説明

ポリアミック酸ワニス、ポリイミドワニス、それらの製造方法及び接続構造体

【課題】エキシマレーザー光照射のような改質処理を施していないフッ素系樹脂表面のみならずポリオレフィンやポリイミド表面に対しても良好な接着性を示し、優れた保存安定性を示すワニスを提供する。
【解決手段】酸二無水物とジアミンとを重縮合環化してなるポリイミドと、フッ素系樹脂と、それらを溶解することができる有機溶媒とを含有するポリイミドワニスは、ポリイミドとして、フッ素系樹脂を有機溶媒に溶解したフッ素系樹脂溶液中で、酸二無水物とジアミンとを重縮合環化して生成したものを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素系樹脂を含有するポリアミック酸ワニスもしくはポリイミドワニス、又はそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素系樹脂フィルムは、耐熱性、耐薬品性などの特性に優れているため、例えば、ポリイミドフレキシブル基板のカバーフィルムとして使用することが試みられている。しかし、フッ素系樹脂フィルム表面の接着性が非常に低いため、フッ素系樹脂フィルムにポリオレフィンフィルムやポリイミドフィルム等を接着剤で積層することが非常に困難であった。そこで、フッ素系樹脂フィルムに芳香族ポリエステルや芳香族ポリアミド等の光吸収剤を含有させ、その表面に対しエキシマレーザー光を照射して表面改質することが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−125208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フッ素系樹脂に光吸収剤を均一に分散混合し成形する操作は、フッ素系樹脂と光吸収剤として使用されている高分子とが相溶し難いため容易とは言えず、しかもエキシマレーザー光照射装置は非常に高価であるため、そのような光吸収剤の混合処理やエキシマレーザー照射による改質処理を含めたフッ素系樹脂フィルムの製造コストが非常に高価になってしまうという問題があった。このため、このような改質処理を施していないフッ素系樹脂表面のみならずポリオレフィンやポリイミド表面に対しても良好な接着性を示す接着剤として機能し、かつ優れた保存安定性を示すワニスが求められている。
【0005】
本発明の目的は、上述した従来の問題を解決しようとするものであり、エキシマレーザー光照射のような改質処理を施していないフッ素系樹脂表面のみならずポリオレフィンやポリイミド表面に対しても良好な接着性を示し、優れた保存安定性を示すワニスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、接着剤として使用するワニスを構成する成分として、被着体と同種の材料を使用すれば接着性が向上するという技術常識の下、被着体としてフッ素系樹脂とポリイミドとを想定した場合に、フッ素系樹脂とポリアミック酸もしくはポリイミドとを、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMP)等の有機溶媒に溶解させてワニスを構成した。ところが、そのようなワニスのフッ素系樹脂に対する接着性は十分とはいえず、更に、室温保存下でワニスに相分離が生ずるという問題があった。そこで、本発明者らは、単にフッ素系樹脂とポリアミック酸もしくはポリイミドとを有機溶媒に溶解させるのではなく、フッ素系樹脂溶液中で酸二無水物とジアミンとを重縮合または重縮合環化することによりポリアミック酸またはポリイミドを生成させて得たワニスが、改質処理を施していないフッ素系樹脂表面のみならずポリオレフィンやポリイミド表面に対しても良好な接着性を示し、しかも優れた保存安定性を示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、酸二無水物とジアミンとを重縮合してなるポリアミック酸と、フッ素系樹脂と、それらを溶解することができる有機溶媒とを含有するポリアミック酸ワニスであって、該ポリアミック酸が、該フッ素系樹脂を有機溶媒に溶解したフッ素系樹脂溶液中で、酸二無水物とジアミンとを重縮合して生成したものであることを特徴とするポリアミック酸ワニスを提供する。また、本発明は、このポリアミック酸ワニスの製造方法として、フッ素系樹脂を有機溶媒に溶解したフッ素系樹脂溶液中で、酸二無水物とジアミンとを重縮合してポリアミック酸を生成させることを特徴とするポリアミック酸ワニスの製造方法を提供する。
【0008】
更に、本発明は、酸二無水物とジアミンとを重縮合環化してなるポリイミドと、フッ素系樹脂と、それらを溶解することができる有機溶媒とを含有するポリイミドワニスであって、該ポリイミドが、該フッ素系樹脂を有機溶媒に溶解したフッ素系樹脂溶液中で、酸二無水物とジアミンとを重縮合環化して生成したものであることを特徴とするポリイミドワニスを提供する。また、本発明は、このポリイミドとして、フッ素系樹脂をポリアミック酸有機溶媒に溶解したフッ素系樹脂溶液中で、酸二無水物とジアミンとを重縮合環化してポリイミドを生成させることを特徴とするポリイミドワニスの製造方法を提供する。
【0009】
加えて、本発明は、ポリイミド被着体又はポリオレフィン被着体とフッ素系被着体とが接着層を介して接着されている接合構造体において、接着層が、上述の本発明のポリアミック酸ワニスを成膜しイミド化したものであるか、又は上述の本発明のポリイミドワニスを成膜したものである接続構造体を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリアミック酸ワニスまたはポリイミドワニスは、フッ素系樹脂溶液中で酸二無水物とジアミンとを重縮合または重縮合環化させてポリアミック酸またはポリイミドを生成させることにより調製される。このため、本発明のポリアミック酸ワニスまたはポリイミドワニスは、フッ素系樹脂のみならずポリイミドやポリオレフィンに対して良好な接着性を示し、良好な保存安定性をも示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<ポリアミック酸ワニス>
本発明のポリアミック酸ワニスは、酸二無水物とジアミンとを重縮合してなるポリアミック酸と、フッ素系樹脂と、それらを溶解することができる有機溶媒とを含有するものである。ここで、このポリアミック酸は、フッ素系樹脂をポリアミック酸有機溶媒に溶解したフッ素系樹脂溶液中で、酸二無水物とジアミンとを重縮合して生成したものである。
【0012】
このように、フッ素系樹脂を有機溶媒に溶解したフッ素系樹脂溶液中で、酸二無水物とジアミンとを重縮合させてポリアミック酸を生成させて構成したポリアミック酸ワニスが、被着体であるフッ素系樹脂やポリオレフィンもしくはポリイミドに良好な接着性を示し、且つ良好な保存安定性を示す理由は、明確ではないが、混合・分散状態が良好であるためと推測される。
【0013】
本発明のポリアミック酸ワニスを構成するポリアミック酸の数平均分子量は、小さすぎると膜が脆くなる傾向があり、大きすぎるとフッ素系樹脂に対する相溶性が低下する傾向があるので、好ましくは1000〜100000、より好ましくは3000〜70000である。分子量の調整は、酸二無水物及びジアミンとの合計(ポリアミック酸)とフッ素系樹脂との配合割合を調整することにより行うことができる。フッ素系樹脂の配合割合を減少させるにつれ、ポリアミック酸の数平均分子量を増大させることができる。また、酸二無水物とジアミンのモル比の制御によっても、分子量調整は可能である。
【0014】
本発明のポリアミック酸ワニスにおける、ポリアミック酸の配合割合は、少なすぎるとワニスの粘度が過度に低くなる傾向があり、多すぎるとワニスがゲル化する傾向があるので、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%である。
【0015】
本発明のポリアミック酸ワニスにおける、フッ素系樹脂の配合割合は、少なすぎるとワニスの粘度が過度に低くなる傾向があり、多すぎるとワニスがゲル化する傾向があるので、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%である。
【0016】
また、ポリアミック酸ワニスにおけるポリアミック酸(PA)に対するフッ素系樹脂(PF)の配合割合(質量基準)は、フッ素系樹脂がポリアミック酸に対し少なすぎると十分な接着性が得られない傾向があり、多すぎると十分な耐熱性が得られない傾向があるので、好ましくはPA:PF=1:6〜6:1である。
【0017】
本発明のポリアミック酸ワニスにおける、フッ素系樹脂およびポリアミック酸を溶解することのできる有機溶媒の配合割合は、少なすぎるとゲル化する傾向があり、多すぎるとワニスの粘度が過度に低くなる傾向があるので、好ましくは60〜94質量%、より好ましくは70〜90質量%である。
【0018】
フッ素系樹脂の具体例として以下の化合物を挙げることができる。これらは2種以上を併用することができる。
【0019】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);
テトラフルオロエチレン−パ−フルオロアルキルビニルエーテル(PFA);
テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP);
ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE);
テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE);
クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE);
ポリビニリデンフルオライド(PVdF);
ビニリデンフルオライド・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF−HFP);及び
ポリビニルフルオライド(PVF)。
【0020】
以上のフッ素系樹脂の具体例の中でも、汎用性の点からPVdF及びPVdF−HFPを好ましく使用することができ、PVdFを特に好ましく使用することができる。
【0021】
ポリアミック酸を構成するジアミン及び酸二無水物は、入手の容易さの点から芳香族ジアミン及び芳香族酸二無水物を好ましく使用することができる。
【0022】
芳香族ジアミンの具体例としては、以下の化合物を挙げることができる。これらは、2種以上を併用することができる。
【0023】
4,4′−ジアミノジフェニルメタン;
3,4′−ジアミノジフェニルメタン;
3,3′−ジアミノジフェニルメタン;
1,2−ビス〔4−アミノフェノキシ〕エタン;
1,3−ビス〔4−アミノフェノキシ〕プロパン;
1,4−ビス〔4−アミノフェノキシ〕ブタン;
1,5−ビス〔4−アミノフェノキシ〕ペンタン;
ジ〔2−(4−アミノフェノキシ)エチル〕エーテル;
1,2−ビス〔2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ〕エタン;
ジ(2−(2−〔4−アミノフェノキシ〕エトキシ)エチル)エーテル;
1,2−ビス〔4−アミノフェニル〕エタン;
ジ(4−ジアミノ−3メチルフェニル)メタン;
ジ(4−ジアミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン(MED);
ジ(4−ジアミノ−3−エチル−5−メチルフェニル)メタン;
ジ(4−ジアミノ−3,5−ジエチルフェニル)メタン;
4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;
1,4−ジアミノベンゼン;
1,4−ジアミノ−2,3,5,6−テトラメチルベンゼン;
2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン(BAPP);
2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP);及び
1,8−ジアミノオクタン。
【0024】
以上の芳香族ジアミンの具体例の中でも、溶剤可溶性を高める点からフッ素を含有するHFBAPPや非対称構造を有するMEDを好ましく使用することができ、MEDを特に好ましく使用することができる。
【0025】
酸二無水物の具体例としては、以下の化合物を挙げることができる。これらは、2種以上を併用することができる。
【0026】
ピロメリット酸二無水物(PMDA);
メチルピロメリット酸二無水物;
ジメチルピロメリット酸二無水物;
ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物;
4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物;
3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA);
5,5′−ジメチル−3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物;
p−(3,4−ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物;
3,3′,4,4′−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物(s−ODPA);
2,3,3′,4′−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物;
3,3′,4,4′−テトラカルボキシベンゾフェノン二無水物;
1,4,5,8−テトラカルボキシナフタレン二無水物;
1,2,5,6−テトラカルボキシナフタレン二無水物;
3,3′,4,4′−テトラカルボキシジフェニルメタン二無水物;
2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物;
2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物;
3,3′,4,4′−テトラカルボキシジフェニルスルホン二無水物;
3,4,9,10−テトラカルボキシペリレン二無水物;
3,3′,4,4′−エチレングリコールビス(フェニル)テトラカルボン酸二無水物;
1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物;
1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物;
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物;
9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物(BPAF);
9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸二無水物。
【0027】
以上の酸二無水物の具体例の中でも、入手の容易さの点からPMDAを好ましく使用することができる。
【0028】
上述したフッ素系樹脂及びポリアミック酸を溶解する有機溶媒としては、ポリアミック酸の原料である酸二無水物及びジアミンも溶解するものである必要がある。このような有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチルスルホン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。これらは、2種以上を併用することができる。中でも、樹脂に対する溶解能力の点からNMPを好ましく使用することができる。必要に応じて、重縮合により生成した水を共沸除去するためのトルエン等の溶媒を発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0029】
本発明のポリアミック酸ワニスは次のように使用することができる。たとえば、ポリアミック酸ワニスを、ポリオレフィンフィルムもしくはポリイミドフィルムに常法により塗布し、その上にフッ素系樹脂フィルムを積層し、全体を3〜50MPaに加圧しながら、80〜220℃に加熱しイミド化(環化)することにより、ポリオレフィンフィルムもしくはポリイミドフィルムとフッ素系樹脂フィルムとを密着させながら、ポリイミド層に転換させることができる。
【0030】
<ポリアミック酸ワニスの調製方法>
本発明のポリアミック酸ワニスは、フッ素系樹脂を有機溶媒に溶解したフッ素系樹脂溶液中で、酸二無水物とジアミンとを重縮合してポリアミック酸を生成させることにより調製することができる。
【0031】
具体的には、以下のような手順で調製する。
1)フッ素系樹脂1質量部を、好ましくはNMP等の有機溶媒5〜20質量部に必要に応じて加熱しながら溶解させ、フッ素系樹脂溶液を調製する。
2)フッ素系樹脂溶液に、フッ素系樹脂1質量部に対しポリアミック酸が好ましくは0.6〜6質量部となる量の酸二無水物とジアミンとを、それぞれ好ましくは5〜20質量部倍のNMP等の有機溶媒に溶解した溶液を混合する。
3)混合物が均一な溶液となったことを確認した後、好ましくは20〜120℃に0.5〜10時間加熱することにより、重縮合を進行させ、ポリアミック酸を生成させる。これにより、フッ素系樹脂とポリアミック酸とを溶解したポリアミック酸ワニスが得られる。
【0032】
<ポリイミドワニス>
本発明のポリイミドワニスは、酸二無水物とジアミンとを重縮合環化してなるポリイミドと、フッ素系樹脂と、それらを溶解することができる有機溶媒とを含有するものである。ここで、このポリイミドは、フッ素系樹脂をポリアミック酸有機溶媒に溶解したフッ素系樹脂溶液中で、酸二無水物とジアミンとを重縮合環化して生成したものである。換言すれば、本発明のポリアミック酸ワニスを構成するポリアミック酸をイミド化(環化)したものに相当する。
【0033】
このように、フッ素系樹脂を有機溶媒に溶解したフッ素系樹脂溶液中で、酸二無水物とジアミンとを重縮合環化させてポリイミドを生成させて構成したポリイミドワニスが、被着体であるフッ素系樹脂やポリオレフィンもしくはポリイミドに良好な接着性を示し、且つ良好な保存安定性を示す理由は、ポリアミック酸ワニスの場合と同様に、明確ではないが、混合・分散状態が良好であるためと推測される。
【0034】
本発明のポリイミドワニスを構成するポリイミドの数平均分子量は、小さすぎると形成した膜が脆くなる傾向があり、大きすぎるとフッ素系樹脂に対する相溶性が低下する傾向があるので、好ましくは1000〜100000、より好ましくは3000〜70000である。分子量の調整は、酸二無水物及びジアミンとの合計(ポリイミド)とフッ素系樹脂との配合割合を調整することにより行うことができる。フッ素系樹脂の配合割合を減少させるにつれ、ポリアミック酸の数平均分子量を増大させることができる。
【0035】
本発明のポリイミドワニスにおける、ポリイミドの配合割合は、少なすぎるとワニスの粘度が過度に低くなる傾向があり、多すぎるとゲル化する傾向があるので、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%である。
【0036】
本発明のポリイミドワニスにおける、フッ素系樹脂の配合割合は、少なすぎるとワニスの粘度が過度に低くなる傾向があり、多すぎるとゲル化する傾向があるので、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%である。
【0037】
また、ポリイミドワニスにおけるポリイミド(PI)に対するフッ素系樹脂(PF)の配合割合(質量基準)は、フッ素系樹脂がポリイミドに対し少なすぎると十分な接着性が得られない傾向があり、多すぎると十分な耐熱性が得られない傾向があるので、好ましくはPI:PF=1:6〜6:1である。
【0038】
本発明のポリイミドワニスにおける、フッ素系樹脂およびポリイミドを溶解することのできる有機溶媒の配合割合は、少なすぎるとゲル化する傾向があり、多すぎるとワニスの粘度が過度に低くなる傾向があるので、好ましくは60〜94質量%、より好ましくは70〜90質量%である。
【0039】
本発明のポリイミドワニスを構成するフッ素系樹脂、また、ポリイミドを構成する酸二無水物並びにジアミン、有機溶媒は、本発明のポリアミック酸ワニスで説明したフッ素系樹脂、酸二無水物並びにジアミン、有機溶媒と同様の構成を取ることができる。
【0040】
本発明のポリイミドワニスは次のように使用することができる。たとえば、ポリイミドワニスを、ポリオレフィンフィルムもしくはポリイミドフィルムに常法により塗布し、その上にフッ素系樹脂フィルムを積層し、全体を3〜50MPaに加圧しながら、80〜120℃に加熱することにより、ポリオレフィンフィルムもしくはポリイミドフィルムとフッ素系樹脂フィルムとを密着させることができる。
【0041】
<ポリイミドワニスの調製方法>
本発明のポリイミドワニスは、フッ素系樹脂をNMP等の有機溶媒に溶解したフッ素系樹脂溶液中で、酸二無水物とジアミンとを重縮合環化してポリイミドを生成させることにより調製することができる。
【0042】
具体的には、以下のような手順で調製する。
1)フッ素系樹脂1質量部を、好ましくはNMP等の有機溶媒5〜20質量部に必要に応じて加熱しながら溶解させ、フッ素系樹脂溶液を調製する。
2)フッ素系樹脂溶液に、フッ素系樹脂1質量部に対しポリイミドが好ましくは0.6〜6質量部となる量の酸二無水物とジアミンとを、それぞれ好ましくは5〜20質量部倍の有機溶媒に溶解した溶液を混合する。
3)混合物が均一な溶液となったことを確認した後、好ましくは80〜220℃に0.5〜10時間加熱することにより、重縮合を進行させ、ポリアミック酸を生成させる。
4)ポリアミック酸を含有する混合物に、水を共沸して除去するためのトルエンなどの水共沸除去溶媒を適宜添加し、好ましくは100〜220℃に加熱しながら、水を共沸除去する。これにより、フッ素系樹脂とポリイミドとを溶解したポリイミドワニスが得られる。
【0043】
<ポリアミック酸ワニス、ポリイミドワニスの用途>
以上説明した本発明のポリアミック酸ワニスとポリイミドワニスは、ポリイミドフレキシブル基板、ガラスエポキシ基板、フッ素樹脂基板などの各種基板のカバーコート材として、あるいはポリオレフィンフィルムやポリイミドフィルムなどのポリオレフィン又はポリイミド被着体と、フッ素系樹脂フィルムなどのフッ素樹脂被着体とを接着する接着剤として有用である。あるいは、他の接着剤を使用するためのアンカーコート材としても有用である。特に、接着剤として使用する場合、ポリイミド被着体又はポリオレフィン被着体とフッ素系樹脂被着体とが、本発明のポリアミック酸ワニスを成膜しイミド化したポリイミド層、又は本発明のポリイミドワニスを成膜したポリイミド層で、良好に接着された接続構造体が提供される。この接続構造体も本発明の一部である。
【実施例】
【0044】
実施例1(ポリアミック酸ワニスの調製、PA:PVdF=1:1)
窒素雰囲気下、機械的撹拌装置、滴下ロート及び温度計を備えた1000mlセパラブル型4つ口フラスコに、8wt%のポリフッ化ビニリデン(PVdF)のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液を450g投入した。そこへジ(4−ジアミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン(MED)20.2g(71.6mmol)とNMP200gとを投入し撹拌してMEDを溶解させた。続いて、ピロメリット酸二無水物(PMDA)15.8g(72.4mmol)とNMP428gとを投入し撹拌してPMDAを溶解させた。
【0045】
得られた溶液を80℃で2時間加熱撹拌してMEDとPMDAとを重縮合させることによりポリアミック酸ワニスを得た。
【0046】
実施例2(ポリイミドワニスの調製、PI:PVdF=1:1)
実施例1の操作を繰り返すことによりポリアミック酸ワニスを得、更に、トルエン50gを添加し、195℃で3時間加熱撹拌することにより、ポリアミック酸をイミド化(環化)した。その際、生成する水をトルエンと共に共沸除去しながら除去した。加熱終了後、減圧下で、トルエンと残存する水とを留去することにより、ポリイミドワニスを得た。このポリイミドワニスに含有されているポリイミドの数平均分子量は23800であった。
【0047】
実施例3(ポリイミドワニスの調製、PI:PVdF=1:2)
窒素雰囲気下、機械的撹拌装置、滴下ロート及び温度計を備えた500mlセパラブル型4つ口フラスコに、8wt%のPVdFのNMP溶液を267g投入した。そこへMED5.97g(21.1mmol)とNMP100gとを投入し撹拌してMEDを溶解させた。続いて、PMDA4.67g(21.4mmol)とNMP122gとを投入し撹拌してPMDAを溶解させた。
【0048】
得られた溶液を80℃で2時間加熱撹拌してMEDとPMDAとを重縮合させることによりポリアミック酸ワニスを得、更に、トルエン30gを添加し、195℃で3時間加熱撹拌することにより、ポリアミック酸をイミド化(環化)した。その際、生成する水をトルエンと共に共沸除去しながら除去した。加熱終了後、減圧下で、トルエンと残存する水とを留去することにより、ポリイミドワニスを得た。
【0049】
実施例4(ポリイミドワニスの調製、PI:PVdF=1:5)
窒素雰囲気下、機械的撹拌装置、滴下ロート及び温度計を備えた500mlセパラブル型4つ口フラスコに、8wt%のPVdFのNMP溶液を334g投入した。そこへMED2.96g(10.48mmol)とNMP20gとを投入し撹拌してMEDを溶解させた。続いて、PMDA2.32g(10.6mmol)とNMP41gとを投入し撹拌してPMDAを溶解させた。
【0050】
得られた溶液を80℃で2時間加熱撹拌してMEDとPMDAとを重縮合させることによりポリアミック酸ワニスを得、更に、トルエン30gを添加し、195℃で3時間加熱撹拌することにより、ポリアミック酸をイミド化(環化)した。その際、生成する水をトルエンと共に共沸除去しながら除去した。加熱終了後、減圧下で、トルエンと残存する水とを留去することにより、ポリイミドワニスを得た。
【0051】
実施例5(ポリイミドワニスの調製、PI:PVdF=2:1)
窒素雰囲気下、機械的撹拌装置、滴下ロート及び温度計を備えた500mlセパラブル型4つ口フラスコに、8wt%のPVdFのNMP溶液を133g投入した。そこへMED12.0g(42.45mmol)とNMP100gとを投入し撹拌してMEDを溶解させた。続いて、PMDA9.37g(42.3mmol)とNMP145gとを投入し撹拌してPMDAを溶解させた。
【0052】
得られた溶液を80℃で2時間加熱撹拌してMEDとPMDAとを重縮合させることによりポリアミック酸ワニスを得、更に、トルエン50gを添加し、195℃で3時間加熱撹拌することにより、ポリアミック酸をイミド化(環化)した。その際、生成する水をトルエンと共に共沸除去しながら除去した。加熱終了後、減圧下で、トルエンと残存する水とを留去することにより、ポリイミドワニスを得た。このポリイミドワニスに含有されているポリイミドの数平均分子量は39300であった。
【0053】
実施例6(ポリイミドワニスの調製、PI:PVdF=5:1)
窒素雰囲気下、機械的撹拌装置、滴下ロート及び温度計を備えた500mlセパラブル型4つ口フラスコに、8wt%のPVdFのNMP溶液を67g投入した。そこへMED15.0g(53.0mmol)とNMP150gとを投入し撹拌してMEDを溶解させた。続いて、PMDA11.48g(52.6mmol)とNMP156gとを投入し撹拌してPMDAを溶解させた。
【0054】
得られた溶液を80℃で2時間加熱撹拌してMEDとPMDAとを重縮合させることによりポリアミック酸ワニスを得、更に、トルエン50gを添加し、195℃で3時間加熱撹拌することにより、ポリアミック酸をイミド化(環化)した。その際、生成する水をトルエンと共に共沸除去しながら除去した。加熱終了後、減圧下で、トルエンと残存する水とを留去することにより、ポリイミドワニスを得た。このポリイミドワニスに含有されているポリイミドの数平均分子量は47267であった。
【0055】
比較例1(ポリイミドワニスの調製、PA:PVdF=1:0)
窒素雰囲気下、機械的撹拌装置、滴下ロート及び温度計を備えた1000mlセパラブル型4つ口フラスコに、ジ(4−ジアミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン(MED)40.4g(143.2mmol)とNMP400gとを投入し撹拌してMEDを溶解させた。続いて、ピロメリット酸二無水物(PMDA)31.6g(144.7mmol)とNMP428gとを投入し撹拌してPMDAを溶解させた。
【0056】
得られた溶液を80℃で2時間加熱撹拌してMEDとPMDAとを重縮合させることによりポリアミック酸ワニスを得、更に、トルエン50gを添加し、195℃で3時間加熱撹拌することにより、ポリアミック酸をイミド化(環化)した。その際、生成する水をトルエンと共に共沸除去しながら除去した。加熱終了後、減圧下で、トルエンと残存する水とを留去することにより、フッ素系樹脂を含有しないポリイミドワニスを得た。
【0057】
比較例2(ポリイミドワニスの調製、混練りタイプ)
比較例1で得たポリイミドワニス10gと、8wt%PVdFのNMP溶液10gとをサンプル瓶に入れ、6gのガラスビーズを投入し、自転・公転ミキサー(泡取り錬太郎AR−250、株式会社シンキー)にて6分間の混合を行うことにより、ポリイミドワニスを得た。
【0058】
比較例3(ポリイミドワニスの調製、混練りタイプ)
比較例1で得たポリイミドワニス10gと、8wt%PVdFのNMP溶液10gとをサンプル瓶に入れ、室温でジャーミルを用いて混合することにより、ポリイミドワニスを得た。
【0059】
<評価>
(保存安定性評価)
各実施例及び各比較例のワニスを室温にて放置し、放置後1日、10日、25日、28日の時点で、相分離したポリイミド相もしくはPVdf相の有無を目視観察した。相分離が観察された場合を「NG(不良)」、観察されなかった場合を「G(良好)」と評価した。得られた結果を表1に示す。
【0060】
(接着性評価)
各実施例及び各比較例のワニスを、乾燥後のPVdF含有ポリイミド膜(PI膜)の膜厚が10μmとなるように、平坦なガラス板(長さ200mm、幅200mm、厚5mm)の片面に流延し、100℃で10分間乾燥した。なお、実施例1の場合はPVdF含有ポリアミック酸膜であり、比較例1の場合はPVdF非含有ポリイミド膜である。
【0061】
同様に、8wt%PVdFのNMP溶液を、乾燥後のPVdF膜の膜厚が10μmとなるように、平坦なガラス板(長さ200mm、幅200mm、厚5mm)の片面に流延し、100℃で10分間乾燥した。
【0062】
PI膜(PA膜)とPVdF膜とが対向するようにガラス板を重ね合わせ、熱プレス装置を用い、加熱温度100℃、加熱圧着時間60秒、圧力0.89kgf/cmの条件で接着した。なお、実施例1の場合には、イミド化を伴うため、加熱温度200℃、加熱圧着時間30分、圧力2MPaの条件で接着した。室温まで放冷後、2枚のガラス板を指で引きはがした場合に、PI膜(PA膜)とPVdF膜との間で抵抗なく引きはがすことができた場合を「NG(不良)」、抵抗が感じられた場合を「G(良好)」と評価した。得られた結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
表1からわかるように、比較例1は、PVdFを含有していないポリイミドワニスを使用した場合であり、保存安定性には問題ないが、そもそも接着性がNGという結果であった。比較例2及び3は、PVdF溶液中でポリイミドを生成したのではなく、PVdFとPIとを通常の混合装置を用いて混合した例であるが、接着性評価がNGであり、混合後1日時点での保存安定性もNGであった。
【0065】
それに対し、実施例1〜6のワニスを使用した場合、保存安定性も接着性もG評価であり、好ましい結果であった。なお、DVdF中での重縮合環化により生成させたポリイミドの分子量が大きくなると(実施例2,5,6参照)、長期保存安定性が低下する傾向があることがわかる。また、PVdFに対するPIの割合を低下させると、生成させるPIの分子量を小さくできることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のポリアミック酸ワニスまたはポリイミドワニスは、フッ素系樹脂のみならずポリイミドやポリオレフィンに対して良好な接着性を示し、良好な保存安定性をも示すことができる。このため、本発明のポリアミック酸ワニスまたはポリイミドワニスは、ポリイミドフレキシブル基板、ガラスエポキシ基板、フッ素樹脂基板などの各種基板のカバーコート材として、あるいはポリオレフィンフィルムやポリイミドフィルムなどのポリオレフィン又はポリイミド被着体と、フッ素系樹脂フィルムなどのフッ素樹脂被着体とを接着する接着剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸二無水物とジアミンとを重縮合してなるポリアミック酸と、フッ素系樹脂と、それらを溶解することができる有機溶媒とを含有するポリアミック酸ワニスであって、該ポリアミック酸が、該フッ素系樹脂を有機溶媒に溶解したフッ素系樹脂溶液中で、酸二無水物とジアミンとを重縮合して生成したものであることを特徴とするポリアミック酸ワニス。
【請求項2】
ポリアミック酸ワニス中のポリアミック酸の含有量が3〜40質量%であり、フッ素系樹脂の含有量が3〜40質量%であり、ポリアミック酸とフッ素系樹脂との含有割合(質量基準)が、1:6〜6:1である請求項1記載のポリアミック酸ワニス。
【請求項3】
ポリアミック酸の数平均分子量が、1000〜100000である請求項1または2記載のポリアミック酸ワニス。
【請求項4】
ポリアミック酸を構成するジアミンが:
4,4’−ジアミノジフェニルメタン;
3,4’−ジアミノジフェニルメタン;
3,3’−ジアミノジフェニルメタン;
1,2−ビス〔4−アミノフェノキシ〕エタン;
1,3−ビス〔4−アミノフェノキシ〕プロパン;
1,4−ビス〔4−アミノフェノキシ〕ブタン;
1,5−ビス〔4−アミノフェノキシ〕ペンタン;
ジ〔2−(4−アミノフェノキシ)エチル〕エーテル;
1,2−ビス〔2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ〕エタン;
ジ(2−(2−〔4−アミノフェノキシ〕エトキシ)エチル)エーテル;
1,2−ビス〔4−アミノフェニル〕エタン;
ジ(4−ジアミノ−3メチルフェニル)メタン;
ジ(4−ジアミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン(MED);
ジ(4−ジアミノ−3−エチル−5−メチルフェニル)メタン;
ジ(4−ジアミノ−3,5−ジエチルフェニル)メタン;
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル;
1,4−ジアミノベンゼン;
1,4−ジアミノ−2,3,5,6−テトラメチルベンゼン;
2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン(BAPP);
2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP);及び
1,8−ジアミノオクタン
から選択される少なくとも一種であり、酸二無水物が:
ピロメリット酸二無水物(PMDA);
メチルピロメリット酸二無水物;
ジメチルピロメリット酸二無水物;
ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物;
4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物;
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA);
5,5’−ジメチル−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物;
p−(3,4−ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物;
3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物(s−ODPA);
2,3,3’,4’−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物;
3,3’,4,4’−テトラカルボキシベンゾフェノン二無水物;
1,4,5,8−テトラカルボキシナフタレン二無水物;
1,2,5,6−テトラカルボキシナフタレン二無水物;
3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニルメタン二無水物;
2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物;
2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物;
3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニルスルホン二無水物;
3,4,9,10−テトラカルボキシペリレン二無水物;
3,3’,4,4’−エチレングリコールビス(フェニル)テトラカルボン酸二無水物;
1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物;
1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物;
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物;
9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物(BPAF);及び
9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸二無水物
から選択される少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミック酸ワニス。
【請求項5】
ポリアミック酸を構成するジアミンが、ジ(4−ジアミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタンであり、酸無水物がピロメリット酸二無水物である請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミック酸ワニス。
【請求項6】
フッ素系樹脂が:
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);
テトラフルオロエチレン−パ−フルオロアルキルビニルエーテル(PFA);
テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP);
ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE);
テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE);
クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE);
ポリビニリデンフルオライド(PVdF);
ビニリデンフルオライド・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF−HFP);及び
ポリビニルフルオライド(PVF)
から選択される少なくとも一種である請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミック酸ワニス。
【請求項7】
フッ素系樹脂が、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)である請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミック酸ワニス。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のポリアミック酸ワニスの製造方法であって、フッ素系樹脂を有機溶媒に溶解したフッ素系樹脂溶液中で、酸二無水物とジアミンとを重縮合してポリアミック酸を生成させることを特徴とするポリアミック酸ワニスの製造方法。
【請求項9】
酸二無水物とジアミンとを重縮合環化してなるポリイミドと、フッ素系樹脂と、それらを溶解することができる有機溶媒とを含有するポリイミドワニスであって、該ポリイミドが、該フッ素系樹脂を有機溶媒に溶解したフッ素系樹脂溶液中で、酸二無水物とジアミンとを重縮合環化して生成したものであることを特徴とするポリイミドワニス。
【請求項10】
ポリイミドワニス中のポリイミドの含有量が3〜40質量%であり、フッ素系樹脂の含有量が3〜40質量%であり、ポリイミドとフッ素系樹脂との含有割合(質量基準)が、1:6〜6:1である請求項9記載のポリイミドワニス。
【請求項11】
ポリイミドの数平均分子量が、1000〜100000である請求項9または10記載のポリイミドワニス。
【請求項12】
ポリイミドを構成するジアミンが:
4,4’−ジアミノジフェニルメタン;
3,4’−ジアミノジフェニルメタン;
3,3’−ジアミノジフェニルメタン;
1,2−ビス〔4−アミノフェノキシ〕エタン;
1,3−ビス〔4−アミノフェノキシ〕プロパン;
1,4−ビス〔4−アミノフェノキシ〕ブタン;
1,5−ビス〔4−アミノフェノキシ〕ペンタン;
ジ〔2−(4−アミノフェノキシ)エチル〕エーテル;
1,2−ビス〔2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ〕エタン;
ジ(2−(2−〔4−アミノフェノキシ〕エトキシ)エチル)エーテル;
1,2−ビス〔4−アミノフェニル〕エタン;
ジ(4−ジアミノ−3メチルフェニル)メタン;
ジ(4−ジアミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン(MED);
ジ(4−ジアミノ−3−エチル−5−メチルフェニル)メタン;
ジ(4−ジアミノ−3,5−ジエチルフェニル)メタン;
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル;
1,4−ジアミノベンゼン;
1,4−ジアミノ−2,3,5,6−テトラメチルベンゼン;
2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン(BAPP);
2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP);及び
1,8−ジアミノオクタン
から選択される少なくとも一種であり、酸二無水物が:
ピロメリット酸二無水物(PMDA);
メチルピロメリット酸二無水物;
ジメチルピロメリット酸二無水物;
ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物;
4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物;
3,3’,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA);
5,5’−ジメチル−3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物;
p−(3,4−ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物;
3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物(s−ODPA);
2,3,3’,4’−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物;
3,3’,4,4’−テトラカルボキシベンゾフェノン二無水物;
1,4,5,8−テトラカルボキシナフタレン二無水物;
1,2,5,6−テトラカルボキシナフタレン二無水物;
3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニルメタン二無水物;
2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物;
2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物;
3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニルスルホン二無水物;
3,4,9,10−テトラカルボキシペリレン二無水物;
3,3’,4,4’−エチレングリコールビス(フェニル)テトラカルボン酸二無水物;
1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物;
1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物;
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物;
9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物(BPAF);及び
9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸二無水物
から選択される少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミック酸ワニス。
【請求項13】
ポリイミドを構成するジアミンが、ジ(4−ジアミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタンであり、酸無水物がピロメリット酸二無水物である請求項9〜12のいずれかに記載のポリイミドワニス。
【請求項14】
フッ素系樹脂が:
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);
テトラフルオロエチレン−パ−フルオロアルキルビニルエーテル(PFA);
テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP);
ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE);
テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE);
クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE);
ポリビニリデンフルオライド(PVdF);
ビニリデンフルオライド・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF−HFP);及び
ポリビニルフルオライド(PVF)
から選択される少なくとも一種である請求項9〜13のいずれかに記載のポリイミドワニス。
【請求項15】
フッ素系樹脂が、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)である請求項9〜13のいずれかに記載のポリイミドワニス。
【請求項16】
請求項9〜15のいずれかに記載のポリイミドワニスの製造方法であって、フッ素系樹脂を有機溶媒に溶解したフッ素系樹脂溶液中で、酸二無水物とジアミンとを重縮合環化してポリイミドを生成させることを特徴とするポリイミドワニスの製造方法。
【請求項17】
ポリイミド被着体又はポリオレフィン被着体とフッ素系樹脂被着体とが接着層を介して接着されている接合構造体において、接着層が、請求項1〜8のいずれかに記載のポリアミック酸ワニスを成膜しイミド化したものであるか、又は請求項9〜15のいずれかに記載のポリイミドワニスを成膜したものである接続構造体。

【公開番号】特開2012−82329(P2012−82329A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230231(P2010−230231)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】