説明

ポジ型感光性樹脂組成物、硬化膜の形成方法、硬化膜、液晶表示装置、及び、有機EL表示装置

【課題】高感度であり、剥離液やNMPに対する耐性が高く、透明電極膜や金属との密着性も良好で、また、ドライエッチング耐性に優れ、表示装置においても表示不具合が起こりにくい硬化膜を得ることができるポジ型感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(成分A)少なくとも(a1)酸基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位と(a2)架橋性基を有する構成単位とを有する共重合体、(成分B)酸基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位を有さず、少なくとも(b1)酸基を有する構成単位と(b2)架橋性基を有する構成単位とを有する共重合体、(成分C)光酸発生剤、及び、(成分D)溶剤を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物、硬化膜の形成方法、硬化膜、液晶表示装置、及び、有機EL表示装置に関する。更に詳しくは、液晶表示装置、有機EL表示装置、集積回路素子、固体撮像素子などの電子部品の平坦化膜、保護膜や層間絶縁膜の形成に好適な、ポジ型感光性樹脂組成物及びそれを用いた硬化膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と記す。)型液晶表示素子や磁気ヘッド素子、集積回路素子、固体撮像素子などの電子部品には、一般に層状に配置される配線の間を絶縁するために層間絶縁膜が設けられている。層間絶縁膜を形成する材料としては、必要とするパターン形状を得るための工程数が少なくしかも十分な平坦性を有するものが好ましいことから、感光性樹脂組成物が幅広く使用されている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
上記電子部品のうち、例えば、TFT型液晶表示素子は、上記の層間絶縁膜の上に、透明電極膜(ITO)を形成し、更にその上にモリブデン(Mo)やチタン(Ti)等の金属からなる配線が形成され、液晶配向膜を形成する工程を経て製造されるため、層間絶縁膜は、透明電極膜の形成工程において高温条件に曝されたり、電極のパターン形成に使用されるレジストの剥離液や、液晶配向膜形成時に使用されるNMP(N−メチルピロリドン)に曝されることとなるため、これらに対する十分な耐性が必要となる。
【0004】
また、層間絶縁膜が透明電極膜あるいはその上に形成される配線(金属)との密着性が悪い場合には、パネルの表示に不具合が生じやすくなるため、透明電極膜や配線との密着性も要求される。層間絶縁膜は、ドライエッチング工程にかけられる場合もあるため、ドライエッチングに対する十分な耐性も必要となる(特許文献2及び特許文献3参照。)。
【0005】
層間絶縁膜用の高感度の感光性樹脂組成物として、例えば、特許文献4には、(A1)酸解離性基を有する構成単位を含有する樹脂と、(A3)エポキシ基又はオキセタン基を有する構成単位と酸解離性基を含有する樹脂、及び(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含有するポジ型感光性樹脂組成物、あるいは、(A1)酸解離性基を有する構成単位を含有する樹脂と、(A2)エポキシ基又はオキセタン基を有する構成単位を含有する樹脂、及び(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含有する層間絶縁膜形成用ポジ型感光性樹脂組成物が提案されている。
また、特許文献5には、(A1)酸解離性基を有する構成単位を含有する樹脂、(A2)エポキシ基含有ラジカル重合性単量体から誘導される構成単位を有する重合体或いは共重合体、(B)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物及び(C)波長300nm以上の活性光線の照射により酸を発生する化合物を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物が提案されている。
更に、特許文献6においては、(A)(a1)アセタール構造またはケタール構造を有するノルボルネン化合物もしくはアセタールまたはケタール構造を有する(メタ)アクリル酸エステル化合物、(a2)特定の架橋基を有する構成単位、ならびに(a3)(a1)および(a2)以外のオレフィン系不飽和化合物からなる共重合体、(B)放射線の照射によりpKaが4.0以下の酸を発生する化合物を含有する層間絶縁膜形成用感放射線性樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−354822号公報
【特許文献2】特開2000−241832号公報
【特許文献3】特開2005−345757号公報
【特許文献4】特許第4637221号公報
【特許文献5】特許第4676542号公報
【特許文献6】特許第4207604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献4〜6において提案されている感光性樹脂組成物は、層間絶縁膜形成後に使用されるレジストの剥離液やN−メチルピロリドン(NMP)に対する耐性が高くないこと、また、透明電極膜や金属との密着性が悪いこと、更に、ドライエッチングに対する耐性が高くないことから、液晶表示装置における表示不具合が起こりやすく、改善が求められていた。
【0008】
本発明は、以上のような事情を鑑みなされたものであり、以下の課題を解決するものである。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、高感度であり、剥離液やNMPに対する耐性が高く、透明電極膜や金属との密着性も良好で、また、ドライエッチング耐性に優れ、表示装置においても表示不具合が起こりにくい硬化膜を得ることができるポジ型感光性樹脂組成物、前記感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜及びその形成方法、並びに、前記硬化膜を備えた有機EL表示装置及び液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記課題は、以下の<1>、<12>、<15>、<17>又は<18>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<11>、<13>、<14>及び<16>とともに以下に記載する。
<1>(成分A)少なくとも(a1)酸基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位と(a2)架橋性基を有する構成単位とを有する共重合体、(成分B)酸基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位を有さず、少なくとも(b1)酸基を有する構成単位と(b2)架橋性基を有する構成単位とを有する共重合体、(成分C)光酸発生剤、及び、(成分D)溶剤を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物、
<2>前記構成単位(a1)が、カルボキシル基がアセタール又はケタールの形で保護された残基を有する構成単位である、上記<2>に記載のポジ型感光性樹脂組成物、
<3>前記構成単位(a1)が、式(a1−1)で表される構成単位である、上記<1>又は<2>に記載のポジ型感光性樹脂組成物、
【0010】
【化1】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R3は炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数4〜7のシクロアルキル基を表し、R2とR3とは連結して環を形成してもよい。)
【0011】
<4>前記構成単位(a2)が、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位である、上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載のポジ型感光性樹脂組成物、
<5>前記構成単位(b1)の酸基が、カルボキシル基又はフェノール性水酸基である、上記<1>〜<5>のいずれか1つに記載のポジ型感光性樹脂組成物、
<6>前記構成単位(b2)が、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位である、上記<1>〜<5>のいずれか1つに記載のポジ型感光性樹脂組成物、
<7>成分Bが、式(b3)で表される構成単位を更に有する、上記<1>〜<6>のいずれか1つに記載のポジ型感光性樹脂組成物、
【0012】
【化2】

(式中、R4は水素原子又はメチル基を表す。)
【0013】
<8>成分Aの含有量WAと成分Bの含有量WBとの重量比率が、WA/WB=98/2〜20/80である、上記<1>〜<7>のいずれか1つに記載のポジ型感光性樹脂組成物、
<9>成分Cが、式(c1)で表されるオキシムスルホネート光酸発生剤である、上記<1>〜<8>のいずれか1つに記載のポジ型感光性樹脂組成物、
【0014】
【化3】

(式(c1)中、R5及びR6はそれぞれ独立に、一価の有機基を表し、R5及びR6は連結して環を形成していてもよく、R7はアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。)
【0015】
<10>成分Cが、式(OS−3)、式(OS−4)、式(OS−5)又は式(c4)で表される化合物である、上記<1>〜<9>のいずれか1つに記載のポジ型感光性樹脂組成物、
【0016】
【化4】

(式(OS−3)〜式(OS−5)中、R1はアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子を表し、R6はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、スルホン酸基、アミノスルホニル基又はアルコキシスルホニル基を表し、XはO又はSを表し、nは1又は2を表し、mは0〜6の整数を表す。)
【0017】
【化5】

(式中、RB1はアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表し、RB2はアルキル基又はアリール基を表す。)
【0018】
<11>光増感剤を更に含む、上記<1>〜<10>のいずれか1つに記載のポジ型感光性樹脂組成物、
<12>(1)上記<1>〜<11>のいずれか1つに記載のポジ型感光性樹脂組成物を用いて基板上に膜状の層を形成する層形成工程、(2)塗布された感光性樹脂組成物から溶剤を除去する溶剤除去工程、(3)溶剤が除去された感光性樹脂組成物を活性光線により露光する露光工程、(4)露光された感光性樹脂組成物を水性現像液により現像する現像工程、及び、(5)現像された感光性樹脂組成物を熱硬化するポストベーク工程、を含む硬化膜の形成方法、
<13>前記現像工程後、前記ポストベーク工程前に、現像された感光性樹脂組成物を全面露光する工程を含む、上記<12>に記載の硬化膜の形成方法、
<14>(6)熱硬化して得られた硬化膜を有する基板に対しドライエッチングを行うドライエッチング工程を更に含む、上記<12>又は<13>に記載の硬化膜の形成方法、
<15>上記<12>〜<14>のいずれか1つに記載の方法により形成された硬化膜、
<16>層間絶縁膜である、上記<15>に記載の硬化膜、
<17>上記<15>又は<16>に記載の硬化膜を具備する有機EL表示装置、
<18>上記<15>又は<16>に記載の硬化膜を具備する液晶表示装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高感度であり、剥離液やNMPに対する耐性が高く、透明電極膜や金属との密着性も良好で、また、ドライエッチング耐性に優れ、表示装置においても表示不具合が起こりにくい硬化膜を得ることができるポジ型感光性樹脂組成物、前記感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜及びその形成方法、並びに、前記硬化膜を備えた有機EL表示装置及び液晶表示装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】有機EL表示装置の一例の構成概念図を示す。ボトムエミッション型の有機EL表示装置における基板の模式的断面図を示し、平坦化膜4を有している。
【図2】液晶表示装置の一例の構成概念図を示す。液晶表示装置におけるアクティブマトリックス基板の模式的断面図を示し、層間絶縁膜である硬化膜17を有している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、明細書中、「下限〜上限」の記載は「下限以上、上限以下」を表し、「上限〜下限」の記載は「上限以下、下限以上」を表す。すなわち、上限及び下限を含む数値範囲を表す。
また、「(成分A)少なくとも(a1)酸基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位と(a2)架橋性基を有する構成単位とを有する共重合体」等を単に「成分A」等ともいい、「(a1)酸基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位」等をを単に「構成単位(a1)」等ともいう。
また、「アクリレート」、「メタクリレート」の双方あるいはいずれかを指す場合「(メタ)アクリレート」と、「アクリル」、「メタクリル」の双方あるいはいずれかを指す場合「(メタ)アクリル」と、それぞれ記載することがある。
【0022】
(ポジ型感光性樹脂組成物)
本発明のポジ型感光性樹脂組成物(以下、単に「感光性樹脂組成物」ともいう。)は、(成分A)少なくとも(a1)酸基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位と(a2)架橋性基を有する構成単位とを有する共重合体、(成分B)酸基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位を有さず、少なくとも(b1)酸基を有する構成単位と(b2)架橋性基を有する構成単位とを有する共重合体、(成分C)光酸発生剤、及び、(成分D)溶剤を含有することを特徴とする。
本発明の感光性樹脂組成物は、特定の樹脂2成分(成分A及び成分B)及び光酸発生剤を含有することにより、感度に優れたものとなる。また、本発明の感光樹脂組成物は、特定の樹脂2成分及び光酸発生剤を含有することにより、剥離液、特にモノエタノールアミンを含有する剥離液やNMPに対する耐性が高く、透明電極膜や金属との密着性も良好で、また、ドライエッチング耐性に優れ、表示装置においても表示不具合が起こりにくい硬化膜を形成することができる。
また、本発明の感光性樹脂組成物は、化学増幅型のポジ型感光性樹脂組成物(化学増幅ポジ型感光性樹脂組成物)であることが好ましい。
更に、本発明の感光性樹脂組成物は、ドライエッチングレジスト用ポジ型感光性樹脂組成物として好適に使用することができる。
【0023】
なお、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
また、本発明に使用する成分Aや成分B等の共重合体が含有する構成単位を導入する方法は、重合法でもよく、高分子反応法でもよい。重合法では、所定の官能基を含有するモノマーを予め合成した後に、これらのモノマーを共重合する。高分子反応法では、重合反応を行った後に、得られた共重合体の構成単位に含まれる反応性基を利用して必要な官能基を構成単位中に導入する。ここで、官能基としては、カルボキシル基又はフェノール性水酸基等の酸基を保護すると同時に強酸の存在下で分解しこれらを遊離するための保護基、エポキシ基又はオキセタニル基などの架橋性基、また、フェノール性水酸基やカルボキシル基のようなアルカリ可溶性基(酸基)等が例示できる。
【0024】
(成分A)少なくとも(a1)酸基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位と(a2)架橋性基を有する構成単位とを有する共重合体
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(成分A)少なくとも(a1)酸基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位と(a2)架橋性基を有する構成単位とを有する共重合体を含有する。
また、前記構成単位(a1)と前記構成単位(a2)とは、同一の構成単位であってもよいが、異なる構成単位であることが好ましい。
成分Aはアルカリ不溶性であり、かつ、酸分解性基が分解したときにアルカリ可溶性となる樹脂であることが好ましい。ここで、「酸分解性基」とは酸の存在下で分解可能な官能基を意味する。また、「アルカリ可溶性」とは、化合物(樹脂)の溶液を基板上に塗布し、90℃で2分間加熱して形成した塗膜(厚さ3μm)の、23℃における0.4重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対する溶解速度が、0.01μm/秒以上であることをいう。一方、「アルカリ不溶性」とは、溶解速度が0.01μm/秒未満であることをいう。成分Aのアルカリ溶解速度は0.005μm/秒未満であることがより好ましい。
【0025】
成分Aは、付加重合型の樹脂であることが好ましく、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルに由来する構成単位を含む重合体であることがより好ましい。なお、成分Aは、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルに由来する構成単位以外の構成単位、例えば、スチレンやビニル化合物に由来する構成単位等を有していてもよい。
成分Aは、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルに由来するモノマー単位を、全モノマー単位に対し、50モル%以上含有することが好ましく、80モル%以上含有することがより好ましく、90モル%以上含有することが更に好ましく、100モル%含有することが特に好ましい。
【0026】
また、成分Aが含有する構成単位を導入する方法は、重合法でもよく、高分子反応法でもよく、これらの2方法を併用してもよい。
重合法では、例えば、酸基が酸分解性基で保護された残基を有するエチレン性不飽和化合物、及び、架橋基を有するエチレン性不飽和化合物、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有するエチレン性不飽和化合物等を混合して付加重合して、目的とする共重合体を得ることができる。
高分子反応法では、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを共重合した共重合体にエピクロロヒドリンを反応させてエポキシ基を導入することが例示できる。このように、反応性基を有するエチレン性不飽和化合物を共重合した後に、側鎖に残る反応性基を活用して、高分子反応によって、フェノール性水酸基若しくはカルボキシル基が酸分解性基で保護された残基、及び/又は、架橋基のような官能基を側鎖に導入することができる。
【0027】
<構成単位(a1)>
成分Aは、(a1)酸基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位を少なくとも有する。成分Aが構成単位(a1)を有することにより、極めて高感度な感光性樹脂組成物とすることができる。
本発明における「酸基が酸分解性基で保護された残基」は、カルボキシル基がアセタールの形で保護された残基、酸基がケタールの形で保護された残基、酸基が第三級アルキル基で保護された残基、又は、酸基が第三級アルキルカーボネート基で保護された残基である。
酸基としては、カルボキシル基、及び、フェノール性水酸基が好ましく挙げられる。
また、酸基が酸分解性基で保護された残基として具体的には、例えば、後述する式(A1)で表される基のエステル構造、テトラヒドロピラニルエステル基、又は、テトラヒドロフラニルエステル基等のアセタール又はケタール系官能基や、t−ブチルエステル基、t−ブチルカーボネート基等の第三級アルキル系官能基が挙げられる。
【0028】
(a1−1)カルボキシル基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位
カルボキシル基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位とは、好ましくは後述する(a1−1−1)、(a1−1−2)に記載の構成単位に含まれるカルボキシル基が酸分解性基によって保護された残基を有する構成単位である。
酸分解性基としては、KrF用ポジ型レジスト、ArF用ポジ型レジストにおける酸分解性基として公知のものを使用でき、特に限定されない。酸分解性基としては、酸により比較的分解し易い基(例えば、テトラヒドロピラニル基、エトキシエチル基等のアセタール系官能基)や、酸により比較的分解し難い基(例えば、t−ブチルエステル基、t−ブチルカーボネート基等のt−ブチル系官能基)が知られている。構成単位(a1−1)としては、カルボキシル基がアセタールの形で保護された残基、又は、カルボキシル基がケタールの形で保護された残基を有する構成単位が、感度やパターン形状、コンタクトホールの形成性の観点から好ましい。
【0029】
更に、酸分解性基の中でもカルボキシル基が式(A1)で表されるアセタール又はケタールの形で保護された残基であることが、感度の観点からより好ましい。なお、カルボキシル基が式(A1)で表されるアセタール又はケタールの形で保護された残基である場合、残基の全体としては、−C(=O)−O−CR12(OR3)の構造となっている。
【0030】
【化6】

(式(A1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、少なくともR1及びR2のいずれか一方がアルキル基、又は、アリール基であり、R3は、アルキル基、又は、アリール基を表し、R1又はR2とR3とが連結して環状エーテルを形成してもよい。また、式(A1)における波線部分は、他の構造との結合位置を表す。)
【0031】
式(A1)中、R1、R2及びR3における、該アルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよい。
直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数1〜12であることが好ましく、炭素数1〜6であることがより好ましく、炭素数1〜4であることがさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、テキシル基(2,3−ジメチル−2−ブチル基)、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基等を挙げることができる。中でも、メチル基、エチル基が好ましい。
環状アルキル基としては、炭素数3〜12であることが好ましく、炭素数4〜8であることがより好ましく、炭素数4〜6であることがさらに好ましい。環状アルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基等を挙げることができる。中でも、単環状のものが好ましく、シクロヘキシル基がより好ましい。
前記アルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜6のアルコキシ基が例示できる。置換基としてハロゲン原子を有する場合、R1、R2、R3はハロアルキル基となり、置換基としてアリール基を有する場合、R1、R2、R3はアラルキル基となる。アラルキル基としては、ベンジル基が好ましい。
【0032】
式(A1)中、R1、R2及びR3における該アリール基としては、炭素数6〜12であることが好ましく、炭素数6〜10であることがより好ましい。該アリール基は置換基を有していてもよく、該置換基としては炭素数1〜6のアルキル基が好ましく例示できる。アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、1−ナフチル基等が例示でき、フェニル基が好ましい。
【0033】
また、式(A1)中、R1、R2及びR3は互いに結合して、それらが結合している炭素原子と一緒になって環を形成することができる。R1とR2、R1とR3又はR2とR3が結合した場合の環構造としては、例えばシクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、テトラヒドロフラニル基、アダマンチル基及びテトラヒドロピラニル基等を挙げることができる。
【0034】
なお、式(A1)において、R1及びR2のいずれか一方が、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
式(A1)で表される残基を有する構成単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体は、市販のものを用いてもよいし、例えば特開2009−098616号公報の段落0025〜0026に記載の方法等、公知の方法で合成したものを用いてもよい。
【0035】
カルボキシル基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位(a1−1)としては、式(A2)で表される構成単位がより好ましい。
【0036】
【化7】

(式(A2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、少なくともR1及びR2のいずれか一方がアルキル基又はアリール基であり、R3は、アルキル基又はアリール基を表し、R1又はR2とR3とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R4は、水素原子又はメチル基を表し、Xは単結合又はアリーレン基を表す。)
【0037】
式(A2)中、R1〜R3は、式(A1)におけるR1〜R3と同様であり、好ましい範囲も同様である。
式(A2)中、R1及びR2は、水素原子、又は、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、水素原子、又は、メチル基がより好ましい。R3は、直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の炭素数6以下のアルキル基、又は、炭素数7〜10のアラルキル基が好ましく、エチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基がより好ましい。R1又はR2とR3とが連結した環状エーテルとしては、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基が好ましい。R4は、メチル基が好ましい。Xは単結合又はフェニレン基が好ましい。
【0038】
構成単位(a1−1)の好ましい具体例としては、下記の構成単位が例示できる。なお、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
【0039】
【化8】

【0040】
構成単位(a1−1)としては、カルボキシル基が式(A3)で表される第三級アルキル基で保護された残基を有する構成単位であってもよい。アセタール又はケタールの形で保護された残基に比べると、感度は劣るが、保存安定性に優れるという点で好ましい。なお、カルボキシル基が式(A3)で表される第三級アルキル基で保護された残基である場合、残基の全体としては、−C(=O)−O−CR123の構造である。
【0041】
【化9】

【0042】
式(A3)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立にアルキル基又はアリール基を表し、R1、R2及びR3のいずれか2つが互いに結合して環を形成していてもよい。式(A3)における波線部分は、他の構造との結合位置を表す。式(A3)のR1〜R3における、アルキル基、アリール基の具体例は、式(A1)におけるアルキル基、アリール基の具体例と同様である。
式(A3)において、好ましい例としては、R1=R2=R3=メチル基の組み合わせや、R1=R2=メチル基でR3=ベンジル基の組み合わせが例示できる。
【0043】
(a1−2)フェノール性水酸基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位
(a1−2)フェノール性水酸基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位としては、(a1−2−1)フェノール性水酸基を有する構成単位のフェノール性水酸基が、酸分解性基によって保護された残基を有する構成単位が好ましい。
【0044】
(a1−2−1)フェノール性水酸基を有する構成単位
フェノール性水酸基を有する構成単位としては、ヒドロキシスチレン系構成単位やノボラック系の樹脂における構成単位が挙げられるが、これらの中ではα−メチルヒドロキシスチレンに由来する構成単位が透明性の観点から好ましい。フェノール性水酸基を有する構成単位の中でも、式(A4)で表される構成単位が透明性、感度の観点から好ましい。
【0045】
【化10】

(式(A4)中、R20は水素原子又はメチル基を表し、R21は単結合又は二価の連結基を表し、R22はそれぞれ独立にハロゲン原子又はアルキル基を表し、aは1〜5の整数を表し、bは0〜4の整数を表し、a+bは5以下である。)
【0046】
20はメチル基であることが好ましい。
21の二価の連結基としては炭素原子が主鎖に結合するエステル結合(−COO−)、アルキレン基が例示できる。アルキレン基としては、直鎖又は分岐を有する炭素数1〜6のアルキレン基が好ましい。−COO−である場合には、感度を向上させることができ、さらに硬化膜の透明性を向上させることができるので好ましい。中でも、R21が単結合、エステル結合であることが好ましい。また、前記二価の連結基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0047】
また、aは1〜5の整数を表すが、製造が容易であるという点から、aは1又は2であることが好ましく、aが1であることがより好ましい。
また、ベンゼン環における水酸基の結合位置は、R21と結合している炭素原子を基準(1位)としたとき、4位に結合していることが好ましい。
22はフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子又は炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基である。中でも製造が容易であることから、塩素原子、臭素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0048】
(a1−2)フェノール性水酸基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位
フェノール性水酸基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位は、(a1−2−1)フェノール性水酸基を有する構成単位のフェノール性水酸基が、酸分解性基によって保護された残基を有する構成単位である。
酸分解性基としては、前述したように、公知のものを使用でき、特に限定されない。
フェノール性水酸基が酸分解性基で保護された残基中でもフェノール性水酸基がアセタール又はケタールの形で保護された残基を有する構成単位であることが、レジストの基本物性、特に感度やパターン形状、感光性樹脂組成物の保存安定性、コンタクトホールの形成性の観点から好ましい。更に、フェノール性水酸基が酸分解性基で保護された残基の中でもフェノール性水酸基が式(A1)で表されるアセタール又はケタールの形で保護された残基であることが、感度の観点からより好ましい。この場合、残基の全体としては、−Ar−O−CR12(OR3)の構造となっている。なお、Arはアリーレン基を表す。
フェノール性水酸基のアセタールエステル構造の好ましい例としては、R1=R2=R3=メチル基やR1=R2=メチル基でR3=ベンジル基の組み合わせが例示できる。
【0049】
また、フェノール性水酸基がアセタール又はケタールの形で保護された残基を有するモノマー単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体としては、例えば、ヒドロキシスチレンの1−アルコキシアルキル保護体、ヒドロキシスチレンのテトラヒドロピラニル保護体、α−メチルヒドロキシスチレンの1−アルコキシアルキル保護体、α−メチル−ヒドロキシスチレンのテトラヒドロピラニル保護体、α−メチルヒドロキシスチレンのテトラヒドロフラニル保護体、4−ヒドロキシフェニルメタクリレートの1−アルコキシアルキル保護体、4−ヒドロキシフェニルメタクリレートのテトラヒドロピラニル保護体、及び、4−ヒドロキシフェニルメタクリレートのテトラヒドロフラニル保護体などが挙げられる。これらの中で、α−メチルヒドロキシスチレンの1−アルコキシアルキル保護体、又は、α−メチルヒドロキシスチレンのテトラヒドロフラニル保護体が好ましい。
【0050】
フェノール性水酸基のアセタール保護基及びケタール保護基の具体例としては、1−アルコキシアルキル基が挙げられ、例えば、1−エトキシエチル基、1−メトキシエチル基、1−n−ブトキシエチル基、1−イソブトキシエチル基、1−(2−クロロエトキシ)エチル基、1−(2−エチルヘキシルオキシ)エチル基、1−n−プロポキシエチル基、1−シクロヘキシルオキシエチル基、1−(2−シクロヘキシルエトキシ)エチル基、1−ベンジルオキシエチル基、テトラヒドロピラニル基、及び、テトラヒドロフラニル基などを挙げることができ、中でも1−エトキシエチル基、又は、テトラヒドロフラニル基が好ましい。これらは1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
構成単位(a1−2)を形成するために用いられるラジカル重合性単量体は、市販のものを用いてもよいし、公知の方法で合成したものを用いることもできる。例えば、フェノール性水酸基を有する化合物を酸触媒の存在下でビニルエーテルと反応させることにより合成することができる。上記の合成はフェノール性水酸基を有するモノマーをその他のモノマーと予め共重合させておき、その後に酸触媒の存在下でビニルエーテルと反応させてもよい。
【0052】
構成単位(a1−2)の好ましい具体例としては、下記の構成単位が例示できるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、Rは、水素原子又はメチル基を表す。
【0053】
【化11】

【0054】
カルボキシル基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位は、フェノール性水酸基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位に比べると、現像が速い。よって、速く現像したい場合にはカルボキシル基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位が好ましい。逆に現像を遅くしたい場合にはフェノール性水酸基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位を用いることが好ましい。
【0055】
これらの中でも、構成単位(a1)は、感度の観点から、下記式(a1−1)で表される構成単位であることが好ましい。
【0056】
【化12】

(式(a1−1)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R3は炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数4〜7のシクロアルキル基を表し、R2とR3とは連結して環を形成してもよい。)
【0057】
式(a1−1)中、R1はメチル基であることが好ましい。
式(a1−1)中、R2は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
式(a1−1)中、R3は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数5又は6のシクロアルキル基であることが好ましく、エチル基又はシクロヘキシル基であることがより好ましい。
式(a1−1)中、R2とR3とは連結して環を形成する場合は、R2とR3とが連結した基が、炭素数3〜6のアルキレン基であることが好ましく、1,3−プロピレン基又は1,4−ブチレン基であることがより好ましい。
【0058】
成分Aを構成する全モノマー単位中、構成単位(a1)を形成するモノマー単位の含有率は、10〜80モル%であることが好ましく、10〜70モル%がより好ましく、20〜70モル%が特に好ましい。構成単位(a1)を上記の割合で含有させることにより、高感度な感光性樹脂組成物が得られる。
【0059】
<構成単位(a2)>
成分Aは、(a2)架橋性基を有する構成単位を少なくとも有する。
架橋性基としては、前述した酸基と反応して共有結合を形成するもの、架橋性基同士で熱や光の作用により共有結合を形成するものであればいずれでもよい。特に熱で共有結合を形成するものが好ましい。
酸基と反応して共有結合を形成する架橋性基を有する構成単位(a2)としては、エポキシ基、オキセタニル基又はN−アルコキシメチル基を有する基を有する構成単位が好ましく、架橋性基同士で熱や光の作用により共有結合を形成するものとしてはエチレン性不飽和結合が好ましい。これらの架橋性基の中でも、酸基と反応して共有結合を形成するものが好ましい。
架橋性基は、特に、エポキシ基又はオキセタニル基を有する構成単位として、成分Aに含まれることが好ましい。また、構成単位(a2)としては、エポキシ基とオキセタニル基との両方の基を含んでもよいし、エポキシ基、オキセタニル基及びエチレン性不飽和結合の3種の基を含んでもよい。
前記エポキシ基又はオキセタニル基を有する構成単位としては、脂環エポキシ基又はオキセタニル基を有する構成単位であることが好ましく、オキセタニル基を有する構成単位であることがより好ましい。
【0060】
脂環エポキシ基は、脂肪族環とエポキシ環とが縮合環を形成している基であり、具体的には例えば、3,4−エポキシシクロヘキシル基、2,3−エポキシシクロヘキシル基、2,3−エポキシシクロペンチル基等が好ましく挙げられる。
オキセタニル基を有する基としては、オキセタン環を有していれば、特に制限はないが、(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル基が好ましく例示できる。
エポキシ基又はオキセタニル基を有する構成単位は、1つの構成単位中にエポキシ基又はオキセタニル基を少なくとも1つ有していればよく、1つ以上のエポキシ基と1つ以上のオキセタニル基とを含んでもよく、2つ以上のエポキシ基、又は、2つ以上のオキセタニル基を有していてもよく、特に限定されないが、エポキシ基とオキセタニル基とを合計1〜3つ有することが好ましく、エポキシ基とオキセタニル基とを合計1又は2つ有することがより好ましく、エポキシ基とオキセタニル基とを1つ有することが更に好ましい。
【0061】
エポキシ基を有する構成単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、特許第4168443号公報の段落0031〜0035に記載の脂環式エポキシ骨格を含有する化合物などが挙げられる。
【0062】
オキセタニル基を有する構成単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体の例としては、例えば、特開2001−330953号公報の段落0011〜0016に記載のオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。
【0063】
エポキシ基又はオキセタニル基を有する構成単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体の例としては、メタクリル酸エステル構造を含有するモノマー、アクリル酸エステル構造を含有するモノマーであることが好ましい。
【0064】
これらのラジカル重合性単量体の中で、更に好ましいものとしては、特許第4168443号公報の段落0034〜0035に記載の脂環式エポキシ骨格を含有する化合物及び特開2001−330953号公報の段落0011〜0016に記載のオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、特に好ましいものとしては特開2001−330953号公報の段落0011〜0016に記載のオキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである。これらの中でも好ましいものは、アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、アクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル、及び、メタクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチルであり、最も好ましいものはアクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル、及び、メタクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチルである。これらの構成単位は、1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0065】
また、架橋性基としては、N−アルコキシメチル基が好ましく挙げられ、N−アルコキシメチルアミド基がより好ましく挙げられる。N−アルコキシメチル基を有する構成単位としては、下記式(a2−1)で表される構成単位が好ましい。
【0066】
【化13】

(式(a2−1)中、Ra1は水素原子又はメチル基を表し、Ra2は炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表し、Ra3は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基を表す。)
【0067】
式(a2−1)におけるRa1は、水素原子又はメチル基を表し、水素原子が好ましい。
式(a2−1)におけるRa2は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基を表し、前記アルキル基又はアリール基は置換されていてもよく、置換基としてはハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。また、Ra2としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、シクロヘキシル基又はn−ヘキシル基がより好ましく、メチル基、エチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、シクロヘキシル基又はn−ヘキシル基が更に好ましく、メチル基、n−ブチル基又はi−ブチル基が特に好ましい。
式(a2−1)におけるRa3は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基を表し、前記アルキル基又はアリール基は置換されていてもよく、置換基としてはハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基が挙げられる。Ra3は、水素原子又は炭素数1〜20のアルコキシメチル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
【0068】
式(a2−1)で表される構成単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体の例としては、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−i−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドが好ましく、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−i−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドがより好ましく、N−n−ブトキシメチルアクリルアミドが特に好ましい。
【0069】
構成単位(a2)の好ましい具体例としては、下記の構成単位が例示できる。
【0070】
【化14】

【0071】
感度の観点から、成分Aにおける構成単位(a2)を形成するモノマー単位の含有比率は、成分Aを構成する全モノマー単位に対し、10〜70モル%が好ましく、15〜65モル%がより好ましく、20〜60モル%が更に好ましい。
密着性及びレジスト剥離液やNMPに対する耐性の観点から、成分Aにおける構成単位(a2)を形成するモノマー単位の含有比率は、成分Aを構成する全モノマー単位に対し、10〜70モル%が好ましく、10〜60モル%がより好ましく、10〜50モル%が更に好ましい。
【0072】
<その他の構成単位(a3)>
成分Aは、本発明の効果を妨げない範囲で、その他の構成単位(a3)を更に有していてもよい。
構成単位(a3)を形成するために用いられるラジカル重合性単量体としては、例えば、特開2004−264623号公報の段落0021〜0024に記載の化合物を挙げることができる(ただし、前記した構成単位(a1)及び(a2)を除く。)。
また、成分Aは、感度の観点から、構成単位(a3)として、酸基を有する構成単位を更に有することが好ましい。
酸基としては、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有する構成単位であることがより好ましく、カルボキシル基を有する構成単位であることが更に好ましい。
構成単位(a3)は、アクリル酸、メタクリル酸、p−ヒドロキシスチレン、及び、α−メチル−p−ヒドロキシスチレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位であることが好ましく、アクリル酸又はメタクリル酸に由来する構成単位であることがより好ましく、メタクリル酸に由来する構成単位であることが特に好ましい。
【0073】
また、構成単位(a3)の好ましい例としては、水酸基含有不飽和カルボン酸エステル、脂環構造含有不飽和カルボン酸エステル、スチレン、N置換マレイミド、及び、(メタ)アクリル酸メチルよりなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位も挙げられる。
これらの中でも、電気特性向上の観点で、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メチルシクロヘキシルのような脂環構造含有の(メタ)アクリル酸エステル類、又は、スチレンのような疎水性のモノマーが好ましい。感度の観点で、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、N置換マレイミドが好ましい。これらの中でも、脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル類がより好ましい。また、エッチング耐性の観点からは、スチレンやα−メチルスチレンなどのスチレン類が好ましい。
これらの構成単位(a3)は、1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0074】
成分Aを構成する全モノマー単位中、構成単位(a3)を含有させる場合における構成単位(a3)を形成するモノマー単位の含有比率は、1〜50モル%が好ましく、5〜40モル%が更に好ましく、5〜30モル%が特に好ましい。
【0075】
本発明における成分Aの重量平均分子量は、2,000〜100,000であることが好ましく、3,000〜50,000であることがより好ましく、4,000〜30,000であることが更に好ましく、10,000〜16,000であることが特に好ましい。なお、本発明における重量平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とした場合のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量であることが好ましい。
成分Aは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0076】
本発明の感光性樹脂組成物中における成分Aの含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、20〜99重量%であることが好ましく、30〜95重量%であることがより好ましく、30〜70重量%であることが更に好ましい。含有量がこの範囲であると、現像した際のパターン形成性が良好となる。なお、感光性樹脂組成物の固形分量とは、溶剤などの揮発性成分を除いた量を表す。
【0077】
(成分B)酸基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位を有さず、少なくとも(b1)酸基を有する構成単位と(b2)架橋性基を有する構成単位とを有する共重合体
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、成分Aに加え、(成分B)酸基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位を有さず、少なくとも(b1)酸基を有する構成単位と(b2)架橋性基を有する構成単位とを有する共重合体を含有する。
成分Bは、成分Aにおける構成単位(a1)である、酸基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位を有しない。
また、前記構成単位(b1)と前記構成単位(b2)とは、同一の構成単位であってもよいが、異なる構成単位であることが好ましい。
更に、成分Bは、アルカリ可溶性であることが好ましい。
【0078】
成分Bは、付加重合型の樹脂であることが好ましく、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルに由来する構成単位を含む重合体であることがより好ましい。なお、成分Aは、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルに由来する構成単位以外の構成単位、例えば、スチレンやビニル化合物に由来する構成単位等を有していてもよい。
成分Bは、(メタ)アクリル酸及び/又はそのエステルに由来するモノマー単位を、全モノマー単位に対し、50モル%以上含有することが好ましく、80モル%以上含有することがより好ましく、90モル%以上含有することが更に好ましく、100モル%含有することが特に好ましい。
また、成分Bが含有する構成単位を導入する方法は、成分Aと同様に、重合法であってもよく、高分子反応法であってもよく、これらの2方法を併用してもよい。
【0079】
<構成単位(b1)>
成分Bは、(b1)酸基を有する構成単位を少なくとも有する。
構成単位(b1)としては、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有する構成単位であることがより好ましく、カルボキシル基を有する構成単位であることが更に好ましい。
【0080】
カルボキシル基を有する構成単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等のジカルボン酸等の不飽和カルボン酸を好ましいものとして挙げることができる。
また、カルボン酸無水物残基を有する構成単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸等を好ましいものとして挙げることができる。
【0081】
フェノール性水酸基を有する構成単位を形成するために用いられるラジカル重合性単量体としては、例えば、p−ヒドロキシスチレン、α−メチル−p−ヒドロキシスチレン等のヒドロキシスチレン類、特開2008−40183号公報の段落0011〜0016に記載の化合物、特許第2888454号公報の段落0007〜0010に記載の4−ヒドロキシ安息香酸誘導体類、4−ヒドロキシ安息香酸とメタクリル酸グリシジルとの付加反応物、4−ヒドロキシ安息香酸とアクリル酸グリシジルとの付加反応物等を好ましいものとして挙げることができる。
【0082】
これらの中でも、メタクリル酸、アクリル酸、特開2008−40183号公報の段落0011〜0016に記載の化合物、特許第2888454号公報の段落0007〜0010に記載の4−ヒドロキシ安息香酸誘導体類、4−ヒドロキシ安息香酸とメタクリル酸グリシジルとの付加反応物、4−ヒドロキシ安息香酸とアクリル酸グリシジルとの付加反応物が更に好ましく、特開2008−40183号公報の段落0011〜0016に記載の化合物、特許第2888454号公報の段落0007〜0010に記載の4−ヒドロキシ安息香酸誘導体類、4−ヒドロキシ安息香酸とメタクリル酸グリシジルとの付加反応物、4−ヒドロキシ安息香酸とアクリル酸グリシジルとの付加反応物が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、p−ヒドロキシスチレン、及び、α−メチル−p−ヒドロキシスチレンよりなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位であることがより好ましく、アクリル酸又はメタクリル酸に由来する構成単位であることが更に好ましく、メタクリル酸に由来する構成単位であることが特に好ましい。これらの構成単位は、1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
構成単位(b1)の好ましい具体例としては、下記の構成単位が例示できる。
【0083】
【化15】

【0084】
これらの中でも、構成単位(b1)としては、(b1−1)、(b1−2)、(b1−11)又は(b1−12)であることが好ましく、(b1−1)又は(b1−2)であることがより好ましく、(b1−1)であることが特に好ましい。
【0085】
<構成単位(b2)>
成分Bは、(b2)架橋性基を有する構成単位を少なくとも有する。
架橋性基としては、前述した酸基と反応して共有結合を形成するもの、架橋性基同士で熱や光の作用により共有結合を形成するものであればいずれでもよい。
成分Bにおける構成単位(b2)は、成分Aにおける構成単位(a2)と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0086】
感度の観点から、成分Bにおける構成単位(b1)を形成するモノマー単位の含有比率は、成分Bを構成する全モノマー単位に対し、5〜50モル%が好ましく、5〜45モル%がより好ましく、5〜40モル%が更に好ましい。
密着性及びレジスト剥離液やNMPに対する耐性の観点から、成分Bにおける構成単位(b2)を形成するモノマー単位の含有比率は、成分Bを構成する全モノマー単位に対し、10〜90モル%が好ましく、15〜85モル%がより好ましく、20〜80モル%が更に好ましい。
【0087】
<その他の構成単位(b3)>
成分Bは、本発明の効果を妨げない範囲で、その他の構成単位(b3)を更に有していてもよい。
構成単位(b3)を形成するために用いられるラジカル重合性単量体としては、例えば、特開2004−264623号公報の段落0021〜0024に記載の化合物を挙げることができる(ただし、前記した構成単位(b1)及び(b2)、並びに、酸基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位を除く。)。
また、成分Aにおける構成単位(a3)として前述したラジカル重合性単量体を用いることもできる。
【0088】
構成単位(b3)を形成するために用いられるラジカル重合性単量体としては、エッチング耐性の観点から、スチレンやα−メチルスチレンなどのスチレン類が好ましく、スチレン又はα−メチルスチレンがより好ましい。
また、成分Bは、エッチング耐性の観点から、下記式(b3)で表される構成単位を更に有することが好ましい。R4は水素原子であることが好ましい。
【0089】
【化16】

(式中、R4は水素原子又はメチル基を表す。)
【0090】
また、構成単位(b3)の例としては、(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン類、及び、N置換マレイミドよりなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位が好ましく挙げられ、(メタ)アクリル酸エステル類、及び、スチレン類よりなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位がより好ましく挙げられる。
中でも、構成単位(b3)を形成するために用いられるラジカル重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘキシルのような脂環構造を有する(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、スチレンを好ましく例示でき、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、スチレンをより好ましく例示でき、(メタ)アクリル酸メチルを更に好ましく例示でき、メタクリル酸メチルを特に好ましく例示できる。
構成単位(b3)は、1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0091】
成分Bを構成する全モノマー単位中、構成単位(b3)を含有させる場合における構成単位(b3)を形成するモノマー単位の含有比率は、ドライエッチング耐性の観点から、1〜60モル%が好ましく、3〜55モル%がより好ましく、5〜50モル%が更に好ましい。
【0092】
本発明における成分Bの重量平均分子量は、2,000〜100,000であることが好ましく、3,000〜50,000であることがより好ましく、4,000〜30,000であることが更に好ましく、10,000〜16,000であることが特に好ましい。なお、本発明における重量平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とした場合のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量であることが好ましい。
成分Bは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0093】
本発明の感光性樹脂組成物中における成分Bの含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、20〜99重量%であることが好ましく、30〜95重量%であることがより好ましく、30〜70重量%であることが更に好ましい。含有量がこの範囲であると、現像した際のパターン形成性が良好となる。
また、本発明の感光性樹脂組成物中における成分Aと成分Bとの含有比率は、(成分Aの含有量)/(成分Bの含有量)=0.5〜2であることが好ましく、0.8〜1.2であることがより好ましく、0.9〜1.1であることが更に好ましい。上記範囲であると、本発明の効果をより発揮できる。
【0094】
なお、本発明の感光性樹脂組成物中では、本発明の効果を妨げない範囲で成分A及び成分B以外の樹脂を併用してもよい。ただし、成分A及び成分B以外の樹脂の含有量は、現像性の観点から、成分Aの含有量及び成分Bの含有量より少ないことが好ましい。
【0095】
このような成分A及び成分B以外の樹脂としては、側鎖にカルボキシル基を有する樹脂が好ましい。例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているような、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等、並びに側鎖にカルボキシル基を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの等が挙げられ、更に側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する高分子重合体も好ましいものとして挙げられる。
【0096】
前記以外に、特開平7−140654号公報に記載の、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体などが挙げられる。
その他にも、特開平7−207211号公報、特開平8−259876号公報、特開平10−300922号公報、特開平11−140144号公報、特開平11−174224号公報、特開2000−56118号公報、特開2003−233179号公報、特開2009−52020号公報等に記載の公知の高分子化合物を使用することができる。
【0097】
また前記以外に、成分A及び成分B以外の樹脂は、構成単位(a1)、(a2)、(a3)、(b1)、(b2)、(b3)の一部を有する樹脂であってもよい。これらの樹脂として、例えば、構成単位(a1)のみからなる樹脂、構成単位(a3)のみからなる樹脂などが挙げられる。
【0098】
これらの成分A及び成分B以外の樹脂は、1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。
【0099】
(成分C)光酸発生剤
本発明の感光性樹脂組成物は、(成分C)光酸発生剤を含有する。
成分Cとしては、波長300nm以上、好ましくは波長300〜450nmの活性光線に感応し、酸を発生する化合物が好ましいが、その化学構造に制限されるものではない。また、波長300nm以上の活性光線に直接感応しない光酸発生剤についても、増感剤と併用することによって波長300nm以上の活性光線に感応し、酸を発生する化合物であれば、増感剤と組み合わせて好ましく用いることができる。
成分Cとしては、pKaが4以下の酸を発生する光酸発生剤が好ましく、pKaが3以下の酸を発生する光酸発生剤がより好ましい。
光酸発生剤の例として、トリクロロメチル−s−トリアジン類、スルホニウム塩やヨードニウム塩、第四級アンモニウム塩類、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、及び、オキシムスルホネート化合物などを挙げることができる。これらの中でも、高感度である観点から、オキシムスルホネート化合物を用いることが好ましい。これら光酸発生剤は、1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0100】
これらの具体例としては、以下が例示できる。
トリクロロメチル−s−トリアジン類として、2−(3−クロロフェニル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メチルチオフェニル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−β−スチリル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル]−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、又は、2−(4−メトキシナフチル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン等。
【0101】
ジアリールヨードニウム塩類として、ジフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、フェニル−4−(2’−ヒドロキシ−1’−テトラデカオキシ)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−(2’−ヒドロキシ−1’−テトラデカオキシ)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモナート、又は、フェニル−4−(2’−ヒドロキシ−1’−テトラデカオキシ)フェニルヨードニウムp−トルエンスルホナート等。
【0102】
トリアリールスルホニウム塩類として、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、又は、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート等。
【0103】
第四級アンモニウム塩類として、テトラメチルアンモニウムブチルトリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、テトラメチルアンモニウムヘキシルトリス(p−クロロフェニル)ボレート、テトラメチルアンモニウムヘキシルトリス(3−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、ベンジルジメチルフェニルアンモニウムブチルトリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、ベンジルジメチルフェニルアンモニウムヘキシルトリス(p−クロロフェニル)ボレート、ベンジルジメチルフェニルアンモニウムヘキシルトリス(3−トリフルオロメチルフェニル)ボレート等。
【0104】
ジアゾメタン誘導体として、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(t−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン等。
【0105】
イミドスルホネート誘導体として、トリフルオロメチルスルホニルオキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−ジカルボキシイミド、スクシンイミドトリフルオロメチルスルホネート、フタルイミドトリフルオロメチルスルホネート、N−ヒドロキシナフタルイミドメタンスルホネート、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドプロパンスルホネート等。
【0106】
本発明の感光性樹脂組成物は、(成分C)光酸発生剤として、下記式(c0)で表されるオキシムスルホネート残基の少なくとも1つを有するオキシムスルホネート化合物を含むことが好ましい。なお、波線部分は、他の化学構造との結合位置を表す。
【0107】
【化17】

【0108】
前記式(c0)で表されるオキシムスルホネート残基の少なくとも1つを有するオキシムスルホネート化合物は、下記式(c1)で表される化合物であることが好ましい。
【0109】
【化18】

(式(c1)中、R5及びR6はそれぞれ独立に、一価の有機基を表し、R5及びR6は連結して環を形成していてもよく、R7はアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。)
【0110】
式(c1)中、R5は、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲン化アルキル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、2−フリル基、2−チエニル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基又はシアノ基を表す。R5が、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基又はアントラニル基である場合、これらの基は、ハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基及びニトロ基よりなる群から選ばれた置換基によって置換されていてもよい。
式(c1)中、R6は、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数1〜5のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1〜5のハロゲン化アルコキシ基、Wで置換されていてもよいフェニル基、Wで置換されていてもよいナフチル基又はWで置換されていてもよいアントラニル基、ジアルキルアミノ基、モルホリノ基、又はシアノ基を表す。R6とR5とは互いに結合して5員環又は6員環を形成してもよく、前記5員環又は6員環は1個又は2個の任意の置換基を有してもよいベンゼン環と結合していてもよい。
式(c1)中、R7は、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数1〜5のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1〜5のハロゲン化アルコキシ基、Wで置換されていてもよいフェニル基、Wで置換されていてもよいナフチル基又はWで置換されていてもよいアントラニル基を表す。Wは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数1〜5のハロゲン化アルキル基又は炭素原子数1〜5のハロゲン化アルコキシ基を表す。
【0111】
5で表される炭素原子数1〜6のアルキル基は、直鎖又は分岐鎖アルキル基であってよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、又は2−エチルブチル基が挙げられる。
5で表される炭素原子数1〜4のハロゲン化アルキル基としては、例えば、クロロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、又は2−ブロモプロピル基が挙げられる。
5で表される炭素原子数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基又はエトキシ基が挙げられる。
5が、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基又はアントラニル基を表す場合、これらの基は、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、等)、水酸基、炭素原子数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基)、炭素原子数1〜4のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基)及びニトロ基よりなる群から選ばれた置換基によって置換されていてもよい。
【0112】
6で表される炭素原子数1〜10のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、i−アミル基、s−アミル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
6で表される炭素原子数1〜10のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−アミルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基等が挙げられる。
6で表される炭素原子数1〜5のハロゲン化アルキル基の具体例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロ−n−プロピル基、パーフルオロ−n−ブチル基、パーフルオロ−n−アミル基等が挙げられる。
6で表される炭素原子数1〜5のハロゲン化アルコキシ基の具体例としては、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロ−n−プロポキシ基、パーフルオロ−n−ブトキシ基、パーフルオロ−n−アミルオキシ基等が挙げられる。
【0113】
6で表されるWで置換されていてもよいフェニル基の具体例としては、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、o−エチルフェニル基、m−エチルフェニル基、p−エチルフェニル基、p−(n−プロピル)フェニル基、p−(i−プロピル)フェニル基、p−(n−ブチル)フェニル基、p−(i−ブチル)フェニル基、p−(s−ブチル)フェニル基、p−(t−ブチル)フェニル基、p−(n−アミル)フェニル基、p−(i−アミル)フェニル基、p−(t−アミル)フェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、o−エトキシフェニル基、m−エトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、p−(n−プロポキシ)フェニル基、p−(i−プロポキシ)フェニル基、p−(n−ブトキシ)フェニル基、p−(i−ブトキシ)フェニル基、p−(s−ブトキシ)フェニル基、p−(t−ブトキシ)フェニル基、p−(n−アミルオキシ)フェニル基、p−(i−アミルオキシ)フェニル基、p−(t−アミルオキシ)フェニル基、p−クロロフェニル基、p−ブロモフェニル基、p−フルオロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,4−ジブロモフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,4,6−ジクロロフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、ペンタクロロフェニル基、ペンタブロモフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、p−ビフェニリル基等が挙げられる。
【0114】
6で表されるWで置換されていてもよいナフチル基の具体例としては、2−メチル−1−ナフチル基、3−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、5−メチル−1−ナフチル基、6−メチル−1−ナフチル基、7−メチル−1−ナフチル基、8−メチル−1−ナフチル基、1−メチル−2−ナフチル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−2−ナフチル基、5−メチル−2−ナフチル基、6−メチル−2−ナフチル基、7−メチル−2−ナフチル基、8−メチル−2−ナフチル基等が挙げられる。
【0115】
6で表されるWで置換されていてもよいアントラニル基の具体例としては、2−メチル−1−アントラニル基、3−メチル−1−アントラニル基、4−メチル−1−アントラニル基、5−メチル−1−アントラニル基、6−メチル−1−アントラニル基、7−メチル−1−アントラニル基、8−メチル−1−アントラニル基、9−メチル−1−アントラニル基、10−メチル−1−アントラニル基、1−メチル−2−アントラニル基、3−メチル−2−アントラニル基、4−メチル−2−アントラニル基、5−メチル−2−アントラニル基、6−メチル−2−アントラニル基、7−メチル−2−アントラニル基、8−メチル−2−アントラニル基、9−メチル−2−アントラニル基、10−メチル−2−アントラニル基等が挙げられる。
【0116】
6で表されるジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等が挙げられる。
【0117】
式(c1)中、R7は、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数3〜10のシクロアルキル基、炭素原子数1〜5のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜10のハロゲン化シクロアルキル基、Wで置換されていてもよいフェニル基、Wで置換されていてもよいナフチル基又はWで置換されていてもよいアントラニル基であることが好ましい。Wは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数1〜5のハロゲン化アルキル基又は炭素原子数1〜5のハロゲン化アルコキシ基を表す。
【0118】
7で表される炭素原子数1〜10のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、i−アミル基、s−アミル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
7で表される炭素原子数1〜5のハロゲン化アルキル基の具体例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロ−n−プロピル基、パーフルオロ−n−ブチル基、パーフルオロ−n−アミル基等が挙げられる。
7で表される炭素原子数3〜10のシクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基等が挙げられる。
7で表される炭素原子数3〜10のハロゲン化シクロアルキル基の具体例としては、パーフルオロシクロペンチル基、パーフルオロシクロヘキシル基、パーフルオロシクロヘプチル基等が挙げられる。
【0119】
7で表されるWで置換されていてもよいフェニル基の具体例としては、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、o−エチルフェニル基、m−エチルフェニル基、p−エチルフェニル基、p−(n−プロピル)フェニル基、p−(i−プロピル)フェニル基、p−(n−ブチル)フェニル基、p−(i−ブチル)フェニル基、p−(s−ブチル)フェニル基、p−(t−ブチル)フェニル基、p−(n−アミル)フェニル基、p−(i−アミル)フェニル基、p−(t−アミル)フェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、o−エトキシフェニル基、m−エトキシフェニル基、p−エトキシフェニル基、p−(n−プロポキシ)フェニル基、p−(i−プロポキシ)フェニル基、p−(n−ブトキシ)フェニル基、p−(i−ブトキシ)フェニル基、p−(s−ブトキシ)フェニル基、p−(t−ブトキシ)フェニル基、p−(n−アミルオキシ)フェニル基、p−(i−アミルオキシ)フェニル基、p−(t−アミルオキシ)フェニル基、p−クロロフェニル基、p−ブロモフェニル基、p−フルオロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,4−ジブロモフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,4,6−ジクロロフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、ペンタクロロフェニル基、ペンタブロモフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、p−ビフェニリル基等が挙げられる。
【0120】
7で表されるWで置換されていてもよいナフチル基の具体例としては、2−メチル−1−ナフチル基、3−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、5−メチル−1−ナフチル基、6−メチル−1−ナフチル基、7−メチル−1−ナフチル基、8−メチル−1−ナフチル基、1−メチル−2−ナフチル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−2−ナフチル基、5−メチル−2−ナフチル基、6−メチル−2−ナフチル基、7−メチル−2−ナフチル基、8−メチル−2−ナフチル基等が挙げられる。
【0121】
7で表されるWで置換されていてもよいアントラニル基の具体例としては、2−メチル−1−アントラニル基、3−メチル−1−アントラニル基、4−メチル−1−アントラニル基、5−メチル−1−アントラニル基、6−メチル−1−アントラニル基、7−メチル−1−アントラニル基、8−メチル−1−アントラニル基、9−メチル−1−アントラニル基、10−メチル−1−アントラニル基、1−メチル−2−アントラニル基、3−メチル−2−アントラニル基、4−メチル−2−アントラニル基、5−メチル−2−アントラニル基、6−メチル−2−アントラニル基、7−メチル−2−アントラニル基、8−メチル−2−アントラニル基、9−メチル−2−アントラニル基、10−メチル−2−アントラニル基等が挙げられる。
【0122】
Wで表される炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数1〜5のハロゲン化アルキル基、及び、炭素原子数1〜5のハロゲン化アルコキシの具体例としては、R6又はR7で表される炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数1〜5のハロゲン化アルキル基、及び炭素原子数1〜5のハロゲン化アルコキシ基の具体例として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0123】
5とR6とは互いに結合して5員環又は6員環を形成してもよい。
5とR6とが互いに結合して5員環又は6員環を形成する場合、該5員環又は6員環としては、炭素環式基及び複素環式環基が挙げられ、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラン、ピリジン、ピラジン、モルホリン、ピペリジン又はピペラジン環であってよい。前記5員環又は6員環は、任意の置換基を有してもよいベンゼン環と結合していてもよく、その例としては、テトラヒドロナフタレン、ジヒドロアントラセン、インデン、クロマン、フルオレン、キサンテン又はチオキサンテン環系が挙げられる。前記5員環又は6員環は、カルボニル基を含んでもよく、その例としては、シクロヘキサジエノン、ナフタレノン及びアントロン環系が挙げられる。
【0124】
前記式(c1)で表される化合物の好適な態様の一つは、下記式(c1−1)で表される化合物である。式(c1−1)で表される化合物は、式(c1)におけるR5とR6とが結合して5員環を形成している化合物である。
【0125】
【化19】

(式(c1−1)中、R7は、式(c1)におけるR7と同義であり、Xは、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表し、tは、0〜3の整数を表し、tが2又は3であるとき、複数のXは同一でも異なっていてもよい。)
【0126】
Xで表されるアルキル基としては、炭素原子数1〜4の、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が好ましい。
Xで表されるアルコキシ基としては、炭素原子数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基が好ましい。
Xで表されるハロゲン原子としては、塩素原子又はフッ素原子が好ましい。
tとしては、0又は1が好ましい。
式(c1−1)中、tが1であり、Xがメチル基であり、Xの置換位置がオルト位であり、R7が炭素原子数1〜10の直鎖状アルキル基、7,7−ジメチル−2−オキソノルボルニルメチル基、又は、p−トルイル基である化合物が特に好ましい。
【0127】
式(c1−1)で表されるオキシムスルホネート化合物の具体例としては、下記化合物(i)、化合物(ii)、化合物(iii)、化合物(iv)等が挙げられ、これらの化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種類以上を併用することもできる。化合物(i)〜(iv)は、市販品として、入手することができる。
また、他の種類の光酸発生剤と組み合わせて使用することもできる。
【0128】
【化20】

【0129】
式(c1)で表される化合物の好ましい態様の一つとしては、
5が、炭素原子数1〜4のアルキル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、クロロフェニル基、ジクロロフェニル基、メトキシフェニル基、4−ビフェニル基、ナフチル基又はアントラニル基を表し;
6が、シアノ基を表し;
7が、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数1〜5のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1〜5のハロゲン化アルコキシ基、Wで置換されていてもよいフェニル基、Wで置換されていてもよいナフチル基又はWで置換されていてもよいアントラニル基を表し、Wは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数1〜5のハロゲン化アルキル基又は炭素原子数1〜5のハロゲン化アルコキシ基を表すものである。
【0130】
式(c1)で表される化合物としては、下記式(c1−2)で表される化合物であることも好ましい。
【0131】
【化21】

【0132】
式(c1−2)中、R8は、ハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基又はニトロ基を表し、Lは0〜5の整数を表す。R7は、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数1〜5のハロゲン化アルキル基、炭素原子数1〜5のハロゲン化アルコキシ基、Wで置換されていてもよいフェニル基、Wで置換されていてもよいナフチル基又はWで置換されていてもよいアントラニル基を表し、Wは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数1〜5のハロゲン化アルキル基又は炭素原子数1〜5のハロゲン化アルコキシ基を表す。
【0133】
式(c1−2)におけるR7としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−オクチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロ−n−プロピル基、パーフルオロ−n−ブチル基、p−トリル基、4−クロロフェニル基又はペンタフルオロフェニル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基又はp−トリル基であることが特に好ましい。
8で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子が好ましい。
8で表される炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
8で表される炭素原子数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ基又はエトキシ基が好ましい。
Lとしては、0〜2が好ましく、0〜1が特に好ましい。
【0134】
式(c1)で表される化合物のうち、式(c1−2)で表される化合物に包含される化合物の好ましい態様としては、式(c1)中、R5が、フェニル基又は4−メトキシフェニル基を表し、R6がシアノ基を表し、R7が、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基又は4−トリル基を表す態様である。
【0135】
以下、式(c1)で表される化合物のうち、式(c1−2)で表される化合物に包含される化合物の特に好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0136】
α−(メチルスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド(R5=フェニル基、R6=シアノ基、R7=メチル基)
α−(エチルスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド(R5=フェニル基、R6=シアノ基、R7=エチル基)
α−(n−プロピルスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド(R5=フェニル基、R6=シアノ基、R7=n−プロピル基)
α−(n−ブチルスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド(R5=フェニル基、R6=シアノ基、R7=n−ブチル基)
α−(4−トルエンスルホニルオキシイミノ)ベンジルシアニド(R5=フェニル基、R6=シアノ基、R7=4−トリル基)
α−〔(メチルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル〕アセトニトリル(R5=4−メトキシフェニル基、R6=シアノ基、R7=メチル基)
α−〔(エチルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル〕アセトニトリル(R5=4−メトキシフェニル基、R6=シアノ基、R7=エチル基)
α−〔(n−プロピルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル〕アセトニトリル(R5=4−メトキシフェニル基、R6=シアノ基、R7=n−プロピル基)
α−〔(n−ブチルスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル〕アセトニトリル(R5=4−メトキシフェニル基、R6=シアノ基、R7=n−ブチル基)
α−〔(4−トルエンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル〕アセトニトリル(R5=4−メトキシフェニル基、R6=シアノ基、R7=4−トリル基)
【0137】
また、前記式(c0)で表されるオキシムスルホネート残基を少なくとも1つ有する化合物としては、下記式(OS−3)、式(OS−4)、又は、式(OS−5)で表されるオキシムスルホネート化合物であることが好ましい。
【0138】
【化22】

(式(OS−3)〜(OS−5)中、R1はアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基を表し、複数存在するR2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、又はハロゲン原子を表し、複数存在するR6はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、スルホン酸基、アミノスルホニル基、又はアルコキシスルホニル基を表し、XはO又はSを表し、nは1又は2を表し、mは0〜6の整数を表す。)
【0139】
前記式(OS−3)〜(OS−5)中、R1で表されるアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基は、置換基を有していてもよい。
前記式(OS−3)〜(OS−5)中、R1で表されるアルキル基としては、置換基を有していてもよい総炭素数1〜30のアルキル基であることが好ましい。
また、前記式(OS−3)〜(OS−5)中、R1で表されるアリール基としては、置換基を有してもよい総炭素数6〜30のアリール基が好ましい。
また、前記式(OS−3)〜(OS−5)中、R1で表されるヘテロアリール基としては、置換基を有してもよい総炭素数4〜30のヘテロアリール基が好ましく、少なくとも1つの複素芳香環であればよく、例えば、複素芳香環とベンゼン環とが縮環していてもよい。
1で表されるアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノカルボニル基が挙げられる。
【0140】
前記式(OS−3)〜(OS−5)中、R2は、水素原子、アルキル基、又はアリール基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましい。
前記式(OS−3)〜(OS−5)中、化合物中に2以上存在するR2のうち、1つ又は2つがアルキル基、アリール基又はハロゲン原子であることが好ましく、1つがアルキル基、アリール基又はハロゲン原子であることがより好ましく、1つがアルキル基であり、かつ残りが水素原子であることが特に好ましい。
前記式(OS−3)〜(OS−5)中、R2で表されるアルキル基又はアリール基は、置換基を有していてもよい。
2で表されるアルキル基又はアリール基が有していてもよい置換基としては、前記R1におけるアルキル基又はアリール基が有していてもよい置換基と同様の基が例示できる。
【0141】
前記式(OS−3)〜(OS−5)中、R2で表されるアルキル基としては、置換基を有してもよい総炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましく、置換基を有してもよい総炭素数1〜6のアルキル基であることがより好ましい。
2で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基が好ましく、メチル基が更に好ましい。
【0142】
前記式(OS−3)〜(OS−5)中、R2で表されるアリール基としては、置換基を有してもよい総炭素数6〜30のアリール基であることが好ましい。
2で表されるアリール基としてフェニル基、p−メチルフェニル基、o−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−フェノキシフェニル基が好ましい。
【0143】
前記式(OS−3)〜(OS−5)中、XはO又はSを表し、Oであることが好ましい。
前記式(OS−3)〜(OS−5)において、Xを環員として含む環は、5員環又は6員環である。
前記式(OS−3)〜(OS−5)中、nは1又は2を表し、XがOである場合、nは1であることが好ましく、また、XがSである場合、nは2であることが好ましい。
【0144】
前記式(OS−3)〜(OS−5)中、R6で表されるアルキル基及びアルキルオキシ基は、置換基を有していてもよい。
【0145】
前記式(OS−3)〜(OS−5)中、R6で表されるアルキル基としては、置換基を有していてもよい総炭素数1〜30のアルキル基であることが好ましい。
6で表されるアルキルオキシ基としては、メチルオキシ基、エチルオキシ基、ブチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、フェノキシエチルオキシ基、トリクロロメチルオキシ基、又は、エトキシエチルオキシ基が好ましい。
6におけるアミノスルホニル基としては、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、メチルフェニルアミノスルホニル基、アミノスルホニル基が挙げられる。
6で表されるアルコキシスルホニル基としては、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基、プロピルオキシスルホニル基、ブチルオキシスルホニル基が挙げられる。
【0146】
6で表されるアルキル基又はアルキルオキシ基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノカルボニル基が挙げられる。
【0147】
また、前記式(OS−3)〜(OS−5)中、mは0〜6の整数を表し、0〜2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが特に好ましい。
【0148】
また、前記式(OS−3)で表される化合物は、下記式(OS−6)、式(OS−10)又は式(OS−11)で表される化合物であることが特に好ましく、前記式(OS−4)で表される化合物は、下記式(OS−7)で表される化合物であることが特に好ましく、前記式(OS−5)で表される化合物は、下記式(OS−8)又は式(OS−9)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0149】
【化23】

【0150】
式(OS−6)〜(OS−11)中、R1はアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R7は、水素原子又は臭素原子を表し、R8は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、クロロメチル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基、メトキシメチル基、フェニル基又はクロロフェニル基を表し、R9は水素原子、ハロゲン原子、メチル基又はメトキシ基を表し、R10は水素原子又はメチル基を表す。
【0151】
前記式(OS−6)〜(OS−11)におけるR1は、前記式(OS−3)〜(OS−5)におけるR1と同義であり、好ましい態様も同様である。
前記式(OS−6)におけるR7は、水素原子又は臭素原子を表し、水素原子であることが好ましい。
前記式(OS−6)〜(OS−11)におけるR8は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子、クロロメチル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基、メトキシメチル基、フェニル基又はクロロフェニル基を表し、炭素数1〜8のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基であることが好ましく、炭素数1〜8のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であることが更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
前記式(OS−8)及び式(OS−9)におけるR9は、水素原子、ハロゲン原子、メチル基又はメトキシ基を表し、水素原子であることが好ましい。
前記式(OS−8)〜(OS−11)におけるR10は、水素原子又はメチル基を表し、水素原子であることが好ましい。
また、前記オキシムスルホネート化合物において、オキシムの立体構造(E,Z)については、どちらか一方であっても、混合物であってもよい。
【0152】
前記式(OS−3)〜(OS−5)で表されるオキシムスルホネート化合物の具体例としては、下記例示化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0153】
【化24】

【0154】
【化25】

【0155】
【化26】

【0156】
【化27】

【0157】
【化28】

【0158】
【化29】

【0159】
【化30】

【0160】
前記式(c0)で表されるオキシムスルホネート残基を少なくとも1つを有するオキシムスルホネート化合物の好適な他の態様としては、下記式(OS−1)で表される化合物が挙げられる。
【0161】
【化31】

【0162】
前記式(OS−1)中、R1は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホ基、シアノ基、アリール基、又は、ヘテロアリール基を表す。R2は、アルキル基、又は、アリール基を表す。
Xは−O−、−S−、−NH−、−NR5−、−CH2−、−CR6H−、又は、−CR67−を表し、R5〜R7はアルキル基、又はアリール基を表す。
21〜R24は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アミド基、スルホ基、シアノ基、又は、アリール基を表す。R21〜R24のうち2つは、それぞれ互いに結合して環を形成してもよい。
21〜R24としては、水素原子、ハロゲン原子、及び、アルキル基が好ましく、また、R21〜R24のうち少なくとも2つが互いに結合してアリール基を形成する態様もまた、好ましく挙げられる。中でも、R21〜R24がいずれも水素原子である態様が感度の観点から好ましい。
前記した置換基は、いずれも、更に置換基を有していてもよい。
【0163】
前記式(OS−1)で表される化合物は、下記式(OS−2)で表される化合物であることがより好ましい。
【0164】
【化32】

【0165】
前記式(OS−2)中、R1、R2、R21〜R24は、それぞれ前記式(OS−1)におけるR1、R2、R21〜R24と同義であり、好ましい例もまた同様である。
これらの中でも、式(OS−1)、及び、式(OS−2)におけるR1がシアノ基、又はアリール基である態様がより好ましく、式(OS−2)で表され、かつR1がシアノ基、フェニル基又はナフチル基である態様が最も好ましい。
【0166】
また、前記オキシムスルホネート化合物において、オキシムやベンゾチアゾール環の立体構造(E,Z等)についてはそれぞれ、どちらか一方であっても、混合物であってもよい。
【0167】
以下に、本発明に好適に用いることができる式(OS−1)で表される化合物の具体例(例示化合物b−1〜b−34)を示すが、本発明はこれに限定されない。なお、具体例中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Bnはベンジル基を表し、Phはフェニル基を表す。
【0168】
【化33】

【0169】
【化34】

【0170】
【化35】

【0171】
【化36】

【0172】
【化37】

【0173】
【化38】

【0174】
【化39】

【0175】
【化40】

【0176】
【化41】

【0177】
上記化合物の中でも、感度と安定性との両立の観点から、b−9、b−16、b−31、b−33が好ましい。
【0178】
本発明の感光性樹脂組成物は、活性光線に感応する(成分C)光酸発生剤として1,2−キノンジアジド化合物を含まないことが好ましい。その理由は、1,2−キノンジアジド化合物は、逐次型光化学反応によりカルボキシル基を生成するが、その量子収率は1以下であり、オキシムスルホネート化合物に比べて感度が低いためである。
これに対してオキシムスルホネート化合物は、活性光線に感応して生成する酸が保護された酸性基の脱保護に対して触媒として作用するので、1個の光量子の作用で生成した酸が、多数の脱保護反応に寄与し、量子収率は1を超え、例えば、10の数乗のような大きい値となり、いわゆる化学増幅の結果として、高感度が得られるものと推測される。
【0179】
本発明の感光性樹脂組成物における(成分C)光酸発生剤の含有量は、成分A及び成分Bの相含有量100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、0.5〜10重量部であることがより好ましい。
【0180】
(成分D)溶剤
本発明の感光性樹脂組成物は、(成分D)溶剤を含有する。
本発明の感光性樹脂組成物は、必須成分である成分A、成分B及び成分C、並びに、好ましい成分である後述の各種添加剤の任意成分を、(成分D)溶剤に溶解又は分散した液として調製されることが好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物に使用される(成分D)溶剤としては、公知の溶剤を用いることができ、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールジアルキルエーテル類、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールジアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、エステル類、ケトン類、アミド類、ラクトン類等が例示できる。
【0181】
本発明の感光性樹脂組成物に使用される(成分D)溶剤としては、例えば、(1)エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;(2)エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル等のエチレングリコールジアルキルエーテル類;(3)エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;(4)プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;(5)プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;
【0182】
(6)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;(7)ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類;(8)ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;(9)ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のジプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;(10)ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルメチルエーテル等のジプロピレングリコールジアルキルエーテル類;
【0183】
(11)ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;(12)乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸イソプロピル、乳酸n−ブチル、乳酸イソブチル、乳酸n−アミル、乳酸イソアミル等の乳酸エステル類;(13)酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、酢酸イソアミル、酢酸n−ヘキシル、酢酸2−エチルヘキシル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n−ブチル、酪酸イソブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;(14)ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸エチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオンメチル、3−メトキシプロピオンエチル、3−エトキシプロピオンメチル、3−エトキシプロピオンエチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルブチレート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;
【0184】
(15)メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;(16)N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;(17)γ−ブチロラクトン等のラクトン類等を挙げることができる。
【0185】
また、これらの溶剤に更に必要に応じて、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナール、ベンジルアルコール、アニソール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の溶剤を添加することもできる。
上記した溶剤のうち、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、及び/又は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが特に好ましい。
これら溶剤は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
本発明に用いることができる溶剤は、1種単独、又は、2種を併用することが好ましく、2種を併用することがより好ましく、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類とジエチレングリコールジアルキルエーテル類とを併用することが更に好ましい。
【0186】
本発明の感光性樹脂組成物における(成分D)溶剤の含有量は、成分A及び成分Bの総含有量100重量部当たり、50〜3,000重量部であることが好ましく、100〜2,000重量部であることがより好ましく、150〜1,500重量部であることが更に好ましい。
【0187】
<その他の成分>
本発明の感光性樹脂組成物には、その他の成分を含有することができる。
その他の成分として、本発明の感光性樹脂組成物は、感度の観点から、光増感剤を含有することが好ましく、液保存安定性の観点から、塩基性化合物を含有することが好ましく、膜物性の観点から、架橋剤を含有することが好ましく、基板密着性の観点から、密着改良剤を含有することが好ましく、また、塗布性の観点から、界面活性剤を含有することが好ましい。
更に、必要に応じて、本発明の感光性樹脂組成物には、現像促進剤、酸化防止剤、可塑剤、熱ラジカル発生剤、熱酸発生剤、酸増殖剤、紫外線吸収剤、増粘剤、及び、有機又は無機の沈殿防止剤などの、公知の添加剤を加えることができる。
以下、本発明の感光性樹脂組成物に含有することができるその他の成分を説明する。
【0188】
〔光増感剤〕
本発明の感光性樹脂組成物は、光増感剤を含有することが好ましい。
光増感剤を含有することにより、露光感度向上に有効であり、露光光源がg,h線混合線の場合に特に有効である。
光増感剤としては、アントラセン誘導体、アクリドン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ベーススチリル誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体が好ましい。
アントラセン誘導体としては、アントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジクロロアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9−ヒドロキシメチルアントラセン、9−ブロモアントラセン、9−クロロアントラセン、9,10−ジブロモアントラセン、2−エチルアントラセン、9,10−ジメトキシアントラセンが好ましい。
アクリドン誘導体としては、アクリドン、N−ブチル−2−クロロアクリドン、N−メチルアクリドン、2−メトキシアクリドン、N−エチル−2−メトキシアクリドンが好ましい。
チオキサントン誘導体としては、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−クロロチオキサントンが好ましい。
クマリン誘導体としては、クマリン−1、クマリン−6H、クマリン−110、クマリン−102が好ましい。
ベーススチリル誘導体としては、2−(4−ジメチルアミノスチリル)ベンゾオキサゾール、2−(4−ジメチルアミノスチリル)ベンゾチアゾール、2−(4−ジメチルアミノスチリル)ナフトチアゾールが挙げられる。
ジスチリルベンゼン誘導体としては、ジスチリルベンゼン、ジ(4−メトキシスチリル)ベンゼン、ジ(3,4,5−トリメトキシスチリル)ベンゼンが挙げられる。
これらの中でも、アントラセン誘導体が好ましく、9,10−ジアルコキシアントラセン(アルコキシ基の炭素数1〜6)がより好ましい。
光増感剤の具体例としては、下記が挙げられる。なお、下記において、Meはメチル基、Etはエチル基、Buはブチル基を表す。
【0189】
【化42】

【0190】
本発明の感光性樹脂組成物における光増感剤の含有量は、成分A及び成分Bの総含有量100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、0.5〜10重量部であることがより好ましい。光増感剤の含有量が0.1重量部以上であると、所望の感度が得やすく、また、10重量部以下であると、塗膜の透明性を確保しやすい。
【0191】
〔塩基性化合物〕
本発明の感光性樹脂組成物は、液保存安定性の観点から、塩基性化合物を含有することが好ましい。
塩基性化合物としては、化学増幅レジストで用いられるものの中から任意に選択して使用することができる。例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、第四級アンモニウムヒドロキシド、及び、カルボン酸の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0192】
脂肪族アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミンなどが挙げられる。
芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、ベンジルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ジフェニルアミンなどが挙げられる。
複素環式アミンとしては、例えば、ピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2−フェニルピリジン、4−フェニルピリジン、N−メチル−4−フェニルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−フェニルベンズイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、ニコチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、キノリン、8−オキシキノリン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、4−メチルモルホリン、N−シクロヘキシル−N’−[2−(4−モルホリニル)エチル]チオ尿素、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.3.0]−7−ウンデセンなどが挙げられる。
第四級アンモニウムヒドロキシドとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。
カルボン酸の第四級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラメチルアンモニウムベンゾエート、テトラ−n−ブチルアンモニウムアセテート、テトラ−n−ブチルアンモニウムベンゾエートなどが挙げられる。
【0193】
本発明に用いることができる塩基性化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよいが、2種以上を併用することが好ましく、2種を併用することがより好ましく、複素環式アミンを2種併用することが更に好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物における塩基性化合物の含有量は、成分A及び成分Bの総含有量100重量部に対して、0.001〜1重量部であることが好ましく、0.002〜0.2重量部であることがより好ましい。
【0194】
〔架橋剤〕
本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じ、架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤を添加することにより、本発明の感光性樹脂組成物により得られる硬化膜をより強固な膜とすることができる。
架橋剤としては、例えば、以下に述べる分子内に2個以上のエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物、アルコキシメチル基含有架橋剤、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、又は、ブロックイソシアネート系架橋剤を添加することができる。
これらの架橋剤の中で、分子内に2個以上のエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物が好ましく、エポキシ樹脂が特に好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物中における架橋剤の添加量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対し、0.05〜50重量部であることが好ましく、0.5〜44重量部であることがより好ましく、3〜40重量部であることが更に好ましい。この範囲で添加することにより、機械的強度及び耐溶剤性に優れた硬化膜が得られる。
【0195】
−分子内に2個以上のエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物−
分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0196】
これらは市販品として入手できる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、JER827、JER828、JER834、JER1001、JER1002、JER1003、JER1055、JER1007、JER1009、JER1010(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、EPICLON860、EPICLON1050、EPICLON1051、EPICLON1055(以上、DIC(株)製)等であり、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、JER806、JER807、JER4004、JER4005、JER4007、JER4010(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、EPICLON830、EPICLON835(以上、DIC(株)製)、LCE−21、RE−602S(以上、日本化薬(株)製)等であり、フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、JER152、JER154、JER157S70、JER157S65(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、EPICLON N−740、EPICLON N−740、EPICLON N−770、EPICLON N−775(以上、DIC(株)製)等であり、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、EPICLON N−660、EPICLON N−665、EPICLON N−670、EPICLON N−673、EPICLON N−680、EPICLON N−690、EPICLON N−695(以上、DIC(株)製)、EOCN−1020(以上、日本化薬(株)製)等であり、脂肪族エポキシ樹脂としては、ADEKA RESIN EP−4080S、同EP−4085S、同EP−4088S(以上、(株)ADEKA製)、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、EHPE3150、EPOLEAD PB 3600、同PB 4700(以上、ダイセル化学工業(株)製)等である。その他にも、ADEKA RESIN EP−4000S、同EP−4003S、同EP−4010S、同EP−4011S(以上、(株)ADEKA製)、NC−2000、NC−3000、NC−7300、XD−1000、EPPN−501、EPPN−502(以上、(株)ADEKA製)、デナコールEX−611、EX−612、EX−614、EX−614B、EX−622、EX−512、EX−521、EX−411、EX−421、EX−313、EX−314、EX−321、EX−211、EX−212、EX−810、EX−811、EX−850、EX−851、EX−821、EX−830、EX−832、EX−841、EX−911、EX−941、EX−920、EX−931、EX−212L、EX−214L、EX−216L、EX−321L、EX−850L、DLC−201、DLC−203、DLC−204、DLC−205、DLC−206、DLC−301、DLC−402(以上ナガセケムテック製)、YH−300、YH−301、YH−302、YH−315、YH−324、YH−325(以上新日鐵化学(株)製)等が挙げられる。
これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0197】
これらの中でも、エポキシ樹脂が好ましく挙げられ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹脂がより好ましく挙げられ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましく挙げられる。
【0198】
分子内に2個以上のオキセタニル基を有する化合物の具体例としては、アロンオキセタンOXT−121、OXT−221、OX−SQ、PNOX(以上、東亞合成(株)製)を用いることができる。
また、オキセタニル基を含む化合物は、単独で又はエポキシ基を含む化合物と混合して使用することが好ましい。
これらの中でも、
分子内に2個以上のエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物の本発明の感光性樹脂組成物への添加量は、成分A及び成分Bの総含有量を100重量部としたとき、1〜50重量部が好ましく、3〜30重量部がより好ましい。
【0199】
−アルコキシメチル基含有架橋剤−
アルコキシメチル基含有架橋剤としては、アルコキシメチル化メラミン、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン、アルコキシメチル化グリコールウリル及びアルコキシメチル化尿素等が好ましい。これらは、それぞれメチロール化メラミン、メチロール化ベンゾグアナミン、メチロール化グリコールウリル、又は、メチロール化尿素のメチロール基をアルコキシメチル基に変換することにより得られる。このアルコキシメチル基の種類については特に限定されるものではなく、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基等を挙げることができるが、アウトガスの発生量の観点から、特にメトキシメチル基が好ましい。
これらのアルコキシメチル基含有架橋剤のうち、アルコキシメチル化メラミン、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン、アルコキシメチル化グリコールウリルが好ましい架橋剤として挙げられ、透明性の観点から、アルコキシメチル化グリコールウリルが特に好ましい。
【0200】
これらアルコキシメチル基含有架橋剤は、市販品として入手可能であり、例えば、サイメル300、301、303、370、325、327、701、266、267、238、1141、272、202、1156、1158、1123、1170、1174、UFR65、300(以上、三井サイアナミッド(株)製)、ニカラックMX−750、−032、−706、−708、−40、−31、−270、−280、−290、ニカラックMS−11、ニカラックMW−30HM、−100LM、−390、(以上、(株)三和ケミカル製)などを好ましく使用することができる。
【0201】
本発明の感光性樹脂組成物にアルコキシメチル基含有架橋剤を用いる場合のアルコキシメチル基含有架橋剤の添加量は、成分A及び成分Bの総含有量100重量部に対して、0.05〜50重量部であることが好ましく、0.5〜10重量部であることがより好ましい。この範囲で添加することにより、現像時の好ましいアルカリ溶解性と、硬化後の膜の優れた耐溶剤性が得られる。
【0202】
−少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物−
少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、単官能(メタ)アクリレート、2官能(メタ)アクリレート、3官能以上の(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート化合物を好適に用いることができる。
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレートなどが挙げられる。
2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレートなどが挙げられる。
3官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイロキシエチル)フォスフェート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
これらの少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0203】
本発明の感光性樹脂組成物における少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の使用割合は、成分A及び成分Bの総含有量100重量部に対して、50重量部以下であることが好ましく、30重量部以下であることがより好ましい。このような割合で少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を含有させることにより、本発明の感光性樹脂組成物から得られる硬化膜の耐熱性及び表面硬度等を向上させることができる。少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を加える場合には、後述の熱ラジカル発生剤を添加することが好ましい。
【0204】
−ブロックイソシアネート系架橋剤−
ブロックイソシアネート系架橋剤としては、ブロックイソシアネート基を有する化合物(ブロックイソシアネート化合物)であれば特に制限はないが、硬化性の観点から、1分子内に2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物であることが好ましい。
なお、本発明におけるブロックイソシアネート基とは、熱によりイソシアネート基を生成することが可能な基であり、例えば、ブロック剤とイソシアネート基とを反応させイソシアネート基を保護した基が好ましく例示できる。また、前記ブロックイソシアネート基は、90℃〜250℃の熱によりイソシアネート基を生成することが可能な基であることが好ましい。
また、ブロックイソシアネート系架橋剤としては、その骨格は特に限定されるものではなく、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)骨格、イソホロンジイソシアネート(IPDI)骨格、及び、HDIやIPDIから派生するプレポリマー型の骨格の化合物を好適に用いることができる。
【0205】
前記ブロックイソシアネート基におけるイソシアネート基のブロック剤としては、特に限定されるものではなく、ジエステル化合物等の活性メチレン化合物、オキシム化合物、ラクタム化合物、アミン化合物等の活性水素化合物を好ましく用いることができる。これらの中でも、反応性の観点から、活性メチレン化合物が特に好ましい。
前記活性メチレン化合物としては、マロン酸ジエチル、マロン酸ジメチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル等が例示できる。
前記オキシム化合物としては、シクロヘキサノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム、アセトキシム等が例示できる。
前記ラクタム化合物としては、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタム等が例示できる。
前記アミン化合物としては、アニリン、ジフェニルアミン、エチレンイミン、ポリエチレンイミン等が例示できる。
なお、前記活性水素化合物は、下記式に示すようにイソシアネート基と反応し、ブロックイソシアネート基を形成する。
R−NCO+H−R’→R−NH−C(=O)−R’
(式中、H−R’は活性水素化合物を表し、H−R’におけるHは活性水素原子を表し、Rはイソシアネート化合物における該イソシアネート基以外の部分を表し、R’は活性水素化合物における該活性水素原子以外の部分を表す。)
【0206】
これらブロックイソシアネート系架橋剤は、市販品として入手可能であり、例えば、デュラネート MF−K60X、MF−K60B、MF−B60X、17B−60P、TPA−B80E、E402−B80B、SBN−70D、K6000(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)、デスモジュール BL3272、BL3575/1、BL3475、BL3370、BL4265、BL5375、VPLS2376/1、VPLS2257、VPLS2078/1、VPLS2352/1、スミジュール BL3175、(以上、住化バイエルウレタン(株)製)、ウレハイパー PUR−1804(DIC(株)製)などを好ましく使用することができる。これらの中でも、デュラネート MF−K60X、MF−K60B、SBN−70D、K6000が特に好ましい。
【0207】
本発明の感光性樹脂組成物にブロックイソシアネート系架橋剤を用いる場合のブロックイソシアネート系架橋剤の添加量は、成分A100重量部に対して、0.1〜50重量部であることが好ましく、1〜20重量部であることがより好ましく、2〜15重量部であることが更に好ましい。この範囲で添加することにより、高い感度と、現像時の好ましいアルカリ溶解性が得られる。
【0208】
〔密着改良剤〕
本発明の感光性樹脂組成物は、基板密着性の観点から、密着改良剤を含有することが好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物に用いることができる密着改良剤は、基板となる無機物、例えば、シリコン、酸化シリコン、窒化シリコン等のシリコン化合物、モリブデン、チタン、酸化インジウムスズ、金、銅、アルミニウム等の金属と絶縁膜との密着性を向上させる化合物である。具体的には、シランカップリング剤、チオール系化合物等が挙げられる。本発明で使用される密着改良剤としてのシランカップリング剤は、界面の改質を目的とするものであり、特に限定することなく、公知のものを使用することができる。
これらの中でも、シランカップリング剤が好ましく例示できる。
好ましいシランカップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリアコキシシラン、γ−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、γ−クロロプロピルトリアルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシランが挙げられる。
これらのうち、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、及びγ−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランがより好ましく、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシランが更に好ましい。
これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらは基板との密着性の向上に有効であるとともに、基板とのテーパー角の調整にも有効である。
本発明の感光性樹脂組成物における密着改良剤の含有量は、成分A及び成分Bの総含有量100重量部に対して、0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましい。
【0209】
〔界面活性剤〕
本発明の感光性樹脂組成物は、塗布性の観点から、界面活性剤を含有することが好ましい。
界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、又は、両性のいずれでも使用することができるが、好ましい界面活性剤はノニオン系界面活性剤である。
ノニオン系界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル類、ポリオキシエチレン高級アルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレングリコールの高級脂肪酸ジエステル類、フッ素系、シリコーン系界面活性剤を挙げることができる。
【0210】
本発明の感光性樹脂組成物は、界面活性剤として、フッ素系界面活性剤、及び/又は、シリコーン系界面活性剤を含有することがより好ましい。
これらのフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤として、例えば、特開昭62−36663号、特開昭61−226746号、特開昭61−226745号、特開昭62−170950号、特開昭63−34540号、特開平7−230165号、特開平8−62834号、特開平9−54432号、特開平9−5988号、特開2001−330953号各公報記載の界面活性剤を挙げることができ、市販の界面活性剤を用いることもできる。
使用できる市販の界面活性剤として、例えば、エフトップEF301、EF303、(以上、新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431(以上、住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、R08(以上、DIC(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(以上、旭硝子(株)製)、PolyFoxシリーズ(OMNOVA社製)等のフッ素系界面活性剤又はシリコーン系界面活性剤を挙げることができる。また、ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)も、シリコーン系界面活性剤として用いることができる。
【0211】
また、界面活性剤として、下記式(1)で表される構成単位A及び構成単位Bを含み、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とした場合のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が1,000以上10,000以下である共重合体を好ましい例として挙げることができる。
【0212】
【化43】

(式(1)中、R1及びR3はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素数1以上4以下の直鎖アルキレン基を表し、R4は水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、Lは炭素数3以上6以下のアルキレン基を表し、p及びqは重合比を表す重量百分率であり、pは10重量%以上80重量%以下の数値を表し、qは20重量%以上90重量%以下の数値を表し、rは1以上18以下の整数を表し、nは1以上10以下の整数を表す。)
【0213】
前記Lは、下記式(2)で表される分岐アルキレン基であることが好ましい。式(2)におけるR5は、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、相溶性と被塗布面に対する濡れ性の点で、炭素数1以上3以下のアルキル基が好ましく、炭素数2又は3のアルキル基がより好ましい。
【0214】
【化44】

【0215】
前記共重合体の重量平均分子量(Mw)は、1,500以上5,000以下がより好ましい。
これら界面活性剤は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
本発明の感光性樹脂組成物における界面活性剤の添加量は、成分A及び成分Bの総含有量100重量部に対して、10重量部以下であることが好ましく、0.01〜10重量部であることがより好ましく、0.01〜1重量部であることが更に好ましい。
【0216】
〔現像促進剤〕
本発明の感光性樹脂組成物は、現像促進剤を含有することが好ましい。
現像促進剤としては、現像促進効果のある任意の化合物を使用できるが、カルボキシル基、フェノール性水酸基、及び、アルキレンオキシ基の群から選ばれる少なくとも1種の基を有する化合物であることが好ましく、カルボキシル基又はフェノール性水酸基を有する化合物がより好ましく、フェノール性水酸基を有する化合物が最も好ましい。
また、現像促進剤の分子量としては、100〜2,000が好ましく、150〜1,500が更に好ましく、150〜1,000が特に好ましい。
【0217】
現像促進剤の例として、アルキレンオキシ基を有するものとしては、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールのモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールのジメチルエーテル、ポリエチレングリコールグリセリルエステル、ポリプロピレングリコールグリセリルエステル、ポリプロピレングリコールジグリセリルエステル、ポリブチレングリコール、ポリエチレングリコール−ビスフェノールAエーテル、ポリプロピレングリコール−ビスフェノールAエーテル、ポリオキシエチレンのアルキルエーテル、ポリオキシエチレンのアルキルエステル、及び特開平9−222724号公報に記載の化合物等を挙げることができる。
カルボキシル基を有するものとしては、特開2000−66406号公報、特開平9−6001号公報、特開平10−20501号公報、特開平11−338150号公報等に記載の化合物を挙げることができる。
フェノール性水酸基を有するものとしては、特開2005−346024号公報、特開平10−133366号公報、特開平9−194415号公報、特開平9−222724号公報、特開平11−171810号公報、特開2007−121766号公報、特開平9−297396号公報、特開2003−43679号公報等に記載の化合物を挙げることができる。これらの中でも、ベンゼン環数が2〜10個のフェノール化合物が好適であり、ベンゼン環数が2〜5個のフェノール化合物が更に好適である。特に好ましいものとしては、特開平10−133366号公報に溶解促進剤として開示されているフェノール性化合物を挙げることができる。
【0218】
現像促進剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用することも可能である。
本発明の感光性樹脂組成物における現像促進剤の添加量は、感度と残膜率の観点から、成分A及び成分Bの総含有量を100重量部としたとき、0.1〜30重量部が好ましく、0.2〜20重量部がより好ましく、0.5〜10重量部であることが最も好ましい。
【0219】
〔酸化防止剤〕
本発明の感光性樹脂組成物は、酸化防止剤を含有してもよい。
酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色を防止できる、又は、分解による膜厚減少を低減でき、また、耐熱透明性に優れるという利点がある。
このような酸化防止剤としては、例えば、リン系酸化防止剤、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。これらの中では、硬化膜の着色、膜厚減少の観点から特にフェノール系酸化防止剤が好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
フェノール系酸化防止剤の市販品としては、例えば、(株)ADEKA製のアデカスタブAO−20、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−70、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−330、住友化学(株)製のsumilizerGM、sumilizerGS、sumilizerMDP−S、sumilizerBBM−S、sumilizerWX−R、sumilizerGA−80、チバジャパン(株)製のIRGANOX1010、IRGANOX1035、IRGANOX1076、IRGANOX1098、IRGANOX1135、IRGANOX1330、IRGANOX1726、IRGANOX1425WL、IRGANOX1520L、IRGANOX245、IRGANOX259、IRGANOX3114、IRGANOX565、IRGAMOD295、(株)エーピーアイコーポレーション製のヨシノックスBHT、ヨシノックスBB、ヨシノックス2246G、ヨシノックス425、ヨシノックス250、ヨシノックス930、ヨシノックスSS、ヨシノックスTT、ヨシノックス917、ヨシノックス314等が挙げられる。
中でも、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−80(以上、(株)ADEKA製)、イルガノックス1098(チバジャパン(株)製)が好ましく挙げられる。
酸化防止剤の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.1〜6重量%であることが好ましく、0.2〜5重量%であることがより好ましく、0.5〜4重量%であることが特に好ましい。この範囲にすることで、形成された膜の十分な透明性が得られ、且つ、パターン形成時の感度も良好となる。
また、酸化防止剤以外の添加剤として、“高分子添加剤の新展開((株)日刊工業新聞社)”に記載の各種紫外線吸収剤や、金属不活性化剤等を本発明の感光性樹脂組成物に添加してもよい。
【0220】
〔可塑剤〕
本発明の感光性樹脂組成物は、可塑剤を含有してもよい。
可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジメチルグリセリンフタレート、酒石酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、トリアセチルグリセリンなどが挙げられる。
本発明の感光性樹脂組成物における可塑剤の含有量は、成分A及び成分Bの総含有量100重量部に対して、0.1〜30重量部であることが好ましく、1〜10重量部であることがより好ましい。
【0221】
〔熱ラジカル発生剤〕
本発明の感光性樹脂組成物は、熱ラジカル発生剤を含んでいてもよく、前述の少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物のようなエチレン性不飽和化合物を含有する場合、熱ラジカル発生剤を含有することが好ましい。
本発明における熱ラジカル発生剤としては、公知の熱ラジカル発生剤を用いることができる。
熱ラジカル発生剤は、熱のエネルギーによってラジカルを発生し、重合性化合物の重合反応を開始又は促進させる化合物である。熱ラジカル発生剤を添加することによって、得られた硬化膜がより強靭になり、耐熱性、耐溶剤性が向上する場合がある。
好ましい熱ラジカル発生剤としては、芳香族ケトン類、オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アゾ系化合物、ビベンジル化合物等が挙げられる。
熱ラジカル発生剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用することも可能である。
本発明の感光性樹脂組成物における熱ラジカル発生剤の含有量は、膜物性向上の観点から、成分A及び成分Bの総含有量を100重量部としたとき、0.01〜50重量部が好ましく、0.1〜20重量部がより好ましく、0.5〜10重量部であることが最も好ましい。
【0222】
〔熱酸発生剤〕
本発明では、低温硬化での膜物性等を改良するために、熱酸発生剤を使用してもよい。
本発明に用いることができる熱酸発生剤とは、熱により酸が発生する化合物であり、通常、熱分解点が130℃〜250℃、好ましくは150℃〜220℃の範囲の化合物であり、例えば、加熱によりスルホン酸、カルボン酸、ジスルホニルイミドなどの低求核性の酸を発生する化合物である。
熱酸発生剤により発生する酸としては、pKaが2以下と強い、スルホン酸や、電子求引基の置換したアルキル又はアリールカルボン酸、同じく電子求引基の置換したジスルホニルイミドなどが好ましい。電子求引基としては、フッ素原子などのハロゲン原子、トリフルオロメチル基等のハロアルキル基、ニトロ基、シアノ基を挙げることができる。
【0223】
また、本発明においては、露光光の照射によって実質的に酸を発生せず、熱によって酸を発生するスルホン酸エステルを使用することも好ましい。
露光光の照射によって実質的に酸を発生していないことは、化合物の露光前後でのIRスペクトルやNMRスペクトル測定により、スペクトルに変化がないことで判定することができる。
スルホン酸エステルの分子量は、230〜1,000であることが好ましく、230〜800であることがより好ましい。
本発明に用いることができるスルホン酸エステルは、市販のものを用いてもよいし、公知の方法で合成したものを用いてもよい。スルホン酸エステルは、例えば、塩基性条件下、スルホニルクロリド乃至はスルホン酸無水物を対応する多価アルコールと反応させることにより合成することができる。
熱酸発生剤の感光性樹脂組成物への含有量は、成分A及び成分Bの総含有量を100重量部としたとき、0.5〜20重量部が好ましく、1〜15重量部がより好ましい。
【0224】
〔酸増殖剤〕
本発明の感光性樹脂組成物は、感度向上を目的に、酸増殖剤を用いることができる。
本発明に用いることができる酸増殖剤は、酸触媒反応によって更に酸を発生して反応系内の酸濃度を上昇させることができる化合物であり、酸が存在しない状態では安定に存在する化合物である。このような化合物は、1回の反応で1つ以上の酸が増えるため、反応の進行に伴って加速的に反応が進むが、発生した酸自体が自己分解を誘起するため、ここで発生する酸の強度は、酸解離定数、pKaとして3以下であるのが好ましく、特に2以下であるのが好ましい。
酸増殖剤の具体例としては、特開平10−1508号公報の段落0203〜0223、特開平10−282642号公報の段落0016〜0055、及び、特表平9−512498号公報第39頁12行目〜第47頁2行目に記載の化合物を挙げることができる。
具体的には、下記の化合物等を挙げることができる。
【0225】
【化45】

【0226】
本発明で用いることができる酸増殖剤としては、酸発生剤から発生した酸によって分解し、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フェニルホスホン酸などのpKaが3以下の酸を発生させる化合物を挙げることができる。
酸増殖剤の感光性樹脂組成物への含有量は、光酸発生剤100重量部に対して、10〜1,000重量部とするのが、露光部と未露光部との溶解コントラストの観点から好ましく、20〜500重量部とするのが更に好ましい。
【0227】
(硬化膜の形成方法)
次に、本発明の硬化膜の形成方法を説明する。
本発明の硬化膜の形成方法は、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を用いること以外に特に制限はないが、以下の(1)〜(5)の工程を含むことが好ましい。
(1)本発明のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布する塗布工程
(2)塗布された感光性樹脂組成物から溶剤を除去する溶剤除去工程
(3)溶剤を除去された感光性樹脂組成物を活性光線により露光する露光工程
(4)露光された感光性樹脂組成物を水性現像液により現像する現像工程
(5)現像された感光性樹脂組成物を熱硬化するポストベーク工程
本発明の硬化膜の形成方法においては、前記露光工程における露光後に、加熱処理を行わずに、前記(4)の現像工程を行ってもよい。
また、前記ポストベーク工程前に、現像された感光性樹脂組成物を全面露光する工程を更に含んでいてもよい。
また、本発明の硬化膜の形成方法は、(6)熱硬化して得られた硬化膜を有する基板に対しドライエッチングを行うドライエッチング工程を更に含むことが好ましい。
以下に各工程を順に説明する。
【0228】
(1)の塗布工程では、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布して溶剤を含む湿潤膜とすることが好ましい。
(2)の溶剤除去工程では、塗布された上記の膜から、溶剤を除去する。溶剤除去工程では、例えば、減圧(バキューム)及び/又は加熱により、溶剤を除去して基板上に乾燥塗膜を形成させることが好ましい。
【0229】
(3)の露光工程では、得られた塗膜に波長300nm以上450nm以下の活性光線を照射することが好ましい。この工程では、特定酸発生剤が分解し酸が発生する。発生した酸の触媒作用により、成分A中に含まれる構成単位(a1)中の酸分解性基が分解されて、酸基が生成する。
酸触媒の生成した領域において、上記の分解反応を加速させるために、必要に応じて、露光後加熱処理:Post Exposure Bake(以下、「PEB」ともいう。)を行ってもよい。PEBにより、酸分解性基からの酸基の生成を促進させることができる。
特定樹脂における構成単位(a1)中の酸分解性基は、酸分解の活性化エネルギーが低く、露光による光酸発生剤由来の酸により容易に分解し、酸基を生じるため、必ずしもPEBを行う必要はない。したがって、露光工程の後、加熱処理を行わずに前記現像工程を行うことが好ましい。より詳細には、(3)の露光工程の後、PEBを行うことなく、(4)の現像工程にて現像を行うことにより、ポジ画像を形成することが好ましい。
なお、比較的低温でPEBを行うことにより、架橋反応を起こすことなく、酸分解性基の分解を促進することもできる。PEBを行う場合の温度は、30℃以上130℃以下であることが好ましく、40℃以上110℃以下がより好ましく、50℃以上90℃以下が特に好ましい。
【0230】
(4)の現像工程では、遊離した酸基を有する成分A及び酸基を有する成分Bを、アルカリ性現像液を用いて現像することが好ましい。アルカリ性現像液に溶解しやすい酸基を有する感光性樹脂組成物を含む露光部領域を除去することにより、ポジ画像が形成することができる。
(5)のポストベーク工程において、得られたポジ画像を加熱することにより、例えば、構成単位(b1)中の酸基、及び、構成単位(a1)中の酸分解性基を熱分解し生成した酸基と、構成単位(a2)及び構成単位(b2)中の架橋性基と架橋させ、硬化膜を形成することができる。この加熱は、150℃以上の高温に加熱することが好ましく、180〜250℃に加熱することがより好ましく、200〜250℃に加熱することが特に好ましい。加熱時間は、加熱温度などにより適宜設定できるが、10〜90分の範囲内とすることが好ましい。
【0231】
本発明の感光性樹脂組成物より得られた硬化膜は、ドライエッチングレジストとして好適に使用することができる。
(5)のポストベーク工程により熱硬化して得られた硬化膜をドライエッチングレジストとして使用する場合、エッチング処理としてはアッシング、プラズマエッチング、オゾンエッチングなどのドライエッチング処理を行うことができる。
(6)のドライエッチング工程おいては、反応ガス中に基板を曝してエッチングを施す反応性ガスエッチング処理や、反応ガスをプラズマによりイオン化・ラジカル化してエッチングを施す反応性イオンエッチング(RIE)など、公知のドライエッチング処理が例示できる。これらのガス種やエッチング方法は、ドライエッチングする材料、所望の速度や精度等によって適宜選択すればよい。また、ドライエッチングを行う装置としては、公知の装置を用いることができる。
【0232】
更に、ポストベーク工程の前に、現像された感光性樹脂組成物を全面露光する工程を含むことが好ましく、現像された感光性樹脂組成物のパターンに活性光線、好ましくは紫外線を、全面照射する工程を加えると、活性光線の照射により発生する酸により架橋反応を促進することができる。
次に、本発明の感光性樹脂組成物を用いた硬化膜の形成方法を具体的に説明する。
【0233】
〔感光性樹脂組成物の調製方法〕
特定樹脂及び酸発生剤の必須成分に、必要によって溶剤を所定の割合でかつ任意の方法で混合し、撹拌溶解して感光性樹脂組成物を調製する。例えば、特定樹脂又は酸発生剤を、それぞれ予め溶剤に溶解させた溶液とした後、これらを所定の割合で混合して感光性樹脂組成物を調製することもできる。以上のように調製した感光性樹脂組成物の溶液は、孔径0.1μmのフィルタ等を用いてろ過した後に、使用に供することもできる。
【0234】
<層形成工程及び溶剤除去工程>
感光性樹脂組成物を用いて、所定の基板に膜状の層を形成し、減圧及び/又は加熱(プリベーク)により溶剤を除去することにより、所望の乾燥塗膜を形成することができる。前記の基板としては、例えば液晶表示装置の製造においては、偏光板、更に必要に応じてブラックマトリックス層、カラーフィルタ層を設け、更に透明導電回路層を設けたガラス板などが例示できる。基板への層形成方法は特に限定されず、例えば、スリットコート法、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法等の塗布方法を用いることができる。中でもスリットコート法が大型基板に適するという観点で好ましい。ここで大型基板とは、各辺が1m以上の大きさの基板をいう。
また、(2)溶剤除去工程の加熱条件は、未露光部における成分A中の構成単位(a1)において酸分解性基が分解して、かつ、成分Aをアルカリ現像液に可溶性としない範囲であり、各成分の種類や配合比によっても異なるが、好ましくは70〜120℃で30〜300秒間程度である。
【0235】
<露光工程>
(3)露光工程では、感光性樹脂組成物の乾燥塗膜を設けた基板に所定のパターンの活性光線を照射する。露光はマスクを介して行ってもよいし、所定のパターンを直接描画してもよい。波長300nm以上450nm以下の波長を有する活性光線が好ましく使用できる。露光工程の後、必要に応じてPEBを行ってもよい。
活性光線による露光には、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、レーザ発生装置、LED光源などを用いることができる。
水銀灯を用いる場合にはg線(436nm)、i線(365nm)、h線(405nm)などの波長を有する活性光線が好ましく使用できる。水銀灯はレーザに比べると、大面積の露光に適するという点で好ましい。
【0236】
レーザを用いる場合には固体(YAG)レーザでは343nm、355nmが好適に用いられ、エキシマレーザでは351nm(XeF)が好適に用いられ、更に半導体レーザでは375nm、405nmが好適に用いられる。この中でも、安定性、コスト等の点から355nm、405nmがより好ましい。レーザは1回あるいは複数回に分けて、塗膜に照射することができる。
【0237】
レーザの1パルス当たりのエネルギー密度は0.1mJ/cm2以上10,000mJ/cm2以下であることが好ましい。塗膜を十分に硬化させるには、0.3mJ/cm2以上がより好ましく、0.5mJ/cm2以上が最も好ましく、アブレーション現象により塗膜を分解させないようにするには、1,000mJ/cm2以下がより好ましく、100mJ/cm2以下が最も好ましい。
また、パルス幅は、0.1nsec以上30,000nsec以下であることが好ましい。アブレーション現象により色塗膜を分解させないようにするには、0.5nsec以上がより好ましく、1nsec以上が最も好ましく、スキャン露光の際に合わせ精度を向上させるには、1,000nsec以下がより好ましく、50nsec以下が最も好ましい。
更に、レーザの周波数は、1Hz以上50,000Hz以下が好ましく、10Hz以上1,000Hz以下がより好ましい。
更に、レーザの周波数は、露光処理時間を短くするには、10Hz以上がより好ましく、100Hz以上が最も好ましく、スキャン露光の際に合わせ精度を向上させるには、10,000Hz以下がより好ましく、1,000Hz以下が最も好ましい。
【0238】
レーザは水銀灯と比べると、焦点を絞ることが容易であり、露光工程でのパターン形成のマスクが不要でコストダウンできるという点で好ましい。
本発明に使用可能な露光装置としては、特に制限はないが市販されているものとしては、Callisto((株)ブイ・テクノロジー製)やAEGIS((株)ブイ・テクノロジー製)やDF2200G(大日本スクリーン製造(株)製)などが使用可能である。また上記以外の装置も好適に用いられる。
また、必要に応じて長波長カットフィルタ、短波長カットフィルタ、バンドパスフィルタのような分光フィルタを通して照射光を調整することもできる。
【0239】
<現像工程>
(4)現像工程では、塩基性現像液を用いて露光部領域を除去して画像パターンを形成する。現像液に用いる塩基性化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物類;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩類;重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムなどのアルカリ金属重炭酸塩類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリンヒドロキシド等のアンモニウムヒドロキシド類;ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの水溶液を使用することができる。また、上記アルカリ類の水溶液にメタノールやエタノールなどの水溶性有機溶剤や界面活性剤を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。
【0240】
現像液のpHは、現像可能であれば特に制限はないが、10.0〜14.0であることが好ましい。
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの0.2〜2.38重量%水溶液で現像されることが好ましく、0.4重量%、0.5重量%、0.7重量%、2.38重量%水溶液で現像されることが更に好ましい。
現像時間は、好ましくは30〜180秒間であり、また、現像の手法は液盛り法、ディップ法、シャワー法等のいずれでもよい。現像後は、流水洗浄を10〜90秒間行い、所望のパターンを形成させることができる。
現像の後に、リンス工程を行うこともできる。リンス工程では、現像後の基板を純水などで洗浄することで、付着している現像液除去、現像残渣除去を行う。リンス方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、シャワーリンスやディップリンスなどを挙げることができる。
【0241】
<ポストベーク工程(架橋工程)>
現像により得られた未露光領域に対応するパターンについて、ホットプレートやオーブン等の加熱装置を用いて、所定の温度、例えば180〜250℃で所定の時間、例えばホットプレート上なら5〜60分間、オーブンならば30〜90分間、加熱処理をすることにより、特定樹脂中の酸分解性基を分解して、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を発生させ、特定樹脂中のエポキシ基及び/又はオキセタニル基である架橋性基と反応して、架橋させることにより、耐熱性、硬度等に優れた保護膜や層間絶縁膜を形成することができる。また、加熱処理を行う際は窒素雰囲気下で行うことにより透明性を向上させることもできる。
ポストベークの前に、比較的低温でベークを行った後にポストベークすることもできる(ミドルベーク工程の追加)。ミドルベークを行う場合は、90〜150℃で1〜60分加熱した後に、200℃以上の高温でポストベークすることが好ましい。また、ミドルベーク、ポストベークを3段階以上の多段階に分けて加熱する事もできる。このようなミドルベーク、ポストベークの工夫により、パターンのテーパー角を調整することができる。これらの加熱は、ホットプレート、オーブン、赤外線ヒーターなど、公知の加熱方法を使用することができる。
なお、加熱処理に先立ち、パターンを形成した基板に活性光線により再露光した後、ポストベークすること(再露光/ポストベーク)により未露光部分に存在する酸発生剤(B)から酸を発生させ、架橋を促進する触媒として機能させることが好ましい。
すなわち、本発明における硬化膜の形成方法は、現像工程とポストベーク工程の間に、活性光線により再露光する工程を含むことが好ましい。
再露光工程における露光は、前記露光工程と同様の手段により行えばよいが、前記再露光工程では、基板の本発明の感光性樹脂組成物により膜が形成された側に対し、全面露光を行うことが好ましい。再露光工程の好ましい露光量としては、100〜1,000mJ/cm2である。
【0242】
<ドライエッチング工程>
本発明におけるドライエッチング工程は、前記ポストベーク工程において、熱硬化して得られた硬化膜を有する基板に対してドライエッチングを行う工程である。本発明の感光性樹脂組成物より得られた硬化膜は、ドライエッチング耐性に優れるので、ドライエッチング条件に曝しても、膜減り量が少ない。
前記ドライエッチング工程においては、前述したように、
本発明において使用することができる被ドライエッチング材料としては、シリコン、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、ガラス、ガラス−セラミックス、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、鋼、銅−シリコン合金、インジウム−スズ酸化物被覆ガラス;金属、半導体、及び、絶縁材料のパターニング領域を含有する任意の基板などが含まれるが、それらに限定されない。
プラズマの発生法としては、特に制限はなく、減圧プラズマ法、大気プラズマ法のいずれも適用することができる。
また、プラズマエッチングには、例えば、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノンの中から選ばれる不活性ガス、O2、CF4、C24、N2、CO2、SF6、CHF3、少なくともO、N、F又はClを含む反応性ガスを好ましく使用することができる。
ドライエッチング工程では、例えば、下地がSiNxやSiO2などのシリコン系の層の場合、O2とCF4、SiF6などのフッ素系の反応ガスを用いることが好ましい。
また、ドライエッチング工程における基板と、前記塗布工程における基板とは、同じものであっても異なるものであってもよい。例えば、前記塗布工程における基板を仮の基板とし、前記ドライエッチング工程の前までに別の基板に当該硬化膜を転写等行ってもよい。
【0243】
また、本発明の感光性樹脂組成物を硬化して得られた硬化膜は、ドライエッチングやウェットエッチング等のエッチング処理時の犠牲層としても好適に用いることができ、エッチング処理後に前記硬化膜を剥離する際には、アッシングなどの既知のドライプラズマプロセスや、アルカリ薬品処理などの既知のウェットプロセスによる剥離を行うことができる。本発明の硬化膜はベーク工程を経て硬化しているため、ドライプラズマプロセスによる剥離が特に好ましい。
エッチング用レジストとして平面レジストとして使用した場合でも、酸素プラズマ処理が好適に用いられるが、薬液による加熱処理によってレジストを剥離除去することも可能である。
本発明の感光性樹脂組成物を硬化して得られた硬化膜は、ドライエッチングレジストとして特に好適に使用することができる。
【0244】
本発明の硬化膜は、本発明の感光性樹脂組成物を硬化して得られた硬化膜であり、層間絶縁膜として好適に用いることができる。また、本発明の硬化膜は、本発明の硬化膜の形成方法により得られた硬化膜であることが好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物により、高い感度を有し、現像時における残渣の発生が抑制され、かつ、平滑性に優れた表面を有する硬化膜が得られ、該硬化膜は層間絶縁膜として有用である。また、本発明の感光性樹脂組成物を用いてなる層間絶縁膜は、高い透明性を有し、良好な形状のパターン形状を形成でき、また、その表面の平滑性にも優れるので、有機EL表示装置や液晶表示装置の用途に有用である。
本発明の感光性樹脂組成物を適用し得る有機EL表示装置や液晶表示装置としては、本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成される硬化膜を平坦化膜や保護膜、層間絶縁膜として用いること以外は、特に制限されず、様々な構造をとる公知の各種有機EL表示装置や液晶表示装置を挙げることができる。
また、本発明の感光性樹脂組成物及び本発明の硬化膜は、前記用途に限定されず種々の用途に使用することができる。例えば、平坦化膜や保護膜、層間絶縁膜以外にも、液晶表示装置における液晶層の厚みを一定に保持するためのスペーサーや固体撮像素子においてカラーフィルタ上に設けられるマイクロレンズ、エッチング用レジスト、特に好ましくはドライエッチング用レジスト等に好適に用いることができる。
【0245】
図1は、本発明の感光性樹脂組成物を用いた有機EL表示装置の一例の構成概念図を示す。ボトムエミッション型の有機EL表示装置における基板の模式的断面図を示し、平坦化膜4を有している。
ガラス基板6上にボトムゲート型のTFT1を形成し、このTFT1を覆う状態でSi34から成る絶縁膜3が形成されている。絶縁膜3に、ここでは図示を省略したコンタクトホールを形成した後、このコンタクトホールを介してTFT1に接続される配線2(高さ1.0μm)が絶縁膜3上に形成されている。配線2は、TFT1間又は、後の工程で形成される有機EL素子とTFT1とを接続するためのものである。
更に、配線2の形成による凹凸を平坦化するために、配線2による凹凸を埋め込む状態で絶縁膜3上に平坦化膜4が形成されている。
平坦化膜4上には、ボトムエミッション型の有機EL素子が形成されている。すなわち、平坦化膜4上に、ITOからなる第一電極5が、コンタクトホール7を介して配線2に接続させて形成されている。第一電極5は、有機EL素子の陽極に相当する。
第一電極5の周縁を覆う形状の絶縁膜8が形成されており、この絶縁膜8を設けることによって、第一電極5とこの後の工程で形成する第二電極との間のショートを防止することができる。
更に、図1には図示していないが、所望のパターンマスクを介して、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層を順次蒸着して設け、次いで、基板上方の全面にAlから成る第二電極を形成し、封止用ガラス板と紫外線硬化型エポキシ樹脂を用いて貼り合わせることで封止し、各有機EL素子にこれを駆動するためのTFT1が接続されてなるアクティブマトリックス型の有機EL表示装置が得られる。
【0246】
図2は、アクティブマトリックス方式の液晶表示装置10の一例を示す概念的断面図である。このカラー液晶表示装置10は、背面にバックライトユニット12を有する液晶パネルであって、液晶パネルは、偏光フィルムが貼り付けられた2枚のガラス基板14,15の間に配置されたすべての画素に対応するTFT16の素子が配置されている。ガラス基板上に形成された各素子には、硬化膜17中に形成されたコンタクトホール18を通して、画素電極を形成するITO透明電極19が配線されている。ITO透明電極19の上には、液晶20の層とブラックマトリックスを配置したRGBカラーフィルタ22が設けられている。
【実施例】
【0247】
次に、実施例により本発明を更に具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は重量基準である。
【0248】
<合成例1>
冷却管、撹拌機を備えたフラスコに、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル150重量部を入れ、窒素雰囲気下において90℃に昇温した。その溶液に、単量体成分としてメタクリル酸1−エトキシエチル41.3重量部、3−エチル−3−オキセタニルメチルメタクリレート31.0重量部、メタクリル酸5.6重量部、2−エチルヘキシルメタクリレート17.0重量部、並びに、重合開始剤としてジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)10.0重量部を溶解させ、2時間かけて滴下した。滴下終了後2時間撹拌した。その溶液に更にジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)2.5重量部を添加し、更に2時間撹拌し、反応を終了させた。それにより共重合体A−1を得た。重量平均分子量は11,000であった。
【0249】
<合成例2〜38>
使用したモノマー及びその量を変更した以外は、合成例1と同様にして、表1
表2に示す共重合体A−2〜A−15、a−1、a−2、B−1〜B−16、及び、b−1〜b−5をそれぞれ合成した。合成された各共重合体の組成比(モル%)及び重量平均分子量(Mw)は、表1及び表2に示した通りである。
【0250】
【表1】

【0251】
【表2】

【0252】
表1及び表2中の略号は以下の通りである。
MAEVE:メタクリル酸1−エトキシエチル
MATHF:テトラヒドロ−2H−フラン−2−イルメタクリレート
MACHOE:1−(シクロヘキシルオキシ)エチルメタクリレート
MATHP:テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルメタクリレート
PHSEVE:p−ヒドロキシスチレンの1−エトキシエチル基保護体
OXE−30:メタクリル酸(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル(大阪有機化学工業(株)製)
GMA:グリシジルメタクリレート
NBMA:n−ブトキシメチルアクリルアミド
VBGE:p−ビニルベンジルグリシジルエーテル
MAA:メタクリル酸
PHS:p−ヒドロキシスチレン
HEMA:2−エチルヘキシルメタクリレート
AA:アクリル酸
THFFMA:テトラヒドロフルフリルメタクリレート
St:スチレン
α−MeSt:α−メチルスチレン
MMA:メチルメタクリレート
DCPM:メタクリル酸(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル)
【0253】
(実施例1〜68及び比較例1〜11)
表3〜表5に記載した量(固形分)を、固形分濃度が27重量%となるようにジエチレングリコールメチルエチルエーテル:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート=1:1(重量比)の混合溶剤に溶解させた後、孔径0.2μmのメンブランフィルタでろ過して、実施例1〜68及び比較例1〜11の感光性樹脂組成物をそれぞれ調製した。
【0254】
【表3】

【0255】
【表4】

【0256】
【表5】

【0257】
上記表中、各種添加剤の略号は下記のとおりである。
C−1:下記構造の化合物(合成品)
C−2:下記構造の化合物(合成品)
C−3:下記構造の化合物(合成品)
C−4:CGI−1397(BASF社製)
C−5:下記構造の化合物(特表2002−528451号公報の段落0108に記載された方法に従って合成した。)
C−6:PAI−1001(みどり化学(株)製)
C−7:4,7−ジ−n−ブトキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート
【0258】
【化46】

【0259】
<C−1の合成>
2−ナフトール(10g)、クロロベンゼン(30mL)の懸濁溶液に塩化アルミニウム(10.6g)、2−クロロプロピオニルクロリド(10.1g)を添加し、混合液を40℃に加熱して2時間反応させた。氷冷下、反応液に4N HCl水溶液(60mL)を滴下し、酢酸エチル(50mL)を添加して分液した。有機層に炭酸カリウム(19.2g)を加え、40℃で1時間反応させた後、2N HCl水溶液(60mL)を添加して分液し、有機層を濃縮後、結晶をジイソプロピルエーテル(10mL)でリスラリーし、ろ過、乾燥してケトン化合物(6.5g)を得た。
得られたケトン化合物(3.0g)、メタノール(18mL)の懸濁溶液に酢酸(7.3g)、50重量%ヒドロキシルアミン水溶液(8.0g)を添加し、10時間加熱還流した。放冷後、水(50mL)を加え、析出した結晶をろ過、冷メタノール洗浄後、乾燥してオキシム化合物(2.4g)を得た。
得られたオキシム化合物(1.8g)をアセトン(20mL)に溶解させ、氷冷下トリエチルアミン(1.5g)、p−トルエンスルホニルクロリド(2.4g)を添加し、室温に昇温して1時間反応させた。反応液に水(50mL)を添加し、析出した結晶をろ過後、メタノール(20mL)でリスラリーし、ろ過、乾燥してC−1(2.3g)を得た。
なお、C−1の1H−NMRスペクトル(300MHz、CDCl3)は、δ=8.3(d,1H),8.0(d,2H),7.9(d,1H),7.8(d,1H),7.6(dd,1H),7.4(dd,1H)7.3(d,2H),7.1(d.1H),5.6(q,1H),2.4(s,3H),1.7(d,3H)であった。
【0260】
<C−2の合成>
2−ナフトール(20g)をN,N−ジメチルアセトアミド(150mL)に溶解させ、炭酸カリウム(28.7g)、2−ブロモオクタン酸エチル(52.2g)を添加して100℃で2時間反応させた。反応液に水(300mL)、酢酸エチル(200mL)を添加して分液し、有機層を濃縮後、48重量%水酸化ナトリウム水溶液(23g)、エタノール(50mL)、水(50mL)を添加し、2時間反応させた。反応液を1N HCl水溶液(500mL)にあけ、析出した結晶をろ過、水洗してカルボン酸粗体を得た後、ポリリン酸30gを添加して170℃で30分反応させた。反応液を水(300mL)にあけ、酢酸エチル(300mL)を添加して分液し、有機層を濃縮した後シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、ケトン化合物(10g)を得た。
得られたケトン化合物(10.0g)、メタノール(100mL)の懸濁溶液に酢酸ナトリウム(30.6g)、塩酸ヒドロキシルアミン(25.9g)、硫酸マグネシウム(4.5g)を添加し、24時間加熱還流した。放冷後、水(150mL)、酢酸エチル(150mL)添加して分液し、有機層を水80mLで4回分液し、濃縮した後シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製してオキシム化合物(5.8g)を得た。
得られたオキシム(3.1g)に対し、C−1と同様にスルホネート化を行い、C−2(3.2g)を得た。
なお、C−2の1H−NMRスペクトル(300MHz、CDCl3)は、δ=8.3(d,1H),8.0(d,2H),7.9(d,1H),7.8(d,1H),7.6(dd,1H),7.5(dd,1H)7.3(d,2H),7.1(d.1H),5.6(dd,1H),2.4(s,3H),2.2(ddt,1H),1.9(ddt,1H),1.4〜1.2(m,8H),0.8(t,3H)であった。
【0261】
<C−3の合成>
C−1におけるp−トルエンスルホニルクロリドの代わりにベンゼンスルホニルクロリドを用いた以外は、C−1と同様にしてC−3を合成した。
なお、C−3の1H−NMRスペクトル(300MHz、CDCl3)は、δ=8.3(d,1H),8.1(d,2H),7.9(d,1H),7.8(d,1H),7.7−7.5(m,4H),7.4(dd,1H),7.1(d.1H),5.6(q,1H),1.7(d,3H)であった。
【0262】
E−1:DBA(9,10−ジブトキシアントラセン、川崎化成工業(株)製)
E−2:DETX(ジエチルチオキサントン)
F−1:1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン(東京化成工業(株)製)
F−2:下記構造の化合物
【0263】
【化47】

【0264】
G−1:JER157S65(三菱化学(株)製)
G−2:JER1031S(三菱化学(株)製)
G−3:デナコールEX−612(ナガセケムテックス(株)製)
G−4:デナコールEX−321L(ナガセケムテックス(株)製)
G−5:MF−K60X(旭化成ケミカルズ(株)製)
H−1:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越化学工業(株)製)
H−2:3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(KBE−403、信越化学工業(株)製)
H−3:3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、信越化学工業(株)製)
I−1:下記構造の化合物
I−2:シリコーン系界面活性剤SH−8400FLUID(東レ・ダウコーニング(株)製)
【0265】
【化48】

【0266】
<耐薬品性(剥離液耐性)の評価>
ガラス基板(コーニング1737、0.7mm厚(コーニング社製))上に、各感光性樹脂組成物をスリット塗布した後、90℃/120秒ホットプレート上で加熱により溶剤を除去し、膜厚4.0μmの感光性樹脂組成物層を形成した。
得られた感光性樹脂組成物層を、キヤノン(株)製PLA−501F露光機(超高圧水銀ランプ)で積算照射量が300mJ/cm2(照度:20mW/cm2、i線)となるように露光し、その後、この基板をオーブンにて230℃で1時間加熱して硬化膜を得た。
その硬化膜をモノエタノールアミンに60℃で5分浸漬させ、その膜を引き上げて表面の液をふき取った後で、すぐに膜厚を測定した。浸漬前の膜厚と、浸漬後の膜厚とを比較して、増加した割合をパーセントで表記した。結果を表6〜表8に示した。数値としては小さいほど硬化膜の剥離液耐性は良好であり、A又はBが好ましい。
膨潤率(%)=浸漬後の膜厚(μm)/浸漬前の膜厚(μm)×100
A:100%以上105%未満
B:105%以上110%未満
C:110%以上
【0267】
<耐薬品性(NMP耐性)の評価>
ガラス基板(コーニング1737、0.7mm厚(コーニング社製))上に、各感光性樹脂組成物をスリット塗布した後、90℃/120秒ホットプレート上で加熱により溶剤を除去し、膜厚4.0μmの感光性樹脂組成物層を形成した。
得られた感光性樹脂組成物層を、キヤノン(株)製PLA−501F露光機(超高圧水銀ランプ)で積算照射量が300mJ/cm2(照度:20mW/cm2、i線)となるように露光し、その後、この基板をオーブンにて230℃で1時間加熱して硬化膜を得た。
その硬化膜をNMPに80℃で10分浸漬させ、その膜を引き上げて表面の液をふき取った後で、すぐに膜厚を測定した。浸漬前の膜厚と、浸漬後の膜厚を比較して、増加した割合をパーセントで表記した。結果を表6〜表8に示した。数値としては小さいほど硬化膜のNMP耐性は良好であり、A又はBが好ましい。
膨潤率(%)=浸漬後の膜厚(μm)/浸漬前の膜厚(μm)×100
A:100%以上105%未満
B:105%以上110%未満
C:110%以上
【0268】
<硬化膜の密着性>
ITO(酸化インジウムスズ)基板、Mo(モリブデン)基板、チタン(Ti)基板上に、各感光性樹脂組成物をスリット塗布した後、90℃/120秒ホットプレート上で加熱により溶剤を除去し、膜厚4.0μmの感光性樹脂組成物層を形成した。得られた感光性樹脂組成物層を、キヤノン(株)製PLA−501F露光機(超高圧水銀ランプ)で積算照射量が300mJ/cm2(照度:20mW/cm2、i線)となるように露光し、その後、この基板をオーブンにて230℃で1時間加熱して硬化膜を得た。硬化膜にカッターを用いて、縦横に1mmの間隔で切り込みを入れ、スコッチテープを用いてテープ剥離試験を行った。テープ裏面に転写された硬化膜の面積から硬化膜と基板間の密着性を評価した。その結果を表6〜表8に示した。数値としては小さいほど下地基板との密着性が高く、A又はBが好ましい。
A:転写された面積が1%未満
B:転写された面積が1%以上5%未満
C:転写された面積が5%以上
【0269】
<耐ドライエッチング性>
ガラス基板(コーニング1737、0.7mm厚(コーニング社製))上に、各感光性樹脂組成物をスリット塗布した後、90℃/120秒ホットプレート上で加熱により溶剤を除去し、膜厚4.0μmの感光性樹脂組成物層を形成した。
得られた感光性樹脂組成物層を、キヤノン(株)製PLA−501F露光機(超高圧水銀ランプ)で積算照射量が300mJ/cm2(照度:20mW/cm2、i線)となるように露光し、その後、この基板をオーブンにて230℃で1時間加熱して硬化膜を得た。該硬化膜をドライエッチング装置「CDE−80N((株)芝浦メカトロニクス製)」を用い、エッチングガスとしてCF4 50ml/分、O2 10ml/分、出力400mW、エッチング時間90秒の条件でドライエッチングを行った。その膜減り量からエッチング速度を算出した。その結果を表6〜表8に示した。数値としては小さいほど耐ドライエッチング性が高く、A又はBが好ましい。
A:30Å/秒以上35Å/秒未満
B:35Å/秒以上40Å/秒未満
C:40Å/秒以上45Å/秒未満
【0270】
<感度の評価>
ガラス基板(コーニング1737、0.7mm厚(コーニング社製))上に、各感光性樹脂組成物をスリット塗布した後、90℃/120秒ホットプレート上でプリベークして溶剤を揮発させ、膜厚4.0μmの感光性樹脂組成物層を形成した。
次に、得られた感光性樹脂組成物層を、キヤノン(株)製PLA−501F露光機(超高圧水銀ランプ)を用いて、所定のマスクを介して露光した。そして、露光後の感光性組成物層を、アルカリ現像液(0.3重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)で23℃/60秒間現像した後、超純水で20秒リンスした。
これらの操作により13μmのラインアンドスペースを1:1で解像する時の最適i線露光量(Eopt)を感度とした。結果を表6〜表8に示した。数値としては小さいほど好ましく、A及びBが実用上問題のないレベルであり、Cは生産性の観点から好ましくない。
A:50mJ/cm2未満
B:50mJ/cm2以上300mJ/cm2未満
C:300mJ/cm2以上
【0271】
<表示装置における表示性能評価>
薄膜トランジスタ(TFT)を用いた液晶表示装置を以下の方法で作製した(図2参照)。特許第3321003号公報の図1及び図2に記載のアクティブマトリクス型液晶表示装置において、層間絶縁膜として硬化膜17を以下のようにして形成し、液晶表示装置を得た。すなわち、ガラス基板6上にボトムゲート型のTFT1を形成し、このTFT1を覆う状態でSi3N4から成る絶縁膜3を形成した。次に、この絶縁膜3に、コンタクトホールを形成した後、このコンタクトホールを介してTFT1に接続される配線2(高さ1.0μm)を絶縁膜3上に形成した。
【0272】
さらに、配線2の形成による凹凸を平坦化するために、配線2による凹凸を埋め込む状態で絶縁膜3上へ平坦化膜4を形成した。絶縁膜3上への平坦化膜4の形成は、実施例1〜57、比較例1〜9の各感光性樹脂組成物を基板上にスピン塗布し、ホットプレート上でプリベーク(90℃×2分)した後、マスク上から高圧水銀灯を用いてi線(365nm)を25mJ/cm2(照度20mW/cm2)照射した後、アルカリ水溶液にて現像してパターンを形成し、230℃で60分間の加熱処理を行った。該感光性樹脂組成物を塗布する際の塗布性は良好で、露光、現像、焼成の後に得られた硬化膜には、しわやクラックの発生は認められなかった。更に、配線2の平均段差は500nm、作製した平坦化膜4の膜厚は2,000nmであった。
【0273】
得られた液晶表示装置に対して駆動電圧を印加し、グレイのテスト信号を入力させたときのグレイ表示を目視にて観察し、表示ムラの発生の有無を評価した。結果を表6〜表8に示した。A及びBが実用上問題のないレベルである。
A:まったくムラがみられない(非常に良い)
B:表示部にかすかにムラが見られるが実用レベル(良い)
C:表示部に強いムラが見られる(悪い)
【0274】
【表6】

【0275】
【表7】

【0276】
【表8】

【0277】
本発明の感光性樹脂組成物は、高感度であり、剥離液やNMPに対する耐性が高く、また、透明電極膜や金属との密着性も良好で、また、ドライエッチング耐性に優れることがわかった。
【0278】
(実施例69)
薄膜トランジスタ(TFT)を用いた有機EL表示装置を以下の方法で作製した(図1参照)。
ガラス基板6上にボトムゲート型のTFT1を形成し、このTFT1を覆う状態でSi34からなる絶縁膜3を形成した。次に、この絶縁膜3に、ここでは図示を省略したコンタクトホールを形成した後、このコンタクトホールを介してTFT1に接続される配線2(高さ1.0μm)を絶縁膜3上に形成した。この配線2は、TFT1間、又は、後の工程で形成される有機EL素子とTFT1とを接続するためのものである。
【0279】
更に、配線2の形成による凹凸を平坦化するために、配線2による凹凸を埋め込む状態で絶縁膜3上へ平坦化層4を形成した。絶縁膜3上への平坦化膜4の形成は、実施例1の感光性樹脂組成物を基板上にスピン塗布し、ホットプレート上でプリベーク(90℃×2分)した後、マスク上から高圧水銀灯を用いてi線(365nm)を45mJ/cm2(照度20mW/cm2)照射した後、アルカリ水溶液にて現像してパターンを形成し、230℃で60分間の加熱処理を行った。該感光性樹脂組成物を塗布する際の塗布性は良好で、露光、現像、焼成の後に得られた硬化膜には、しわやクラックの発生は認められなかった。更に、配線2の平均段差は500nm、作製した平坦化膜4の膜厚は2,000nmであった。
【0280】
次に、得られた平坦化膜4上に、ボトムエミッション型の有機EL素子を形成した。まず、平坦化膜4上に、ITOからなる第一電極5を、コンタクトホール7を介して配線2に接続させて形成した。その後、レジストを塗布、プリベークし、所望のパターンのマスクを介して露光し、現像した。このレジストパターンをマスクとして、ITOエッチャント用いたウェットエッチングによりパターン加工を行った。その後、レジスト剥離液(モノエタノールアミンとジメチルスルホキシド(DMSO)との混合液)を用いて該レジストパターンを剥離した。こうして得られた第一電極5は、有機EL素子の陽極に相当する。
【0281】
次に、第一電極5の周縁を覆う形状の絶縁膜8を形成した。絶縁膜には、実施例3の感光性樹脂組成物を用い、前記と同様の方法で絶縁膜8を形成した。この絶縁膜を設けることによって、第一電極5とこの後の工程で形成する第二電極との間のショートを防止することができる。
【0282】
更に、真空蒸着装置内で所望のパターンマスクを介して、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層を順次蒸着して設けた。次いで、基板上方の全面にAlからなる第二電極を形成した。得られた上記基板を蒸着機から取り出し、封止用ガラス板と紫外線硬化型エポキシ樹脂を用いて貼り合わせることで封止した。
【0283】
以上のようにして、各有機EL素子にこれを駆動するためのTFT1が接続してなるアクティブマトリックス型の有機EL表示装置が得られた。駆動回路を介して電圧を印加したところ、良好な表示特性を示し、信頼性の高い有機EL表示装置であることがわかった。
【0284】
(実施例70)
実施例69において、実施例1の感光性樹脂組成物を実施例16の感光性樹脂組成物に代えた以外は同様に有機EL装置を作製した。良好な表示特性を示し、信頼性の高い有機EL表示装置であることがわかった。
【0285】
(実施例71)
実施例69において、実施例1の感光性樹脂組成物を実施例31の感光性樹脂組成物に代えた以外は同様に有機EL装置を作製した。良好な表示特性を示し、信頼性の高い有機EL表示装置であることがわかった。
【0286】
(実施例72)
特許第3321003号公報の図1及び図2に記載のアクティブマトリクス型液晶表示装置において、層間絶縁膜として硬化膜17を以下のようにして形成し、実施例72の液晶表示装置を得た。
すなわち、実施例1の感光性樹脂組成物を用い、上記実施例69における有機EL表示装置の平坦化膜4の形成方法と同様の方法で、層間絶縁膜として硬化膜17を形成した。
【0287】
得られた液晶表示装置に対して、駆動電圧を印加したところ、良好な表示特性を示し、信頼性の高い液晶表示装置であることがわかった。
【0288】
(実施例73)
実施例72において、実施例1の感光性樹脂組成物を実施例16の感光性樹脂組成物に代えた以外は同様に液晶表示装置を作製した。良好な表示特性を示し、信頼性の高い液晶表示装置であることがわかった。
【0289】
(実施例74)
実施例72において、実施例1の感光性樹脂組成物を実施例31の感光性樹脂組成物に代えた以外は同様に液晶表示装置を作製した。良好な表示特性を示し、信頼性の高い液晶表示装置であることがわかった。
【0290】
(実施例75)
実施例72において、実施例1の感光性樹脂組成物を実施例60の感光性樹脂組成物に代えた以外は同様に液晶表示装置を作製した。良好な表示特性を示し、信頼性の高い液晶表示装置であることがわかった。
【符号の説明】
【0291】
1:TFT(薄膜トランジスタ)、2:配線、3:絶縁膜、4:平坦化膜、5:第一電極、6:ガラス基板、7:コンタクトホール、8:絶縁膜、10:液晶表示装置、12:バックライトユニット、14,15:ガラス基板、16:TFT、17:硬化膜、18:コンタクトホール、19:ITO透明電極、20:液晶、22:カラーフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(成分A)少なくとも(a1)酸基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位と(a2)架橋性基を有する構成単位とを有する共重合体、
(成分B)酸基が酸分解性基で保護された残基を有する構成単位を有さず、少なくとも(b1)酸基を有する構成単位と(b2)架橋性基を有する構成単位とを有する共重合体、
(成分C)光酸発生剤、及び、
(成分D)溶剤を含有することを特徴とする
ポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記構成単位(a1)が、カルボキシ基がアセタール又はケタールの形で保護された残基を有する構成単位である、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記構成単位(a1)が、式(a1−1)で表される構成単位である、請求項1又は2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R3は炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数4〜7のシクロアルキル基を表し、R2とR3とは連結して環を形成してもよい。)
【請求項4】
前記構成単位(a2)が、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記構成単位(b1)の酸基が、カルボキシル基又はフェノール性水酸基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記構成単位(b2)が、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を有する構成単位である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
成分Bが、式(b3)で表される構成単位を更に有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化2】

(式中、R4は水素原子又はメチル基を表す。)
【請求項8】
成分Aの含有量WAと成分Bの含有量WBとの重量比率が、WA/WB=98/2〜20/80である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項9】
成分Cが、式(c1)で表されるオキシムスルホネート光酸発生剤である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化3】

(式(c1)中、R5及びR6はそれぞれ独立に、一価の有機基を表し、R5及びR6は連結して環を形成していてもよく、R7はアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。)
【請求項10】
成分Cが、式(OS−3)、式(OS−4)、式(OS−5)又は式(c4)で表される化合物である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化4】

(式(OS−3)〜式(OS−5)中、R1はアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子を表し、R6はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、スルホン酸基、アミノスルホニル基又はアルコキシスルホニル基を表し、XはO又はSを表し、nは1又は2を表し、mは0〜6の整数を表す。)
【化5】

(式中、RB1はアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を表し、RB2はアルキル基又はアリール基を表す。)
【請求項11】
光増感剤を更に含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項12】
(1)請求項1〜11のいずれか1項に記載のポジ型感光性樹脂組成物を用いて基板上に膜状の層を形成する層形成工程、
(2)塗布された感光性樹脂組成物から溶剤を除去する溶剤除去工程、
(3)溶剤が除去された感光性樹脂組成物を活性光線により露光する露光工程、
(4)露光された感光性樹脂組成物を水性現像液により現像する現像工程、及び、
(5)現像された感光性樹脂組成物を熱硬化するポストベーク工程、
を含む硬化膜の形成方法。
【請求項13】
前記現像工程後、前記ポストベーク工程前に、現像された感光性樹脂組成物を全面露光する工程を含む、請求項12に記載の硬化膜の形成方法。
【請求項14】
(6)熱硬化して得られた硬化膜を有する基板に対しドライエッチングを行うドライエッチング工程を更に含む、請求項12又は13に記載の硬化膜の形成方法。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法により形成された硬化膜。
【請求項16】
層間絶縁膜である、請求項15に記載の硬化膜。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の硬化膜を具備する有機EL表示装置。
【請求項18】
請求項15又は16に記載の硬化膜を具備する液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−61616(P2013−61616A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−1623(P2012−1623)
【出願日】平成24年1月6日(2012.1.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】