説明

ポリアゾ化合物の製造方法

【課題】新規なポリアゾ化合物を高純度、高収率で製造する方法を提供する。
【解決手段】酸性及びアルカリ性の両条件下にて2回カップリング可能な化合物に対し、酸性カップリング側にナフトール骨格を導入するにあたり、水酸基をスルホニル基にて保護されたアミノナフトール類のジアゾ化合物を用い、その後、複数の工程を経て前記スルホニル基を加水分解することにより新たにカップリング可能部位ができ、更にポリアゾ化されることを特徴とする、遊離酸の形で下記一般式(1)で表される化合物の製造方法。


(式中、Rは水素原子、アルキル基又は置換されていても良いフェニル基を、X及びYはスルホ基を、A、Bはそれぞれ独立に置換されていても良いフェニル基、ナフチル基、アゾ基に炭素原子で結合する5員もしくは6員の芳香族複素環基、又はモノアゾ基を、m、nは0又は1を、a、bは単結合をそれぞれ表す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリアゾ化合物の製造法に関し、更に詳しくは繊維染色用及びインクジェット紙用色素として有用なポリアゾ化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアゾ化合物の製造法に付いては古くから種々の方法が知られており、中でも本発明方法のような酸性カップリングとアルカリ性カップリングを同一分子上で行う事により得られるポリアゾ化合物の例としてはカラーインデックス(第3版、第4巻)によれば、下記に示すポリアゾ化合物の製造ルートの説明図にあるようなタイプが挙げられ、それぞれのタイプに多数のポリアゾ化合物が抄録されている。
【0003】
【表1】

【0004】
また、(1)−1)の製造ルートとしては例えば特許文献1〜3、(1)−2)の製造ルートとしては例えば特許文献4、5、(2)−1)の製造ルートとしては例えば特許文献6が、(2)−2)の製造ルートとしては例えば特許文献7〜9で報告されている。
何れも酸性条件下とアルカリ性条件下で2回カップリングする化合物例としては、一般式(13)
【0005】
【化9】

【0006】
(式中、Rはアルキル基または置換フェニル基を表し、p、qは0又は1である)
で示されるナフタレン核に水酸基とアミノ基が置換されているもののみ知られており、この化合物を含むポリアゾ化合物も数多く知られている。
上記のポリアゾ化合物の製造ルートの説明図中、本発明方法に最も近いポリアゾ化合物の型は(1)−2)を例に取ると、このタイプの製造ルートはジアゾ成分(A1)を(M)にカップリングさせ、一般式(14)
【0007】
【化10】

【0008】
としたのち、生成したモノアゾ化合物をジアゾ化し、(Z)とカップリングさせ一般式(15)のジスアゾ化合物としてから
【0009】
【化11】

【0010】
最後にジアゾ成分(A)をカップリングし、トリスアゾ化合物を製造するという方法である。しかし、(M)がナフトール骨格であるポリアゾ化合物は純度よく合成することができず、また高収率も望めなかった。
【0011】
【特許文献1】特開昭51−116828
【特許文献2】特開平7−68481
【特許文献3】特開平6−68481
【特許文献4】特開昭57−187360
【特許文献5】特開2003−286421
【特許文献6】特開昭60−215083
【特許文献7】特開昭63−317570
【特許文献8】特開平9−12910
【特許文献9】特許第2565531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は酸性及びアルカリ性で2回カップリングしうる化合物に対し酸性カップリング側にナフトール骨格を導入した新規ポリアゾ化合物を高純度、高収率で製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは前記したような課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に至ったものである。即ち本発明は
(1)遊離酸の形で一般式(1)
【化12】

(式中、R1は水素原子、アルキル基又は置換されていても良いフェニル基を、X及びYはスルホ基を、A、Bはそれぞれ独立に置換されていても良いフェニル基、ナフチル基、アゾ基に炭素原子で結合する5員もしくは6員の芳香族複素環基、又はモノアゾ基を、m、nは0又は1を、a、bは単結合をそれぞれ表す)で表されるポリアゾ化合物の製造方法において
a)一般式(2)
【化13】

(式中、R5はメチル基、フェニル基、p−メチルフェニル基を表し、Y、nは前記と同じ意味を示す)
で表される化合物をジアゾ化し、一般式(3)
【化14】

(式中、R1、X、mは前記と同じ意味を示す)
で表される化合物と酸性条件下でカップリングを行い、一般式(4)
【化15】

(式中、R1、R5、X、Y、a、b、m、nは前記と同じ意味を示す)
で表される化合物としたのち
b)一般式(5)
【化16】

(式中、Aは前記と同じ意味を示す)
で表されるジアゾニウム化合物とアルカリ条件下でカップリングさせ一般式(6)
【化17】

(式中、A、R1、R5、X、Y、a、b、m、nは前記と同じ意味を示す)
で表される化合物にしたのち、
c)一般式(6)の化合物を強アルカリ性下で加水分解し、一般式(7)
【化18】

(式中、A、R1、X、Y、a、b、m、nは前記と同じ意味を示す)
で表される化合物とし、
d)一般式(8)
【化19】

(式中、Bは前記と同じ意味を示す)
で表されるジアゾニウム化合物とアルカリ条件下でカップリングさせることにより得るポリアゾ化合物の製造方法、
(2)A及びBを置換する置換基が、ハロゲン原子;ヒドロキシル基;アミノ基;カルボキシル基;スルホ基;ニトロ基;アルキル基;アルコキシ基;アシル基;フェニル基;ウレイド基;スルファモイル基;カルバモイル基;ヒドロキシル基、アルコキシ基、スルホ基若しくはカルボキシル基で置換されているアルキル基;ヒドロキシル基、アルコキシ基、スルホ基若しくはカルボキシル基で置換されているアルコキシ基;カルボキシ基又はスルホ基で更に置換されていても良いフェニル基、アルキル基、又はアシル基によって置換されているアミノ基である(1)に記載のポリアゾ化合物の製造方法、
(3)(1)に記載のポリアゾ化合物の製造方法において、一般式(1)、一般式(3)、一般式(4)、一般式(6)及び一般式(7)におけるR1NH−基が1位、結合aが2位である(1)に記載のポリアゾ化合物の製造方法、
(4)(1)に記載のポリアゾ化合物の製造方法において、一般式(1)、一般式(3)、一般式(4)、一般式(6)及び一般式(7)におけるR1NH−基が3位、mが0、結合aが4位である(1)に記載のポリアゾ化合物の製造方法、
(5)(1)に記載のポリアゾ化合物の製造方法において、一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)、一般式(6)及び一般式(7)におけるR1NH−基が1位、R1が水素原子、結合aは2位、結合bは7位、m、nは1であり、Xは4位、Yは8位である、(1)に記載のポリアゾ化合物の製造方法、
(6)(1)に記載のポリアゾ化合物の製造方法において、一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)、一般式(6)及び一般式(7)におけるR1NH−基が3位、R1がフェニル基、結合aが4位、結合bが7位、mが0、nが1、Yが8位である、(1)に記載のポリアゾ化合物の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明方法により酸性及びアルカリ性の2回カップリングしうる化合物に対し、酸性カップリング側にナフトール骨格を導入することが容易になり、新しいタイプのポリアゾ化合物開発への糸口が見出せた事、そして目的とするポリアゾ化合物は高純度、高収率で製造することが出来るようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を詳細に説明する。本発明は酸性及びアルカリ性の両条件下にて2回カップリング可能な化合物に対し、酸性カップリング側にナフトール骨格を導入するにあたり、水酸基をスルホニル基にて保護されたアミノナフトール類のジアゾ化合物を用いることに特徴がある。その後、複数の工程を経て前記スルホニル基を加水分解することにより新たにカップリング可能部位ができ、更にポリアゾ化することが可能となる。
【0016】
この本発明の製造方法を前記したポリアゾ化合物の製造ルートの説明図で用いた記号を使って説明すると、以下のようになる。
まず、ジアゾ化合物(M)の水酸基をスルホニル基にて保護してから(Z)とカップリングさせ、一般式(16)
【0017】
【化20】

【0018】
で表される化合物としてから、ジアゾ成分(A)をカップリングし、一般式(17)
【0019】
【化21】

【0020】
で表されるジスアゾ化合物とし、ジアゾ成分(A1)をカップリングさせ、最後に前記スルホニル基を加水分解することにより、トリスアゾ化合物を製造する。
【0021】
一般式(1)においてR1は水素原子、アルキル基又は置換されていてもよいフェニル基を示し、アルキル基としては(C1〜4)アルキル基を示し、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であり、好ましくはメチル基である。また置換されていても良いフェニル基として置換しうる基としては、例えばメチル、エチル、メトキシ、カルボキシル、ヒドロキシル、スルホ、アミノ等であり、好ましくはメチル、カルボキシル、スルホである。
【0022】
また、一般式(1)においてA、Bはそれぞれ独立に置換されていても良いフェニル基、ナフチル基、アゾ基に炭素原子で結合する5員もしくは6員の芳香族複素環基、又はモノアゾ化合物であり、置換しうる基としては、例えばニトロ、メチル、メトキシ、エチル、エトキシ、2−ヒドロキシエトキシ、2−メトキシエトキシ、3−スルホプロポキシ、4−スルホブトキシ、塩素、臭素、メチルスルホニル、カルボキシル、スルホ、ヒドロキシル、アミノ、スルファモイル、カルボキシメチルアミノ、カルボキシエチルアミノ、アセチルアミノ、ウレイド等であり、好ましくはニトロ、メチル、メトキシ、スルホ、ヒドロキシル、スルファモイル、マチルスルホニル、アミノ、アセチルアミノである。特に好ましくはメトキシ、ニトロ、ヒドロキシル、スルホ、カルボキシル、スルファモイル、メチルスルホニル、アセチルアミノである。A及びBの化合物例を具体的に前駆体として図1〜4に示すが、必ずしも図1〜4の化合物に限定されるものではない。また図4に示されるモノアゾ化合物は図1〜3に示される化合物の組み合わせによるものも可能である。
【0023】
【化22】

【0024】
【化23】

【0025】
【化24】

【0026】
【化25】

【0027】
一般式(2)で表されるスルホニル化された化合物は下記式に示される公知の方法にて製造できる。
【化26】

(式中、Y、n、R5は前記と同様の意味を表す)
nが0の場合はアミノ基をいったん無水酢酸などによりアセチル化後、水酸基をスルホニル化し、次いでアセトアミド基を加水分解することにより一般式(2)を製造する。
【0028】
本発明の一般式(2)で示される化合物の好適な例として、特に限定されるものではないが、具体的に下記の構造が挙げられる。
【0029】
【化27】

【0030】
また一般式(3)で示される化合物の好適な例として、特に限定されるものではないが、具体的に下記の構造が挙げられる。
【0031】
【化28】

【0032】
一般式(2)の化合物のジアゾ化はそれ自体公知の方法で実施され、たとえば無機酸媒質中、例えば−5〜30℃、好ましくは5〜15℃の温度で亜硝酸塩、たとえば亜硝酸ナトリウムのごとき亜硝酸アルカリ金属塩を使用して実施される。一般式(2)の化合物のジアゾ化物と一般式(3)の化合物との酸性カップリングもそれ自体公知の条件で実施される。水性または水性有機媒体中、例えば−5〜30℃、好ましくは5〜20℃の温度ならびにpH0.5〜4.0、好ましくはpH1.0〜3.5で実施されることが有利である。反応の進行により発生する酸の中和には塩基が用いられ、塩基としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウムのごときアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムのごときアルカリ金属炭酸塩、酢酸ナトリウムのごとき酢酸塩、アンモニアまたは有機アミンなどが使用できる。一般式(2)と(3)の化合物は、ほぼ化学量論量で用いる。
【0033】
一般式(5)の化合物のジアゾ化もそれ自体公知の方法で実施され、たとえば無機酸媒質中、例えば−5〜30℃、好ましくは5〜20℃の温度で亜硝酸塩、例えば亜硝酸ナトリウムのごとき亜硝酸アルカリ金属塩を使用して実施される。一般式(5)の化合物のジアゾ化物と一般式(4)の化合物とのアルカリ性カップリングもそれ自体公知の条件で実施される。水性または水性有機媒体中、例えば0〜30℃、好ましくは5〜25℃の温度ならびに弱酸性からアルカリ性のpH値で行うことが有利である。好ましくは弱酸性から弱アルカリ性のpH値、たとえばpH5〜10で実施され、このpH値の調整も塩基の添加によって実施される。塩基としては、たとえば水酸化リチウム、水酸化ナトリウムのごときアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムのごときアルカリ金属炭酸塩、酢酸ナトリウムのごとき酢酸塩、アンモニアまたは有機アミンなどが使用できる。一般式(5)と(4)の化合物は、ほぼ化学量論量で用いる。
【0034】
一般式(6)の化合物の加水分解による一般式(7)の化合物の製造もそれ自体公知の方法で実施される。有利には水性アルカリ性媒質中で加熱する方法であり、たとえば一般式(6)の化合物を含有する反応溶液に水酸化リチウム又は水酸化ナトリウムを加えpHを9.5以上としたのち、例えば20〜110℃の温度、好ましくは40〜90℃の温度に加熱することによって実施される。このとき反応溶液のpH値は9.5〜11.5に維持することが好ましい。このpH値の調整は塩基の添加によって実施される。塩基は前記したものを用いることができる。
【0035】
一般式(8)の化合物のジアゾ化もそれ自体公知の方法で実施され、たとえば無機酸媒質中、例えば−5〜30℃、好ましくは5〜20℃の温度で亜硝酸塩、例えば亜硝酸ナトリウムのごとき亜硝酸アルカリ金属塩を使用して実施される。一般式(8)の化合物のジアゾ化物と一般式(7)の化合物とのアルカリ性カップリングもそれ自体公知の条件で実施される。水性または水性有機媒体中、例えば0〜40℃、好ましくは5〜30℃の温度ならびに弱酸性からアルカリ性のpH値で行うことが有利である。好ましくは弱酸性から弱アルカリ性のpH値、たとえばpH5〜10で実施され、このpH値の調整も塩基の添加によって実施される。塩基としては、たとえば水酸化リチウム、水酸化ナトリウムのごときアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムのごときアルカリ金属炭酸塩、酢酸ナトリウムのごとき酢酸塩、アンモニアまたは有機アミンなどが使用できる。一般式(7)と(8)の化合物は、ほぼ化学量論量で用いる。
【0036】
本発明方法により酸性及びアルカリ性の2回カップリングしうる化合物に対し、酸性カップリング側にナフトール骨格を導入することが容易になり、新しいタイプのポリアゾ化合物開発への糸口が見出せた事、そして目的とするポリアゾ化合物は高純度、高収率で製造することが出来るようになった。また、本発明方法により製造されるポリアゾ化合物は高カラーバリューを有し、高純度であることからインクジェット記録用、筆記用、繊維染色用等広範囲の利用が可能である。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。尚、本文中部及び%とあるのは、特別の記載の無い限り質量基準である。また化合物は遊離酸の形で表す。
【0038】
実施例1
(第一工程)2−アミノ−5−ヒドロキシナフタレン−1,7−ジスルホン酸(スルホJ酸)20.1部とp−トルエンスルホニルクロライド12.6部とを温度70℃、pH値を炭酸ナトリウムにて8.0〜8.5に調整しながら1時間反応させた。次いで反応液を35%塩酸にてpH値1.0以下としたのち、塩化ナトリウムにて塩析、ろ過して下記式(19)の化合物28.4部を得た。
【0039】
【化29】

【0040】
(第二工程)水300部中に式(19)の化合物28.4部を炭酸ナトリウムでpH6.0〜8.0に調整しながら溶解し、35%塩酸18.7部の添加後、0〜5℃とし、40%亜硝酸ナトリウム水溶液10.7部を添加し、ジアゾ化した。このジアゾ懸濁液に5−アミノ−4−ヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸(H酸)19.1部を水200部に懸濁した液を添加した後、10〜20℃で溶液のpH値を炭酸ナトリウムにて2.4〜2.8に保持しながら12時間攪拌した。攪拌後pH値を炭酸ナトリウムにて7.0〜8.5として溶解し、下記式(20)のモノアゾ化合物を含む溶液を得た。
【0041】
【化30】

【0042】
(第三工程)水150部に4−ニトロアニリン−2−スルホン酸ナトリウム14.4部を溶解し、ここに0〜5℃で35%塩酸18.8部、40%亜硝酸ナトリウム水溶液10.6部を添加しジアゾ化した。このジアゾ懸濁液を、上記反応にて得られた式(20)のモノアゾ化合物を含む溶液に5〜15℃、溶液のpH値を炭酸ナトリウムにて6.0〜8.0に保持しながら滴下した。滴下終了後、10〜15℃で2時間、pH7.0〜8.0で攪拌し、塩化ナトリウムの添加により塩析し、濾過することで下記式(21)の化合物を含むウェットケーキを得た。
【0043】
【化31】

【0044】
上記で得られたウェットケーキを水400部に溶解し、70℃に加熱後、水酸化ナトリウムにてpH値を10.5〜11.0に保持しながら2時間攪拌した。室温まで冷却後、35%塩酸によりpH7.0〜8.0とし、塩化ナトリウムを加えて塩析を行い、濾過して下記式(22)の化合物を含むウェットケーキを得た。
【0045】
【化32】

【0046】
(第四工程)水130部に4−ニトロアニリン−2−スルホン酸ナトリウム13.1部を溶解し、ここに35%塩酸16.9部を添加後、0〜5℃に冷却し、同温度で40%亜硝酸ナトリウム水溶液9.6部を添加し、ジアゾ化した。このジアゾ懸濁液を水300部に上記で得られた式(22)の化合物を含むウェットケーキを水酸化ナトリウムでpH7.0〜8.0に調製しながら溶解した溶液に、10〜15℃、溶液のpH値を炭酸ナトリウムにて7.5〜8.5に保持しながら滴下した。滴下終了後、同温度、同pH値にて3時間攪拌しカップリング反応を完結させた後、塩化ナトリウムを加えて塩析し、濾過した。得られたウェットケーキを水250部に溶解し、メタノール300部の添加により晶析、ろ過した。更に得られたウェットケーキを水150部に溶解後、35%塩酸の添加によりpH値を0.5以下とした後、水酸化リチウムの添加により溶解した。この溶液にメタノール200部及び2−プロパノール50部の添加により晶析し、ろ過、乾燥して本発明の製造方法による下記式(23)の化合物47.8部を得た。この化合物のHPLC純度(面積比)は94.5%と高純度であった。また、この化合物の0.5%水酸化リチウム水溶液への溶解度は100g/L以上と良好であり、水溶液中での最大吸収波長(λmax)は629nmであった。
【0047】
【化33】

【0048】
実施例2
実施例1の第一工程における2−アミノ−5−ヒドロキシナフタレン−1,7−ジスルホン酸20.1部を3−アミノ−5−ヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸(2R酸)20.1部とする以外は実施例1と同様の方法で式(24)の化合物45.7部を得た。この化合物の液体クロマトグラフィー純度は93.5%と高純度であった。またこの化合物の0.5%水酸化リチウム水溶液への溶解度は100g/L以上と良好であった。水溶液中での最大吸収波長は637nmであった。
【0049】
【化34】

【0050】
実施例3
(第一工程)水500部中に6−アミノ−4−ヒドロキシナフタレン−2−スルホン酸(γ酸)23.9部を仕込み、20%水酸化ナトリウムにてpH値7〜8に中和溶解後、30〜40℃で無水酢酸12.2部を添加しアセチル化した。次いで、反応液を20%水酸化ナトリウム水溶液にてpH値8に中和後、加熱し55〜60℃、pH値8〜9でp−トルエンスルホニルクロライド19.1部と反応させた。反応中のpH値の調整は炭酸ナトリウムにて行った。反応後15℃まで冷却することにより灰白色の沈殿が析出した。これをろ過して下記式(25)の化合物41.3部を得た。
【0051】
【化35】

【0052】
次に、5%塩酸1000部中に前記で得られた式(25)の化合物を全量仕込み、90〜95℃で6時間加水分解する事により式(26)の化合物35.3部を得た。
【0053】
【化36】

【0054】
(第二工程)水500部中に式(26)の化合物を23.6部仕込み、炭酸ナトリウムでpH6.0〜8.0に調製して溶解し、40%亜硝酸ナトリウム水溶液11.4部添加した液を2%塩酸440部中に20〜25℃にて30分かけて仕込みジアゾ化した。このジアゾ懸濁液に4−アミノ−5−ヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸(H酸)19.1部を添加した後、10〜20℃で溶液のpH値を炭酸ナトリウムにて2.0〜2.5に保持しながら12時間攪拌した。反応後析出した沈殿物を濾過することにより下記式(27)のモノアゾ化合物34.7部を得た。このケーキを水500部中、pH値を炭酸ナトリウムにて7.0〜8.5として溶解した。
【0055】
【化37】

【0056】
(第三工程)水150部に4−ニトロアニリン−2−スルホン酸ナトリウム14.4部を溶解し、ここに35%塩酸18.8部を添加したのち、0〜5℃で40%亜硝酸ナトリウム水溶液10.6部を添加しジアゾ化した。このジアゾ懸濁液を、上記反応にて得られた式(27)のモノアゾ化合物を含む溶液に10〜20℃、溶液のpH値を炭酸ナトリウムにて7.0〜8.0に保持しながら滴下した。滴下終了後、同温度、同pH値で2時間攪拌し、反応を完結させたのち、塩化ナトリウムにより塩析し、析出した沈殿物を濾過することで式(28)の化合物を含むウェットケーキを得た。
【0057】
【化38】

【0058】
上記で得られたウェットケーキを水400部に溶解し、70℃に加熱後、25%水酸化ナトリウム水溶液にてpH値を10.5〜11.0に保持しながら2時間攪拌した。室温まで冷却後、35%塩酸によりpH7.0〜8.0とし、塩化ナトリウムを加えて塩析を行い、濾過して式(29)の化合物を含むウェットケーキを得た。
【0059】
【化39】

【0060】
(第四工程)実施例1の第四工程と同様にして得た4−ニトロアニリン−2−スルホン酸ナトリウム13.1部のジアゾ懸濁液を、水300部に上記で得られた式(29)の化合物を含むウェットケーキを水酸化ナトリウムでpH7.0〜8.0に調製しながら溶解した溶液に、15〜30℃、溶液のpH値を炭酸ナトリウムにて8.0〜9.0に保持しながら滴下した。滴下終了後、同温度、同pH値にて3時間攪拌しカップリング反応を完結させた後、塩化ナトリウムを加えて塩析し、濾過した。得られたウェットケーキを水250部に溶解し、メタノール300部の添加により晶析、ろ過した。更に得られたウェットケーキを水150部に溶解後、35%塩酸の添加によりpH値を0.5以下とした後、水酸化リチウムの添加により溶解した。この溶液にメタノール200部及び2−プロパノール50部の添加により晶析し、ろ過、乾燥して本発明の製造方法による式(30)の化合物39.0部を得た。この化合物のHPLC純度(面積比)は94.0%と高純度であり、0.5%水酸化リチウム水溶液への溶解度は100g/L以上と良好であった。水溶液中での最大吸収波長(λmax)は623nmであった。
【0061】
【化40】

【0062】
実施例4
(第一工程)水50部に2−アミノベンゼンスルホン酸7.8部を水酸化ナトリウムでpH3.5〜5.5に調製しながら溶解し、ここに0〜10℃で35%塩酸12.8部、40%亜硝酸ナトリウム水溶液7.9部を添加しジアゾ化した。次に水70部に6−アミノ−1−ヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸(J酸)10.7部を水酸化ナトリウムでpH6.5〜7.5に調製しながら溶解し、ここに25〜35℃で無水酢酸4.7部の添加によりアセチル化した。ここに上記ジアゾ懸濁液を、5〜15℃、溶液のpH値を炭酸ナトリウムにて6.5〜7.5に保持しながら滴下した。滴下終了後、15〜30℃で2時間、pH7.0〜8.0で攪拌しカップリング反応を完結させ、下記式(31)の化合物を含む反応液を得た。
【0063】
【化41】

【0064】
上記で得られた式(31)の化合物を含む反応液を90℃に加熱した後、水酸化ナトリウムを2%となるよう添加し、90〜95℃で約1時間保持した。室温まで冷却後、35%塩酸によりpH3.5〜5.0とし、塩化ナトリウムを加えて塩析を行い、濾過し、次いで乾燥して下記式(32)の化合物17.3部を得た。
【0065】
【化42】

【0066】
(第二工程)水150部に上記反応で得られた式(32)の化合物17.3部を水酸化ナトリウムでpH6.0〜7.5に調製しながら溶解し、ここに15〜25℃で35%塩酸15.0部を添加後、40%亜硝酸ナトリウム水溶液7.5部を添加しジアゾ化した。このジアゾ懸濁液を実施例1(第一工程)と同様の処理をして得られた式(20)の化合物を含む水溶液に15〜25℃で滴下した。滴下中、溶液のpH値は炭酸ナトリウムにて8.0〜9.5に保持した。滴下終了後、更に15〜25℃、pH8.0〜9.0で3時間攪拌しカップリング反応を完結させ、式(33)を含むスラリー反応液得た。次いで、塩化ナトリウムを加えて更に塩析を行い、濾過して下記式(33)のウェットケーキ150部を得た。
【0067】
【化43】

【0068】
(第三工程)得られたウェットケーキは全量を水600部に溶解したのち加熱し70〜75℃、pH値10.5〜11.0で2時間処理することにより下記式(34)の化合物を含む反応液を得た。
【0069】
【化44】

【0070】
(第四工程)水150部中に下記式(35)の化合物8.1部を分散し、35%塩酸12.6部を添加した後5〜10℃まで冷却し、同温度で40%亜硝酸ナトリウム水溶液7.2部を添加してジアゾ化した。
【0071】
【化45】

【0072】
次いで、このジアゾ懸濁液を第三工程で得られた式(34)の化合物を含む反応液中に15〜20℃で添加した後、炭酸ナトリウムにて徐々にpH値を7.5〜9.0に中和する。中和後、更に15〜25℃、pH8.0〜9.0で3時間攪拌しカップリング反応を完結させ、式(36)の化合物を含む反応液を得た。このあと塩化ナトリウムを加えて塩析を行い、濾過し、次いで乾燥して、本発明の製造方法による下記式(36)のテトラキスアゾ化合物47.0部を得た。この色素のHPLC純度(面積比)は97.5%と高純度であり、水中での最大吸収波長(λmax)は645nmであり、また水への溶解度は約100g/lであった。
【0073】
【化46】

【0074】
実施例5
(第一工程)水300部中に前記式(19)の化合物28.4部を炭酸ナトリウムでpH6.0〜8.0に調製しながら溶解し、35%塩酸18.7部の添加後、0〜5℃とし、40%亜硝酸ナトリウム水溶液10.7部を添加し、ジアゾ化した。
このジアゾ懸濁液に6−フェニルアミノ−1−ヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸 18.1部を水200部に懸濁した液を添加した後、10〜20℃で溶液のpH値を炭酸ナトリウムにて2.0〜2.7に保持しながら12時間攪拌した。攪拌後pH値を炭酸ナトリウムにて7.0〜8.5として溶解し、下記式(37)のモノアゾ化合物を含む溶液を得た。
【0075】
【化47】

【0076】
(第二工程)次に実施例4の第一工程と同様の方法にて得られた式(32)の化合物23.0部を水酸化ナトリウムでpH6.0〜7.5に調製しながら溶解し、ここに15〜25℃で35%塩酸19.9部を添加後、40%亜硝酸ナトリウム水溶液9.9部を添加し、ジアゾ化した。このジアゾ懸濁液を上記反応により得られた式(37)の化合物を含む水溶液に15〜25℃、溶液のpH値を炭酸ナトリウムにて7.5〜8.5に保持しながら30分かけて滴下した。滴下終了後、15〜30℃で3時間、pH8.0〜9.0で攪拌し、カップリング反応を完結さ、式(38)の化合物を含む溶液を得た。
【0077】
【化48】

【0078】
(第三工程)上記反応液を75℃に加熱し、水酸化ナトリウムにてpH10.8〜11.0に保持しながら1時間反応させた。反応後、35%塩酸にてpH6.0〜7.5に調製し、塩化ナトリウムを加えて塩析、濾過し、本発明の製造方法による下記式(39)の化合物46.5部を得た。
【0079】
【化49】

【0080】
(第四工程)
N,N−ジメチルホルムアミド100部に2−ニトロ−4−クレゾール51.0部、トルエン50.0部及び水酸化カリウム19.5部を添加し、これを120〜125℃に加熱し、1時間攪拌してトルエンとの共沸により生成する水を留去した。130〜135℃に昇温した後、ここにN,N−ジメチルホルムアミド50部で希釈したプロパンスルトン44.8部を約30分かけて滴下した。同温度で1時間反応させた後、室温まで冷却し水150部を添加後、水酸化ナトリウムス溶液にてpH7.5〜8.5とした。この溶液をロータリーエバポレーターにて濃縮後、オートクレーブに移し、50%含水5%パラジウムカーボン1.0部を添加した。水素ガスを封入した後、55〜65℃で2時間反応させ、式(40)の化合物56.8部を含む溶液を得た。
【0081】
【化50】

【0082】
水900部中に下記式(41)の化合物74.3部を炭酸ナトリウムでpH5.0〜6.0に調製しながら中和溶解した後、5〜10℃とし、35%塩酸62.2部、40%亜硝酸ナトリウム水溶液27.0部を添加しジアゾ化した。
【0083】
【化51】

【0084】
次いで、得られた式(41)の化合物のジアゾ懸濁液に、上記反応により得られた式(40)の化合物36.8部を含む溶液を0〜10℃の温度でゆっくり滴下した。滴下終了後、pH値を水酸化ナトリウム水溶液の添加により3.0〜4.0とし、その後5〜10℃で1時間、15〜25℃で2時間、いずれの間もpH3.0〜4.0で撹拌し、更に水酸化ナトリウム水溶液を添加しpH値を7.0〜8.0としてカップリング反応を完結させ、式(42)の化合物を含む反応液を得た。
【0085】
【化52】

【0086】
(第五工程)式(42)の化合物を含む反応溶液の1/6量をとり、35%塩酸16.5部の添加後、40%亜硝酸ナトリウム水溶液8.7部を添加しジアゾ化した。このジアゾ液を式(39)の化合物46.5部を水1000部に溶解した溶解液に15〜30℃、溶液のpH値を炭酸ナトリウムにて8.5〜9.5に保持しながら30分かけて滴下した。滴下終了後、15〜30℃で3時間、pH8.5〜9.5で攪拌しカップリング反応を完結させ式(43)の化合物を含む反応液を得た。
【0087】
【化53】

【0088】
(第六工程)上記反応液を75℃に加熱し、水酸化ナトリウムにてpH10.8〜11.0に保持しながら1時間反応させた。反応後、35%塩酸にてpH6.0〜7.5に調製し、塩化ナトリウムを加えて塩析、濾過した。得られたケーキ全量を水500部に溶解し、メタノール500部の添加により晶析させ濾過することにより脱塩し、次いで乾燥して本発明の製造方法による式(44)の化合物55.1部を得た。この化合物のHPLC純度(面積比)は94.5%と高純度であり、水中での最大吸収波長(λmax)は570nmであり、また水への溶解度は100g/l以上であった。
【0089】
【化54】

【0090】
参考例1
(第一工程)水200部中に式(35)の化合物20.42部を水酸化ナトリウムでpH5.5〜8.0に調製しながら溶解した後、5〜10℃とし、35%塩酸31.3部、40%亜硝酸ナトリウム水溶液18.1部を添加しジアゾ化した。
【0091】
【化55】

【0092】
このジアゾ懸濁液を7−アミノ−1−ヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸23.9部のアルカリ性水溶液に15〜30℃で滴下した。滴下中は反応液のpH値を炭酸ナトリウムにて8.5〜9.5に保持した。滴下終了後、更にpH値8.5〜9.5、温度15〜30℃で3時間攪拌しカップリング反応を完結させ、このあと塩化ナトリウムを加えて塩析を行い、濾過し、得られたウェットケーキを乾燥して式(45)のモノアゾ化合物36.3部を得た。
【0093】
【化56】

【0094】
(第二工程)水500部中に式(45)の化合物36.3部を仕込み、水酸化ナトリウムでpH5.5〜8.0に調製して溶解した後、35%塩酸33.4部加え15〜20℃で40%亜硝酸ナトリウム水溶液16.5部を添加しジアゾ化した。このジアゾ懸濁液に8−アミノ−1−ヒドロキシナフタレン−3、6−ジスルホン酸(H酸)を25.5部添加した。添加後、15〜30℃、pH値を炭酸ナトリウムにて2.0〜3.0に保持しながら終夜攪拌し、式(46)の化合物を含む反応液を得た。
【0095】
【化57】

【0096】
(第三工程) 水250部中に7−アミノ−1−ヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸の代わりに6−アミノ−1−ヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸23.9部を用いる以外は式(45)の化合物と同様の方法で合成された式(47)の化合物35.3部を水酸化ナトリウムでpH5.5〜8.0に調製しながら溶解した後、35%塩酸32.1部、40%亜硝酸ナトリウム水溶液 16.2部を添加しジアゾ化した。
【0097】
【化58】

【0098】
このジアゾ懸濁液を第二工程で得られた式(46)の化合物のアルカリ性水溶液中に15〜30℃で滴下した。滴下中は溶液のpH値を炭酸ナトリウムにて8.5〜9.5に保持した。滴下終了後、更に15〜30℃で3時間、pH8.5〜9.5で攪拌しカップリング反応を完結させ、式(48)の化合物を含む反応液を得た。35%塩酸にてpH値を2.0〜5.0とした後、不溶解分を濾過にて除去し、塩化ナトリウムを加えて塩析を行い、濾過した。得られたケーキ全量を水500部に溶解し、メタノール500部の添加により晶析させ、濾過することにより脱塩し、次いで乾燥して下記式(48)の黒色色素77.8部を得た。この化合物の水中での最大吸収波長(λmax)は647nmであり、また水への溶解度は100g/l程度であった。またHPLC純度(面積比)は75.0%であり、本発明の製造方法と比べ低純度となる。
【0099】
【化59】

【0100】
実施例6
(第一工程)水200部中に実施例1に示された前記式(19)の化合物37.8部を水酸化ナトリウムでpH5.5〜8.0に調製し溶解した後、5℃以下とし、35%塩酸29.2部を加え、40%亜硝酸ナトリウム水溶液14.1部を添加しジアゾ化した。次いで、このジアゾ懸濁液に8−アミノ−1−ヒドロキシナフタレン−3、5−ジスルホン酸(K酸)25.5部添加した。添加後、10〜15℃、pH値を2.0〜3.0に10%炭酸ナトリウム水溶液にて保持しながら6時間攪拌し、下記式(49)の化合物を含む反応液を得た。
【0101】
【化60】

【0102】
(第二工程) 実施例4に示された前記式(32)のモノアゾ化合物33.8部を水酸化ナトリウムでpH7、0〜8.0に調製しながら溶解した後、35%塩酸33.3部を添加、15〜20℃で40%亜硝酸ナトリウム水溶液15.2部を添加しジアゾ化した。次いで、このジアゾ懸濁液を上記で得られた式(49)の化合物を含む反応液中に15〜25℃で滴下した。滴下中、溶液のpH値は炭酸ナトリウムにて8.0〜9.5に保持した。滴下終了後、更に15〜25℃、pH8.0〜9.0で3時間攪拌し、カップリング反応を完結させ、式(50)を含むスラリー反応液得た。次いで、少量の塩化ナトリウムを加えて塩析を行い、濾過して式(50)のウェットケーキ300部を得た。
【0103】
【化61】

【0104】
得られたウェットケーキは全量を水800部に溶解したのち加熱し70〜75℃、pH値10.5〜11.0で2時間処理することにより式(51)の化合物を含む反応液を得る。
【0105】
【化62】

【0106】
(第三工程)水200部中に前記式(35)の化合物16.3部を分散し35%塩酸16.7部を添加した後5〜10℃まで冷却し、同温度で40%亜硝酸ナトリウム水溶液14.5部を添加してジアゾ化した。 次いで、このジアゾ懸濁液を第二工程で得られた式(51)の化合物を含む反応液中に15〜20℃で添加した後、炭酸ナトリウムにて徐々にpH値を7.5〜9.0に中和する。中和後、更に15〜25℃、pH8.0〜9.0で3時間攪拌しカップリング反応を完結させ、下記式(52)の化合物を含む反応液を得た。このあと塩化ナトリウムを加えて塩析を行い、濾過し、次いで乾燥して式(52)のテトラキスアゾ化合物62.5部を得た。
(脱塩工程)水500部に第三工程で得られた式(52)の化合物を溶解したのち、メタノール700部の添加により晶析させ濾過することにより脱塩し、次いで乾燥して式(52)の黒色色素56.2部を得た。この色素のHPLC純度(面積比)は98.0%と高純度であり、水中での最大吸収波長(λmax)は620nmであり、また水への溶解度は約100g/lであった。
【0107】
【化63】

【0108】
実施例7
(第一工程) 実施例8の第一工程と同様にして式(19)の化合物94.6部をジアゾ化した後、このジアゾ懸濁液の半量を8−アミノ−1−ヒドロキシ−3,5−ジスルホン酸31.9部と反応させ式(49)のモノアゾ化合物とした後、本反応液を炭酸ナトリウムにてpH値6.5〜7.5に中和した。次いで先に合成した式(19)のジアゾ懸濁液の残り半量を前記式(49)のモノアゾ化合物を含む中和溶液中に10〜15℃、pH値7.0〜8.0で滴下した。滴下後、同温度、同pH値で2時間攪拌し、下記式(53)のジスアゾ化合物を得た。反応中のpH値の調整は10%炭酸ナトリウム水溶液にて行った。
【0109】
【化64】

【0110】
次いで、上記ジスアゾ化合物を含む反応液を加熱して70〜75℃とした後、pH値10.5〜11.0で2時間処理することにより式(54)を含む反応液を得た。この後、塩化ナトリウムを加えて塩析を行い析出したケーキを濾過し、次いで乾燥して下記式(54)のジスアゾ化合物73.4部を得た。
【0111】
【化65】

【0112】
(第二工程)水340部中に2−アミノ−5−ニトロベンゼンスルホン酸 34.9部を分散後、25%水酸化ナトリウム水溶液にて中和し溶解した。次いで35%塩酸50.5部を添加した後5〜10℃まで冷却し、同温度で40%亜硝酸ナトリウム水溶液29.0部を添加してジアゾ化した。 次いで、このジアゾ懸濁液を水1000部に式(54)の化合物73.4部を溶解した反応液中に15〜20℃で添加した後、炭酸ナトリウムにて徐々にpH値を6.0〜7.0に中和した。中和後、更に15〜20℃、pH7.0〜8.0で3時間攪拌しカップリング反応を完結させ、式(55)の化合物を含む反応液得た。このあと塩化ナトリウムを加えて塩析を行い、濾過し、下記式(55)のテトラキスアゾ化合物ウェットケーキ430部を得た。
(脱塩工程)水800部に第二工程で得られた式(55)の化合物を溶解したのち、メタノール1000部の添加により晶析させ濾過することにより脱塩し、次いで乾燥して式(55)の黒色色素86.2部を得た。この色素のHPLC純度(面積比)は96.5%と高純度であり、
水中での最大吸収波長(λmax)は610nmであり、また水への溶解度は約100g/lであった。
【0113】
【化66】

【0114】
実施例8
(第一工程)2−アミノ−5−ナフトール−1,7−ジスルホン酸(スルホJ酸)20.1部とp−トルエンスルホニルクロライド12.6部とをpH8.0〜8.5、70℃で1時間反応させた後、酸性にて塩析、ろ過して得られる式(19)の化合物28.4部を水300部中に、炭酸ナトリウムでpH6.0〜8.0に調製しながら溶解し、35%塩酸18.7部の添加後、0〜5℃とし、40%亜硝酸ナトリウム水溶液10.7部を添加し、ジアゾ化した。
【0115】
【化67】

【0116】
このジアゾ懸濁液に4−アミノ−5−ヒドロキシナフタレン−1,7−ジスルホン酸 19.1部を水200部に懸濁した液を添加した後、10〜20℃で溶液のpH値を炭酸ナトリウムにて2.4〜2.8に保持しながら12時間攪拌した。攪拌後pH値を炭酸ナトリウムにて7.0〜8.5として溶解し、下記式(49)のモノアゾ化合物を含む溶液を得た。
【0117】
【化68】

【0118】
(第二工程)水150部に4−ニトロアニリン−2−スルホン酸ナトリウム14.4部を溶解し、ここに0〜5℃で35%塩酸18.8部、40%亜硝酸ナトリウム水溶液10.6部を添加しジアゾ化した。このジアゾ懸濁液を、上記反応にて得られた式(49)のモノアゾ化合物を含む溶液に10〜20℃、溶液のpH値を炭酸ナトリウムにて8.0〜9.0に保持しながら滴下した。滴下終了後、15〜30℃で2時間、pH8.0〜9.0で攪拌し、塩化ナトリウムの添加により塩析し、濾過することで下記式(56)の化合物を含むウェットケーキを得た。
【0119】
【化69】

【0120】
上記で得られたウェットケーキを水400部に溶解し、70℃に加熱後、水酸化ナトリウムにてpH値を10.5〜11.0に保持しながら1時間攪拌した。室温まで冷却後、35%塩酸によりpH7.0〜8.0とし、塩化ナトリウムを加えて塩析を行い、濾過して下記式(57)の化合物を含むウェットケーキを得た。
【0121】
【化70】

【0122】
(第三工程)水100部に2−アミノ−5−アセチルアミノベンゼンスルホン酸11.5部を水酸化ナトリウムの添加によりpH4.0〜6.0として溶解し、ここに0〜5℃で35%塩酸15.8部、40%亜硝酸ナトリウム水溶液9.0部を添加しジアゾ化した。このジアゾ懸濁液を水100部に3−カルボキシ−1−(4'−スルホフェニル)−5−ピラゾロン14.2部を水酸化ナトリウムの添加によりpH8.0〜9.0として溶解した溶液に、10〜20℃、溶液のpH値を炭酸ナトリウムにて8.0〜9.0に保持しながら滴下した。滴下終了後、15〜30℃で2時間、pH8.0〜9.0で攪拌することで下記式(58)の化合物を含む溶液を得た。
【0123】
【化71】

【0124】
上記反応で得られた式(58)の化合物を含む溶液に35%塩酸27.0部を添加後、90℃に加熱して1時間攪拌した。室温まで冷却後、水酸化ナトリウムの添加によりpH4.0〜5.0とし、塩化ナトリウムを加えて塩析を行い、濾過して式(59)の化合物を含むウェットケーキを得た。
【0125】
【化72】

【0126】
(第四工程)水300部に上記で得られた式(59)の化合物を含むウェットケーキを水酸化リチウムでpH6.0〜8.0に調製しながら溶解した溶液に、10〜20℃、35%塩酸19.8部、40%亜硝酸ナトリウム水溶液9.2部を添加しジアゾ化した。このジアゾ懸濁液を、水400部に前記式(20)の化合物を含むウェットケーキを溶解させた溶液に、10〜25℃、溶液のpH値を水酸化リチウムにて8.0〜9.0に保持しながら滴下した。滴下終了後、15〜30℃で2時間、pH8.0〜9.0で攪拌し、塩化リチウムの添加により塩析し、濾過した。得られたウェットケーキを水400部に溶解し、エタノール1000部の添加により晶析、ろ過した。更に得られたウェットケーキを水200部に溶解後、エタノール1000部の添加により晶析し、ろ過、乾燥して、本発明の製造方法による式(60)のアゾ化合物46.0部をリチウム塩として得た。この化合物のHPLC純度(面積比)は98.5%と高純度であり、水中での最大吸収波長(λmax)は602nmである。また水への溶解度は100g/l以上であった。
【0127】
【化73】

【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明方法により製造されるポリアゾ化合物は高カラーバリューを有し、高純度であることからインクジェット記録用、筆記用、繊維染色用等広範囲の利用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離酸の形で一般式(1)
【化1】

(式中、R1は水素原子、アルキル基又は置換されていても良いフェニル基を、X及びYはスルホ基を、A、Bはそれぞれ独立に置換されていても良いフェニル基、ナフチル基、アゾ基に炭素原子で結合する5員もしくは6員の芳香族複素環基、又はモノアゾ基を、m、nは0又は1を、a、bは単結合をそれぞれ表す)
で表されるポリアゾ化合物の製造方法において
a)一般式(2)
【化2】

(式中、R5はメチル基、フェニル基、p−メチルフェニル基を表し、Y、nは前記と同じ意味を示す)
で表される化合物をジアゾ化し、一般式(3)
【化3】

(式中、R1、X、mは前記と同じ意味を示す)
で表される化合物と酸性条件下でカップリングを行い、一般式(4)
【化4】

(式中、R1、R5、X、Y、a、b、m、nは前記と同じ意味を示す)
で表される化合物としたのち
b)一般式(5)
【化5】

(式中、Aは前記と同じ意味を示す)
で表されるジアゾニウム化合物とアルカリ条件下でカップリングさせ一般式(6)
【化6】

(式中、A、R1、R5、X、Y、a、b、m、nは前記と同じ意味を示す)
で表される化合物にしたのち、
c)一般式(6)の化合物を強アルカリ性下で加水分解し、一般式(7)
【化7】

(式中、A、R1、X、Y、a、b、m、nは前記と同じ意味を示す)
で表される化合物とし、
d)一般式(8)
【化8】

(式中、Bは前記と同じ意味を示す)
で表されるジアゾニウム化合物とアルカリ条件下でカップリングさせることにより得るポリアゾ化合物の製造方法
【請求項2】
A及びBを置換する置換基が、ハロゲン原子;ヒドロキシル基;アミノ基;カルボキシル基;スルホ基;ニトロ基;アルキル基;アルコキシ基;アシル基;フェニル基;ウレイド基;スルファモイル基;カルバモイル基;ヒドロキシル基、アルコキシ基、スルホ基若しくはカルボキシル基で置換されているアルキル基;ヒドロキシル基、アルコキシ基、スルホ基若しくはカルボキシル基で置換されているアルコキシ基;カルボキシ基又はスルホ基で更に置換されていても良いフェニル基、アルキル基、又はアシル基によって置換されているアミノ基である請求項1に記載のポリアゾ化合物の製造方法
【請求項3】
請求項1に記載のポリアゾ化合物の製造方法において、一般式(1)、一般式(3)、一般式(4)、一般式(6)及び一般式(7)におけるR1NH−基が1位、結合aが2位である請求項1に記載のポリアゾ化合物の製造方法
【請求項4】
請求項1に記載のポリアゾ化合物の製造方法において、一般式(1)、一般式(3)、一般式(4)、一般式(6)及び一般式(7)におけるR1NH−基が3位、mが0、結合aが4位である請求項1に記載のポリアゾ化合物の製造方法
【請求項5】
請求項1に記載のポリアゾ化合物の製造方法において、一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)、一般式(6)及び一般式(7)におけるR1NH−基が1位、R1が水素原子、結合aは2位、結合bは7位、m、nは1であり、Xは4位、Yは8位である、請求項1に記載のポリアゾ化合物の製造方法
【請求項6】
請求項1に記載のポリアゾ化合物の製造方法において、一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)、一般式(4)、一般式(6)及び一般式(7)におけるR1NH−基が3位、R1がフェニル基、結合aが4位、結合bが7位、mが0、nが1、Yが8位である、請求項1に記載のポリアゾ化合物の製造方法

【公開番号】特開2006−76908(P2006−76908A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−261153(P2004−261153)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】