説明

ポリアシル化合物の製造法とその装置

【課題】無触媒条件下、カルボン酸無水物とポリヘテロ水素化物から、アシル化数を調整しながらポリアシル化合物を短時間、連続的に高収率で合成する方法、その装置及びその反応組成物を提供する。
【解決手段】温度100〜400℃、圧力0.1〜40MPaの亜臨界流体、超臨界流体を反応溶媒として使用し、無触媒条件で、流通式高温高圧装置に、基質及び反応溶媒を導入し、温度、カルボン酸無水物量の諸条件を変化させることにより、カルボン酸無水物及びポリヘテロ水素化物からアシル化数を調節してポリアシル化合物を高収率、高速・連続的に合成するポリアシル化合物の製造方法、その装置、及びその反応組成物。
【効果】香料、医薬品、食品等として有用な生体適合性を有するポリアシル化合物組成物を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアシル化合物組成物、その製造方法及び装置に関するものであり、更に詳しくは、高温高圧状態の水あるいは酢酸、それらの混合溶媒を反応溶媒とし、無触媒かつ一段階でポリアシル化合物を製造する方法、その装置及びアシル化合物組成物に関するものである。本発明は、温度100〜400℃、圧力0.1〜40MPaの水あるいは酢酸、それらの混合溶媒を反応溶媒として、触媒無添加で無水カルボン酸とポリヘテロ水素化物からポリアシル化合物を一段階かつ短時間で、連続的に合成する方法及びその反応組成物を提供するものである。ここで、ポリヘテロ水素化物におけるヘテロ原子としては、酸素、窒素、硫黄が挙げられ、それぞれポリオール、ポリアミン、ポリチオールに対応する。
【0002】
ポリアシル化合物は、原料、基質の機能性を改質向上し、更に、付加価値を付与するため、特に、香料、医薬品、食品等の分野において有用である。通常、ポリアシル化合物を合成する場合、従来法では、非プロトン性有機溶媒に加えて酸・塩基触媒が必要であり、例えば、食品、医薬品に利用される場合、残存する有機溶媒、触媒は、その除去に大きな労力を必要とし、また、環境に影響を与えるのみならず生体に有害である等の問題点を有していた。本発明は、無水カルボン酸とポリオール、ポリアミン、ポリチオール等のポリヘテロ水素化物から、無触媒で、水を用いるプロセスのみでポリアシル化合物を合成する方法、その装置及びその反応組成物を提供するものであり、香料、医薬品や食品のみならず、化成品合成にも応用可能であり、ポリアシル化合物を効率良く、短時間で、大量に生産し、提供することを可能にするものである。
【背景技術】
【0003】
従来、無水カルボン酸とポリヘテロ水素化物、ポリオール、ポリアミン、ポリチオール等からポリアシル化合物を合成する方法が種々報告されている(例えば、非特許文献1)。ここで、ポリオールと無水カルボン酸からポリアシル化合物を合成する技術を完成すれば、通常はポリアミンやポリチオール等の他のポリヘテロ水素化物からポリアシル化合物を合成することが可能となるため、特に、ポリアルコールからポリアシル化合物を合成する技術の報告例は非常に多い。ところが、従来法では、すべてのヘテロ水素をポリアシル化する方法のみであり、アシル化数を調整しながら選択的にポリアシル化する方法は報告されていない(図1)。図1で、R、R、Rn+1はアルキル基及びアルキル基以外のヘテロ原子を含む置換基、Qはヘテロ原子又は置換ヘテロ原子であり、具体的には、酸素(O)、硫黄(S)、窒化水素(NH)、アルキル置換窒素(NR’)、である。先行技術文献によれば、ポリアシル化合物の合成法では、例えば、無溶媒あるいは非プロトン性有機溶媒中、触媒として、CoCl(非特許文献4)、MeSiCl(非特許文献5のa)及びb))、塩基であるBuP(非特許文献6)、ピリジン(非特許文献8)等が使用されてきた。また、安定なアシル中間体形成を経由することでアシル基を活性化するDMAPの発見及びその応用は、革新的な技術とされた(特許文献9のa)及びb))。
【0004】
ところが、DMAPは、1等量以上のアミンを利用することから、ルイス酸である金属トリフラートが提案され、MeSiOTf(非特許文献10)、Sc(OTf)(特許文献1、2及び非特許文献11)、In(OTf)(非特許文献12)、Bi(OTf)(非特許文献13)、Sc(NTf)(非特許文献14)、が高収率でポリアシル化合物を与えることが示された。更に、V(OTf)が触媒活性を示さないが、そのオキソ化合物であるV(O)(OTf)が触媒活性があることが見出され、V=Oの触媒活性化が注目された(特許文献3、非特許文献15)。これらの触媒により、1,2級アルコールから95%以上の収率で、また、3級アルコールから80%以上の収率で、ポリアシル化合物が得られると報告されている(図1)。
【0005】
ここで、上記の先行技術文献では、有機塩基、ルイス酸、固体酸のような触媒に加えて、有機溶媒がポリアシル化にとって必要不可欠である。また、高温条件では不純物が生成し、選択率を低下させるという理由から、アシル化は常温で行うのが最適であり、高温条件は不適であるとされている(特許文献1、2)。一方、アシル化における溶媒としての水の可能性に関しては、水を除去した粗生成物にアシル化剤を添加し、アシル化する方法が一般的であり、水は負の効果をもたらすとされており(特許文献4)、ある特許文献では、溶媒として水を列挙しているが、実際には使用されていない(特許文献1、2)。
【0006】
ところが、アルドール反応に対する触媒活性と水中でのルイス酸の安定性との相関を元素ごと系統的に比較検討し、他の反応への適用可能性を示唆した例も存在する(非特許文献16)。更に、Bi(OTf)が触媒の場合には、脱水処理をしていない水を含有する、湿った有機溶媒が反応を促進し、収率向上が観察された文献も存在する(非特許文献13)。したがって、アシル化に対する溶媒としての水の有効性はこれまで明確ではなく、水の使用は実施されなかった。他方、Bi(OTf)を触媒とする場合の無溶媒条件では、収率が低下し、有機溶媒が必要であると報告されている(非特許文献13)。
【0007】
反応後における後処理は、通常の触媒・有機溶媒中でのアシル化では、反応混合物に中和剤を添加して中和後、抽出溶媒と水あるいは飽和食塩水を加え、分液し、溶媒層は、その後乾燥、溶媒除去、蒸留あるいは精留のプロセスを得て目的物を得るが、水層には、水の他に、触媒、有機溶媒、酢酸、基質、生成物、副生成物、無機物の複雑な反応系成分の混合物が含有される。ここで、水層からの触媒の分離が容易である場合には、回収再生され、再使用されるが、分離が困難である場合には、そのまま廃棄・処分される(図2)。無触媒・高温高圧水中でのアシル化の場合のように、水層に触媒、有機溶媒が含有されず、水、酢酸、生成物のみが含有されるならば、生成物をデカンテーションにより分離後、水層に対して共沸混合物を形成する物質を添加した共沸蒸留を行うことで、水と氷酢酸とに分離することが可能である(特許文献5)。このことは、この方法は、水の再生を可能にし、通常法に比べて環境低減型のプロセスであることを意味する(図3)。
【0008】
【特許文献1】特開平9−169690号公報
【特許文献2】特開平9−176081号公報
【特許文献3】米国特許第6,541,659号明細書
【特許文献4】米国特許第6,005,122号明細書
【特許文献5】米国特許第5,980,696号明細書
【非特許文献1】W. Green, P. G. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd ed., Wiley, New York, 1999, p150
【非特許文献4】S. Ahmad, J. Iqbal, Chem. Commun.,1987, 114
【非特許文献5】a) N. C. Braus, R. P. Sharma, J.N. Baruah, Tetrahedron Lett., 1983, 24, 1189; b) J. Org. Chem., 1987, 52, 503
【非特許文献6】E. Vedejs, N. S. Bannet, L. M. Conn, S. T. Diver, J.Org. Chem., 1993, 58, 7286
【非特許文献8】Joseph B. Lambert, Gen Tai Wang, Rodney B. Finzel, and Douglas H. Teramura , J. Am. Chem. Soc., 1987, 109. 7838
【非特許文献9】a) G. Hofle,W. Steglich, H. Vorbruggen., Angrew. Chem. Int. Ed., 1978, 17, 569、b) A. Hassner, L. R. Krepski, V. Alexanian, Tetrahedron, 1978, 34, 2069
【非特許文献10】P. A. Procopiu, S. P. D. Baugh,S. S. Flack, G. G. A. Inglis, J.Org., Chem., 1998, 63, 2342
【非特許文献11】a) K. Ishihara, M. Kubota, H. Kurihara, H. Yamamoto, J. Org. Chem., 1996, 61, 4560、b) K. Ishihara, M. Kubota, H. Kurihara, H. Yamamoto, J. Am.Chem. Soc., 1995, 117, 4413
【非特許文献12】K. K. Chauhan, C. G. Frost, I. Love, D. Waite, Synlett, 1999, 1743
【非特許文献13】J. Otera, A. Orita, C. Tanahashi, A. Kakuta, Angrew. Chem. Int. Ed., 2000, 39, 2877
【非特許文献14】K. Ishihara, M. Kubota, Synlett, 1996, 265
【非特許文献15】C-T. Chen, J-H. Kuo, C-H. Li, N. B. Barhate, S-W. Hon, T-W. Li, S-D. Chao, C-C. Liu, Y-C. Li, I-H. Chang, J-S. Lin, C-J. Liu and Y-C. Chou, Org. Lett., 2001, 3, 3729
【非特許文献16】S. Kobayashi, S.Nagayama, T.Busujima, J. Am. Chem. Soc., 1998, 120, 8287
【0009】
このように、従来法では、アシル化の場合、触媒及び有機溶媒が必要であるため、製品の品質上、反応後の分離操作において、触媒、有機溶媒やカルボン酸の除去が必要であり、分離操作後の水層は廃棄物となりやすく廃液の問題を生じる。更に、環境に対する影響や生体への有害性への配慮から、また、ヒトが経口する食品・医薬品の安全性から、触媒・有機溶媒のより高度分離が要求される。これらの高度分離に必要なコストは、合成操作と同程度であり、望ましくは触媒と有機溶媒を使用しない方が良い。以上のことから、当該技術分野においては、簡単、低コスト、環境低減型の合成プロセスで、分離操作が容易かつ反応系成分の高度分離が可能で、触媒や有機溶媒の残存しない生体適合性を有するアシル化合物の連続的合成を可能とする合成手法が強く要請されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、低コストで、環境に優しい簡単な高速合成プロセスで、上記ポリアシル化合物を連続的に合成することができる新しい合成方法を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、高温高圧水、又は亜臨界水、又は超臨界水を反応溶媒とすることで、無触媒で無水カルボン酸とポリヘテロ水素化物からポリアシル化合物を選択的に合成できることを見出し、更に研究を重ねて、本発明を完成するに至った。本発明は、無水カルボン酸とポリヘテロ水素化物からポリアシル化合物を無触媒で、短時間の反応条件下で連続的に合成する方法、その装置及びその反応組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明は、無水カルボン酸とポリヘテロ水素化物との反応で合成される反応組成物において、触媒及び有機溶媒の残存がなく、生体適合性を有することを特徴とするポリアシル化合物組成物、である。このポリアシル化合物組成物は、カルボン酸無水物とポリヘテロ水素化物からの反応物であり、触媒、有機溶媒の残存がなく、生体適合性を有することを特徴としている。また、本発明は、無水カルボン酸とポリヘテロ水素化物からポリアシル化合物を合成する方法において、高温高圧状態の亜臨界流体ないし超臨界流体を反応溶媒として使用し、触媒及び有機溶媒を用いることなく、無水カルボン酸とポリヘテロ水素化物からポリアシル化合物を選択的、連続的に合成することを特徴とするものである。ここで、上記ポリヘテロ水素化物におけるヘテロ原子又は置換ヘテロ原子は、酸素(O)、硫黄(S)、窒化水素(NH)、又はアルキル置換窒素(NR’)であることを好ましい態様としている。また、本発明は、基質の複数の反応点に隣接する1級、2級、3級の骨格に依存して、温度と無水カルボン酸の量を調整することにより、1級、2級、3級の順にアシル化し、アシル化数を調節し、ポリアシル化合物を選択的に合成するポリアシル化合物の製造方法、である。
【0012】
また、本発明の方法は、(1)高温高圧状態の亜臨界ないし超臨界流体を反応溶媒とし、有機溶媒及び触媒を用いることなく、カルボン酸無水物とポリヘテロ水素化物から一段階の合成反応でポリアシル化合物を選択的に合成すること、(2)高温高圧状態の亜臨界ないし超臨界流体を反応溶媒とすること、(3)温度100〜400℃、圧力0.1〜40MPaの亜臨界流体ないし超臨界流体を反応溶媒として使用すること、(5)亜臨界流体ないし超臨界流体として、水、酢酸、それ以外の無機溶媒、もしくは有機溶媒、又は無機溶媒と有機溶媒の混合溶媒を用いること、(6)流通式高温高圧装置に、基質及び反応溶媒を導入し、反応時間を3〜60秒の範囲で変化させることで合成反応を実施すること、を好ましい態様としている。
【0013】
また、本発明は、水を送液する水送液ポンプ、水加熱用コイル、高温高圧フローセル、基質を送液する反応物送液ポンプ、炉体、反応物を炉体に導入する反応物導入管、反応溶液を排出する排出液ライン、冷却フランジ及び圧力を設定する背圧弁を具備していることを特徴とするポリアシル化合物合成装置、である。更に、本発明は、上記方法によりアシル化後、回収水溶液に水を注入してデカンテーションし、油/水二層溶液に分離後、ポリアシル化合物を含む油層を分液回収する一方、水層からは酢酸と水を共沸蒸留によって分離し、回収することを特徴とする反応系成分の簡易な連続分離法、である。
【0014】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、ポリアシル化合物の合成において、化1のカルボン酸無水物と化2のポリヘテロ水素化物から、化3に示すように、ポリアシル化合物を、一段階の反応プロセスで、触媒無添加、短時間の反応条件下で、選択的かつ連続的に合成することを特徴とするものである。本発明では、上記反応の溶媒として、温度100〜400℃、圧力0.1〜40MPaの亜臨界流体、超臨界流体が用いられ、好適には亜臨界水が用いられる。また、反応条件として、好適には、温度200〜250℃、圧力5MPa、反応時間が60秒以下、好適には3〜60秒の範囲であり、反応時間は、より好適には10秒程度に調整される。化1の式中、Rはアルキル基及びアルキル基以外のヘテロ原子を含む置換基であり、化2の式中、R、Rn+1はアルキル基及びアルキル基以外のヘテロ原子を含む置換基、Qはヘテロ原子又は置換ヘテロ原子であり、具体的には、酸素(O)、硫黄(S)、窒化水素(NH)、アルキル置換窒素(NR’)、であり、x,y,zはそれぞれα位が1級、2級、3級であるヘテロ原子の個数を示し、1級、2級、3級の結合順序は限定するものではないため点線で結合を示している。化3はα位が1級のみであってx個のポリアシル化を示し、化4はα位が1,2級の場合の(x+y)個のポリアシル化を、化5はα位が1,2,3級の場合に対する(x+y+z)個のポリアシル化を示す。
【0015】
【化1】

【0016】
【化2】

【0017】
【化3】

【0018】
【化4】

【0019】
【化5】

【0020】
本発明においては、上記基質及び反応溶媒を反応容器に導入して、所定の反応時間で合成反応を実施するものである。したがって、上記反応器としては、例えば、バッチ式の高温高圧反応容器、及び連続型の流通式高温高圧反応装置を使用することができるが、本発明は、これら反応装置の型式に特に制限されるものでない。
【0021】
本発明の方法では、反応溶媒として、上記高温高圧状態にある亜臨界流体、超臨界流体が用いられるが、具体的には、亜臨界二酸化炭素(常温以上、0.1MPa以上)、亜臨界水(100℃以上、0.1MPa以上)、亜臨界メタノール(100℃以上、0.1MPa以上)、亜臨界エタノール(100℃以上、0.1MPa以上)、超臨界二酸化炭素(34℃以上、7.38MPa以上)、超臨界水(375℃以上、22MPa以上)、超臨界メタノール(239℃以上、8.1MPa以上)、超臨界エタノール(241℃以上、6.1MPa以上)、同じ状態の混合溶媒が例示され、好適には、亜臨界水(200−250℃、5MPa以上)が用いられる。反応溶媒としては、上記以外の有機溶媒や無機溶媒を任意の割合で含むことができ、具体的には、有機溶媒として、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等を含む反応溶液、また、無機溶媒として、酢酸、アンモニア等を含む反応溶液に代替することも可能である。
【0022】
本発明では、上記亜臨界流体、超臨界流体の反応溶媒の組成、温度及び圧力条件、基質の種類及びその使用量、反応時間を調整することにより、短時間で、効率良く、反応生成物を合成することができる。また、本発明では、例えば、基質及び反応溶媒を流通式高温高圧装置に導入し、それらの反応時間を60秒以下、好適には3〜60秒の範囲で変えることにより、所定の反応生成物を合成することができる。上記反応条件は、使用する出発原料、目的とする反応生成物の種類等により適宜設定することができる。
【0023】
本発明の方法では、従来、触媒存在下で行われていた、カルボン酸無水物とポリヘテロ水素化物からのポリアシル化合物の合成を、高速で連続的に、しかも、無触媒で実施できるため、長時間を要するプロセスを効率化することができる。また、本発明の方法では、従来用いられていた触媒を全く使用しないので、反応後の溶液の中和処理、無害化処理等の後処理・処分の必要がなく、環境負荷低減を達成可能である。更に、反応後の分離プロセスは静置分離操作のみであるため、触媒や有機溶媒の分離回収の必要性はなく、生成物分離が容易になる。本発明によれば、触媒無添加で、10秒程度の短時間で、基質がジオールの場合、モノアシル化合物が転化率85%以上、選択率65%以上で、ジアシル化合物が転化率99%以上、選択率93%以上で、基質がトリオールの場合、モノアシル化合物が転化率91%以上、選択率59%以上で、ジアシル化合物が転化率93%以上、選択率25%以上で、トリアシル化合物が転化率100%、選択率93%以上で、それぞれ対応するポリアシル化合物を合成することができる。本発明のポリアシル化合物の合成方法は、香料、医薬品、食品に利用可能な、生体適合性を有するポリアシル化合物組成物を効率良く、大量に高速で連続的に生産することを可能にするものとして有用である。
【0024】
従来、二酸化炭素等の亜臨界流体、超臨界流体を利用して、リパーゼや触媒を用いてアシル化を実施した例が報告されている。しかし、亜臨界水を溶媒とした無触媒条件下で基質の複数の反応点に隣接する1級、2級、3級の骨格に依存して、温度と無水カルボン酸の量を調整することにより、1級、2級、3級の順にアシル化し、アシル化数を調節し、ポリアシル化合物を選択的に合成することを実証した例はなく、本発明の対象とするポリアシル化合物の選択的合成反応法は、本発明者らによって初めてその有効性が実証されたものである。しかも、従来法でカルボン酸無水物とポリヘテロ水素化物から合成されるポリアシル化合物は、触媒及び有機溶媒の残存が問題とされていたが、本発明でカルボン酸無水物とポリヘテロ水素化物から合成される反応組成物は、触媒及び有機溶媒の残存がなく、生体適合性を有しており、本発明のポリアシル化合物組成物は、従来製品にない利点を有している。
【0025】
本発明では、無触媒条件で無水カルボン酸とポリヘテロ水素化物の合成反応を実現するために、例えば、基質をあらかじめ溶媒に溶解した溶液を送液し、亜臨界流体、超臨界流体中の反応経過を、高温高圧赤外フローセル(図4)により赤外分光分析によって観察する流通型高温高圧赤外分光その場測定装置(図5)を用いることも可能である。しかしながら、高温高圧赤外フローセルを窓なし高温高圧フローセル(図6)に交換し、超臨界流体の流れに対して直接反応物の流れを接触反応するように配管配置した方が、高温高圧赤外フローセルにおけるセル窓付近におけるリーク等の問題が発生せず、より高流量で短時間に合成を実施することが可能である。これらのことから、後記する実施例では、この窓なし高温高圧フローセルを装着した装置を用いた。
【0026】
ここで、窓なし高温高圧フローセル本体(図6)は、例えば、市販のSUS316製のクロス1にネジを切り、次に説明する温度センサーシース(図7の12)に固定できるようにすることで構築することができる。炉体雰囲気の温度を測定せずに、セル温度を示すように温度センサー位置を調節し、シース固定ネジとオネジ3でネジ止めする。SUS316の配管4はクロス1にワンリングフェラル付きのテーパーネジ2でクロス1に接続される。もちろん、クロス1は、エンドネジで一つの流路を塞ぐことによってティーとしても使用可能である。
【0027】
図7は、窓なし高温高圧フローセルを装着した流通式高温高圧反応装置の炉体部分であり、反応装置本体である。これを、図5の流通型高温高圧流体その場赤外分光測定装置の斜線位置に設置すれば、赤外分光は測定できないものの、温度、圧力、流量が可変な亜臨界・超臨界流体接触型の合成反応装置として利用可能となる。なお、この場合における反応観察は、排出後の水溶液を採取し、GC−FIDにより、生成物の純品を用いた検量線から定量分析を実施し、GC/MSにより定性分析を実施して行うことができる。また、NMRにより定量・定性分析を実施することができる。
【0028】
次に、図7の流通式高温高圧反応装置本体について説明すると、水送液ポンプ5から水が送液され、冷却フランジ8を通過後、炉体13へ送液される。管コイル9を通過後、高温高圧状態で温度センサー11が挿入された温度センサーシース12に支持固定された高温高圧フローセル14に導入される。一方、反応物が反応物送液ポンプ6から送液され、冷却フランジ8を通過後、炉体13へ送液される。コイル状反応物導入管10を通過後、温度センサーシース12に固定された高温高圧フローセル14に導入される。また、洗浄水がポンプ7により送液され、配管16を通過後、ティー18に導入され、洗浄用に用いられる。高温高圧フローセルを通過した溶液は、配管17を通過後、冷却フランジ8を通過して、炉体外を空冷されながら通過する。その後、圧力を設定している背圧弁19からの排出液を採取し、サンプルとする。ここで、反応物や生成物を含む排出液の加熱による影響を排除する場合には、急速昇温を実施し、反応物導入ライン10と排出液ライン17の配管をできるだけ短く、水加熱用コイル9をできるだけ長くすることが望ましい。本発明は、これらに限らず、これらと同効の反応装置であれば同様に使用することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)カルボン酸無水物とポリヘテロ水素化物から高速で連続的にポリアシル化合物を合成することができる。
(2)アシル化数を調節し、ポリアシル化合物を選択的に合成することができる。
(3)触媒及び有機溶媒を用いないポリアシル化合物の合成プロセスを実現できる。
(4)そのため、触媒及び有機溶媒の残存がなく、生体に対して有害性のない安全性の高い生体適合性ポリアシル化合物組成物を提供できる。
(5)生成物が水に溶解しない場合には、排出された油水分散水溶液に対して更に水を注入することで、洗浄しつつ油水二層に分液し、高純度の生成物を容易に回収できる。
(6)香料、医薬品、食品として有用な生体適合性を有するポリアシル化合物の新しい大量生産プロセスとして、既存の生産プロセスに代替し得る新しい生産技術を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0031】
実施例1〜4
本実施例では、合成条件を、無触媒、所定温度、圧力5MPa、滞留時間9.9秒の条件で一定としてα位の骨格が同じジオールについて検討した。図7の流通式高温高圧反応装置の本体(主要部分)を図5の流通型高温高圧流体その場赤外分光測定装置に設置した装置に、まず、純水を流量5.0ml/minで送液し、所定温度、圧力5MPaに設定し、亜超臨界水とした。その後、トルエンを内標準として添加した(基質の5mol%)、無水酢酸/基質/酢酸(モル比:1.1/1/0.5〜1)混合溶液0.5ml/minをポンプで送液した(混合後の水溶液濃度:0.26〜0.53mol/kg)。
【0032】
基質送液後、40分後の背圧弁からの排出水溶液を1ml採取した。加熱炉から背圧弁出口までの配管内容積を反応体積とした場合、反応時間は9.9秒であった。回収された1mlの水溶液に1mlのアセトンを加え振とうし、組成をGC/MS分析計(Hewlett Packard社製HP6890、カラムHP−5、注入口温度150℃、初期カラム温度60℃(保持時間2分)、昇温速度10℃/分、最終カラム温度250℃(保持時間2分))で実施し、得られたマススペクトルはWilleyデータベースで一致度90%以上で確認した。また、定量及び市販試薬がある場合の定性は、トルエンを内標準としてGC−FID(Agilent社製GC6890,カラムDB−WAX、注入口温度230℃、スプリット比5.61、初期カラム温度50℃(保持時間0.5分)、昇温速度20℃/分、最終カラム温度230℃(保持時間3分))で実施した。
【0033】
表1に、α位の骨格が同じジオールの場合のポリアシル化の結果を示す。カテコール(1)の場合、モル比が無水酢酸/1/酢酸=1.1/1/0.5、温度225℃で、転化率85%、モノアセテート(1a)が選択率65%で得られた。また、モル比が無水酢酸/1/酢酸=2.2/1/1.0、温度225℃で、転化率100%、ジアセテート(1b)が選択率93%で得られた(表1、実施例1,2)。一方、エチレングリコール(2)の場合、モル比が無水酢酸/2/酢酸=1.1/1/0.5、温度200℃で、転化率36%、ジアセテート(2b)が選択率100%で得られ、モノアセテート(2a)は得られなかった。また、モル比が無水酢酸/2/酢酸=2.2/1/1.0で、200℃の温度で、転化率99%、ジアセテート(2b)が選択率100%で得られた(表1、実施例3,4)。
【0034】
【表1】

【0035】
得られた生成物水溶液は油水分散状態で白濁しているが、水を20ml/minで3分注入し、デカンテーションすると油水2層溶液となり、下層の油層に酢酸を含まない酢酸ベンジルを、上層の水相に酢酸水溶液を得た(GCにより確認)。このことは、生成物が水に溶解しない場合、反応終了後の油水分散水溶液に、水を更に注入することで、油水二層に変化してポリアシル化合物と酢酸水溶液を分液することができることを示している。酢酸水溶液は、触媒や有機溶媒を含まないため、酢酸と共沸化合物を作る化合物(例えば、酢酸ターシャリーブチル等)を添加することにより、共沸蒸留により水と氷酢酸に分留することができるため、膨大なエネルギーを必要とする精留を実施しなくても良い。
【0036】
実施例5−10
本実施例では、合成条件を、無触媒、所定温度、圧力5MPa、滞留時間9.9秒の条件で一定としてα位の骨格が異なるジオールについて検討した。図7の流通式高温高圧反応装置の本体(主要部分)を図5の流通型高温高圧流体その場赤外分光測定装置に設置した装置に、まず、純水を流量5.0ml/minで送液し、所定温度、圧力5MPaに設定し、亜超臨界水とした。その後、トルエンを内標準として添加した(基質の5mol%)、無水酢酸/基質/酢酸(モル比:1.1/1/1〜2)混合溶液0.5ml/minをポンプで送液した(混合後の水溶液濃度:0.26〜0.53mol/kg)。
【0037】
基質送液後、40分後の背圧弁からの排出水溶液を1ml採取した。加熱炉から背圧弁出口までの配管内容積を反応体積とした場合、反応時間は9.9秒であった。回収された1mlの水溶液に1mlのアセトンを加え振とうし、組成をGC/MS分析計(Hewlett Packard社製HP6890、カラムHP−5、注入口温度150℃、初期カラム温度60℃(保持時間2分)、昇温速度10℃/分、最終カラム温度250℃(保持時間2分))で実施し、得られたマススペクトルはWilleyデータベースで一致度90%以上で確認した。また、定量及び市販試薬がある場合の定性は、トルエンを内標準としてGC−FID(Agilent社製GC6890,カラムDB−WAX、注入口温度230℃、スプリット比5.61、初期カラム温度50℃(保持時間0.5分)、昇温速度20℃/分、最終カラム温度230℃(保持時間3分))で実施した。
【0038】
表2に、α位の骨格が異なるジオールとグリセリンの場合のポリアシル化の結果を示す。アルコールのα位が1級、2級を同時に持つ、1,3ブタンジオール(3)の場合、モル比が無水酢酸/3=1.1/1、温度225℃の温度、転化率94%、モノアセテート(3a)が選択率72%で得られた。また、モル比が無水酢酸/3=2.2/1、温度225℃の温度、転化率99.9%、ジアセテート(3b)が選択率99.9%で得られた(表2、実施例5,6)。一方、アルコールのα位が1級、3級を同時に持つ1−メチル−1,3−ブタンジオール(4)の場合、モル比が無水酢酸/4=1.1/1、温度200℃で、転化率99.8%、モノアセテート(4a)が選択率86%で得られた(表2,実施例7)。また、モル比が無水酢酸/4=2.2/1、温度200℃で、転化率99%、ジアセテート(4b)が選択率64%で得られた(表2、実施例8)。ここで、モル比が無水酢酸/4=2.2/1、温度を225℃にした場合、転化率94%、ジアセテート(4b)が選択率74%に向上した(表2、実施例9)。更に、モル比が無水酢酸/4=5.1/1、温度200℃で、転化率99%、ジアセテート(4b)が選択率99.7%で選択的に得られた(表2、実施例8)。
【0039】
実施例11〜14
本実施例では、合成条件を、無触媒、所定温度、圧力5MPa、滞留時間9.9秒の条件で一定としてα位の骨格が異なる1級、2級を合わせもつトリオールであるグリセリン(5)について検討した。図7の流通式高温高圧反応装置の本体(主要部分)を図5の流通型高温高圧流体その場赤外分光測定装置に設置した装置に、まず、純水を流量5.0ml/minで送液し、所定温度、圧力5MPaに設定し、亜超臨界水とした。その後、トルエンを内標準として添加した(基質の5mol%)、無水酢酸/基質/酢酸(モル比:1.1/1/1〜3)混合溶液0.5ml/minをポンプで送液した(混合後の水溶液濃度:0.26〜0.53mol/kg)。
【0040】
基質送液後、40分後の背圧弁からの排出水溶液を1ml採取した。加熱炉から背圧弁出口までの配管内容積を反応体積とした場合、反応時間は9.9秒であった。回収された1mlの水溶液に1mlのアセトンを加え振とうし、組成をGC/MS分析計(Hewlett Packard社製HP6890、カラムHP−5、注入口温度150℃、初期カラム温度60℃(保持時間2分)、昇温速度10℃/分、最終カラム温度250℃(保持時間2分))で実施し、得られたマススペクトルはWilleyデータベースで一致度90%以上で確認した。また、定量及び市販試薬がある場合の定性は、トルエンを内標準としてGC−FID(Agilent社製GC6890,カラムDB−WAX、注入口温度230℃、スプリット比5.61、初期カラム温度50℃(保持時間0.5分)、昇温速度20℃/分、最終カラム温度230℃(保持時間3分))で実施した。
【0041】
その結果、モル比が無水酢酸/5/酢酸=1.1/1/1、温度200℃で、転化率91%、モノアセテート(5a)が選択率59%で得られ、温度225℃で、転化率93%、モノアセテート(5a)が選択率52%で得られた(表2、実施例11、実施例12)。また、モル比が無水酢酸/5/酢酸=2.2/1/2、温度225℃で、転化率98%、ジアセテート(5b)が選択率25%で得られた(表2、実施例13)。更に、モル比が無水酢酸/5/酢酸=3.3/1/3、温度225℃で、転化率100%、トリアセテート(5c)が選択率96%で得られた(表2、実施例14)。
【0042】
【表2】

【0043】
以上の実施例から、高温高圧水を反応溶媒として、無触媒でポリアシル化合物が高収率で合成可能であることが明らかとなった。また、アシル化後、回収水溶液に水を注入してデカンテーションし、油/水二層溶液に分離後、ポリアシル化合物を含む油層を分液回収する一方、水層からは酢酸と水を共沸蒸留によって分離し、回収する簡易な連続分離法も実施可能であることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上詳述したように、本発明は、カルボン酸無水物及びポリヘテロ水素化物から有機溶媒を用いることなく、高温高圧流体を反応溶媒として、無触媒でポリアシル化合物を合成する方法、及び温度と無水カルボン酸の量を調整することにより、1級、2級、3級の順にアシル化してアシル化数を調節し、ポリアシル化合物を選択的に合成する方法、その装置及びその反応組成物に係るものであり、従来法では、ポリヘテロ水素化物とカルボン酸無水物からポリアシル化合物の合成は、有機溶媒に触媒を添加し、数時間の反応を行い、すべてアシル化するため、アシル化数を調整できなかったが、本発明では、亜臨界流体、超臨界流体を用いることにより、触媒無添加で、有機溶媒を使用することなく高速で連続的に選択的にポリアシル化合物を合成することが可能である。このことは、香料、医薬品、食品として有用な生体適合性を有するポリアシル化合物を短時間で、大量に連続的に生産できるというメリットをもたらす。また、アシル化後、回収水溶液に水を注入してデカンテーションし、油/水二層溶液に分離後、ポリアシル化合物を含む油層を分液回収する一方、水層からは酢酸と水を共沸蒸留によって分離し、回収する反応系成分の簡易な連続分離法により、氷酢酸と水を分離し、水をリサイクルすることが可能である。これらのことから、本発明では、合成・分離プロセスを単純化させることで、プロセスの初期コスト及びランニングコストを圧縮することが可能である。更に、中和処理の後処理も不必要であり、環境調和型生産が可能となる。本発明は、例えば、香料、医薬品、食品として有用な生体適合性を有するポリアシル化合物の新しい大量生産プロセスとして、既存の生産プロセスに代替し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】触媒・有機溶媒用いるポリヘテロ水素化物のアシル化を示す。
【図2】触媒・有機溶媒を用いるアシル化の後処理フローチャートを示す。
【図3】無触媒・水溶媒を用いるアシル化の後処理フローチャートを示す。
【図4】高温高圧赤外フローセルを示す。
【図5】実施例で用いた流通型高温高圧流体その場赤外分光測定装置を示す。
【図6】窓なし高温高圧フローセルを示す。
【図7】実施例で用いた流通式高温高圧反応装置の主要部分を示す。
【符号の説明】
【0046】
1 ティー又はクロス(片側口φ4mmネジ切り)
2 φ4mm×5.0mmL六角ネジ
3 ワンリングフェラル付オネジ
4 SUS316チューブ
5 水送液ポンプ
6 反応物送液ポンプ
7 洗浄水送液ポンプ
8 冷却フランジ(冷却水が循環する)
9 水加熱コイル
10 反応物導入管
11 温度センサ
12 温度センサーシース
13 炉体
14 高温高圧フローセル(通常昇温ではティー型、急速昇温ではクロス型)
15 ZnSe窓
16 溶媒導入管
17 排出配管
18 ティー
19 背圧弁
21 水溶液
22 洗浄水
23 水溶液ポンプ
24 洗浄用純水送液ポンプ
25 炉体加熱システム
26 炉体
27 高温高圧赤外フローセル
28 冷却水(入口)
29 冷却水(出口)
30 背圧弁
31 排出水溶液受器
32 可動鏡
33 可動鏡
34 干渉計
35 光源
36 赤外レーザー
37 MCT受光器
38 TGS受光器
39 解析モニター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水カルボン酸とポリヘテロ水素化物との反応で合成される反応組成物において、触媒及び有機溶媒の残存がなく、生体適合性を有することを特徴とするポリアシル化合物組成物。
【請求項2】
無水カルボン酸とポリヘテロ水素化物からポリアシル化合物を合成する方法において、高温高圧状態の亜臨界ないし超臨界流体を反応溶媒として使用することを特徴とするポリアシル化合物の製造方法。
【請求項3】
上記方法において、触媒を用いることなく、無水カルボン酸とポリヘテロ水素化物から一段階の合成反応でポリアシル化合物を選択的に合成する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ポリヘテロ水素化物におけるヘテロ原子又は置換ヘテロ原子が、酸素(O)、硫黄(S)、窒化水素(NH)、又はアルキル置換窒素(NR’)である、請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
基質におけるヘテロ水素基に隣接するα位の置換数に対応して、温度と無水カルボン酸の量を調整することにより、無置換(1級)、一置換(2級)、二置換(3級)の順にアシル化しつつアシル化数を調節し、ポリアシル化合物を選択的に合成する、請求項2又は3記載の方法。
【請求項6】
温度100〜400℃、圧力0.1〜40MPaの亜臨界流体ないし超臨界流体を反応溶媒として使用する、請求項2又は3記載の方法。
【請求項7】
亜臨界流体ないし超臨界流体として、水、酢酸、それ以外の無機溶媒、もしくは有機溶媒、又は無機溶媒と有機溶媒の混合溶媒を用いる、請求項2又は3記載の方法。
【請求項8】
流通式高温高圧装置に、基質及び反応溶媒を導入し、反応時間を3〜60秒の範囲で変化させることで合成反応を実施する、請求項2又は3記載の方法。
【請求項9】
水を送液する水送液ポンプ、水加熱用コイル、高温高圧フローセル、基質を送液する反応物送液ポンプ、炉体、反応物を炉体に導入する反応物導入管、反応溶液を排出する排出液ライン、冷却フランジ及び圧力を設定する背圧弁を具備していることを特徴とするポリアシル化合物合成装置。
【請求項10】
請求項2又は3に記載の方法によりアシル化後、回収水溶液に水を注入してデカンテーションし、油/水二層溶液に分離後、ポリアシル化合物を含む油層を分液回収する一方、水層からは酢酸と水を共沸蒸留によって分離し、回収することを特徴とする反応系成分の簡易な連続分離法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−210911(P2007−210911A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30326(P2006−30326)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】