説明

ポストフォーム加工材

【課題】 小R加工が可能であり、R部分の強度を保つことのできる。
【解決手段】 木質系基材と端部補強材と熱硬化性樹脂化粧板とからなるポストフォーム加工材であって、該木質系基材の側面には該端部補強材を接合されるとともに該端部補強材の少なくとも上端部には曲面を形成し、該熱硬化性樹脂化粧板の曲面部となる部分の裏面にはU溝を形成し、該熱硬化性樹脂化粧板のU溝が、該端部補強材の曲面に当接するように、該木質系基材と該端部補強材を被覆する。該端部補強材の少なくとも上端部には曲面の曲率(半径)をRmmとし、該熱硬化性樹脂化粧板の厚みをtmmとした際、該U溝の最大深さdを1/2〜5/6tmm、開口幅wを6〜15mm、曲率(半径)rを10〜60Rmmとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポストフォーム加工材に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでより前垂れ部分を10R前後の曲率半径で曲面加工したポストフォーム加工材があり、近年では3〜6Rといった小さな曲率半径の曲面を有するものが知られている。一般に、メラミン化粧板等の熱硬化性樹脂板を小さい曲面に曲げ加工することは、樹脂の性質上非常に難しいため、曲げ部分のみ熱硬化性樹脂板の裏面を切削して厚みを小さくし、曲げ性を向上させる方法が考えられている。この際、熱硬化性樹脂板の裏面を切削することにより、芯材との間に空隙が生じるが、空隙には樹脂、接着剤等を充填する。充填しない場合は、薄くなった部分の強度の低下が問題となる。
【0003】
具体的な先行技術を示せば、特開2002−337108号公報の「積層板及びその製造方法」には、基材の表面に補強材を貼着し、さらにその上に化粧材を貼着した後、端縁部において化粧材の裏面側を切削して、層厚みが小さい湾曲処理領域と、比較的層厚みが大きい貼着領域とからなる湾曲面形成部を形成すると共に、基材には前記湾曲面形成部の湾曲処理領域と面する位置に切欠を形成し、前記湾曲面形成部の湾曲処理領域に合成樹脂を塗布すると共に、前記湾曲面形成部の貼着領域に接着剤を塗布した後、前記湾曲処理領域を湾曲させて、前記貼着領域を切削後の基材に貼着させる方法が開示されている。
【0004】
また、特開2001−88104号公報の「化粧パネルの製造方法」には、芯材の表面に芯材の巾と略同巾の表面材を接着し、次いで芯材の両側の端部を削り取って切り欠きを形成すると共に切り欠きの部分で表面材の裏面も削り取って薄肉表面材部を形成し、次いで削り面と薄肉表面材部との間にホットメルト系樹脂のような充填材を充填すると共に芯材を切り欠くことで形成された削り面に沿って薄肉表面材部を折り曲げて熱硬化性樹脂系接着剤のような接着剤で接着する方法が開示されている。
【0005】
更に、特開2004−358873号公報の「積層板及びその製造方法」は、角部に面取り状切欠き部が設けられた基材と、上記面取り状切欠き部に対応する個所に薄肉部が設けられた熱硬化性樹脂化粧板と、からなる積層板であって、上記熱硬化性樹脂化粧板が上記薄肉部において曲げられて、上記面取り状切欠き部が被覆されている積層板であり、薄肉部5によって囲まれる空隙部には、ホットメルト性接着剤6が充填する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−337108号公報
【特許文献2】特開2001−88104号公報
【特許文献3】特開2004−358873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、化粧材の裏面切削溝と芯材との間にできる空隙に接着剤などを充填し、硬化させたものは、耐衝撃強度が弱く、化粧表面に衝撃があった場合にクラックが生じることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記の課題を解決するために検討されたもので、木質系基材と熱硬化性樹脂化粧板とからなるポストフォーム加工材であって、該木質系基材の側面の少なくとも上端部には曲面が形成され、該熱硬化性樹脂化粧板の曲面部となる部分の裏面には該曲面より緩やかなU溝が形成され、該熱硬化性樹脂化粧板のU溝が、該上端部の曲面に当接するように、該木質系基材を被覆してなることを特徴とするポストフォーム加工材を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポストフォーム加工材は、基材の曲率に対して緩やかなU溝を形成した化粧板を用いるため1.5Rといった更に小さい曲率でも曲げ加工できる上、充填剤を用いる必要がなく、耐衝撃強度に優れ、クラックが生じることがない。また、端部補強材を用いることでより耐衝撃強度が向上する。用途としてはカウンター材、天板、パネル材などに好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。図1は曲面部となる部分の裏面を切削した熱硬化性樹脂化粧板1の断面図、図2は、木質系基材5の断面図である。木質系基材の側面の上端部、下端部には面取り加工されて曲率(半径)Rmmの曲面が形成されている。
【0010】
熱硬化性樹脂化粧板としては、メタクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの樹脂を注型成形した注型品や、不飽和ポリエステル樹脂を用いてフィルム成形して得られるポリエステル樹脂化粧板、メラミン樹脂化粧板、ジアリルフタレ−ト樹脂化粧板などの化粧板が適用できる。望ましくは、耐汚染性、耐摩耗性にも優れた性能を有し、傷がつきにくい注型品や、メラミン樹脂化粧板を用いるのが好ましい。
【0011】
木質系基材としては、合板、パーティクルボード、MDF(中密度繊維板)、集成材、あるいは、これらを複合化したものなどが適用できる。
【0012】
図3は図1の、図4は図2の要部拡大図であり、熱硬化性樹脂化粧板の裏面には2つの緩やかなU溝3が形成されている。U溝3は熱硬化性樹脂化粧板厚みをtmm、木質系基材の曲面の曲率(半径)をRmmとした時、開口幅wが6〜15mm、曲率r(半径)が10〜60Rmm、最大深さdが1/2〜5/6tmm
となるように切削加工により形成されている。これにより、基材とU溝との間に空隙が生じることなく充填剤を用いる必要がなく、ポストフォーム加工材の曲面が1〜6Rであっても衝撃強度を有するものとなる。また、接着剤のみで基材と熱硬化性樹脂化粧板を接着することができる。
【0013】
開口幅w、曲率(半径)rが下限に満たないと空隙が生じて充填剤を必要とし、その結果耐衝撃強度が劣りやすくなる。上限を超えると、取り扱い中破損しやすくなる。最大深さdが下限に満たないと1.5〜3Rといった小R加工が困難で、上限を超えると、取り扱い中破損しやすくなる。
【0014】
図5は、前記の熱硬化性樹脂化粧板と木質系基材を接着剤を用いて先ず平面部に接着した際の断面図を示す。接着剤としては、通常公知のものであればよく、例えば、
水性ビニールウレタン系の接着剤、ウレタン系の接着剤、酢酸ビニール系の接着剤、ユリア系の接着剤、エポキシ系の接着剤、合成ゴム系の接着剤を用いて貼り合わせればよい。
【0015】
図6は、木質系基材の側面を熱硬化性樹脂化粧板を曲げ加工することにより被覆して得られる本発明のポストフォーム加工材の断面図である。
【0016】
曲率Rが小さければ小さい程、曲げ加工が困難となるためメラミン樹脂化粧板の中でもポストフォーム型メラミン樹脂化粧板を用いるのがとりわけ好ましく、この化粧板は、化粧層、コア層に用いる含浸用樹脂に変性剤を配合して可塑化を付与したものであり、厚みは0.5〜1.2mmで、ポストフォーム性はJIS K 6902に基づく曲げ成形性試験で、170〜210℃の加熱条件で6〜12R曲がるものが好適である。厚みが下限に満たないと取り扱い中破損しやすく、上限を超えると1.5〜3Rといった小R加工が困難となる。加熱温度が210℃を超えると曲げ加工中フクレ、パンクが発生しやすく、170℃未満で曲がるものは強度的に弱く好ましくない。
【0017】
図7は木質系基材5の側面に端部補強材6を接合した芯材7を用いて、前記と同様に製造する概略図である。端部補強材を接合することにより、更に耐衝撃強度が向上する。
【0018】
端部補強材6としては、曲面を形成するための切削加工が可能で、耐衝撃強度に優れり、曲げ加工時の加熱に耐えられる合成樹脂成形品、合成樹脂板などを用いる。具体例を示せば、MMA、不飽和ポリエステル樹脂などによる成形品、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などによる積層板が挙げられる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明について実施例にて詳細に説明する。
実施例1
木質系基材
厚み18mmのパーチクルボードの側面上部及び側面下部にR(半径)1.5mmの曲面を形成した。
熱硬化性樹脂化粧板
厚み0.8mmで、170℃で9Rの曲げ加工用ポストフォーム型メラミン樹脂化粧板を用意し、曲面となる部分の裏面側に開口幅wが12mm r(半径)36.25mm、最大深さdが0.5mmのU溝を形成した。
ポストフォーム加工材
木質系基材に合成ゴム系の接着剤を塗布し、平面部に熱硬化性樹脂化粧板を接着し、180℃で加熱しながら側面を被覆して、実施例1のポストフォーム加工材を得た。
【0020】
実施例2
芯材
厚み18mmのパーチクルボードの側面に厚み10mmのフェノール樹脂積層板を接合し、上部及び下部にR(半径)1.5mmの曲面を形成した。
次いで実施例1と同様に加工して、実施例2のポストフォーム加工材を得た。
【0021】
実施例3
芯材
厚み18mmのパーチクルボードの側面に厚み10mmのフェノール樹脂積層板を接合し、上部及び下部にR(半径)6mmの曲面を形成した。
熱硬化性樹脂化粧板
厚み1.0mmで、190℃で9Rの曲げ加工なメラミン樹脂化粧板を用意し、曲面となる部分の裏面側に開口幅wが15mm、r(半径)56.5mm 最大深さdが0.8mmのU溝を形成した。
次いで実施例2と同様に加工して、実施例3のポストフォーム加工材を得た。

評価結果を表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
試験方法は以下の通りとした。
耐衝撃性;ポストフォーム加工材の曲面部にJIS B 1501の直径19.05mm±0.0015mm、質量28.1gの鋼球を案内導管を使用して自由落下させ、落下点に割れや凹みがあらわれる落球高さを測定。
※案内導管;鋼球自由落下の軌道を一定に案内する為の管。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】U溝を形成した熱硬化性樹脂化粧板の断面図。
【図2】木質系基材の断面図。
【図3】図1の要部拡大図。
【図4】図3の要部拡大図。
【図5】熱硬化性樹脂化粧板と木質系基材を接着剤を用いて先ず平面部に接着した際の断面図。
【図6】ポストフォーム加工材の断面図。
【図7】他の実施形態を示す製造概略図。
【図8】従来の製造概略図。
【符号の説明】
【0025】
1 熱硬化性樹脂化粧板
2 熱硬化性樹脂化粧板
3 U溝
5 木質系基材
6 端部補強材
7 芯材
11 凹部
12 空隙
21 ポストフォーム加工材
22 ポストフォーム加工材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系基材5と熱硬化性樹脂化粧板1とからなるポストフォーム加工材21であって、該木質系基材5の側面の少なくとも上端部には曲面が形成され、該熱硬化性樹脂化粧板の曲面部となる部分の裏面には該曲面より緩やかなU溝3が形成され、該熱硬化性樹脂化粧板のU溝3が、該上端部の曲面に当接するように、該木質系基材5を被覆してなることを特徴とするポストフォーム加工材21。
【請求項2】
木質系基材5と端部補強材6と熱硬化性樹脂化粧板1とからなるポストフォーム加工材22であって、該木質系基材5の側面には該端部補強材6が接合されるとともに該端部補強材6の少なくとも上端部には曲面が形成され、該熱硬化性樹脂化粧板1の曲面部となる部分の裏面には該曲面より緩やかなU溝3が形成され、該熱硬化性樹脂化粧板1のU溝3が、該端部補強材6の曲面に当接するように、該木質系基材5と該端部補強材6を被覆してなることを特徴とするポストフォーム加工材22。
【請求項3】
該熱硬化性樹脂化粧板がポストフォーム型メラミン樹脂化粧板であることを特徴とする請求項1又は2記載のポストフォーム加工材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−83400(P2007−83400A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−271312(P2005−271312)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】