説明

ポリアミック酸組成物、ポリイミド無端ベルト、及び画像形成装置

【課題】 安定した粘度を有するポリアミック酸組成物とその製造方法、抵抗が均一であり、機械的特性及び表面性に優れたポリイミド無端ベルトとその製造方法、及び該ポリイミド無端ベルトを具備し、高品質の転写画像を得ることができる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 ポリアミック酸と、ポリアニリンと、該ポリアニリンを導電化させるドーパントと、溶媒と、塩基性添加物と、を含有してなることを特徴とするポリアミック酸組成物。ポリイミドと、ポリアニリンと、該ポリアニリンを導電化させるドーパントと、塩基性添加剤と、を含有してなることを特徴とするポリイミド無端ベルト、及び該ポリイミド無端ベルトを具備する画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度、高耐熱性、高耐薬品性などの機械特性や化学特性と、導電性・半導電性・帯電性などの電気特性とを併せ持つポリイミド成型品製造に用いられるポリアミック酸組成物、該ポリアミック酸組成物を用いて得られるポリイミド無端ベルト、及び該ポリイミド無端ベルトを具備した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置は、導電性材料からなる感光体上に一様に電荷を形成し、変調した画像信号をレーザー光などで静電潜像を形成した後、帯電したトナーにより静電潜像を現像してトナー像とする。次いでこのトナー像を直接又は中間転写体を介して紙などの記録媒体に転写することにより画像を得る装置である。
【0003】
ここで、感光体上のトナー像を中間転写体に一次転写し、次いで、中間転写体上のトナー像を紙などの記録媒体へ二次転写する方法、いわゆる、中間転写方式を採用した画像形成装置に用いられる中間転写ベルトは、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリカーボネート、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体とポリカーボネートとのブレンドなどの熱可塑性樹脂にカーボンブラック等の導電剤を分散させた導電性無端ベルトが提案されている。
【0004】
更に近年、この中間転写体を加熱することで記録媒体上のトナー像を定着せしめる方法、即ち中間転写及び定着方式が開示されている(例えば、特許文献1)。中間転写・定着方式は、トナー像を記録媒体へ中間転写体を介して二次転写せしめた後、この中間転写体を直接又は間接的に加熱することで、この中間転写体に接触している記録媒体上のトナー像を定着する方式であり、中間転写機構と定着機構が離別していた従来装置と比較して、装置の小型化、低コスト化が可能であるという利点を有する。
【0005】
ここで、中間転写及び定着方式に用いられるベルト材料には、駆動時の応力に耐える機械強度を有すると同時に、定着時に与えられる200℃近い熱に耐え得ることが要求される。この要請から、中間転写及び定着ベルトに用いられる材料には、高い機械強度と耐熱性を併有するポリイミド樹脂が適している。
ポリイミド樹脂をベルト状に成型する際には、ポリイミド樹脂が一般に不溶であるために、その前駆体であるポリアミック酸溶液を塗布液として用い、これを円筒状金型の表面又は裏面に塗布し、乾燥後に加熱してアミック酸基の脱水イミド化反応を行う。この際、ポリアミック酸溶液の塗工に欠陥が生じた場合、成型品の品質が低下してしまうことが問題となっている。特に、ポリアミック酸溶液の粘度が不足している場合のタレや流れが起こり、成型品の面内厚さムラが生じてしまう。また、逆にポリアミック酸溶液の粘度が設定よりも高い場合には、塗工時に塗布液の展開が起こり難くなってしまい、塗工面の一部が厚膜化して熱処理時にボイドとなることもある。
以上の点より、円筒状金型上に形成するベルト状成型品に限らず、ポリイミド樹脂の成型品を製造する際には塗液(ポリアミック酸溶液)の粘度の制御が重要な課題となっている。
【0006】
一方、ポリイミド樹脂の成型品に導電性を付与する方法として、導電材料としてポリアニリンなどの導電性高分子を使用する方法が知られている。ポリアニリンのような導電性高分子は、ポリイミドワニスに均一に溶解又は分散しやすいため、成型品を所定の抵抗値に調整することが容易となり、かつ、均一な抵抗値が得られるという長所がある。このようにポリイミド樹脂中に導電材料としてポリアニリンを添加して導電性を付与する方法が、例えば、引用文献2〜4に開示されている。
【0007】
しかしながら、上記引用文献2〜4のように、導電性高分子(ポリアニリン)を使用する際、ポリアミック酸溶液中に、ポリアニリンを導電化するためのドーパントとなる酸性化合物を多量に添加しなければならず、その酸性化合物の存在により、ポリアミック酸の加水分解を促進してしまいポリアミック酸溶液の粘度を低下させてしまうことや、また、イミド化反応を促進して塗液が増粘したり、更には、ポリイミドのポリマーが析出してしまう場合があった。その結果、ポリアミック酸溶液の粘度が不安定になるという問題を有していた。このようにポリアミック酸溶液の粘度が安定しない場合、それを塗液として用いて得られた成型品の品質、例えば、局所的な抵抗の不均一、機械的特性の低下、更には、表面粗さの不均一などの表面性の劣化を引き起こす恐れがあった。
【特許文献1】特開平6−258960号公報
【特許文献2】特開平8−259709号公報
【特許文献3】特開平9−176329号公報
【特許文献4】特開平2000−226765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
すなわち、ポリアミック酸とポリアニリンとを含有し、かつ、安定した粘度を有するポリアミック酸組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、抵抗が均一であり、機械的特性及び表面性に優れたポリイミド無端ベルトを提供することを別の目的とする。
更に、本発明は、前記ポリイミド無端ベルトを具備し、高品質の転写画像を得ることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは、下記本発明により当該課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は、
【0010】
<1> ポリアミック酸と、ポリアニリンと、該ポリアニリンを導電化させるドーパントと、溶媒と、塩基性添加剤と、を含有してなることを特徴とするポリアミック酸組成物である。
【0011】
<2> 前記塩基性添加剤が、塩基性無機粒子及び3級アミンからなる群より選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする<1>に記載のポリアミック酸組成物である。
【0012】
<3> 前記ドーパントが酸性化合物であることを特徴とする<1>又は<2>に記載のポリアミック酸組成物である。
【0013】
<4> 前記酸性化合物が、ドデシルベンゼンスルホン酸及び/又はフェノールスルホン酸であることを特徴とする<3>に記載のポリアミック酸組成物である。
【0014】
<5> 前記ドーパントの添加量が、前記ポリアニリンの構成単位ユニットに対して、0.1〜5当量である<1>〜<3>のいずれか1項に記載のポリアミック酸組成物である。
【0015】
<6> 調整直後の粘度V0と、室温環境下2日間経過後の粘度V2と、の粘度比V2/V0が0.8〜1.2の範囲である<1>〜<5>のいずれか1項に記載のポリアミック酸組成物である。
【0016】
<7> ポリイミドと、ポリアニリンと、該ポリアニリンを導電化させるドーパントと、塩基性添加剤と、を含有してなることを特徴とするポリイミド無端ベルトである。
【0017】
<8> 更に、導電剤を含有することを特徴とする<7>に記載のポリイミド無端ベルトである。
【0018】
<9> <1>〜<6>のいずれか1項に記載のポリアミック酸組成物を用いて形成されることを特徴とする<7>に記載のポリイミド無端ベルトである。
【0019】
<10> <7>乃至<9>のいずれか1項に記載のポリイミド無端ベルトを具備することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、安定した粘度を有するポリアミック酸組成物を提供することができる。
また、抵抗が均一であり、機械的特性及び表面性に優れたポリイミド無端ベルトとその製造方法を提供することができる。
更に、本発明のポリイミド無端ベルトを具備することで、高品質の転写画像を得ることができる画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明のポリアミック酸組成物、ポリイミド無端ベルト、及び画像形成装置について、詳細に説明する。
【0022】
<ポリアミック酸組成物>
本発明のポリアミック酸組成物は、ポリアミック酸と、ポリアニリンと、該ポリアニリンを導電化させるドーパントと、溶媒と、塩基性添加物と、を含有してなることを特徴とする。
このように、本発明のポリアミック酸組成物を構成する塩基性添加物は、塩基性を示すことで、酸性化合物からなるドーパントにより生じるポリアミック酸の加水分解を抑制することができる。この結果、ポリアミック酸の経時における粘度変化を抑制することが可能となり、粘度の安定化を図ることができる。
以下、本発明のポリアミック酸組成物を構成する各成分について説明する。
【0023】
[塩基性添加物]
本発明における塩基性添加物としては、ポリアミック酸組成物を構成する溶媒に溶解した際に、塩基性を示す化合物であれば、如何なるものも用いることができるが、具体的には、塩基性無機粒子及び3級アミンが挙げられる。
ここで用いられる塩基性無機粒子とは、無機粒子1gを水100ml中に分散させたとき、25℃におけるpHの値が7.0以上である無機粒子を意味する。具体的には、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、雲母、タルク、カオリンなどの数平均粒径が10nm〜100μmの粒子が用いられる。これらは単独、あるいは併用して使用される。
ここで、塩基性無機粒子の粒径は、レーザー散乱式粒度分布測定機により測定される。
【0024】
塩基性無機粒子の添加量は、ポリアミック酸組成物中のポリアミック酸とポリアニリンからなる樹脂の総量を100質量部としたとき、0.01〜20質量部とすることが好ましい。0.01質量部未満では、本発明の効果であるポリアミック酸組成物の粘度安定化を達成することができない。また、20質量部を超えると、ポリイミド成型物のしなやかさが失われてしまう。
【0025】
このように、塩基性無機粒子を添加することで、上述のように塩基性無機粒子の塩基性に起因して発現する効果に加えて、無機粒子がフィラーとして機能することにより、ポリイミド成型品の強度を向上させることが可能である。
【0026】
また、3級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアミルアミン、ピリジン、ピコリン、コリジン、ルチジン、キノリン、イソキノリンを挙げることができる。これらのうち、ピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリン、トリエチルアミンが好適に用いられる。これらは単独あるいは併用して使用される。
3級アミンの添加量は、ドーパントに対して0.7〜1.3倍のモル比が好ましい。0.7倍より少ない場合は酸としての機能が樹脂に強く作用し、ポリアミック酸が分解され粘度低下を引き起こすことがある。また、1.3倍より多い場合は過剰な3級アミンがポリアミック酸のイミド化を促進してしまいゲル化を引き起こすことがある。
このような3級アミンを添加する場合は、ドーパントと共に塩として添加してもよく、単独で添加してもよい。
【0027】
このように、3級アミンを添加することで、上述のように3級アミンの塩基性に起因して発現する効果に加えて、3級アミンがポリアミック酸のポリイミドへの転化促進触媒として機能することにより、低い温度でポリイミドを成型することが可能である。
【0028】
なお、3級アミンを含有するポリアミック酸組成物を塗工乾燥してなるポリイミド樹脂成型物においては、3級アミンが乾燥工程中に揮発するため、成型品中に残存する3級アミン量は少なくなる。例えば、ポリイミド樹脂成型品として、後述するポリイミド無端ベルトを成型する場合、ポリイミド無端ベルト中に残存する3級アミンは、1〜5質量%の範囲であることが好ましく、1〜4質量%の範囲であることがより好ましく、1〜3質量%の範囲であることが更に好ましい。この範囲の残存量であれば、ポリイミド無端ベルトを画像形成装置の中間転写ベルトとして具備した場合に、画質への影響を低減することができる。この3級アミンの残留量が5質量%よりも多すぎると、ポリイミド無端ベルトの強度が脆弱となり、1質量%よりも少なすぎるとベルトとしてのしなやかさが低下する。
【0029】
本発明の塩基性添加剤としては、上記の塩基性無機粒子及び3級アミンからなる群より選択される1種以上を用いることが好ましく、また、2種以上を混合して用いてもよく、更に、塩基性無機粒子及び3級アミンを併用してもよい。
【0030】
[ポリアミック酸]
本発明におけるポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを実質的に等モル量を有機極性溶媒中で重合反応させて得られるものである。
以下、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物について説明する。
【0031】
(テトラカルボン酸二無水物)
ポリアミック酸の製造に用いられ得るテトラカルボン酸二無水物としては、特に制限はなく、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も使用できる。
芳香族系テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等を挙げることができる。
【0032】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。
【0033】
本発明に使用されるテトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物が好ましく、更に、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、が最適に使用される。
これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0034】
(ジアミン化合物)
次に、ポリアミック酸の製造に用いられ得るジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物であれば特に限定されない。
具体的には、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’ −ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミン等を挙げることができる。
【0035】
本発明に使用されるジアミン化合物としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、が好ましい。
これらのジアミン化合物は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0036】
(テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との好ましい組み合わせ)
本発明におけるポリアミック酸としては、好ましくは、成型体の強度の観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族系ジアミンとからなるものが好ましい。
【0037】
(合成溶媒)
このポリアミック酸の生成反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系或いはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更には、キシレン、トルエンのような芳香族炭化水素も使用可能である。
【0038】
(ポリアミック酸重合時の固形分濃度)
ポリアミック酸重合時の反応溶液中の固形分濃度は特に規定されるものではないが、5〜50質量%が好ましく。更に、特に10〜30質量%が好適である。固形分濃度が5質量%未満であるとポリアミック酸の重合度が低く、最終的に得られる成型体の強度が低下する。また、重合時の固形分濃度が、50質量%より高いと原料モノマーの不溶部が生じ反応が進行しない。
【0039】
(ポリアミック酸重合温度)
ポリアミック酸重合時の反応温度としては、0℃〜80℃の範囲で行われる。反応温度が0℃以下であると、溶液の粘度が高くなり、反応系の攪拌が十分に行うことができなくなるためである。また、反応温度が80℃より高くなると、ポリアミック酸の重合にと平行して、一部イミド化反応が起こるため、反応制御の点で問題がある。
【0040】
[ポリアニリン]
本発明におけるポリアニリンは、導電材料として用いられるもので、該ポリアニリンの合成・構造については、特開平3−28229号公報に詳しく述べられている。
本発明におけるポリアニリンは、アニリン又はアニリン誘導体から酸化重合法にて容易に製造できる。ポリアニリンはその酸化の状態によってロイコエメラルジン(又はロイコエマラルジン)(leucoemeraldine)、エメラルジン(又はエマラルジン)(emeraldine)及びパーニグルアニリン(pernigraniline)の構造をとることが知られている。この中でも、エメラルジン構造を持つポリアニリンがドーピングの時に一番高い電気伝導度を持ち、空気の中で安定なので一番有用である。
ポリアニリンの合成は、特開平3−28229号公報に詳細に記載されているように、プロトン酸の存在下に溶剤中にてアニリンに温度を5℃以下、好ましくは0℃以下の温度を保持しつつ、酸化剤を作用させて酸化重合を行い、後述するプロトン酸を用いてドープされたアニリンの酸化重合体(以下、ドープされたポリアニリンという。)を生成させる。次いで、このドープされたポリアニリンを塩基性物質によって脱ドープすることによって得ることができる。
【0041】
ポリアミック酸組成物中のポリアニリンの添加量(使用量)は、発現させる導電度によって適宜調整される。一般的には、ポリアミック酸組成物中のポリアミック酸樹脂分100質量部に対して、添加されるポリアニリンは5〜40質量部が好ましく、より好ましくは10〜30質量部である。ポリアニリンの添加量が5質量部未満であると所定の電気導電性を発現することができず、40質量部を超えると、ポリアミック酸組成物を用いたポリイミド成型品のしなやかさが失われてしまい、例えば、ポリイミド無端ベルトを成型する場合、ベルトとしての機能を有しなくなってしまうためである。
【0042】
本発明におけるポリアニリンは適当な溶媒に溶解してポリアニリン溶液として用いてもよい。また、ポリアニリンはその一部が分散していてもよく、その場合、ポリアニリンを分散させるために分散剤を用いてもよい。この分散剤としては、非イオン系高分子化合物が好ましく、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエーテルヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(N,N’−ジエチルアクリルアジド)、ポリ(N−ビニルホルムアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリ(N−ビニルフタルアミド)、ポリ(N−ビニルコハク酸アミド)、ポリ(N−ビニル尿素)、ポリ(N−ビニルピペリドン)、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、ポリ(N−ビニルオキサゾリン)等を例示することができる。
【0043】
また、ポリアニリン溶液は、ポリアニリンを適当な溶媒(例えば、後述する溶媒)に溶解させ、ポリアニリンの凝集体を解砕して得ることができる。ここで、ポリアニリンの凝集体の解砕方法としては、ミキサーや攪拌子による攪拌、平行ロール、超音波分散、ジェットミル、ビーズミル、ボールミル、ペイントシェイカー、スピードローターミル、3本ロール、などの物理的手法、更には分散剤の導入などの化学的手法が例示されるが、これらに限定されるものではない。
解砕処理後のポリアニリン粒子の体積平均粒径は、10nm〜1μmの範囲が好ましい。1μmより大きいと、例えば、本発明のポリアミック酸組成物を用いてポリイミド無端ベルトを成型した場合に、その表面に欠陥として現れることや、電気抵抗の面内均一性を損なうためである。
【0044】
[ドーパント]
本発明において、ポリアニリンをドーピングして導電性とするためのドーパントとしては、プロトン酸などの酸性化合物を好ましく用いることができる。ドーパントとして好ましいプロトン酸は、ポリイミド成型時の熱処理によって、揮発・分解しない化合物が好ましい。このようなプロトン酸としては、例えば、スルホン酸化合物、有機カルボン酸化合物が好適に用いられる。
【0045】
スルホン酸化合物としては、例えば、アミノナフトールスルホン酸、メタニル酸、スルファニル酸、アリルスルホン酸、ラウリル硫酸、キシレンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキシルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸、ジエチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、ジブチルベンゼンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、エチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、ヘプチルナフタレンスルホン酸、オクチルナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸、デシルナフタレンスルホン酸、ウンデシルナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、ペンタデシルナフタレンスルホン酸、オクタデシルナフタレンスルホン酸、ジメチルナフタレンスルホン酸、ジエチルナフタレンスルホン酸、ジプロピルナフタレンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、ジペンチルナフタレンスルホン酸、ジヘキシルナフタレンスルホン酸、ジヘプチルナフタレンスルホン酸、ジオクチルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、トリメチルナフタレンスルホン酸、トリエチルナフタレンスルホン酸、トリプロピルナフタレンスルホン酸、トリブチルナフタレンスルホン酸、カンフアースルホン酸、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸が好適に用いられる。
【0046】
また、有機カルボン酸化合物の具体例として、安息香酸、m−ブロモ安息香酸、p−クロロ安息香酸、m−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、2,4−ジニトロ安息香酸、3,5−ジニトロ安息香酸、ピクリン酸、o−クロロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、トリメチル安息香酸、p−シアノ安息香酸、m−シアノ安息香酸、チモールブルー、サリチル酸、5−アミノサリチル酸、o−メトキシ安息香酸、1,6−ジニトロ−4−クロロフェノール、2,6−ジニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、p−オキシ安息香酸、等を挙げることができる。
【0047】
更に、本発明において、ドーパントとして用いられるプロトン酸は、ポリマー酸であってもよい。このようなポリマー酸としては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリビニル硫酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアリルスルホン酸、ポリメタリルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、等を挙げることができる。
これらのドーパントの内、特に、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、フェニルホスホン酸が好ましい。
【0048】
これらのドーパントは、ポリアニリンの構成単位ユニットに対して、0.1〜5当量、より好ましくは、1〜3当量の範囲で添加される。
【0049】
[溶媒]
本発明における溶媒としては、ポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されないが、具体的には、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系或いはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更には、キシレン、トルエンのような芳香族炭化水素も使用可能である。
【0050】
この溶媒はポリアミック酸溶液を調整する際に用いられてもよい。また、この溶媒は、上述のポリアミック酸重合時から使用しても、ポリアミック酸重合後に所定の溶媒に置換してもよい。溶媒の置換には、ポリアミック酸重合後の溶液に、所定量の溶剤を添加して希釈する方法、ポリイミドポリマーを再沈殿した後に、所定の溶媒中に再溶解させる方法、溶剤を徐々に留去しながら所定の溶媒を添加して組成を調整する方法のいずれでもよい。
ポリアミック酸溶液中のポリアミック酸の濃度は、10〜50質量部の範囲で調整されることが好ましい。
【0051】
また、この溶媒はポリアニリン溶液/分散液を調製する際に用いられてもよい。その場合、ポリアニリン溶液/分散液中のポリアニリンの含有量は、0.1〜30質量%の範囲で調整されることが好ましい。
【0052】
[添加剤]
また、本発明のポリアミック酸組成物に添加することができる任意成分(添加剤)としては、カーボンブラック等が挙げられる。
【0053】
(カーボンブラック)
任意成分であるカーボンブラックは、例えば、本発明のポリアミック酸組成物を用いて得られる成型品の抵抗値を調整する目的で用いられる。
例えば、本発明のポリアミック酸組成物を用いて、電子写真方式の画像形成装置に適用されるポリイミド無端ベルトを得る場合、カーボンブラックの添加量は、ポリアミック酸組成物中のポリアミック酸100質量部に対して、0〜20質量部であることが好ましく、5〜10質量部であることがより好ましい。カーボンブラックの添加量が20質量部を超えると所望の抵抗値が得られ難くなる。更に、カーボンブラックを5〜10質量部含有させることにより、その効果を最大限発揮させることができ、表面抵抗率の面内ムラや電界依存性を顕著に向上させることができる。
【0054】
[ポリアミック酸組成物の調製]
本発明にポリアミック酸組成物は、下記の(a)や(b)に示す手順で調製される。
(a)ポリアニリンを溶解してなるポリアニリン溶液と、ポリアミック酸を溶解してなるポリアミック酸溶液とをそれぞれ調製する。調製されたポリアニリン溶液にドーパントを添加してポリアニリンを導電化した後、この混合液に、ポリアミック酸溶液を徐々に添加して、攪拌・混合する。続いて、塩基性添加物を添加することで、ポリアミック酸組成物が得られる。
(b)ポリアニリンを溶解してなるポリアニリン溶液と、ポリアミック酸を溶解してなるポリアミック酸溶液とをそれぞれ調製する。調製されたポリアミック酸溶液にドーパントを添加して得られた混合液に、ポリアニリン溶液を徐々に添加して、攪拌・混合する。続いて、塩基性添加物を添加することで、ポリアミック酸組成物が得られる。
なお、ポリアミック酸組成物の調製には、必要に応じて、上述のカーボンブラック等の任意成分を添加し、攪拌・分散する工程を含んでいてもよい。
【0055】
なお、塩基性添加物を添加した後、塩基性添加物を分散させたり、又はその凝集体を壊砕する方法としては、ミキサーや攪拌子による攪拌、平行ロール、超音波分散などの物理的手法、更には分散剤の導入などの化学的手法が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
このようにして得られたポリアミック酸組成物は、調整直後の粘度V0と、室温環境下、(本発明においては、25℃)2日間経過後の粘度V2との粘度比V2/V0が、0.8以上1.2以下であることが好ましく、0.9以上1.15以下であることがより好ましい。V2/V0が0.8未満であると、粘度低下によって塗工時にタレなどを生じ、結果、成型品の不良箇所となる場合があり、一方、1.2を超えるとポリアニリンのゲルが生じ、抵抗の不均一や画質欠陥の原因となる場合がある。なお、ポリアミック酸組成物の調整直後の粘度の測定は、上記の5つの必須成分を混合した後、攪拌が終了した直後に行われるものである。
粘度比V2/V0は、ポリアミック酸組成物中に含有される塩基性化合物の種類や添加量を調節することで上記範囲に制御することができる。
ここで、ポリアミック酸組成物の粘度は、液温25℃での粘度であり、HAKKE(株)社製定速粘度計PK100を用いて測定した値である。
【0057】
以上、本発明にかかるポリアミック酸組成物について説明したが、本発明はこれらの実施の態様のみについて限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で,当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しうるものである。
【0058】
<ポリイミド無端ベルト>
本発明のポリイミド無端ベルトは、ポリイミドと、ポリアニリンと、該ポリアニリンを導電化させるドーパントと、塩基性添加剤と、を含有してなることを特徴とする。
このように、本発明のポリイミド無端ベルトは、上記の4つの必須成分を含有していればよいが、塩基性添加剤の添加効果を効率よく得るために、上述の本発明のポリアミック酸組成物を用いて得られるものであることが好ましい。
本発明のポリイミド無端ベルトは、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ、これらの複合装置などの電子写真装置に用いられることが好ましい。より詳しくは、このポリイミド無端ベルトは、転写ベルト、搬送ベルト、更には、中間転写方式の電子写真装置における中間転写ベルトなどに適用されることが好ましい。
【0059】
本発明のポリイミド無端ベルトの最大厚みと最小厚みの差は、大きすぎるとシワ寄りの原因となる。ベルトのシワ寄りは、電子写真装置に用いられた場合、転写や定着を行った際に画質の低下を誘起するため、可能な限り低減する必要がある。この点から、ポリイミド無端ベルトの最大厚みと最小厚みの差は、ポリイミド無端ベルトの平均厚みの20%以下であることが望ましい。なお、「ベルトの厚み」とは、ベルトと5mm2以上の面積で接触した平板間の距離を測定する厚み計で測定できる厚みのことであり、ベルト表面に特異的に存在する幅50μm以下の突起物の高さを無視したものである。
また、ポリイミド無端ベルトの厚さは、厚すぎると熱伝導度や抵抗値等の観点から好ましくなく、薄すぎるとその靭性が小さすぎるため好ましくない。従って、ベルトの用途を考慮すると、ベルトの厚みは10μm以上1000μm以下、好ましくは30μm以上150μm以下であることが望ましい。
【0060】
また、本発明のポリイミド無端ベルトの導電性、特に、体積抵抗率は、その用途に合わせて、適宜、調整されればよい。例えば、本発明のポリイミド無端ベルトを中間転写ベルトに適用する場合、その体積抵抗率は、106Ω・cm以上1012Ω・cm以下であることが好ましい。より好ましくは、109Ω・cm以上1012Ω・cm以下である。この体積抵抗率が1×106ΩCm未満である場合には、像担持体から中間転写ベルトに転写された未定着トナー像の電荷を保持する静電的な力が働きにくくなるため、トナー同士の静電的反発力や画像エッジ付近のフリンジ電界の力によって、画像の周囲にトナーが飛散してしまい(ブラー)、ノイズの大きい画像が形成されることがある。一方、体積抵抗率が1×1012Ωcmより高い場合には、電荷の保持力が大きいために、1次転写での転写電界で中間転写ベルト表面が帯電するために除電機構が必要となることがある。従って、前記体積抵抗率を、上記範囲とすることで、トナーの飛散や、除電機構を必要とする問題を解消することができる。
【0061】
更に、本発明のポリイミド樹脂無端ベルトは、ベルト表面の、JIS B 0601(2001)に規定される表面粗さRaが、0.1μm以上0.5μm以下であることが好ましい。ベルト表面の表面粗さRaが0.5μmを超えるものであると、電界の集中が起きやすくなり、抵抗低下の発生要因となる。また、より抵抗の維持性が向上する観点から、Raは0.1μm以下であることがより好ましく、0.05μm以下であることが特に好ましい。なお、特に制限されるわけではないが、ベルトの金型と接触する面の表面粗さ(すなわち、金型の表面粗さ)が小さすぎると、ベルトと金型との密着性が強まりすぎ、脱型しにくくなるという観点から、下限は0.01μm以上であることが一般的である。
【0062】
本発明において、表面粗さRaは、表面粗さ形状測定器(東京精密社製サーフコム1400Aシリーズ)を用い、JIS B 0601(2001)に準じて測定した。詳しくは、測定長さ2.5mm、カットオフ波長0.8mm、測定速度0.60mm/sの条件で、ベルト1本につき24箇所(幅方向3箇所×周方向8箇所)を測定し、その平均値をベルトの表面粗さRaとした。
【0063】
このような本発明のポリイミド無端ベルトは、上述の本発明のポリアミック酸組成物を円筒状基材上に塗布する工程と、前記円筒状基材上に塗布された前記ポリアミック酸組成物を加熱する加熱処理工程と、を経ることで製造されることが好ましい。
このようにして得られたポリイミド無端ベルトは、ポリイミド成型体を主体とするものである。
【0064】
本発明のポリイミド無端ベルトの製造方法の一例を具体的に説明する。
まず、上述の本発明のポリアミック酸組成物を円筒状基材である金型の内面若しくは外面に塗布する。なお、金型の代わりに、樹脂製、ガラス製、セラミック製など、従来既知の様々な素材の円筒状成形型を用いることもできる。また、円筒状金型や円筒状成形型の表面にガラスコートやセラミックコートなどを設けること、また、シリコーン系やフッ素系の剥離剤を使用することも適宜選択されうる。
また、円筒状金型に対するクリアランス調整がなされた膜厚制御用金型を、円筒状金型に通し平行移動させることで、余分な溶液を排除し円筒状金型上の溶液の厚みを均一にする方法を適用してもよい。円筒状金型上への溶液塗布の段階で、溶液の均一な厚み制御がなされていれば、特に膜厚制御用金型を用いなくてもよい。
【0065】
次に、ポリアミック酸組成物が塗布された円筒状金型を、加熱環境に置き、含有溶媒の30質量%以上好ましくは50質量%以上を揮発させるための乾燥を行う。この際、乾燥温度は50〜200℃の範囲であることが好ましい。
更に、この円筒状金型を3級アミンの沸点以上の温度150℃〜450℃で加熱してイミド転化反応を十分に進行させる。イミド転化反応の温度は、原料のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類、又は添加される3級アミンによって、それぞれ異なるが、イミド化が不充分であると、機械的特性及び電気的特性に劣るものとなるため、イミド転化が完結する温度に設定しなければならない。
その後、円筒状金型からポリイミド樹脂を取り外し、無端ベルト状のポリイミドベルト(ポリイミド無端ベルト)を得ることができる。
【0066】
このようにして得られた本発明のポリイミド無端ベルトは、上述のように、粘度が安定している本発明のポリアミック酸組成物を用いて得られるものであるから、抵抗が均一であり、機械的特性及び表面性に優れるという効果を有する。
以上、本発明におけるポリイミド無端ベルトについて説明したが、本発明はこれらの実施の態様のみに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しうるものである。
【0067】
<画像形成装置>
本発明の画像形成装置は、上述した本発明のポリイミド無端ベルトを具備するものであれば、如何なる構成であってもよい。具体的には、例えば、装置内に単色(通常は黒色)のみを有するモノカラー電子写真装置や、感光体上に担持されたトナー像を中間転写ベルトに順次一次転写を繰り返すカラー電子写真装置や、各色毎の現像器を備えた複数の潜像担持体を中間転写ベルト上に直列に配列した、タンデム型カラー電子写真装置のいずれであってもよい。また、中間転写ベルトを用いた中間転写方式であり、及び/又は、ベルトを直接的若しくは間接的に加熱する機構の画像形成装置であってもよい。
これらの画像形成装置において、上述の本発明のポリイミド無端ベルトは、中間転写及び定着用として用いられるのみならず、中間転写ベルト、搬送ベルト、定着用ベルトとして用いることが可能である。なお、中間転写及び定着用ベルトとは、同一ベルト上において中間転写過程と定着過程を行うベルトである。
上述のように、本発明のポリイミド無端ベルトは抵抗が均一であり、機械的特性及び表面性に優れていることから、これを画像形成装置に適用することで、高品質の転写画像を安定して得ることができる。
【0068】
以下、本発明のポリイミド無端ベルトを具備する本発明の画像形成装置の構成例について、図面を参照して詳細に説明する。ここで、図1に、既述の本発明のポリイミド無端ベルトを中間転写ベルトとして用いた本発明の画像形成装置の一例であるカラー電子写真複写機100の概略構成図を示す。
【0069】
図1において、101BK、101Y、101M、101Cは感光体ドラム(像担持体)であり、矢線A方向への回転に伴いその表面には周知の電子写真プロセス(図示せず)によって画情報に応じた静電潜像が形成される。
【0070】
また、この感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cの周囲には、それぞれ、ブラック(BK)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各色に対応した現像器105〜108が配設されており、感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cに形成された静電潜像をそれぞれの現像器105〜108で現像してトナー像を形成するようになっている。従って、例えば、感光体ドラム101Yに書き込まれた静電潜像はイエローの画情報に対応したものであり、この静電潜像はイエロー(Y)のトナーを内包する現像器106で現像され、感光体ドラム101Y上にはイエローのトナー像が形成される。
【0071】
102は感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cの表面に当接されるように配置されたベルト状の中間転写ベルトであり、複数のロール117〜120に張架されて矢線B方向へ回動する。
【0072】
中間転写体102には、既述の本発明のポリイミド無端ベルトが使用されているため、従来の無端ベルトの膜厚不均一性、導電性不均一性等に起因する不良を低減できる。その結果、この画像形成装置により得られた転写画像の品質が優れることとなる。
【0073】
上記感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cに形成された未定着トナー像は、感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cと上記中間転写体102とが接するそれぞれの1次転写位置で、順次感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cから中間転写体102の表面に各色が重ね合わされて転写される。
【0074】
この1次転写位置において、中間転写体102の裏面側には転写バッフル121〜124により転写プレニップへの帯電を防止したコロナ放電器109〜112が配設されており、このコロナ放電器109〜112にトナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加することで、感光体ドラム101BK、101Y、101M、101C上の未定着トナー像は中間転写体102に静電吸引される。この1次転写手段は、静電力を利用したものであれば、コロナ放電器に限らず電圧が印加された導電性ロールや導電性ブラシなどでも良い。このような静電力を利用する理由は、熱や圧力によるトナーの粘着力を1次転写に利用すると、感光体を損傷させやすいからである。
【0075】
このようにして中間転写体102に1次転写された未定着トナー像は、中間転写体102の回動に伴って記録媒体103の搬送経路に面した2次転写位置へと搬送される。2次転写位置ではセラミックヒーターやハロゲンランプなどの加熱源を内蔵した加熱転写ロール120が中間転写体102の裏面側に接している。また、2次転写位置において上記加熱転写ロール120に対向してプレッシャーロール125が配設されている。プレッシャーロール125は、その表面にフッ素樹脂をコーティングしたものが好ましく、また、加熱転写ロール120と同様に加熱源を内蔵してもよい。
【0076】
フィードローラ126によって所定のタイミングでトレイ113から搬出された記録媒体103は、このプレッシャーロール125と中間転写体102との間に挿通される。この時、上記加熱転写ロール120とプレッシャーロール125との間に電圧を印加しても良い。中間転写体102に担持された未定着トナー像は上記2次転写位置において記録媒体103に熱溶融転写される。加熱、圧力手段によりトナー像を溶融して転写しているので、中間転写体102として電荷減衰がないものを使用しても、中間転写体102と記録媒体103間で放電を発生しトナー飛散が生じて画質欠陥を起こすという問題が生じない。
【0077】
そして、未定着トナー像が転写された記録媒体103は剥離爪114によって中間転写体102から剥がされ、搬送ベルト115によって定着器(図示せず)に送り込まれて未定着トナー像の定着処理がなされる。このとき、前記2次転写装置(加熱転写ロール120及びプレッシャーロール125)により定着を兼ねてもよいが、十分なカラー定着性を得るためには、上記のように定着工程を独立させることが好ましい。
【0078】
なお、上記プレッシャーロール125、剥離爪114及びクリーニング装置116は中間転写体102と接離自在に配設されており、2次転写される迄、これら部材は中間転写体102から離間している。
【実施例】
【0079】
以下、本発明に対応する複数の実施例及びこれらの実施例に対する比較例について述べる。なお、これらの実施例は全て例示であり、この記述によって本発明の適用範囲が制限されるものではない。
【0080】
〔実施例1〕
<ポリアミック酸溶液(a)の調製>
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコ中に、五酸化リンによって乾燥した窒素ガスを通じ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物29.42g(0.1モル)とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)117.68gを注入した。十分攪拌・溶解した後、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル20.02g(0.1モル)をN−メチル−2−ピロリドン80.08gに溶解させた溶液を10℃に保持したフラスコ内に徐々に滴下した。ジアミン溶液滴下後10〜15℃にて攪拌・重合を行った。反応溶液を大量のメタノール中に注ぎ、再沈殿精製を行った。析出した白色ポリマーを、濾別・乾燥した後、N−メチル−2−ピロリドンに再溶解させて20質量%ポリアミック酸溶液(a)を得た。
【0081】
<ポリアニリンの合成>
10L−セパラブル・フラスコに、イオン交換水6000g、35%塩酸400ml、及びアニリン400g(4.295モル)を仕込み、攪拌を行ってアニリンを溶解させた。ビーカー容器に、氷水にて冷却しながら、イオン交換水1493gに、98%濃硫酸434g(4.295モル)を添加・混合して、硫酸水溶液を調製した。この硫酸水溶液をアニリン溶液に氷冷しながら徐々に加えた。
次に、ペルオキソ二硫酸アンモニウム980g(4.295モル)をイオン交換2300gに溶解させた酸化剤水溶液を、アニリン溶液に氷冷しながら徐々に滴下した。滴下後、無色透明の溶液は、重合の進行に伴って緑青色から黒緑色となり、次いで、黒緑色の粉末が析出した。そして、ペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液の滴下後、更に1時間、攪拌を続けた。
得られた粉末を濾別し、水洗、アセトン洗浄し、室温で真空乾燥して、硫酸にてドープされた導電性ポリアニリン430gを黒緑色の粉末として得た。
続いて、ドープ状態の導電性ポリアニリン粉末350gを、2Nアンモニア水4リットル中に加え、ホモミキサーにて回転数5000rpmにて5時間攪拌した。混合物は、黒緑色から青紫色に変化した。粉末を濾別し、イオン交換水・アセトンにて洗浄して、室温にて10時間真空乾燥して、黒褐色の脱ドープされたポリアニリン粉末280gを得た。この脱ドープされたポリアニリン構成単位ユニット分子量は182.2であった。
【0082】
<ポリアニリン溶液(b)の調製>
上記の方法で得られたポリアニリン粉末(脱ドープ状態)18.22g(0.10モル)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)180g中に溶解させて、ポリアニリン溶液(b)を得た。
【0083】
<ポリアミック酸組成物(c−1)の調製>
上記の方法で調製されたポリアニリン溶液(b)に、これにドーパントとして、ドデシルベンゼンスルホン酸32.65g(0.10モル)を添加した。これを、上記の方法で得られた20質量%ポリアミック酸溶液(a)500gに、攪拌を行いながら徐々に添加した。更に、塩基性添加物である酸化亜鉛5.91g(堺化学社製酸化亜鉛LPZINC−2;数平均粒径2μm)を加え、ホモジナイザーにて3000rpm、5分間分散を行った。その後、50μm孔金属メッシュにて凝集物を除去して、ポリアミック酸組成物(c−1)を得た。
【0084】
このようにして得られたポリアミック酸組成物(c−1)の組成は以下の通りである。
−ポリアミック酸組成物(c−1)の組成−
・ポリアミック酸;100g
・ポリアニリン ;18.22g
(0.1モル;ポリアミック酸100質量部に対して18.22質量部)
・酸化亜鉛 ;5.91g
(塩基性無機粒子、ポリアミック酸+ポリアニリン100質量部に対して5部)
・ドーパント ;32.65g
(0.1モル;ポリアニリン構成単位ユニットに対して1当量)
・溶媒 ;580g
【0085】
得られたポリアミック酸組成物(c−1)に対して、目視による分散性及び粘度について、調整直後の試料と2日経過(室温保管)の試料とを評価した。評価方法は、下記に示す。
(分散性の評価)
ポリアミック酸組成物(c−1)を20ml容量の透明ガラス管中に充填し、白色紙上で、液面上に現れる凝集・析出分を観察した。
(粘度測定条件)
ポリアミック酸組成物(c−1)の液温25℃に調整し、それをHAKKE社製定速粘度計PK100を用いて測定した。
(結果)
調整直後、2日経過後ともに、粒子の凝集・析出はみられず、均一な分散状態であった。また、粘度も調整直後が30Pasであり、2日経過後が31Pasであり、ほとんど変化がなく、安定性が保たれていた。
【0086】
<ポリアミック酸組成物(c−2)〜(c−8)の調製>
ポリアミック酸組成物(c−1)の調製において、塩基性添加剤である塩基性無機粒子の種類とその配合量、ドーパントの種類とその配合量、及びその他の添加剤(カーボンブラック)の使用の有無とその使用量について、下記表1に記載のように、適宜、変更した他は、ポリアミック酸組成物(c−1)の調製と同様に処理して、ポリアミック酸組成物(c−2)〜(c−8)をそれぞれ得た。
また、得られたポリアミック酸組成物(c−2)〜(c−8)に対しても、上記の方法で、目視により分散性及び粘度を評価した。評価結果を表1に併記する。
【0087】
【表1】

【0088】
<ポリアミック酸組成物(c−9)の調製>
上記の方法で調製されたポリアニリン溶液(b)に、これにドーパントとして、ドデシルベンゼンスルホン酸32.65g(0.10モル)を添加した。これを、上記の方法で得られた20質量%ポリアミック酸溶液(a)500gに、攪拌を行いながら徐々に添加した。更に、塩基性添加物であるピリジン7.91g(0.10モル)を加え、ホモジナイザーにて3000rpm、5分間分散を行った。その後、50μm孔金属メッシュにて凝集物を除去して、ポリアミック酸組成物(c−9)を得た。
【0089】
このようにして得られたポリアミック酸組成物(c−9)の組成は以下の通りである。
−ポリアミック酸組成物(c−9)の組成−
・ポリアミック酸;100g
・ポリアニリン ;18.22g
(0.1モル;ポリアミック酸100質量部に対して18.22質量部)
・ピリジン ;7.91g
(塩基性無機粒子、0.10モル;ドーパントに対してモル比1倍)
・ドーパント ;32.65g
(0.1モル;ポリアニリン構成単位ユニットに対して1当量)
・溶媒 ;580g
【0090】
得られたポリアミック酸組成物(c−9)に対して、目視による分散性及び粘度について、調整直後の試料と2日経過(室温保管)の試料とを評価した。評価方法は、ポリアミック酸組成物(c−1)の場合と同様である。
その結果、調整直後、2日経過後ともに、粒子の凝集・析出はみられず、均一な分散状態であった。また、粘度も調整直後が30Pasであり、2日経過後が31Pasであり、ほとんど変化がなく、安定性が保たれていた。
【0091】
<ポリアミック酸組成物(c−10)〜(c−15)の調製>
ポリアミック酸組成物(c−9)の調製において、塩基性添加剤である3級アミンの種類とその配合量、ドーパントの種類とその配合量、及びその他の添加剤(カーボンブラック)の使用の有無とその使用量について、下記表2に記載のように、適宜、変更した他は、ポリアミック酸組成物(c−9)の調製と同様に処理して、ポリアミック酸組成物(c−10)〜(c−15)をそれぞれ得た。
また、ポリアミック酸組成物(c−10)〜(c−15)に対しても、上記の方法で、目視により分散性及び粘度を評価した。評価結果を表2に併記する。
【0092】
【表2】

【0093】
<ポリアミック酸組成物(c−16)及び(c−17)の調製>
ポリアミック酸組成物(c−9)の調製において、塩基性添加剤の種類とその配合量、ドーパントの種類とその配合量、及びその他の添加剤(カーボンブラック)の使用の有無とその使用量について、下記表3に記載のように、適宜、変更した他は、ポリアミック酸組成物(c−9)の調製と同様に処理して、ポリアミック酸組成物(c−16)及び(c−17)をそれぞれ得た。
なお、ポリアミック酸組成物(c−16)及び(c−17)において、酸化亜鉛の含有量がポリアミック酸+ポリアニリン100質量部に対して5部であり、また、ピリジンの含有量が0.1モル;ドーパントに対するモル比が1倍である。
また、ポリアミック酸組成物(c−16)及び(c−17)に対しても、上記の方法で、目視により分散性及び粘度を評価した。評価結果を表3に併記する。
【0094】
<ポリアミック酸組成物(cr−1)〜(cr−3)の調製>
ポリアミック酸組成物(c−1)の調製において、塩基性添加剤の使用の有無、ドーパントの種類とその配合量、及びその他の添加剤(カーボンブラック)の使用の有無とその使用量について、下記表3に記載のように、適宜、変更した他は、ポリアミック酸組成物(c−1)の調製と同様に処理して、比較ポリアミック酸組成物(cr−1)〜(cr−3)をそれぞれ得た。
また、比較ポリアミック酸組成物(cr−1)〜(cr−3)に対しても、上記の方法で、目視により分散性及び粘度を評価した。評価結果を表3に併記する。
【0095】
【表3】

【0096】
〔実施例1〜17、比較例1〜3〕
<ポリイミド無端ベルトの製造>
得られたポリアミック酸組成物(c−1)〜(c−17)、(cr−1)〜(cr−3)を、それぞれ、内径90mm、長さ450mmの円筒状SUS製金型表面に均一に塗布した。なお、この円筒状金型には、表面にフッ素系の離型剤を予め塗布することで、ベルト成型後の剥離性を向上させている。その後、円筒状金型を回転させながら、温度120℃の条件で、30分間乾燥処理を行った。乾燥処理後、円筒状金型をオーブンに入れ、300℃、約30分焼成を行い、イミド転化化反応を進行させた。続いて、円筒状金型を室温で放冷し、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルトを得た。
得られたポリイミド無端ベルトは、周長283mm、幅400mmであった。
【0097】
[評価]
上記のポリイミド無端ベルトの製造において、塗工性能について目視により評価した。
また、得られたポリイミド無端ベルトの表面性状(外観、Ra)、厚みに加え、電気特性(表面抵抗値、体積抵抗値)、機械的特性(ヤング率、引張り強度、伸び)、電子写真装置へ搭載した場合の転写画像の品質について、以下のように評価した。評価結果は、下記表4〜表6に併記した。
【0098】
「表面性状の評価」
(外観)
得られたポリイミド無端ベルトの外観(転写面)を、目視観察し、以下のように評価を行った。ここで表面欠陥とは、ベルト表面に現れる凝集物の有無、ベルト表面の均一性を乱す模様の発生の有無を表す。
○:まったく表面欠陥の発生が見られず、膜の均一性に優れる。
○〜△:表面欠陥の発生がやや見られるが、実用には問題ない。
△:表面欠陥の発生が見られ、実用にはやや支障がある。
×:表面欠陥が多発し、実用できない。
【0099】
(表面粗さRaの測定)
得られたポリイミド無端ベルトの転写面の表面粗さRaを、表面粗さ形状測定器(東京精密社製サーフコム1400Aシリーズ)を用い、JIS B 0601(2001)に準じて測定した。詳しくは、測定長さ2.5mm、カットオフ波長0.8mm、測定速度0.60mm/sの条件で、ベルト1本につき24箇所(幅方向3箇所×周方向8箇所)を測定し、その平均値をベルトの表面粗さRaとした。
【0100】
(厚み)
得られたポリイミド無端ベルトから、20×200mm試験片をランダムに10箇所切りだし、定圧厚さ測定器(TECLOCK社製PG−02型)を用いて測定した。
【0101】
「電気特性の評価」
(表面抵抗値の測定)
得られたポリイミド無端ベルトの表面抵抗率の測定には、R8340A デジタル超高抵抗/微小電流計(株式会社アドバンテスト社製)、接続部をR8340A用に改造した二重リング電極構造のURプローブMCP−HTP12、及びレジテーブUFL MCP−ST03(何れも、株式会社ダイアインスツルメンツ社製)を用いた。
なお、測定の際の試験片には、実施例及び比較例にて製造された各ポリイミド無端ベルトをそのまま用いた。
【0102】
レジテーブUFL MCP−ST03(フッ素樹脂面を使用)上に、測定面を上にして、試験片を置き、測定面に接するようにURプローブMCP−HTP12の二重電極を当てた。なお、URプローブMCP−HTP12の上部には19.6N±1Nの錘を取り付け、試験片に一様な荷重がかかるようにした。
【0103】
R8340A デジタル超高抵抗/微小電流計の測定条件は、チャージタイムを30sec、ディスチャージタイムを1sec、印加電圧を100Vとした。
この時、試験片の表面抵抗率をρs、R8340Aデジタル超高抵抗/微小電流計の読み値をR、URプローブMCP−HTP12の表面抵抗率補正係数をRCF(S)とすると、三菱化学「抵抗率計シリーズ」カタログによればRCF(S)=10.00なので、下記式(1)のようになる。
すなわち、式(1):ρs[Ω/□]=R×RCF(S)=R×10となる。
【0104】
(体積抵抗率の測定)
中間転写ベルトの体積抵抗率の測定には、R8340A デジタル超高抵抗/微小電流計(株式会社 アドバンテスト社製)と、接続部をR8340A用に改造した二重リング電極構造のURプローブMCP−HTP12及びレジテーブUFL MCP−ST03(何れも、株式会社 ダイアインスツルメンツ社製)を用いた。
なお、測定の際の試験片には、実施例及び比較例にて製造されたポリイミド無端ベルトをそのまま用いた。
【0105】
レジテーブUFL MCP−ST03(金属面を下部電極として使用)上に、試験片を置き、上部電極としてURプローブMCP−HTP12の二重電極部を当てた。なお、URプローブMCP−HTP12の上部には19.6N±1Nの錘を取り付け、試験片に一様な荷重がかかるようにした。
【0106】
R8340A デジタル超高抵抗/微小電流計の測定条件は、チャージタイムを30sec、ディスチャージタイムを1sec、印加電圧を100Vとした。
この時、試験片の体積抵抗率をρv、中間転写体の厚さt(μm)、R8340A デジタル超高抵抗/微小電流計の読み値をR、URプローブMCP−HTP12の体積抵抗率補正係数をRCF(V)とすると、三菱化学「抵抗率計シリーズ」カタログによれば、RCF(V)=2.011なので、下記式(2)のようになる。
すなわち、式(2):ρv[Ω・cm]=R×RCF(V)×(10000/t)=R×2.111×(10000/t)となる。
【0107】
「機械的特性の評価」
(ヤング率・引張り強度・伸びの測定)
得られたポリイミド無端ベルトから、5×80mmの試験片を作製した。これを、引張り試験機(アイコーエンジニアリング株式会社製1605N)を用いて、ヤング率・引っ張り強度・引っ張り・伸びを測定した。
【0108】
「転写画像の品質の評価」
得られたポリイミド無端ベルトを富士ゼロックス社製電子写真装置(DocuCentreColor400CP)に中間転写ベルトとして組み込み、初期の転写画像の画質の評価を行った。転写画像の画質の評価項目として、印字ズレの有無、印字濃度ムラの有無、ゴーストの有無等を評価した。
印字ズレの有無、印字濃度ムラの有無、ゴーストの有無は、目視にて確認した。
また、50,000枚通紙後、上記と同様の方法で、印字ズレの有無、印字濃度ムラの有無、ゴーストの有無について評価した。
【0109】
【表4】

【0110】
【表5】

【0111】
【表6】

【0112】
以上、表4〜表6により明らかなように、本発明のポリアミック酸組成物を用いてポリイミド無端ベルトを製造する際の塗工性能に優れることが分かる。
また、本発明のポリアミック酸組成物を用いて得られた本発明のポリイミド無端ベルトは、ベルト外観や表面粗さが良好で、また、ベルト厚みが均一であることが分かる。また、機械的強度及び電気特性に優れることから、中間転写及び定着ベルト、中間転写ベルト、搬送ベルト、定着ベルトとして好適な特性を示していた。
一方、本発明の範囲外のポリアミック酸組成物を用いて得られたポリイミド無端ベルトは、ポリアミック酸組成物の粘度が安定せず、均一な塗工を行なうことができず、その結果、得られたベルトの厚さが不均一となり抵抗特性の面内に不均一性が発生した。また、電子写真装置に搭載した際の転写画像の品質が極めて不良となった。
このような本発明のポリイミド無端ベルトを、画像形成装置に実装した場合、転写画像の品質に優れることも分かる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の画像形成装置の構成を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0114】
100・・・カラー電子写真複写機(画像形成装置)
101BK〜Y・・・感光体ドラム
102・・・中間転写ベルト
103・・・記録媒体
105〜108・・・現像器
109〜112・・・コロナ放電器
113・・・トレイ
114・・・剥離爪
115・・・搬送ベルト
116・・・クリーニング装置
117・・・ロール
120・・・加熱転写ロール
121〜124・・・転写バッフル
125・・・プレッシャーロール
126・・・フィードローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミック酸と、ポリアニリンと、該ポリアニリンを導電化させるドーパントと、溶媒と、塩基性添加剤と、を含有してなることを特徴とするポリアミック酸組成物。
【請求項2】
ポリイミドと、ポリアニリンと、該ポリアニリンを導電化させるドーパントと、塩基性添加剤と、を含有してなることを特徴とするポリイミド無端ベルト。
【請求項3】
請求項2に記載のポリイミド無端ベルトを具備することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−56182(P2007−56182A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245370(P2005−245370)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】