に示されているように、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールとジカルボン酸とを反応させたジカルボン酸誘導体を経由して、これとジヒドロキシアミンとを反応させて得ることができる。
【0034】
また、本発明において、前記ポリベンゾオキサゾール前駆体は、例えば、Polymer Letter.,Vol.2,pp655−659 (1964)に示されているように、ジカルボン酸ジハライド(クロライド、ブロマイド)と、ジヒドロキシジアミンとを反応させて得ることができる。この場合、反応は脱ハロゲン酸触媒の存在下に、有機溶媒中で行うことが好ましい。ジカルボン酸ジクロリドは、ジカルボン酸と塩化チオニルを反応させて得ることができる。この際に、カルボン酸基末端となるようにジカルボン酸に対する塩化チオニルのモル比率を等量より少なくすることが効果的である。
【0035】
この末端基としては1価の有機基であることが好ましい。この点から、好ましい有機基として、例えば、アルキル基、アリール基、アセタールまたはケタールを構成する基、シリル基、シリルエーテル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシアルキル基、アルキルシリル基などが挙げられるが、これらに限定されない。中でも炭素数2以上10以下のアルコキシカルボニル基、アルコキシアルキル基がさらに好ましい。
【0036】
これらの基を導入するエステル化剤としては、tert−ブチルクロライド、トリメチルシリルクロライド、クロロメチルエチルエーテル、クロロエチルエチルエーテル、クロロメチルプロピルエーテル、クロロメチルtert−ブチルエーテルなどを好ましいものとして挙げることができる。また、ビニルエーテル化合物を酸触媒下で作用させてテトラヒドロピラニル基、エトキシエチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基などを導入することも好ましい。
【0037】
上述したように本発明において、(A)成分は、ポリオキサゾール前駆体であるが、分子末端がカルボン酸残基より誘導される有機基を有する。これにより、パターン形成時においては本発明の組成物に適度な溶解速度、露光感度を与えることができる。また、現像による膜減りが少なく、かつ短時間で現像でき、さらに微細加工を行うことができるようになる。このようなポリオキサゾール前駆体は、レリーフパターンの形成後に、硬化反応をさせることにより優れた耐熱性を有する樹脂膜となる。
【0038】
本発明に使用される前記一般式(1)で示される構造を有するポリオキサゾール前駆体において、R3で示される有機基の置換率は全ポリマー分子中のカルボン酸の0.1%以上、80%以下であることが本発明の組成物に適切な溶解速度、露光感度を与える上で好ましく、1%以上、50%以下とすることがさらに好ましい。0.1%より少ないと未露光部の膜減りが大きくなり、80%より多いと現像時間が長くなる恐れがある。この置換率は1H-NMRスペクトルの積分強度比から算出できる。この際、全ポリマー分子中の繰り返し単位数を元にカルボン酸量を定量するが、この繰り返し単位数はポリマー合成時の仕込み比をもとに算出することができる。
【0039】
本発明に使用される前記一般式(1)で示される構造を有するポリオキサゾール前駆体においては、その一部に前記一般式(1)で示される構造中の繰り返し単位以外の繰り返し単位を有していてもよい。この場合、その割合は全繰り返し単位中50%以下であることが好ましい。
【0040】
前記(A)成分のポリオキサゾール前駆体の分子量に特に制限はないが、一般に平均分子量で3,000〜200,000であることが好ましく、さらに5000〜100000がより好ましい。また、重量平均分子量を数平均分子量で除した分散度は1〜4が好ましく、1〜3がより好ましい。なお、分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)で測定し、ポリスチレン換算で算出することができる。
【0041】
前記一般式(1)にて示される構造を有するポリオキサゾール前駆体は、i線領域の透明性、露光部のアルカリ現像液への溶解性、基板との密着性に優れるので好ましい。
【0042】
本発明の組成物において、前記(A)成分として使用されるポリオキサゾール前駆体とともに、前記(B)成分として活性光線照射により酸を発生する化合物(以下、酸発生剤という)を用いる。活性光線としては、例えば超高圧水銀灯を用いるコンタクト/プロキシミテイ露光機、ミラープロジェクション露光機、i 線ステッパ、g線ステッパ、その他の紫外線、可視光源や、X線、電子線などを挙げることができる。(B)成分に照射することにより(B)成分が酸を発生する活性化学線照射であれば特に限定はされない。前記(B)成分の量は、感光時の感度、解像度を良好とするために、(A)成分100重量部に対して、0.01〜50重量部とすることが好ましく、0.01〜20重量部とすることがより好ましく、0.5〜20重量部とすることがさらに好ましい。
【0043】
本発明に使用される前記酸発生剤(B)は、紫外線等の活性光線の照射によって酸性を呈すると共に、(C)成分である、酸触媒作用で分解し水素原子に変換し得る有機基を有する化合物(具体的には溶解性変換剤)の変換(具体的には保護基Rを脱離させる)作用を有する。このような(B)成分の化合物としては、オニウム塩、ハロゲン含有化合物、キノンジアジド化合物、スルホン酸エステル化合物などが挙げられる。
【0044】
前記オニウム塩としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、アンモニウム塩、ジアゾニウム塩などが挙げられ、好ましくは、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアルキルスルホニウム塩(アルキル基の炭素数は1〜8)、ジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、アリールジアゾニウム塩がある。前記オニウム塩の対アニオンとしては、例えば、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロアンチモン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などが好ましい。
【0045】
前記ハロゲン含有化合物としては、例えば、ハロアルキル基含有炭化水素系化合物、ハロアルキル基含有ヘテロ環状化合物等が挙げられ、好ましくは、トリクロロメチルトリアジン、ブロモアセチルベンゼンなどが好ましい。
【0046】
前記キノンジアジド化合物としては、例えば、ジアゾベンゾキノン化合物、ジアゾナフトキノン化合物などを挙げることができる。
【0047】
前記スルホン酸エステル化合物としては、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とアルキルスルホン酸あるいは芳香族スルホン酸とのエステルが挙げられる。フェノール性水酸基を有する芳香族化合物としては、例えば、フェノール、レゾルシノール、ピロガロール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジホドロキシナフタレンなどが挙げられる。前記アルキルスルホン酸としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブチルスルホン酸、カンファースルホン酸等がある。芳香族スルホン酸としては、ベンゼンスルホン酸、ナフチルスルホン酸、芳香族テトラカルボン酸エステル、芳香族スルホン酸エステル、ニトロベンジルエステル、オキシムスルホン酸エステル、芳香族N−オキシイミドスルフォネート、芳香族スルファミド、ハロアルキル基含有炭化水素系化合物、ハロアルキル基含有ヘテロ環状化合物、ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステルなどが挙げられる。
【0048】
このような化合物は必要に応じて2種類以上併用したり、他の増感剤と組合せて使用することができる。なかでも芳香族オキシムスルホン酸エステル、芳香族N−オキシイミドスルフォネートは、高感度の点で好ましく、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩は、未露光部に適度な溶解阻止効果が期待できる点で好ましい。
【0049】
本発明に使用される前記(C)成分は、酸触媒作用で分解し、水素原子に変換し得る有機基を有する。これにより未露光部では溶解抑止効果が、露光部においては溶解促進効果が期待され、適切なコントラストを発現することができる。
【0050】
また、本発明に使用される(C)成分は、その構造としては特に制限はないが、フェノール性水酸基又はカルボキシル基を有する化合物においてフェノール性水酸基又はカルボキシル基の水素原子の一部または全てを酸分解性基で置換された化合物が好ましい。
【0051】
前記フェノール性水酸基またはカルボキシル基を有する化合物としては、1〜15個のベンゼン環を有し、フェノール性水酸基またはカルボキシル基を分子内に1〜20個有する化合物が好ましい。また、これらの化合物は、フェノールノボラック樹脂やポリビニルフェノールのような樹脂状化合物を用いても良い。また、(A)成分であるポリイミド前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体を用いても良い。すなわち、フェノール性水酸基またはカルボキシル基を有するポリアミド酸エステル、ポリアミド酸、ポリヒドロキシアミドを用いても良い。これらの化合物のフェノール性水酸基またはカルボキシル基の水素原子の一部または全てが酸分解性基により置換されて用いられる。
【0052】
以上をより詳しく説明すると、以下の通りである。すなわち、本発明に使用される(C)成分は、前記一般式(2)又は(3)にて示される構造を有するものが感度、解像度に優れ、好ましい。前記一般式(2)において、a及びbはそれぞれ0以上の整数であり、a+bは1以上の整数であり、好ましくはa+bは10以下の整数である。また、前記一般式(3)において、a及びbはそれぞれ0以上の整数であり、好ましくはa+bは10以下の整数である。
【0053】
前記酸触媒作用で分解し、水素原子に変換し得る一価の基としては、例えば、下記の構造を有するアセタール若しくはケタールを構成するものが好ましいものとして挙げられる。
【0054】
【化6】

(式中、R’、R”及びR'''は各々独立に炭素数5以下のアルキル基を示し、Xは炭素数3以上(好ましくは20以下)の2価のアルキレン基(側鎖を有していてもよい)を示す)
【0055】
具体的には、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、アルキル置換テトラヒドロピラニル基、アルキル置換テトラヒドロフラニル基、アルコキシ置換テトラヒドロピラニル基、アルコキシ置換テトラヒドロフラニル基などが典型的な例として例示されるが、これらに限定されない。中でも最も好ましい基はテトラヒドロピラニル基である。これらは感度および解像度の点で好ましい。
【0056】
また、酸の作用で分解し、水素原子に変換し得る一価の基として、一価のアルコキシアルキル基又はアルキルシリル基、アルコキシカルボニル基なども挙げられる。これらに特に制限はないが、好ましい炭素数としては、アルコキシアルキル基の場合は2〜8、アルキルシリル基の場合は1〜20、アルコキシカルボニル基の場合は2〜15である。
【0057】
具体的には、メトキシメチル基、エトキシメチル基、イソプロポキシメチル基、tert−ブトキシメチル基、エトキシエチル基、メチルシリル基、エチルシリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、tert−ブトキシカルボニル基などが典型的な例として例示されるが、これらに限定されるものではない。好ましい基はメトキシメチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、メトキシエチル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブトキシカルボニル基である。これらは感度および解像度の点で好ましい。
【0058】
また、前記−COORで示される置換基中のRに関しては一価のアルキル基を用いることもできる。これらに特に制限はないが、好ましい炭素数としては1〜10である。
【0059】
具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、アミル基などが典型的な例として例示されるが、これらに限定されない。最も好ましい基はエチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基である。これらは感度および解像度の点で好ましい。
【0060】
本発明において、前記一般式(2)又は(3)で示される構造中のX、又はX’としては、具体的にはジフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ベンゾフェノン、ジフェニルメタン、ジフェニルプロパン、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ジフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホン、ベンゼン、ナフタレン、ペリレンなどの骨格を有する芳香族炭化水素残基や、エタン、プロパン、ブタン、シクロブタン、シクロヘキサン、アダマンタンなどの骨格を有する脂肪族炭化水素残基、あるいは下記の構造を有するものが挙げられる。
【0061】
【化7】

(式中、Y、Y’は炭素数1〜20の有機基を示す)
【0062】
【化8】

(式中、Z、Z’はアルキル基あるいはアルキル置換または無置換のヘテロ原子を示す)
【0063】
これらの置換基は、例えば、フェノール性水酸基又はカルボキシル基を有する化合物に酸触媒下でビニルエーテル化合物を反応させることにより容易に導入することができる。また、導入したい置換基の塩化物をアミンなどのアルカリ触媒下で反応させることによっても容易に導入することができる。
【0064】
前記溶解性変換剤(C)として好ましいものは、下記の一般式
【0065】
【化9】

(式中、Y、Y’は炭素数1〜20の有機基を示し、Rは前記同様、酸触媒作用で分解し、水素原子に変換し得る有機基を示す。いずれも同一分子に複数あるときは同じでも異なっていても良い。pは繰り返し単位を表す1以上の整数である)で表される化合物、又は繰り返し単位を有する化合物を挙げることができる。ポリマーの場合には分子量は重量平均分子量で1000〜30000のものが好ましい。
【0066】
前記(C)成分の量は、感度と硬化後の膜質の観点から(C)成分がオリゴマーあるいはポリマーの場合に(A)成分100重量部に対して1〜500重量部とすることが好ましく、10〜300重量部とすることがより好ましい。それ以外の場合は(A)成分100重量部に対して1〜50重量部とすることが好ましく、1〜25重量部とすることがより好ましい。
【0067】
本発明に用いられる溶剤としては、(A)〜(C)成分を良く相溶させ均一に溶解させることのできる溶剤であれば、特に制限はなく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチレンスルホン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタートなどの非プロトン性極性溶剤が挙げられ、これらを単独で又は2種以上併用して用いられる。
【0068】
本発明に用いられる溶剤は、塗布膜厚の観点から(A)成分100重量部に対して50〜500重量部、好ましくは80〜400重量部用いられる。
【0069】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、硬化膜の基板との接着性を高めるために、有機シラン化合物、アルミキレート化合物等を含むことができる。有機シラン化合物としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、尿素プロピルトリエトキシシラン、メチルフェニルシランジオール、エチルフェニルシランジオール、n−プロピルフェニルシランジオール、イソプロピルフェニルシランジオール、n−ブチルシフェニルシランジオール、イソブチルフェニルシランジオール、tert−ブチルフェニルシランジオール、ジフェニルシランジオール、エチルメチルフェニルシラノール、n−プロピルメチルフェニルシラノール、イソプロピルメチルフェニルシラノール、n−ブチルメチルフェニルシラノール、イソブチルメチルフェニルシラノール、tert−ブチルメチルフェニルシラノール、エチルn−プロピルフェニルシラノール、エチルイソプロピルフェニルシラノール、n−ブチルエチルフェニルシラノール、イソブチルエチルフェニルシラノール、tert−ブチルエチルフェニルシラノール、メチルジフェニルシラノール、エチルジフェニルシラノール、n−プロピルジフェニルシラノール、イソプロピルジフェニルシラノール、n−ブチルジフェニルシラノール、イソブチルジフェニルシラノール、tert−ブチルジフェニルシラノール、フェニルシラントリオール、1,4−ビス(トリヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(メチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(エチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(プロピルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ブチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジメチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジエチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジプロピルドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジブチルヒドロキシシリル)ベンゼン等が挙げられる。アルミキレート化合物としては、例えば、トリス(アセチルアセトネート)アルミニウム、アセチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。これらの密着性付与剤を用いる場合は、(A)成分100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましい。
【0070】
前記アルミキレート化合物としては、例えば、トリス(アセチルアセトネート)アルミニウム、アセチルアセテートアルミニウムジイソプロピレートなどが挙げられる。
【0071】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、アルカリ現像液に対する溶解性を調製するために適当なフェノール化合物などを含むことができる。
【0072】
前記フェノール化合物としては、フェノール性水酸基を分子内に2〜8個含有する化合物を用いることができ、例えば、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシフェニル−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、3,3'−メチレンビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンゼンメタノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチルフェノール)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキフェニル)−(2−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(2−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(2−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−[4−{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル}フェニル]エタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチル−ビフェニルなどが挙げられる。
【0073】
本発明におけるポジ型感光性樹脂組成物には、必要により硬化膜の機械特性向上のため硬化時にポリマー中のカルボン酸や水酸基と反応しうる架橋剤を添加してもよい。本発明に使用される架橋剤の例としては、例えば下記の一般式で表される化合物が挙げられる。
【0074】
【化10】

(式中、Mは炭素数1〜20の有機基を示し、Rは水素原子あるいは硬化時の熱で分解し、水素原子に変換し得る有機基を示す。いずれも同一分子に複数あるときは同じでも異なっていても良い。nは2以上の整数である。)
【0075】
これらの架橋剤を用いる場合は、(A)成分100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましい。
【0076】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、塗布性、例えばストリエーション(膜厚のムラ)を防いだり、現像性を向上させたりするために、適当な界面活性剤あるいはレベリング剤を添加することができる。
【0077】
前記界面活性剤あるいはレベリング剤としては、例えば、ポリオキシエチレンウラリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテルなどがあり、市販品としては、メガファックスF171、F173、R−08(大日本インキ化学工業株式会社製商品名)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム株式会社商品名)、オルガノシロキサンポリマーKP341、KBM303、KBM403、KBM803(信越化学工業株式会社製商品名)などが挙げられる。
【0078】
さらに、本発明のポジ型感光性樹脂組成物には、必要に応じて、保存安定剤、溶解抑止剤なども配合することができる。
【0079】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、ガラス基板、半導体、金属酸化物絶縁体(例えばTiO2、SiO2など)、窒化ケイ素などの支持基板上に塗布し、乾燥することによりポジ型感光性樹脂組成物の膜とすることができる。その後、マスクを介して紫外線、可視光線、放射線などの活性光線照射(露光)を行い、次いで必要に応じて加熱処理を行い、次いで露光部を現像液で除去することによりポジ型のレリーフパターンが得られる。
【0080】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物を使用し、パターンを形成する方法は、まず該組成物を適当な支持体、例えば、シリコンウエハ、セラミック、アルミ基板などに塗布する。塗布方法としてはスピンナーを用いた回転塗布、スプレーコータを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティングなどが挙げられる。次いで、塗膜を乾燥する。乾燥は通常オーブン又はホットプレートを用いて行われる。乾燥条件は、ポジ型感光性樹脂組成物の成分により適宜決定されるが、ホットプレートを用いた場合、60〜140℃で30秒間〜10分間が好ましい。乾燥温度が低いと現像時に微細パターンの剥離が起こりやすい傾向にある。また、乾燥温度が高いと露光部の現像液に対する溶解速度が減少し感度が低下する傾向にある。その後、所望のパターン形状に放射線、化学線を照射する。活性光線としては、例えばX線、電子線、紫外線、可視光線などの放射線、化学線が使用できるが、200nm〜500nmの波長のものが好ましい。g線、i線などの単色光を用いることもできる。
【0081】
次に、照射部表層部に発生した酸を底部にまで拡散させるために、ホットプレートを用いた場合、50〜150℃で30秒から10分間加熱処理を行うのが好ましい。加熱温度が低いと酸触媒反応によりアルカリ水溶液に対する溶解性が増加される酸分解性基を有する化合物の分解が効率よく起こらず、感度が低下する傾向にある。加熱温度が高いと露光部の現像液に対する溶解速度が低下し、現像時間が長くなる傾向にある。次に、現像して照射部を溶解除去することによりパターンを得ることができる。
【0082】
現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニアなどの無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミンなどの一級アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミンなどの二級アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミンなどの三級アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリンなどの、四級アンモニウム塩などのアルカリ水溶液、及び、これに水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を好適に使用することができる。好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、コリン等の5重量%以下の水溶液、より好ましくは1.5〜3.0重量%の水溶液などが用いられるが、さらに好ましい現像液は水酸化テトラメチルアンモニウムの1.5〜3.0重量%の水溶液である。
【0083】
現像方法としては、例えば、スプレー、パドル、浸漬、超音波などの方式が可能である。次に現像によって形成したパターンをリンスする。リンス液としては蒸留水を使用することができる。次に加熱処理を行い、耐熱性に富む最終パターンを得ることができる。加熱温度は一般に150〜450℃である。150〜450℃の加熱処理をすることによりオキサゾール環や他に環状基を持つ耐熱性重合体のレリーフパターンになる。本発明のポジ型感光性樹脂組成物は4μm以上の耐熱性重合体の膜厚を形成するための樹脂組成物として好適である。
【0084】
さらに、前記現像液にアルコール類や界面活性剤を添加して使用することもできる。これらはそれぞれ、現像液100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲で配合することができる。
【0085】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、活性化学線照射及び活性化学線照射後の加熱処理後、露光部は(C)成分の変化により、アルカリ水溶液に対する溶解性が上がり、未露光部との溶解速度が異なるので、レリーフパターンが形成できる。さらに、活性化学線照射及び活性化学線照射により発生した酸が、(A)成分であるポリオキサゾ−ル前駆体の末端の酸分解性基を攻撃し、アルカリ可溶性基であるカルボン酸基が樹脂末端に現れ、未露光部と露光部の現像液に対する溶解速度差を大きくすることを支持している。このような(A)成分及び(C)成分の構造変化により、アルカリ現像液に対する溶解性を大きく変化させ、現像による膜減りが少なく、かつ短時間で現像でき、さらに微細加工を行うことができる。このようなポリオキサゾール前駆体は、レリーフパターンの形成後に、硬化反応させることにより優れた耐熱性を有する樹脂膜となる。
【0086】
本発明の感光性樹脂組成物は、半導体装置や多層配線板などの電子部品に使用することができ、具体的には、半導体装置の表面保護膜や層間絶縁膜、多層配線板の層間絶縁膜などの形成に使用することができる。本発明の半導体装置は、前記組成物を用いて形成される表面保護膜や層間絶縁膜を有すること以外は特に制限されず、様々な構造をとることができる。
【0087】
本発明の半導体装置製造工程の一例を以下に説明する。図1は多層配線構造を有する半導体装置の製造工程図である。上から下に向かって、第1の工程から第5の工程へと一連の工程を表している。図1において、回路素子を有するSi基板などの半導体基板1は、回路素子の所定部分を除いてシリコン酸化膜などの保護膜2などで被覆され、露出した回路素子上に第一導体層3が形成されている。前記半導体基板上にスピンコート法などで層間絶縁膜層4が形成される(第1の工程)。
【0088】
次に塩化ゴム系、フェノールノボラック系等の感光性樹脂層5が前記層間絶縁膜層4上にスピンコート法で形成され、公知の写真食刻技術によって所定部分の層間絶縁膜層4が露出する様に窓6Aが設けられている(第2の工程)。前記窓6Aの層間絶縁膜層4は、酸素、四フッ化炭素などのガスを用いるドライエッチング手段によって選択的にエッチングされ、窓6Bがあけられている。ついで窓6Bから露出した第一導体層3を腐食することなく、感光樹脂層5のみを腐食するようなエッチング溶液を用いて感光樹脂層5が完全に除去される(第3の工程)。
【0089】
さらに公知の写真食刻技術(フォトリソグラフィー)を用いて、第二導体層7を形成させ、第一導体層3との電気的接続が完全に行われる(第4の工程)。3層以上の多層配線構造を形成する場合には、前記の工程を繰り返して行い、各層を形成することができる。
【0090】
次に表面保護膜層8が形成される。この図の例では、この表面保護膜層を前記感光性樹脂組成物をスピンコート法にて塗布、乾燥し、所定部分に窓6Cを形成するパターンを描いたマスク上から光を照射した後、アルカリ水溶液にて現像してパターンを形成し、加熱して表面保護膜とする(第5の工程)。この表面保護膜は、導体層を外部からの応力、α線などから保護するものであり、この樹脂膜によって得られる半導体装置は信頼性に優れる。なお、前記例において、層間絶縁膜層を本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成することも可能である。
【実施例】
【0091】
以下、実施例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0092】
合成例1(ポリベンゾオキサゾール前駆体の合成)
攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸15.48gと、N−メチルピロリドン90gとを仕込み、フラスコを5℃に冷却した後、塩化チオニル12.64gを滴下し、30分間反応させて、4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸クロリドの溶液を得た。次いで、攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン87.5gを仕込み、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン18.30gを添加し、攪拌溶解した後、ピリジン8.53gを添加し、温度を0〜5℃に保ちながら、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリドの溶液を30分間で滴下した後、30分間攪拌を続けた。溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で3回洗浄した後、減圧乾燥してポリヒドロキシアミドを得た(以下、ポリマーIとする)。ポリマーIの標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は14580、分散度は1.6であった。次に、攪拌機及び温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、ポリマーIを20gとN−メチルピロリドン100gとを仕込み、攪拌溶解させた後、温度を0〜5℃に保ちながら、クロロメチルエチルエーテル0.4gを滴下し、さらにトリエチルアミン0.4gを滴下した後、30分間攪拌を続けた。この溶液を2リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で3回洗浄した後、減圧乾燥して末端にエトキシメチル基を導入したポリヒドロキシアミドを得た(以下、ポリマーIIとする)。
【0093】
合成例2
攪拌機及び温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、ポリマーIを20gとN−メチルピロリドン100gとを仕込み、攪拌溶解させた後、温度を0〜5℃に保ちながら、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン0.4gを滴下し、さらに、12N塩酸0.1gを滴下した後、30分間攪拌を続けた。溶液を2リットルの水に投入し、析出物を回収、純水で3回洗浄した後、減圧乾燥して末端カルボキシル基にテトラヒドロピラニル基を選択的に導入したポリヒドロキシアミドを得た(以下、ポリマーIIIとする)。
【0094】
合成例3
攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、マルカリンカーM(丸善化学工業株式会社製商品名、ポリビニルフェノール、ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は5000、分散度は2.5であった)20g、酢酸エチル200gを仕込み、攪拌溶解した後、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン50gを添加し、次いで12N塩酸0.3gを添加し、室温下で70時間攪拌を継続した。その後、反応溶液を分液ロートに移した後、水酸化テトラメチルアンモニウムの2.38重量%水溶液150gで中和し、さらに純水150gで数回有機層を洗浄した。有機層を取り出しエバポレータにより有機層を濃縮した後、濃縮した有機層をn−ヘキサンに投入し、析出した樹脂状物を回収した後、減圧乾燥して、フェノール性水酸基をテトラヒドロピラニル基で保護したポリビニルフェノールを得た(以下、溶解阻害剤Iとする)。溶解阻害剤Iのフェノール性水酸基に対するテトラヒドロピラニル基の保護化率を1H−NMRにより測定したところ95%であった。
【0095】
感光特性評価
(実施例1〜18)
前記ポリベンゾオキサゾール前駆体100重量部に対し、(B)成分、(C)成分、および必要に応じて増感剤を表1に示した所定量にて配合し、γ−ブチロラクトンに溶解させた。この表1の組成中の各(B)成分(DIAS、DPI、MPI)、(C)成分(C1〜C9)、および増感剤(DMEA)の化学式は、[化11]に示すとおりである。
【0096】
前記溶液をシリコンウエハ上にスピンコートして、乾燥膜厚3〜10μmの塗膜を形成し、そののち干渉フィルターを介して、超高圧水銀灯を用いてi線(365nm)露光を行った。露光後、120℃で3分間加熱し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38%水溶液にて露光部のシリコンウエハが露出するまで現像した後、水でリンスしパターン形成に必要な最小露光量と解像度を求めた。結果を表2に記す。
【0097】
【表1】

【0098】
【化11】

【0099】
【表2】

【0100】
表2に示すように、現像後残膜率は全て86%以上と高く、未露光部と露光部との溶解速度差はパターン形成に十分なほど大きかった。
【0101】
(実施例19〜20)
(A)成分としてポリマII及びIII、(B)成分として9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホン酸ジフェニルヨードニウム(以下、酸発生剤Iとする)、(C)成分として溶解阻害剤I、溶剤としてγ−ブチロラクトンを用いて、これらを組み合わせてフラスコに配合し、室温下にて攪拌溶解させて均一な溶液状態とした。その後、この溶液を3μm孔のテフロン(R)フィルタを用いて加圧濾過してポジ型感光性樹脂組成物を得た。(A)〜(C)成分および溶剤(γ−ブチロラクトン)について、4例の組み合わせを配合しポジ型感光性樹脂組成物を調製した。それらの組成表を表3に示した。
【0102】
【表3】

【0103】
得られたポジ型感光性組成物をスピンナーを使用してシリコンウエハ上に回転塗布し、ホットプレート上90℃で2分間加熱乾燥を行い、10μmのポジ型感光性樹脂組成物の膜を得た。感光特性の評価を行うために、この塗膜にi線縮小投影露光装置(キャノン製PFA3000iw)を用い、レティクルを介し、100〜1100mJ/cm2の露光をした。次いで、ホットプレート上で120℃で2分間加熱乾燥を行った後、2.38重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を現像液とし、100秒間パドル現像を行い、純水で洗浄してレリーフパターンを得た。現像後残膜を測定し残膜率を算出し、金属顕微鏡によるパターン観察より適正露光量及び最小開口寸法を測定した。実施例19〜20のポジ型感光性樹脂組成物の感光特性について、表4に示した。
【0104】
【表4】

【0105】
表4に示すように、現像後残膜率は全て88%以上と高かった。また、いずれも高感度・高解像度なレリーフパターンが形成されていた。
【0106】
比較例1
実施例1においてポリマーIIの代わりに末端基を有しないポリマーIを用いて、以下同様に感光特性評価を行った。その結果、現像後残膜率60%、露光量660mJ/cm2、最小加工寸法15μmとなり未露光部の膨潤による解像度の低下が見られ所望のパターンは形成できなかった。
【0107】
比較例2
実施例1において(C)成分として保護基を導入していないイソフタル酸を用いて以下同様に感光特性評価を行った。その結果、未露光部と露光部との溶解速度差が不十分で、露光量1J/cm2にて現像後残膜率60%、解像度は30μmと良好なパターンを得ることはできなかった。
【0108】
比較例3
実施例1において(B)成分を加えずに、以下同様に感光特性評価を行った。その結果、パターンは全く得ることができなかった。
【0109】
比較例4
実施例1において(C)成分を加えずに、以下同様に感光特性評価を行った。その結果、未露光部と露光部との溶解速度差が不十分で、露光量860mJ/cm2にて現像後残膜率74%、解像度は20μmと良好なパターンを得ることはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上のように、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜等の形成材料に有用であり、特に、表面保護膜の形成材料に適している。
【符号の説明】
【0111】
1 半導体基板
2 保護膜
3 第一導体層
4 層間絶縁膜層
5 感光樹脂層
6A、6B、6C 窓
7 第二導体層
8 表面保護膜層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボン酸残基より誘導される有機基をその分子末端に有し、下記一般式(1)
【化1】

[式中、R1は二価の有機基(但し、両末端のR1はアルケニル基又はアルキニル基を少なくとも1個を有する脂肪族基又は環式化合物基である場合を除く)、R2は四価の有機基であって、いずれも複数ある場合は同一でも異なっていてもよく、R3は末端カルボン酸基に対してエステル化により導入された、アルキル基、アリール基、アセタールまたはケタールを構成する基、シリル基、シリルエーテル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシアルキル基、アルキルシリル基、テトラヒドロピラニル基からなる群より選ばれる少なくとも一種であり、そのまま末端カルボン酸基として残存しているものがあってもよく、nは整数であり、繰り返し単位数を示す]で表されるポリオキサゾール前駆体(但し、一般式(1)で示される構造中の繰り返し単位以外の繰り返し単位を、全繰り返し単位中50%以下で有していてもよい)と、
(B)活性光線照射により酸を発生する化合物と、
(C)酸触媒作用で分解して水素原子に変換し得る有機基を有する化合物と、
を含有してなるポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項2】
一般式(1)において、R3が、炭素数2以上10以下のアルコキシカルボニル基、アルコキシアルキル基又はテトラヒドロピラニル基である(但し、そのまま末端カルボン酸基として残存しているものがあってもよい)ポリオキサゾール前駆体である請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)成分が、分子中に芳香環を有し、かつ−OR(但し、Rは酸の作用で分解し、水素原子に変換し得る一価の有機基を示す)で示される基、及び/又は−COOR(但し、Rは酸の作用で分解し、水素原子に変換し得る一価の有機基を示す)で示される基を有する化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)成分が、下記一般式(2)
【化2】

(式中、Xは有機基、Rは酸の作用で分解し、水素原子に変換し得る一価の有機基を示し、いずれも複数ある場合は同一でも異なっていてもよく、a、bはそれぞれ0以上の整数であり、a+bは1以上の整数を示す)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)成分が、下記一般式(3)
【化3】

(式中、X’は有機基、Rは酸の作用で分解し、水素原子に変換し得る一価の有機基を示し、いずれも複数ある場合は同一でも異なっていてもよく、a、bはそれぞれ0以上の整数を示す)で表される繰り返し単位を有する化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記有機基Rが、アルキル基、アリール基、アセタールまたはケタールを構成する基、シリル基、シリルエーテル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシアルキル基、アルキルシリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項4または5に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し、乾燥してポジ型感光性樹脂膜を得る工程と、前記ポジ型感光性樹脂膜を露光する工程と、前記露光後のポジ型感光性樹脂膜を加熱する工程と、前記加熱後のポジ型感光性樹脂膜をアルカリ水溶液を用いて現像する工程と、及び前記現像後のポジ型感光性樹脂膜を加熱処理する工程とを含むことを特徴とするパターンの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の製造方法により得られるパターンの層を有してなる電子デバイスを有する電子部品であって、前記電子デバイス中に前記パターンの層が層間絶縁膜層及び/又は表面保護膜層として設けられたものであることを特徴とする電子部品。

【図1】
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【公開番号】特開2009−276795(P2009−276795A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195912(P2009−195912)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【分割の表示】特願2003−425010(P2003−425010)の分割
【原出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【出願人】(398008295)日立化成デュポンマイクロシステムズ株式会社 (81)
【Fターム(参考)】